説明

ナノインプリント用モールドの製造方法

【課題】被加工物の意図しない部位への露光を確実に抑制できるナノインプリント用モールドを簡便に製造するための製造方法を提供する。
【解決手段】基材加工工程にて、凸構造部4に所望の開口6aをもつ遮光性エッチングマスク6が配設され、この開口に対応した凹部5が形成されている基材を作製し、レジスト層形成工程にて、ポジ型感光性レジスト膜21を形成し、開口6aの開口幅よりも大きな波長の光を基材2側から照射して遮光性エッチングマスク6をマスクとしてポジ型感光性レジスト膜21を露光し、現像してレジスト層22を形成し、リフトオフ工程にて、基材に遮光膜8を形成し、その後、レジスト層22を剥離して、凸構造部4の側面および凸構造部4の周囲の基部3のみに遮光膜8を残し、除去工程にて、凸構造部から遮光性エッチングマスクを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物に所望の線、模様等の図形(以下、本発明ではパターンとも言う)を転写形成するナノインプリント用モールドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細加工技術として、近年ナノインプリント技術に注目が集まっている。ナノインプリント技術は、基材の表面に微細な凹凸構造を形成した型部材を用い、凹凸構造を被加工物に転写することで微細構造を等倍転写するパターン形成技術である(特許文献1)。
上記のナノインプリント技術の一つの方法として、光インプリント法が知られている。この光インプリント法では、例えば、基板表面に被加工物として光硬化性の樹脂層を形成し、この樹脂層に所望の凹凸構造を有するモールド(型部材)を押し当てる。そして、この状態でモールド側から樹脂層に紫外線を照射して樹脂層を硬化させ、その後、モールドを樹脂層から引き離す。これにより、モールドが有する凹凸が反転した凹凸構造を被加工物である樹脂層に形成することができる(特許文献2)。このような光インプリントは、従来のフォトリソグラフィ技術では形成が困難なナノメートルオーダーの微細パターンの形成が可能であり、次世代リソグラフィ技術として有望視されている。
【0003】
しかし、光インプリント法では、モールドを押し当てることで余剰となった樹脂が、モールドと樹脂とが接触している領域よりも外側にはみ出し、モールドの側面に付着する。この側面に付着した光硬化性樹脂は紫外線照射によって、凹凸構造を形成すべき部位の樹脂層と同時に硬化する。このとき光の照射を制御せずに硬化を生じさせると、モールドを離型する際に樹脂層には不均一に力が作用し、モールドや被加工物に損傷を与えるという問題があった。
また、モールドが有する微細な凹凸構造を、被加工物上の複数箇所へ形成する際には、ステップアンドリピート方式でパターン形成を行う場合がある。従来のモールドを用いた場合、凹凸構造が形成されているパターン領域より外側を通過する光により、凹凸構造を形成すべき部位より外側の樹脂層も露光され、一度のパターン形成で硬化する領域はモールドのパターン領域よりも大きくなる。一方、光硬化性樹脂層が露光され硬化してしまうと、その箇所にはパターン形成が行えない。このため、隣接するパターンが形成された領域間の境界幅を大きく設定せざるを得ないという問題があった。
【0004】
さらに、モールドを樹脂層から離型する際に樹脂層が異物として付着し、次の加工領域に欠陥を生じるという問題もあった。
このような問題を解消するために、パターン領域ではない部位(非パターン領域)に遮光部材を設けたモールドが提案されている(特許文献3)。この特許文献3では、モールドの一態様として、微細凹凸構造を有する加工面と裏面との間に第3の表面を有する凸構造を有した、いわゆるメサ構造のモールドであって、第3の表面と、加工面と第3の表面との境界である側面とに遮光部材が配設されているモールドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号
【特許文献2】特表2002−539604号公報
【特許文献3】特開2007−103924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のようなメサ構造を有するモールドの製造では、以下のような問題があった。すなわち、微細な凹凸構造を有する加工面を形成した後に遮光部材を設ける場合、遮光部材の形成工程で、加工面の微細な凹凸構造に損傷が生じるという問題があった。また、第3の表面(凸構造の存在しない部位)に遮光部材を設けるために、マスクを用いた成膜工程が必要となり、工程が煩雑になるという問題もあった。一方、メサ構造の基材の加工面を除いた他の面に先に遮光部材を形成し、その後、加工面に微細な凹凸構造を形成する場合、凹凸構造の形成工程で遮光部材に損傷が生じ、遮光部材による遮光が不完全なものになるという問題があった。
