ドア
【課題】蝶番がパネル体から食み出ることなく、そして汎用性があり、しかも、取付けの作業性に優れており、さらに、2枚のパネル体が指など巻き込まず、また、隙間を生じないようにしたドアを提供する。
【解決手段】このドアは、一定の間隔を空けて配置される一対の転動体22,22と、該各転動体22,22の転動によって往復動する可動駒21と、前記一対の転動部22a,22aを転動自在に連結する連結体24とが備えられている蝶番20によってパネル体10である小扉11と大扉12とが連結されている。転動体22は、フランジ22fと支持部22gとをT字形に一体成形したもので、支持部22gの先端には可動駒21の側面21aと接合する転動部22aが設けられ、フランジ22fには扉11,12に固定される膨出部22dが設けられている。両扉11,12の間は、蝶番20に連結された遮蔽体40によって塞がれている。
【解決手段】このドアは、一定の間隔を空けて配置される一対の転動体22,22と、該各転動体22,22の転動によって往復動する可動駒21と、前記一対の転動部22a,22aを転動自在に連結する連結体24とが備えられている蝶番20によってパネル体10である小扉11と大扉12とが連結されている。転動体22は、フランジ22fと支持部22gとをT字形に一体成形したもので、支持部22gの先端には可動駒21の側面21aと接合する転動部22aが設けられ、フランジ22fには扉11,12に固定される膨出部22dが設けられている。両扉11,12の間は、蝶番20に連結された遮蔽体40によって塞がれている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚のパネル体が蝶番によって連結されているドアに関し、詳しくは、パネル体が両方向に折れ曲がる折戸のようなドア、または、一方のパネル体が固定され、他方のパネル体が固定されたパネル体の表裏両面に重なるように回転する両開きのドアに関する。
【背景技術】
【0002】
折戸のようなドアは、2枚の扉が蝶番に連結されることによって開閉する。例えば、特許文献1に開示されたドアは、図12ないし図14に示すように、2枚の扉100,100が突き合う側端面に蝶番110,110が取り付けられている。各扉100は、矩形板状の中実なパネル体101と、このパネル体101の一端(壁)側に固定されたフレーム102とを有し、他端(内)側に支柱体111が固定されている。
【0003】
このような扉100に取り付けられる蝶番110は、前記支柱体111と、図13に示すように、この支柱体111それぞれの上端および下端に固着された平歯車112と、付き合わされて対向する一対の平歯車112,112同士を噛合させる連結板113とを備えている。
【0004】
また、各支柱体111がパネル体101と接合する取付け面には、図14に示すように、2本の突起条111a,111aが鉛直方向に突設され、パネル体101が支柱体111と接合する取付け面には、2本の溝101a,101aが形成されている。この2本の突起条111a,111aと2本の溝101a,101aとが嵌合し、さらに支柱体111からパネル体101にビス103がねじ込まれることにより、両者111,101が固定される。こうすることにより、パネル体101が木製で湿気などによって収縮しても、各平歯車112が捩れることなくスムーズに噛合するようにされている。
【0005】
【特許文献1】特許第2728642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された蝶番110は、開扉したときに、2枚のパネル体101が完全に重なり合うようにするため、平歯車112の外径がパネル体101の板厚よりも大きく、歯が食み出ている。しかし、平歯車112の歯がパネル体101から食み出ることにより、塵埃などが一対の平歯車112,112の間に入り、扉100,100がスムーズに開閉できなくなることがある。また、平歯車112は、耐久性に優れているとはいえず、折戸のように重量のある扉100,100が長期間開閉されていると、疲労し、破壊することもある。
【0007】
さらに、支柱体111とパネル体101とには、2本の突起条111a,111aと2本の溝101a,101aとが形成されている。しかし、これら111a,101aを形成する作業が面倒であるだけでなく、両者111a,101aを嵌合しなければならないなど容易に取り付けることができない。
【0008】
そして、パネル体101に固定されている支柱体111は、半円柱形状に形成されて向き合っているため、この支柱体111に指などが触れられていると、開扉するときに、指などが一対の支柱体111,111間に巻き込まれ、怪我をする虞がある。また、対向している支柱体111,111には、隙間が生じているため、このドアをトイレやシャワー室、更衣室などに使用することは適切でない。
【0009】
そこで、本発明は、蝶番がパネル体から食み出ることなく、そして耐久性や取付け作業性に優れ、さらに、2枚のパネル体が指などを巻き込まず、また、2枚のパネル体間に隙間が生じないようにしたドアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るドアは、一定の間隔をあけて配置される一対の転動体と、該一対の転動体の転動によって往復動する可動駒と、前記一対の転動体を転動自在に連結する連結体とが備えられている蝶番によって2枚のパネル体が連結されているドアであって、前記各パネル体の対向側端面が一定の間隔を空けて各転動体に固定され、前記各パネル体の間隔を塞ぐ遮蔽体が前記蝶番に連結されていることを特徴としている。
【0011】
このドアによれば、一定の間隔を空けられた2枚のパネル体の対向側端面が、蝶番に備えられた各転動体に固定されていることにより、2枚のパネル体は折戸のようなドア、または、一方のパネル体が壁、他方のパネル体が回転する扉のような両開きのドアとして使用される。このドアが折戸として使用される場合において、各パネル体の一方の面同士が重なり合って開扉しているときは、一対の転動体が可動駒の一端側に位置しており、各パネル体が蝶番を挟んで一直線に並んで閉扉しているときは、一対の転動体が可動駒の中間に位置しており、各パネル体の他方の面同士が重なり合って前記と反対方向に開扉しているときは、一対の転動体が可動駒の他端側に位置している。換言すれば、パネル体が開閉することによって、可動駒が一対の転動体間を移動する。
【0012】
そして、一方のパネル体が壁のように使用される場合においては、この壁側のパネル体を固定している転動体上を可動駒が公転し、この可動駒上を他方の転動体が公転することにより、他方のパネル体が開閉される。したがって、この場合は、他方の転動体およびパネル体が可動駒を介して、固定されている一方の転動体およびパネル体を中心に360°公転する。
【0013】
このように、転動体が可動駒上を揺動することによって、パネル体が開閉されるが、各パネル体の間は、蝶番に支持された遮蔽体によって開閉のいずれの状態であっても塞がれて隙間が生じず、しかも、この遮蔽体が回転しないことにより、指などがパネル体間に巻き込まれることがないようにされている。
【0014】
また、前記本発明に係るドアにおいて、前記パネル体は、対向側端面が樋形状に形成され、前記遮蔽体は、各パネル体の対向面に嵌る一対の円筒体または円柱体を側面で接合したものであることが好ましい。
【0015】
