説明

ナノインプリント用テンプレートの検査方法

【課題】精度良く微細なパターンを検査することが可能なナノインプリント用テンプレートの検査方法を提供する。
【解決手段】表面にパターンが形成されたナノインプリント用のテンプレート100の裏面側からテンプレート100に光を照射する工程と、光の照射によってテンプレート100の表面近傍に発生する近接場光を検出する工程と、検出された近接場光に基づいてテンプレート100の検査を行う工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント用テンプレートの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノインプリント用テンプレートの微細化に伴い、高精度なテンプレートの検査方法が求められている。このテンプレートの検査方法として、光学的な検査方法を考えた場合、検査分解能は回折限界で制限されるため、波長より十分小さな欠陥の検出は困難である。
【0003】
微細なパターンを有する半導体装置の欠陥を検出する方法として、波長より小さな領域に光を閉じ込める技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。この特許文献1に記載の方法では、電子正孔対を発生させ、半導体装置中の光励起電流の変化を見ている。しかし、電流を流さない非導電性の物質で構成されているナノインプリント用テンプレートにおいては、微小電流の変化で欠陥を検出することは困難である。
【0004】
このため、微細なパターンを有するテンプレートを精度良く検査する方法が提案されているとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−164663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、精度良く微細なパターンを検査することが可能なナノインプリント用テンプレートの検査方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一視点に係るナノインプリント用テンプレートの検査方法の態様は、表面にパターンが形成されたナノインプリント用のテンプレートの裏面側からテンプレートに光を照射する工程と、前記光の照射によってテンプレートの表面近傍に発生する近接場光を検出する工程と、前記検出された近接場光に基づいて前記テンプレートの検査を行う工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、精度良く微細なパターンを検査することが可能なナノインプリント用テンプレートの検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係るナノインプリント用テンプレートの検査装置の基本的な構成を概略的に示した図である。
【図2】本発明の実施形態に係るナノインプリント用テンプレートの検査装置の基本的な構成の一部を概略的に示した図である。
【図3】本発明の実施形態に係るナノインプリント用テンプレートの検査装置の基本的な構成を概略的に示した図である。
【図4】本発明の実施形態に係るナノインプリント用テンプレートの検査装置の基本的な構成を概略的に示した図である。
【図5】図5(a)は、ナノインプリント用テンプレートの設計データを用いてシミュレーションを行う際のテンプレートの設定を示す図であり、図5(b)は、ナノインプリント用テンプレートの設計データを用いてシミュレーションを行うことによって算出されるテンプレートの表面近傍に発生する近接場光の強度分布を示す図である。
【図6】図6(a)は、ナノインプリント用テンプレートの設計データを用いてシミュレーションを行う際のテンプレートの設定を示す図であり、図6(b)は、ナノインプリント用テンプレートの設計データを用いてシミュレーションを行うことによって算出されるテンプレートの表面近傍に発生する近接場光の強度分布を示す図である。
【図7】図7(a)は、ナノインプリント用テンプレートの設計データを用いてシミュレーションを行う際のテンプレートの設定を示す図であり、図7(b)は、ナノインプリント用テンプレートの設計データを用いてシミュレーションを行うことによって算出されるテンプレートの表面近傍に発生する近接場光の強度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態の詳細を図面を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1及び図2を用いて、本発明の第1の実施形態に係るナノインプリント用テンプレートの検査方法を説明する。
