説明

トップリフト、靴ヒールおよび靴

【課題】製造が容易で、取付ピンの固定性に優れるトップリフトを提供する。
【解決手段】基部と該基部に突設される軸部とからなる取付ピンが、該軸部を突出させてトップリフト本体に固設されるトップリフトにおいて、該軸部に貫通孔を有する中間部材が配設され、該中間部材が該基部と共にトップリフト本体に固設されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴の踵の底に取り付けられて用いるトップリフトおよび該トップリフトを踵に取り付けた靴に関する。
【背景技術】
【0002】
婦人靴などのヒールにはその末端に硬質ゴム製などのトップリフトが取り付けられている。このようなトップリフトは、靴の踵の底面に取り付けることで、そのまま接地させたのでは磨耗しやすい踵を保護するものであり、ヒール基台の損傷を防止するために、トップリフトが磨耗すると適宜新たなものと交換される。
【0003】
一般に、ヒール基台とトップリフト本体との接合は、釘を打ち付けて行うもの、接着剤で接着するもの、合成樹脂製の突起を有するトップリフトを圧入するものがある。更に、図7に示すように、縦穴(13)を穿設し、金属管(15)を挿入したヒール基台(11)に、金属性の取付ピンの軸部(5)をインサート成形したトップリフト本体(1)を前記縦穴(13)に嵌合して取り付けるものなどがある。
【0004】
その他、硬質合成樹脂製のヒール本体の底部に穿設した差し込み孔に、弾性を有する軟質合成樹脂からなるトップリフトの軸杆を挿嵌する靴のヒールであって、前記差し込み孔の周壁面に適宜の間隔を保って内側に突出する突出片を設け、該突出片の先を内方に向うテーパー面に形成し、かつ各突出片と突出片との先端部間に小隙間を備えた小径孔を形成し、さらにその先に小径孔より大きな拡大孔を穿設して構成した靴のヒールも開示されている(特許文献1)。該方法によれば、ヒールとトップリフトとの係合が容易かつ確実に行われ、その固着力が強固となる、という。
【0005】
また、靴の踵に形成された嵌入穴へ嵌入される嵌入軸部と、この嵌入軸部の下端に連設される平板状の基部を備えた金属材と、前記嵌入軸部が突出する状態で前記基部全体を被包した硬質ウレタン樹脂層と、前記嵌入軸部が突出する状態で前記硬質ウレタン樹脂層を被包した軟質ウレタン樹脂層とからなるトップリフトがある(特許文献2)。該公報によれば、軟質ウレタン樹脂層の存在によって、接地面側の部分が摩耗しても靴の踵部側に取り付けられる部分は摩耗しないので衝撃吸収性を確保することができる、という。
【0006】
また、靴の踵の底に当接する踵底当接面と、該踵底当接面に対向する底面との間に厚みを有するトップリフト主体部と、該トップリフト主体部の該踵底当接面から突出し、上記靴の踵の底に開けられた嵌入孔内に嵌入することで該トップリフト主体部を該踵の底に物理的に固定する嵌入軸部とを有して成るトップリフトであって、上記嵌入軸部が硬質ウレタン樹脂製であり、上記トップリフト主体部が軟質ウレタン樹脂製であり、該嵌入軸部と該トップリフト主体部とをインサート成形により互いに接着させたトップリフトもある(特許文献3)。該公報によれば、靴の踵に取り付く嵌入軸部は硬質のウレタン樹脂製であるので、十分な強度を確保し得る一方、支配的な厚さを持つトップリフト主体部は軟質ウレタン樹脂製であるので十分な衝撃吸収性能を発揮でき、歩行音が響きすぎるようなこともなく、着用感が良い、という。
【特許文献1】特開平7−255507号公報
【特許文献2】特開2005−177271号公報
【特許文献3】特開2005−304978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1記載の方法では、ヒール本体の底部にトップリフト用の差し込み孔を設けるものであるが、その差し込み孔の形状が複雑であり、成型が容易でなく、形状が特異であるため、他の靴に使用することができない。
【0008】
