説明

ドラム式ケレン装置

【課題】回転ドラム内でのワークとケレン部材の分離及びワークだけの外部への取出しが自動的に行え、必要とする設置スペースを極端に少なくできるだけでなく、構造の簡素化とケレン作業の安全と能率向上を図ることができるドラム式ケレン装置を提供する。
【解決手段】内部がケレン室13となる回転ドラム4を、軸心を中心に回転可能でこの軸心が上下に角度可変となるよう支持して配置し、前記回転ドラム4の端部にケレン室13と仕切り板で区切られたケレン部材の収納室14を設け、この収納室14に収納したケレン部材を、回転ドラム4のケレン室13内に対して、回転ドラム4の回転と軸心の角度変化による傾斜の併用によって出し入れする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製の各種資材等に対する付着物を、ケレン部材によるバレル研磨方式によって効率よく除去するためのドラム式ケレン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、足場等の構築に用いる鋼管類や筋交い、鋼管クランプ等は、現場での使用によってその外面に、コンクリートや塗料等が付着するため、現場からの回収後において再使用に備えるため、上記した付着物の除去作業が必要になる。
【0003】
上記したような建築資材類の付着物を除去するために用いられている一般的なケレン装置としては、建築資材を入側から出側に送る搬送ラインの途中に、建築資材を打撃するケレン機を配置し、ケレン機に対して建築資材を通過させることにより、建築資材の付着物を除去するようにした構造になっており、建築資材を移送しながらケレンを行うため、極めて広い設置スペースが必要になるという問題がある。
【0004】
また、単一の建築資材ごと専用のケレン装置で処理する場合、少量多品種の建築資材に対応するために、多種類のケレン装置を用意しておかなければならないが、小規模の事業所では経済的負担が大きくなり、このため、一台で少量多品種の建築資材に対してケレンが行えるケレン装置が要求されている。
【0005】
このため、定位置に配置した回転ドラムに対して建築資材を出し入れするだけでバレル方式によってケレン作業が行え、必要とする設置スペースを少なくできるだけでなく、多品種対応型となり、ケレン作業の安全と能率向上を図ることができるドラム式のケレン装置が提案されている。
【0006】
従来のバレル方式によるドラム式のケレン装置は、水平に配置した回転ドラムの周壁に給排口を設け、回転ドラムと相対回転可能で前記給排口を開閉する蓋部材とからなり、回転ドラムの一方への回転で蓋部材が給排口を閉じ、投入した建築資材であるワークとケレン部材でケレンを行うと共に、回転ドラムの他方への回転で給排口が開き、ワークとケレン部材を排出するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、別のバレル方式によるドラム式のケレン装置は、一端が開放された回転ドラムの周壁を二重構造にしてケレン部材の収納空間を形成し、この回転ドラムに対して開放端から抜き差し自在で一体に回転する樋状容器を配置し、ワークを投入した樋状容器を回転ドラムに挿入した状態で、回転ドラムを一方に回転させてワークとケレン部材でケレンを行うと共に、回転ドラムを逆回転させることで、ケレン部材を収納空間に回収し、この回収後の回転停止状態出で樋状容器を外部に抜き出し、樋状容器内のワークを回転ドラムから取出すようになっている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2638393号公報
【特許文献2】特開2005−120793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前者のケレン装置は、回転ドラムからワークを取り出すとき、ワークとケレン部材が一緒になって取出されるため、取出し後のワークとケレン部材の分離作業が必要になり、例えば、多数の鋼球等を用いたケレン部材の回収に手間と時間がかかるという点で改良の余地がある。
【0009】