【0012】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係るナノインプリント用テンプレートの検査装置の基本的な構成を概略的に示した図である。
【0013】
図1に示すように、ナノインプリント用テンプレートの検査装置1は、検査対象となるテンプレート100を固定する治具部101と、テンプレート100の裏面側に光を照射する光源部102と、治具部101及び光源部102の間に設けられた偏光板103と、テンプレート100の表面側(パターン形成面側)に発生する近接場光を観測するプローブ104と、プローブ104が観測した光電子を増幅させる光電子増倍管105と、光電子増倍管105で増幅された光電子を検出する検出器106と、検出器106が検出した近接場光の情報を記録する記憶部107aと、検出器106によって検出された近接場光の信号に基づいて、近接場光強度とテンプレートの位置との関係を導出する計算部107bと、例えばプローブ104及び記憶部107aに接続され、プローブ104の位置制御を行うxyz制御部108と、を備えている。
【0014】
テンプレート100は非導電性材料で形成されており、表面側には周期的なライン・アンド・スペース(L/S)パターンが形成されている。そして、このL/Sパターンのピッチは光源部102から供給される光の波長に比べて充分小さい(例えば、40〜60nm程度)。また、プローブ104は、例えば光ファイバーの先端を先鋭化したファイバープローブである。このプローブ104は、nmオーダーの曲率半径を有する先端部と、前記先端部近傍に設けられ近接場光以外の光がプローブ104内に入射されないように光の波長よりも充分に小さい曲率半径を有する微小な開口部とを含んでいる。
【0015】
次に、ナノインプリント用テンプレートの検査装置1を用いた具体的なテンプレートの検査方法を説明する。
【0016】
まず、治具部101に、検査を行うテンプレート100を配置し固定する。そして、光源部102から光を発生させ、偏光板103を介し、テンプレート100の裏面側からテンプレート100に光を照射する。この光の照射によって、テンプレート100の表面側に近接場光が発生する。
【0017】
次に、xyz制御部108は、プローブ104の高さ(Z方向)を調整してテンプレート100の表面に近づけ、テンプレート100の表面に沿ってX方向及びY方向にプローブ104移動させる。近接場光が発生している領域にプローブ104を近づけることで、プローブ104の先端部が近接場光を受光し、プローブ104の先端部において近接場光の信号となる散乱光が発生する。そして、プローブ104に接続された光電子増倍管105によって近接場光の信号(散乱光の信号)を増幅させ、検出器106で近接場光の信号を検出する。
【0018】
そして、検出器106によって検出された近接場光の信号に基づいて、計算部107bは近接場光強度とテンプレートの位置との関係を導出する。これにより、テンプレート100の表面近傍に発生する近接場光の強度分布が求められる。
【0019】
また、このテンプレート100には、周期的なL/Sパターンが形成されているため、理想的なL/Sパターンが形成されている場合は、近接場光の強度分布からも周期性が確認できる。しかし、図2に示すように、テンプレート100にレジスト(異物)詰り、あるいはテンプレートの破損等の欠陥がある場合には、近接場光の強度の絶対値の変化あるいは周期性の変化が発生する。このため、L/Sパターン形成領域において、近接場光の強度の絶対値の変化あるいは周期性の変化が確認できた場合、変化が確認された箇所において欠陥が存在することがわかる。
【0020】
そして、テンプレート100に欠陥が確認された場合、つまり近接場光の強度の絶対値が変化あるいは周期が変化した場合は、テンプレート100にレジスト詰りの可能性があるため、テンプレート100の洗浄を行う。そして、再びテンプレート100の近接場光の測定を行う。この再測定において近接場光の強度の絶対値が変化あるいは周期が変化した場合は、テンプレート100に破損等の欠陥が存在する可能性が高いため、テンプレート100を破棄する。
【0021】