本発明は、上述のような実情に鑑みてなされたものであり、被加工物の意図しない部位への露光を確実に抑制できるナノインプリント用モールドを簡便に製造するための製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明は、基部と、該基部の一方の面から突出するとともに凹部が形成された凸構造部と、を備える基材を有し、前記凸構造部の周囲の前記基部は遮光膜で被覆され、さらに、前記凸構造部の側面は遮光膜で被覆されているナノインプリント用モールドの製造方法において、基部と、該基部の一方の面から突出した凸構造部とを備え、該凸構造部上に所望の開口をもつ遮光性エッチングマスクが位置し、該開口に対応するように凹部が前記凸構造部に形成されている基材を作製する基材加工工程と、前記遮光性エッチングマスクを被覆するように前記基材にポジ型感光性レジスト膜を形成し、前記開口の開口幅よりも大きな波長の光を前記基材側から照射して前記遮光性エッチングマスクをマスクとして前記ポジ型感光性レジスト膜を露光し、その後、現像して前記遮光性エッチングマスク上にレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、該レジスト層を被覆するように前記基材に遮光膜を形成し、その後、前記レジスト層を剥離するとともに、レジスト層上の前記遮光膜を除去することにより、前記凸構造部の側面および前記基部のみに前記遮光膜を残すリフトオフ工程と、前記遮光膜よりも前記遮光性エッチングマスクに対する選択エッチング性をもつエッチャントを用いて、前記凸構造部から前記遮光性エッチングマスクを除去する除去工程と、を有するような構成とした。
【0008】
本発明の他の態様として、前記レジスト層形成工程において、前記遮光性エッチングマスク上に形成する前記レジスト層の厚みは、0.5〜50μmの範囲内とするような構成とした。
本発明の他の態様として、前記レジスト層形成工程において、前記遮光性エッチングマスク上に形成した前記レジスト層に対して熱処理を施すような構成とした。
本発明の他の態様として、前記遮光性エッチングマスクの前記開口の開口幅を20〜400nmの範囲とするような構成とした。
本発明の他の態様として、前記遮光性エッチングマスクの材質と前記遮光膜の材質の組み合わせを、クロム/シリコン、クロム/チタン、クロム/モリブデン、アルミニウム/クロム、クロム/タンタル、クロム/タングステンのいずれか1種とするような構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レジスト層形成工程において、基材側から光を照射することにより遮光性エッチングマスクをマスクとしてポジ型感光性レジスト膜を露光するときに、遮光性エッチングマスクの開口の開口幅よりも大きな波長の光を照射光として用いるので、遮光性エッチングマスクの開口を照射光が透過することが阻害されて遮光性エッチングマスク上のレジスト膜は露光されず、その後の現像によって、遮光性エッチングマスク上のみにレジスト層を形成することができ、後工程であるリフトオフ工程にて、遮光性エッチングマスク上のレジスト層を剥離することで、フォトマスクを使用することなく凸構造部の側面および基部のみに遮光膜を確実に残すことが可能となり、工程が簡便なものであり、さらに、遮光性エッチングマスクが、凸構造部に形成されている凹部を、レジスト層形成工程およびリフトオフ工程において保護する作用をなすので、凹部の損傷が防止され、これにより、被加工物の意図しない部位への露光を確実に抑制できるナノインプリント用モールドを簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のナノインプリント用モールドの製造方法により製造されるナノインプリント用モールドの一例を示す断面図である。
【図2】本発明のナノインプリント用モールドの製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。
【図3】本発明のナノインプリント用モールドの製造方法の一実施形態を説明するための工程図である。
【図4】本発明の基材加工工程における基材の加工の一例を説明するための工程図である。
【図5】本発明の基材加工工程における基材の加工の一例を説明するための工程図である。
