説明

トラクタ

【課題】 PTOクラッチ機構を具備するか否かの仕様の設定が楽に行えるようにすること。
【解決手段】 ミッション部にPTO部を着脱自在に取り付けたトラクタにおいて、PTO部内にPTOクラッチ機構を設けた。従って、PTO部にあらかじめPTOクラッチ機構を組み込んでおくか、又は、PTOクラッチ機構を組み込まずにおくかで、PTOクラッチ機構を具備する仕様か、又は、PTOクラッチ機構を具備しない仕様かの設定をPTO部を組み立てる段階で容易に設定することができると共に、かかるPTO部をミッション部に取り付けるだけで容易に組み立てを完了させることができる。また、上記とは反対の手順をたどることにより、PTOクラッチ機構等のメンテナンスを容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタの一形態として、リヤハウジング内にPTO用クラッチを設けると共に、同PTO用クラッチは、摩擦多板式の油圧作動クラッチ構造となしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、かかるPTO用クラッチは、クラッチ切換弁を介して油圧ポンプに連通連結しており、同クラッチ切替弁は操作具により切換操作可能となすと共に、半クラッチ状態となすことができるようにしている。
【0004】
このようにして、PTO用クラッチに作動油を供給して、同PTO用クラッチを接続状態となすことにより、PTO軸に動力が伝達されるようにしており、この際、操作具によりクラッチ切替弁を介してPTO用クラッチを、一旦、半クラッチ状態にしてから、その後、PTO用クラッチを完全クラッチ接続状態となすことにより、PTO軸に急激に動力が伝達されるのを防止することができるようにしている。
【0005】
また、トラクタの一形態として、原動機部にエンジンを配設する一方、クラッチ部に前後方向に伸延する内側駆動軸と、同内側駆動軸の外周を囲繞する筒状の外側駆動軸とを内外側二重軸構造となして配設し、上記エンジンにPTO用クラッチを介して内側駆動軸を連動連結すると共に、同エンジンに走行用クラッチを介して外側駆動軸を連動連結して、上記PTO用クラッチと走行用クラッチとを具備するデュアルクラッチ構造となしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
そして、PTO用クラッチにはロッド等を介してメカニカル的(機械的)にクラッチペダルを連動連結して、同クラッチペダルを踏み込み操作することにより、PTO用クラッチを接続・切断動作させることができるようにしている。
【0007】
ここで、上記内側駆動軸は、ミッション部内に配設したPTO系伝動機構を介してPTO部に連動連結しており、また、上記外側駆動軸は、ミッション部内に配設した走行系伝動機構を介して左右一対の後車輪に連動連結している。
【特許文献1】実公平7−51393号公報
【特許文献2】特開平8−80754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、前記した特許文献1に示すトラクタは、下記のような不具合を有している。
【0009】
(1)PTO用クラッチをリヤハウジング内に組み込んでいるために、同リヤハウジングを共用してPTO用クラッチを具備する仕様と具備しない仕様とを個別に設定するのが困難である。
【0010】
(2)操作具によりクラッチ切替弁を介してPTO用クラッチを、一旦、半クラッチ状態にしてから、その後、PTO用クラッチを完全クラッチ接続状態となす構造が複雑化していると共に、製造コストが増大化している。
【0011】
また、前記した特許文献2に示すトラクタは、下記のような不具合を有している。
【0012】
(1)クラッチ部内にPTO用クラッチを配設しているために、同PTO用クラッチを着脱することが困難である。その結果、クラッチハウジングを共用してPTO用クラッチを具備する仕様と具備しない仕様とを個別に設定するのが困難である。
【0013】
(2)PTO系伝動機構を介してPTO部に連動連結している内側駆動軸と、走行系伝動機構を介して左右一対の後車輪に連動連結している外側駆動軸とを、内外側二重軸構造となしてミッション部内に配設しているために、同ミッション部内の構造が複雑化すると共に大型化し、製造コストが増大するという不具合がある。
【0014】
(3)内側駆動軸は、PTO用クラッチを介してエンジンに連動連結すると共に、外側駆動軸は、走行用クラッチを介してエンジンに連動連結して、PTO用クラッチと走行用クラッチとを具備するデュアルクラッチ構造となし、かかるデュアルクラッチ構造をクラッチ部に配設しているために、クラッチ部が複雑化すると共に大型化し、製造コストが増大するという不具合がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、本発明では、ミッション部にPTO部を着脱自在に取り付けたトラクタにおいて、PTO部内にPTOクラッチ機構を設けたことを特徴とするトラクタを提供するものである。
【0016】
また、本発明は、以下の構成にも特徴を有する。
【0017】
(1)PTOクラッチ機構は、PTO部に着脱自在に取り付けたこと。
【0018】
(2)PTOクラッチ機構に連動機構を介して手動操作具を連動連結し、同手動操作具を運転席の近傍に配置したこと。
【発明の効果】
【0019】
(1)請求項1記載の本発明では、ミッション部にPTO部を着脱自在に取り付けたトラクタにおいて、PTO部内にPTOクラッチ機構を設けている。
【0020】
