説明

ドラム式洗濯乾燥機

【課題】リントフィルターの目詰まりによる乾燥性能低下を未然に抑える。
【解決手段】乾燥行程において凝縮温度検出手段によって凝縮温度を検出し、凝縮温度検出手段によって検出された温度が所定の値を超えたとき、ヒートポンプユニットの出力を所定の値まで下げるとともに、操作・表示部にフィルター目詰まりサインを表示または報知することにより、使用者にフィルター目詰まり状態であることを正確に報知でき、性能低下の防止や安全性を確保した信頼性の高いドラム式洗濯乾燥機を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乾燥機能を備えたドラム式洗濯乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ドラム式洗濯乾燥機は衣類の乾燥によって発生するリントが、送風経路に堆積しないようにリントフィルターケースが設けられており、定期的に取り扱い説明書等で使用者にリントフィルターケースの掃除をお願いしていた。さらに性能低下の防止や安全性を確保するために、リントフィルターケースに所定量のリントが堆積すると、自動検知して使用者に報知していた。(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−289494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のドラム式洗濯乾燥機は、リントフィルターケースにリントが堆積した場合、乾燥工程中の送風温度の変化量や送風手段の入力の増加量を検出し、使用者にフィルター目詰まり状態であることを報知していた。しかしながらリントが発生しやすい衣類の乾燥などにより、過度にリントフィルターケースが目詰まりした場合、循環風量が著しく低下する。これによりヒートポンプユニットの冷媒凝縮温度が上昇し、ヒートポンプユニットの温度保護機能により一時的にヒートポンプユニットを停止していた。その結果、乾燥性能が著しく低下し、ヒートポンプユニットの品質や耐久性にも問題を生じていた。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、前記凝縮温度検出手段によって検出された温度が所定の値を超えたとき、ヒートポンプユニットの出力を所定の値まで下げるとともに、前記操作・表示部にフィルター目詰まりサインを表示または報知することを特徴とした信頼性の高いドラム式洗濯乾燥機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために、筐体内に収められた水槽と、前記筐体に設けられた操作・表示部と、前記水槽内に回転可能に設けた回転ドラムと、前記水槽内に開口した温風吹き出し口と、前記温風吹き出し口を介して連通した送風手段と、前記送風手段による送風を加熱除湿するヒートポンプユニットと、前記ヒートポンプユニットの冷媒凝縮温度を検出する凝縮温度検出手段と、前記水槽と前記ヒートポンプユニットを連通する送風経路と、前記送風経路に設けられたリントフィルターケースと、前記水槽、送風手段、送風経路及びヒートポンプユニットによって一連の乾燥循環経路と、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥等の各行程の少なくとも1つを制御し前記操作・表示部に表示せしめる制御手段とを備え、前記制御手段は、乾燥行程において前記凝縮温度検出手段によって凝縮温度を検出し、前記凝縮温度検出手段によって検出された温度が所定の値を超えたとき、前記ヒートポンプユニットの出力を所定の値まで下げるとともに、前記操作・表示部にフィルター目詰まりサインを表示または報知することを特徴としたドラム式洗濯乾燥機を提供する。
【0007】
これにより、乾燥性能を確保し信頼性の高いフィルター目詰まり検知を実現した、ドラム式洗濯乾燥機を提供することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、乾燥工程中のヒートポンプユニットの冷媒凝縮温度を検出することにより、使用者にフィルター目詰まり状態であることを正確に報知でき、性能低下の防止や安全性を確保した信頼性の高いドラム式洗濯乾燥機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施例を示すドラム式洗濯乾燥機の構成図
【図2】本発明におけるヒートポンプ方式乾燥機の動作原理図