上記第1の実施形態によれば、テンプレート100の裏面側からテンプレート100に光を照射し、それによってテンプレート100の表面側に発生する近接場光をプローブ104を用いて測定している。そして、プローブ104によって検出された情報に基づいて、計算部107bを用いて近接場光強度分布を導出する。近接場光はnmオーダーの領域に発生する非伝播光であり、プローブ104を用いることで、nmオーダーの分解能を有している。この近接場光強度分布を参照することで、光の波長よりも短いnmオーダーのパターンを有するテンプレートにおけるレジスト詰りあるいはテンプレートの破損等の欠陥の有無を判定することが可能である。このため、nmオーダーのピッチを有するパターンにおいても、正確に欠陥の発生箇所を特定することが可能である。これにより、テンプレートの欠陥の有無の判定のみではなく、正確な欠陥箇所の特定も可能となる。この結果、テンプレートのパターンが転写されて形成される実デバイスにおける欠陥の発生を未然に防止することができ、歩留まりが向上し製造コストを削減することが可能である。
【0022】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態の検査方法では、テンプレート100の表面側に発生する近接場光の強度の絶対値の変化あるいは周期性の変化を参照することで、テンプレートの欠陥の有無と、欠陥箇所とを特定している。第2の実施形態では、無欠陥である参照テンプレート200を用いた近接場光の測定結果と、テンプレート100の表面側に発生する近接場光の測定結果とを比較することで、テンプレートの欠陥の有無と、欠陥箇所とを特定する方法を説明する。
【0023】
図1及び図3を用いて、本発明の第2の実施形態に係るナノインプリント用テンプレートの検査方法を説明する。なお、基本的な構造及び、基本的な検査方法は、上述した第1の実施形態と同様である。したがって、上述した第1の実施形態で説明した事項及び上述した第1の実施形態から容易に類推可能な事項についての説明は省略する。
【0024】
図1及び図3は、本発明の実施形態に係るナノインプリント用テンプレートの検査装置の基本的な構成を概略的に示した図である。
【0025】
まず、理想的な近接場光強度分布を導出するために無欠陥の理想的なテンプレート(参照テンプレート)200を用いて近接場光の測定を行う。この参照テンプレート200の基本的な構成はテンプレート100と同一である。参照テンプレート200の選出方法として、例えば、実際にテンプレートに形成されたパターンを転写してSEM等で転写されたパターンを観察することで、欠陥の有無を判定する。そして、テンプレートが無欠陥と判定された場合、該テンプレートは参照テンプレート200となる。また、この参照テンプレート200を用いてプロセスを行うことで、参照テンプレート200は使用済みのテンプレート100となる。図3に示すように、参照テンプレート200を治具部101に配置し固定する。そして、光源部102から光を発生させ、偏光板103を介し、参照テンプレート200の裏面側から参照テンプレート200に光を照射する。
【0026】
次に、xyz制御部108は、プローブ104のZ方向を調整してプローブ104を参照テンプレート200の表面に近づけ、参照テンプレート200の表面に沿ってX方向及びY方向にプローブ104を移動させる。近接場光が発生している領域にプローブ104を近づけることで、プローブ104の先端部が近接場光の信号となる散乱光を発生させる。そして、プローブ104に接続された光電子増倍管105によって近接場光の信号(散乱光の信号)を増幅させ、検出器106で近接場光の信号を検出する。
【0027】
そして、検出器106によって検出された近接場光の信号に基づいて、計算部107bは近接場光強度とテンプレートの位置との関係を導出する。これにより、参照テンプレート200の表面近傍に発生する近接場光の強度分布が求められる。この近接場強度分布を理想的な近接場強度分布として、記憶部107aに記録する。
【0028】
次に、図1に示すように、治具部101に使用済みのテンプレート100を配置し固定する。そして、光源部102から光を発生させ、偏光板103を介し、テンプレート100の裏面側からテンプレート100に光を照射する。
【0029】