【図6】本発明のナノインプリント用モールドの製造方法により製造されるナノインプリント用モールドを用いたパターン形成の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
まず、本発明のナノインプリント用モールドの製造方法により製造されるナノインプリント用モールドの一例を、図1を参照して説明する。
図1に示されるナノインプリント用モールド1は、メサ構造のナノインプリント用モールドであり、透明な基材2と、この基材2に画定されたパターン領域Xと、このパターン領域Xの周囲に位置する非パターン領域Yとを有している。基材2は、基部3と、この基部3の一方の面から突出した凸構造部4とを有し、凸構造部4の表面4aは凹部5を備えているとともに、この凹部5はパターン領域Xに位置している。また、凸構造部4の周囲の基部3の表面3aは非パターン領域Yに位置するとともに遮光膜8で被覆され、さらに、凸構造部4の側面4bも遮光膜8で被覆されている。このように、非パターン領域Yに位置している遮光膜8は、基材2の裏面2bから非パターン領域Yに照射された光を遮蔽して、被加工物の意図しない部位への露光を抑制するための部材である。
【0012】
次に、本発明のナノインプリント用モールドの製造方法について説明する。
図2および図3は、本発明のナノインプリント用モールドの製造方法の一実施形態を説明するための工程図であり、上述のナノインプリント用モールド1を例としたものである。
本発明では、基材加工工程において、基部3と、この基部3の一方の面3aから突出した凸構造部4とを有する透明な基材2を作製する。この基材2は、その凸構造部4の表面4aに所望の開口6aをもつ遮光性エッチングマスク6が位置し、この開口6aに対応するように凹部5が凸構造部4の表面4aに形成されている(図2(A))。使用する基材2は、ナノインプリント時に被加工物を硬化させるための照射光を透過可能な基材である。このような基材2の材料としては、例えば、石英ガラス、珪酸系ガラス、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、アクリルガラス等、あるいは、これらの任意の積層材を用いることができる。また、基材2の厚みは被加工物の材質、凸構造部4の高さ、基材の強度、取り扱い適性等を考慮して設定することができ、例えば、300μm〜10mm程度の範囲で適宜設定することができる。
【0013】
また、遮光性エッチングマスク6は、例えば、クロム薄膜、アルミニウム薄膜、タングステン薄膜、鉄薄膜、シリコン薄膜、それらの酸化膜、窒化膜、および、シリサイド薄膜等とすることができる。そして、開口6aの形状は、ナノインプリントによって形成しようとするパターンに応じて設定され、ライン形状、円形状等の種々の形状、所望の電気配線形状等、特に制限はないが、その開口幅は、後工程において基材2側からのバック露光に用いる光の波長を考慮して設定することができ、例えば、400nm以下、好ましくは300nm以下の範囲で開口幅を設定することができる。
【0014】
次に、レジスト層形成工程において、遮光性エッチングマスク6を被覆するように基材2にポジ型感光性レジスト膜21を形成し、基材2側から光を照射して遮光性エッチングマスク6をマスクとしてポジ型感光性レジスト膜21を露光(バック露光)する(図2(B))。ここでは、照射光として、遮光性エッチングマスク6の開口6aの開口幅よりも大きな波長の光を使用するので、遮光性エッチングマスク6の開口6aを照射光が透過することが阻害される。したがって、その後の現像によって、遮光性エッチングマスク6上のみにレジスト層22を形成することができる(図2(C))。照射光としては、開口6aの開口幅よりも大きな波長の光であり、かつ、使用するポジ型感光性レジストの感光波長域に適合するものであれば特に制限はなく、例えば、i線(波長365nm)、G線(波長436nm)等を使用することができる。また、ポジ型感光性レジスト膜21の形成は、例えば、塗布液の塗布・乾燥による成膜方法等により行うことができる。このようにして形成するレジスト層22の厚みは、0.5〜50μm、好ましくは1〜30μm程度とすることができる。レジスト層22の厚みが0.5μm未満であると、開口6aが現像後露出(解像)してしまう不具合があり、また、50μmを超える場合、ポジ型感光性レジスト膜21を形成した後にクラックが発生し、レジスト層22に欠陥が存在することとなり好ましくない。
【0015】
