説明

ハニカム構造体、ハニカム構造体の製造方法、ハニカムフィルタ及びハニカムフィルタの製造方法

【課題】気孔率が高く、PMを多く補集することができ、圧力損失が少ないハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】複数のセルが壁部を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム構造体であって、上記ハニカム構造体は、主に無機繊維からなり、上記無機繊維が一体形成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガスを浄化する目的で用いられるハニカム構造体、ハニカム構造体の製造方法、ハニカムフィルタ及びハニカムフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中にはスス等のパティキュレートマター(以下、PMともいう)が含まれており、近年、このPMが環境や人体に害を及ぼすことが問題となっている。
そこで、排ガス中のPMを捕集して排ガスを浄化するフィルタとして、コージェライト製や炭化珪素製などのセラミックハニカムフィルタを用いたフィルタが種々提案されている。また、貫通孔を有する積層部材を積層させることにより作製した積層型のハニカムフィルタも種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10(a)は、貫通孔を有するシート状の無機繊維集合体からなる積層部材を積層させることにより作製した積層型のハニカムフィルタの具体例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、そのA−A線断面図である。(c)は、(b)においてBで示す部分の拡大断面図である。
【0004】
ハニカムフィルタ100は、いずれか一端が目封じされた多数のセル111が壁部113を隔てて長手方向に並設された円柱形状のものである。
すなわち、図10(b)に示したように、セル111は、排気ガスの入口側又は出口側に相当する端部のいずれかが目封じされ、一のセル111に流入した排気ガスは、必ずセル111を隔てる壁部113を通過した後、他のセル111から流出し、壁部113がフィルタとして機能するようになっている。
【0005】
ハニカムフィルタは、図10(a)、(b)に示したように、厚さが0.1〜20mmのシート状の積層部材110aを積層して形成した積層体であり、長手方向に貫通孔が重なり合うように、積層部材110aが積層されている。
ここで、貫通孔が重なり合うように積層部材が積層されているとは、隣り合う積層部材に形成された貫通孔同士が連通するように積層されていることをいう。
また、その端部には貫通孔が市松模様になるように形成された端部用積層部材10bが積層されており、セル111のいずれか一端が端部用積層部材10bによって目封じされている。
【0006】
各積層部材同士を積層体とするには、排気管に装着するためのケーシング(金属製の筒状体)内で積層部材110aと端部用積層部材10bを積層し、圧力を加える。これによりハニカムフィルタ100が形成される。
【0007】
このような構成のハニカムフィルタからなる排ガス浄化フィルタが内燃機関の排気通路に設置されると、内燃機関より排出された排気ガス中のPMは、このハニカムフィルタを通過する際に壁部113により捕捉され、排気ガスが浄化される。
【0008】
特に、無機繊維集合体からなるハニカムフィルタは、その気孔率が高く、壁内にPMを多く取り入れることができる。従って、気孔率の低いハニカムフィルタと比較して、壁内に担持された触媒とPMとの接触確率が高くなるため、PMを燃焼するためのエネルギーを低く抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2005/000445号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、ハニカムフィルタ100を構成する、無機繊維集合体からなる積層部材110aは、無機繊維、有機バインダ、無機バインダ等に充分量の水を加えたスラリーをメッシュを用いて抄造することによって製造されるが、上記スラリーを抄造して積層部材110aを製造した場合、積層部材110aの表面部には内部に比べて無機繊維が密に分布しやすくなる。
【0011】
そして、積層部材110aを積層し、圧力を加えてハニカムフィルタを形成した場合、各積層部材110aの中でも無機繊維が密に分布している表面部同士が隣接して圧縮されるため、積層部材110aの境界部分である積層界面114(図10(c)参照)には他の部分に比べて無機繊維が密に分布することとなる。
【0012】
ここで、無機繊維が密に分布している部位を排ガスが通過することは、他の部位を排ガスが通過することよりも難しいため、このような無機繊維が密に分布している積層界面が存在するとハニカムフィルタ全体の圧力損失が増加することとなる。
【0013】
無機繊維集合体からなるハニカムフィルタは、セラミックを用いたハニカムフィルタより圧力損失は低いものの、無機繊維が密に分布している部位が存在すると、無機繊維が疎に分布している部位に優先的に排ガスが流れ、壁全体を有効に使うことができず、PM燃焼のエネルギーを低く抑えることができないことがあった。そこで、無機繊維を用いてハニカムフィルタを作製する場合において、より均質で圧力損失の低いハニカムフィルタとする方法が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、主に無機繊維からなり、この無機繊維が一体形成されたハニカム構造体を製造した場合、そのハニカム構造体には積層界面が存在しないため、ハニカム構造体の内部に無機繊維が比較的密に分布する部位が存在せず、上記部位が存在することによって生じる圧力損失の増加がないので、圧力損失が低いハニカム構造体とすることができることを見出し、本発明のハニカム構造体を完成した。
また、このような圧力損失の低いハニカム構造体が有するセルのいずれか一端を目封じしたハニカムフィルタも完成した。
また、このような圧力損失の低いハニカム構造体及びハニカムフィルタを製造するための方法も併せて見出した。
【0015】
すなわち、第一の本発明のハニカム構造体は、複数のセルが壁部を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム構造体であって、上記ハニカム構造体は、主に無機繊維からなり、上記無機繊維が一体形成されてなることを特徴とする。
【0016】
第一の本発明のハニカム構造体は、上記無機繊維と無機物とから形成されており、上記無機物を介して上記無機繊維同士が固着されていることが望ましい。
【0017】
第一の本発明のハニカム構造体において、上記無機物は、上記無機繊維同士の交差部又はその近傍に存在し、かつ、
上記無機物が上記無機繊維同士の交差部又はその近傍に局在していることが望ましい。
【0018】
また、上記無機物は、溶融固化することで、上記無機繊維同士を固定していることが望ましい。
【0019】
第一の本発明のハニカム構造体において、上記無機物は、シリカを含有していることが望ましく、上記無機繊維は、炭化珪素、アルミナ、玄武岩、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア及びジルコニアよりなる群から選ばれた少なくとも1種からなるものであることが望ましい。
【0020】
第一の本発明のハニカム構造体は、上記無機繊維の少なくとも一部に触媒が担持されてなることが望ましい。
【0021】
第一の本発明のハニカム構造体において、上記触媒は、少なくともCeOを含む酸化物触媒であることが望ましい。また、上記酸化物触媒は、CeO、ZrO、FeO、Fe、CuO、CuO、Mn、MnO、及び、組成式A1−nCO(式中、AはLa、Nd、Sm、Eu、Gd又はYであり、Bはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、CはMn、Co、Fe又はNi)で表される複合酸化物のうちの少なくとも一種であることが望ましい。
【0022】
また、第一の本発明のハニカム構造体において、上記触媒の上記ハニカム構造体の見掛け体積に対する担持量は、10〜200g/l(リットル)であることが望ましい。
【0023】
第二の本発明のハニカム構造体の製造方法は、無機繊維Aと、上記無機繊維Aが溶融又は昇華しない温度で溶融する無機繊維B及び/又は無機粒子Cとを混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を、所定の孔が形成されたダイスを介して押し出すことにより、長手方向に多数のセルが形成された柱形状の成形体を形成する、押出し成形工程と、
上記成形体を上記無機繊維Aの耐熱温度以下、かつ、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cの軟化温度以上の温度で加熱処理する熱処理工程とを行い第一の本発明のハニカム構造体を製造することを特徴とする。
【0024】
