説明

ノイラミニダーゼに対する酵素阻害剤

【課題】ノイラミニダーゼに対する阻害剤として有用な化合物及びその用途を提供すること。
【解決手段】下記の一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物(式(I)中、R〜Rはヒドロキシ基又は下式(II)で表される基であり、R〜Rのうち少なくとも1つが前記式(II)で表される基である。)は、ノイラミニダーゼ阻害剤、抗ウイルス剤などとして有用である。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイラミニダーゼに対する阻害剤として有用な化合物及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ノイラミニダーゼは、インフルエンザウイルスの増殖過程において、感染細胞からのインフルエンザウイルスの放出に必要である。従って、ノイラミニダーゼを阻害することにより、インフルエンザウイルスの増殖を抑制することができる。従来、ノイラミニダーゼに対する阻害剤としては、抗インフルエンザ薬であるザナミビルやオセルタミビルなどが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第98/07685号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ノイラミニダーゼに対する阻害剤として有用な化合物及びその用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、下記の一般式(I)で表される化合物がノイラミニダーゼに対して阻害作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【化1】

式(I)中、R〜Rはヒドロキシ基又は下式(II)で表される基であり、R〜Rのうち少なくとも1つが式(II)で表される基である。
【化2】

【0006】
すなわち、本発明は、一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物などである。
本発明に係る医薬組成物は、一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する。
本発明に係るノイラミニダーゼ阻害剤、抗ウイルス剤、ノイラミニダーゼの光線力学的分解剤、ウイルスの光線力学的分解剤、又は光線力学的治療剤は、一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する。
また、本発明は、ノイラミニダーゼ阻害剤、抗ウイルス剤、ノイラミニダーゼの光線力学的分解剤、ウイルスの光線力学的分解剤、又は光線力学的治療剤を製造するための、一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用である。
さらに、本発明は、ノイラミニダーゼを阻害するための、一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である。
また、本発明は、ウイルス感染症を予防又は治療するための、一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である。
本発明は、ノイラミニダーゼ又はウイルスを光照射により分解するための、一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である。
本発明は、ウイルス感染症を光照射により治療するための、一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である。
さらに、本発明に係る方法は、ノイラミニダーゼの酵素活性を阻害する方法であって、一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物をノイラミニダーゼに反応させる工程を含む。
本発明に係る方法は、ウイルス感染症を予防又は治療する方法であって、ウイルス感染症を伴う哺乳類動物に、一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を投与する工程を含む。
本発明に係る方法は、ノイラミニダーゼの光線力学的分解法であって、一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物をノイラミニダーゼに反応させる工程と、光照射する工程を含む。
本発明に係る方法は、ウイルスの光線力学的分解法であって、一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物をウイルスに反応させる工程と、光照射する工程を含む。
本発明に係る方法は、光線力学的療法であって、ウイルス感染症を伴う哺乳類動物に、一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を投与する工程と、光照射する工程を含む。
前記ウイルスは例えばインフルエンザなどである。また、前記ウイルス感染症は例えばインフルエンザ感染症などである。さらに、前記光照射する光の波長としては、紫外線又は可視光であることが好ましい。
本発明において「光線力学的分解剤」とは、紫外光、可視光、赤外光などの光を照射することによって標的タンパク質や標的ウイルスを分解する物質を含む薬剤をいう。
また、本発明において「光線力学的治療剤」とは、紫外光、可視光、赤外光などの光に反応する物質を体内に取り入れ、光を照射することによって標的箇所を治療する光線力学的療法に用いられる前記物質を含む薬剤をいう。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ノイラミニダーゼに対する阻害剤として有用な化合物及びその用途を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態において、光照射下における、化合物(5)によるノイラミニダーゼの光分解活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、上記知見に基づき完成した本発明の実施の形態を、実施例を挙げながら詳細に説明する。実施例において特に説明がない場合には、市販の試薬キットや測定装置はそれらに添付のプロトコールを用いる。
なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図並びに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々な改変並びに修飾ができることは、当業者にとって明らかである。
【0010】
==本発明に係る化合物の薬理作用==
上述のように、一般式(I)で表される化合物は、ノイラミニダーゼに対して阻害作用を有することから、一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物は、ノイラミニダーゼ阻害剤、抗ウイルス剤などとして有用であり、ノイラミニダーゼの阻害方法、ウイルスの作用を弱めたり若しくは消滅させたりする方法、又はウイルス感染症を予防したり若しくは治療したりする方法などに有用である。
【0011】
また、一般式(I)で表される化合物は、光照射下においてノイラミニダーゼを分解することができることから、一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物は、ノイラミニダーゼの光線力学的分解剤、ウイルスの光線力学的分解剤、光線力学的治療剤などとして有用であり、ノイラミニダーゼ又はウイルスを光照射により分解(破壊)する方法、ウイルス感染症を伴う哺乳類動物に対する光線力学的療法などに有用である。
【0012】
上記ウイルスは、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエンザウイルスなどのインフルエンザウイルスなどである。また、上記ウイルス感染症は例えばインフルエンザなどである。
【0013】
==本発明に係る化合物の製造方法==
一般式(I)で表される化合物は、例えば、以下に示した方法により製造することができる。式中、R〜Rはヒドロキシ基又はアミノ基であり、R〜Rのうち少なくとも1つがアミノ基である。Rはハロゲン原子又はヒドロキシ基である。R〜Rは、上述と同じである。
【化3】