尚、レジスト層22の厚みが上記範囲であっても、薄い場合には、熱処理を施して平坦性を向上させてもよい。すなわち、上記のバック露光時に照射光は遮光性エッチングマスク6の開口6aを透過できないが、若干のエネルギーのしみ出しがあり、ポジ型感光性レジスト膜21が感光するおそれがある。したがって、ポジ型感光性レジスト膜21が薄く、仮にこのようなエネルギーのしみ出しがありポジ型感光性レジスト膜21が感光してしまい、現像されてしまった場合であっても、熱処理を施すことによりレジスト層22にリフローを生じさせて遮光性エッチングマスク6の露出部(感光部位)を再度被覆することができる。
【0016】
次に、リフトオフ工程において、レジスト層22を被覆するように基材2に遮光膜8を形成する(図3(A))。その後、レジスト層22を剥離するとともに、レジスト層22上の遮光膜8を除去することにより、凸構造部4の側面4bおよび基部3のみに遮光膜8を残すことができる(図3(B))。遮光膜8は、波長が200〜400nm程度の紫外線に対して光学濃度(OD)が2以上、好ましくは3以上の薄膜とすることができる。この遮光膜8の材質としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、錫、亜鉛等の金属、シリコン等を挙げることができ、また、これらの酸化物、窒化物、合金等も使用することができる。また、複数の膜を積層して遮光膜8としてもよい。このような遮光膜8の厚みや層構成、組成比等は、上記の光学濃度を満たすように設定することができ、遮光膜8の形成は、上記の材料を使用して、真空成膜法、塗布液の塗布・乾燥による成膜方法により行うことができる。
【0017】
レジスト層22の剥離は、レジスト剥離液を噴霧する方法、レジスト剥離液に浸漬する方法等を用いることができ、レジスト剥離液としては、例えば、アセトン等の溶剤、硫酸、レジスト専用の剥離液等を使用することができる。尚、レジスト層22を形成した後の工程において、レジスト層22の硬化が進行した場合、レジスト剥離液を用いた剥離を行う前に、レジスト層22に対して加熱処理、超音波処理を施すことが好ましい。
【0018】
次いで、除去工程において、遮光膜8よりも遮光性エッチングマスク6に対する選択エッチング性をもつエッチャントを用いて、凸構造部4から遮光性エッチングマスク6を除去し、洗浄を行う(図3(C))。これによりナノインプリント用モールド1が得られる。使用するエッチャントとしては、ウエットプロセスでは、例えば、遮光性エッチングマスク6がクロムで遮光膜8がチタンの場合には硝酸第二セリウムアンモニウム、遮光性エッチングマスク6がアルミニウムで遮光膜8がクロムの場合には水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶媒等を挙げることができる。また、ドライプロセスでは、例えば、遮光性エッチングマスク6がクロムで遮光膜8がMoSi2膜(シリサイド薄膜)の場合には塩素系のガスによるエッチングで遮光性エッチングマスク6の除去が可能である。
【0019】
このような本発明によれば、レジスト層形成工程において、遮光性エッチングマスク6の開口6aの開口幅よりも大きな波長の光を基材2側から照射し、遮光性エッチングマスク6をマスクとしてポジ型感光性レジスト膜21を露光するので、遮光性エッチングマスク6の開口6aを照射光が透過することが阻害される。したがって、遮光性エッチングマスク6上に位置するポジ型感光性レジスト膜21は露光されず、その後の現像によって、遮光性エッチングマスク6上のみにレジスト層22を形成することができる。そして、後工程であるリフトオフ工程にて、遮光性エッチングマスク6上のレジスト層22を遮光膜8とともに剥離することで、フォトマスクを使用することなく凸構造部4の側面4bおよび基部3のみに遮光膜8を確実に残すことができ、工程が簡便なものとなる。また、遮光性エッチングマスク6が、レジスト層形成工程およびリフトオフ工程において凹部5を保護する作用をなすので、凹部5の損傷が防止される。
【0020】
ここで、上記の基材加工工程における基材2の加工の一例について、図4および図5を参照しながら説明する。まず、透明な基材2の一方の面に遮光性エッチングマスクとするための遮光膜6′を形成し、この遮光膜6′上に感光性レジスト膜11′を形成する(図4(A))。遮光膜6′は、例えば、クロム薄膜、アルミニウム薄膜、タングステン薄膜、鉄薄膜、シリコン薄膜、それらの酸化膜、窒化膜、および、シリサイド薄膜等とすることができ、例えば、真空成膜法により厚みを10nm〜0.2μm程度の範囲で適宜設定して成膜することができる。