また、上記特許文献2記載の方法は、前記嵌入軸部が突出する状態で前記基部全体に硬質ウレタン樹脂層を被包する際に、インサート成形を行い、かつ前記嵌入軸部が突出する状態で前記硬質ウレタン樹脂層を、さらに軟質ウレタン樹脂層で被包する必要があり、その際にもインサート成形を行う必要がある。トップリフトが2本の嵌入軸部を有する場合には、3回のインサート成形が必要となり、3本の嵌入軸部を有する場合には4回のインサート成形が必要となるなど、製造工程が複雑である。
【0009】
また、特許文献3記載のものは、軟質ウレタン樹脂と硬質のウレタン樹脂との親和性に優れる点に鑑みて、硬質ウレタン樹脂からなる嵌入軸部と軟質ウレタン樹脂からなるトップリフト主体部とをインサート成形により互いに接着させるものであるが、女性のハイヒール用のトップリフトなどのように部材が小さい場合には、接触面が少ないため十分な接着力が確保できない場合がある。
【0010】
そこで本発明は、ヒール基台と接合しても離脱しづらく、かつ製造しやすいトップリフトを提供することを目的とする。
【0011】
また、適度な硬度と柔軟性を有し、このため耐磨耗性および耐滑性を確保しつつ、使用感に優れるトップリフトを提供することを目的とする。
【0012】
加えて、上記トップリフトを挿嵌した靴ヒールや該靴ヒールを有する靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、トップリフトについて詳細に検討した結果、基部と該基部に突設される軸部とからなる取付ピンを、該軸部を突出させてトップリフト本体に固設されるトップリフトにおいて、該軸部に貫通孔を有する中間部材を配設し、かつ該中間部材を該基部と共にトップリフト本体に固設すると、取付ピンの固定がしっかりと行えること、このため、トップリフト本体を柔軟な軟質合成樹脂で製造した場合であっても、取付ピンがトップリフト本体から外れるのを効率的に防止しうること、特に、ハイヒールなどの接地面積が小さい場合でも固定性に優れることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0014】
本発明のトップリフトは、取付ピンに中間部材を貫通させるだけで製造することができ、従来と比較して優れた固定性を確保することができるため、製造が容易である。
【0015】
本発明のトップリフトは、トップリフト本体が軟質合成樹脂で成形される場合でもトップリフト本体から外れ難いため、このような軟質合成樹脂をトップリフト本体に使用することができ、クッション性を確保し、滑り性を低減することができ、使用感を向上させることができる。
【0016】
本発明のトップリフトは、トップリフト本体から棒状の取付ピンの軸部のみが突出するため、トップリフト本体とヒールとの接触面に特異な凹凸などが不要であり、各種のヒールに使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の第一は、基部と該基部に突設される軸部とからなる取付ピンが、該軸部を突出させてトップリフト本体に固設されるトップリフトにおいて、該軸部に貫通孔を有する中間部材が配設され、該中間部材が該基部と共にトップリフト本体に固設される、トップリフトである。本発明の好適な実施態様の一例を示す図1を参照して説明する。
【0018】
図1(a)は、トップリフトをヒール基台(11)に取り付けたヒール(100)の断面図であり、図1(b)はトップリフト本体(1)とヒール基台(11)とを挿嵌する前の態様を示す図である。図1(a)において、1はトップリフト本体、3は取付ピンの基部、5は取付けピンの軸部、7は中間部材、10はトップリフト、11はヒール基台、13は縦穴、15は金属管、100はヒールを示す。図1(a)に示すように、トップリフト(10)の取付ピンの軸部(5)は、縦穴(13)に挿嵌され固定される。図2(a)に、本願発明の好適な態様の一例であるトップリフトの斜視図を示し、図2(b)に取付ピンの一態様を、図2(c)に、図2(a)のA−A線の切断断面図を示す。
【0019】