【図3】本発明におけるヒートポンプユニットの凝縮温度aの変化および動作を表す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、筐体内に収められた水槽と、前記筐体に設けられた操作・表示部と、前記水槽内に回転可能に設けた回転ドラムと、前記水槽内に開口した温風吹き出し口と、前記温風吹き出し口を介して連通した送風手段と、前記送風手段による送風を加熱除湿するヒートポンプユニットと、前記ヒートポンプユニットの冷媒凝縮温度を検出する凝縮温度検出手段と、前記水槽と前記ヒートポンプユニットを連通する送風経路と、前記送風経路に設けられたリントフィルターケースと、前記水槽、送風手段、送風経路及びヒートポンプユニットによって一連の乾燥循環経路と、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥等の各行程の少なくとも1つを制御し前記操作・表示部に表示せしめる制御手段とを備え、前記制御手段は、乾燥行程において前記凝縮温度検出手段によって凝縮温度を検出し、前記凝縮温度検出手段によって検出された温度が所定の値を超えたとき、前記ヒートポンプユニットの出力を所定の値まで下げるとともに、前記操作・表示部にフィルター目詰まりサインを表示または報知することを特徴とする。
【0011】
これにより過度にリントフィルターケースが目詰まりした場合でも、使用者に凝縮温度の過度な上昇を報知することができ、原因であるリントフィルターケースのリントを掃除することにより、ヒートポンプユニットの停止を未然に防ぐことが可能となり、乾燥性能低下の防止や安全性を確保した信頼性の高いドラム式洗濯乾燥機を提供することができる。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、従来例と同じ構成のものは同一符号を付して説明を省略する。また、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0013】
(実施の形態1)
以下本発明の一実施例として図1及び図2、図3を参照しながら説明する。
図1は、ヒートポンプ乾燥方式のドラム式洗濯乾燥機1の構成を示すもので、図2は、同ドラム式洗濯機の乾燥サイクルを示すもので、図3はヒートポンプユニットの凝縮温度aの変化を表す図である。以下、その構成について説明する。
【0014】
図1において、回転ドラム2を内包する水槽3の背面にはドラム駆動モータ4が取り付けられ、水槽3に設けられた軸受5によって軸支された回転ドラム2の回転軸6を前記ドラム駆動モータ4により回転駆動するようにして水槽ユニット7が構成されている。
【0015】
この水槽ユニット7は、回転ドラム2の回転軸心が正面側で上向きとなる傾斜角度にして洗濯機筐体8内でサスペンション構造により支持されている。水槽3及び回転ドラム2はそれぞれ正面側で開口し、洗濯機筐体8の正面に設けられた扉体9を開くことにより、回転ドラム2の洗濯物出入口10から洗濯物を出し入れすることができる。扉体9を閉じると、水槽3の開口部に設けられたベローズ11が扉体9の内面に密接するので、水槽3内は水密及び気密空間になり、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥の各工程を実行する際に水や空
気が外部に漏れないように構成されている。
【0016】
上述のとおり洗濯機筺体8内に水槽ユニット7が傾斜配置されることによって、洗濯機筺体8の背面側下部に形成される空間に収まるようにヒートポンプユニット12が配設されている。洗濯機筺体8は、防水パンなど面積が限られた既存の設置場所にドラム式洗濯乾燥機1を設置することできるようにしているが、その体積には制限があり、大きな水槽ユニット7や給水、排水などのための構成要素を収容すると余剰空間は少なくなる。しかしながら、ヒートポンプユニット12をコンパクトに構成することによって洗濯機筺体8を大型化させることがないことを可能としている。
【0017】
このヒートポンプユニット12は、ユニットケース13内に圧縮機14(図2参照)、吸熱器15、放熱器16を収容し、ユニットケース13内に設けられた吸熱器15に連通する温風吸気口17に吸湿空気送風ダクト18を連結し、放熱器16に連通する温風吹き出し口19に排気接続管20を連結して構成されている。ユニットケース13の吸熱器15に対応する底面には、吸熱器15から滴下した結露水を受ける貯水部21が形成され、貯水部21に貯留された水は塵埃濾過フィルタ22を通して貯留水排水口から図示しない排水ポンプにより排水される。
【0018】
吸熱器15及び放熱器16は、図2に示すとおり、それぞれの一方面が所定間隔を隔てて対面し、それぞれの他方面にユニットケース13の壁面との間で空気流路となる空間が形成され、吸熱器15側の吸気空間から吸熱器15及び放熱器16を通って放熱器16側の排気空間に抜ける空気流路が形成されるように、それぞれの両端部が一対の側壁板23で保持された吸熱・放熱ユニットとしてユニットケース13内に収容されている。
