説明

ハイブリッド自動車およびその制御方法

【課題】二次電池の連続放電に起因した劣化を抑制しながら、車両に要求される駆動力をより適正に確保する。
【解決手段】本発明のハイブリッド自動車20では、バッテリ50の放電が継続されるほど許容放電電力としての出力制限Woutが放電電力として小さく制限されるように当該出力制限Woutが補正される。そして、出力制限Woutの制限が開始されると、その後に少なくともバッテリ50の放電が停止されるように充放電要求パワーPb*が補正される(ステップS130およびS140)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、当該電動機と電力をやり取り可能な二次電池とを備えたハイブリッド自動車およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド自動車としては、内燃機関と、駆動軸に動力を出力可能な電動機と、当該電動機と電力をやり取り可能なバッテリとを備え、高電流でのバッテリの放電が継続されるほど大きな値となると共に所定の基準値を超えたときにバッテリの劣化が開始されることを示す劣化ファクターを当該バッテリを流れる電流の値に基づいて算出し、当該劣化ファクターが所定の制限開始閾値以上になると、バッテリの放電に許容される電力である放電許容電力としての出力制限を制限するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド自動車では、上述のように劣化ファクターが所定の制限開始閾値以上となったときにバッテリの出力制限を制限することにより、当該バッテリの放電を制限してバッテリの劣化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−190522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のハイブリッド自動車では、劣化ファクターが制限開始閾値以上になると、当該劣化ファクターが制限開始閾値よりも小さい所定の閾値以下に低下するまでバッテリの出力制限が制限されることから、バッテリの出力制限が制限される間に電動機からの動力の出力が制限されてしまい、運転者の駆動力要求に良好に応じることができなくなるおそれもある。
【0005】
本発明のハイブリッド自動車およびその制御方法は、二次電池の連続放電に起因した劣化を抑制しながら、車両に要求される駆動力をより適正に確保することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド自動車およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採っている。
【0007】
本発明のハイブリッド自動車は、
内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、前記電動機と電力をやり取り可能な二次電池と、前記二次電池の充電割合に基づいて該二次電池の目標充放電電力を設定する目標充放電電力設定手段と、前記二次電池の状態に基づいて該二次電池の充電に許容される電力である許容充電電力および放電に許容される電力である許容放電電力を設定する許容充放電電力設定手段と、前記二次電池が前記目標充放電電力で充放電されるようにしながら前記許容充電電力および前記許容放電電力の範囲内で走行に要求される要求トルクに基づくトルクが得られるように前記内燃機関および前記電動機を制御する制御手段とを備えたハイブリッド自動車であって、
前記二次電池の放電が継続されるほど前記許容放電電力が放電電力として小さく制限されるように該許容放電電力を補正する許容放電電力補正手段と、
前記許容放電電力補正手段による前記許容放電電力の制限が開始された後に、少なくとも前記二次電池の放電が停止されるように前記目標充放電電力を補正する目標充放電電力補正手段と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明のハイブリッド自動車では、二次電池の放電が継続されるほど許容放電電力が放電電力として小さく制限されるように当該許容放電電力が補正される。そして、許容放電電力の制限が開始されると、その後に少なくとも二次電池の放電が停止されるように目標充放電電力が補正される。このように、許容放電電力の制限が開始された後に二次電池の放電の継続を断つことで、許容放電電力の制限が解除されるようにすることができる。これにより、許容放電電力の制限が長時間継続するのを抑制し、できるだけ許容放電電力の制限が解除された状態で二次電池の放電すなわち電動機からの動力の出力が許容されるようにして走行に要求される駆動力を応答性よく確保することが可能となる。また、二次電池の放電が一時的に停止されたとしても、走行に要求される要求トルクに基づくトルクが内燃機関から出力されるようにすることで、二次電池の放電停止中においても走行に要求される駆動力を確保することができる。この結果、本発明のハイブリッド自動車によれば、二次電池の連続放電に起因した劣化を抑制しながら、走行に要求される駆動力をより適正に確保することが可能となる。
【0009】
また、前記許容放電電力補正手段は、前記二次電池の充電の継続に応じて前記許容放電電力の制限を解除するものであってもよく、前記目標充放電電力補正手段は、前記許容放電電力補正手段による前記許容放電電力の制限が開始された後に、前記二次電池が充電されるように前記目標充放電電力を補正するものであってもよい。このように、二次電池の充電の継続に応じて許容放電電力の制限が解除される場合には、許容放電電力の制限が開始された後に二次電池が充電されるように目標充放電電力を補正することにより、二次電池の強制充電により許容放電電力の制限を速やかに解除することができる。これにより、許容放電電力が制限された状態で電動機から動力が出力される機会をより一層減らすことが可能となる。
【0010】
更に、前記目標充放電電力補正手段は、前記許容放電電力補正手段による前記許容放電電力の制限が開始された後に、該許容放電電力の制限量が所定値以上となると前記目標充放電電力を放電側から充電側に徐変させ、前記目標充放電電力が予め定められた充電側の閾値になると前記許容放電電力の制限が解除されるまで該目標充放電電力を前記閾値に維持し、前記許容放電電力の制限が解除されると緩変化処理を伴って前記目標充放電電力の補正を解除するものであってもよい。これにより、目標充放電電力をより適正に補正して、許容放電電力の制限を速やかに解除することができる。
