説明

ノンフライから揚げ様食品に使用するブレッダーミックス並びにこれを使用したから揚げ様食品及びその製造方法

【課題】油揚することなくかつレトルト処理や蒸煮処理などの前処理を必要とせず焼成のみで油揚したのと同様な外観と食感のから揚げ様食品を製造できるブレッダーミックス及びこれを使用したから揚げ様食品を提供すること。
【解決手段】穀粉及び/又は澱粉の合計100質量部に対し、目開き50μmの篩上に残留し且つ目開き2000μmの篩を通過する割合が90質量%以上である粒度を有する微粉パン粉5〜400質量部及び糖類5〜100質量部を含むことを特徴とするから揚げ様食品に使用するブレッダーミックス。具材をバッターで被覆しさらに前記ブレッダーミックスで被覆した後焼成することを特徴とするから揚げ様食品及びその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノンフライから揚げ様食品に使用するブレッダーミックス並びにこれを使用したから揚げ様食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
から揚げは、具材をバッターやブレッダーで被覆して油揚した食品であるが、油脂の摂取を控える目的から油揚せずに、から揚げ様の食品を製造することが行われている。
例えば、油脂を含有するバッターやブレッダーで具材を被覆してオーブンなどで焼成する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。
しかし、前記方法では油揚したときと同様に余分な油脂が必要となる。
油脂を含有するバッターやブレッダーを使用しない方法としては、揚げ物食品原料を成形して水分含量が43〜58重量%の成形品を得た後、水分含量が43〜54重量%の成形品についてはその表面を目開き850μmの篩へのオンが85重量%以上の多孔質状の穀物粒状物で被覆した後、又は水分含量が55〜58重量%の成形品についてはその表面を目開き2000μmの篩へのオンが85重量%以上の多孔質状の穀物粒状物で被覆した後、レトルト容器に密封収容し、次いでレトルト処理を施すノンフライ即席揚げ物様食品の製造方法が知られている(例えば特許文献2参照)。
また、具材に、α化澱粉を含有するミックスをまぶし次いで蒸熱処理をした後、焼成することを特徴とするノンフライ唐揚げ様食品の製造法が知られている(例えば特許文献3参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−102402号公報
【特許文献2】特開平8−289742号公報
【特許文献3】特開2003−274872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記油脂を含有するバッターやブレッダーを使用しない方法ではレトルト処理や蒸煮処理などの前処理が必要とされその製造工程が煩雑であった。
従って、本発明の目的は、油揚することなくかつレトルト処理や蒸煮処理を必要とせず焼成のみで油揚したのと同様な外観と食感のから揚げ様食品を製造できるブレッダーミックス及びこれを使用したから揚げ様食品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、穀粉及び/又は澱粉に対し特定量の微粉パン粉及び糖類を含むブレッダーミックスで具材を被覆して焼成することにより油揚したのと同様な外観と食感を有するから揚げ様食品を製造できることを見出し本発明を完成するに至った。
従って、本発明は 穀粉及び/又は澱粉の合計100質量部に対し、目開き50μmの篩上に残留し且つ目開き2000μmの篩を通過する割合が90質量%以上である粒度を有する微粉パン粉5〜400質量部及び糖類5〜100質量部を含むことを特徴とするから揚げ様食品に使用するブレッダーミックスである。
また、具材をバッターで被覆しさらに前記ブレッダーミックスで被覆した後焼成することを特徴とするから揚げ様食品及びその製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
油揚することなく焼成のみで油揚したのと同様な外観と食感を有するから揚げ様食品を製造できる。
バッターやブレッダーに油脂を実質的に含むことがないので素材本来の風味を生かすことができる。
素材以外の余分な油脂を実質的に一切使用していないので油脂の摂取量を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において使用できる穀粉及び/又は澱粉は従来バッターやブレッダーに使用されている穀粉及び/又は澱粉であれば特に限定されない。