第三の本発明のハニカム構造体の製造方法は、無機繊維Aと、上記無機繊維Aが溶融又は昇華しない温度で溶融する無機繊維B及び/又は無機粒子Cと、樹脂とを混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を充填するための筒状容器の長手方向とハニカム構造体のセルを形成するための柱形状中子の長軸方向とが平行になり、かつ、平面視格子状になるように複数の上記中子を上記筒状容器内に立設する中子立設工程と、
上記中子立設工程で上記中子を立設した上記筒状容器中に、上記混合物を充填する混合物充填工程と、
上記混合物充填工程で充填された上記混合物中の樹脂を硬化させ、樹脂硬化体を形成する樹脂硬化工程と、
上記樹脂硬化工程で得られた上記樹脂硬化体内の上記中子を除去することにより、長手方向に多数のセルが形成された柱形状の成形体を形成する中子除去工程と、
上記中子除去工程で得られた上記成形体中に含まれる有機物を加熱脱脂により除去する脱脂工程と、
上記脱脂工程で脱脂した上記成形体を上記無機繊維Aの耐熱温度以下、かつ、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cの軟化温度以上の温度で加熱処理する熱処理工程とを行い第一の本発明のハニカム構造体を製造することを特徴とする。
【0025】
第四の本発明のハニカム構造体の製造方法は、無機繊維Aと、上記無機繊維Aが溶融又は昇華しない温度で溶融する無機繊維B及び/又は無機粒子Cと、樹脂とを混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を充填するための型枠体であって、ハニカム構造体のセルを形成するための柱体が、主面に対して垂直、かつ、平面視格子状に立設された底板体と、上記底板体と上記柱体の周囲を包囲するように設けられた外枠体とからなる型枠体内に、上記混合工程で得られた混合物を充填する混合物充填工程と、
上記混合物充填工程で充填された上記混合物中の樹脂を硬化させ、樹脂硬化体を形成する樹脂硬化工程と、
上記樹脂硬化工程で得られた上記樹脂硬化体から上記柱体を抜いて上記型枠体全体を取り外すことにより、長手方向に多数のセルが形成された柱形状の成形体を形成する型枠体脱離工程と、
上記型枠体脱離工程で得られた上記成形体中に含まれる有機物を加熱脱脂により除去する脱脂工程と、
上記脱脂工程で脱脂した上記成形体を上記無機繊維Aの耐熱温度以下、かつ、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cの軟化温度以上の温度で加熱処理する熱処理工程とを行い第一の本発明のハニカム構造体を製造することを特徴とする。
【0026】
第五の本発明のハニカム構造体の製造方法は、槽本体と、上記槽本体の底部に形成されたメッシュと、上記メッシュに対して垂直、かつ、平面視格子状にメッシュに立設され、ハニカム構造体のセルを形成するための柱状マスクと、上記メッシュを底面とし、かつ、上記柱状マスクで囲まれた空間であり、混合物を投入するための液充填部とを備えた槽を用いて行うハニカム構造体の製造方法であって、
無機繊維Aと、上記無機繊維Aが溶融又は昇華しない温度で溶融する無機繊維B及び/又は無機粒子Cとを混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を、上記液充填部に投入する混合物充填工程と、
上記混合物内の水分を上記メッシュを通じて排出し、脱水体を形成する脱水工程と、
上記脱水体から上記柱状マスクを取り外すことにより、長手方向に多数のセルが形成された柱形状の成形体を形成するマスク脱離工程と、
上記マスク脱離工程で形成した上記成形体を上記無機繊維Aの耐熱温度以下で、かつ、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cの軟化温度以上の温度で加熱処理する熱処理工程とを行い第一の本発明のハニカム構造体を製造することを特徴とする。
【0027】
上記第二〜第五の本発明のハニカム構造体の製造方法において、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cは、シリカを含有していることが望ましく、上記無機繊維Aは、炭化珪素、アルミナ、玄武岩、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア及びジルコニアよりなる群から選ばれた少なくとも1種からなるものであることが望ましい。
また、上記無機繊維Aと、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cとの配合比が、(2:8)〜(8:2)であることが望ましい。
【0028】
上記第二〜第五の本発明のハニカム構造体の製造方法は、上記柱形状の成形体を酸処理する工程を含むことが望ましい。
また、上記第二〜第五の本発明のハニカム構造体の製造方法は、上記無機繊維に酸化物触媒を担持させる工程を含むことが望ましい。
【0029】
第六の本発明のハニカムフィルタは、上記ハニカム構造体のセルがそのいずれか一端で目封じされており、上記ハニカム構造体がフィルタとして機能するように構成されていることを特徴とする。
【0030】
第六の本発明のハニカムフィルタは、上記ハニカム構造体の両端に、主に金属からなる端部用積層部材が積層されてなることが望ましい。
【0031】
第六の本発明のハニカムフィルタにおいては、上記セルのいずれか一端が封止されてなるハニカム構造体、又は、上記ハニカム構造体と主に金属からなる端部用積層部材が金属容器に設置されていることが望ましい。
【0032】
第七の本発明のハニカムフィルタの製造方法は、第二〜第五のいずれかの本発明のハニカム構造体の製造方法で製造したハニカム構造体の両端に、主に金属からなる端部用積層部材を積層する工程を含むことを特徴とする。
【0033】
第七の本発明のハニカムフィルタの製造方法は、上記ハニカム構造体と上記端部用積層部材を金属容器に設置する工程を含むことが望ましい。
【発明の効果】
【0034】
第一の本発明のハニカム構造体は、主に無機繊維からなり、上記無機繊維が一体形成されてなるため、積層界面が存在しない。そのため、ハニカム構造体の内部に無機繊維が比較的密に分布する部位を生じさせることのない構造とすることができるため、上記無機繊維が比較的密に分布する部位に起因する圧力損失の増加がないハニカム構造体とすることができる。
【0035】
また、第二の本発明のハニカム構造体の製造方法では、無機繊維を含む混合物を所定の孔が形成されたダイスを介して押し出して柱形状の成形体を成形し、加熱処理することで、複雑な工程や高価な機器等を必要とすることなく、圧力損失の低い、主に無機繊維からなり、上記無機繊維が一体形成されたハニカム構造体を製造することができる。
さらに、ダイスの形状を変更することで、様々な外形形状とセル形状とを有するハニカム構造体を製造することができる。
【0036】
また、第三の本発明のハニカム構造体の製造方法では、無機繊維と樹脂を混合した混合物を、中子を平面視格子状に立設した容器内に充填し、上記樹脂を硬化させた後に中子と上記樹脂を除去することで柱形状の成形体を成形し、加熱処理することで、複雑な工程や高価な機器等を必要とすることなく、圧力損失の低い、主に無機繊維からなり、上記無機繊維が一体形成されたハニカム構造体を製造することができる。
さらに、容器と中子の形状を容易に変更できるため、柱形状に限られない多様な外形形状と、例えば有底孔内に段差を有する多様な形状のセルとを有するハニカム構造体を製造することができる。
【0037】
また、第四の本発明のハニカム構造体の製造方法では、無機繊維と樹脂を混合した混合物を、柱体を平面視格子状に立設した型枠体内に充填し、上記樹脂を硬化させた後に型枠を取り外すことで柱形状の成形体を成形し、加熱処理することで、複雑な工程や高価な機器等を必要とすることなく、圧力損失の低い、主に無機繊維からなり、上記無機繊維が一体形成されたハニカム構造体を製造することができる。
さらに、柱体と外枠体の形状を変更することで、様々な外形形状とセル形状とを有するハニカム構造体を製造することができる。
【0038】
また、第五の本発明のハニカム構造体の製造方法では、無機繊維と無機繊維及び/又は無機粒子を混合した混合物を、底面のメッシュと底面のメッシュに対して垂直になり、かつ、平面視格子状になるようにメッシュに立設された柱状マスクとを備えた槽内に充填し、混合物内の水分を上記メッシュを通じて排出して無機繊維からなる柱形状の成形体を成形し、加熱処理することで、複雑な工程や高価な機器等を必要とすることなく、圧力損失の低い、主に無機繊維からなり、上記無機繊維が一体形成されたハニカム構造体を製造することができる。
【0039】
また、第六の本発明のハニカムフィルタは、主に無機繊維からなり、上記無機繊維が一体形成されてなり、積層界面が存在しないハニカム構造体のセルのいずれか一方を目封じしてなるため、均質で圧力損失の低いハニカムフィルタとすることができる。
【0040】