【0011】
また、前記目標充放電電力補正手段による前記目標充放電電力の補正は、前記二次電池の充電割合が予め定められた第1の閾値以下であるときに実行されてもよい。このように、二次電池の充電割合が第1の閾値以下であるときにのみ上述の目標充放電電力の補正を実行することにより、二次電池が充電されるように目標充放電電力を補正したときに二次電池の充電割合が過剰に高まらないようにして当該二次電池を保護することができる。
【0012】
更に、本発明のハイブリッド自動車は、通常走行用の運転モードに比べて走行用の動力の出力応答性を優先するパワー運転モードを実行用運転モードとして選択するための運転モード選択手段を更に備えてもよく、前記目標充放電電力補正手段による前記目標充放電電力の補正は、前記実行用運転モードとして前記パワー運転モードが選択されている場合には、前記二次電池の充電割合が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値以下であるときに実行されてもよい。これにより、通常走行用の運転モードの選択時に比べて運転者がより大きな駆動力を要求していると考えられるパワー運転モードの選択時に、二次電池が充電されるように目標充放電電力を補正することが充電割合によって制限されてしまうことを抑制することができるので、許容放電電力の制限を速やかに解除して運転者の駆動力要求に良好に応じることが可能となる。
【0013】
また、前記許容放電電力の制限は、前記二次電池の充放電電流の積算値に基づいて実行されてもよい。更に、前記二次電池は、リチウムイオン二次電池であってもよい。
【0014】
本発明のハイブリッド自動車の制御方法は、
内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、前記電動機と電力をやり取り可能な二次電池と、前記二次電池の充電割合に基づいて該二次電池の目標充放電電力を設定する目標充放電電力設定手段と、前記二次電池の状態に基づいて該二次電池の充電に許容される電力である許容充電電力および放電に許容される電力である許容放電電力を設定する許容充放電電力設定手段と、前記二次電池が前記目標充放電電力で充放電されるようにしながら前記許容充電電力および前記許容放電電力の範囲内で走行に要求される要求トルクに基づくトルクが得られるように前記内燃機関および前記電動機を制御する制御手段とを備えたハイブリッド自動車の制御方法であって、
(a)前記二次電池の放電が継続されるほど前記許容放電電力が放電電力として小さく制限されるように該許容放電電力を補正し、
(b)ステップ(b)にて前記許容放電電力の制限が開始された後に、少なくとも前記二次電池の放電が停止されるように前記目標充放電電力を補正する、
ハイブリッド自動車の制御方法。
【0015】
本発明のハイブリッド自動車の制御方法によれば、二次電池の連続放電に起因した劣化を抑制しながら、走行に要求される駆動力をより適正に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例に係るハイブリッド自動車20の概略構成図である。
【図2】バッテリ温度Tbとバッテリ50の出力制限の温度依存値との関係の一例を示す説明図である。
【図3】バッテリ50の残容量SOCと出力制限用補正係数との関係の一例を示す説明図である。
【図4】充放電要求パワー設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】ノーマルモード時アクセル開度設定用マップとパワーモード時アクセル開度設定用マップとを例示する説明図である。
【図6】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図7】バッテリ50の特性を例示する説明図である。
【図8】バッテリ50の充放電電力と出力制限Woutとが変化する様子を例示するタイムチャートである。
【図9】実施例のバッテリECU52により実行される充放電要求パワー補正ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図10】充放電要求パワー補正ルーチンによりバッテリ50の充放電要求パワーPb*が補正されたときに充放電要求パワーPb*と出力制限Woutとが変化する様子を例示するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の一実施例に係るハイブリッド自動車20の概略構成図である。同図に示すハイブリッド自動車20は、ガソリンや軽油などを燃料とするエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続されたプラネタリキャリア34を有するプラネタリギヤ30と、プラネタリギヤ30のサンギヤ31に接続されてエンジン22からの動力の少なくとも一部を用いて発電可能なモータMG1と、プラネタリギヤ30のリングギヤ32に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに連結された減速ギヤ35と、この減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに接続されたモータMG2と、リングギヤ軸32aにギヤ機構37およびディファレンシャルギヤ38を介して接続された駆動輪39a,39bと、モータMG1と電力ライン54との間に介設されたインバータ41と、モータMG2と電力ライン54との間に介設されたインバータ42と、インバータ41,42を介してモータMG1およびMG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40と、電力ライン54に接続されたバッテリ50と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52と、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52と通信しながらハイブリッド自動車全体を制御するハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「ハイブリッドECU」という)70とを備える。