このドアによれば、パネル体の対向側端面が樋形状に形成され、遮蔽体がパネル体の対向側端面に嵌る一対の円筒体または円柱体を側面で接合したものとされ、この接合している部分が括れていることにより、パネル体の対向側端面の各端縁がこの円筒体または円柱体の接合している部分に食い込んで開扉される。なお、一対の円筒体または円柱体の側面の接合は、溶接などによって一体化されていてもよいし、分離可能に当接しているだけでもよい。
【0016】
また、前記本発明に係るドアにおいて、前記蝶番は、前記連結体の両端部が前記可動駒の両側面から突出して転動体と重なり、該転動体の回転中心から両連結体の両端部に連通孔が形成され、前記遮蔽体は、パネル体の回転中心の位置に軸が突設され、前記遮蔽体の軸が前記連結体の両端部および転動体の連通孔に挿入され、前記蝶番と遮蔽体とが連結されていることが好ましい。
【0017】
このドアによれば、蝶番の転動体から両連結体の両端部に形成された連通孔に、遮蔽体に突設された軸が挿入されることにより、蝶番と遮蔽体とが安定した状態で連結される。そして、蝶番の転動体にパネル体が固定されていることから、パネル体は、軸を回転中心として開閉する。
【0018】
また、前記本発明に係るドアにおいて、開扉したパネル体を自動的に閉扉させるためのバネが前記転動体および/または可動駒と前記連結体との間に備えられていることが好ましい。
【0019】
このドアによれば、開扉したパネル体を自動的に閉扉させるためのバネが転動体および/または可動体との間に備えられていることにより、外力が加えられ、開扉すると、バネが捩られ、圧縮され、または引っ張られるが、外力が加えられなくなることにより、バネの復元力によって自動的に閉扉する。なお、バネは、捩りバネ、圧縮バネあるいは引張りバネなど種類を限定するものではない。
【0020】
また、前記本発明に係るドアにおいて、前記可動駒の両側面には、ラックが形成され、かつ、前記一対の転動体には、該ラックと噛合するピニオンが形成されてなることが好ましい。
【0021】
このドアによれば、可動駒に形成されたラックと転動体に形成されたピニオンとが噛合することにより、転動体は可動駒上を滑ることなく転動し、また、可動駒は転動体間を滑ることなく往復動して、パネル体が開閉する。
【0022】
また、前記本発明に係るドアにおいて、前記可動駒と連結体の連結板との各接合面には、スライド自在な嵌合部が設けられてなることが好ましい。
【0023】
このドアによれば、可動駒と連結体の連結板の各接合面に設けられた嵌合部が嵌合することにより、可動駒がこの嵌合部に案内されながら連結体間を相対的に移動するだけでなく、一方の転動体から可動駒に加えられる荷重は、一旦、嵌合部に加えられ、嵌合部が緩衝材となり、他方の転動体には小さな荷重が加えられる。このため、転動体の外周面にピニオンが形成されていても、ピニオンには大きな衝撃力が加えられず、破損しないようにすることができる。なお、嵌合部は、1本または複数本の突条と溝とによって形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るドアによれば、2枚のパネル体を連結する蝶番が一対の転動体と可動駒と連結体とを備えたものとされることにより、汎用性を有するものとすることができる。また、この蝶番の転動体とパネル体とを容易に連結することができる。したがって、この蝶番を備えたドアのコストダウンを図ることができる。
【0025】
そして、各パネル体の間隔が前記蝶番に支持された遮蔽体によって塞がれるため、ドアの開閉に際して、各パネル体の間に指などが巻き込まれることがなく、安全性を向上させることができる。さらに、遮蔽体によって各パネル体の間に隙間が生じないため、このドアは、トイレや、シャワー室、更衣室などでも使用することができ、用途を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明に係るドアの実施形態について図1から図11を参照しながら説明する。このドアは、図1に示すように、一定の間隔が空けられた2枚の扉11,12が蝶番20によって連結され、そして、2枚の扉11,12間が遮蔽体40によって塞がれた折戸であり、鉛直姿勢に立設された2本の縦枠1,1と、この縦枠1,1の上端部に水平姿勢に架け渡された上枠2で囲まれた枠内を開閉する。上枠2の下面には、吊りレール3が固定されている。
【0027】
扉11,12は、開閉しやすいように、幅の比が1:2とされている。ただし、使用状況に応じて、扉11,12の幅の比は1:1であってもよい。いずれにしても、各扉11,12は、図4に示すように、1枚の板状のパネル体10によって構成され、対向側端面10aが樋形状に成形され、上下両端部の2か所(上端部のみ図示する。)に蝶番20が取り付けられている。この蝶番20は、必要に応じて中間部にも取り付けられる。また、蝶番20は、図示したような端縁ではなく、端縁から内寄りに取り付けられてもよい。
【0028】
そして、遮蔽体40は、扉11,12の樋形状の対向側端面10a,10aに嵌る一対の円筒体または円柱体41,41を側面で接合したもので、平面視が8字形状に形成されている。一対の円筒体または円柱体41,41は、溶接などによって一体化されていてもよいし、分離可能に当接しているだけでもよい。いずれにしても、円柱体41,41が接合した部分は、括れた形状となっている。さらに、各円柱体41,41の端面には、蝶番20に連結されるようにするための軸42,42が各扉11,12の回転中心の位置に突設され、円環状に突出した嵌合部43,43が外周に設けられている。
【0029】
そして、図1に示すように、幅の狭い扉(以下、「小扉」という。)11の基端側は、軸受4,4によって一方の縦枠1に揺動自在に取り付けられている。また、幅の広い扉(以下、「大扉」という。)12は、前記吊りレール3に吊り下げられる。そのため、大扉12の上端面のほぼ中心に吊り車14が取り付けられている。吊り車14には、大扉12の上端面に固定された軸14aと、この軸14aの上端に回動自在に取り付けられたローラ14bが備えられている。
【0030】
また、大扉12には、ハンドル15が取り付けられている。そして、このハンドル15が押されまたは引かれると、吊り車14の軸14aが回転軸となって、図2または図3に示すように、大扉12が平面視で傾きながら小扉11を押すように移動し、小扉11を押すことにより、小扉11が大扉12と同じ側に平面視で傾く。完全に開扉されると、一方の縦枠1側で大扉12と小扉11とが重なり合った状態となる。
【0031】
両扉11,12がこのように開閉するようにするため、両扉11,12に取り付けられた蝶番20は、図4および図5に示すように、可動駒21、転動体22、そして連結体24を備えている。
【0032】
可動駒21は、両側面21a,21aおよび両相対面21b,21b(図面において上面と下面)が平行な直方体形状または立方体形状、または図示しないが、両側面21a,21aがハ字形状で両相対面21b,21bが平行な台形状とされている。また、両側面21a,21aにはラックが形成されている。
【0033】
そして、転動体22は、前記可動駒21の両側に配置される一対で構成されている。各転動体22は、フランジ22fと支持部22gとをT字形に一体成形したもので、支持部22gの先端に、前記可動駒21の各側面21a上を回転しながら両方向に移動する半円筒状の転動部22aが設けられている。
【0034】
フランジ22fの支持部22gを突設していない側の面には、樋形状にされた扉11,12の対向側端面10aに接合するほぼ半円形の膨出部22h,22hが上下に分離して設けられている。各膨出部22hには、パネル体10を固定するための小孔22e,22e…が形成され、ネジ30によって転動体22が扉11,12に固定される。