例えば、穀粉として小麦粉、そば粉、ライ麦粉、大麦粉、米粉、トウモロコシ粉、オーツ粉末などを使用することができる。
また、澱粉として例えば、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、モチ種トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、さつまいも澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、さご澱粉、くず澱粉等を使用することができる。
これらの澱粉は未加工の生澱粉でも、リン酸架橋、アセチル化などのエステル化やヒドロキシプロピル化などのエーテル化、湿熱処理、温水処理、α化、酸化等の加工した澱粉でも使用できる。
【0008】
本発明において使用できる微粉パン粉はその製造方法に特に限定はなく市販品も使用することができる。
本発明において使用できる微粉パン粉の粒度は、目開き50μmの篩上に残留し且つ目開き2000μmの篩を通過する割合が90質量%以上であるものが好ましく、目開き100μmの篩上に残留し且つ目開き1000μmの篩を通過する割合が90質量%以上であるものがさらに好ましい。
粒度がこの割合よりも細かい微粉パン粉では、外観上から揚げしたときの凸凹感が乏しく表面に油の染み出しが多くなる傾向がある。
また、粒度がこの割合よりも荒い微粉パン粉では、逆にパン粉の凹凸感が目立ち、外観上から揚げとは言えず、作業性が悪く、食感の粉っぽさが顕著となる傾向がある。
パン粉の使用量は、穀粉及び/又は澱粉の合計100質量部に対し、5〜400質量部である。
好ましくは、20〜200質量部である。
5質量部未満では、凹凸が無く衣に肉汁が染み出しすぎており、ベチャッとした食感になり好ましくない。
400質量部を超えると、逆に、トンカツ状になってしまう外観と、ボソボソした粉っぽい食感になり好ましくない。微粉パン粉を特定量配合することで、油揚していなくても油揚したときと適当な凹凸感と適度に肉汁でしっとりとした外観や、パリッとしてサクサクした食感を得ることができる。また、作業性が良く滞りが無い。
【0009】
本発明において使用できる糖類は、焼成したとき、メイラード反応を示す還元糖を少なくとも1つ含むものであれば特に限定されない。
例えば、ぶどう糖、果糖、乳糖、オリゴ糖、転化糖などを使用することができる。
糖類の使用量は、穀粉及び/又は澱粉の合計100質量部に対し、5〜100質量部である。
好ましくは、10〜80質量部である。
糖類の使用量は5質量部未満では、色調が白かったり斑点状になったりして好ましくなく、100質量部を超えると、色調が黒くなりすぎ甘味を呈するので好ましくない。
糖類を特定量配合することで、油揚していなくても油揚したときと同様な、こんがりした食欲をそそる褐色を得ることができる。
【0010】
本発明のブレッダーミックスには必要に応じて、植物性蛋白、粉乳、卵粉、塩、調味料、香辛料、膨張剤、乳化剤、色素などの副資材を配合することができる。
着色料については糖類だけでも十分揚げ色をつけることは可能であるが着色料を使用する事により、補強度を増しさらに唐揚げのような色調に近づけることが出来る。
着色料としては、パプリカ、アナトー、トウガラシ、クチナシ、コチニール、ラック、赤キャベツ、赤大根、紫トウモロコシ、ブドウ果汁、シソ、ムラサキイモ、カカオ、ベニバナ、ウコン、ビートレッド、紅麹又はカラメル色素等を挙げることができる。
本発明のブレッダーミックスは素材以外の余分な油脂を使用しないことが特徴であるので、油脂類を配合することはない。
【0011】
前記穀粉及び/又は澱粉、前記微粉パン粉、前記糖類及び必要に応じて前記副資材を混合して本発明のブレッダーミックスを得ることができる。
混合方法は従来のブレッダーミックスを製造する場合に使用する混合方法であれば特に限定はなく、通常の粉体混合装置、例えば、V型ミキサー、リボンミキサーなどを使用することができる。
【0012】
以下、本発明のブレッダーミックスを使用したから揚げ様食品の製造方法について説明する。
本発明では、バッターやブレッダーに油脂を使用せず素材から染み出た油脂を利用してから揚げ様の食品を製造することを特徴としている。
従って、本発明のから揚げ様食品の具材としては、焼成したとき油脂分を含んだ肉汁が染み出てくる素材であれば特に限定されない。
使用できる素材として、例えば、牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類やシシャモ、ワカサギ、カレイなどの魚類などを挙げることができる。