図2に示すように、本発明では、取付ピンの軸部(5)がトップリフト本体(1)から突出され、かつ取付ピンに貫通孔を有する中間部材(7)が配設され、前記中間部材(7)と取付ピンの基部(3)とが共に該本体(1)内に固設されていることを特徴とする。トップリフト本体(1)は、合成樹脂などによって成型されたものであり、中間部材(7)を介在させることで、前記取付ピンの基部(3)と中間部材(7)との間に前記合成樹脂が嵌入され、取付ピンの固定安定性が向上するものと考えられる。トップリフト本体(1)の形状は、使用する靴に応じて適宜選択することができ、図2(a)に示す形状に限定されるものではない。
【0020】
本発明で使用する取付ピンは、基部(3)と該基部に突設される軸部(5)とを有するものであるが、取付ピンの基部(3)の大きさは、軸部(5)の直径より大きいものであればその形状は限定されない。また、その形状も円板に限定されず、方形の板状物であってもよい。また、平板に限定されず、凹凸や貫通孔を有してもよく、例えば図2(b)に示すように、基部(3)には1以上の爪(4)が設けられていてもよい。
【0021】
取付ピンの軸部(5)は、全長に亘り同じ直径の棒状体であってもよいが、ヒール基台(11)に設けた縦穴(13)への挿入を妨げない範囲で、凹凸を有していてもよい。図2(b)に示すように、円柱の表面の一部に長軸に平行に切り込みが設けられていてもよい。また、軸部(5)のヒール挿入側は、挿入を容易に行うため、図2(b)に示すように頂部の角を取ったものであってもよい。このような取付ピンの他の形態を図8に示す。本発明で使用する取付ピンは、基部(3)と軸部(5)との結合部、および/または軸部(5)の頭部に凹部(5’、5”)が設けられていてもよく(図8(a)参照)、更に、基部(5)が複数の平板で構成されていてもよい。図8(b)には、基部(3)として、平板(3’、3”)からなる取付ピンを示す。また、基部の最下端が、凹凸を有する不定形であってもよい。図8(c)には、軸部(5)に凹部(5’、5”)を有し、基部(3)が平板(3’)と不定形基部(3”)からなる取付ピンを示す。
【0022】
取付ピンの材質は、金属製、合成樹脂製など、各種の部材を使用することができる。強度に優れる点で、金属製であることが好ましい。
【0023】
本発明で使用する中間部材(7)は、取付ピンの軸部(5)を貫通する貫通孔(8)を有すれば、その形状は問わない。図3(a)〜(e)に各種の形状の中間部材(7)の平面図(左図)および横断面図(右図)を示す。図3(a)〜(c)に示すように、取付部材(7)は、円形であっても、図3(e)、(f)に示すように、方形であってもよい。更に、図示しないが、多角形でも不定形であってもよい。また、中間部材(7)に設けた貫通孔(8)は、使用する取付ピン(10)の軸部(5)を貫通させればよく、取付ピンの軸部(5)の軸径を勘案して決定される。したがって、軸部(5)よりも貫通孔(8)の孔径が狭いものであってもよい。後記するように、中間部材(7)が合成樹脂で製造される場合には、その可撓性によって軸部(5)の軸径よりも貫通孔(8)の孔径が狭い場合でも、軸部(5)を貫通孔(8)に貫装することができる。更に、中間部材(7)の形状は、平板に限定されるものでもない。図3(a)に示すように、中間部材(7)において、均一の厚みを有してもよいが、図3(b)に示すように、貫通孔(8)の外周が肉薄となるなど、中間部材(7)において均一でなくてもよい。更に、中間部材(7)には、図3(e)に示すように、複数の貫通孔(8)が設けられていてもよい。このように、複数の貫通孔(8)を有する場合には、一つの中間部材(7)に複数の取付ピンを貫装させることができる。
【0024】
加えて、中間部材(7)の外周サイズは、該基部(3)の外周より大きくてもよく、例えば、該中間部材は、トップヒールの横断面と同じ形状の横断面を有するものであってもよい(図5(c)参照)。
【0025】