【0019】
尚、図1に示すように吸熱器15は上部が放熱器16に近づくように傾斜配置され、上部を吸熱器15の側に傾斜させた放熱器16とで互いに傾斜状態にして対面させることにより、空気が流れる経路を有効に確保し、ヒートポンプユニット12を水槽ユニット7の後方に形成された限られた空間に配設することを可能にしている。
【0020】
上記構成によるヒートポンプユニット12と水槽ユニット7との間は、図2に示す送風循環経路により接続される。水槽3には、その背面に温風吹き出し口19が形成され、側周面には温風吸気口17が形成されており、温風吹き出し口19とヒートポンプユニット12の間を加熱空気送風ダクト24で接続し、温風吸気口17と送風ファン25は着脱自在のメッシュフィルター26、フィルターケース27とからなり、ジャバラ28によって可撓支持されたリントフィルターケース29(図1)を介して、吸湿空気送風ダクト18で接続連通され一連の衣類乾燥のための送風循環経路を形成している。
【0021】
回転ドラム2には、その側周面に水槽3内との間で水及び空気の流通が自由になされるように多数の透孔30が形成され、回転ドラム2の底面には温風吹き出し口19に連通する多数の空気導入孔31が設けられているので、ヒートポンプユニット12から加熱空気送風ダクト24を経て送給されてきた乾燥した加熱空気は、図2に矢印で示すように温風吹き出し口19から回転ドラム2内にその底面から導入することができる。また、回転ドラム2内に収容された衣類から水分を奪った加熱空気は吸湿空気となり、図2に矢印で示すように透孔30から水槽3内に抜け、温風吸気口17から吸湿空気送風ダクト18を介してヒートポンプユニット12に向けて排出される。
【0022】
洗濯を行うときには、扉体9を開いて回転ドラム2内に洗濯物を投入し、操作・表示部31から指示入力を行って図示しない制御手段が運転開始することにより、図示しない給水管路から水槽3内に水及び洗剤が供給され、ドラム駆動モータ4により回転ドラム2が回転駆動されて洗濯工程が開始される。回転ドラム2はその内周面の複数箇所に設けられ
た攪拌翼32が洗濯物を上方に持ち上げ、上方から落下させる叩き洗いの作用が繰り返されることにより洗濯が行われる。この洗濯工程の後、すすぎ工程、脱水工程が実行されることにより洗濯は完了する。洗濯工程から乾燥工程までを一貫して実施する運転コースを選択入力した場合には、洗濯が完了すれば図示しない制御手段は洗濯終了後に乾燥工程に移行させる。また、ぬれた衣類33(以下、衣類と総称する)を乾燥させる場合などでは、乾燥工程のみを実施することができる。
【0023】
乾燥工程においては、回転ドラム2内に脱水を終えた洗濯物あるいは衣類33を収容して乾燥工程を実施すると、回転ドラム2が乾燥工程に対応する回転速度で回転して衣類33を攪拌すると同時に、ヒートポンプユニット12及び送風ファン25が駆動されて乾燥用空気の循環が開始される。
【0024】
図2に示すように、圧縮機14によって断熱圧縮され高圧となった冷媒は冷媒管路34を流れ、放熱器16内で凝縮し液化する。さらに液化した冷媒は絞り手段35によって膨張減圧され、吸湿空気と熱交換しながら吸熱器15内で気化し再び圧縮機14に送られ一連の冷凍サイクルを形成する。圧縮機14で加圧された冷媒は放熱器16内に圧送され凝縮することによって凝縮潜熱を発生する。この凝縮潜熱は放熱器16外壁に配設された多数の放熱フィン36に熱伝導され、放熱フィン36と接する低温空気との間で熱交換し加熱空気が生成される。37は圧縮された冷媒の凝縮温度を検知する凝縮温度サーミスターである。加熱空気は排気空間から加熱空気送風ダクト24を経て温風吹き出し口19から回転ドラム2内に送給され、回転ドラム2の回転によって攪拌される衣類から水分を奪い吸湿空気となって温風吸気口17から吸湿空気送風ダクト18に排出される。
【0025】
吸湿空気送風ダクト18に排出された吸湿空気はヒートポンプユニット12の吸気空間に送られ、絞り手段34により減圧された冷媒が蒸発するときに、吸熱器15に設けられた冷却フィン38を介しで蒸発潜熱を奪われ、露点以下まで冷却され除湿される。除湿されることにより生じた結露水は貯水部20に滴下し、除湿後の乾いた空気は放熱器16に入って再び加熱される空気循環が形成される。または貯水部20に貯留された結露水は、排水ポンプ(図示しない)が一定時間毎に運転されることにより、水槽3内に排出され、排水弁39が開かれることにより排水口40から排水管路41を通って外部に排水される。
【0026】
