説明

ナノインプリント用UV−LED光源

【課題】ナノインプリント法の光源としてUV−LED光源を用いて微細凹凸構造を作製する際に、金型からの微細凹凸構造の転写が良好になるようなUV−LED光源を提供することを目的とする。
【解決手段】LEDを有するUV光照射部と、UV光照射部から射出されたUV光を透過して散乱するUV散乱板とを具備し、UV散乱板がUV光照射部と露光対象との間に配置する。また、UV散乱板が、UV光照射部から射出されるUV光を透過する基材を有し、且つ、基材中に、UV光照射部から射出されるUV光の中心波長の1/10倍以下の分散剤及び/又は中心波長以上の大きさを有する分散剤を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント法により微細凹凸構造を作製する際のUV−LED光源及び当該UV−LED光源を用いた構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント技術は、生産性が低い電子ビームリソグラフィや高価な光学リソグラフィに代わる技術として注目されている。特に、UV光を利用するUVナノインプリント技術はその生産性の高さから近年注目を浴びている(特許文献1)。
【0003】
上記ナノインプリント技術の特徴は、電子ビームリソグラフィ等の生産性問題を克服しようとすることであり、ナノスケールの構造を有する金型を製作して、前記製作された金型を基材上のUV硬化性樹脂膜に押し付けた後に、当該UV硬化性樹脂膜を硬化させることでナノスケールの構造を転写する。前記操作を複数回繰り返すことで、一つの基材上に金型が有する微細凹凸構造とは反対の微細凹凸構造を容易に作製することが可能である(例えば、特許文献2)。特に、UVナノインプリント法を使用することで、数十ナノメートルから数百ナノメートルの微細構造を容易に形成することができる。例えば、10Gbit/cmに相当する50nmハーフピッチで34×34マスの網目構造(例えば、非特許文献1)や、456nmの直径を有し深さが350nmの円筒状の溝が周期748nmで並んだ構造(例えば、非特許文献2)等が挙げられる。
【0004】
UVナノインプリント法では、金型にUV硬化性樹脂を充填した状態でUV光を照射しUV硬化性樹脂を硬化させる必要があるため、微細凹凸構造の転写にはUV光を照射するUV光源が重要となる。ナノインプリント法に使用されるUV光源としては、発光管内に水銀の他に金属ハロゲン化物を封入したメタルハライドランプや石英ガラス性の発光管内に高純度の水銀と少量の希ガスを封入した高圧水銀灯、直進性の高いUV光を発する発光ダイオードであるUV−LED等が用いられている。特に、UV−LED光源は長寿命であり省エネ効果が見込めるため注目されている。
【0005】
このように、環境負荷と生産の観点から、ナノインプリント法の光源としてUV−LED光源を使用することが望ましい。しかし、ナノインプリント法の光源としてUV−LED光源を用いた場合、UV光の直進性の高さから、露光対象に近接して照射する場合UV−LED光源を構成するLEDのほぼ直下の部分しか露光されず、また露光対象から遠ざけて露光した場合、UV光強度が著しく低下する為、ナノスケールの微細凹凸構造をナノインプリント法で転写できないという問題がある。特に、微細凹凸の凸部の大きさが、使用するUV−LED光源の照射波長よりも小さくなると、ナノインプリント法による微細凹凸の転写に不良が生じるという問題を発明者は見出してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2002−539604号公報
【特許文献2】特開2005−203797号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】NANO LETTERS Vol.4, No.7, (2004)1225-1229
【非特許文献2】J. Phys. Chem. C Vol.113, No.24 (2009)10493-10499
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ナノインプリント法の光源としてUV−LED光源を用いて微細凹凸構造を作製する際に、金型からの微細凹凸構造の転写が良好になるようなUV−LED光源を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記課題を鋭意検討した結果、UV−LED光源が、露光対象物との間に特定の構造を有する散乱板を有することで、顕著な効果を奏することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明のナノインプリント用UV−LED光源の一態様は、LEDを有するUV光照射部と、UV光照射部から射出されたUV光を透過して散乱するUV散乱板とを具備し、UV散乱板がUV光照射部と露光対象との間に配置されることを特徴としている。