このようにして、ミッション部に着脱自在に取り付けたPTO部内に、PTOクラッチ機構を設けているため、PTO部にあらかじめPTOクラッチ機構を組み込んでおくか、又は、PTOクラッチ機構を組み込まずにおくかで、PTOクラッチ機構を具備する仕様か、又は、PTOクラッチ機構を具備しない仕様かの設定をPTO部を組み立てる段階で容易に設定することができると共に、かかるPTO部をミッション部に取り付けるだけで容易に組み立てを完了させることができる。
【0021】
また、上記とは反対の手順をたどることにより、PTOクラッチ機構等のメンテナンスを容易に行うことができる。
(2)請求項2記載の本発明では、PTOクラッチ機構は、PTO部に着脱自在に取り付けている。
【0022】
このようにして、PTO部にPTOクラッチ機構を着脱自在に取り付けているため、PTO部を共用化した状態にて、PTOクラッチ機構を具備する仕様とPTOクラッチ機構を具備しない仕様とを設定することができる。
【0023】
しかも、PTOクラッチ機構をPTO部に着脱自在に取り付け、同PTO部をミッション部に着脱自在に取り付けるようにしているため、組立作業も分解作業も容易に行うことができて、メンテナンス作業を楽に行うことができる。
【0024】
(3)請求項3記載の本発明では、PTOクラッチ機構に連動機構を介して手動操作具を連動連結し、同手動操作具を運転席の近傍に配置している。
【0025】
このようにして、PTOクラッチ機構に連動機構を介して連動連結した手動操作具を、運転席の近傍に配置しているため、手動操作具を操作することにより、連動機構を介してPTOクラッチ機構をメカニカル的(機械的)に操作することができる。
【0026】
その結果、初期段階において、PTO軸に急激に動力が伝達されるのを防止することができて、同PTO軸から動力を受ける作業機に作用する負荷を適宜低減させることができる。
【0027】
また、作業者は、一方の手で操向操作具を操作すると共に、他方の手で手動操作具を操作することができるため、操向操作具を操作することにより機体を回行させる際に、手動操作具を操作することにより、PTOクラッチ機構を切断させて作業機への動力伝達を解除した状態にて機体を回行させ、回行後には、手動操作具を操作することにより、PTOクラッチ機構を接続させて作業機へ動力が伝達される状態に復帰させて、作業機による作業を再開することができる。
【0028】
従って、操向操作具と手動操作具の操作性を良好となして、作業能率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1に示すAは、本発明に係るトラクタであり、同トラクタAは、機体フレーム1上に原動機部2を設け、同原動機部2にクラッチ部3を介してミッション部4を連動連設し、同ミッション部4上に運転部5を配設すると共に、同ミッション部4の後部に変速機能を有するPTO部としてのPTO変速部6を着脱自在に連動連結して、上記機体フレーム1の下方にフロントアクスルケース10を介して左右一対の前車輪7,7を連動連結する一方、上記ミッション部4にリヤアクスルケース8,8を介して左右一対の後車輪9,9を連動連結している。
【0030】
以下において、上記した[原動機部2]、[クラッチ部3]、[ミッション部4]、[運転部5]、及び、[PTO変速部6]の各構成について、この順序で具体的に説明する。
【0031】
[原動機部2]
原動機部2は、図1に示すように、機体フレーム1上にエンジン15等を搭載し、同エンジン15等をボンネット16により開閉自在に被覆している。
【0032】
[クラッチ部3]
クラッチ部3は、図2及び図3に示すように、クラッチハウジング17内に前後方向に伸延する駆動軸18を回動自在に支持しており、同駆動軸18は、クラッチハウジング17内の前部に配置したフライホイール19の中心部に前部ベアリング20を介して前端部18aを枢支する一方、クラッチハウジング17の後端縁部に沿わせて形成した支持壁体21に後部ベアリング22を介して後端部18bを枢支している。
【0033】
そして、駆動軸18の前部の外周にはクラッチ23を配置し、同クラッチ23を介してフライホイール19と駆動軸18とを接続・切断自在に連結している。
【0034】
すなわち、クラッチ23は、フライホイール19にクラッチ本体24を連結すると共に、駆動軸18の前部外周に配置し、同駆動軸18の中途部を支持する筒状の支持片25の外周面に、筒状の作用片26を前後方向に摺動自在に取り付け、同作用片26にクラッチ作動アーム27を介して後述する運転部5に配設したクラッチペダル(図示せず)を連動連結している。
【0035】
このようにして、クラッチペダルを踏み込み操作すると、クラッチ作動アーム27を介した作用片26によるクラッチ本体24への押圧作用が解除されて、クラッチ23が切断作動されるようにしている。
【0036】
ここで、クラッチハウジング17の後端縁部には、後述するミッション部4の主変速ケース37の前端縁部を着脱自在に連結しており、主変速ケース37内には、前記駆動軸18の後端部18bを後方へ延設して一体成形した分岐伝動体としての分岐伝動ギヤ29を配置している。
【0037】
[ミッション部4]
ミッション部4は、図2及び図3に示すように、前後方向に伸延させて筒状に形成したミッションケース30内に、前後方向に伸延する走行系伝動機構31とPTO系伝動機構32とを並列的に配設している。
【0038】