【0019】
バッテリ50は、実施例ではリチウムイオン二次電池として構成されている。また、バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50に設置された温度センサ51からのバッテリ温度Tb、バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に設置された図示しない電流センサからの充放電電流Ib(以下、バッテリ50からの放電電流が正の値を示すと共にバッテリ50の充電電流が負の値を示すものとする)等が入力される。また、バッテリECU52は、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッドECU70やエンジンECU24に出力する。更に、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために、電流センサにより検出された充放電電流Ibの積算値に基づいて残容量(充電割合)SOCを算出したり、残容量SOCとバッテリ温度Tbとに基づいてバッテリ50の充電に許容される電力である充電許容電力としての入力制限Win(実施例では負の値)とバッテリ50の放電に許容される電力である放電許容電力としての出力制限Wout(実施例では正の値)とを算出する。バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの温度依存値を設定し、設定した入出力制限Win,Woutの温度依存値にバッテリ50の残容量(SOC)に基づく補正係数を乗じることにより設定することができる。また、出力制限Woutについては、実施例では、温度依存値と出力制限用補正係数の積である出力制限ベース値Woutbを求めた上で、出力制限ベース値Woutbを適宜補正して最終的な出力制限Woutを設定することとしている。図2にバッテリ温度Tbと出力制限の温度依存値との関係の一例を示し、図3にバッテリ50の残容量SOCと出力制限用補正係数との関係の一例を示す。
【0020】
また、バッテリECU52は、残容量SOCに基づいてバッテリ50の充放電要求パワーPb*を算出する。実施例では、残容量SOCと充放電要求パワーPb*との関係が充放電要求パワー設定用マップとして予め定められてバッテリECU52の図示しないROMに記憶されており、バッテリECU52は、算出した残容量SOCに対応する充放電要求パワーPb*を充放電要求パワー設定用マップから導出して設定する。図4に充放電要求パワー設定用マップの一例を示す。充放電要求パワー設定用マップは、基本的には、バッテリ50の残容量SOCが予め定められた制御中心(目標充電割合)SOC*よりも小さいときには、バッテリ50が充電されるように充放電要求パワーPb*を負の一定値Pcに設定すると共に、残容量SOCが制御中心SOC*よりも大きいときには、バッテリ50が放電されるように充放電要求パワーPb*を正の一定値Pdに設定するように定められている。
【0021】
ハイブリッドECU70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッドECU70には、イグニッションスイッチ(スタートスイッチ)80からのイグニッション信号、シフトレバー81の操作位置であるシフトポジションSPを検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ87からの車速V等が入力ポートを介して入力される。また、ハイブリッドECU70には、ハイブリッド自動車20の運転モードの選択を可能とするモードスイッチ88からのモード信号が入力される。実施例において、モードスイッチ88は、図示しない車室内のスイッチパネル等に配置されており、走行用の動力の出力応答性よりも燃費の向上を優先させながらハイブリッド自動車20を走行させる通常走行用のノーマルモードと、燃費の向上よりも走行用の動力の出力応答性を優先させながらハイブリッド自動車20を走行させるパワーモードとの選択を運転者に対して許容する。運転者がモードスイッチ88を介してノーマルモードを選択したときには、所定のモードスイッチフラグFmsが値0に設定されると共にエンジン22を効率よく運転して燃費を向上させることができるようにエンジン22、モータMG1およびMG2が制御される。また、運転者がモードスイッチ88を介してパワーモードを選択したときには、モードスイッチフラグFmsが値1に設定されると共に、基本的にノーマルモード選択時に比べて車軸としてのリングギヤ軸32aに出力するトルクを高めると共にエンジン22の回転数を高めて運転者によるアクセル操作に対するトルク出力の応答性が向上するようにエンジン22、モータMG1およびMG2が制御される。そして、ハイブリッドECU70は、上述したように、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52と各種制御信号やデータのやり取りを行なっている。
【0022】
上述のように構成されるハイブリッド自動車20においてイグニッションスイッチ80がオンされると、ハイブリッドECU70は、車速Vやアクセル開度Acc、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2、バッテリ50の充放電要求パワーPb*、入出力制限Win,Wout、モードスイッチフラグFmsの値といった制御に必要なデータを入力する。続いて、入力したモードスイッチフラグFmsが値0であるか否かを判定し、モードスイッチフラグFmsが値0であってハイブリッド自動車20の実行用運転モードをノーマルモードとすべき場合には、アクセルペダルポジションセンサ84から入力されるアクセル開度Accとノーマルモード時アクセル開度設定用マップとを用いて制御上のアクセル開度である実行用アクセル開度Acc*を設定する。一方、モードスイッチフラグFmsが値1であって実行用運転モードをパワーモードとすべき場合には、アクセル開度Accとパワーモード時アクセル開度設定用マップとを用いて制御上のアクセル開度である実行用アクセル開度Acc*を設定する。