【0035】
そして、各転動部22aの外周面には、前記可動駒21の側面に形成されたラックと噛合するピニオンが形成され、各転動部22aの回転中心には連通孔22hが形成されている。なお、可動駒21が台形状に形成されているときは、転動部22aは、かさ歯車のように円錐台形状に形成される。
【0036】
そして、連結体24は、前記転動部22aを転動自在に連結するもので、中間部が可動駒21の両相対面21b,21bに当接し、両端部が可動駒21の両側面21a,21aから突出する一対の8字形状の連結板24a,24aを備えている。連結板24a,24aの中間部は、遮蔽体40の端面形状と同じく括れており、中立位置の可動駒21の両端が露出している。連結板24a,24aの両端部は、転動体22の膨出部22hの周縁がわずかに食み出るようにフランジ部22fと重なり合っている。
【0037】
そして、連結板24aの両端部には、転動体22の連通孔22hと連通する連通孔24hが形成されている。この両連通孔22h,24hには、前記遮蔽体40に突設された軸42が挿入され、両連結板24a,24aと転動体22とが連結される。
【0038】
また、遮蔽体40と接合する側の連結板24aには、遮蔽体40の嵌合部43,43に嵌入する円環状の嵌合部24b,24bが設けられている。すなわち、連結板24aに設けられた嵌合部24b,24bが遮蔽体40の嵌合部43,43に嵌入することによっても、連結板24aと遮蔽体40とが連結される。
【0039】
そして、可動駒21の相対面21bと連結体24の連結板24aとの各接合面には、スライド自在な嵌合部23が設けられている。この嵌合部23は、例えば、可動駒21の各相対面21bに形成された突条23aと、この突条23aを嵌入するように連結板24aに形成された溝23bとによって構成されている。逆に、可動駒21の各相対面21bに溝23bが形成され、連結体24の連結板24aに突条23aが形成されてもよい。いずれにしても、突条23aと溝23bは、可動駒21の両相対面21b,21bの中心軸または偏心して可動駒21の移動方向に1本または複数本形成される。
【0040】
そして、前記可動駒21および転動体22と連結板24aとの間には、開扉した扉11,12を自動的に閉扉させるためのバネ25が備えられている。そのため、連結体24には、バネ25を収納するための収納部24dが設けられている。収納部24dは、連結板24aの内面に突設された突出部24eによって環状に設けられている。したがって、バネ25は、捩りバネが使用される。捩りバネの各端部は、転動体22のフランジ部22fと連結板24aの各端部に形成された小孔22k,24k内に挿入され、動きが規制されている。
【0041】
ただし、図示しないが、収納部24dは、可動駒21の相対面21b,21bとのみ対向するように直線状に設け、あるいは、転動体22とのみ対向するようにC字形に設け、この収納部24d内に圧縮バネまたは引張りバネのようなバネを収納してもよい。このバネ25は、各収容部24dに直線状、あるいは円弧状直列に片側2本ずつ収納される。したがって、この場合のバネ25は、片方の連結体24の収納部24dで合計4本、両方の連結体24,24の収納部24d,24dで合計8本によって構成される。また、この場合において、各圧縮バネ25,25の間には、可動駒21の相対面21b,21bあるいは、転動体22から突出した突片(図示せず)によって仕切られ、一方のバネのみ圧縮するようにされている。
【0042】
このように構成された蝶番20は、各転動体22,22が可動駒21を支点とし、直線状に並んだ状態から斜交いの向きになった状態を経由して、対峙した状態とに向きが変えられる。ただし、蝶番20はバネ25が備えられていることによって、転動体22は、力が加えられることによって向きが変えられ、力が加えられなくなることによって元の直線状に並んだ状態に自動的に戻る。
【0043】
ここで、このような蝶番20によって小扉11と大扉12とを連結した折戸のようなドアについて図6ないし図11を参照しながら説明する。前記のように、各扉11,12の樋形状に形成された対向側端面10aに、蝶番20の転動体22に設けられた膨出部22hがネジ30によって固定され、さらに、遮蔽体40の端面に突設された軸42,42が蝶番20の両連結板24a,24aの連通孔24h,24hと転動部22aの連通孔22hとに挿通され、かつ、遮蔽体40の嵌合部43と蝶番20の連結体24の一方の連結板24aに設けられた嵌合部24bとが連結されることにより、遮蔽体40が蝶番20に連結され、両扉11,12間を塞ぐ状態とされている。
【0044】
そして、図1および図2の実線に示すように、両扉11,12が閉扉しているときは、図6および図7に示すように、一対の転動体22,22と可動駒21とが1列に並んだ状態となっている。また、各転動体22,22に設けられた転動部22a,22aは、可動駒21の各側面21a,21aの中心に位置している。このとき、両扉11,12間は、遮蔽体40によって塞がれているため、ドアの外側から内側が覗かれることはなく、また、臭いなどが漏出することがない。
【0045】
そして、開扉するため、大扉12に取り付けられたハンドル15が押されると、図2の一点鎖線、図8および図9に示すように、大扉12が吊り車14の軸14aを回転軸として図面において時計方向に傾きつつ、一方の縦枠1の方へ移動する。このとき、大扉12を固定した一方の転動体22の転動部22aが可動駒21の一方の側面21a上を中心から一端側へ転動し、可動駒21が移動する。
【0046】
可動駒21が移動することにより、他方の転動体22の転動部22aが可動駒21の他方の側面21a上を中心から一端側へ転動する。すると、この他方の転動体22が図面において反時計方向に傾き、小扉11が一方の縦枠1に取り付けられた軸受4,4を回転軸として図面において反時計方向に傾く。
【0047】
このとき、両扉11,12の対向側端面10a,10aの各端縁が遮蔽体40の括れている中間部分および連結体24の括れている中間部分内に食い込むようになる。また、バネ25は、バネ力に抗して圧縮される。この開扉している最中において、両扉11,12間は、遮蔽体40によって塞がれているため、指などが巻き込まれることがない。
【0048】
このようにして、一対の転動体22,22に固定された大扉12と小扉11は、図2の一点鎖線、図8および図9に示すように、屈曲し、一方の縦枠1側に近寄る。さらに、ハンドル15が押されると、図2の二点鎖線、図10および図11に示すように、大扉12と小扉11とが重ね合わされ、完全に開扉される。
【0049】
そして、ハンドル15が押されなくなると、圧縮されたバネ25が元の状態になろうとする復元力により、大扉12を固定した一方の転動体22の転動部22aが可動駒21の一方の側面21a上を一端側から中心へ転動する。同時に、小扉11を固定した他方の転動体22の転動部22aが可動駒21の他方の側面21a上を一端側から中心へ転動する。このようにして、一対の転動体22,22に固定された大扉12と小扉11は、図2の一点鎖線で示したように屈曲した状態から図2の実線で示したような直線の状態となって閉扉される。
【0050】
この一連の動作において、可動駒21の側面21aに形成されたラックと他方の転動体22の転動部22aの外周面に形成されたピニオンとが噛合していることから、この転動部22aは、可動駒21上を滑ることなく転動し、両扉11,12はスムーズに開閉される。