また、第七の本発明のハニカムフィルタの製造方法では、主に無機繊維からなり、上記無機繊維が一体形成されてなるハニカム構造体の両端に金属からなる端部用積層部材を積層してセルの端部を目封じすることができるため、均質で圧力損失の低いハニカムフィルタを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】(a)は、第一の本発明のハニカム構造体の両端に端部用積層部材を積層してなる第六の本発明のハニカムフィルタの具体例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、そのA−A線断面図である。
【図2】第一の本発明のハニカム構造体を構成する無機繊維の一部を模式的に示す断面図である。
【図3】(a)は、第六の本発明のハニカムフィルタを構成するハニカム構造体と端部用積層部材を示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示すハニカム構造体と端部用積層部材を積層してハニカムフィルタを作製する様子を示す斜視図である。
【図4】柱形状の成形体の成形に使用するプランジャー式成形機を模式的に示す断面図である。
【図5】(a)(I)〜(VI)は、第三の本発明のハニカム構造体の製造工程における、中子立設工程から中子除去工程までの工程を模式的に表した図であり、(b)は、筒状容器に中子を立設した様子を表す上面図であり、(c)は、段差を有する中子の形状の一例を表す斜視図である。
【図6】(a)(I)〜(V)は、第四の本発明のハニカム構造体の製造工程における、混合物充填工程から型枠体脱離工程までの工程を模式的に表した図であり、(b)は、型枠体内に柱体が立設された様子を表す上面図である。
【図7】(a)は、第五の本発明のハニカム構造体の製造工程において用いる槽を模式的に表した図であり、(b)は、プレス工程に用いるプレス板を模式的に表す上面図である。
【図8】第六の本発明のハニカムフィルタが設置された車両の排気ガス浄化装置の一例を模式的に示した断面図である。
【図9】圧力損失測定装置の説明図である。
【図10】(a)は、貫通孔を有するシート状の無機繊維集合体からなる積層部材を積層させることにより作製した積層型のハニカムフィルタの具体例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、そのA−A線断面図である。(c)は、(b)においてBで示す部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
まず、第一の本発明のハニカム構造体及び第六の本発明のハニカムフィルタについて説明する。
【0043】
第一の本発明のハニカム構造体は、複数のセルが壁部を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム構造体であって、上記ハニカム構造体は、主に無機繊維からなり、上記無機繊維が一体形成されてなることを特徴とする。
【0044】
ここで、一体形成されてなるとは、当該ハニカム構造体がいくつかの部品を集合することにより形成されているのではなく、一個の分割不可能な部材として形成されていることをいう。
【0045】
また、第六の本発明のハニカムフィルタは、上記ハニカム構造体のセルのいずれか一端で目封じされており、上記ハニカム構造体がフィルタとして機能するように構成されていることを特徴とする。
また、第六の本発明のハニカムフィルタは、上記ハニカム構造体の両端に、主に金属からなる端部用積層部材が積層されてなることが望ましい。
また、第六の本発明のハニカムフィルタにおいては、上記セルのいずれか一端が封止されてなるハニカム構造体、又は、上記ハニカム構造体と主に金属からなる端部用積層部材が金属容器に設置されていることが望ましい。
【0046】
以下、第一の本発明のハニカム構造体及び第六の本発明のハニカムフィルタについて図面を参照しながら説明する。
図1(a)は、第一の本発明のハニカム構造体の両端に端部用積層部材を積層してなる第六の本発明のハニカムフィルタの具体例を模式的に示した斜視図であり、(b)は、そのA−A線断面図である。
【0047】
円柱形状のハニカムフィルタ1は、ハニカム構造体10aの両端に端部用積層部材10bが積層されてなるものである。
ハニカム構造体10aは、主に無機繊維からなり、上記無機繊維が一体形成されており、壁部(セル壁)13により隔てられた多数のセル11を有し、セル11の各々は、ハニカム構造体10aの一方の端部から他方の端部まで貫通している。
このセルのいずれか一端は端部用積層部材10bにより目封じされている。なお端部用積層部材については後述する。
【0048】
図1(b)に示したように、セル11は、排気ガスの入口側又は出口側に相当する端部のいずれかが目封じされており、一のセル11に流入した排ガスは、セル11を隔てるセル壁13を通過した後、他のセル11から流出する。すなわち、セル壁13はフィルタとして機能する。
【0049】
無機繊維集合体からなる積層部材110aを多数枚積層することにより構成されるハニカムフィルタ100(図10(a)参照)においては、無機繊維が密に分布した積層界面(図10(c)参照)が存在するのに対し、第一の本発明のハニカム構造体は積層により構成されているものでないため、その内部に積層界面が存在しない。
上記積層界面には無機繊維が密に分布しており、排ガスが通過することが難しいため、圧力損失増加の原因となるが、第一の本発明のハニカム構造体では、積層界面が存在しないことより排ガスの通過が容易となるので、圧力損失の増加が生じることはなく、圧力損失の低いハニカム構造体となる。よって、これを用いて製造したハニカムフィルタも、圧力損失の低いハニカムフィルタとなる。
【0050】
また、第一の本発明のハニカム構造体は主な構成材料が無機繊維であるため、高気孔率のハニカム構造体とすることができる。高気孔率とすることによって、圧力損失を低くすることができるとともに、PMを壁内まで取り入れることができ、壁内に担持された触媒とPMとの接触確率を高くすることができるので、PMを燃焼するためのエネルギーを低く抑えることができる。
【0051】
また、高気孔率の無機繊維が一体成形されてなるハニカム構造体は、熱容量が小さいため、内燃機関から排出される排気熱によって、早期に触媒の活性温度まで上昇させることができる。特にハニカムフィルタとしてエンジンの直下に配置し、その排気熱を有効に利用する形態で用いる場合に優位であると考えられる。
【0052】
なお、上記ハニカム構造体及びハニカムフィルタの垂直断面形状は、特に円形に限られるものではなく、矩形等、種々の形状とすることができるが、曲線のみ又は曲線と直線とで囲まれた形状であることが望ましい。
その具体例として、円形以外には、例えば、楕円形、長円形(レーストラック形)、楕円形又は長円形等の単純閉曲線の一部が凹部を有する形状(concave形状)等を挙げることができる。
【0053】
第一の本発明のハニカム構造体は、主に無機繊維からなるとともに、この無機繊維と無機物とから形成されており、この上記無機物を介して、上記無機繊維同士が固着されている。
ここで、上記無機繊維同士が固着されている部分は主に上記無機繊維同士の交差部又はその近傍であり、上記無機物が、上記無機繊維同士の交差部又はその近傍に局在していることが望ましい。
交差部又はその近傍での固着とは、無機繊維同士の交差部(無機繊維同士が接触していても、接触していなくてもよい)に局在(存在)する無機物を介して無機繊維同士が固着している状態、無機繊維同士の交差部の近傍に局在(存在)する無機物を介して無機繊維同士が固着している状態、又は、無機繊維同士の交差部及びその近傍の領域全体に局在(存在)する無機物を介して無機繊維同士が固着している状態をいう。
また、上記無機物は、溶融固化することで、上記無機繊維同士の交差部分又はその近傍を固定していることが望ましい。
これについて、図面を参照しながら説明する。
【0054】
図2は、第一の本発明のハニカム構造体を構成する無機繊維の一部を模式的に示す断面図である。なお、図2に示した断面図には、交差する無機繊維を長さ方向に切断した断面を示している。
第一の本発明のハニカム構造体は、主に無機繊維からなるとともに、この無機繊維と無機物とから形成されており、上記無機物を介して上記無機繊維同士が固着されている。その固着の態様は特に限定されるものでないが、上記無機繊維同士が固着されている部分は、上記無機繊維同士の交差部又はその近傍に存在し、かつ、上記無機物が上記無機繊維同士の交差部又はその近傍に局在していることが望ましい。
図2に示すようにハニカム構造体を形成する無機繊維51同士の交差部又はその近傍に無機物52が固着している場合は、交差部又はその近傍に固着した無機物52が同時に2つの無機繊維を交差部分又はその近傍で結合させる役割を果たしている。上記固着部分は、1本の無機繊維について1ヶ所のみでなく、2ヶ所以上に固着しているものも存在し、そのために多くの無機繊維が複雑にからみ合うこととなり、無機繊維の解繊が防止される。また、ハニカム構造体の強度も向上する。
【0055】
無機物52が、無機繊維51同士の交差部又はその近傍に局在している場合、多くの無機繊維51は、他の無機繊維51との交差部又はその近傍が無機物52により被覆され、その他の大部分にはほとんど無機物が固着していないこととなる。
ここで、無機繊維同士の交差部又はその近傍とは、無機繊維同士が最近接する部位から、概ね無機繊維の繊維径の10倍以内の距離の領域のことをいう。
【0056】