また、後者のケレン装置は、ワークとケレン部材の分離が自動的に行えるという利点はあるが、回転ドラムに対して開放端から樋状容器を進退動させてワークの出し入れを行うため、回転ドラム以外に樋状容器を引き出すためのスペースを確保しなければならず、このため、省スペース化が困難になり、しかも、樋状容器を進退動させるための駆動源が別に必要となり、装置全体の構造が複雑になるという点で改良の余地がある。
【0010】
そこで、この発明の課題は、回転ドラムによってケレン作業が行えると共に、ワークとケレン部材の分離及びワークだけの外部への取出しが自動的に行え、必要とする設置スペースを極端に少なくできるだけでなく、構造の簡素化とケレン作業の安全と能率向上を図ることができる多品種対応型のドラム式ケレン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、この発明は、内部がケレン室となる回転ドラムを、軸心を中心に回転可能でこの軸心が上下に角度可変となるよう支持して配置し、前記回転ドラムの端部にケレン部材の収納室を設け、この収納室に収納したケレン部材を、回転ドラムのケレン室内に対して、回転ドラムの回転と軸心の角度変化の併用によって出し入れするようにした構成を採用したものである。
【0012】
上記ケレン部材の収納室がケレン室と仕切り板で区切られ、この仕切り板の外周縁にケレン部材が通過できる通過部が設けられている構造とすることができる。
【0013】
また、上記回転ドラムが、周壁の一部にワーク出し入れ口を備え、この回転ドラムの外側に、回転ドラムの軸心を中心に回転ドラムと一体に回転可能となり、かつ、回転ドラムに対してワーク出し入れ口を閉鎖する位置と開放する位置の間を回動可能となる蓋部材が設けられ、この蓋部材と連動した回転駆動機で蓋部材を介して前記回転ドラムに回転を付与するようにした構造としてもよい。
【0014】
ここで、上記回転ドラムは、両端が閉鎖された横長の円筒状となり、筒状周壁の一部に軸方向に沿って長いワーク出し入れ口が設けられ、軸心上に設けた両端の軸がベース台上に中央位置を枢止した揺動フレームで軸受を介して回転可能に支持され、揺動フレームに連結したシリンダで揺動フレームを揺動させることによってその軸心が水平状態から上下に傾斜可能になっている。
【0015】
上記蓋部材は、回転ドラムの軸方向全長よりも長く、回転ドラムの筒壁の外側に位置してワーク出し入れ口を開閉する幅を有する蓋部と、この蓋部の両端に位置した取付けアームとで形成され、取付けアームを回転ドラムの両端の軸に軸受を介して回転可能に取付け、回転ドラムの軸心を中心に回転ドラムと一体に回転可能になっている。
【0016】
この蓋部材は、回転ドラムに対して、ワーク出し入れ口を閉鎖する位置と、このワーク出し入れ口の片側に位置する開放位置の間を回動可能となり、ワーク出し入れ口を閉鎖する位置で、固定手段によって回転ドラムに固定化するようになっていると共に、ワーク出し入れ口を開放する位置で回転ドラムに設けたストッパーに当接し、ワーク出し入れ口を開く方向へ回転ドラムを一体に回動させるようになっている。
【0017】
上記蓋部材は、揺動フレーム上に設置した回転駆動機で駆動され、ワーク出し入れ口を閉鎖する位置に固定した蓋部材を介して前記回転ドラムにケレンのための一方方向の回転を付与すると共に、蓋部材の回転ドラムに対する固定を解いた状態で蓋部材を他方方向に回動させると、ワーク出し入れ口が開放され、開放位置で蓋部材と回転ドラムが一体に回動し、下向きとなったワーク出し入れ口からワークが排出される。
【0018】
上記ケレン部材の収納室は、回転ドラム内の端部に位置し、回転ドラムの軸方向内側の位置にケレン部材の収納排出待機室を備えている。
【0019】
上記収納排出待機室と回転ドラム内のケレン室とは第1の仕切り板で区切られ、ケレン部材の収納室と収納排出待機室は第2の仕切り板で区切られ、第1の仕切り板の外周縁に鋼球を用いたケレン部材が通過できる通過部が設けられている。
【0020】
この通過部は、第1の仕切り板の周方向に長い切欠き孔によって形成され、ケレン部材の収納室と収納排出待機室の内周には、ケレン部材を掻き上げるための樋状の誘導部材が、第2の仕切り板を貫通し、先端が前記通過部と連通するように設けてあり、収納室内のケレン部材をケレン室に対して、回転ドラムの回転と軸心の角度変化の併用によって出し入れするようになっている。