化合物(c)は、化合物(a)と化合物(b)を反応させることにより製造することができる。Rがハロゲン原子である場合、本反応は、例えば、塩基存在下で溶媒中において行うことができる。塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン等を用いることができる。溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、塩化メチレン、アセトニトリル等を用いることができる。
一方、Rがヒドロキシ基である場合、本反応は、縮合剤存在下で溶媒中において行うことができる。縮合剤としては、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等を用いることができる。溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、テトラヒドロフラン等を用いることができる。
式(I)で表される化合物は、化合物(c)を加水分解することにより製造することができる。本反応は、例えば、塩基存在下で溶媒中において行うことができる。塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を用いることができる。溶媒としては、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等を用いることができる。
【0014】
化合物(a)は、例えば、以下に示した方法により製造することができる。式中、R〜Rは水素原子又はトシル基であり、R〜Rのうち少なくとも1つがトシル基である。R10〜R12はヒドロキシ基又はアジド基であり、R10〜R12のうち少なくとも1つがアジド基である。R〜Rは、上述と同じである。
【化4】

化合物(d)は、化合物(1)と塩化トシルを反応させることにより製造することができる。本反応は、例えば、ピリジン、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル等の溶媒中において行うことができる。
化合物(e)は、化合物(d)とアジ化ナトリウムを反応させることにより製造することができる。本反応は、例えば、ジメチルホルムアミド等の溶媒中において行うことができる。
化合物(a)は、化合物(e)のアジド基を還元することにより製造することができる。本反応は、例えば、還元剤の存在下で溶媒中において行われる。還元剤としては、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、Pdと水素ガス、Pd(OH)2と水素ガス、トリメチルホスフィン等を用いることができる。溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等を用いることができる。
【0015】
一般式(I)で表される化合物の塩、又は一般式(I)で表される化合物若しくはその塩の水和物又は溶媒和物は、常法に従って製造することができる。一般式(I)で表される化合物の塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(マグネシウム塩、カルシウム塩など)、その他の金属塩(アルミニウム塩など)、無機塩(塩酸塩、アンモニウム塩、アミン類など)、有機塩(グルコサミン塩など)等を挙げることができる。
【0016】
==本発明に係る薬剤==
一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する薬剤は、ノイラミニダーゼ阻害剤、抗ウイルス剤、ノイラミニダーゼの光線力学的分解剤、ウイルスの光線力学的分解剤、又は光線力学的治療剤として利用できるが、ヒト、ヒト以外(例えば、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ウマ等)の哺乳動物に医薬品として投与してもよいし、試薬として実験用に用いてもよいし、物に対する抗ウイルス剤として用いてもよい。これらの薬剤は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、注射剤、坐剤、液剤、散布剤、スプレー剤、塗布剤、貼付剤、噴霧剤などの剤形にしてもよい。また、これらの薬剤は、固形、液状、ゲル状、粉末状、ゼリー状、油状、ペースト状、泡状、クリーム状などの形状にしてもよい。