次に、プローブ104のZ方向を調整し、テンプレート100の表面に沿ってX方向及びY方向にプローブ104を移動させる。近接場光が発生している領域にプローブ104を近づけることで、プローブ104の先端部が近接場光の信号を発生させる。そして、プローブ104に接続された光電子増倍管105を介して、検出器106で近接場光の信号を検出する。
【0030】
そして、検出器106によって検出された近接場光の信号に基づいて、計算部107bは近接場光強度とテンプレートの位置との関係を導出する。これにより、テンプレート100の表面近傍に発生する近接場光の強度分布が求められる。
【0031】
次に、計算部107bによって、理想的な近接場光強度分布とテンプレート100について求められた近接場光強度分布とを比較する。近接場光の強度の絶対値の変化あるいは周期性の変化等が確認されない場合は、テンプレート100に、レジスト詰りあるいはテンプレートの破損等の欠陥が存在しないと判定される。また、近接場光の強度の絶対値の変化あるいは周期性の変化等が確認された場合は、変化が確認できた箇所において欠陥が存在すると判定される。
【0032】
そして、欠陥が確認された場合、つまり近接場光の強度の絶対値が変化あるいは周期が変化した場合は、テンプレート100の洗浄を行う。そして、再び近接場光の測定を行う。洗浄後のテンプレート100において近接場光の強度の絶対値が変化あるいは周期が変化した場合は、テンプレート100を破棄する。
【0033】
上記第2の実施形態によれば、無欠陥である参照テンプレート200の裏面側から参照テンプレート200に光を照射し、それによって参照テンプレート200の表面側に発生する近接場光をプローブ104を用いて測定している。そして、プローブ104によって検出された情報に基づいて、計算部107bを用いて理想的な近接場光強度分布を導出する。そして、上述した第1の実施形態と同様に、測定対象となるテンプレート100の裏面側からテンプレート100に光を照射し、それによってテンプレート100の表面側に発生する近接場光をプローブ104を用いて測定している。そして、プローブ104によって検出された情報に基づいて、計算部107bを用いて近接場光強度分布を導出する。その後。無欠陥である参照テンプレート200を用いた近接場光の測定結果と、テンプレート100から検出される近接場光の測定結果とを比較する。近接場光を参照することで、光の波長よりも短いnmオーダーのパターンを有するテンプレートにおいても、正確にテンプレートの欠陥の有無と、欠陥箇所とを特定することが可能である。この結果、テンプレートのパターンが転写されて形成される実デバイスにおける欠陥の発生を未然に防止することができ、歩留まりが向上し製造コストを削減することが可能である。
【0034】
(第3の実施形態)
上述した第1の実施形態の検査方法では、テンプレート100の表面側に発生する近接場光の強度の絶対値の変化あるいは周期性の変化を参照することで、テンプレートの欠陥の有無と、欠陥箇所とを特定している。第3の実施形態では、テンプレート100の設計データを用いたシミュレーションによって近接場光を予測し、テンプレート100から実際に検出される近接場光の測定結果と比較することで、テンプレートの欠陥の有無、欠陥箇所及び欠陥の種類を特定する方法を説明する。
【0035】
図4〜図7を用いて、本発明の第3の実施形態に係るナノインプリント用テンプレートの検査方法を説明する。なお、基本的な構造及び、基本的な形成方法は、上述した第1の実施形態と同様である。したがって、上述した第1の実施形態で説明した事項及び上述した第1の実施形態から容易に類推可能な事項についての説明は省略する。
【0036】
図4は、本発明の実施形態に係るナノインプリント用テンプレートの検査装置の基本的な構成を概略的に示した図である。
【0037】
図4に示すように、治具部101にテンプレート100を配置し固定する。そして、光源部102から光を発生させ、偏光板103を介し、テンプレート100の裏面側からテンプレート100に光を照射する。
【0038】
次に、xyz制御部108は、プローブ104のZ方向を調整してテンプレート100の表面に近づけ、テンプレート100の表面に沿ってX方向及びY方向にプローブ104移動させる。近接場光が発生している領域にプローブ104を近づけることで、プローブ104の先端部が近接場光の信号を発生させる。そして、プローブ104に接続された光電子増倍管105によって近接場光の信号を増幅させ、検出器106で近接場光の信号を検出する。
【0039】