【0011】
本発明のナノインプリント用UV−LED光源の一態様において、UV散乱板は、UV光照射部から射出されるUV光を透過する基材を有し、且つ、基材の片側表面又は両側表面に、UV光照射部から射出されるUV光の中心波長の1/10倍以下の凹凸形状及び/又は中心波長以上の大きさを有する凹凸形状を有することが好ましい。
【0012】
本発明のナノインプリント用UV−LED光源の一態様において、UV散乱板は、UV光照射部から射出されるUV光を透過する基材を有し、且つ、基材中に、UV光照射部から射出されるUV光の中心波長の1/10倍以下の分散剤及び/又は中心波長以上の大きさを有する分散剤を有することが好ましい。
【0013】
本発明のナノインプリント用UV−LED光源の一態様において、UV光照射部から射出されるUV光の中心波長が、355nm以上385nm以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の凹凸構造を有する構造体の製造方法は、上記ナノインプリント用UV−LED光源を用いて、40nm以上380nm以下の凹凸ピッチを有する構造体をナノインプリント法で作製することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ナノインプリント法の光源としてUV−LED光源を用いて微細凹凸構造を作製する場合であっても、金型からの微細凹凸構造の転写を良好に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】散乱板の設置位置の範囲を示す模式図である。
【図2】散乱板によるUV光の進行方向を模式的に示す図である。
【図3】散乱板の構造を示す模式図である。
【図4】散乱板の設置位置の変形例を示す模式図である。
【図5】実施例及び比較例に係る微細凹凸構造のAFM像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の方法について添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係るUV−LED光源と露光対象を基準にした散乱板の設置位置を模式的に示した図である。図2は、本実施の形態に係るUV−LED光源から照射されたUV光の進行方向を模式的に示した図である。図3は、本発明の形態に係るUV−LED光源の散乱板の構造を模式的に示した図である。なお、図1、図2及び図3におけるUV光源や散乱板、散乱板の構造等の各部の数、形状、寸法比等はこれに限定されない。また、図1、図2及び図3は本発明に係るUV−LED光源の一使用態様を示す図である。
【0019】
図1に示すように、本発明に係るUV−LED光源10は、LEDを有するUV光照射部(UV−LED11)と、UV−LED11から射出されたUV光を透過して散乱するUV散乱板15を有している。UV散乱板15は、UV−LED11のUV照射面12と露光する対象物(露光対象14)の露光面13との間16に設けられる。
【0020】
UV散乱板15の設置位置は、UV−LED11のUV照射面12と露光対象14の露光面13との間16にあれば特に限定されるものではなく、UV散乱板15のUV−LED11側の面15aがUV照射面12と接している状態(図4(A)参照)や、或いはUV散乱板15の露光対象14側の面15bが露光対象14の露光面13と接している状態(図4(B)参照)や、UV散乱板15の各面15a及び15bがUV照射面12と露光対象面13の双方と接している状態(図4(C)参照)や、UV散乱板15の各面15a及び15bがUV照射面12と露光対象面13の双方とも接してない状態であり且つ露光対象面13とUV照射面12の間に位置する状態(図1参照)が挙げられる。
【0021】
効率的にUV光を利用し、効果的にナノインプリント法により微細凹凸構造を転写する観点からは、UV散乱板15のUV−LED11側の面15aとUV照射面12との距離が10cm以下であると既存のUV−LED光源に容易に設置できる為好ましく、0cm(図4(A)参照)であると照射されるUV光を効果的に利用できる為好ましい。また、UV−LED11と露光対象14との距離は特に限定されるものではないが、効率的にUV光を利用し、効果的にナノインプリント法により微細凹凸構造を転写する観点からは30cm以下であることが好ましく、20cm以下であると照射されるUV光を効率的に利用できるためより好ましい。