なお、これらの薬剤を哺乳類動物に投与する場合には、製剤化して、経口投与してもよいし、腹腔内や静脈内への注射により非経口投与してもよいが、光線力学的分解剤としての作用を考慮すると、スプレー剤や塗布剤などとして、露出する皮膚に用いるのが好ましい。また、物に使用する場合には、散布剤やスプレー剤などの形状として、机、椅子、白衣、手袋、マスク、カーテン、シーツ、医療用具、洋服などに用いることができるが、これらに限定されるものではない。本発明に係る薬剤の製剤化は、従来使用されている製剤添加物を用いて、常法で行うことができる。前記製剤添加物としては、例えば、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、矯味矯臭剤、溶剤、安定剤、基剤、湿潤剤、保存剤などの既存の添加物を用いることができる。
【0017】
==本発明に係る光線力学的分解法及び光線力学的治療==
本発明に係る抗ウイルス剤は、ノイラミニダーゼ阻害作用を有することから、光を照射しないでも作用を有するが、光線力学的分解剤や光線力学的治療剤として、光照射することで、作用を強化することもできる。本発明に係る光線力学的分解法は、光照射する前後、あるいは同時に、本発明に係る化合物等をノイラミニダーゼ又はウイルスに反応させる工程を含む。また、本発明に係る光線力学的治療は、光照射する前後、あるいは同時に、本発明に係る化合物等を、光線力学的治療を必要とする哺乳類動物、例えば、上記ウイルス感染症を伴う哺乳類動物に投与する工程を含む。なお、本発明に係る化合物等を哺乳類に投与する部位としては、例えば、皮膚などが好ましい。光照射する光としては、ノイラミニダーゼ又はウイルスを分解することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、レーザー(例えば、フェムト秒超短光パルスレーザー、エキシマレーザー、YAGレーザー等)などの波長帯の光を用いることができるが、光線力学的療法に用いる場合には、直接細胞に影響を及ぼさない紫外線又は可視光線であることが好ましい。なお、光照射する光は自然光や室内光であってもよく、この場合、本発明に係る薬剤をスプレーや塗布することにより、日常生活の中で本発明に係る化合物等の作用を発揮することができるという効果を有する。
【実施例】
【0018】
以下、本発明を実施例及び図を用いてより具体的に説明する。なお、実施例において、核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)はJNM-AL300(日本電子株式会社製)を用いて測定した。シリカゲルクロマトグラフィーはシリカゲル60N(関東化学株式会社製)を用いた。なお、各反応は特に記載のない限り、アルゴン中で反応を行った。
【0019】
<実施例1>化合物(2)の製造
【化5】

上述の化合物(1)(878 mg、2.60 mmol)を脱水ピリジン(36 ml)に溶解させ、その後p-TsCl(1.35 g、7.08 mmol)を加えた。室温中で5時間反応させた後、過剰量のMeOHを加え、減圧濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(160 g、CHCl3/MeOH = 5/1)にて精製し、白色シロップ状の化合物(2)(894 mg、68.9 %)を得た。なお、式(2)中、Tsはトシル基を意味する。
1H-NMR (500 MHz, CD3OD): δ 1.67 (dd, J = 12.5, 12.6 Hz, 1H, H-3ax), 1.99 (s, 3H, NHCOCH3), 2.44 (s, 3H, CH3-Ph), 2.61 (dd, J = 4.3, 12.9 Hz, 1H, H-3eq), 3.26 (s, 3H, OCH3), 3.44 (dd, J = 1.5, 8.6 Hz, 1H, H-7), 3.54 (dd, J = 1.7, 10.4 Hz, 1H, H-6), 3.58-3.64 (m, 1H, H-4), 3.70 (dd, J = 10.0, 10.3 Hz, 1H, H-5), 3.80 (s, 3H, COOCH3), 3.99 (ddd, J = 2.3, 6.3, 8.6 Hz, 1H, H-8), 4.07 (dd, J = 6.3, 10.0 Hz, 1H, H-9a), 4.32 (dd, J = 2.0, 10.0 Hz, 1H, H-9b), 7.39-7.46 (m, 2H, CH3-Ph), 7.74-7.84 (m, 2H, CH3-Ph)
【0020】
<実施例2>化合物(3)の製造
【化6】