次いで、この感光性レジスト膜11′に対し、電子線描画装置、レーザー描画装置、ステッパー、スキャナー等の装置を用いて電子線等を照射し、所望のパターン潜像を形成し、その後、感光性レジスト膜11′を現像して、所望の貫通孔11aが形成されたレジスト層11を形成する(図4(B))。
【0021】
次に、このレジスト層11をマスクとしてエッチングにより遮光膜6′に開口6aを形成し(図4(C))、その後、レジスト層11を除去して、基材2上に遮光性エッチングマスク6が配設された状態とする(図4(D))。開口の形状は、ライン形状、円形状等の種々の形状、所望の電気配線形状等、特に制限はないが、その開口幅は、後工程において基材2側からのバック露光に用いる光の波長を考慮して設定することができ、例えば、400nm以下、好ましくは300nm以下の範囲で開口幅を設定することができる。
次いで、遮光性エッチングマスク6をマスクとして、エッチングにより基材2に凹部5を形成する(図5(A))。この凹部5の形成は、異方性エッチングを用いて、基材2の深さ方向に選択的にエッチングを行うことが好ましい。
【0022】
次に、開口6aを有する遮光性エッチングマスク6上に感光性レジストを塗布し、所望のマスクを介しての露光、あるいは直接描画を行い、その後、現像することにより、遮光性エッチングマスク6のパターン領域Xに対応する部位にエッチングレジスト13を形成する(図5(B))。その後、エッチングレジスト13をマスクとして、基材2を所定の深さまでエッチングして、基部3と、この基部3から突出した凸構造部4を形成する(図5(C))。次いで、レジスト13を除去することにより、基材加工工程が完了する(図5(D))。
【0023】
本発明のナノインプリント用モールドの製造方法により製造されるナノインプリント用モールド1を用いたインプリント装置によるナノインプリントでのパターン形成の一例を、図6を参照して説明する。
図6に示されるように、基板32の表面に被加工物として配設された樹脂層33に、ナノインプリント用モールド1の凸構造部4(パターン領域X)を所定の深さまで押し込む。そして、この状態で照明光学系(図示せず)からナノインプリント用モールド1の裏面2bに紫外線を照射し、ナノインプリント用モールド1を透過した紫外線により樹脂層33を硬化させる。このとき、非パターン領域Xに照射された紫外線は遮光膜8により遮蔽され、これにより、樹脂層33の意図しない部位への露光が確実に抑制される。
その後、ナノインプリント用モールド1を樹脂層33から離型することにより、ナノインプリント用モールド11が有する凹部5が反転した凹凸構造が被加工物である樹脂層33に転写形成される。
上述の実施形態は例示であり、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
次に、より具体的な実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
厚み6.35mmの石英ガラス(65mm角)をナノインプリント用モールド用基材として準備した。
<基材加工工程>
上記の基材の一方の面にスパッタリング法によりクロム薄膜(厚み50nm)を成膜し、その後、このクロム薄膜上に市販のレジストを塗布した。
次いで、市販の電子線描画装置内のステージ上に、基材の裏面がステージと対向するように基材を配置し、レジストに電子線を照射して、所望のパターン潜像を形成した。
次に、レジストを現像してレジスト層を形成し、このレジスト層をマスクとしてドライエッチングによりクロム薄膜に開口(直径100nmの円形開口がピッチ200nmで格子配置されたもの)を形成して、遮光性エッチングマスクとした。次いで、この遮光性エッチングマスクを介して異方性エッチングによって基材に凹部を形成した。形成した凹部は深さ200nm、直径100nmのホールであった。この凹部が形成されたパターン領域は、基材の中央に位置する35mm角の領域であった。
【0025】
次に、この遮光性エッチングマスクを被覆するように基材上に市販のレジストを塗布し、所望のマスクを介して露光し現像して、上記の35mm角のパターン領域にエッチングレジストを形成した。次いで、このエッチングレジストをマスクとして基材をハーフエッチングして、厚み6.335mmの基部と、この基部から突出した高さ15μmの凸構造部を形成した。その後、エッチングレジストを除去し、凸構造部上に遮光性エッチングマスクを残した。
【0026】
<レジスト層形成工程>
遮光性エッチングマスクを被覆するように基材に市販のポジ型感光性レジストを塗布して、ポジ型感光性レジスト膜を形成した。次いで、基材側からi線(波長365nm)を照射し、遮光性エッチングマスクをマスクとしてポジ型感光性レジスト膜を露光した。その後、現像して、遮光性エッチングマスク上のみにレジスト層(厚み5μm)を形成した。このレジスト層の表面は平坦なものであった。