また、第一の本発明のハニカム構造体では、無機物52は、溶融固化することで、無機繊維同士の交差部分又はその近傍を固定していることが望ましい。
無機物52が溶融固化して無機繊維51同士を固定することで、第一の本発明のハニカム構造体の基本的構成要素である無機繊維同士の結合強度が高くなり、無機繊維の解繊がさらに防止されて、ハニカム構造体の強度がより向上することとなる。
【0057】
上記ハニカム構造体の引張強度は、0.3MPa以上であることが望ましく、0.4MPa以上であることがより望ましい。
上記引張強度が0.3MPa未満では、上記ハニカム構造体をハニカムフィルタに用いた場合に、充分な信頼性を得ることができない場合がある。
なお、上記引張強度は、上記ハニカム構造体をシート状に加工し、その両端を治具で固定し、インストロン型万能試験機により測定することができる。
【0058】
上記ハニカム構造体において、無機物が固着している無機繊維同士の交差部又はその近傍は、無機繊維同士の交差部又はその近傍全体の20%以上であることが望ましい。
20%未満ではハニカム構造体の強度が不充分になる場合があるからである。
なお、上記無機物が固着している無機繊維同士の交差部又はその近傍の割合は、上記ハニカム構造体の複数箇所を顕微鏡観察し、各観察視野内で、無機繊維同士の交差部又はその近傍の数と無機物が固着している無機繊維同士の交差部又はその近傍の数とをカウントして割合を求め、その平均値を算出することにより得ることができる。
【0059】
上記ハニカム構造体は、主に無機繊維からなるとともに、この無機繊維と無機物とからなるものである。
上記無機繊維の材質としては、例えば、シリカ−アルミナ、ムライト、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア等の酸化物セラミック、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の窒化物セラミック、炭化珪素等の炭化物セラミック、玄武岩等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
これらのなかでは、炭化珪素、アルミナ、玄武岩、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア及びジルコニアよりなる群から選ばれた少なくとも1種が望ましい。
これらを用いたハニカム構造体は耐熱性に優れるからである。
【0061】
上記無機繊維の繊維長の望ましい下限値は0.1mmであり、望ましい上限値は100mmである。
上記繊維長が0.1mm未満では、無機繊維同士を無機物を介して固着することが困難になり、充分な強度を得ることができない場合があり、一方、上記繊維長が100mmを超えると、均質なハニカム構造体を作製することが難しく、充分な強度を有するハニカム構造体とすることができない場合があるからである。
上記繊維長のより望ましい下限値は0.5mmであり、より望ましい上限値は50mmである。
【0062】
上記無機繊維の繊維径の望ましい下限値は0.3μmであり、望ましい上限値は30μmである。
上記繊維径が0.3μm未満では、無機繊維自身が折れ易く、その結果、得られたハニカム構造体が風食され易くなり、一方、上記繊維径が30μmを超えると、無機繊維同士を無機物を介して固着することが困難になり、充分な強度を得ることができない場合がある。上記繊維径のより望ましい下限値は0.5μmであり、より望ましい上限値は15μmである。
【0063】
上記無機物としては、例えば、上記無機繊維が溶融又は昇華しない温度で溶融するものを用いることができる。また、上記無機物は、上記無機繊維の耐熱温度以下で溶融するものが望ましい。
そして、上記無機物は、組み合わせる無機繊維が溶融又は昇華する温度や、上記無機繊維の耐熱温度等を考慮して、例えば、上記無機繊維の耐熱温度以下の温度で溶融する無機物を用いることができる。具体的には、例えば、無機繊維としてアルミナを用いる場合には、1300℃以下で溶融する無機物を用いることができる。
上記無機物としては、シリカを含有するものが望ましく、その具体例としては、例えば、珪酸ガラス、珪酸アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス等の無機ガラス等が挙げられる。
【0064】
上記ハニカム構造体のみかけの密度は、望ましい下限が0.04g/cmであり、望ましい上限が0.4g/cmである。
0.04g/cm未満では、強度が不充分となり破壊されやすくなることがある。また、0.4g/cm以下では、連続的にPMを燃焼させるのにより適しているので望ましい。なお、本明細書において、見掛け密度とは、試料の質量(g)を試料の見掛け容積(cm)で除した値をいい、見掛け容積とは、試料のセルと気孔とを含んだ容積をいう。
【0065】
第一の本発明のハニカム構造体の気孔率は、望ましい下限が75%であり、望ましい上限が95%である。
【0066】
気孔率が75%未満であると、フィルタ再生時にPMを燃焼させるのに必要な温度までフィルタ内温度が上昇しにくく、また、PMが気孔内部まで入り込みにくいので、ハニカム構造体の連続再生能力が低下するおそれがある。一方、気孔率が95%を超えると気孔の占める割合が大きくなり、ハニカム構造体全体の強度を維持することができにくくなる。
【0067】
また、第一の本発明のハニカム構造体での平均気孔径は特に限定されず、望ましい下限は1μmであり、望ましい上限は100μmである。1μm未満では、セル壁内部の深層においてPMが濾過されず、セル壁内部に担持した触媒と接触することができない場合がある。一方、100μmを超えると、PMが気孔を通り抜けてしまい、これらPMを充分に捕集することができず、フィルタとして機能しないことがある。
なお、気孔率や平均気孔径は、水銀ポロシメータを用いた水銀圧入法、アルキメデス法、走査型電子顕微鏡(SEM)による測定等の従来公知の方法により測定することができる。
【0068】
また、第一の本発明のハニカム構造体において、隣接するセル間の距離(すなわち、セル壁の厚さ)は、0.2mm以上であることが望ましい。0.2mm未満では、ハニカム構造体の強度が低下することがあるからである。
【0069】
一方、上記隣接するセル間の距離(セル壁の厚さ)の望ましい上限は5.0mmである。セル壁の厚さが厚すぎるとセルの開口率及び/又は濾過面積が小さくなり、それに伴って圧力損失が増加することがある。また、PMを燃焼させた際に生じるアッシュが、気孔に深く入り込んで抜けにくくなる。さらにPMを深層濾過することができる範囲をスス捕集に対する壁の有効領域とすると、ハニカム構造体において有効領域の占める比率が低下することとなる。
【0070】
第一の本発明のハニカム構造体において、セルの長手方向に垂直な面におけるセル密度は特に限定されず、望ましい下限は、0.16個/cm(1.0個/in)、望ましい上限は、93個/cm(600個/in)、より望ましい下値は、0.62個/cm(4.0個/in)、より望ましい上限は、77.5個/cm(500個/in)である。
【0071】
また、第一の本発明のハニカム構造体において、セルの長手方向に垂直な面におけるセルの大きさは特に限定されないが、望ましい下限は0.8mm×0.8mm、望ましい上限は16mm×16mmである。
【0072】
また、第一の本発明のハニカム構造体を構成するセルの内表面に凹凸を形成した場合、濾過面積が大きくなり、PMを捕集した際の圧力損失をさらに低くすることが可能となると考えられる。また、凹凸により排ガスの流れを乱流にすることができるため、フィルタ内の温度差を小さくし、熱応力による損傷を効果的に防止することができると考えられる。
【0073】
なお、上記セルの平面視形状については特に四角形に限定されず、例えば、三角形、六角形、八角形、十二角形、円形、楕円形、星型等の形状を挙げることができる。
【0074】
第一の本発明のハニカム構造体の開口率の望ましい値は、下限が30%であり、上限が60%である。
上記開口率が30%未満では、ハニカム構造体に排ガスが流入出する際の圧力損失が大きくなる場合があり、60%を超えると、ハニカム構造体の強度が低下したりする場合がある。
【0075】
また、第一の本発明のハニカム構造体は、耐熱温度が1200℃以上であることが望ましい。
上記耐熱温度が1200℃未満では、再生処理を行った際、特に、一度に多量のパティキュレートを燃焼させる再生処理を行った際に、ハニカム構造体に溶損等の破損が発生する場合があるからである。
【0076】
続いて、第一の本発明のハニカム構造体に設けられたセルの一端を目封じするための端部用積層部材について説明する。
【0077】
図3(a)は、第六の本発明のハニカムフィルタを構成するハニカム構造体と端部用積層部材を示す斜視図であり、図3(b)は、図3(a)に示すハニカム構造体と端部用積層部材を積層してハニカムフィルタを作製する様子を示す斜視図である。
【0078】
第六の本発明のハニカムフィルタは、ハニカム構造体10aの両端に、市松模様に形成された貫通孔を有する端部用積層部材10bが積層されてなることが望ましい。
上記端部用積層部材を積層することにより、セルの端部を封止材で封止することを行わなくても、セルのいずれか一方の端部は、封止されることとなる。