そして、走行系伝動機構31は、前方から後方へ順次前・後進切替操作を行うための前・後進切替機構33と、同前・後進切替機構33により切り替えられた動力の主変速を行うための主変速機構34と、同主変速機構34により主変速された動力の副変速を行うための副変速機構35と、同副変速機構35により副変速された動力を左右後車輪9,9に分配して伝達するためのデファレンシャル機構36とを配設している。
【0039】
しかも、上記前・後進切替機構33は、前記駆動軸18に一体成形した分岐伝動ギヤ29に始端部を連動連結している。
【0040】
また、PTO系伝動機構32は、前記駆動軸18に一体成形した分岐伝動ギヤ29に始端部を連動連結する一方、後述するPTO変速部6に終端部を連動連結している。
【0041】
このようにして、エンジン15から駆動軸18に伝達された動力を、分岐伝動ギヤ29を介して走行系伝動機構31とPTO系伝動機構32とに分岐させて伝達するようにしている。
【0042】
そして、ミッションケース30は、図2に示すように、前・後進切替機構33と主変速機構34とを内蔵する主変速ケース37と、副変速機構35を内蔵する副変速ケース38と、デファレンシャル機構36を内蔵するデファレンシャルケース39とに三分割形成しており、前記したクラッチハウジング17の後端縁部に主変速ケース37の前端縁部を連結ボルト(図示せず)により着脱自在に連結し、同主変速ケース37の後端縁部に副変速ケース38の前端縁部を連結ボルト41により着脱自在に連結し、同副変速ケース38の後端縁部にデファレンシャルケース39の前端縁部を連結ボルト42により着脱自在に連結している。
【0043】
また、主変速ケース37は、図3に示すように、中途部に内部支持壁体43を設けて、同内部支持壁体43により主変速ケース37内を前部室44と後部室45とに二分割形成しており、前部室44内に上記前・後進切替機構33を配置する一方、後部室45内に主変速機構34を配置している。
【0044】
前・後進切替機構33は、図3に示すように、前記したクラッチハウジング17の後端縁部に沿わせて形成した支持壁体21と内部支持壁体43との間に、前後方向に伸延する前・後進切替入力軸46を前・後ベアリング47,48を介して回動自在に横架する一方、上記支持壁体21の上部と、上記内部支持壁体43の上部との間に、前後方向に伸延する前・後進切替出力軸49を前・後ベアリング50,51を介して回動自在に横架している。
【0045】
そして、前・後進切替入力軸46は、駆動軸18と同一軸線上に配置しており、同前・後進切替入力軸46には前進用入力ギヤ52と後進用入力ギヤ53とを一体的に取り付けている。
【0046】
また、前・後進切替出力軸49には、前記した分岐伝動ギヤ29に歯合させた分岐入力ギヤ54と、入力した駆動力を前進側ないしは後進側に切り替え可能とした前・後進切替体55とを設けている。
【0047】
しかも、前・後進切替体55は、前・後進切替出力軸49に前進用出力ギヤ56と後進用出力ギヤ57とを隣接させた状態にてそれぞれ回転自在に取り付け、両出力ギヤ56,57間において、前・後進切替出力軸49に前・後進切替受け片58aを一体的に嵌合すると共に、同前・後進切替受片58aの外周面に前・後進切替スライド片58bを軸線方向にスライド自在に嵌合している。
【0048】
このようにして、前・後進切替スライド片58bは、前進用出力ギヤ56に歯合・連結させた前進切替状態と、後進用出力ギヤ57に歯合・連結させた後進切替状態と、いずれの出力ギヤ56,57にも歯合・連結させない中立状態とに切替操作できるようにしている。
【0049】
また、図3及び図4(a)(b)に示すように、主変速ケース37の天井部37aには開口部59を開口し、同開口部59を蓋体60により開閉自在に閉蓋しており、同蓋体60の内面には前後一対の軸支持片61,62を垂設して、両軸支持片61,62間に前後方向に軸線を向けたギヤ支軸63を横架し、同ギヤ支軸63にベアリング64を介して、カウンタギヤ65を回転自在に取り付けている。74は蓋体取付ボルトである。
【0050】
そして、上記カウンタギヤ65は、図3及び図4に示すように、主変速ケース37の開口部59に蓋体60を閉蓋状態に取り付けた状態にて、前記後進用入力ギヤ53と後進用出力ギヤ57の両方に同時に歯合して、後進用出力ギヤ57からカウンタギヤ65を介して後進用入力ギヤ53に後進用の動力が伝達されるようにすると共に、開口部59から蓋体60を取り外した状態では、後進用出力ギヤ57と後進用入力ギヤ53との連結が解除されるようにしている。
【0051】
ここで、前進用出力ギヤ56は、前進用入力ギヤ52に歯合させている。
【0052】
また、図4(a)(c)に示すように、主変速ケース37の右側壁37bには開口部66を開口し、同開口部66にキャップ状のケース体67を着脱自在に取り付けており、運転部5に設けた前・後進切替レバー(図示せず)に前・後進切替機構68の始端部を連動連結する一方、前記した前・後進切替スライド片58bに前・後進切替機構68の終端部を連動連結すると共に、上記ケース体67に終端部を支持させている。75はケース体取付ボルトである。
【0053】
すなわち、前・後進切替機構68の終端部は、ケース体67の側壁67aの上部に、ボス部76を介して左右方向に軸線を向けた支軸69を枢支し、同側壁67aより外側方へ突出させた支軸69の右側端部に、上下方向に伸延する操作アーム70の基端部を取り付ける一方、側壁67aより内側方に突出させた支軸69の左側端部に、上下方向に伸延する作動アーム71の基端部を取り付けている。
【0054】