化合物(2)(894 mg、1.82 mmol)を脱水DMF(40 ml)に溶解させ、その後NaN3(624 mg、9.60 mmol)を加えた。70 ℃で15時間反応させた後、減圧濃縮した。濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(90 g、CHCl3/MeOH = 5/1)にて精製し、白色結晶の化合物(3)(432 mg、65.6 %)を得た。
1H-NMR (500 MHz, CD3OD): δ 1.70 (dd, J = 12.3, 12.3 Hz, 1H, H-3ax), 2.01 (s, 3H, NHCOCH3), 2.64 (dd, J = 4.6, 12.9 Hz, 1H, H-3eq), 3.34 (s, 3H, OCH3), 3.37 (dd, J = 6.3, 12.9 Hz, 1H, H-9a), 3.47 (dd, J = 1.7, 9.2 Hz, 1H, H-7), 3.54 (dd, J = 2.3, 12.9 Hz, 1H, H-9b), 3.57-3.68 (m, 2H, H-4, H-6), 3.74 (dd, J = 10.1, 10.3 Hz, 1H, H-5), 3.84 (s, 1H, COOCH3), 3.99 (ddd, J = 2.3, 6.3, 8.9 Hz, 1H, H-8)
【0021】
<実施例3>化合物(4)の製造
【化7】

化合物(3)(14.2 mg、39.2 μmol)を脱水メタノール(0.5 ml)に溶解させ、その後Pd(OH)2(8.8 mg)を加えた。その後、H2雰囲気下にて、室温中で3時間反応させた後、吸引濾過によりPd(OH)2を除去し、減圧濃縮した。濃縮残渣を脱水CH2Cl2(1.5 ml)に溶解させ、アントラキノン-2-カルボニルクロリド(21.6 mg、79.8 μmol)とトリエチルアミン(21 μl)を加えた。室温で1時間反応させた後、減圧濃縮した。濃縮残渣をフラッシュシリカゲルクロマトグラフィー(6 g、CHCl3/MeOH = 5/1)にて精製した後、PLCによる板分け(CHCl3/MeOH = 15/1、12/1、10/1の3回)を行い、黄色結晶の化合物(4)(8.2 mg、36.7 %)を得た。
1H-NMR (500 MHz, CD3OD): δ 1.74 (dd, J = 12.3, 12.4 Hz, 1H, H-3ax), 2.01 (s, 3H, NHCOCH3), 2.65 (dd, J = 4.6, 12.9 Hz, 1H, H-3eq), 3.37 (s, 3H, OCH3), 3.50 (dd, J = 1.2, 8.6 Hz, 1H, H-7), 3.58 (dd, J = 7.4, 13.7 Hz, 1H, H-9a), 3.64-3.72 (m, 2H, H-4, H-6), 3.81 (dd, J = 10.0, 10.0 Hz, 1H, H-5), 3.84 (s, 3H, COOCH3), 3.88 (dd, J = 3.2, 13.8 Hz, 1H, H-9b), 4.11 (ddd, J = 3.5, 8.0, 8.3 Hz, 1H, H-8), 7.82-7.85, 8.18-8.26, 8.59-8.61 (m, 7H, Ar)
【0022】
<実施例4>化合物(5)の製造
【化8】