特に焼成したとき肉汁の量が適当である鶏のモモ肉が好ましい。
具材は生、冷凍、チルド品などを使用することができる。
加熱品はすでに多くの肉汁が出ているので素材としては好ましくないが肉汁が染み出てくる余地のある加熱品であれば使用することができる。
【0013】
まず、前記具材をバッターで被覆する。
具材はバッターで被覆する前に下味付けや打ち粉をしてもよい。
打粉としては、従来から揚げに使用している打ち粉が使用できる。
例えば、小麦粉等の穀粉及びコーンスターチ等の澱粉等や卵粉、大豆などのたんぱく質粉を使用できる。
バッターとしては、従来の揚げ物用のバッターを使用することができるが、肉汁が具材から染み出てくるのを妨げるようなバッターは使用することができない。
好ましく使用できるバッターは液卵又は液卵を含んだバッターである。
液卵単独で使用する場合は、水などで希釈することができる。
液卵を含むバッターは小麦粉等の穀粉及び/又はコーンスターチ等の澱粉を主体としてこれに液卵を配合したものに水を混合したものである。
液卵、または液卵を含んだバッターを使用することで、油揚しなくても、素材との結着が実現し、ブレッダーの均一且つムラの出ない付着につながり、油揚したときのようなパリッとしてサクサクした食感を得ることができる。
液卵の使用量は、液卵以外の原料100質量部に対し50質量部以上であり、好ましくは、100質量部以上である。
50質量部未満では、粉っぽい食感となる傾向がある。
【0014】
次に、前記バッターで被覆した具材を、本発明のブレッダーミックスで被覆する。
被覆の方法は特に限定されないが、本発明のブレッダーミックスは粉状なのでまぶすように被覆することができる。
前記ブレッダーミックスで被覆した具材を焼成し、本発明のからあげ様食品を得ることが出来る。
焼成温度は80℃以上で焼成方法としては、オーブン、過熱蒸気、蒸し焼き(スチームオーブン)及びグリルなどの方法が使用できる。
焼成温度が80℃未満では、バッターの液体分が十分に蒸発又は固化せず衣が水っぽい又はゲル状の外観となり、ネチャッとした食感となる。
また、中心温度が食するに適する温度に到達するまで時間がかかりすぎ効率的に製造ができない。
【実施例】
【0015】
以下本発明を実施例により具体的に説明する。
[実施例1〜15、比較例1〜6]微粉パン粉の使用量
小麦粉、馬鈴薯澱粉、微粉パン粉及びキシロースを表1に示す配合割合で均等になるように混合し、本発明のブレッダーミックスを得た。
微粉パン粉は粒度が目開き100μmの篩上に残留し且つ目開き1000μmの篩を通過する割合が100質量%のものを使用した。
小麦粉25質量部、コーンスターチ25質量部に水を50質量部及び液卵200質量部を加え、ホイッパーで攪拌し、バッターを調製した。
鶏モモ切り身(平均重量25g)100質量部に対して、前記バッターを5質量部加え、練り込むようにして被覆した。
前記バッターで被覆した鶏モモ切り身を前記ブレッダーミックスでまぶし被覆した。
これを150℃(湿度90%)のスチームオーブンで8分間加熱し、から揚げ様食品を得た。
常温3時間保管後パネラー10名により、以下の評価基準によりから揚げ様食品の評価を行った。
外観
5 点・・・大変自然な感じの凸凹があり、ちょうどよく衣に肉汁が染み出しており、唐揚げとして非常によい外観である。
4 点・・・自然な感じの凸凹があり、ほどよく衣に肉汁が染み出しており、唐揚げとしてよい外観である。
3 点・・・普通。
2 点・・・凹凸が少ない又は凹凸が多く、或いは衣に肉汁が染み出し過ぎ又はあまり染み出しておらず、唐揚げとして不自然な外観である。
1 点・・・凹凸がほとんど無い又は凹凸が非常に多く、或いは衣に肉汁が非常に染み出し過ぎ又は全く染み出しておらず、唐揚げとして非常に不自然な外観である。
色調
5 点・・・大変自然な褐色を呈し、唐揚げとして非常に良い色調である。
4 点・・・自然な褐色を呈し、唐揚げとして良い色調である。
3 点・・・普通
2 点・・・薄い又は濃く、唐揚げとして悪い色調である。
1 点・・・非常に薄い又は非常に濃く、唐揚げとして非常に悪い色調である。
食感
5 点・・・ 非常にカリッとしてクリスピーである。粉っぽさも全く感じられない。
4 点・・・ カリッとしてクリスピーである。粉っぽさも余り感じられない。
3 点・・・ 普通。
2 点・・・ ややしなしなした食感で歯切れが悪い、又は粉っぽさをやや感じる。
1 点・・・ べちゃべちゃした食感、又は粉っぽさを強く感じる。
得られた評価結果を表1に示す。
【0016】
【表1】