ノーマルモード時アクセル開度設定用マップは、0〜100%の範囲でアクセル開度Accに対して実行用アクセル開度Acc*が線形性をもつように予め作成されてROM74に記憶されている。実施例において、ノーマルモード時アクセル開度設定用マップは、図5に例示するようにアクセル開度Accをそのまま実行用アクセル開度Acc*として設定するように作成されている。一方、パワーモード時アクセル開度設定用マップは、図5に例示するように、低車速時における車両の飛び出し感を抑制すべく任意の低アクセル開度領域にあるアクセル開度Accに対してはノーマルモード時アクセル開度設定用マップにより設定されるものと同一の値を実行用アクセル開度Acc*として設定すると共に、低アクセル開度領域以外の100%までのアクセル開度Accに対してはアクセル操作に対するトルク出力の応答性を向上させるべく同一のアクセル開度Accに対する実行用アクセル開度Acc*をノーマルモード時アクセル開度設定用マップにより規定されるものよりも大きな値として設定するように作成されてROM74に記憶されている。
【0023】
そして、設定した実行用アクセル開度Acc*と車速センサ87からの車速Vとに基づいて要求トルクTr*を設定する。実施例では、実行用アクセル開度Acc*と車速Vと要求トルクTr*との関係が予め定められて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶されており、要求トルクTr*としては、与えられた実行用アクセル開度Acc*と車速Vとに対応したものが当該マップから導出・設定される。図6に要求トルク設定用マップの一例を示す。更に、設定した要求トルクTr*やバッテリ50の充放電要求パワーPb*に基づいて車両全体に要求される要求パワーP*を設定する。そして、エンジン22が運転される場合、ハイブリッドECU70は、要求パワーP*に基づいてエンジン22の目標回転数Ne*,目標トルクTe*を設定し、更に、入力制限Winおよび出力制限Woutの範囲内でモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定し、設定した各指令信号をエンジンECU24,モータECU40に送信する。ハイブリッドECU70から目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受け取ったエンジンECU24は、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とからなる運転ポイントでエンジン22が運転されるようエンジン22における吸入空気量調節制御や燃料噴射制御、点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受け取ったモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング制御を行なう。このような制御により、ハイブリッド自動車20は、バッテリ50が充放電要求パワーPb*に応じた電力で充放電されるようにしながら走行することができる。なお、エンジン22の運転が停止される場合には、エンジン22の目標トルクTe*並びにモータMG1に対するトルク指令Tm1*が値0に設定されると共に、入力制限Winおよび出力制限Woutの範囲内でモータMG2が要求トルクTr*に応じたトルクを出力するようにモータMG2に対するトルク指令Tm2*が設定される。
【0024】
ところで、実施例のハイブリッド自動車20に搭載されたバッテリ50は、リチウムイオン二次電池であるが、リチウムイオン二次電池に関しては、高電流での放電が継続された場合に、端子間電圧Vbが電池性能を充分に発揮し得る電圧範囲の下限である下限電圧に達していなくても劣化し始めてしまうことが判明している。すなわち、リチウムイオン二次電池は、比較的高い(一定の)電流値での放電が継続された場合、図7に示すように、あるタイミングから端子間電圧Vbが時間の経過と共に比較的急峻に低下するという特性を有する。これを踏まえて、実施例では、端子間電圧Vbが時間の経過と共に比較的急峻に低下するようになるタイミング(劣化開始タイミング)からバッテリ50の劣化が始まると仮定すると共に、次式(1)により表される劣化ファクターDが所定の基準値を上回らなければ劣化開始タイミングが到来しないと仮定することとした。ただし、式(1)における“α”,“β”および“C0”は、何れもバッテリ温度Tbと残容量SOCとに依存するパラメータである。また、“Δt”は、劣化ファクターDの計算周期であり、“前回D”は、前回算出された劣化ファクターDの値である。劣化ファクターDは、式(1)からわかるように、高電流でのバッテリ50の放電が継続すればするほど増加し、バッテリ50の放電が停止されると時間の経過と共に低下し、バッテリ50の充電が継続すればするほど低下する。また、劣化ファクターDは、極低い電流でのバッテリ50の放電が継続された場合にも徐々に低下することがある。そして、実施例では、こうして得られる劣化ファクターDに対して上記基準値よりも小さい制限開始閾値(制御目標値)Dtagを設定すると共に、劣化ファクターDが制限開始閾値Dtag以上になった時点から制限開始閾値Dtagと劣化ファクターDとの偏差に基づくフィードバック制御(PI制御)により制限後出力制限Woutcを次式(2)に従って設定する。ただし、式(4)中、右辺の「kp」は比例項のゲインであり、右辺の「ki」は積分項のゲインである。このような劣化ファクターDの算出を含む制限後出力制限Woutcの設定処理は、バッテリECU52により実行され、基本的に、制限開始閾値Dtagと劣化ファクターDとの偏差が大きいほど制限後出力制限Woutcが小さく設定されることになる。更に、バッテリECU52は、制限後出力制限Woutcを求めた上で、次式(3)に従って制限後出力制限Woutcと、予め定められた値0に比較的近い正の値である限界値Woutlimとの大きい方を最終的な出力制限Woutとして設定する。なお、限界値Woutlimは、出力制限Woutが過剰に制限されることにより走行性能(動力の出力性能)が極端に低下しないような値としてバッテリ50のバッテリ温度Tbと残容量SOCとに基づいて実験・解析等により予め定められる。