本発明では、前記中間部材が配設された取付ピンがトップリフト本体(1)に貫装される。図4に中間部材(7)を配設した取付ピンの状態を示す。図4(a)は、中間部材(7)の横断面積が取付ピンの基部(3)の横断面積よりも大きい態様を、図4(b)は、中間部材(7)の横断面積が取付ピンの基部(3)の横断面積よりも小さい態様を、図4(c)は、方形の中間部材(7)を円形の基部(3)を有する取付ピンに配設した態様を示す。本発明において、中間部材(7)に複数の貫通孔(8)が設けられている場合には、各貫通孔(8)に取付ピンを配設することができる。図4(d)に、2つの貫通孔(8)を有する中間部材(7)に2つの取付ピンを配設した態様を示すが、3つの貫通孔(8)を有する中間部材(7)に2つまたは3つの取付ピンを配設した態様などであってもよい。更に、図4(e)に、軸部(5)に凹部(5’)を有し、基部(3)が平板(3’)と不定形基部(3”)からなる取付ピンに、貫通孔(8)の周辺が肉薄で構成された中間部材(7)を貫装させる工程図を示す。なお、便宜のため、図4(e)において、中間部材(7)は、内部形状を破線で示した。この場合には、中間部材(7)の貫通孔(8)が凹部(5’)に嵌合するため、トップリフト本体(1)に固設する際に、取付ピンと中間部材(7)とが固着するためトップリフト本体(1)への固設操作が容易となり、かつ平板(3’)を包み込むように中間部材(7)の肉薄部が嵌合するため、トップリフト本体(1)において、中間部材(7)と基部(3)との厚みを薄くすることができる。更に、基部(3)が不定形基部(3”)を有すると、トップリフト本体(1)に取付ピンを固設した後に、取付ピンがトップリフト本体(1)内で回転するのを抑制することができる。
【0026】
本発明で使用する中間部材の材質は、トップリフト本体(1)に対する取付ピンの固定安定性を確保できれば特に制限されない。一般には、有機素材であれば紙;ポリアミド、軟質合成樹脂、硬質合成樹脂、ガラス繊維配合ポリウレタンなどの合成樹脂;貝ガラ;木材などが、無機素材であれば金属;ガラス;石材などを使用することができる。本発明では、特にポリウレタンなどの硬質合成樹脂、軟質合成樹脂、特にガラス繊維配合ポリウレタンなどを好適に使用することができる。
【0027】
また、トップリフト本体(1)の材質としては、軟質合成樹脂、硬質合成樹脂、ガラス繊維配合などの合成樹脂などを好適に使用することができる。本発明では、特に取付ピンの固定性が向上されるため、軟質合成樹脂であってもトップリフト(100)の取付ピンの固定安定性が向上するため、トップヒール(100)の弾性および衝撃吸収性を向上させることができる。
【0028】
このような軟質合成樹脂としては、例えば硬度JIS A 70〜90、およびショアD40〜80のものが好ましい。このような樹脂としては、例えばポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレン熱可塑性エラストマー;オレフィン系ゴムとポリオレフィン系樹脂とを機械ブレンドしたブレンド形ポリオレフィン熱可塑性エラストマー、オレフィン系ゴムとポリオレフィン樹脂の混練りの際の有機化酸化物などを加えてゴム相を部分架橋させた部分架橋ブレンド形ポリオレフィン熱可塑性エラストマー、EPDM/ポリプロピレン配合物などの完全架橋ブレンド型ポリオレフィン熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン熱可塑性エラストマー;ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー;ポリウレタン系熱可塑性エラストマー;ポリエステル系熱可塑性エラストマー;ポリアミド系熱可塑性エラストマー;1,2ポリブタジエン系熱可塑性エラストマーなどが例示できる。これらの中でも、耐摩耗性、柔軟性に優れる点でポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。このようなポリウレタン系熱可塑性エラストマーは市販品を使用することもでき、たとえばBASF社製の商品名エラストランET500タイプ、エラストランET600タイプ、エラストランET800タイプなどを好適に使用することができる。これらの中でも、特にエラストランET600タイプのなかのエラストランET680、エラストランET164Dなどが好適である。
【0029】