そして、検出器106によって検出された近接場光の信号に基づいて、計算部107bは近接場光強度とテンプレートの位置との関係を導出する。これにより、テンプレート100の表面近傍に発生する近接場光の強度分布が求められる。
【0040】
本実施形態では、計算部107bでは、パターン設計データ109からテンプレート100の設計データを取得して予め近接場光計測シミュレーションを行っておく。
【0041】
図5〜7を用いて、テンプレート100の設計データを用いたシミュレーションの方法を概略的に説明する。
【0042】
図5(a)〜図7(a)は、ナノインプリント用テンプレートの設計データを用いてシミュレーションを行う際のテンプレートの設定を示す図であり、図5(b)〜図7(b)は、ナノインプリント用テンプレートの設計データを用いてシミュレーションを行うことによって算出されるテンプレートの表面近傍に発生する近接場光の強度分布を示す図である。ここで、図5(b)〜図7(b)に示す図の横軸はテンプレートの位置に対応しており、縦軸には近接場光強度が示されている。
【0043】
図5に示すように、周期的なL/Sパターンを有するテンプレート100が欠陥を含まない場合、L/Sパターンの周期性に従った近接場光強度分布が得られる。このシミュレーションデータを、基準の近接場光強度分布とする。
【0044】
図6は、L/Sパターンの一部に、テンプレート100を構成している物質とは異なる微小な物質(レジスト材料等)が詰まった場合のシミュレーション結果である。この場合、テンプレート座標100nm〜120nmの位置の近接場光強度はその周囲の近接場光強度と比べると絶対値が局所的に減少していることがわかる。この座標は、テンプレート100内部に幅20nm程度の欠陥物質が詰まっている位置である。このような強度分布が得られた場合には、微小物質の詰りであると推測できる。なお、近接場光は、光の空間的位相と波長によらず、物質の分極に依存している。このため、テンプレートを形成している物質と、詰まっている欠陥物質の違いが、テンプレートに励起される近接場光信号に反映されていると考えられるため、欠陥箇所の特定だけでなく詰められた物質を推測することも可能である。
【0045】
図7は、L/Sパターンの一部が破損している場合のシミュレーション結果である。この場合、破損部分であるテンプレート座標60nm〜120nmの位置で、近接場光強度分布の幅が周囲よりも40nmほど広くなっている。破損しているテンプレートではL/Sの周期性の乱れが発生するため、近接場光強度の幅(周期)にも変化が現れたと考えられる。この結果、ナノメートルスケールの欠陥箇所を抽出するだけでなく、周期性異常と判定し、テンプレートの破損を推測することが可能になる。
【0046】
従って、図5示したような理想的な近接場光強度分布を記憶しておき、図6及び図7で述べた様な欠陥の種類に応じた近接場光強度分布の特徴を情報として予め記憶しておく。
【0047】
そして、計算部107bでは、上記のようにして求められたシミュレーション結果に基づく近接場光強度分布と、図4の工程で実際に導出されたテンプレート100の近接場光強度分布の比較を行う。図5(b)に示したように、実際に導出されたテンプレート100の近接場光強度分布において特に変化の無い場合は、テンプレート100は無欠陥と判定され、テンプレート100の近接場光強度分布において変化のある場合は、テンプレート100は欠陥があると判定される。
【0048】
テンプレート100は欠陥があると判定された場合、テンプレート100の近接場光強度分布において強度の絶対値の変化が確認できた場合は、変化が確認できた箇所でレジスト等がパターンに詰まっていると判定される。パターンにレジスト等が詰まっていると判定された場合は、テンプレート100の洗浄が行われる。なお、詰まっている物質の分極によって詰まり方や物質の種類等が判定できる。これにより、洗浄によって該物質が除去可能か否かを判定することも可能である。また、テンプレート100の近接場光強度分布において分布の周期性の変化が確認できた場合は、変化が確認できた箇所でテンプレートの破損等が存在すると判定される。テンプレートの破損が確認された場合は、テンプレート100を廃棄する。
【0049】