【0025】
D = (1-α・Δt)・前回D + β/C0・Ib・Δt …(1)
Woutc = Woutb + Kp・(Dtag-D) + Ki・∫(Dtag-D)・dt …(2)
Wout = max(Woutc,Woutlim) ・・・(3)
【0026】
上述のような処理が行われることにより、最終的な出力制限Woutは、予め定められた放電側の閾値である限界値Woutlimを限界として、バッテリ50が高電流で放電されたり長時間継続して放電されたりするほど放電電力として小さくなるように制限され(図8における時刻t1以降)、バッテリ50の実放電電力も出力制限Woutにより制限され始める(図8における時刻t2)。このようにバッテリ50の実放電電力が制限されることによりバッテリ50の充放電電流Ibが放電電流として小さくなると、少なくとも劣化ファクターDの増加が抑制され、バッテリ50の劣化が抑制される。また、バッテリ50の実放電電力が制限されて極低い電流でバッテリ50の放電が継続するか、あるいは、その後にバッテリ50の放電が停止されたり、バッテリ50が充電されたりして劣化ファクターDが例えば制限開始閾値Dtagよりも小さい制限停止閾値Dstop以下になると、出力制限Woutの制限が解除される。なお、制限開始閾値Dtagと制限停止閾値Dstopとは、同一の値とされてもよい。
【0027】
ここで、上述したように、出力制限Woutの限界値Woutlimは、走行性能が極端に低下しないような値としてバッテリ50の残容量SOCおよびバッテリ温度Tbに基づいて予め定められる値であるため、出力制限Woutが限界値Woutlimまで制限されてバッテリ50の実放電電力が限界値Woutlimとなったとしても(図8における時刻t3)、バッテリ50の状態によっては、劣化ファクターDを低下させる程度までバッテリ50の充放電電流Ibが放電電流として低下しない状況があり得る。このような状況でバッテリ50の放電が要求され続けると、劣化ファクターDが低下することなく出力制限Woutが制限された状態での放電が継続されてしまうおそれがある。このように、バッテリ50の放電が制限されているにも拘わらず放電が継続されてしまうのはバッテリ50の劣化を抑制する上で好ましいことではなく、しかも、バッテリ50の放電制限が継続される間には、モータMG2からの動力の出力が制限され、運転者により要求される駆動力を出力できないおそれがある。
【0028】
このため、実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50の劣化を抑制しつつ出力制限Woutの制限の継続を解除して運転者により要求される駆動力を確保すべく、バッテリECU52により図9に示す充放電要求パワー補正ルーチンが所定時間毎に繰り返し実行される。図9の充放電要求パワー補正ルーチンの開始に際して、バッテリECU52は、まず、モードスイッチフラグFmsの値や別途算出または設定したバッテリ50の残容量SOC、出力制限ベース値Woutb、出力制限Wout、残容量SOCと図4の充放電要求パワー設定用マップとを用いて別途設定した充放電要求パワーPb*といった充放電要求パワーPb*の補正に必要なデータを入力する(ステップS100)。なお、モードスイッチフラグFmsの値は、ハイブリッドECU70から通信により入力される。
【0029】
ステップS100にて充放電要求パワーPb*の補正に必要なデータを入力した後、バッテリECU52は、モードスイッチフラグFmsが値0であるか否かを判定する(ステップS110)。モードスイッチフラグFmsが値0であり、実行用運転モードとしてノーマルモードが選択されていると判定したときには、バッテリ50の残容量SOCが予め定められた下限側閾値SLおよび第1の上限側閾値SH1の範囲内(SL≦SOC≦SH1)に含まれるか否かを判定する(ステップS120)。そして、バッテリ50の残容量SOCが下限側閾値SLおよび第1の上限側閾値SH1の範囲内に含まれると判定したときには、出力制限Wout等に基づいて充放電要求パワーPb*の制限値Pblimを設定する(ステップS130)。
【0030】
図10を参照しながら充放電要求パワーPb*の制限値Pblimの設定手順について説明する。図10において、実線は充放電要求パワーPb*を示し、点線は充放電要求パワーPb*の制限値Pblimを示し、破線は出力制限Woutを示す。実施例のバッテリECU52は、例えば、出力制限ベース値Woutbと出力制限Woutとの差分である制限量ΔW(=Woutb−Wout)を求め、求めた制限量ΔWに基づいて出力制限Woutと出力制限ベース値Woutbとが一致している(出力制限Woutが制限されていない)と判断すると(図10における時刻t10以前)、バッテリ50の放電が要求されているときに図4のマップを用いて充放電要求パワーPb*として設定される正の一定値Pdを制限値Pblimとして設定する。また、バッテリECU52は、出力制限Woutが制限されて、制限量ΔWが所定値ΔWrefよりも大きくなったと判断すると(図10における時刻t11)、それ以後に出力制限Woutが制限される間、図示するように予め定められた充電側の閾値Pb1(比較的大きい負の値)に達するまで(図10における時刻t12)、例えば一定のレートで漸減するように制限値Pblimを設定する。なお、閾値Pb1に達するまで一定のレートで漸減するように制限値Pblimを設定する代わりに、閾値Pb1に達するまで制限量ΔWが大きくなるほど制限値Pblimを小さく設定してもよいし、制限量ΔWが所定値ΔWrefよりも大きくなった段階で制限値Pblimを閾値Pb1に設定してもよい。そして、バッテリECU52は、閾値Pb1を制限値Pblimとして設定している間に制限量ΔWに基づいて出力制限ベース値Woutbと出力制限Woutとが一致した(出力制限Woutが制限が解除された)と判断すると(図10における時刻t13)、図示するように上述の一定値Pdに達するまで例えば一定のレートで漸増するように制限値Pblimを設定する。なお、出力制限ベース値Woutbと出力制限Woutとが一致したと判断された時点から一定値Pdに達するまで一定のレートで漸増するように制限値Pblimを設定する代わりに、所定時間だけ閾値Pb1を制限値Pblimとして設定した後で、一定値Pdに達するまで一定のレートで漸増するように制限値Pblimを設定してもよいし、出力制限ベース値Woutbと出力制限Woutとが一致した段階、あるいは、所定時間だけ閾値Pb1を制限値Pblimとして設定した段階で、制限値Pblimを値Pdに設定してもよい。