【0027】
<リフトオフ工程>
次に、上記のレジスト層を被覆するように基材上に真空蒸着法によりシリコン薄膜(厚み50nm)を形成して遮光膜とした。その後、レジスト剥離液としてアセトン溶媒を用いて、遮光性エッチングマスク上のレジスト層を剥離するとともに、レジスト層上の遮光膜も除去した。これにより、凸構造部の側面、および基部のみに遮光膜を残すことができた。
【0028】
<除去工程>
次に、エッチング液として硝酸第二セリウムアンモニウムを用いて、遮光性エッチングマスクを選択エッチングして除去した。これにより、図1に示されるようなメサ構造のナノインプリント用モールドを作製した。
このように作製したナノインプリント用モールド100個について、凹部および遮光膜を顕微鏡を用いた観察した結果、損傷は発生していなかった。
【0029】
[実施例2]
レジスト層形成工程におけるポジ型感光性レジストの塗布量を変更し、遮光性エッチングマスク上のみに形成するレジスト層の厚みを1μmとした他は、実施例1と同様にして、図1に示されるようなメサ構造のナノインプリント用モールドを作製した。
このように作製したナノインプリント用モールド100個について、凹部および遮光膜を顕微鏡を用いた観察した結果、損傷は発生していなかった。
【0030】
[実施例3]
レジスト層形成工程におけるポジ型感光性レジストの塗布量を変更し、遮光性エッチングマスク上のみに形成するレジスト層の厚みを10μmとした他は、実施例1と同様にして、図1に示されるようなメサ構造のナノインプリント用モールドを作製した。
このように作製したナノインプリント用モールド100個について、凹部および遮光膜を顕微鏡を用いた観察した結果、損傷は発生していなかった。
【0031】
[比較例1]
厚み6.35mmの石英ガラス(65mm角)をナノインプリント用モールド用基材として準備した。
<基材加工工程>
遮光性エッチングマスクの開口をライン/スペースが500nm/500nmのライン形状パターンとした他は、実施例1と同様にして、凹部(ライン/スペースが500nm/500nmのライン形状パターン)を有する凸構造部上に遮光性エッチングマスクが位置する基材を作製した。
【0032】
<レジスト層形成工程>
遮光性エッチングマスクを被覆するように基材に市販のポジ型感光性レジストを塗布してポジ型感光性レジスト膜を形成し、基材側からi線(波長365nm)を照射し、遮光性エッチングマスクをマスクとしてポジ型感光性レジスト膜を露光した。その後、現像したところ、遮光性エッチングマスク上に、ライン/スペースが500nm/500nmのライン形状の開口パターンを有するレジスト層(厚み1μm)が形成された。
このレジスト層に熱処理(130℃、15分間)を施したが、ライン形状の開口パターンを完全に閉塞することはできず、遮光性エッチングマスクの開口内には、凸構造部の凹部が露出した状態となった。
<リフトオフ工程>
実施例1と同様に、シリコン薄膜を形成して遮光膜とし、その後、遮光性エッチングマスク上のレジスト層を剥離した。しかし、遮光性エッチングマスクの開口内に露出する凸構造部の凹部に遮光膜が残存するものとなり、実用に供し得ないものであった。
【0033】
[比較例2]
厚み6.35mmの石英ガラス(65mm角)をナノインプリント用モールド用基材として準備した。
上記の基材の一方の面にスパッタリング法によりクロム薄膜(厚み50nm)を成膜し、その後、このクロム薄膜上に市販のレジストを塗布した。
次いで、市販の電子線描画装置内のステージ上に、基材の裏面がステージと対向するように基材を配置し、レジストに電子線を照射して、所望のパターン潜像を形成した。
【0034】
次に、レジストを現像してレジスト層を形成し、このレジスト層をマスクとしてドライエッチングによりクロム薄膜に開口(ライン/スペースが100nm/100nmのライン形状パターン)を形成して、遮光性エッチングマスクとした。次いで、この遮光性エッチングマスクを介して異方性エッチングによって基材に凹部を形成した。形成した凹部は深さ200nm、ライン/スペースが100nm/100nmであった。この凹部が形成されたパターン領域は、基材の中央に位置する35mm角の領域であった。
次に、エッチング液として硝酸第二セリウムアンモニウムを用いて、遮光性エッチングマスクをエッチングして除去した。