上記第3の実施形態によれば、テンプレート100の設計データを用いて予めシミュレーションを行っておく。これにより、理想的なテンプレートの近接場光強度分布が予測されるとともに、テンプレートの様々な状態に応じた近接場光強度分布が予測され、欠陥の種類による分布の特徴などの判定も可能となる。また、上述した第1の実施形態と同様に、テンプレート100の裏面側からテンプレート100に光を照射し、それによってテンプレート100の表面側に発生する近接場光をプローブ104を用いて測定している。そして、プローブ104によって検出された情報に基づいて、計算部107bを用いて近接場光強度分布を導出する。そして、予測した近接場強度分布と実際に計測したテンプレート100の近接場光強度分布とを比較することで、テンプレート100の欠陥の種類及び欠陥の箇所を正確に判定している。近接場光を参照することで、光の波長よりも短いnmオーダーのパターンを有するテンプレートにおいても、正確にテンプレートの欠陥の有無、欠陥箇所及び欠陥の種類を特定することが可能である。この結果、テンプレートのパターンが転写されて形成される実デバイスにおける欠陥の発生を未然に防止することができ、歩留まりがさらに向上し、製造コストを削減することが可能である。
【0050】
(第4の実施形態)
上述した第3の実施形態の検査方法では、テンプレート100の設計データを用い、シミュレーションによって近接場光を予測し、テンプレート100の表面側から実際に検出される近接場光の測定結果と比較することで、テンプレート100の欠陥の有無等を特定している。第4の実施形態では、テンプレート100の表面側から実際に検出される近接場光の測定結果からテンプレート100の仮想的な設計データを導出し、テンプレート100の真の設計データとテンプレート100の仮想的な設計データとを比較することで、テンプレート100の欠陥の有無等を特定している。
【0051】
図4を用いて、本発明の第4の実施形態に係るナノインプリント用テンプレートの検査方法を説明する。なお、基本的な構造及び、基本的な形成方法は、上述した各実施形態と同様である。したがって、上述した各実施形態で説明した事項及び上述した各実施形態から容易に類推可能な事項についての説明は省略する。
【0052】
図4に示すように、治具部101にテンプレート100を配置し固定する。そして、光源部102から光を発生させ、偏光板103を介し、テンプレート100の裏面側からテンプレート100に光を照射する。
【0053】
次に、xyz制御部108は、プローブ104のZ方向を調整してテンプレート100の表面に近づけ、テンプレート100の表面に沿ってX方向及びY方向にプローブ104移動させる。近接場光が発生している領域にプローブ104を近づけることで、プローブ104の先端部が近接場光の信号を発生させる。そして、プローブ104に接続された光電子増倍管105によって近接場光の信号を増幅させ、検出器106で近接場光の信号を検出する。
【0054】
そして、検出器106によって検出された近接場光の信号に基づいて、計算部107bは近接場光強度とテンプレートの位置との関係を導出する。これにより、テンプレート100の表面近傍に発生する近接場光の強度分布が求められる。
【0055】
また、計算部107bでは、テンプレート100の設計データを用いて予め様々な欠陥を有するテンプレートの近接場光計測シミュレーションを行っておき、そのシミュレーション結果をデータベース化しておく。その後、検出された近接場光強度分布及び記憶部107aに記憶されているシミュレーション結果に基づいて、テンプレート100の仮想的な設計データを導出する。
【0056】
そして、計算部107bは、パターン設計データ109から取得したテンプレート100の真の設計データと、テンプレート100の仮想的な設計データとを比較している。
【0057】
そして、テンプレート100の真の設計データと、テンプレート100の仮想的な設計データとを比較し、特に変化の無い場合は、テンプレート100は無欠陥と判定され、テンプレート100の真の設計データと、テンプレート100の仮想的な設計データとを比較し、変化のある場合は、テンプレート100は欠陥があると判定される。
【0058】
テンプレート100は欠陥があると判定された場合、パターンにレジスト等が詰まっていると判定された場合は、テンプレート100の洗浄が行われる。また、テンプレートの破損が確認された場合は、テンプレート100を廃棄する。
【0059】