【0031】
こうして制限値Pblimを設定すると、バッテリECU52は、ステップS100にて入力した充放電要求パワーPb*と制限値Pblimとの小さい方を充放電要求パワーPb*として再設定(補正)し(ステップS140)、本ルーチンを一旦終了させる。これにより、バッテリ50の出力制限Woutが継続して制限される場合に、バッテリ50の放電要求が継続されたとしても、充放電要求パワーPb*は、制限値Pblimが充電側に漸減するように設定され始めた時点から(図10における時刻t11)、制限値Pblimに応じて充電側の閾値Pb1を限界として充電側に漸減(除変)するように補正される。このように充放電要求パワーPb*を充電側の値に設定することにより、バッテリ50の放電の継続を断つと共に劣化ファクターDを速やかに低下させて出力制限Woutを正側(放電側)に増加させることができる。そして、出力制限Woutの制限が解除されるまでの間(図10における時刻t12から時刻t13の間)に、制限値Pblimが充電側の閾値Pb1に設定されることから充放電要求パワーPb*も充電側の閾値Pb1に維持され、出力制限Woutの制限が解除されると(図10における時刻t13)、制限値Pblimの変化に応じて、すなわち緩変化処理を伴って充放電要求パワーPb*の補正が解除される(充放電要求パワーPb*が一定値Pdまで漸増させられる)。この結果、出力制限Woutの制限を速やかに解除させることができるため、出力制限Woutの制限が長時間継続するのを抑制し、バッテリ50の劣化を抑制しつつ、できるだけ出力制限Woutの制限が解除された状態でバッテリ50の放電すなわちモータMG2からの動力の出力が許容されるようにして、走行に要求される駆動力を応答性よく確保することが可能となる。また、バッテリ50の放電が一時的に停止されたとしても、走行に要求される要求トルクTr*をまかなうパワーがエンジン22から出力されるようにすることで、バッテリ50の放電停止中においても走行に要求される駆動力を確保することができる。なお、閾値Pb1は、値0に設定されてもよい。これにより、出力制限Woutが継続して制限される場合に、少なくともバッテリ50の放電の継続を停止させることができるため、劣化ファクターDを低下させて出力制限Woutの制限を解除させることが可能となる。
【0032】
一方、ステップS120にて残容量SOCが第1の上限側閾値SH1を上回っていると判定した場合には、バッテリECU52は、バッテリ50の過充電を抑制すべく、充放電要求パワーPb*が充電側に補正されないようにステップS130およびS140の処理を実行することなく本ルーチンを一旦終了させる。また、ステップS120にて残容量SOCが下限側閾値SLを下回っていると判断した場合、バッテリECU52は、バッテリ50の残容量SOCが充分ではなく充放電要求パワーPb*が充電側の値Pcに設定されることから充放電要求パワーPb*を充電側に補正する必要がないとみなし、ステップS130およびS140の処理を実行することなく本ルーチンを一旦終了させる。
【0033】
また、ステップS110にてモードスイッチフラグFmsが値1であり、実行用運転モードとしてパワーモードが選択されていると判定したときには、バッテリ50の残容量SOCが予め定められた下限側閾値SLおよび第2の上限側閾値SH2の範囲内(SL≦SOC≦SH2)に含まれるか否かを判定する(ステップS150)。ここで、第2の上限側閾値SH2は、第1の上限側閾値SH1よりも大きな値として予め定められる。バッテリ50の残容量SOCが下限側閾値SLおよび第2の上限側閾値SH2の範囲内に含まれると判定したときには、上述のように出力制限Wout等に基づいて充放電要求パワーPb*の制限値Pblimを設定すると共に(ステップS130)、充放電要求パワーPb*と制限値Pblimとの小さい方を充放電要求パワーPb*として再設定(補正)し(ステップS140)、本ルーチンを一旦終了させる。このように、ノーマルモードが選択されているときに比べて運転者により大きな駆動力が要求されていると考えられるパワーモードが選択されているときには、第1の上限側閾値SH1よりも大きな第2の上限側閾値SH2をバッテリ50の上限側閾値として用いることにより、バッテリ50が充電されるように充放電要求パワーPb*を補正することが残容量SOCによって制限されてしまうことを抑制することができるので、出力制限Woutの制限を速やかに解除して運転者の駆動力要求に良好に応じることが可能となる。一方、ステップS150にて残容量SOCが第2の上限側閾値SH2を上回っていると判断した場合には、バッテリECU52は、バッテリ50の過充電を抑制すべく、充放電要求パワーPb*が充電側に補正されないようにステップS130およびS140の処理を実行することなく本ルーチンを一旦終了させる。また、ステップS150にて残容量SOCが下限側閾値SLを下回っていると判断した場合、バッテリECU52は、バッテリ50の残容量SOCが充分ではなく充放電要求パワーPb*が充電側の値Pcに設定されることから充放電要求パワーPb*を充電側に補正する必要がないとみなし、ステップS130およびS140の処理を実行することなく本ルーチンを一旦終了させる。
【0034】
以上説明したように、実施例のハイブリッド自動車20では、バッテリ50の放電が継続されるほど許容放電電力としての出力制限Woutが放電電力として小さく制限されるように当該出力制限Woutが補正される。そして、出力制限Woutの制限が開始されると、その後に少なくともバッテリ50の放電が停止されるように充放電要求パワーPb*(目標充放電電力)が補正される(ステップS130およびS140)。このように、出力制限Woutの制限が開始された後にバッテリ50の放電の継続を断つことで、出力制限Woutの制限が解除されるようにすることができる。これにより、出力制限Woutの制限が長時間継続するのを抑制し、できるだけ出力制限Woutの制限が解除された状態でバッテリ50の放電すなわちモータMG2からの動力の出力が許容されるようにして走行に要求される駆動力を応答性よく確保することが可能となる。また、バッテリ50の放電が一時的に停止されたとしても、走行に要求される要求トルクに基づくトルクが内燃機関から出力されるようにすることで、バッテリ50の放電停止中においても走行に要求される駆動力を確保することができる。この結果、実施例のハイブリッド自動車20によれば、バッテリ50の連続放電に起因した劣化を抑制しながら、走行に要求される駆動力をより適正に確保することが可能となる。