そして、ケース体67の前・後壁67b,67cの下部間に、前後方向に伸延するフォーク支軸72を横架し、同フォーク支軸72に前・後進切替フォーク73の基部73aを前後方向に摺動自在に嵌合すると共に、同基部73aに前記作動アーム71の先端部を連動連結し、前記した前・後進切替スライド片58bの外周面に前・後進切替フォーク73の先端フォーク部73bを嵌合させている。
【0055】
このようにして、運転部5に設けた前・後進切替レバーを操作することにより、前・後進切替機構68を介して前・後進切替スライド片58bを前進切替状態ないしは後進切替状態となすことができるようにしている。
【0056】
そして、前・後進切替スライド片58bを前進切替状態となした場合には、エンジン15から駆動軸18に伝達された動力は、分岐伝動ギヤ29→分岐入力ギヤ54→前・後進切替出力軸49→前進用出力ギヤ56→前進用入力ギヤ52→前・後進切替入力軸46に伝達されて、同前・後進切替入力軸46を前進側回転、すなわち、正回転させるようにしている。
【0057】
また、前・後進切替スライド片58bを後進切替状態となした場合には、エンジン15から駆動軸18に伝達された動力は、分岐伝動ギヤ29→分岐入力ギヤ54→前・後進切替出力軸49→後進用出力ギヤ57→カウンタギヤ65→後進用入力ギヤ53→前・後進切替入力軸46に伝達されて、同前・後進切替入力軸46を後進側回転、すなわち、逆回転させるようにしている。
【0058】
主変速機構34は、図2に示すように、主変速ケース37の後部室45内に配置しており、前・後進切替入力軸46の後端部と、副変速ケース38内の前部に設けた軸支持壁形成体80との間に、前後方向に伸延する主変速主軸81を回動自在に横架する一方、前記した内部支持壁体43と上記軸支持壁形成体80との間に、前後方向に伸延する主変速副軸82を上記主変速主軸81と平行させて回動自在に横架している。
【0059】
そして、主変速主軸81は、前・後進切替入力軸46の後端中央部に形成した嵌入・支持凹部83に先端部81aを嵌入・支持させる一方、軸支持壁形成体80にベアリング84を介して後部81bを支持させて、前記駆動軸18及び前・後進切替入力軸46と同一直線上に配置している。
【0060】
また、主変速主軸81に複数の主軸側変速ギヤを同軸的に回転自在に取り付けて主軸側変速ギヤ群85を形成すると共に、主変速主軸81に各主軸側ギヤ間において複数の変速体を軸線方向にスライド自在に嵌合して変速体群86を形成して、いずれかの変速体と歯合・連結された主軸側変速ギヤが同変速体を介して主変速主軸81と連動連結されるようにしている。
【0061】
一方、主変速副軸82に複数の副軸側変速ギヤを同軸的に取り付けて副軸側変速ギヤ群87を形成すると共に、各副軸側変速ギヤは、対向する上記主軸側変速ギヤにそれぞれ歯合させており、前・後進切替入力軸46の後端部に一体成形された主軸側変速ギヤ46aに、副軸側変速ギヤ87aを歯合させている。
【0062】
このようにして、前・後進切替入力軸46に伝達された動力を、主軸側変速ギヤ46a→副軸側変速ギヤ87a→主変速副軸82→各副軸側変速ギヤ→各副軸側変速ギヤに歯合している各主軸側変速ギヤに伝達して、いずれかの変速体を介して主変速主軸81に変速した状態にて伝達することができるようにしている。
【0063】
ここで、上記した変速体群86は、図2に示すように、副変速ケース38に取り付けた主変速レバー88に、主変速操作機構89を介して連動連結して、主変速レバー88を操作することにより、主変速操作機構89を介して変速体群86の内の所要の変速体をスライド作動させて複数段の主変速が行えるようにしている。
【0064】
副変速機構35は、図2に示すように、副変速ケース38内に配置しており、同副変速ケース38内の前部まで伸延させた主変速主軸81の後端延設部81cに、遊星ギヤ機構90を介して副変速軸91を連動連結している。
【0065】
ここで、主変速主軸81の後端延設部81cに、遊星ギヤ機構90の一部を構成するサンギヤ92を設ける一方、副変速軸91は、主変速主軸81と同一軸線上に配置すると共に、中途部を副変速ケース38内に設けた軸支持体93にベアリング94を介して支持させ、かつ、後端部を後述するデファレンシャルケース39内に設けた軸支持壁95にベアリング96を介して支持させている。
【0066】
そして、サンギヤ92の外周面と副変速軸91の前端部外周面との間には、筒状のシフトギヤ支持体97を軸線方向にシフト自在にスプライン嵌合し、同シフトギヤ支持体97にシフトフォーク98の先端部を係合させる一方、同シフトフォーク98の基端部に副変速ケース38の上部に取り付けた副変速レバー99を連動連結して、同副変速レバー99を操作することにより、副変速が行えるようにしている。
【0067】
すなわち、主変速主軸81から副変速軸91に直に動力が伝達される副変速と、主変速軸81から遊星ギヤ機構90を介して副変速軸91に動力が伝達される副変速が行えるようにしている。
【0068】
また、副変速ケース38の底部には開口部100を形成して、同開口部100を介して前車輪駆動用動力取出部101を取り付けており、同前車輪駆動用動力取出部101に設けた動力取出軸102と、前記副変速機構35に設けた副変速軸91とを、伝動用ギヤ群103を介して連動連結している。
【0069】
デファレンシャル機構36は、図2に示すように、デファレンシャルケース39内に配設しており、前記した副変速軸91の後端部をデファレンシャルケース39内の前部まで伸延させて、同後端部に出力用ベベルギヤ105を一体成形して、同出力用ベベルギヤ105にデファレンシャル機構36を歯合・連結している。
【0070】