次に、凹部を形成した基材面に市販のレジストを塗布し、所望のマスクを介して露光し現像して、上記の35mm角のパターン領域にエッチングレジストを形成した。次いで、このエッチングレジストをマスクとして基材をエッチングして、厚み6.335mmの基部と、この基部から突出した高さ15μmの凸構造部を形成した。
【0035】
次いで、上記のエッチングレジストを被覆するように基材上に真空蒸着法によりシリコン薄膜(厚み50nm)を形成して遮光膜とした。その後、レジスト剥離液を用いてエッチングレジストを剥離するとともに、エッチングレジスト上の遮光膜も除去した。これにより、凸構造部の側面、および基部のみに遮光膜が残り、図1に示されるようなメサ構造のナノインプリント用モールドを得た。
このように作製したナノインプリント用モールド100個について、凹部および遮光膜を顕微鏡を用いた観察した結果、30個のモールドにおいて凹部の損傷が発生し、特に35mm角のパターン領域の端部に多く損傷が発生していた。
【産業上の利用可能性】
【0036】
ナノインプリント技術を用いた微細加工に利用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1…ナノインプリント用モールド
2…基材
3…基部
4…凸構造部
4b…凸構造部の側面
5…凹部
6…遮光性エッチングマスク
6a…開口
8…遮光膜
21…ポジ型感光性レジスト膜
22…レジスト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、該基部の一方の面から突出するとともに凹部が形成された凸構造部と、を備える基材を有し、前記凸構造部の周囲の前記基部は遮光膜で被覆され、さらに、前記凸構造部の側面は遮光膜で被覆されているナノインプリント用モールドの製造方法において、
基部と、該基部の一方の面から突出した凸構造部とを備え、該凸構造部上に所望の開口をもつ遮光性エッチングマスクが位置し、該開口に対応するように凹部が前記凸構造部に形成されている基材を作製する基材加工工程と、
前記遮光性エッチングマスクを被覆するように前記基材にポジ型感光性レジスト膜を形成し、前記開口の開口幅よりも大きな波長の光を前記基材側から照射して前記遮光性エッチングマスクをマスクとして前記ポジ型感光性レジスト膜を露光し、その後、現像して前記遮光性エッチングマスク上にレジスト層を形成するレジスト層形成工程と、
該レジスト層を被覆するように前記基材に遮光膜を形成し、その後、前記レジスト層を剥離するとともに、レジスト層上の前記遮光膜を除去することにより、前記凸構造部の側面および前記基部のみに前記遮光膜を残すリフトオフ工程と、
前記遮光膜よりも前記遮光性エッチングマスクに対する選択エッチング性をもつエッチャントを用いて、前記凸構造部から前記遮光性エッチングマスクを除去する除去工程と、を有することを特徴としたナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項2】
前記レジスト層形成工程において、前記遮光性エッチングマスク上に形成する前記レジスト層の厚みは、0.5〜50μmの範囲内とすることを特徴とした請求項1に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項3】
前記レジスト層形成工程において、前記遮光性エッチングマスク上に形成した前記レジスト層に対して熱処理を施すことを特徴とした請求項1または請求項2に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項4】
前記遮光性エッチングマスクの前記開口の開口幅を20〜400nmの範囲とすることを特徴とした請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項5】
前記遮光性エッチングマスクの材質と前記遮光膜の材質の組み合わせを、クロム/シリコン、クロム/チタン、クロム/モリブデン、アルミニウム/クロム、クロム/タンタル、クロム/タングステンのいずれか1種とすることを特徴とした請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のナノインプリント用モールドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−29248(P2011−29248A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170849(P2009−170849)
【出願日】平成21年7月22日(2009.7.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】