上記第4の実施形態によれば、テンプレート100の設計データを用いて予めシミュレーションを行い、テンプレートの様々な状態に応じた仮想の近接場光強度分布をデータベース化しておく。そして、上述した第1の実施形態と同様に、テンプレート100の表面側に発生する近接場光を測定している。そして、検出された情報に基づいて近接場光強度分布を導出する。導出された近接場光強度分布及びデータベース化された近接場光強度分布に基づき、テンプレート100の仮想的な設計データを導出している。そして、テンプレート100の仮想的な設計データと実際にテンプレート100を形成する際に使用する真の設計データとを比較することで、テンプレートの欠陥の有無とともにテンプレート100の欠陥の種類及び欠陥の箇所を正確に判定している。上述した各実施形態と同様に、近接場光を参照することで、光の波長よりも短いnmオーダーのパターンを有するテンプレートにおいても、正確にテンプレートの欠陥の有無、欠陥箇所及び欠陥の種類を特定することが可能である。この結果、テンプレートのパターンが転写されて形成される実デバイスにおける欠陥の発生を未然に防止することができ、歩留まりがさらに向上し、製造コストを削減することが可能である。
【0060】
尚、上述した各実施形態において、テンプレート100はL/Sパターンを有しているが、テンプレート100がL/Sパターンを有していない構成であっても、上述した効果と同様の効果を得ることが可能である。
【0061】
また、上述した各実施形態では、記憶部107a及び計算部107bをナノインプリント用テンプレートの検査装置1の一部として説明しているが、記憶部107a及び計算部107bは必ずしも検査装置1の一部である必要はなく、外部構成であってもよい。
【0062】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示された構成要件を適宜組み合わせることによって種々の発明が抽出される。例えば、開示された構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、所定の効果が得られるものであれば、発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0063】
1…検査装置、 100…テンプレート、 101…治具部、
102…光源部、 103…偏光板、 104…プローブ、
105…光電子増倍管、 106…検出器、 107a…記憶部、
107b…計算部、 108…xyz制御部、
109…パターン設計データ、 200…テンプレート、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にパターンが形成されたナノインプリント用のテンプレートの裏面側からテンプレートに光を照射する工程と、
前記光の照射によってテンプレートの表面近傍に発生する近接場光を検出する工程と、
前記検出された近接場光に基づいて前記テンプレートの検査を行う工程と
を備えることを特徴とするナノインプリント用テンプレートの検査方法。
【請求項2】
パターン転写プロセスを行った後の前記テンプレートに対して検出された前記近接場光と、パターン転写プロセスを行う前の前記テンプレートの裏面側からテンプレートに光を照射することで前記テンプレートの表面近傍に発生する近接場光とを比較することで前記検査を行うことを特徴とする請求項1記載のナノインプリント用テンプレートの検査方法。
【請求項3】
前記検出された近接場光と、前記テンプレートの設計データを用いたシミュレーション結果から導出される近接場光とを比較することで前記テンプレートの検査を行うことを特徴とする請求項1記載のナノインプリント用テンプレートの検査方法。
【請求項4】
前記検査を行う際に、前記検出された近接場光の強度の絶対値の変化あるいは周期性の変化を検査することを特徴とする請求項1記載のナノインプリント用テンプレートの検査方法。
【請求項5】
前記検出された近接場光に基づく前記テンプレートの仮想的な設計データを導出し、前記テンプレートの真の設計データと前記テンプレートの仮想的な設計データとを比較することを特徴とする請求項1記載のナノインプリント用テンプレートの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−286309(P2010−286309A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139275(P2009−139275)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】