【0021】
上記蓋部材と回転ドラムのケレン方向への回転時に、重量のある回転ドラムが先走りしないよう、蓋部材と回転ドラムの間にケレン方向への回転に対する係合部が設けられ、また、ワーク出し入れ口を開放する場合に、蓋部材に対して回転ドラムが共回りしないよう、回転ドラムの軸にはブレーキをかけることができるようになっている。
【発明の効果】
【0022】
この発明によると、回転ドラムをその軸心が上下に角度可変となるよう支持して配置し、前記回転ドラムの端部にケレン部材の収納室を設け、この収納室に収納したケレン部材を、回転ドラムのケレン室内に対して、回転ドラムの回転と軸心の角度変化の併用によって出し入れするようにしたので、ワークとケレン部材の分離及びワークだけの外部への取出しが自動的に行え、ケレン作業の安全と能率の向上が図れると共に、回転ドラムの設置だけでケレン作業が行え、必要とする設置スペースを極端に少なくできる。
【0023】
また、収納室に収納したケレン部材を、回転ドラムのケレン室内に対して、回転ドラムの回転と軸心の角度変化の併用によって出し入れするようにしたので、回転ドラムをケレン方向に回転させながら、回転ドラムの上下方向の傾斜角度を変化させるだけで、ケレン部材の出し入れが可能になり、全体の構造及び制御が簡単になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0025】
図1乃至図3のように、ケレン装置1は、ベース台2の上に設けた揺動フレーム3と、この揺動フレーム3で回転可能に支持された回転ドラム4と、この回転ドラム4と一体に回転可能となり、回転ドラム4のワーク出し入れ口5を開閉すると同時に、前記回転ドラム4に回転を付与する蓋部材6と、前記蓋部材6と連動した回転駆動機7で形成されている。
【0026】
上記揺動フレーム3は、長い底部材3aの両端に支柱3bを立設して正面視上向きコ字形に形成され、底部材3aの中央下部がベース台2上に支点軸8でシーソー状に支持され、両端部において、支柱3bとベース台2の間を結合するように設けたシリンダ9の伸縮により、上下に揺動するようになっている。
【0027】
上記回転ドラム4は、筒状周壁4aの両端を端板4bで閉鎖した横長の円筒状となり、筒状周壁4aの一部に軸方向に沿って長いワーク出し入れ口5が設けられ、軸心上に設けた両端の軸10と11が揺動フレーム3の支柱3b上に軸受12を介して回転可能に支持され、揺動フレーム3に連結したシリンダ9で揺動フレーム3を揺動させることによってその軸心が水平状態から上下に傾斜可能になっている。
【0028】
この回転ドラムは、内部の大半がケレン室13となり、その内部で一方端部側の位置にケレン部材の収納室14が設けられ、上記ワーク出し入れ口5はケレン室13に対応する長さの範囲に形成されている。
【0029】
上記回転ドラム4におけるケレン室13の内周には、ケレン部材AとワークBの掻き上げ部材15が周方向に所定の間隔で複数設けられ、この掻き上げ部材15は、回転ドラム4のケレン方向への回転時(図4の時計方向)に、上向きに回動するとき、下部の位置でケレン部材AとワークBを掻き上げ、上部の位置でケレン部材AとワークBを落下させ、ワークBに対するケレン部材Aの衝突により、バレル方式でワークにケレン処理を施すことになる。
【0030】
この掻き上げ部材15は、ケレン室13の内周から半径方向の内側に突出するフラットバーや樋状部材を用い、回転ドラム4の軸心に平行するようケレン室13の全長にわたって設けられている。
【0031】
ここで、ケレン処理の対象となるワークBとしては、例えば、足場等の構築に用いる鋼管類や筋交いのような長尺物や、鋼管クランプ等の小物部材を挙げることができ、また、ケレン部材Aは、例えば、直径16mm程度の鋼球を多数個用いるようにする。
【0032】
上記ケレン部材Aの収納室14は、回転ドラム4内の一方端部に位置し、回転ドラム4内を仕切ることによって、ケレン作業に必要な量のケレン部材Aを収納することができる容積に形成され、回転ドラム4の軸方向内側の位置にケレン部材Aの収納排出待機室16を備えている。