【0022】
次に、UV散乱板15の有無によるUV−LEDからの照射光について、図2を参照して説明する。UV散乱板がない場合(図2(A)参照)は、UV−LED21から照射されたUV光23は露光対象22へと直進性高く進行するが、UV散乱板25を設置した場合(図2(B)参照)は、UV−LED21から照射されたUV光24はUV散乱板25に入射するまでは直進性を保つが、UV散乱板25を透過した後は散乱により照射方向に対してランダムな方向性を有するUV光26となる。すなわち、露光対象22からみれば、UV散乱板25がない場合はほぼ一定の入射角を有するUV光23が入射するのに対し、UV散乱板25を設置した場合は、様々な入射角を有するUV光26が入射することになる。
【0023】
このように、UV−LEDからの射出光を、UV散乱板を介して露光対象へ照射することにより、露光対象に照射光を均一に照射することができる。したがって、本実施の形態で示したUV−LED光源を用いることにより、露光対象が照射光の波長より小さいナノスケールの微細凹凸構造を有する場合であっても、ナノインプリントを良好に行うことができる。
【0024】
なお、本発明におけるUV−LED光源においてUVを露光対象に照射する角度は特に限定されるものではないが、効果的にナノインプリント法により微細凹凸構造を転写する為に、入射角が45°以下であることが好ましい。より好ましくは、照射されるUV光を効率的に利用する為に入射角が0°であることが好ましい。ここで入射角とは、露光対象面の法線に対して作られる角度であり、露光対象に垂直にUV光を照射する場合が入射角0°を意味し、水平に入射する場合が入射角90°を意味する。
【0025】
本発明におけるUV−LED光源から照射されるUV光の中心波長の範囲はナノインプリント法により微細凹凸構造を転写する際に使用するUV硬化性樹脂の種類によって変わるが、UV硬化性樹脂を硬化させるための開始剤の吸収波長から概ね355nm〜385nmであることが好ましい。特に、UV硬化性樹脂の硬化速度が良好になる為、355nm〜380nmであることがより好ましい。
【0026】
次に本発明におけるUV−LED光源において使用されるUV散乱板について説明する。
【0027】
図3に示すように、本発明に係るUV−LED光源として設置されるUV散乱板は、基材31cの片側表面31aにUV−LEDの中心波長の1/10倍以下の凹凸形状、又は、中心波長以上、好ましくは2倍以上の大きさの凹凸形状が形成された散乱板31とすることができる(図3(A)参照)。あるいは、基材31cの片側表面31aにUV−LED光源の中心波長の1/10以下の凹凸形状と、中心波長以上、好ましくは中心波長の2倍以上の凹凸形状が混合した凹凸が形成された散乱板31とすることができる。更には、上記のいずれかの凹凸形状が基材32cの両側表面32a、32bに形成された散乱板32であっても構わない(図3(B)参照)。尚、散乱板の凹凸形状が形成された面は、UV−LEDの照射面側にしてもよく、或いは該表面を露光対象側に向けてもよい。なお、凹凸形状の大きさとは、凸部の大きさをいう。
【0028】
また、UV散乱板を構成する母材(基材33b)中にUV−LED光源の中心波長の1/10倍以下、又は、中心波長以上、好ましくは2倍以上の大きさを有する分散材33aが形成されたUV散乱板33を用いることができる(図3(C)参照)。或いは、UV散乱板を構成する母材(基材33b)中にUV−LED光源の中心波長の1/10倍以下の大きさの分散材と、中心波長以上、好ましくは2倍以上の大きさを有する分散材との双方が混合分散されたUV散乱板であっても構わない。また、分散剤としては、屈折率が母材と0.1以上異なる構造とすることが好ましい。
【0029】
更には、上記図3(A)〜(C)の構成を組み合わせて、基材34bの表面(34c、34d)に凹凸形状を有し且つ基材34b中に分散材(34a)を分散させたUV散乱板34(図3(D)参照)としてもよい。
【0030】
尚、UV散乱板自体の外形は特に限定されるものではなく、板状や湾曲状や筒状等が挙げられる。効率的にUV光を利用する為に、UV光照射面が平らな場合は平板状のUV散乱板を用いることが好ましく、UV光照射面が湾曲している場合は、照射面と同様の曲率を有するUV散乱板を用いることが好ましい。
【0031】