そして、デファレンシャル機構36に各リヤアクスルケース8,8内にそれぞれ設けた後車軸伝動機構(図示せず)を連動連結し、各後車軸伝動機構に後車軸(図示せず)を介して後車輪9,9を取り付けている。
【0071】
また、デファレンシャルケース39は、天井部にメンテナンス用の開口部106を形成して、同開口部106の周縁部に取付支持枠体107を取り付け、同取付支持枠体107の前部に油圧回路体108を取り付け、同油圧回路体108に油圧コントロールバルブ109を取り付ける一方、取付支持枠体107の後部にリフトアーム支軸110を介して左右一対のリフトアーム111,111の基端部を取り付け、各リフトアーム111,111の中途部と後述するPTO変速部6の左右側部との間に、上下方向に伸延するリフトシリンダ112,112を介設し、各リフトシリンダ112,112に油圧パイプ(図示せず)を介して上記油圧回路体108を接続している。
【0072】
[運転部5]
運転部5は、図1に示すように、原動機部2の後方位置でかつクラッチ部3の上方位置にステアリングコラム113を立設し、同ステアリングコラム113の上端部にホイール支軸114を介してステアリングホイール115を取り付け、同ステアリングホイール115の後方位置に運転席116を配置し、同運転席116の側方位置に前記した主変速レバー88と副変速レバー99とを集中配置している。
【0073】
[PTO変速部6]
PTO変速部6は、図5及び図6に示すように、デファレンシャルケース39の後端に形成した開口部120に、PTOケース121を着脱自在に取り付け、同PTOケース121内にPTO変速機構122とPTOクラッチ機構123を配設している。
【0074】
以下に、図5及び図6を参照しながら、〔PTOケース121〕と〔PTO変速機構122〕と〔PTOクラッチ機構123〕の各構成を、この順序で説明する。
【0075】
〔PTOケース121〕
PTOケース121は、図5及び図6に示すように、前部ケース形成体124と中間部ケース形成体125と後部ケース形成体126に三分割形成して、各ケース形成体124,125,126同士を相互に着脱自在に連結しており、前部ケース形成体124と中間部ケース形成体125とをデファレンシャルケース39内に収容状態に配置すると共に、後部ケース形成体126をデファレンシャルケース39から後方へ膨出状態に配置している。
【0076】
そして、後部ケース形成体126の前端周縁部に鍔状の取付片127を一体成形して、同取付片127をデファレンシャルケース39の後端縁部に後方から当接させると共に、前後方向に軸線を向けた取付ボルト128により取り付けている。
【0077】
このようにして、デファレンシャルケース39の後端に形成されている開口部120にPTOケース121を着脱自在に取り付けているため、デファレンシャルケース39からPTOケース121を取り外した状態にて、同PTOケース121内に収容したPTO変速機構122やPTOクラッチ機構123の組立作業やメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0078】
しかも、PTOケース121は、前部ケース形成体124と中間部ケース形成体125をデファレンシャルケース39内に収容状態にして取り付けているため、ミッションケース30の小型化(コンパクト化)を図ることができる。
【0079】
前部ケース形成体124には、入力軸130を受けるための入力軸突出口部131を前後方向に開口させて形成し、同入力軸突出口部131の上方位置に変速軸前部受け部132を形成している。
【0080】
中間部ケース形成体125内にはPTO軸133の前端部を受けるための軸受け片134を設けており、同軸受け片134は中途部に前後方向に開口するPTO軸前部受け部135を形成している。
【0081】
後部ケース形成体126には、PTO軸突出口部138を前後方向に開口させて形成し、同PTO軸突出口部138の上方位置に変速軸後部受け部139を形成している。
【0082】
そして、前部ケース形成体124に形成した入力軸突出口部131と、中間部ケース形成体125に形成したPTO軸前部受け部135と、後部ケース形成体126に形成したPTO軸突出口部138は、前後方向に伸延する同一軸線上にて連通させて形成している。
【0083】
また、前部ケース形成体124に形成した変速軸前部受け部132と後部ケース形成体126に形成した変速軸後部受け部139は、前後方向に対向させて配置している。
【0084】
また、後部ケース形成体126の左右側壁には、図2に示すように、リフトシリンダ取付部としてのリフトシリンダ支軸140,140を外側方へ向けて突設し、各リフトシリンダ支軸140,140に前記リフトシリンダ112,112の下端部を支持させている。
【0085】
〔PTO変速機構122〕
PTO変速機構122は、図5及び図6に示すように、前記したPTOケース121内に、それぞれ前後方向に軸線を向けた入力軸130と変速軸141とPTO軸133とを配設している。
【0086】
すなわち、PTOケース121の前部ケース形成体124に形成した入力軸突出口部131にベアリング142,143を介して入力軸130を回動自在に支持させており、同入力軸130は、先端部144を前方へ突出させる一方、後端部に出力ギヤ145を設けている。
【0087】
そして、前部ケース形成体124に形成した変速軸前部受け部132と、後部ケース形成体126に形成した変速軸後部受け部139との間に、ベアリング146,147を介して変速軸141を回動自在に支持させており、同変速軸141には、前方から後方に向けて順次、大径入力ギヤ148と、一体成形した第2変速ギヤ149及び第1変速ギヤ150とを同軸的に取り付けて、大径入力ギヤ148を前記入力軸130に設けた出力ギヤ145に噛合させている。