【0035】
また、バッテリECU52は、バッテリ50の充電の継続に応じて出力制限Woutの制限を解除し、出力制限Woutの制限が開始された後に、バッテリ50が充電されるように充放電要求パワーPb*を補正する(ステップS130およびS140)。このように、バッテリ50の充電の継続に応じて出力制限Woutの制限が解除される場合には、出力制限Woutの制限が開始された後にバッテリ50が充電されるように充放電要求パワーPb*を補正することにより、バッテリ50の強制充電により出力制限Woutの制限を速やかに解除することができる。これにより、出力制限Woutが制限された状態でモータMG2から動力が出力される機会をより一層減らすことが可能となる。
【0036】
更に、バッテリECU52は、出力制限Woutの制限が開始された後に、出力制限Woutの制限量が所定値ΔWref以上となると充放電要求パワーPb*を放電側から充電側に徐変させ、充放電要求パワーPb*が予め定められた充電側の閾値Pb1になると出力制限Woutの制限が解除されるまで充放電要求パワーPb*を閾値Pb1に維持し、出力制限Woutの制限が解除されると緩変化処理を伴って充放電要求パワーPb*の補正を解除する。これにより、充放電要求パワーPb*をより適正に補正して、出力制限Woutの制限を速やかに解除することができる。
【0037】
また、バッテリECU52による充放電要求パワーPb*の補正は、バッテリ50の残容量SOCが予め定められた第1の上限側閾値SH1以下であるときに実行される(ステップS120)。このように、バッテリ50の残容量SOCが第1の閾値SH1以下であるときにのみ上述の充放電要求パワーPb*の補正を実行することにより、バッテリ50が充電されるように充放電要求パワーPb*を補正したときにバッテリ50の残容量SOCが過剰に高まらないようにして当該バッテリ50を保護することができる。
【0038】
更に、実施例のハイブリッド自動車20は、通常走行用の運転モードとしてのノーマルモードに比べて走行用の動力の出力応答性を優先するパワーモード(パワー運転モード)を実行用運転モードとして選択するためのモードスイッチ88を備え、バッテリECU52による充放電要求パワーPb*の補正は、実行用運転モードとしてパワーモードが選択されている場合には、バッテリ50の残容量SOCが第1の上限側閾値SH1よりも大きい第2の上限側閾値SH2以下であるときに実行される(ステップS110およびS150)。これにより、ノーマルモードの選択時に比べて運転者がより大きな駆動力を要求していると考えられるパワーモードの選択時に、バッテリ50が充電されるように充放電要求パワーPb*を補正することが残容量SOCによって制限されてしまうことを抑制することができるので、出力制限Woutの制限を速やかに解除して運転者の駆動力要求に良好に応じることが可能となる。
【0039】
なお、本実施例のハイブリッド自動車20では、出力制限Woutの制限が開始された後に、バッテリ50が充電されるように充放電要求パワーPb*を補正する(ステップS130およびS140)ものとしたが、出力制限Woutの制限が開始された後に、劣化ファクターDを低下させる程度までバッテリ50の充放電電流Ibを低下させることが可能な放電側の値まで充放電要求パワーPb*を低下させるものとしてもよい。
【0040】
また、上記実施例のハイブリッド自動車20は、モータMG1およびMG2を備えた、いわゆる2モータ式のハイブリッド自動車であるが、本発明がエンジン(内燃機関)および走行用の動力を出力可能なモータ(電動機)を備えた、いわゆる1モータ式のハイブリッド自動車に適用され得ることはいうまでもない。
【0041】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。すなわち、上記実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、走行用の動力を出力可能なモータMG2が「電動機」に相当し、モータMG2と電力をやり取り可能なバッテリ50が「二次電池」に相当し、バッテリ50の残容量(充電割合)SOCに基づいてバッテリ50の充放電要求パワー(目標充放電電力)Pb*を設定するバッテリECU52が「目標充放電電力設定手段」に相当し、バッテリ50の状態に基づいてバッテリ50の充電に許容される電力である許容充電電力としての入力制限Winおよび放電に許容される電力である許容放電電力としての出力制限Woutを設定するバッテリECU52が「許容充放電電力設定手段」に相当し、バッテリ50が充放電要求パワーPb*で充放電されるようにしながら入力制限Winおよび出力制限Woutの範囲内で走行に要求される要求トルクTr*に基づくトルクが得られるようにエンジン22およびモータMG2を制御するエンジンECU24とモータECU40とハイブリッドECU70との組み合わせが「制御手段」に相当し、バッテリ50の放電が継続されるほど出力制限Woutが放電電力として小さく制限されるように出力制限Woutを補正するバッテリECU52が「許容放電電力補正手段」に相当し、バッテリECU52による出力制限Woutの制限が開始された後に、少なくともバッテリ50の放電が停止されるように充放電要求パワーPb*を補正するバッテリECU52が「目標充放電電力補正手段」に相当し、通常走行用の運転モードであるノーマルモードに比べて走行用の動力の出力応答性を優先するパワーモード(パワー運転モード)を実行用運転モードとして選択するためのモードスイッチ88が「運転モード選択手段」に相当する。ただし、これら実施例および変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、実施例はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