以下、表面に凹凸を持つUV散乱板について説明し、続いて内部に屈折率の異なる構造を持つUV散乱板について説明する。
【0032】
UV散乱板表面に形成される凹凸形状は、UV散乱板全てに渡り形成されても良いし、UV光が透過する部分のみに形成されてもよい。該凹凸形状は、UV光を効果的に散乱させ且つナノインプリント法により微細凹凸構造を効果的に転写する為に、UV−LEDから照射されるUV光の中心波長の1/10倍以下及び/又は1〜2倍以上の大きさであることが好ましい。波長の1/10倍以下の微細凹凸構造に対しては主にレイリー散乱による散乱が生じ、波長の1〜2倍以上の微細凹凸構造に対しては主にミー散乱による散乱が生じる。
【0033】
UV散乱板表面に形成される凹凸形状の分布や規則性は特に限定されるものでなく、例えば単一の大きさを有する凹凸が不規則に形成されている状態や単一の大きさを有する凹凸が規則的に形成されている状態や、或いは複数の大きさの凹凸が規則的に形成されている状態や複数の大きさの凹凸が不規則に形成されている状態等が挙げられる。より好ましくは、UV−LEDから照射されるUV光は波長に分布を有する為、照射されるUV光を効果的に散乱させる為に、複数の大きさの凹凸形状がUV散乱板表面に形成されていることが好ましい。
【0034】
UV散乱板表面に形成される凹凸形状の形成方法は特に限定されるものではないが、例えば、微細凹凸構造を有する鑢等でUV散乱板となる基材表面を擦る方法や、切削等により凹凸を形成する方法や、インプリント法により散乱板となる基材表面に凹凸を転写する方法や、溶剤により散乱板となる基材表面を溶解させ凹凸を形成する方法や、化学溶液析出法やsol−gel法等で散乱板となる基材表面に凹凸を形成する方法や、スパッタや蒸着等で散乱板となる基材表面に凹凸を形成する方法や、ガラスやポリスチレンスルホン酸、フッ化ビニリデン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂等の微粒子を散乱板となる基材表面にスピンコーティング法やグラビアメッシュによる塗布やディップ法やスプレー法や交互積層法等を利用し添着する方法や、エレクトロスピニング法等によりファイバーを基材表面に添着し散乱板となる基材表面に凹凸を形成する方法や、プラズマやコロナ放電等で散乱板となる基材表面に凹凸を形成する方法や、押し出し成型時に散乱板となる基材表面に凹凸を形成する方法等が挙げられる。
【0035】
UV散乱板を構成する基材の材質としては、UV−LEDから射出されるUV光を透過すれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、石英、ガラス等が挙げられる。
【0036】
UV散乱板を構成する基材の内部に形成される屈折率が母材とは0.1以上異なる構造(分散剤)は、基材内部全てに渡り形成されても良いし、UV光が透過する部分のみに形成されてもよい。該構造は、UV光を効果的に散乱させ且つナノインプリント法により微細凹凸構造を効果的に転写する為に、UV−LED光源から照射されるUV光の散乱板の母材中での光学的中心波長の1/10倍以下及び/又は1〜2倍以上の大きさであることが好ましい。波長の1/10倍以下の微細凹凸構造に対しては主にレイリー散乱による散乱が、波長の1〜2倍以上の微細凹凸構造に対しては主にミー散乱による散乱が生じる。
【0037】
これらの屈折率が母材とは0.1以上異なる構造(分散剤)の分布や規則性は特に限定されるものではないが、例えば単一の大きさを有する分散剤が不規則に形成されている状態や、単一の大きさを有する分散剤が規則的に形成されている状態や、或いは複数の大きさの分散剤が規則的に形成されている状態や、複数の大きさの分散剤が不規則に形成されている状態等が挙げられる。より好ましくは、UV−LED光源から照射されるUV光は波長が分布を有す為、効果的に照射されるUV光を散乱させる為に、複数の大きさの分散剤が散乱板内部に形成されることが好ましい。
【0038】
分散剤を散乱板内部に形成する方法は特に限定されるものではないが、例えば、散乱板となる基材を製造する際に、2種類以上の樹脂を混合した原料を利用する方法やポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリスチレンスルホン酸、フッ化ビニリデン、石英、ガラス等の微粒子を主成分となる樹脂中に混合した原料を利用する方法や原料となる樹脂の中に気泡や溶剤泡を混入する方法や、2種類以上の樹脂を混合した原料やポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリスチレンスルホン酸、フッ化ビニリデン、石英、ガラス等の微粒子を主成分となる樹脂中に混合した原料を利用し基材を製造した後にこれらの添加物を溶剤や加熱や酸等により溶解させる方法等が挙げられる。なお、分散剤の形状としては、球状、楕円状、迷路状(複数ポリマを混合したときに自発的に形成される構造)等様々な形状とすることができる。