【0088】
また、中間部ケース形成体125に形成したPTO軸前部受け部135と、後部ケース形成体126に形成したPTO軸突出口部138との間に、ベアリング151,152を介してPTO軸133を回動自在に支持させている。
【0089】
しかも、PTO軸133には、中途部にシフトギヤ体153を軸線方向にスライドシフト自在にスプライン嵌合すると共に、上記シフトギヤ体153の前方位置と後方位置とにそれぞれ第2入力ギヤ154と第1入力ギヤ155とを回転自在に取り付けており、シフトギヤ体153に第2側シフトギヤ156と第1側シフトギヤ157を設ける一方、第2入力ギヤ154の後面に、上記第2側シフトギヤ156が嵌入されて噛合する第2嵌入噛合ギヤ158を形成すると共に、第1入力ギヤ155の前面に、上記第1側シフトギヤ157が嵌入されて噛合する第1嵌入噛合ギヤ159を形成している。
【0090】
このようにして、シフトギヤ体153を後方にシフトさせて、第1入力ギヤ155の第1嵌入噛合ギヤ159に第1側シフトギヤ157を嵌入・噛合させると、入力軸130→出力ギヤ145→大径入力ギヤ148→後述するPTOクラッチ機構123→一体成形した第2変速ギヤ149及び第1変速ギヤ150→第1入力ギヤ155→第1嵌入噛合ギヤ159→第1側シフトギヤ157→シフトギヤ体153→PTO軸133に第1変速(低速段)された動力が伝達されるようにしている。
【0091】
また、シフトギヤ体153を前方にシフトさせて、第2入力ギヤ154の第2嵌入噛合ギヤ158に第2側シフトギヤ156を嵌入・噛合させると、入力軸130→出力ギヤ145→大径入力ギヤ148→後述するPTOクラッチ機構123→一体成形した第2変速ギヤ149及び第1変速ギヤ150→第2入力ギヤ154→第2嵌入噛合ギヤ158→第2側シフトギヤ156→シフトギヤ体153→PTO軸133に第2変速(高速段)された動力が伝達されるようにしている。
【0092】
さらには、シフトギヤ体153には、図6に示すように、PTO変速操作機構160を連動連結している。
【0093】
すなわち、PTO変速操作機構160は、後部ケース形成体126の右側壁161にボス部162を介して左右方向に軸線を向けた変速操作支軸163を枢支し、右側壁161より外方へ突出させた変速操作支軸163の外側端部にPTO変速操作アーム164の基端部を取り付ける一方、右側壁161より内方へ突出させた変速操作支軸163の内側端部に作動アーム165の基端部を取り付けている。
【0094】
そして、上記作動アーム165の先端部の近傍位置に前後方向に軸線を向けたシフトフォーク支軸166を配置し、同シフトフォーク支軸166にシフトフォーク167の基端部168を前後方向に摺動自在に取り付け、同基端部168に上記作動アーム165の先端部を連結する一方、前記シフトギヤ体153の外周面に形成した係合溝部169にシフトフォーク167の先端フォーク部170を係合させている。
【0095】
また、運転席116の近傍位置に配設したPTO変速レバー(図示せず)に、前記PTO変速操作アーム164の先端部を連動連結機構(図示せず)を介して連動連結して、PTO変速レバーを操作することにより、シフトギヤ体153をシフト作動させて、PTO変速が行えるようにしている。
【0096】
〔PTOクラッチ機構123〕
PTOクラッチ機構123は、図5及び図6に示すように、前記した大径入力ギヤ148の後端面より変速軸141の外周面に沿わせて後方へ延設した筒状の前側ボス体171と、前記した第2変速ギヤ149の前端面より変速軸141の外周面に沿わせて前方へ延設した筒状の後側ボス体172との間に着脱自在に介設して、大径入力ギヤ148と第2変速ギヤ149とを、回転数を同調させながら接続することも、また、切断することもできるようにしている。
【0097】
すなわち、PTOクラッチ機構123は、前側ボス体171の外周面にリング状の支持体173を嵌合して一体的に取り付け、同支持体173の外周縁部に前後方向に細幅リング状の摺動支持片174を設けて、同摺動支持片174の外周面に前後方向に伸延する前側係合溝175を形成する一方、上記摺動支持片174の外周面にリング状のスライド係合体176を嵌合させると共に、同スライド係合体176の内周面に形成した係合突片177を上記前側係合溝175に係合させて、スライド係合体176を前後方向に摺動自在となしている。
【0098】
また、後側ボス体172の外周面に段付き凹部178を形成し、同段付き凹部178の外周面にリング状の係合体179を嵌合して一体的に取り付け、同係合体179の外周面にスライド係合体176の係合突片177が係合する後側係合溝180を形成している。
【0099】
このようにして、スライド係合体176を後方へスライドさせて、同スライド係合体176の係合突片177を前側係合溝175と後側係合溝180の両方に掛け渡し状に係合させることにより、大径入力ギヤ148と第2変速ギヤ149とを連動連結することができるようにしている。
【0100】
従って、かかる状態においては、回転側である大径入力ギヤ148の回転力は、前側ボス体171→支持体173の摺動支持片174に形成した前側係合溝175→スライド係合体176に形成した係合突片177→係合体179に形成した後側係合溝180→後側ボス体172に形成した段付き凹部178→第2変速ギヤ149に伝達されて、同第2変速ギヤ149も一体的に回転される。
【0101】