化合物(4)(31.4 mg、55.0 μmol)をメタノール(2.0 ml)に溶解させ、その後10 wt% NaOHaq(125 μl)を滴下した。室温で4時間反応させた後、反応液が中性になるまで、乾燥させたAmberlite IR120 (H+)を加えた。Amberliteを濾過した後、減圧濃縮し、濃縮残渣を逆相シリカゲルクロマトグラフィー(3 g、H2O/MeOH)にて精製し、薄黄色結晶の化合物(5)(20.5 mg、90.3 %)を得た。
1H-NMR (500 MHz, D2O): δ 1.64 (dd, J = 12.1, 12.3 Hz, 1H, H-3ax), 1.95 (s, 3H, NHCOCH3), 2.64 (dd, J = 4.6, 12.3 Hz, 1H, H-3eq), 3.31 (s, 3H, OCH3), 3.34 (dd, J = 8.0, 14.0 Hz, 1H, H-9a), 3.49 (dd, J = 1.2, 8.9 Hz, 1H, H-7), 3.63-3.70 (m, 2H, H-4, H-6), 3.75-3.82 (m, 2H, H-5, H-9b), 3.99 (ddd, J = 3.2, 8.3, 8.6 Hz, 1H, H-8), 7.32-7.52 (m, 7H, Ar)
【0023】
<実施例5>ノイラミニダーゼ活性阻害評価
ノイラミニダーゼによって加水分解される基質、2’-(4-methylumbelliferyl)-α-D-N-acetylneuraminic acid, sodium salt(Tronto Research Chemicals Inc.)の375 μM acetate buffer(pH5.0, 50 mM)溶液を調製し、Solution Aとした。また、ノイラミニダーゼ(Clostridium perfringens由来, Roche)の2.5 μM acetate buffer(pH5.0, 50 mM)溶液を調製し、Solution Bとした。また、種々の濃度の化合物のacetete buffer(pH5.0, 50 mM)溶液をそれぞれ175 μl調製した。
37 ℃に保った各化合物溶液に、Solution B を5 μl加え、10分間プレインキュベートした。その後、Solution Aを20 μl加え、3分間インキュベートした。その後、10 wt% NaOHaq 5 μlを加えて反応を止め、サンプルを96 well plate(COSTAR)に移し替え、マイクロプレートリーダーSAFIRE(TECAN)にて、365 nmの励起光での441 nmの蛍光強度を測定した。
その結果、化合物(5)は、シアル酸のメチルグリコシド(下記化合物(6))に比べて、優れた酵素阻害活性を有することが明らかになった(化合物(5)の50%酵素活性阻害濃度:IC50=222 μM, 化合物(6)のIC50=2490 μM)。
【化9】

【0024】
<実施例6>ノイラミニダーゼの光分解活性評価
PBS buffer(pH6.0, 10 mM)溶液で調製したノイラミニダーゼ溶液8 μl(最終濃度:1.5μM)と、PBS/水 = 1/1溶液で調製した各種濃度の化合物(5)溶液2 μl(最終濃度:15, 5, 1.5, 0.5 μM;酵素に対してそれぞれ10, 3, 1, 0.3当量)を混合し、25 ℃で、10 cmの距離からUV(365 nm、100 W)を2時間照射しながらインキュベートした。その後、生成物をトリシン-SDS-PAGEにて分析した。その結果を図1に示す。
図1に示すように、化合物(5)の存在下においてノイラミニダーゼを光照射したところ、化合物(5)が、ノイラミニダーゼに対して光分解活性を有し、かつノイラミニダーゼに対する光分解活性が濃度依存的に上昇することが明らかになった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(I)で表される化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物。
【化1】

(式(I)中、R〜Rはヒドロキシ基又は下式(II)で表される基であり、R〜Rのうち少なくとも1つが前記式(II)で表される基である。
【化2】


【請求項2】
請求項1に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有するノイラミニダーゼ阻害剤。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物若しくはその塩、又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分として含有する抗ウイルス剤。

【図1】
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【公開番号】特開2011−157325(P2011−157325A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22168(P2010−22168)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】