【0033】
上記収納排出待機室16と回転ドラム4内のケレン室13は第1の仕切り板17で区切られ、ケレン部材Aの収納室14と収納排出待機室16は第2の仕切り板18で区切られ、第1の仕切り板17の外周縁にケレン部材Aが通過できる通過部19が設けられている。
【0034】
この通過部19は、図9(a)のように、回転ドラム4を上下方向に傾斜させたときに、収納排出待機室16とケレン室13の間をケレン部材Aが転動通過するように、第1の仕切り板17の周方向に長い切欠き孔によって形成され、ケレン部材Aの収納室14と収納排出待機室16の周壁の内周には、回転ドラム4のケレン方向への回転時にケレン部材Aを掻き上げると共に、回転ドラム4の上下方向の傾斜により、ケレン部材Aを回転ドラム4の軸方向に転動させるための樋状の誘導部材20が設けられている。
【0035】
上記誘導部材20は、第2の仕切り板18を貫通し、その先端が前記通過部19と連通するように設けてあり、収納排出待機室16を介して収納室14内のケレン部材Aを、ケレン室13に対して、回転ドラム4のケレン方向への回転と軸心の上下角度変化の併用によって出し入れするようになっている。
【0036】
図示の場合、第2の仕切り板18の誘導部材20が貫通する部分にはケレン部材Aが通過できる円形孔が設けられ、収納室14内に位置する誘導部材20の第2の仕切り板18側は、図10(a)のように、部分的な円筒部20aとなり、収納室14内に位置するケレン部材Aが収納排出待機室16へ不必要にこぼれ出ることのないようにしている。
【0037】
なお、ケレン部材Aの収納室14は、収納排出待機室16を省き、収納室14とケレン室13の間で直接ケレン部材Aを出し入れするようにしてもよい。
【0038】
上記蓋部材6は、回転ドラム4の軸方向全長よりも少し長く、回転ドラム4の筒状周壁4aの外側に位置してワーク出し入れ口5を開閉する幅を有する横長の蓋部6aと、この蓋部6aの両端に位置した取付けアーム6bとで形成され、取付けアーム6bを回転ドラム4の両端の軸10と11に軸受21を介して回転可能に取付け、回転ドラム4の軸心を中心に回転ドラム4と一体に回転可能になっている。なお、取付けアーム6bの端部には、バランスウエイト22が設けてある。
【0039】
この蓋部材6は、蓋部6aが、ワーク出し入れ口5を閉鎖する位置と、このワーク出し入れ口5に対して、回転ドラム4のケレン時の回転方向(図4の時計方向)の後方側に位置する開放位置の間を、回転ドラム4に対して回動可能となり、ワーク出し入れ口5を閉鎖する位置で、回転ドラム4の軸方向の複数箇所において、蓋部6aの両側と回転ドラム4に設けた第1と第2の固定手段23と24によって回転ドラム4に固定化するようになっている。
【0040】
上記第1の固定手段23は、図9(b)のように、回転ドラム4の外周面でワーク出し入れ口5に対してケレン回転方向の前方位置にフック部材25を固定し、蓋部6aのケレン回転方向の先端縁に、前記フック部材25に係合する爪部材26を設けて形成されている。
【0041】
また、第2の固定手段24は、回転ドラム4の外周面でワーク出し入れ口5に対してケレン回転方向の後方位置に係止溝板27を固定し、蓋部6aのケレン回転方向の後端外面に、シリンダ28の伸縮で回動し、先端のローラ29が前記係止溝板27の溝に対して係脱する係合部材30を設けて形成されている。
【0042】
上記蓋部材6における蓋部6aの中央部で両側の位置に、図9(a)と図10のように、スプリングを使用したダンパー部材31が回転ドラム4の外周面に沿って突出するように取付けてあり、回転ドラム4の外周面には、蓋部6aがワーク出し入れ口5を閉鎖する位置にあるとき一方のダンパー部材31が当接するストッパー32と、蓋部6aがワーク出し入れ口5を開放する位置にあるとき他方のダンパー部材31が当接するストッパー33が固定してある。これによって、蓋部材6でワーク出し入れ口5を開閉するときの衝撃の発生を緩衝するものである。
【0043】
上記揺動フレーム3の一方側部に、回転ドラム4と平行する中間軸34が回転可能に取付けられ、揺動フレーム3の中央位置に取付けた回転駆動機7と中間軸34を回転伝達手段で連動すると共に、回転ドラム4の両端の軸10、11に蓋部材6を取付けた軸受21と前記中間軸34を、スプロケットとチエン等の回転伝達手段を用いて連動し、前記回転駆動機7で蓋部材6に回転を付与するようになっている。