また、スライド係合体176の内周面後部には、複数のリング状の可動側クラッチ板181の外周縁部を軸線方向に摺動自在に取り付ける一方、段付き凹部178の外周面には、複数のリング状の固定側クラッチ板182を軸線方向に一定の間隔を開けて嵌合状態に取り付け、これらの隣接する固定側クラッチ板182,182の間に、可動側クラッチ板181を一枚ずつ介在させている。
【0102】
このようにして、スライド係合体176を後方へスライドさせた際には、可動側クラッチ板181が固定側クラッチ板182,182に徐々に押圧されて、回転側である大径入力ギヤ148の回転力が、停止側である第2変速ギヤ149に徐々に伝達されて、同第2変速ギヤ149の回転数が大径入力ギヤ148の回転数に同調された状態にてスライド係合体176の係合突片177が係合体179の後側係合溝180に係合されるようにしている。その結果、係合突片177と後側係合溝180との係合が円滑にかつ確実に行われて、異音等の発生を防止することができる。
【0103】
ここで、PTOクラッチ機構123は、PTO変速部6に着脱自在に取り付けているため、PTO変速部6を共用化した状態にて、PTOクラッチ機構123を具備する仕様(図5参照)とPTOクラッチ機構を具備しない仕様(図9参照)とを設定することができる。
【0104】
しかも、PTOクラッチ機構123をPTO変速部6に着脱自在に取り付け、同PTO変速部6をミッション部4に着脱自在に取り付けるようにしているため、組立作業も分解作業も容易に行うことができて、メンテナンス作業を楽に行うことができる。
【0105】
また、スライド係合体176には、図6に示すように、PTOクラッチ操作機構185を連動連結している。
【0106】
すなわち、PTOクラッチ操作機構185は、後部ケース形成体126の左側壁186にボス部187を介して左右方向に軸線を向けたクラッチ操作支軸188を枢支し、左側壁186より外方へ突出させたクラッチ操作支軸188の外側端部にPTOクラッチ操作アーム189の基端部を取り付ける一方、左側壁186より内方へ突出させたクラッチ操作支軸188の内側端部にクラッチ作動アーム190の基端部を取り付けている。
【0107】
そして、上記クラッチ作動アーム190の先端部の近傍位置に前後方向に軸線を向けたスライドフォーク支軸191を配置し、同スライドフォーク支軸191にスライドフォーク192の基端部193を前後方向に摺動自在に嵌合させて取り付け、同基端部193に上記クラッチ作動アーム190の先端部を連結する一方、前記スライド係合体176の外周面に形成した係合突片194にスライドフォーク192の先端フォーク部195を係合させている。
【0108】
しかも、スライドフォーク192の基端部193には、図6に示すように、仮止め体196を設けており、同仮止め体196は、基端部193の内方へ向けて進退自在となした仮止めボール197と、同仮止めボール197を進出方向へ弾性付勢する押圧スプリング198とを具備している。
【0109】
そして、スライドフォーク192の基端部193を嵌合させているスライドフォーク支軸191の外周面には、押圧スプリング198が係合する接続保持用係合溝199と切断保持用係合溝200とを形成している。
【0110】
また、運転席116の近傍位置に配設したPTOクラッチレバー(図示せず)に、前記PTOクラッチ操作アーム189の先端部を連動連結機構(図示せず)を介して連動連結して、PTOクラッチレバーを操作することにより、スライド係合体176をスライド作動させて、クラッチ接続・切断操作が行えるようにしている。
【0111】
この際、クラッチ接続操作時には、スライドフォーク支軸191の接続保持用係合溝199に押圧スプリング198が係合して、クラッチ接続状態が保持されるようにしている。
【0112】
また、クラッチ切断操作時には、スライドフォーク支軸191の切断保持用係合溝200に押圧スプリング198が係合して、クラッチ切断状態が保持されるようにしている。
【0113】
ここで、PTOクラッチレバーは手動操作であり、かかる手動操作により、可動側クラッチ板181と固定側クラッチ板182とを圧接させて、大径入力ギヤ148と第2変速ギヤ149との回転数を微妙に同調させながらクラッチ接続操作することができるため、円滑かつ確実な接続操作と異音等の発生防止を確保することができる。
【0114】
また、前記した入力軸130の先端部144は、図2に示すように、PTO系伝動軸210を介して前記駆動軸18に連動連結してPTO系伝動機構32を構成しており、PTO系伝動軸210は、ミッションケース30内にて前部から後部まで前後方向に軸線を向けて配置している。
【0115】
(PTO系伝動軸210)
PTO系伝動軸210は、図2に示すように、クラッチハウジング17の支持壁体21に設けたベアリング211を介して前端部を枢支する一方、前記した入力軸130の先端部144に後端部を連結用筒体212を介して連動連結している。
【0116】
そして、PTO系伝動軸210の前端部に入力ギヤ213を設けて、同入力ギヤ213を前記駆動軸18に一体成形した分岐伝動ギヤ29に噛合させている。
【0117】
ここで、PTO系伝動軸210の前部には動力取出用ギヤ214を設けて、同動力取出用ギヤ214から主変速ケース37の左側壁に開口した動力取出口部215を通して外部に動力を取り出すことができるようにしている。
【0118】
また、PTO系伝動軸210の後部にはワンウェイクラッチ216を設けている。
【0119】
このようにして、エンジン15から駆動軸18に伝達された動力は、同駆動軸18に一体成形した分岐伝動ギヤ29→入力ギヤ213→PTO系伝動軸210→入力軸130に伝達されるようにしている。