本発明においては、中間部材(7)として硬質ポリウレタンや軟質ポリウレタン、ガラス繊維配合ポリウレタンなどの軟質または硬質合成樹脂を使用し、トップリフト本体(1)として軟質ポリウレタン樹脂を使用すると、双方の親和性に優れるためトップリフト本体(1)に対する取付ピンの固定安定性に優れる。これにより、従来は、硬質合成樹脂を使用するため床面との滑りが問題となっていたが、滑りを低減することができ、またはコツコツという高い足音も低減することができる。本発明では、特に、中間部材(7)として軟質ポリウレタンにガラス繊維を配合したものを使用し、トップリフト本体(1)として軟質ポリウレタンを使用すれば、特に親和性に優れ、滑りを低減しかつ弾力を確保しつつ取付ピンの固定を確実に行うことができる。
【0030】
中間部材(7)が配設された取付ピンをトップリフト本体(1)に固設するには、例えば、インサート成形によって行うことができる。予めトップリフト本体(1)の形状に加工したインサート成形用の金型に中間部材(7)を配設した取付ピンをおき、これに合成樹脂を注入し成型する。本発明では、トップリフト本体(1)における中間部材(7)と取付ピンの配置は、中間部材(7)が基部(3)と共にトップリフト本体に固設されればよく、例えば、前記した図5(a)に示すように、中間部材(7)がトップリフト本体(1)に埋設されてもよいが、必ずしも中間部材(7)の全体がトップリフト本体(1)に埋設される必要はない。したがって、図5(b)に示すように、中間部材(7)の上面がトップリフト本体(1)の上面の一部を構成してもよく、更に、図5(c)に示すように、中間部材(7)がトップリフト本体(1)の上面の全部を構成する態様であってもよい。
【0031】
更に、本発明のトップリフトは、トップリフト本体(1)の形状を適宜選択し、かつ靴のヒール基台(11)に取付ピンの挿入箇所が形成されていれば、ハイヒールに限定されず、紳士靴、ブーツ、パンプスなど各種の靴に使用することができる。トップリフト本体(1)の面積が広い場合には、トップリフト本体(1)には、複数の中間部材(7)が配設されていてもよい。図6(a)〜(h)に、中間部材(7)が配設された取付ピンを固設したトップリフトの横断面図を示す。なお、図6において紙面上方が、靴先端側である。
【0032】
トップリフト本体(1)には、複数個の中間部材(7)が配設された取付ピンが、トップリフト本体(1)に固設されていてもよく、例えば、図6(a)には4個の中間部材(7)が配設された取付ピンを示す。また、例えば図6(b)に示すように、2つの取付ピンを1つの中間部材(7)に配設したものを、トップリフト本体(1)の靴前方に1つ配置した態様でも、図6(c)に示すように、2つの取付ピンを1つの中間部材(7)に配設したものを、トップリフト本体(1)の前方および後方にそれぞれ1本づつ2本平行に配置した態様でも、図6(d)に示すように、2つの取付ピンを1つの中間部材(7)に配設したものを、トップリフトの右側および左側にそれぞれ1本づつ2本平行に配列した態様でも、図6(e)に示すように、2つの取付ピンを1つの中間部材(7)に配設したものと共に、中間部材(7)に1つの取付ピンを取り付けたものをトップリフト本体(1)に固設したものでもよい。更に、図6(f)、(g)に示すように、3つの取付ピンを略五角形または略三角形の中間部材(7)に配設したものを、トップリフトの中央に配設した態様でも、図6(h)に示すように、4つの取付ピンを1つの中間部材(7)に配設したものを、トップリフト本体(1)の中央に配置した態様、その他いずれであってもよい。例えば、図6(c)に示すように、一つの中間部材(7)に2つの取付ピンを配設し、これをトップリフトの前方と後方の2箇所に平行して配置したものは、中間部材(7)の断面積が大きいため、図6(a)の態様のものよりも取付ピンの固定安定性がより向上する。
【0033】
本発明において、トップリフト本体(1)の高さに関する制限は特にないが、一般には4〜9mm、より好ましくは5〜7mmである。また、トップリフト本体(1)から突出する取付ピンの軸部(5)の長さは一般には3〜100m、好ましくは3〜15mm、より好ましくは5〜15mm、特に好ましくは5〜10mmである。この範囲であれば、ヒール基台(11)へ取り付けた後の強度に優れる。
【0034】