【0079】
上記端部用積層部材は、上記ハニカム構造体と同様の材質からなり、貫通孔が市松模様に形成されたものであってもよいし、貫通孔が市松模様に形成された緻密質の板状体であってもよい。
なお、本明細書において、緻密質とは、上記ハニカム構造体よりも気孔率が小さいものをいい、その具体的な材料としては、例えば、金属やセラミック等が挙げられる。
上記緻密質の板状体を用いた場合には、上記端部用積層部材を薄くすることができる。
また、上記端部用積層部材としては、緻密質の金属からなるものが望ましい。
【0080】
また、上記端部用積層部材として、緻密質の板状体を用いた場合には、封止部からススが漏れることを防止することができる。
【0081】
また、ハニカム構造体の両端に、貫通孔が市松模様に形成された金属積層部材や緻密質の金属からなる板状体を積層した場合には、長時間使用しても風食されにくい。
【0082】
続いて、第六の本発明のハニカムフィルタにおいて、セルのいずれか一端が封止されてなるハニカム構造体、又は、上記ハニカム構造体と主に金属からなる端部用積層部材を設置することができる金属容器について説明する。
【0083】
上記金属容器としては、具体的には、図3(b)に示すような、片側に押え用金具を有する円筒状のケーシング123を用いることができる。
なお、図3(b)は、ケーシング123を形成する筒部の上部を省略して描いているものであり、ケーシング123は円筒状のものである。
ケーシング123の材質としては、例えば、ステンレス(SUS)、アルミニウム、鉄等の金属類が挙げられる。また、その形状は特に限定されるものでないが、設置されるハニカム構造体の外形に近似した形状であることが望ましい。
ケーシング123を用いた具体的な設置方法については、後述する製造方法の項で述べる。
【0084】
続いて、第一の本発明のハニカム構造体に担持させることのできる触媒について説明する。
第一の本発明のハニカム構造体は、上記無機繊維の少なくとも一部に触媒が担持されてなることが望ましい。上記触媒の種類は特に限定されるものでないが、少なくともCeOを含む酸化物触媒であることが望ましい。
上記酸化物触媒としては、パティキュレートの燃焼温度を低下させることができるものであれば特に限定されず、例えば、CeO、ZrO、FeO、Fe、CuO、CuO、Mn、MnO、組成式A1−nCO(式中、AはLa、Nd、Sm、Eu、Gd又はYであり、Bはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、CはMn、Co、Fe又はNi)で表される複合酸化物等が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよいが、少なくともCeOを含むものであることが望ましい。
このような酸化物触媒を担持させることにより、パティキュレートの燃焼温度を低下させることができる。
【0085】
上記触媒の上記ハニカム構造体の見掛け体積に対する担持量は、10〜200g/lが望ましい。
上記担持量が10g/l未満では、ハニカム構造体の壁部に対して上記触媒が担持されていない部分が多くなるため、パティキュレートと上記触媒とが接触しない部分が生じ、充分にパティキュレートの燃焼温度を低下することができない場合があり、一方、200g/lを超えてもパティキュレートと上記触媒との接触はさほど向上しないからである。
【0086】
このような第一の本発明のハニカム構造体の製造方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法により製造が可能であるが、例えば、下記する第二〜第五の本発明のハニカム構造体の製造方法により製造することができる。
【0087】
次に、第二の本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。
第二の本発明のハニカム構造体の製造方法は、無機繊維Aと、上記無機繊維Aが溶融又は昇華しない温度で溶融する無機繊維B及び/又は無機粒子Cとを混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を、所定の孔が形成されたダイスを介して押し出すことにより、長手方向に多数のセルが形成された柱形状の成形体を形成する、押出し成形工程と、
上記成形体を上記無機繊維Aの耐熱温度以下、かつ、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cの軟化温度以上の温度で加熱処理する熱処理工程とを行い第一の本発明のハニカム構造体を製造することを特徴とする。
本明細書中、第二の本発明のハニカム構造体の製造方法を、単に、押出し成形による製造方法ともいうこととする。
【0088】
以下、上記第二の本発明のハニカム構造体の製造方法について工程順に説明する。
まず、無機繊維Aと、上記無機繊維Aが溶融しない温度で溶融する無機繊維B及び/又は無機粒子Cとを混合して混合物を調製する、混合工程を行う。
【0089】
上記無機繊維Aとしては、上記ハニカム構造体の説明において挙げた無機繊維と同様のものを用いることができ、炭化珪素、アルミナ、玄武岩、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア及びジルコニアよりなる群から選ばれた少なくとも1種であることが望ましい。
その理由は、耐熱性に優れたハニカム構造体を製造することができるからである。
【0090】
上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cとしては、上記無機繊維Aが溶融しない温度で溶融するものであれば特に限定されず、その具体例について、上記無機繊維Bとしては、例えば、珪酸ガラス、珪酸アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス等からなる無機ガラスファイバ等が挙げられ、上記無機粒子Cとしては、例えば、珪酸ガラス、珪酸アルカリガラス、ホウ珪酸ガラス等からなる無機ガラス粒子等が挙げられる。
また、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cは、上記無機繊維Aの耐熱温度以下で溶融するものが望ましい。これら無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cは、後述する熱処理工程で軟化し、第一の本発明のハニカム構造体における無機物となる。
【0091】
上記無機繊維Bの繊維長の望ましい下限は0.1mmであり、望ましい上限は100mmである。
上記繊維長が0.1mm未満では、無機繊維A同士を無機物を用いて固着することが困難となり、充分な強度が得られない場合があり、一方、上記繊維長が100mmを超えると、混合物を調製した際に均一に分散させることが難しく、後工程において、加熱処理を施す際に、無機繊維B及び/又は無機粒子Cが均一に分散していないことに起因して、無機繊維A同士の交差部又はその近傍に固着する部位が少なくなってしまうことがある。
より望ましい下限は0.5mmであり、より望ましい上限は50mmである。
【0092】
上記無機繊維Bの繊維径の望ましい下限は0.3μmであり、望ましい上限は30μmである。
上記繊維径が0.3μm未満では、無機繊維A同士を無機物を用いて固着することが困難となり、充分な強度が得られない場合があり、30μmを超えると、無機繊維A同士の交差部又はその近傍に固着する部位が少なくなってしまうことがある。
【0093】
上記無機粒子Cの粒子径の望ましい下限は1μmであり、望ましい上限は100μmである。
上記粒子径が1μm未満では、凝集剤が必要となり、均一な分散が困難となることがあり、100μmを超えると、混合物を調製した際に均一に分散させることが難しく、後工程において、加熱処理を施す際に、無機繊維B及び/又は無機粒子Cが均一に分散していないことに起因して、無機繊維A同士の交差部又はその近傍に固着する部位が少なくなってしまうことがある。
【0094】
上記無機繊維Aと、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cとを混合する際の、上記無機繊維Aと上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cとの配合比(重量比)は、(2:8)〜(8:2)であることが望ましい。
無機繊維Aの配合比が、(2:8)より少ないと、無機繊維の表面全体をコートするように無機物が固着し易くなり、得られるハニカム構造体の柔軟性が不充分になることがあり、一方、無機繊維Aの配合比が、(8:2)より多いと、無機繊維同士の固着部位の数が少なく、得られるハニカム構造体の強度が不充分になることがあるからである。
【0095】
また、上記混合物を調製する際には、必要に応じて、水等の液状媒体や分散剤を添加することにより、上記無機繊維Aと、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cとを均一に混合してもよい。また、有機バインダを添加してもよい。有機バインダを添加することにより、無機繊維Aと、無機繊維B及び/又は無機粒子Cとが確実に絡みあって、焼成前であっても無機繊維B及び/又は無機粒子Cが無機繊維A同士から抜けにくく、無機繊維A同士をより確実に固着することができるからである。