【0051】
加えて、一方の転動体22の転動部22aから可動駒21に加えられる荷重は、嵌合部23が緩衝材となり、小さくされて他方の転動体22へ加えられる。すなわち、可動駒21の相対面21b,21bに形成された突条23a,23aが連結体24の連結板24a,24aに形成された溝24c,24cに嵌入していることから、一方の転動体22からの荷重が連結体24にも加えられ、この荷重が小さくされて他方の転動体22の転動部22aに加えられる。よって、ドアが長期間、開閉されても、ラックやピニオンは破損することがない。
【0052】
また、このドアは、ハンドル15を引くことによって、前記と反対方向にも開扉することができる。すなわち、ハンドル15を引くと、図3の一点鎖線に示すように、大扉12が吊り車14の軸を回転軸として図面において反時計方向に傾きつつ、一方の縦枠1の方へ移動する。このとき、大扉12を固定した一方の転動体22の一方の転動部22aが可動駒21の一方の側面21a上を中心から他端側へ転動し、可動駒21が移動する。
【0053】
可動駒21が移動することにより、他方の転動体22の転動部22aが可動駒21の他方の面上を中心から他端側へ転動する。すると、図6および図7において、この他方の転動部22aを設けた他方の転動体22が、時計方向に傾き、小扉11が一方の縦枠1に取り付けられた軸受4,4を回転軸として図面において時計方向に傾く。
【0054】
さらにハンドル15が引かれると、一対の転動体22,22に固定された大扉12と小扉11は、図3の二点鎖線に示すように重ね合わされた状態となって開扉される。そして、ハンドル15を押すことによって、蝶番20が前記と逆に動き、閉扉することができる。
【0055】
この反対方向への開扉に際しても、両扉11,12間は、遮蔽体40によって塞がれた状態が継続され、指などが巻き込まれることがない。また、ハンドル15が引かれなくなることにより、バネ25のバネ力でもって、自動的に閉扉する。
【0056】
このように、この実施形態におけるドアは、両扉11,12が遮蔽体40によって完全に閉扉された状態から両方向に開閉することができる。しかも、大扉12と小扉11とは完全に重なり合った状態とすることができる。したがって、このドアが例えば病院のトイレで採用されると、車椅子の使用者がトイレ内で倒れても救出することができる。
【0057】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定することなく、特許請求の範囲に記載された発明特定事項の範囲内において種々変更することができる。例えば、蝶番20は、可動駒21の両側面21aと転動部22aの外周面をゴムや粗面その他の摩擦係数の大きな材質とすることにより、可動駒21の両面にラックを形成せず、転動部22aの外周面にラックを形成しないようにしてもよい。また、嵌合部23は、使用状況に応じて設けなくてもよい。
【0058】
そして、蝶番20は、バネ25を備えることなく、手動によって閉扉するようにしてもよい。さらに、蝶番20の連結体24の軸42,42は、遮蔽体40に突設されたものではなく、両端部が回動軸を貫通するコ字形のシャフトなどによって構成し、このシャフトと軸42,42とが直列に連結されてもよい。さらに、蝶番20は、フランジ22fと支持部22gとをT字形に一体成形したものではなく、例えば、扉11,12の対向側端面10aに接合する半円柱状の膨出部22hを有していれば、五角形状のフレームによって構成してもよい。
【0059】
また、ドアは、2枚の扉11,12によって構成される折戸に限らず、両開きの1枚の扉であってもよい。この場合は、背景技術で説明したフレーム102がパネル体10に該当する。そして、遮蔽体40は、一対の円筒体または円柱体41,41を側面で接合したものに限らず、一対のパネル体10,10の樋形状の対向側端面10a,10aに嵌る一対の円弧形または半円柱体とこれらを連結する帯状板とによって構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るドアは、住宅や店舗などの玄関、風呂場やトイレなどの出入口、電話ボックス、ガレージなどに有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るドアの一実施形態を示す一部断面斜視図である。
【図2】本発明に係るドアの一実施形態を示す一部断面平面図である。
【図3】本発明に係るドアの一実施形態を示す一部断面平面図である。
【図4】本発明に係るドアの一実施形態を示す分解斜視図である。
【図5】本発明に係るドアを構成している蝶番の一実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るドアの一実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【図7】本発明に係るドアの一実施形態を示す要部拡大平面図である。
【図8】本発明に係るドアの一実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【図9】本発明に係るドアの一実施形態を示す要部拡大平面図である。
【図10】本発明に係るドアの一実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【図11】本発明に係るドアの一実施形態を示す要部拡大平面図である。
【図12】従来のドアを含む正面図である。
【図13】従来の蝶番を含むドアの一部断面平面である。
【図14】従来のドアの断面平面である。
【符号の説明】
【0062】
10……パネル体
10a…対向側端面
11……小扉(パネル体)
12……大扉(パネル体)
20……蝶番
21……可動駒
21a…側面
22……転動体
23……嵌合部
24……連結体
40……遮蔽体
41……円筒体または円柱体
42……軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚のパネル体が蝶番によって連結されているドアに関し、詳しくは、パネル体が両方向に折れ曲がる折戸のようなドア、または、一方のパネル体が固定され、他方のパネル体が固定されたパネル体の表裏両面に重なるように回転する両開きのドアに関する。
【背景技術】
【0002】
折戸のようなドアは、2枚の扉が蝶番に連結されることによって開閉する。例えば、特許文献1に開示されたドアは、図12ないし図14に示すように、2枚の扉100,100が突き合う側端面に蝶番110,110が取り付けられている。各扉100は、矩形板状の中実なパネル体101と、このパネル体101の一端(壁)側に固定されたフレーム102とを有し、他端(内)側に支柱体111が固定されている。
【0003】
このような扉100に取り付けられる蝶番110は、前記支柱体111と、図13に示すように、この支柱体111それぞれの上端および下端に固着された平歯車112と、付き合わされて対向する一対の平歯車112,112同士を噛合させる連結板113とを備えている。
【0004】
また、各支柱体111がパネル体101と接合する取付け面には、図14に示すように、2本の突起条111a,111aが鉛直方向に突設され、パネル体101が支柱体111と接合する取付け面には、2本の溝101a,101aが形成されている。この2本の突起条111a,111aと2本の溝101a,101aとが嵌合し、さらに支柱体111からパネル体101にビス103がねじ込まれることにより、両者111,101が固定される。こうすることにより、パネル体101が木製で湿気などによって収縮しても、各平歯車112が捩れることなくスムーズに噛合するようにされている。