【0042】
以上、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、ハイブリッド自動車の製造産業において利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
20 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 プラネタリギヤ、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、34 プラネタリキャリア、35 減速ギヤ、37 ギヤ機構、38 ディファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)54 電力ライン、70 ハイブリッド用電子制御ユニット(ハイブリッドECU)、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、87 車速センサ、88 モードスイッチ、MG1,MG2 モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、前記電動機と電力をやり取り可能な二次電池と、前記二次電池の充電割合に基づいて該二次電池の目標充放電電力を設定する目標充放電電力設定手段と、前記二次電池の状態に基づいて該二次電池の充電に許容される電力である許容充電電力および放電に許容される電力である許容放電電力を設定する許容充放電電力設定手段と、前記二次電池が前記目標充放電電力で充放電されるようにしながら前記許容充電電力および前記許容放電電力の範囲内で走行に要求される要求トルクに基づくトルクが得られるように前記内燃機関および前記電動機を制御する制御手段とを備えたハイブリッド自動車であって、
前記二次電池の放電が継続されるほど前記許容放電電力が放電電力として小さく制限されるように該許容放電電力を補正する許容放電電力補正手段と、
前記許容放電電力補正手段による前記許容放電電力の制限が開始された後に、少なくとも前記二次電池の放電が停止されるように前記目標充放電電力を補正する目標充放電電力補正手段と、
を備えることを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項2】
前記許容放電電力補正手段は、前記二次電池の充電の継続に応じて前記許容放電電力の制限を解除し、
前記目標充放電電力補正手段は、前記許容放電電力補正手段による前記許容放電電力の制限が開始された後に、前記二次電池が充電されるように前記目標充放電電力を補正することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド自動車。
【請求項3】
前記目標充放電電力補正手段は、前記許容放電電力補正手段による前記許容放電電力の制限が開始された後に、該許容放電電力の制限量が所定値以上となると前記目標充放電電力を放電側から充電側に徐変させ、前記目標充放電電力が予め定められた充電側の閾値になると前記許容放電電力の制限が解除されるまで該目標充放電電力を前記閾値に維持し、前記許容放電電力の制限が解除されると緩変化処理を伴って前記目標充放電電力の補正を解除することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド自動車。
【請求項4】
前記目標充放電電力補正手段による前記目標充放電電力の補正は、前記二次電池の充電割合が予め定められた第1の閾値以下であるときに実行されることを特徴とする請求項2または3に記載のハイブリッド自動車。
【請求項5】
通常走行用の運転モードに比べて走行用の動力の出力応答性を優先するパワー運転モードを実行用運転モードとして選択するための運転モード選択手段を更に備え、
前記目標充放電電力補正手段による前記目標充放電電力の補正は、前記実行用運転モードとして前記パワー運転モードが選択されている場合には、前記二次電池の充電割合が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値以下であるときに実行されることを特徴とする請求項2から4の何れか一項に記載のハイブリッド自動車。
【請求項6】
前記許容放電電力補正手段による前記許容放電電力の制限は、前記二次電池の充放電電流の積算値に基づいて実行されることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のハイブリッド自動車。
【請求項7】
前記二次電池は、リチウムイオン二次電池であることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載のハイブリッド自動車。
【請求項8】
内燃機関と、走行用の動力を出力可能な電動機と、前記電動機と電力をやり取り可能な二次電池と、前記二次電池の充電割合に基づいて該二次電池の目標充放電電力を設定する目標充放電電力設定手段と、前記二次電池の状態に基づいて該二次電池の充電に許容される電力である許容充電電力および放電に許容される電力である許容放電電力を設定する許容充放電電力設定手段と、前記二次電池が前記目標充放電電力で充放電されるようにしながら前記許容充電電力および前記許容放電電力の範囲内で走行に要求される要求トルクに基づくトルクが得られるように前記内燃機関および前記電動機を制御する制御手段とを備えたハイブリッド自動車の制御方法であって、
(a)前記二次電池の放電が継続されるほど前記許容放電電力が放電電力として小さく制限されるように該許容放電電力を補正し、
(b)ステップ(b)にて前記許容放電電力の制限が開始された後に、少なくとも前記二次電池の放電が停止されるように前記目標充放電電力を補正する、
ハイブリッド自動車の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−171491(P2012−171491A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35562(P2011−35562)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】