【0096】
有機バインダとしては、例えば、アクリル系バインダ、エチルセルロース、ブチルセロソルブ、ポリビニルアルコール等が挙げられる。これらの有機バインダは、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、必要に応じて、可塑剤、潤滑剤、成形助剤、造孔剤等を添加してもよい。可塑剤、潤滑材は、従来から用いられているものを用いることができる。
【0097】
このようにして得られた混合物は、均一な組成の状態が長期間に渡って持続し、無機繊維等が沈降しないような状態のものが望ましく、また、後の成形工程で所定の形状を維持できる程度の粘度を有する混合物であることが望ましい。
【0098】
次に、上記混合工程で得られた混合物を、所定の孔が形成されたダイスを介して連続的に押し出すことにより、長手方向に多数のセルが形成された柱形状の成形体を形成する、押出し成形工程を行う。
【0099】
本押出し成形工程に用いる装置は、特に限定されるものではなく、単軸スクリュー式押出成形機、多軸スクリュー式押出成形機、プランジャー式成形機等を挙げることができる。この中でも、プランジャー式成形機を特に好適に用いることができる。
本工程に用いるプランジャー式成形機は、以下の形式のものに限定されるものではないが、装置とその使用例について図面を用いて説明する。
【0100】
図4は、柱形状の成形体の成形に使用するプランジャー式成形機を模式的に示す断面図である。
【0101】
このプランジャー式成形機70は、シリンダ71とシリンダ内を前後(図面上では左右方向)に往復運動することができる機構を備えたピストン73と、シリンダの先端に設けられ、長手方向に多数のセルが形成された柱形状の成形体を押出し成形することができるように孔が形成されたダイス74と、シリンダ71の上部に位置し、シリンダ71からの配管75が接続された混合物タンク72とを含んで構成されている。そして、混合物タンク72のすぐ下には、シャッタ76が設けられ、混合物タンク72からの混合物の投入を遮断することができるようになっている。また、配管75には、羽根77aを有するスクリュー77が配設されており、モータ78により回転するようになっている。羽根77aの大きさは、配管の径とほぼ同じであるため、混合物79は、上に逆流しにくくなっている。なお、混合物タンク72には、上記混合工程で得られた混合物が投入されている。
【0102】
プランジャー式成形機70を用いて成形体を作製する際には、まず、シャッタ76を開け、スクリューを回転させることより上記混合工程で得られた混合物を、混合物タンク72よりシリンダ71に投入する。このとき、投入量に合わせてピストン73を図4中、右側のシリンダ71端部まで移動させる。
混合物がシリンダ71内に充填されると、シャッタ76を閉めると同時にスクリュー77の回転を停止する。このように混合物79がシリンダ71内に満たされた状態でピストン73をダイス側へ押し込むと、ダイス74より混合物が押し出されて、複数のセルが壁部を隔てて長手方向に複数形成された柱形状の成形体が連続的に形成される。この際、ダイスに形成した孔の形状に応じて、その形状のセルが形成される。この工程を繰り返すことにより、成形体を作製することができる。粘度等によっては、シリンダ73を停止させ、スクリュー77を回転させることにより、連続的に成形体を作製することもできる。
なお、ピストン73の移動させるための駆動源として、図4に示したプランジャー式成形機70では、オイルシリンダ80を用いているが、エアーシリンダを用いてもよく、ボールネジ等を用いてもよい。
【0103】
押出し成形工程により形成されるセルの形状は、ダイスに形成する孔の形状を変更することで所望の形状とすることができる。
セルの垂直断面形状については、特に四角形に限定されず、例えば、三角形、六角形、八角形、十二角形、円形、楕円形、星型等の任意の形状を挙げることができる。
【0104】
また、ダイスの形状を変更することで様々な外形のハニカム構造体を製造することができる。上記ハニカム構造体の垂直断面形状は、円形に限られるものではなく、矩形等、種々の形状とすることができるが、曲線のみ又は曲線と直線とで囲まれた形状であることが望ましく、その具体例としては、円形以外には、例えば、楕円形、長円形(レーストラック形)、楕円形又は長円形等の単純閉曲線の一部が凹部を有する形状(concave形状)等を挙げることができる。
【0105】
次に、上記押出し成形工程で得られた成形体を、上記無機繊維Aの耐熱温度以下で、かつ、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cの軟化温度以上の温度で加熱処理する熱処理工程を行うことで、主に無機繊維からなり、上記無機繊維が一体形成されたハニカム構造体を得ることができる。
【0106】
このような熱処理を施すことにより、上記無機繊維A同士が、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cと同一材料からなる無機物を介して固着され、この固着されている部分の多くが無機繊維Aの交差部又はその近傍であり、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cと同一材料からなる無機物が上記交差部又はその近傍に局在しているハニカム構造体を製造することができる。
上記加熱温度は、無機繊維Aと、無機繊維B及び/又は無機粒子Cとの組み合わせを考慮して適宜選択すればよい。
なお、無機繊維Aの耐熱温度を例示しておくと、例えば、アルミナ>1300℃、シリカ>1000℃、炭化珪素>1600℃、シリカ−アルミナ>1200℃である。
【0107】
具体的な加熱温度は、上記無機繊維や上記無機粒子の耐熱温度や軟化温度によるため、一概には言えないが、無機繊維B及び/又は無機粒子Cとして無機ガラスを用いた場合には、900〜1050℃が望ましいと考えられる。
加熱温度が900℃未満では、無機繊維の表面の一部には固着するものの、無機繊維同士を固着することができない場合があり、1050℃を超えると、固着した無機物にクラックが発生していることがあるからである。
【0108】
なお、熱処理工程の前には、押し出された成形体を所定の長さに切断する切断工程、成形体中の水分を除去する乾燥工程及び成形体中の有機物を除去する脱脂工程を行うことが望ましい。
【0109】
切断工程に用いる切断部材としては、特に限定されるものではなく、例えば、切断部分に刃が形成されているカッタ、レーザ、線状体等が挙げられる。また、ディスクが回転しながら切断するカッタを用いることもできる。
【0110】
また、上記押出し成形工程で成形される成形体が移動する先に、レーザ、カッタ等の切断手段を備えた成形体切断機を設けておき、上記切断手段が成形体押出速度に同期した速度で移動しながら、上記成形体を切断手段により切断する方法が望ましい。
上記機構を有する切断装置を用いると、連続して切断工程を行うことができ、量産性が向上する。
【0111】
乾燥工程に用いる乾燥装置としては、特に限定されるものではないが、例えば、マイクロ波加熱乾燥機、熱風乾燥機、赤外線乾燥機等を挙げることができ、複数の装置を組み合わせてもよい。
【0112】
乾燥は、例えば熱風乾燥機を用いた場合、設定温度100〜150℃、大気雰囲気下、5〜60分間乾燥することにより行うことが望ましい。この場合、熱風が上記成形体の長手方向に平行に当たり、熱風がセルを通過できるように設置されていることが望ましい。熱風が上記成形体のセルを通過することにより、上記成形体の乾燥が効率よく進行する。
【0113】
脱脂処理は、通常、有機物を酸化分解することができるように、大気雰囲気等の酸化雰囲気下で行うことが望ましい。また、脱脂炉は、特に限定されるものではなく、バッチ形式の脱脂炉でもよいが、連続的に処理を行うことができるように、ベルトコンベアを備えた連続炉により行うことが望ましい。脱脂は、設定温度200〜600℃、大気雰囲気下で、1〜5時間乾燥することにより行うことが望ましい。
【0114】
また、第二の本発明のハニカム構造体の製造方法では、上述した方法で作製した柱形状の成形体を酸処理する工程を行ってもよい。
上記酸処理を行うことにより、成形体の耐熱性が向上することとなるからである。
上記酸処理は、例えば、塩酸、硫酸等の溶液中に上記成形体を浸漬することにより行うことができる。
【0115】
上記酸処理条件としては、上記無機物として無機ガラスを用いる場合、処理溶液の濃度は1〜10mol/lであることが望ましく、処理時間は0.5〜24時間が望ましく、処理温度は70〜100℃であることが望ましい。
このような条件で酸処理を施すことにより、シリカ以外の成分を溶出し、その結果、成形体の耐熱性が向上することとなるからである。
【0116】
上記酸処理工程は、熱処理工程の間に行っても良い。具体的には、1次焼成工程を950℃、5時間行い、その後に上記酸処理工程を行い、さらに2次焼成工程として再度1050℃、5時間の熱処理を行うことが望ましい。この処理により成形体の耐熱性を向上させることができる。
【0117】