本発明では、トップリフト本体(1)の取付ピンの軸部(5)突出面上に、突起部(図示せず)を有していてもよい。このような突起部の形成によってトップリフト本体(1)をヒール基台(11)に取り付ける際の取付け方向の目安とすることができ、トップリフト本体(1)とヒール基台(11)とを嵌合した後は、ヒール基台(11)には少なくとも取付ピンの軸部(5)と該突起部との2点によって固定されるため、方向が安定し、かつトップリフト本体(1)との固定が更に強固になる。
【0035】
このような突起部は、ヒール基台(11)に容易に嵌合でき、かつ取付け後の方向安定性が確保できればよく、例えば、直径0.5〜3mm、より好ましくは1〜2mm、長さ1〜10mm、より好ましくは1〜5mmの円柱状、角柱状の突起であることが好ましい。突起部の数は特に制限されず、0〜4個、より好ましくは1〜2個である。ただし、いわゆる取付ピンヒールなどのようにトップリフトの断面積が30〜200mm以下の場合には、好ましくは1個または2個である。
【0036】
本発明のトップリフトは、トップリフト本体(1)から棒状の取付ピンの軸部(5)のみが突出するため、トップリフト本体(1)とヒール基台(11)との接触面に特異な凹凸などが不要であり、各種のヒールに使用することができるため、特に補修用のトップリフトとして好適である。なお、前記突起部を設けた場合には、特定の靴専用のトップリフトとして好適に使用することができる。
【0037】
本発明の第二は、上記トップリフトを、ヒール基台に挿嵌した靴ヒールである。
【0038】
本発明の靴ヒールは、取付ピンの軸部(5)と中間部材(7)とがトップリフト本体(1)に固設されており、ヒール基台(11)にも、例えば図1(a)、(b)に示すように、該軸部(3)と嵌合しうる形状に縦穴(13)が設けられている。また、トップリフト本体(1)に前記突起部が設けられている場合には、該突起部と嵌合しうる形状に凹部(図示せず)が設けられている。
【0039】
このように構成された靴ヒールは、トップリフト本体(1)から突出する取付ピンの軸部(5)が、ヒール基台(11)に設けた縦穴(13)と結合するため、トップリフト本体(1)とヒール基台(11)とが挿嵌された後にも安定して固定される。また、トップリフト本体(1)に突起部が設けられている場合には、ヒール基台(11)にも突起部と嵌合しうる凹部を設けることで、ヒール基台(11)とトップリフト本体(1)との接触面が密着できる。
【0040】
なお、ヒール基台(11)の形状に限定はない。例えば、女性用のハイヒールでは、一般には、ヒール基台(11)に設けられた縦穴(13)が設けられ、その内部に金属管(15)が挿入されている。ただし、本発明は、このようなハイヒール用のトップリフトに限定されるものでなく、ヒール基台(11)に取付ピンの軸部(5)を軸支できる孔が存在すれば、靴の踵の底面に取り付けられる各種のトップリフトに適用することができる。したがって、男性用、女性用を問わず、ヒールの高さにも限定はない。ただし、トップリフト本体(1)に固設した取付ピンの固定性が向上するため、接地面積が小さいハイヒールなどに好適に使用することができる。特に、本発明の靴ヒールは、トップリフト(1)が軟質合成樹脂で調製される場合でも使用時に取付ピンの軸部(5)がトップリフト本体(1)から外れることが少なく、軟質合成樹脂であるから使用時にすべることが少なく安全性に優れる。
【0041】
本発明の第三は、上記靴ヒールを有する靴である。本発明の靴としては、靴ヒール以外の部分について何ら制限されず、本発明の靴ヒールを有するものが広く含まれる。
【実施例】
【0042】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
【0043】
(実施例1)
直径6mmの基部と、該軸部の中央から突出する直径3.00mm、長さ13.0mmの軸部とを有する取付ピンに、ガラス繊維20質量%含有軟質ウレタン樹脂(硬度 JIS A 90A)からなり、直径9.0mm、内径2.985mm、厚さ1.5mmのリング状の中間部材を取付、横17.0mm×縦14.0mm×深さ5.0mmの方形の部材をトップリフト本体としてその中央に前記取付ピンおよび中間部材をインサート成形によって固設した。なお、トップリフト本体は、軟質ウレタン樹脂(硬度 JIS A 90A)を使用した。