【0005】
【特許文献1】特許第2728642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された蝶番110は、開扉したときに、2枚のパネル体101が完全に重なり合うようにするため、平歯車112の外径がパネル体101の板厚よりも大きく、歯が食み出ている。しかし、平歯車112の歯がパネル体101から食み出ることにより、塵埃などが一対の平歯車112,112の間に入り、扉100,100がスムーズに開閉できなくなることがある。また、平歯車112は、耐久性に優れているとはいえず、折戸のように重量のある扉100,100が長期間開閉されていると、疲労し、破壊することもある。
【0007】
さらに、支柱体111とパネル体101とには、2本の突起条111a,111aと2本の溝101a,101aとが形成されている。しかし、これら111a,101aを形成する作業が面倒であるだけでなく、両者111a,101aを嵌合しなければならないなど容易に取り付けることができない。
【0008】
そして、パネル体101に固定されている支柱体111は、半円柱形状に形成されて向き合っているため、この支柱体111に指などが触れられていると、開扉するときに、指などが一対の支柱体111,111間に巻き込まれ、怪我をする虞がある。また、対向している支柱体111,111には、隙間が生じているため、このドアをトイレやシャワー室、更衣室などに使用することは適切でない。
【0009】
そこで、本発明は、蝶番がパネル体から食み出ることなく、そして耐久性や取付け作業性に優れ、さらに、2枚のパネル体が指などを巻き込まず、また、2枚のパネル体間に隙間が生じないようにしたドアを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るドアは、一定の間隔をあけて配置される一対の転動体と、該一対の転動体の転動によって往復動する可動駒と、前記一対の転動体を転動自在に連結する連結体とが備えられている蝶番によって2枚のパネル体が連結されているドアであって、前記各パネル体の対向側端面が一定の間隔を空けて各転動体に固定され、前記各パネル体の間隔を塞ぐ遮蔽体が前記蝶番に連結されていることを特徴としている。
【0011】
このドアによれば、一定の間隔を空けられた2枚のパネル体の対向側端面が、蝶番に備えられた各転動体に固定されていることにより、2枚のパネル体は折戸のようなドア、または、一方のパネル体が壁、他方のパネル体が回転する扉のような両開きのドアとして使用される。このドアが折戸として使用される場合において、各パネル体の一方の面同士が重なり合って開扉しているときは、一対の転動体が可動駒の一端側に位置しており、各パネル体が蝶番を挟んで一直線に並んで閉扉しているときは、一対の転動体が可動駒の中間に位置しており、各パネル体の他方の面同士が重なり合って前記と反対方向に開扉しているときは、一対の転動体が可動駒の他端側に位置している。換言すれば、パネル体が開閉することによって、可動駒が一対の転動体間を移動する。
【0012】
そして、一方のパネル体が壁のように使用される場合においては、この壁側のパネル体を固定している転動体上を可動駒が公転し、この可動駒上を他方の転動体が公転することにより、他方のパネル体が開閉される。したがって、この場合は、他方の転動体およびパネル体が可動駒を介して、固定されている一方の転動体およびパネル体を中心に360°公転する。
【0013】
このように、転動体が可動駒上を揺動することによって、パネル体が開閉されるが、各パネル体の間は、蝶番に支持された遮蔽体によって開閉のいずれの状態であっても塞がれて隙間が生じず、しかも、この遮蔽体が回転しないことにより、指などがパネル体間に巻き込まれることがないようにされている。
【0014】
また、前記本発明に係るドアにおいて、前記パネル体は、対向側端面が樋形状に形成され、前記遮蔽体は、各パネル体の対向面に嵌る一対の円筒体または円柱体を側面で接合したものであることが好ましい。
【0015】
このドアによれば、パネル体の対向側端面が樋形状に形成され、遮蔽体がパネル体の対向側端面に嵌る一対の円筒体または円柱体を側面で接合したものとされ、この接合している部分が括れていることにより、パネル体の対向側端面の各端縁がこの円筒体または円柱体の接合している部分に食い込んで開扉される。なお、一対の円筒体または円柱体の側面の接合は、溶接などによって一体化されていてもよいし、分離可能に当接しているだけでもよい。
【0016】
また、前記本発明に係るドアにおいて、前記蝶番は、前記連結体の両端部が前記可動駒の両側面から突出して転動体と重なり、該転動体の回転中心から両連結体の両端部に連通孔が形成され、前記遮蔽体は、パネル体の回転中心の位置に軸が突設され、前記遮蔽体の軸が前記連結体の両端部および転動体の連通孔に挿入され、前記蝶番と遮蔽体とが連結されていることが好ましい。
【0017】
このドアによれば、蝶番の転動体から両連結体の両端部に形成された連通孔に、遮蔽体に突設された軸が挿入されることにより、蝶番と遮蔽体とが安定した状態で連結される。そして、蝶番の転動体にパネル体が固定されていることから、パネル体は、軸を回転中心として開閉する。
【0018】
また、前記本発明に係るドアにおいて、開扉したパネル体を自動的に閉扉させるためのバネが前記転動体および/または可動駒と前記連結体との間に備えられていることが好ましい。
【0019】
このドアによれば、開扉したパネル体を自動的に閉扉させるためのバネが転動体および/または可動体との間に備えられていることにより、外力が加えられ、開扉すると、バネが捩られ、圧縮され、または引っ張られるが、外力が加えられなくなることにより、バネの復元力によって自動的に閉扉する。なお、バネは、捩りバネ、圧縮バネあるいは引張りバネなど種類を限定するものではない。
【0020】
また、前記本発明に係るドアにおいて、前記可動駒の両側面には、ラックが形成され、かつ、前記一対の転動体には、該ラックと噛合するピニオンが形成されてなることが好ましい。
【0021】
このドアによれば、可動駒に形成されたラックと転動体に形成されたピニオンとが噛合することにより、転動体は可動駒上を滑ることなく転動し、また、可動駒は転動体間を滑ることなく往復動して、パネル体が開閉する。
【0022】
また、前記本発明に係るドアにおいて、前記可動駒と連結体の連結板との各接合面には、スライド自在な嵌合部が設けられてなることが好ましい。
【0023】
このドアによれば、可動駒と連結体の連結板の各接合面に設けられた嵌合部が嵌合することにより、可動駒がこの嵌合部に案内されながら連結体間を相対的に移動するだけでなく、一方の転動体から可動駒に加えられる荷重は、一旦、嵌合部に加えられ、嵌合部が緩衝材となり、他方の転動体には小さな荷重が加えられる。このため、転動体の外周面にピニオンが形成されていても、ピニオンには大きな衝撃力が加えられず、破損しないようにすることができる。なお、嵌合部は、1本または複数本の突条と溝とによって形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るドアによれば、2枚のパネル体を連結する蝶番が一対の転動体と可動駒と連結体とを備えたものとされることにより、汎用性を有するものとすることができる。また、この蝶番の転動体とパネル体とを容易に連結することができる。したがって、この蝶番を備えたドアのコストダウンを図ることができる。