また、第二の本発明のハニカム構造体の製造方法は、上記無機繊維に酸化物触媒を担持させる工程を含むものであることが望ましい。
【0118】
触媒を担持させる場合には、構成材料であるアルミナファイバ等の無機繊維に、予め酸化物触媒を担持させることができる。成形前に無機繊維に触媒を担持させることにより、触媒をより均一に分散させた状態で付着させることができる。
酸化物触媒の種類としては、上述したハニカム構造体に担持されるものと同様のものが挙げられる。
上記無機繊維に酸化物触媒を担持させる方法としては、例えば、酸化物触媒を含むスラリーに無機繊維を浸漬した後、引き上げて加熱する方法等が挙げられる。
【0119】
また、別の方法としては、上述した工程を経て上記柱形状の成形体を製造した後、この柱形状の成形体を、上記酸化物触媒を含むスラリーに含浸した後引き上げ、加熱する方法を用いることもできる。
【0120】
次に、第三の本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。
第三の本発明のハニカム構造体の製造方法は、無機繊維Aと、上記無機繊維Aが溶融又は昇華しない温度で溶融する無機繊維B及び/又は無機粒子Cと、樹脂とを混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を充填するための筒状容器の長手方向とハニカム構造体のセルを形成するための柱形状中子の長軸方向とが平行になり、かつ、平面視格子状になるように複数の上記中子を上記筒状容器内に立設する中子立設工程と、
上記中子立設工程で上記中子を立設した上記筒状容器中に、上記混合物を充填する混合物充填工程と、
上記混合物充填工程で充填された上記混合物中の樹脂を硬化させ、樹脂硬化体を形成する樹脂硬化工程と、
上記樹脂硬化工程で得られた上記樹脂硬化体内の上記中子を除去することにより、長手方向に多数のセルが形成された柱形状の成形体を形成する中子除去工程と、
上記中子除去工程で得られた上記成形体中に含まれる有機物を加熱脱脂により除去する脱脂工程と、
上記脱脂工程で脱脂した上記成形体を上記無機繊維Aの耐熱温度以下、かつ、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cの軟化温度以上の温度で加熱処理する熱処理工程とを行い第一の本発明のハニカム構造体を製造することを特徴とする。
本明細書中、第三の本発明のハニカム構造体の製造方法を、単に、樹脂硬化(中子立設)による製造方法ともいうこととする。
ここで、中子とは、中空の部分(本発明でのセルに相当)を有する型成形物(本発明でのハニカム構造体に相当)を作製する際に、中空となる部分に入れるその型のことをいう。
【0121】
以下、上記第三の本発明のハニカム構造体の製造方法について図面を用いて説明する。
図5(a)(I)〜(VI)は、第三の本発明のハニカム構造体の製造工程における、中子立設工程から中子除去工程までの工程を模式的に表した図であり、(b)は、筒状容器に中子を立設した様子を表す上面図であり、(c)は、段差を有する中子の形状の一例を表す斜視図である。
【0122】
(1)まず、図5(a)(I)の工程を行う前に、無機繊維Aと、上記無機繊維Aが溶融又は昇華しない温度で溶融する無機繊維B及び/又は無機粒子Cと、熱硬化性樹脂とを混合する混合工程を行う。
本発明では、無機繊維A、無機繊維B及び無機粒子Cは第二の本発明のハニカム構造体の製造方法に用いるものと同様であるため詳細は省略するが、上記無機物質に樹脂を加えることが望ましい。樹脂を硬化させることで樹脂硬化体を形成することができ、後の脱脂工程で樹脂を除去し、さらに熱処理を行うことで無機繊維からなるハニカム構造体を製造することができる。
上記樹脂としては、特に限定されるものではないが、熱硬化性樹脂を用いることが望ましい。熱硬化性樹脂の種類も特に限定されるものではないが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。この中でもエポキシ樹脂がその硬化収縮率の低さから特に望ましい。
【0123】
また、上記混合物を調製する際には、必要に応じて、溶剤や分散剤を添加することにより、上記無機繊維Aと、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cとを均一に混合してもよい。
【0124】
(2)次に、中子立設工程を行う。
筒状容器20と、複数の柱形状中子21を準備し(図5(a)(I)参照)、中子21を筒状容器20内に、筒状容器20の長手方向と中子21の長軸方向が平行になるように立設する(図5(a)(II)参照)。
この際、図5(b)に示すように、中子21を平面視格子状に配置することが望ましい。
なお、中子としては、鋳物の鋳造に用いられる中子砂が好適に用いられる他、樹脂材料、低融点金属、高圧プレス成型した水溶性の塩類などの使用も可能である。
【0125】
(3)次に、混合物充填工程を行う。
上記混合工程で得られた混合物22を、筒状容器20内に流し込み、筒状容器内に混合物を充填する (図5(a)(III)参照)。なお、後の樹脂硬化工程において硬化剤を用いて樹脂を硬化させる場合は、混合物充填工程の直前に硬化剤を混合物に加え、その後に混合物充填工程を行う。
硬化剤の種類は樹脂の種類に合わせて決定する。
【0126】
(4)次に、樹脂硬化工程を行う。
樹脂の硬化方法は、特に限定されるものではないが、混合物充填工程の前に硬化剤を加えていた場合は、その硬化剤の働きにより樹脂が硬化し、樹脂硬化体23が形成される(図5(a)(IV)参照)。
また、硬化剤を加えておらず、熱硬化性樹脂を用いた場合は、熱硬化性樹脂の硬化温度以上に加熱することで熱硬化性樹脂を硬化させることができ、樹脂硬化体23が形成される。
加熱温度は用いた熱硬化性樹脂の種類によって決定するべきであるが、中子の耐熱温度以下である必要がある。熱硬化性樹脂の硬化前に中子が熱変形してしまうと所望の形状を有するセルを形成できないためである。
【0127】
(5)次に、中子除去工程を行う。
中子を除去することで中子が占めていた部位にセルが形成され、これをハニカム構造体のセルとすることができる(図5(a)(V)参照)。
中子の除去方法としては、特に限定されるものでないが、一例として、洗溶出、焼失、熱融出などの方法を挙げることができ、立設した中子の種類に応じた除去方法を用いることができる。
例えば中子砂や高圧プレス成型した水溶性の塩類を中子に用いた場合には、中子を物理的に破砕したり、温水を勢い良く中子部分に当てたりすることによって中子を流出、溶出させることができる。
また、樹脂材料を中子に用いた場合には、高温で焼成することで中子を焼失させることができる。この焼成工程は、後に行う焼成工程と兼ねて行っても良い。
また、低融点金属を中子に用いた場合には、その融点以上の温度に加熱することで中子を熱融出させることができる。
【0128】
また、本発明において形成されるセルの形状は、中子の形状を変更することで所望の形状とすることができる。
セルの垂直断面形状については、特に四角形に限定されず、例えば、三角形、六角形、八角形、十二角形、円形、楕円形、星型等の任意の形状を挙げることができる。
【0129】
なお、図5(c)に示すような段差を有する中子を用いると、ハニカム構造体の壁部の表面に凹凸を有するセルを形成することができる。そして、壁部の表面に凹凸を形成することにより、濾過面積が増加し、パティキュレートを捕集した際の圧力損失を低下させることができると考えられる。また、凹凸により排気ガスの流れが乱流となり、フィルタ内の温度差を小さくし、熱応力によるクラック等の損傷を防止することができると考えられる。
【0130】
中子除去工程に前後して、筒状容器を取り外すことで、柱形状の成形体24が形成される(図5(a)(VI)参照)。
また、筒状容器の形状を変更することで様々な外形のハニカム構造体を製造することができる。上記ハニカム構造体の垂直断面形状は、円形に限られるものではなく、矩形等、種々の形状とすることができるが、曲線のみ又は曲線と直線とで囲まれた形状であることが望ましく、その具体例としては、円形以外には、例えば、楕円形、長円形(レーストラック形)、楕円形又は長円形等の単純閉曲線の一部が凹部を有する形状(concave形状)等を挙げることができる。
【0131】
次に、成形体中の樹脂を除去する脱脂工程を行う。
その具体的な方法は、上述した脱脂工程と同様であるので、その詳細は省略するが、これにより脱脂された成形体を得ることができる。
【0132】
その後は、第二の本発明のハニカム構造体の製造方法と同様にして、ハニカム構造体を製造することができる。そのため、ここではその詳細な説明については省略する。
【0133】
次に、第四の本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。
第四の本発明のハニカム構造体の製造方法は、無機繊維Aと、上記無機繊維Aが溶融又は昇華しない温度で溶融する無機繊維B及び/又は無機粒子Cと、樹脂とを混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を充填するための型枠体であって、ハニカム構造体のセルを形成するための柱体が、主面に対して垂直、かつ、平面視格子状に立設された底板体と、上記底板体と上記柱体の周囲を包囲するように設けられた外枠体とからなる型枠体内に、上記混合工程で得られた混合物を充填する混合物充填工程と、