【0044】
従って、蓋部材6をワーク出し入れ口5を閉鎖する位置に固定した状態で、この蓋部材6を介して回転駆動機7で回転ドラム4にケレン方向の回転を付与すると共に、蓋部材6の回転ドラム4に対する固定を解いた状態で蓋部材6を反対の方向に回動させると、回転ドラム4を停止させた状態で、蓋部材6だけをワーク出し入れ口5を開放する位置に回動させることができることになる。
【0045】
図示の場合、上記蓋部材6と回転ドラム4のケレン方向への回転時に、重量のある回転ドラム4が蓋部材6に対して先走りしないよう、回転ドラム4の両端面と蓋部材6の取付けアーム6bの間に、回転ドラム4のケレン方向への回転に対する係合機構35が設けられている。
【0046】
この係合機構35は、図12のように、蓋部材6の取付けアーム6bにおいて、回転ドラム4の端面と対向する位置に受板36を固定すると共に、回転ドラム4の端面に揺動アーム37を枢止し、同じく回転ドラム4の端面に取付けたシリンダ38によって進退する傾斜カム39で前記揺動アーム37を揺動させるようにした構造を有し、回転ドラム4のケレン方向への回転時は、図12(b)のように、シリンダ38を収縮させ、スプリング40の作用で揺動アーム37を前記受板36に係合可能な位置に保持し、また、蓋部材6の開放位置への回動時には、図12(c)のように、シリンダ38を伸長させ、傾斜カム39で揺動アーム37を前記受板36に係合しない位置に保持するようになっている。
【0047】
また、蓋部材6がワーク出し入れ口5を開放する場合に、蓋部材6に対して回転ドラム4が共回りしないよう、回転ドラム4の軸11にブレーキ機構41が設けられている。
【0048】
このブレーキ機構41は、図4のように、回転ドラム4の軸11にブレーキドラム42を固定し、ブレーキドラム42の外周に巻回した摩擦ベルト43の一端を揺動フレーム3の支柱3bに固定し、摩擦ベルト43の他端をスプリング44を介して前記支柱3bに固定し、回転ドラム4のケレン回転方向にブレーキドラム42が回転するとき摩擦ベルト43はスリップし、回転ドラム4の回転にブレーキをかけないが、ケレン回転方向と反対方向にブレーキドラム42が回転すると、摩擦ベルト43は緊張して回転ドラム4にブレーキをかけるようになっている。
【0049】
なお、上記ブレーキ機構41におけるブレーキ力は、回転駆動機7の蓋部材6を回転させる力よりも小さくなるように設定されている。
【0050】
この発明のドラム式ケレン装置は、上記のような構成であり、次にこのケレン装置の作用を説明する。
【0051】
図1のように、回転ドラム4が水平に支持され、図11のように、そのワーク出し入れ口5が上部にあり、蓋部材6がこのワーク出し入れ口5を開放する位置にある状態で、ワーク出し入れ口5から回転ドラム4のケレン室13内にワークBを投入する。このとき、ケレン部材Aは全量が収納室14内に収納されている。
【0052】
上記の状態で、回転駆動機7をケレン回転方向に起動させると、停止する回転ドラム4に対して蓋部材6が回動し、この蓋部材6がワーク出し入れ口5を閉じた状態で蓋部材6の回動を止めると、第1の固定手段23である、回転ドラム4の外周面に固定したフック部材25に爪部材26が係合し、また、第2の固定手段24のシリンダ28が伸長作動し、係合部材30の先端ローラ29が係止溝板27の溝に対して係合し、図9(b)のように、回転ドラム4に蓋部材6が固定化される。
【0053】
上記回転ドラム4が水平に支持されていると、収納室14内に収納されているケレン部材Aは、安息角が保たれ、回転ドラム4が回転してもケレン室13に転出することはない。
【0054】
また、これと同時に、図12(b)のように、上記回転ドラム4の端面に設けたシリンダ38は収縮のままとなり、揺動アーム37を受板36に係合可能な位置にする。
【0055】