【0025】
そして、各パネル体の間隔が前記蝶番に支持された遮蔽体によって塞がれるため、ドアの開閉に際して、各パネル体の間に指などが巻き込まれることがなく、安全性を向上させることができる。さらに、遮蔽体によって各パネル体の間に隙間が生じないため、このドアは、トイレや、シャワー室、更衣室などでも使用することができ、用途を拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明に係るドアの実施形態について図1から図11を参照しながら説明する。このドアは、図1に示すように、一定の間隔が空けられた2枚の扉11,12が蝶番20によって連結され、そして、2枚の扉11,12間が遮蔽体40によって塞がれた折戸であり、鉛直姿勢に立設された2本の縦枠1,1と、この縦枠1,1の上端部に水平姿勢に架け渡された上枠2で囲まれた枠内を開閉する。上枠2の下面には、吊りレール3が固定されている。
【0027】
扉11,12は、開閉しやすいように、幅の比が1:2とされている。ただし、使用状況に応じて、扉11,12の幅の比は1:1であってもよい。いずれにしても、各扉11,12は、図4に示すように、1枚の板状のパネル体10によって構成され、対向側端面10aが樋形状に成形され、上下両端部の2か所(上端部のみ図示する。)に蝶番20が取り付けられている。この蝶番20は、必要に応じて中間部にも取り付けられる。また、蝶番20は、図示したような端縁ではなく、端縁から内寄りに取り付けられてもよい。
【0028】
そして、遮蔽体40は、扉11,12の樋形状の対向側端面10a,10aに嵌る一対の円筒体または円柱体41,41を側面で接合したもので、平面視が8字形状に形成されている。一対の円筒体または円柱体41,41は、溶接などによって一体化されていてもよいし、分離可能に当接しているだけでもよい。いずれにしても、円柱体41,41が接合した部分は、括れた形状となっている。さらに、各円柱体41,41の端面には、蝶番20に連結されるようにするための軸42,42が各扉11,12の回転中心の位置に突設され、円環状に突出した嵌合部43,43が外周に設けられている。
【0029】
そして、図1に示すように、幅の狭い扉(以下、「小扉」という。)11の基端側は、軸受4,4によって一方の縦枠1に揺動自在に取り付けられている。また、幅の広い扉(以下、「大扉」という。)12は、前記吊りレール3に吊り下げられる。そのため、大扉12の上端面のほぼ中心に吊り車14が取り付けられている。吊り車14には、大扉12の上端面に固定された軸14aと、この軸14aの上端に回動自在に取り付けられたローラ14bが備えられている。
【0030】
また、大扉12には、ハンドル15が取り付けられている。そして、このハンドル15が押されまたは引かれると、吊り車14の軸14aが回転軸となって、図2または図3に示すように、大扉12が平面視で傾きながら小扉11を押すように移動し、小扉11を押すことにより、小扉11が大扉12と同じ側に平面視で傾く。完全に開扉されると、一方の縦枠1側で大扉12と小扉11とが重なり合った状態となる。
【0031】
両扉11,12がこのように開閉するようにするため、両扉11,12に取り付けられた蝶番20は、図4および図5に示すように、可動駒21、転動体22、そして連結体24を備えている。
【0032】
可動駒21は、両側面21a,21aおよび両相対面21b,21b(図面において上面と下面)が平行な直方体形状または立方体形状、または図示しないが、両側面21a,21aがハ字形状で両相対面21b,21bが平行な台形状とされている。また、両側面21a,21aにはラックが形成されている。
【0033】
そして、転動体22は、前記可動駒21の両側に配置される一対で構成されている。各転動体22は、フランジ22fと支持部22gとをT字形に一体成形したもので、支持部22gの先端に、前記可動駒21の各側面21a上を回転しながら両方向に移動する半円筒状の転動部22aが設けられている。
【0034】
フランジ22fの支持部22gを突設していない側の面には、樋形状にされた扉11,12の対向側端面10aに接合するほぼ半円形の膨出部22h,22hが上下に分離して設けられている。各膨出部22hには、パネル体10を固定するための小孔22e,22e…が形成され、ネジ30によって転動体22が扉11,12に固定される。
【0035】
そして、各転動部22aの外周面には、前記可動駒21の側面に形成されたラックと噛合するピニオンが形成され、各転動部22aの回転中心には連通孔22hが形成されている。なお、可動駒21が台形状に形成されているときは、転動部22aは、かさ歯車のように円錐台形状に形成される。
【0036】
そして、連結体24は、前記転動部22aを転動自在に連結するもので、中間部が可動駒21の両相対面21b,21bに当接し、両端部が可動駒21の両側面21a,21aから突出する一対の8字形状の連結板24a,24aを備えている。連結板24a,24aの中間部は、遮蔽体40の端面形状と同じく括れており、中立位置の可動駒21の両端が露出している。連結板24a,24aの両端部は、転動体22の膨出部22hの周縁がわずかに食み出るようにフランジ部22fと重なり合っている。
【0037】
そして、連結板24aの両端部には、転動体22の連通孔22hと連通する連通孔24hが形成されている。この両連通孔22h,24hには、前記遮蔽体40に突設された軸42が挿入され、両連結板24a,24aと転動体22とが連結される。
【0038】
また、遮蔽体40と接合する側の連結板24aには、遮蔽体40の嵌合部43,43に嵌入する円環状の嵌合部24b,24bが設けられている。すなわち、連結板24aに設けられた嵌合部24b,24bが遮蔽体40の嵌合部43,43に嵌入することによっても、連結板24aと遮蔽体40とが連結される。
【0039】
そして、可動駒21の相対面21bと連結体24の連結板24aとの各接合面には、スライド自在な嵌合部23が設けられている。この嵌合部23は、例えば、可動駒21の各相対面21bに形成された突条23aと、この突条23aを嵌入するように連結板24aに形成された溝23bとによって構成されている。逆に、可動駒21の各相対面21bに溝23bが形成され、連結体24の連結板24aに突条23aが形成されてもよい。いずれにしても、突条23aと溝23bは、可動駒21の両相対面21b,21bの中心軸または偏心して可動駒21の移動方向に1本または複数本形成される。
【0040】
そして、前記可動駒21および転動体22と連結板24aとの間には、開扉した扉11,12を自動的に閉扉させるためのバネ25が備えられている。そのため、連結体24には、バネ25を収納するための収納部24dが設けられている。収納部24dは、連結板24aの内面に突設された突出部24eによって環状に設けられている。したがって、バネ25は、捩りバネが使用される。捩りバネの各端部は、転動体22のフランジ部22fと連結板24aの各端部に形成された小孔22k,24k内に挿入され、動きが規制されている。
【0041】