【0039】
散乱板の材質としては、UV光を透過すれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、石英、ガラス等が挙げられる。
【0040】
ナノインプリント法において、本発明に係るUV−LED光源を適用することにより著しい効果を得ることができる微細凹凸として、凹凸の大きさが40nm〜380nmであり且つピッチが386nm以下の微細凹凸構造がある。これは、散乱板がない場合、UV−LED光源から照射されるUV光は直進性高く露光対象へと照射される。該露光対象の微細凹凸構造が、凹凸の大きさが40nm〜380nmであり且つピッチが386nm以下で形成されている場合は、照射されるUV光は該微細凹凸に対して散乱及び回折を伴わない為、直進性の高いUV光が照射される部分以外のUV硬化性樹脂は硬化せず、それによりナノインプリント法による転写が不完全になると推定される。例えば、波長が355nmのUV光に対して、微細凹凸のピッチが356nm以下になると回折光はゼロ次の回折光のみとなり、波長385nmのUV光に対して、微細凹凸のピッチが386nm以下になると回折光はゼロ次の回折光のみとなる。一方で、本発明に係るUV−LED光源に散乱板が存在することで、露光対象の微細凹凸による散乱及び回折が生じなくとも、散乱板を透過したUV光は露光対象に対して様々な入射角を持って照射されるため、ナノインプリント法による転写が良好に行われるものと推定される。
【0041】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
微細凹凸の大きさが150nm且つピッチが140nmの微細凹凸構造を表面に有するニッケル製の金型に株式会社ハーベスのDurasurf 2101Zを用い離型処理を施し、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成株式会社 M350)を主成分とするUV硬化性樹脂を前記金型の微細凹凸構造面上に滴下し、100μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合わせると同時にハンドローラーを用いUV硬化性樹脂を引き延ばし、露光対象を作製した。続いて、鑢により1〜100μm程度の大きさを有する凹凸形状をPETフィルム表面に形成し、中心波長が375±5nmであり且つ出力が2.6WのUV−LEDハンドライトのUV照射面に固定し、UV散乱板を有するUV−LED光源を作製した。その後、前記露光対象に該UV−LED光源を用いUV光を3分間照射した。照射後、露光対象の金型とPETフィルムを剥離した。
【0043】
得られたPETフィルムのUV硬化性樹脂と接していた面を、原子間力顕微鏡を用いて評価した。その結果、フィルム全面に渡り微細凹凸構造が形成されていた(図5(A)参照)。
【0044】
(実施例2)
微細凹凸の大きさが150nm且つピッチが140nmの微細凹凸構造を表面に有するニッケル製の金型に株式会社ハーベスのDurasurf 2101Zを用い離型処理を施し、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成株式会社 M350)を主成分とするUV硬化性樹脂を前記金型の微細凹凸構造面上に滴下し、100μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合わせると同時にハンドローラーを用いUV硬化性樹脂を引き延ばし、露光対象を作製した。続いて、平均粒径2μmのポリメチルメタクリレート微粒子を分散させた1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを含有するトリメチロールプロパントリアクリレート溶液を、PETフィルム上に製膜し、UV光により硬化させることで散乱板を作製した。続いて該散乱板を中心波長が375±5nmであり且つ出力が2.6WのUV−LEDハンドライトのUV照射面に固定し、散乱板を有するUV−LED光源を作製した。その後、前記露光対象に該UV−LED光源を用いUV光を3分間照射した。照射後、露光対象の金型とPETフィルムを剥離した。