【0044】
該トップリフト3個を用いて、ダイスにトップリフトの嵌入軸部をはさみ、測定器(ダイヤル型トルクレンチ、商品名「トネ/T3DN15」)でトップリフト本体を挟んで、毎分20mmで回転させながら強度を評価した。この際の強度を結果を表1に示す。
【0045】

(比較例1)
中間部材を使用しない以外は、実施例1と同様にしてトップリフトを製造した。このトップリフトを用いて、実施例1と同様に強度を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
(結果)
上記実施例1と比較例1とから、中間部材を設けることで強度はおよそ3倍に向上した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、トップリフトを取付ピンと中間部材と固設することでトップリフト本体に対する取付ピンの固定安定性を向上させることでき、しかもその製造は一体成形によって簡便に調製でき、各種靴類の製造に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のトップリフトと、該トップリフトと挿嵌しうるヒール基台との正面断面図(b)、および両者を挿嵌した後の靴ヒールの正面断面図(a)である。
【図2】(a)は、本発明のトップリフトの斜視図、(b)は本発明で使用する取付ピンの斜視図、(c)は本発明のトップリフトの縦断面図である。
【図3】(a)〜(e)は、本発明で使用する各種中間部材の正面図および横断面図である。
【図4】取付ピンに中間部材を配設した状態を示す斜視図である。
【図5】本発明のトップリフトの縦断面図であり、取付部材と中間部材とがトップリフト本体に固設される場合の配置を示す説明図である。
【図6】本発明のトップリフトにおける、中間部材と取付ピンとの配置を示す説明図である。
【図7】従来のトップリフトとヒール基台を示す正面図である。
【図8】取付ピンの形状を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1・・・トップリフト本体、
3・・・取付ピンの基部、
5・・・取付ピンの軸部、
7・・・中間部材、
11・・・ヒール基台、
13・・・縦穴、
15・・・金属管、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と該基部に突設される軸部とからなる取付ピンが、該軸部を突出させてトップリフト本体に固設されるトップリフトにおいて、
該軸部に貫通孔を有する中間部材が配設され、該中間部材が該基部と共にトップリフト本体に固設される、トップリフト。
【請求項2】
複数の取付ピンが配設されるトップリフトであって、
1つの中間部材に少なくとも2つ貫通孔が設けられ、かつ各貫通孔に取付ピンの軸部が配設されることを特徴とする、請求項1記載のトップリフト。
【請求項3】
該トップリフト本体が、軟質合成樹脂からなる、請求項1または2記載のトップリフト。
【請求項4】
該中間部材が硬質ウレタン樹脂製であり、該トップリフト本体が軟質ウレタン樹脂製である、請求項1〜3のいずれかに記載の、トップリフト。
【請求項5】
該中間部材が軟質ウレタン樹脂にガラス繊維を配合したものでなり、該トップリフト本体が軟質ウレタン樹脂からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の、トップリフト。
【請求項6】
上記請求項1〜5のいずれかに記載のトップリフトを、ヒール基台に挿嵌した靴ヒール。
【請求項7】
請求項6記載の靴ヒールを有する靴。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−222288(P2007−222288A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−45212(P2006−45212)
【出願日】平成18年2月22日(2006.2.22)
【出願人】(505324515)
【Fターム(参考)】