ただし、図示しないが、収納部24dは、可動駒21の相対面21b,21bとのみ対向するように直線状に設け、あるいは、転動体22とのみ対向するようにC字形に設け、この収納部24d内に圧縮バネまたは引張りバネのようなバネを収納してもよい。このバネ25は、各収容部24dに直線状、あるいは円弧状直列に片側2本ずつ収納される。したがって、この場合のバネ25は、片方の連結体24の収納部24dで合計4本、両方の連結体24,24の収納部24d,24dで合計8本によって構成される。また、この場合において、各圧縮バネ25,25の間には、可動駒21の相対面21b,21bあるいは、転動体22から突出した突片(図示せず)によって仕切られ、一方のバネのみ圧縮するようにされている。
【0042】
このように構成された蝶番20は、各転動体22,22が可動駒21を支点とし、直線状に並んだ状態から斜交いの向きになった状態を経由して、対峙した状態とに向きが変えられる。ただし、蝶番20はバネ25が備えられていることによって、転動体22は、力が加えられることによって向きが変えられ、力が加えられなくなることによって元の直線状に並んだ状態に自動的に戻る。
【0043】
ここで、このような蝶番20によって小扉11と大扉12とを連結した折戸のようなドアについて図6ないし図11を参照しながら説明する。前記のように、各扉11,12の樋形状に形成された対向側端面10aに、蝶番20の転動体22に設けられた膨出部22hがネジ30によって固定され、さらに、遮蔽体40の端面に突設された軸42,42が蝶番20の両連結板24a,24aの連通孔24h,24hと転動部22aの連通孔22hとに挿通され、かつ、遮蔽体40の嵌合部43と蝶番20の連結体24の一方の連結板24aに設けられた嵌合部24bとが連結されることにより、遮蔽体40が蝶番20に連結され、両扉11,12間を塞ぐ状態とされている。
【0044】
そして、図1および図2の実線に示すように、両扉11,12が閉扉しているときは、図6および図7に示すように、一対の転動体22,22と可動駒21とが1列に並んだ状態となっている。また、各転動体22,22に設けられた転動部22a,22aは、可動駒21の各側面21a,21aの中心に位置している。このとき、両扉11,12間は、遮蔽体40によって塞がれているため、ドアの外側から内側が覗かれることはなく、また、臭いなどが漏出することがない。
【0045】
そして、開扉するため、大扉12に取り付けられたハンドル15が押されると、図2の一点鎖線、図8および図9に示すように、大扉12が吊り車14の軸14aを回転軸として図面において時計方向に傾きつつ、一方の縦枠1の方へ移動する。このとき、大扉12を固定した一方の転動体22の転動部22aが可動駒21の一方の側面21a上を中心から一端側へ転動し、可動駒21が移動する。
【0046】
可動駒21が移動することにより、他方の転動体22の転動部22aが可動駒21の他方の側面21a上を中心から一端側へ転動する。すると、この他方の転動体22が図面において反時計方向に傾き、小扉11が一方の縦枠1に取り付けられた軸受4,4を回転軸として図面において反時計方向に傾く。
【0047】
このとき、両扉11,12の対向側端面10a,10aの各端縁が遮蔽体40の括れている中間部分および連結体24の括れている中間部分内に食い込むようになる。また、バネ25は、バネ力に抗して圧縮される。この開扉している最中において、両扉11,12間は、遮蔽体40によって塞がれているため、指などが巻き込まれることがない。
【0048】
このようにして、一対の転動体22,22に固定された大扉12と小扉11は、図2の一点鎖線、図8および図9に示すように、屈曲し、一方の縦枠1側に近寄る。さらに、ハンドル15が押されると、図2の二点鎖線、図10および図11に示すように、大扉12と小扉11とが重ね合わされ、完全に開扉される。
【0049】
そして、ハンドル15が押されなくなると、圧縮されたバネ25が元の状態になろうとする復元力により、大扉12を固定した一方の転動体22の転動部22aが可動駒21の一方の側面21a上を一端側から中心へ転動する。同時に、小扉11を固定した他方の転動体22の転動部22aが可動駒21の他方の側面21a上を一端側から中心へ転動する。このようにして、一対の転動体22,22に固定された大扉12と小扉11は、図2の一点鎖線で示したように屈曲した状態から図2の実線で示したような直線の状態となって閉扉される。
【0050】
この一連の動作において、可動駒21の側面21aに形成されたラックと他方の転動体22の転動部22aの外周面に形成されたピニオンとが噛合していることから、この転動部22aは、可動駒21上を滑ることなく転動し、両扉11,12はスムーズに開閉される。
【0051】
加えて、一方の転動体22の転動部22aから可動駒21に加えられる荷重は、嵌合部23が緩衝材となり、小さくされて他方の転動体22へ加えられる。すなわち、可動駒21の相対面21b,21bに形成された突条23a,23aが連結体24の連結板24a,24aに形成された溝24c,24cに嵌入していることから、一方の転動体22からの荷重が連結体24にも加えられ、この荷重が小さくされて他方の転動体22の転動部22aに加えられる。よって、ドアが長期間、開閉されても、ラックやピニオンは破損することがない。
【0052】
また、このドアは、ハンドル15を引くことによって、前記と反対方向にも開扉することができる。すなわち、ハンドル15を引くと、図3の一点鎖線に示すように、大扉12が吊り車14の軸を回転軸として図面において反時計方向に傾きつつ、一方の縦枠1の方へ移動する。このとき、大扉12を固定した一方の転動体22の一方の転動部22aが可動駒21の一方の側面21a上を中心から他端側へ転動し、可動駒21が移動する。
【0053】
可動駒21が移動することにより、他方の転動体22の転動部22aが可動駒21の他方の面上を中心から他端側へ転動する。すると、図6および図7において、この他方の転動部22aを設けた他方の転動体22が、時計方向に傾き、小扉11が一方の縦枠1に取り付けられた軸受4,4を回転軸として図面において時計方向に傾く。
【0054】
さらにハンドル15が引かれると、一対の転動体22,22に固定された大扉12と小扉11は、図3の二点鎖線に示すように重ね合わされた状態となって開扉される。そして、ハンドル15を押すことによって、蝶番20が前記と逆に動き、閉扉することができる。
【0055】
この反対方向への開扉に際しても、両扉11,12間は、遮蔽体40によって塞がれた状態が継続され、指などが巻き込まれることがない。また、ハンドル15が引かれなくなることにより、バネ25のバネ力でもって、自動的に閉扉する。
【0056】
このように、この実施形態におけるドアは、両扉11,12が遮蔽体40によって完全に閉扉された状態から両方向に開閉することができる。しかも、大扉12と小扉11とは完全に重なり合った状態とすることができる。したがって、このドアが例えば病院のトイレで採用されると、車椅子の使用者がトイレ内で倒れても救出することができる。
【0057】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定することなく、特許請求の範囲に記載された発明特定事項の範囲内において種々変更することができる。例えば、蝶番20は、可動駒21の両側面21aと転動部22aの外周面をゴムや粗面その他の摩擦係数の大きな材質とすることにより、可動駒21の両面にラックを形成せず、転動部22aの外周面にラックを形成しないようにしてもよい。また、嵌合部23は、使用状況に応じて設けなくてもよい。
【0058】