【0120】
図7は、第2実施形態としての駆動軸18を示しており、同駆動軸18は、基本的構造を前記した第1実施形態としての駆動軸18と同じくしているが、前後方向に伸延する内側駆動軸形成体230と、同内側駆動軸形成体230の外周に回動自在に嵌合させた筒状の外側駆動軸形成体231とから内外側二重軸構造となしている点において異なる。
【0121】
そして、内側駆動軸形成体230は、フライホイール19に前端部232を連動連結する一方、後端部233にPTO用分岐伝動ギヤ234を一体成形し、同PTO用分岐伝動ギヤ234にPTO系伝動軸210の前端部に一体成形した入力ギヤ213を歯合させている。
【0122】
また、外側駆動軸形成体231は、クラッチ23に前端部235を連動連結する一方、後端部236に走行用分岐伝動ギヤ237を一体成形し、同走行用分岐伝動ギヤ237に前・後進切替出力軸49に設けた分岐入力ギヤ54を歯合させている。238はベアリングである。
【0123】
ここで、PTO用分岐伝動ギヤ234と走行用分岐伝動ギヤ237は、同軸的にかつ前後方向に近接させてコンパクトに配置している。
【0124】
図8は、第3実施形態としての駆動軸18を示しており、同駆動軸18は、前記した第1実施形態としての駆動軸18と基本的構造を同じくしているが、前半部駆動軸形成体240と後半部駆動軸形成体241とに二分割形成すると共に、前半部駆動軸形成体240の後端部242と後半部駆動軸形成体241の前端部243とを筒状連結体244を介して同一軸線上にて連動連結している点において異なる。
【0125】
そして、前半部駆動軸形成体240の中途部を支持する筒状の支持片25を、クラッチハウジング17の後端縁部に沿わせて形成した支持壁体21を貫通させると共に、後方の主変速ケース37の前部室44内まで筒状に延設して、後端部245にベアリング246を介して後半部駆動軸形成体241の前部を回動自在に支持している。
【0126】
また、上記ベアリング246の直後方に位置する後半部駆動軸形成体241の中途部に分岐伝動ギヤ29を一体的に取り付けて、同分岐伝動ギヤ29にPTO系伝動軸210の前部に一体成形した入力ギヤ213を歯合させている。
【0127】
ここで、入力ギヤ213は、主変速ケース37の左側壁に開口した動力取出口部215の近傍に配置して、同入力ギヤ213から動力取出口部215を通して外部に動力を取り出すことができるようにしている。
【0128】
また、第2実施形態としての駆動軸18は、前・後進切替機構68を装備しない仕様であり、開口部59を閉蓋体247により閉蓋している。
【0129】
従って、前・後進切替機構68を装備する仕様の場合は、第1実施形態ないしは第2実施形態の駆動軸18を装着する一方、前・後進切替機構68を装備しない仕様の場合は、第3実施形態の駆動軸18を装着することにより、仕様の変更を容易に行うことができる。
【0130】
図9は、第2実施形態としての変速軸141を示しており、基本的構造を第1実施形態としての変速軸141と同じくしているが、PTOクラッチ機構123を装備しない仕様である点において異なる。
【0131】
すなわち、変速軸141は、軸本体248と第2変速ギヤ149と第1変速ギヤ150とを一体成形し、軸本体248の前部に大径入力ギヤ148を一体的に取り付けている。
【0132】
従って、PTOクラッチ機構123を装備する仕様の場合は、第1実施形態としての変速軸141を装着する一方、PTOクラッチ機構123を装備しない仕様の場合は、第2実施形態としての変速軸141を装着することにより、仕様の変更を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明に係るトラクタの側面図。
【図2】クラッチ部とミッション部の断面側面説明図。
【図3】クラッチ部の断面側面説明図。
【図4】前・後進切替機構の断面背面説明図(a)と同外観平面図(b)と同外観測面図(c)である。
【図5】PTO変速部の断面側面説明図。
【図6】同PTO変速部の背面断面説明図。
【図7】第2実施形態としての駆動軸の断面側面説明図。
【図8】第3実施形態としての駆動軸の断面側面説明図。
【図9】第2実施形態としての変速軸の断面側面説明図。
【符号の説明】
【0134】
A トラクタ
1 機体フレーム
2 原動機部
3 クラッチ部
4 ミッション部
5 運転部
6 PTO変速部
7 前車輪
8 リヤアクスルケース
9 後車輪
10 フロントアクスルケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッション部にPTO部を着脱自在に取り付けたトラクタにおいて、PTO部内にPTOクラッチ機構を設けたことを特徴とするトラクタ。
【請求項2】
PTOクラッチ機構は、PTO部に着脱自在に取り付けたことを特徴とする請求項1記載のトラクタ。
【請求項3】
PTOクラッチ機構に連動機構を介して手動操作具を連動連結し、同手動操作具を運転席の近傍に配置したことを特徴とする請求項1又は2記載のトラクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−15520(P2007−15520A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198083(P2005−198083)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】