この状態で、回転駆動機7をケレン回転方向に起動させ、蓋部材6が回転ドラム4をケレン方向に回転させると共に、図2のように、シリンダ9の作動で回転ドラム4を、収納室14が上になるよう軸心を傾斜させると、収納室14内に収納されていたケレン部材Aは、樋状の誘導部材20で掻き上げられ、この誘導部材20の傾斜に沿って収納排出待機室16に転動し、更に収納排出待機室16の誘導部材20で掻き上げられたケレン部材Aは、誘導部材20の傾斜に沿って転動し、第1の仕切り板17に設けた通過部19を通ってケレン室13に転出し、ケレン室13のワークBと混合状態になる。
【0056】
回転ドラム4を収納室14が上になる傾斜状態にして所定時間回転させ、収納室14内のケレン部材Aがケレン室13に転出すると、図1のように、シリンダ9の作動で回転ドラム4を水平に戻し、続けてケレン方向の回転を与えることで、ケレン作業を行うようにする。
【0057】
上記ケレン室13では、内周に設けた掻き上げ部材15が、上方への回動時に下部の位置でケレン部材AとワークBを掻き上げ、上部の位置でケレン部材AとワークBを落下させ、これを繰り返すことにより、ワークBにケレン部材Aを衝突させることで付着物を除去し、バレル方式でワークにケレン処理を施すことになる。
【0058】
このように、ワークBと小径の鋼球を用いたケレン部材Aを混合してケレン作業を行うと、ワークBが複雑な形状を有する場合、ケレン部材Aが隅々まで入り込んで全体を確実にケレンすることができ、また、ワークBが突起のあるような構造の場合、突起部分だけが過度にケレンされるのを防ぐことができる。
【0059】
また、ケレンの対象となるワークBは、回転ドラム4内に納まるものであれば、形状や大きさに制約はなく、従って、ケレン装置1は少量多品種対応型となる。
【0060】
上記回転ドラム4を所定時間回転させてケレン処理が完了すると、図3のように、シリンダ9の作動で回転ドラム4を、収納室14が下になるよう軸心を傾斜させると、ケレン室13にあるケレン部材Aは、収納室14側に集まり、掻き上げ部材15で掻き上げられたケレン部材Aは掻き上げ部材15の傾斜下がり側に転動することで、通過部19を通って収納排出待機室16に進入する。
【0061】
収納排出待機室16に入ったケレン部材Aは、樋状の誘導部材20で掻き上げられ、この誘導部材20の傾斜に沿って転動することで、収納室14内に収納される。
【0062】
従って、ケレン作業後に、回転ドラム4をケレン方向に回転させたまま、収納室14が下になるよう軸心を傾斜させると、ケレン室13内にあったケレン部材Aは、自動的に収納室14に収納され、ケレン室13内においてワークBとケレン部材Aの分離が自動的に行えることになる。
【0063】
上記のように、ワークBとケレン部材Aの分離が完了すると、回転ドラム4を軸心が水平となるように戻し、ワーク出し入れ口5が上部に位置するように回転駆動機7を止めて回転ドラム4の回転を停止させる。
【0064】
回転ドラム4が停止した状態で、第2の固定手段24のシリンダ28が収縮作動し、係合部材30の先端ローラ29が係止溝板27に対して離脱し、これと同時に、上記回転ドラム4の端面に設けたシリンダ38が伸張作動し、図12(c)のように、揺動アーム37を受板36に対して係合しない位置に待機させる。
【0065】
この状態で、回転駆動機7をケレン作業時とは反対側に起動させると、ブレーキ機構41のブレーキが作用する回転ドラム4が停止している状態で、蓋部材6はケレン作業時とは反対側に回動してワーク出し入れ口5を開放し、蓋部材6がワーク出し入れ口5の全開位置に達すると、ダンパー部材31がストッパー33に当接し、この時点で、ブレーキ機構41のブレーキ力に打ち勝って回転ドラム4も蓋部材6と共に回動する。
【0066】
上記回転ドラム4が、ケレン作業時とは反対側に回動すると、ワーク出し入れ口5が下側に移行し、ケレン室13内のワークBはワーク出し入れ口5から排出され、ワーク出し入れ口5が下向きになった時点で回転ドラム4の回転を停止させれば、全てのワークBが直下に配置した収納容器45内に収納される。
【0067】
これによって、ケレン作業の全工程が終了し、回転ドラム4をワーク出し入れ口5が上になるような状態までケレン作業時とは反対側に回動させ、次のワーク投入に備える。
【0068】