そして、蝶番20は、バネ25を備えることなく、手動によって閉扉するようにしてもよい。さらに、蝶番20の連結体24の軸42,42は、遮蔽体40に突設されたものではなく、両端部が回動軸を貫通するコ字形のシャフトなどによって構成し、このシャフトと軸42,42とが直列に連結されてもよい。さらに、蝶番20は、フランジ22fと支持部22gとをT字形に一体成形したものではなく、例えば、扉11,12の対向側端面10aに接合する半円柱状の膨出部22hを有していれば、五角形状のフレームによって構成してもよい。
【0059】
また、ドアは、2枚の扉11,12によって構成される折戸に限らず、両開きの1枚の扉であってもよい。この場合は、背景技術で説明したフレーム102がパネル体10に該当する。そして、遮蔽体40は、一対の円筒体または円柱体41,41を側面で接合したものに限らず、一対のパネル体10,10の樋形状の対向側端面10a,10aに嵌る一対の円弧形または半円柱体とこれらを連結する帯状板とによって構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るドアは、住宅や店舗などの玄関、風呂場やトイレなどの出入口、電話ボックス、ガレージなどに有効に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るドアの一実施形態を示す一部断面斜視図である。
【図2】本発明に係るドアの一実施形態を示す一部断面平面図である。
【図3】本発明に係るドアの一実施形態を示す一部断面平面図である。
【図4】本発明に係るドアの一実施形態を示す分解斜視図である。
【図5】本発明に係るドアを構成している蝶番の一実施形態を示す斜視図である。
【図6】本発明に係るドアの一実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【図7】本発明に係るドアの一実施形態を示す要部拡大平面図である。
【図8】本発明に係るドアの一実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【図9】本発明に係るドアの一実施形態を示す要部拡大平面図である。
【図10】本発明に係るドアの一実施形態を示す要部拡大斜視図である。
【図11】本発明に係るドアの一実施形態を示す要部拡大平面図である。
【図12】従来のドアを含む正面図である。
【図13】従来の蝶番を含むドアの一部断面平面である。
【図14】従来のドアの断面平面である。
【符号の説明】
【0062】
10……パネル体
10a…対向側端面
11……小扉(パネル体)
12……大扉(パネル体)
20……蝶番
21……可動駒
21a…側面
22……転動体
23……嵌合部
24……連結体
40……遮蔽体
41……円筒体または円柱体
42……軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の間隔をあけて配置される一対の転動体と、該一対の転動体の転動によって往復動する可動駒と、前記一対の転動体を転動自在に連結する連結体とが備えられている蝶番によって2枚のパネル体が連結されているドアであって、
前記各パネル体の対向側端面が一定の間隔を空けて各転動体に固定され、前記各パネル体の間隔を塞ぐ遮蔽体が前記蝶番に連結されていることを特徴とするドア。
【請求項2】
前記パネル体は、対向側端面が樋形状に形成され、
前記遮蔽体は、各パネル体の対向面に嵌る一対の円筒体または円柱体を側面で接合したものであることを特徴とする請求項1に記載のドア。
【請求項3】
前記蝶番は、前記連結体の両端部が前記可動駒の両側面から突出して転動体と重なり、該転動体の回転中心から両連結体の両端部に連通孔が形成され、
前記遮蔽体は、パネル体の回転中心の位置に軸が突設され、
前記遮蔽体の軸が前記連結体の両端部および転動体の連通孔に挿入され、前記蝶番と遮蔽体とが連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載のドア。
【請求項4】
開扉したパネル体を自動的に閉扉させるためのバネが前記転動体および/または可動駒と前記連結体との間に備えられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載のドア。
【請求項5】
前記可動駒の両側面には、ラックが形成され、かつ、前記一対の転動体には、該ラックと噛合するピニオンが形成されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載のドア。
【請求項6】
前記可動駒と連結体の連結板との各接合面には、スライド自在な嵌合部が設けられてなることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のドア。
【請求項1】
一定の間隔をあけて配置される一対の転動体と、該一対の転動体の転動によって往復動する可動駒と、前記一対の転動体を転動自在に連結する連結体とが備えられている蝶番によって2枚のパネル体が連結されているドアであって、
前記各パネル体の対向側端面が一定の間隔を空けて各転動体に固定され、前記各パネル体の間隔を塞ぐ遮蔽体が前記蝶番に連結されていることを特徴とするドア。
【請求項2】
前記パネル体は、対向側端面が樋形状に形成され、
前記遮蔽体は、各パネル体の対向面に嵌る一対の円筒体または円柱体を側面で接合したものであることを特徴とする請求項1に記載のドア。
【請求項3】
前記蝶番は、前記連結体の両端部が前記可動駒の両側面から突出して転動体と重なり、該転動体の回転中心から両連結体の両端部に連通孔が形成され、
前記遮蔽体は、パネル体の回転中心の位置に軸が突設され、
前記遮蔽体の軸が前記連結体の両端部および転動体の連通孔に挿入され、前記蝶番と遮蔽体とが連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載のドア。
【請求項4】
開扉したパネル体を自動的に閉扉させるためのバネが前記転動体および/または可動駒と前記連結体との間に備えられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載のドア。
【請求項5】
前記可動駒の両側面には、ラックが形成され、かつ、前記一対の転動体には、該ラックと噛合するピニオンが形成されてなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一つに記載のドア。
【請求項6】
前記可動駒と連結体の連結板との各接合面には、スライド自在な嵌合部が設けられてなることを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載のドア。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−332637(P2007−332637A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164910(P2006−164910)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(597000216)杉田エース株式会社 (9)
【出願人】(391037353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(597000216)杉田エース株式会社 (9)
【出願人】(391037353)
【Fターム(参考)】
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