乾燥用空気をヒートポンプユニット12により加熱、除湿するヒートポンプ方式の乾燥機能の構成は、吸熱器15で冷媒の蒸発潜熱として大気中から吸熱した熱エネルギーを、冷媒の凝縮潜熱として放熱器16によって乾燥用空気に授受することが可能となり、ヒータ式乾燥機のような高出力の加熱装置を必要とせず、圧縮機14に入力したエネルギー以上の熱エネルギーを衣類33に与えることができ、乾燥時間の短縮と省エネルギーとを実現することが可能となる。
【0027】
また、乾燥の進行とともに衣類32から発生したリントは、吸湿空気送風ダクト18に設けられたリントフィルター29を構成するメッシュフィルター26に捕獲される。
【0028】
図3は、本発明におけるヒートポンプユニット12の冷媒の凝縮温度aの変化及びヒートポンプユニット12のON/OFF状態bを表している。乾燥行程に入り凝縮温度aは徐々に上昇していき温調温度Taになると、制御装置は、ヒートポンプユニット12の出力を下げ乾燥用空気温度を下げる。これにより放熱器16は低温空気によって空冷され、凝縮温度aが下がる(実線)。
【0029】
しかし、メッシュフィルター26が目詰まりしている場合は、十分な乾燥用空気がヒートポンプユニット12に送られず、その結果凝縮温度aが上昇を継続し温度過昇保護温度
Tmになり(点線)、ヒートポンプユニット12が所定の時間Ka停止する。この動作を所定の回数繰り返すと、凝縮温度異常としてヒートポンプユニット12を乾燥終了所定時間まで完全に停止する。したがって、冷媒の凝縮温度がフィルター目詰まり温度Tfに到達(c点)した時点で、ヒートポンプユニット12の出力を所定の値(d)まで下げるとともに、操作・表示部31にフィルター目詰まり報知を行うことにより、使用者に容易に着脱自在なメッシュフィルター26に堆積したリントの掃除の必要性を知らすことができ、凝縮温度異常によるヒートポンプユニット12の停止を未然に防ぐことが可能となり、乾燥性能低下の防止や安全性を確保した信頼性の高いドラム式洗濯乾燥機を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明にかかるドラム式洗濯乾燥機は、リントフィルターの目詰まりによる乾燥性能低下を未然に抑えることが可能となり、信頼性の高いドラム式洗濯乾燥機を提供すものとして有用である。
【符号の説明】
【0031】
1 ヒートポンプ方式のドラム式洗濯乾燥機
2 回転ドラム
3 水槽
4 駆動モータ
5 軸受
6 回転軸
7 水槽ユニット
8 洗濯機筺体
9 扉体
10 洗濯物出入り口
11 ベローズ
12 ヒートポンプユニット
13 ユニットケース
14 圧縮機
15 吸熱器
16 放熱器
17 温風吸気口
18 吸湿空気送風ダクト
19 温風吹き出し口
20 排気接続管
21 貯水部
22 塵埃濾過フィルタ
23 側壁板
24 加熱空気送風ダクト
25 送風ファン
26 メッシュフィルター
27 フィルターケース
28 ジャバラ
29 リントフィルターケース
30 透孔
31 操作・表示部
32 攪拌翼
33 衣類
34 冷媒管路
35 絞り手段
36 放熱フィン
37 凝縮温度サーミスター
38 冷却フィン
39 排水弁
40 排水口
41 排水管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に収められた水槽と、前記筐体に設けられた操作・表示部と、前記水槽内に回転可能に設けた回転ドラムと、前記水槽内に開口した温風吹き出し口と、前記温風吹き出し口を介して連通した送風手段と、前記送風手段による送風を加熱除湿するヒートポンプユニットと、前記ヒートポンプユニットの冷媒凝縮温度を検出する凝縮温度検出手段と、前記水槽と前記ヒートポンプユニットを連通する送風経路と、前記送風経路に設けられたリントフィルターケースと、前記水槽、送風手段、送風経路及びヒートポンプユニットによって一連の乾燥循環経路と、洗濯、すすぎ、脱水、乾燥等の各行程の少なくとも1つを制御し前記操作・表示部に表示せしめる制御手段とを備え、前記制御手段は、乾燥行程において前記凝縮温度検出手段によって凝縮温度を検出し、前記凝縮温度検出手段によって検出された温度が所定の値を超えたとき、前記ヒートポンプユニットの出力を所定の値まで下げるとともに、前記操作・表示部にフィルター目詰まりサインを表示または報知することを特徴としたドラム式洗濯乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−67235(P2011−67235A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218439(P2009−218439)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】