【0017】
実施例1〜15において得られた唐揚げ様食品は、素材と衣がよくなじみとても美味であった。
微粉パン粉が5質量部未満では、凹凸が無く衣に肉汁が染み出しすぎており、ベチャッとした食感になったため、外観・食感の評価が劣った。
微粉パン粉が400質量部を超えると、外観はトンカツ状になってしまい、食感はボソボソして粉っぽくなったため、外観・食感の評価が劣った。
【0018】
[実施例16〜27、比較例7〜12]糖類の使用量
実施例1において、キシロースの配合を表2のとおり変更した以外は実施例1と同様にしてから揚げ様食品を得、評価を行った。
得られた評価結果を表2に示す。
【0019】
【表2】

【0020】
キシロースが5質量部未満では色調が白い又は斑点状になり色調の評価が劣った。
キシロースが100質量部を超えると色調が黒くなり甘味を呈し、色調・食管の評価が劣った。
【0021】
[実施例28〜34、参考例1〜3]液卵の使用量
実施例1において、液卵の配合を表3のとおり変更した以外は実施例1と同様にしてから揚げ様食品を得、評価を行った。
得られた評価結果を表3に示す。
【0022】
【表3】

【0023】
液卵が50質量部未満では、食感が粉っぽく、評価が劣った。
【0024】
[実施例35〜42、比較例13〜16]微粉パン粉の粒度
実施例1において、微粉パン粉の粒度を表4に示すとおり変更した以外は実施例1と同様にしてから揚げ様食品を得、評価を行った。
得られた評価結果を表5に示す。
【0025】
【表4】

【0026】
【表5】

【0027】
微粉パン粉の粒度が目開き50μm未満では、凹凸が乏しく衣に肉汁が染み出しすぎており、ベチャッとした食感になったため、外観・食感の評価が劣った。
微粉パン粉の粒度が目開き2000μmを超えると、パン粉の凹凸感が目立ち外観上から揚げとは言えず、粉っぽい食感になったため、外観・食感の評価が劣った。
【0028】
[実施例43〜107、比較例17〜46]糖類の変更
実施例1において、キシロースを表6〜10のとおり変更した以外は実施例1と同様にしてから揚げ様食品を得、評価を行った。
得られた評価結果を表6〜10に示す。
【0029】
【表6】

【0030】
【表7】

【0031】
【表8】

【0032】
【表9】

【0033】
【表10】

【0034】
キシロースの代わりに、ブドウ糖、果糖、麦芽糖、乳糖及びマルトトリオースを用いて唐揚げ様食品を作ったが、キシロースと同様の結果を得た。
これらの糖が5質量部未満では、色調が白い又は斑点状になり、色調の評価が劣った。
これらの糖が100質量部を超えると、色調が黒くなり甘味を呈し、色調・食管の評価が劣った。
【0035】
[実施例108〜119]具材の変更
実施例1において、具材の鶏モモ切り身を表11のとおり変更した以外は実施例1と同様にしてから揚げ様食品を得、評価を行った。
得られた評価結果を表11に示す。
【0036】
【表11】

【0037】
鶏肉の代わりに、他の肉類や魚類、及び加熱済みの具材を用いて、唐揚げ用食品を作ったが、試食したところ、実施例1の鶏肉と同様、素材と衣がよくなじみとても美味であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀粉及び/又は澱粉の合計100質量部に対し、目開き50μmの篩上に残留し且つ目開き2000μmの篩を通過する割合が90質量%以上である粒度を有する微粉パン粉5〜400質量部及び糖類5〜100質量部を含むことを特徴とするから揚げ様食品に使用するブレッダーミックス。
【請求項2】
具材をバッターで被覆しさらに請求項1に記載のブレッダーミックスで被覆した後焼成することを特徴とするから揚げ様食品。
【請求項3】
具材をバッターで被覆しさらに請求項1に記載のブレッダーミックスで被覆した後焼成することを特徴とするから揚げ様食品の製造方法。


【公開番号】特開2009−106206(P2009−106206A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−282579(P2007−282579)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000231637)日本製粉株式会社 (144)
【Fターム(参考)】