なお、上記したケレン作業時において、ケレン室13内に水を散布し、付水効果によってケレンが効率的に行えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】この発明に係るドラム式ケレン装置を示し、回転ドラムの軸心が水平状態の縦断正面図
【図2】この発明に係るドラム式ケレン装置を示し、回転ドラムの軸心をケレン部材の収納室が高い位置にある傾斜状態にした縦断正面図
【図3】この発明に係るドラム式ケレン装置を示し、回転ドラムの軸心をケレン部材の収納室が低い位置にある傾斜状態にした縦断正面図
【図4】この発明に係るドラム式ケレン装置の拡大した右側面図
【図5】この発明に係るドラム式ケレン装置において、回転ドラムの中間部分で縦断した拡大側面図
【図6】この発明に係るドラム式ケレン装置の拡大した左側面図
【図7】この発明に係るドラム式ケレン装置において、ケレン部材の収納室の部分を拡大した縦断正面図
【図8】この発明に係るドラム式ケレン装置において、ケレン部材の収納室側の部分を拡大した一部切り欠き平面図
【図9】(a)は図7の矢印a−aの部分を拡大した縦断側面図、(b)は蓋部材と回転ドラムに設けた第1固定手段と第2固定手段を示す縦断側面図
【図10】(a)は図7の矢印b−bの部分を拡大した縦断側面図、(b)は図7の矢印c−cの部分を拡大した縦断側面図
【図11】回転ドラムに対して蓋部材がワーク出し入れ口を開放した状態を示す拡大した縦断側面図
【図12】回転ドラムが蓋部材に対して先走りしないようにする係合機構を示し、(a)は正面図、(b)は係合機構の係合可能な状態を示す横断平面図、(c)は係合機構が係合しない状態を示す横断平面図
【符号の説明】
【0070】
1 ケレン装置
2 ベース台
3 揺動フレーム
4 回転ドラム
5 ワーク出し入れ口
6 蓋部材
7 回転駆動機
8 支点軸
9 シリンダ
10 軸
11 軸
12 軸受
13 ケレン室
14 ケレン部材の収納室
15 掻き上げ部材
16 収納排出待機室
17 第1の仕切り板
18 第2の仕切り板
19 通過部
20 誘導部材
21 軸受
22 バランスウエイト
23 第1固定手段
24 第2固定手段
25 フック部材
26 爪部材
27 係止溝板
28 シリンダ
29 ローラ
30 係合部材
31 ダンパー部材
32 ストッパー
33 ストッパー
34 中間軸
35 係合機構
36 受板
37 揺動アーム
38 シリンダ
39 傾斜カム
40 スプリング
41 ブレーキ機構
42 ブレーキドラム
43 摩擦ベルト
44 スプリング
45 収納容器
A ケレン部材
B ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部がケレン室となる回転ドラムを、軸心を中心に回転可能でこの軸心が上下に角度可変となるよう支持して配置し、前記回転ドラムの端部にケレン部材の収納室を設け、この収納室に収納したケレン部材を、回転ドラムのケレン室内に対して、回転ドラムの回転と軸心の角度変化の併用によって出し入れするようにしたドラム式ケレン装置。
【請求項2】
上記ケレン部材の収納室がケレン室と仕切り板で区切られ、この仕切り板の外周縁にケレン部材が通過できる通過部が設けられている請求項1に記載のドラム式ケレン装置。
【請求項3】
上記回転ドラムが、周壁の一部にワーク出し入れ口を備え、この回転ドラムの外側に、回転ドラムの軸心を中心に回転ドラムと一体に回転可能となり、かつ、回転ドラムに対してワーク出し入れ口を閉鎖する位置と開放する位置の間を回動可能となる蓋部材が設けられ、この蓋部材と連動した回転駆動機で蓋部材を介して前記回転ドラムに回転を付与するようにした請求項1又は2に記載のドラム式ケレン装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−46852(P2009−46852A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212939(P2007−212939)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(391015236)大裕株式会社 (11)
【Fターム(参考)】