【0045】
得られたPETフィルムのUV硬化性樹脂と接していた面を、原子間力顕微鏡を用いて評価した。その結果、フィルム全面に渡り微細凹凸構造が形成されていた(図5(B)参照)。
【0046】
(比較例1)
微細凹凸の大きさが150nm且つピッチが140nmの微細凹凸構造を表面に有するニッケル製の金型に株式会社ハーベスのDurasurf 2101Zを用い離型処理を施し、トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成株式会社 M350)を主成分とするUV硬化性樹脂を前記金型の微細凹凸構造面上に滴下し、100μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合わせると同時にハンドローラーを用いUV硬化性樹脂を引き延ばし、露光対象を作製した。続いて、該露光対象に中心波長が375±5nmであり且つ出力が2.6WのUV−LED光源を用いUV光を3分間照射した。照射後、露光対象の金型とPETフィルムを剥離した。
【0047】
得られたPETフィルムのUV硬化性樹脂と接していた面を、原子間力顕微鏡を用いて評価した。その結果、微細凹凸構造の転写は確認できなかった(図5(C)参照)。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のナノインプリント用のUV−LED光源によれば、低寿命且つ高消費電力の高圧水銀等のようなUV光源を使用することなく、高寿命且つ低消費電力のUV−LED光源からナノインプリント法により効果的に微細凹凸構造を転写できる点で有用である。
【符号の説明】
【0049】
10 UV−LED光源
11 UV−LED
12 UV−LEDの照射面
13 露光対象の照射面
14 露光対象
15 散乱板
16 露光対象の露光面との間
21 UV−LED
22 露光対象
23 散乱板がない場合のUV光の進行
24 散乱板までのUV光の進行
25 散乱板
26 散乱板通過後のUV光の進行
31 片側表面にのみ微細凹凸が形成された散乱板
32 両側表面に微細凹凸が形成された散乱板
33 屈折率の異なる構造を内部に含む散乱板
34 屈折率の異なる構造を内部に含み且つ表面に微細凹凸が形成された散乱板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDを有するUV光照射部と、前記UV光照射部から射出されたUV光を透過して散乱するUV散乱板とを具備し、前記UV散乱板が前記UV光照射部と露光対象との間に配置されることを特徴とするナノインプリント用UV−LED光源。
【請求項2】
前記UV散乱板は、前記UV光照射部から射出されるUV光を透過する基材を有し、且つ、前記基材の片側表面又は両側表面に、前記UV光照射部から射出されるUV光の中心波長の1/10倍以下の大きさを有する凹凸形状及び/又は前記中心波長以上の大きさを有する凹凸形状を有することを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用UV−LED光源。
【請求項3】
前記UV散乱板は、前記UV光照射部から射出されるUV光を透過する基材を有し、且つ、前記基材中に、前記UV光照射部から射出されるUV光の中心波長の1/10倍以下の大きさを有する分散剤及び/又は前記中心波長以上の大きさを有する分散剤を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のナノインプリント用UV−LED光源。
【請求項4】
前記UV光照射部から射出されるUV光の中心波長が、355nm以上385nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のナノインプリント用UV−LED光源。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかのナノインプリント用UV−LED光源を用いて、40nm以上380nm以下の凹凸ピッチを有する構造体をナノインプリント法で作製することを特徴とする構造体の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−171366(P2011−171366A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31442(P2010−31442)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】