上記混合物充填工程で充填された上記混合物中の樹脂を硬化させ、樹脂硬化体を形成する樹脂硬化工程と、
上記樹脂硬化工程で得られた上記樹脂硬化体から上記柱体を抜いて上記型枠体全体を取り外すことにより、長手方向に多数のセルが形成された柱形状の成形体を形成する型枠体脱離工程と、
上記型枠体脱離工程で得られた上記成形体中に含まれる有機物を加熱脱脂により除去する脱脂工程と、
上記脱脂工程で脱脂した上記成形体を上記無機繊維Aの耐熱温度以下、かつ、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cの軟化温度以上の温度で加熱処理する熱処理工程とを行い第一の本発明のハニカム構造体を製造することを特徴とする。
本明細書中、第四の本発明のハニカム構造体の製造方法を、単に、樹脂硬化(金型成形)による製造方法ともいうこととする。
【0134】
以下、上記第四の本発明のハニカム構造体の製造方法について一部図面を用いて説明するが、先述した第三の本発明と同様の工程を多く含むため、異なる工程を中心にして説明する。
【0135】
(1)はじめに、混合工程を行う。
本混合工程は、第三の本発明と同様に行うことができるので、詳しい説明は省略する。
【0136】
図6(a)(I)〜(V)は、第四の本発明のハニカム構造体の製造工程における、混合物充填工程から型枠体脱離工程までの工程を模式的に表した図であり、(b)は、型枠体内に柱体が立設された様子を表す上面図である。
【0137】
(2)次に、混合物充填工程を行う。
混合物を充填するための型枠体として、ハニカム構造体のセルを形成するための柱体31が、底板体の主面に対して垂直になり、かつ、平面視格子状(図6(a)(I)及び図6(b)参照)になるように立設された底板体32と、底板体32と柱体31の周囲を包囲するように設けられた外枠体33(図6(a)(I)参照)とから、型枠体30を形成する(図6(a)(II)参照)。型枠体は一体となっているものでも良いし、分離、結合が可能なものでも構わない。
型枠体を構成する各部位の材料は、金属であることが望ましい。耐熱性が高く、樹脂の硬化を加熱により行う場合に適しており、かつ、樹脂硬化体との分離が容易であるためである。
そして、型枠体30内に混合物22を充填する(図6(a)(III)参照)。本工程は、充填する容器が異なる他は、第三の本発明と同様に行うことができるので、詳しい説明は省略する。
【0138】
(3)次に、樹脂硬化工程を行う。
本樹脂硬化工程は、第三の本発明と同様に行うことができるので、詳しい説明は省略する(図6(a)(IV)参照)。
【0139】
(4)次に、型枠体脱離工程を行う。
柱体31を脱離させることで、それまで柱体が占めていた部位にセルが形成され、これをハニカム構造体のセルとすることができる(図6(a)(V)参照)。
この際、樹脂硬化体23から柱体31を容易に抜くことができるように、予め柱体31に2°ほどの抜きテーパを形成しておくことが望ましい。
また、外枠体33を脱離させることで柱形状の成形体24が形成される。
なお、型枠体は繰り返し使用することが可能である。
【0140】
また、第三の本発明と同様に、柱体、外枠体の形状を変更することにより、様々なセル形状、外形を有するハニカム構造体を製造することができる。
但し、第三の本発明とは異なり、ハニカム構造体の壁部の表面に凹凸を有するセルを形成することはできない。
【0141】
その後は、第三の本発明のハニカム構造体の製造方法と同様にして、ハニカム構造体を製造することができる。そのため、ここではその詳細な説明については省略する。
【0142】
次に、第五の本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。
第五の本発明のハニカム構造体の製造方法は、槽本体と、上記槽本体の底部に形成されたメッシュと、上記メッシュに対して垂直、かつ、平面視格子状にメッシュに立設され、ハニカム構造体のセルを形成するための柱状マスクと、上記メッシュを底面とし、かつ、上記柱状マスクで囲まれた空間であり、混合物を投入するための液充填部とを備えた槽を用いて行うハニカム構造体の製造方法であって、
無機繊維Aと、上記無機繊維Aが溶融又は昇華しない温度で溶融する無機繊維B及び/又は無機粒子Cとを混合する混合工程と、
上記混合工程で得られた混合物を、上記液充填部に投入する混合物充填工程と、
上記混合物内の水分を上記メッシュを通じて排出し、脱水体を形成する脱水工程と、
上記脱水体から上記柱状マスクを取り外すことにより、長手方向に多数のセルが形成された柱形状の成形体を形成するマスク脱離工程と、
上記マスク脱離工程で形成した上記成形体を上記無機繊維Aの耐熱温度以下で、かつ、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cの軟化温度以上の温度で加熱処理する熱処理工程とを行い第一の本発明のハニカム構造体を製造することを特徴とする。
本明細書中、第五の本発明のハニカム構造体の製造方法を、単に、立体抄造による製造方法ともいうこととする。
【0143】
以下、上記第五の本発明のハニカム構造体の製造方法について一部図面を用いて説明する。
まず、第五の本発明に用いる槽について図面を用いて説明する。なお、槽は以下の形式のものに限定されるものではないが、一例として説明する。
【0144】
図7(a)は、第五の本発明のハニカム構造体の製造工程において用いる槽を模式的に表した図であり、(b)は、プレス工程に用いるプレス板を模式的に表す上面図である。
【0145】
この槽40は、槽本体47と、上記槽本体の底部に形成されたメッシュ42と、メッシュ42に対して垂直になり、かつ、平面視格子状になるようにメッシュ42に立設された、ハニカム構造体のセルを形成するための柱状マスク41と、メッシュ42を底面とし、かつ、柱状マスク41で囲まれた空間であり、混合物を投入するための液充填部43とを備えたものである。
【0146】
また、槽40は柱状マスク41に対応する部分に格子状に貫通孔44aが形成された板からなるプレス板44と、排水をするためのコック45及びポンプ46と、プレス板44を槽本体に押し込むためのプレス駆動部と、槽本体に振動を与えるための図示しない揺動部とを備えていてもよい。
【0147】
このように構成された槽40を用いてハニカム構造体を製造する際には、上述の混合工程、混合物充填工程、脱水工程、マスク脱離工程及び熱処理工程を行う。
また、必要に応じて攪拌工程及び/又はプレス工程を行っても良い。
以下、各工程について説明する。
【0148】
(1)はじめに、無機繊維Aと、上記無機繊維Aが溶融又は昇華しない温度で溶融する無機繊維B及び/又は無機粒子Cと、水とを混合する混合工程を行う。
本発明では、無機繊維A、無機繊維B及び無機粒子Cは第二の本発明のハニカム構造体の製造方法に用いるものと同様であるため詳細は省略するが、上記無機物質に水を大量に加えて、抄造可能な程度まで混合物の粘度を低下させることが望ましい。
【0149】
また、上記混合物を調製する際には、必要に応じて、分散剤を添加することにより、上記無機繊維Aと、上記無機繊維B及び/又は上記無機粒子Cとを均一に混合してもよい。また、有機バインダを添加してもよい。有機バインダを添加することにより、無機繊維Aと、無機繊維B及び/又は無機粒子Cとが確実に絡みあって、焼成前に無機繊維B及び/又は無機粒子Cが無機繊維A同士から抜けにくく、無機繊維A同士をより確実に固着することができるからである。
また、必要に応じて造孔剤等を添加してもよい。
【0150】
(2)次に、上記混合工程で得られた混合物を、液充填部43に投入する混合物充填工程を行う。なお、上記混合工程を槽40の内部で行ってもよい。
【0151】
なお、混合物充填工程後に、液充填部43に充填された混合物を攪拌する、攪拌工程を行っても良い。攪拌は、槽本体に振動を与えるための図示しない揺動部を作動させて行うことができる。具体的な揺動部としては、例えば、超音波振動子を備えた発振器や、バイブレーターなどが挙げられ、槽本体47の側面に設置することができる。また、槽本体47の内部に設置してもよい。この攪拌工程によって、混合物を均一に攪拌する。
【0152】
(3)次に、上記混合物中の水分を吸引して上記混合物内の水をメッシュ42を通じて排出する脱水工程を行う。
この際には、メッシュ42の下側に設けられたコック45を開き、ポンプ46を作動させる。これにより、液充填部43に充填されている上記混合物が吸引濾過されて、上記混合物に含まれる水分がメッシュ42を通じて下に落下し、コック45を通じて排出される。その結果、上記混合物に含まれている水が抜けた状態になり、液充填部の底部から所定の高さの脱水体が形成される。
【0153】
また、上記脱水工程の後に、上記脱水工程で脱水された上記脱水体を上面より上記プレス板にて加圧圧縮するプレス工程を行っても良い。加圧圧縮することで所定の長さ、適当な密度、気孔率を有する圧縮体を形成することができる。
【0154】
プレス工程に用いる装置及び方法は以下に限定されるものでないが、図7(a)に示す槽40では、プレス駆動部として、モータ49とモータ49に結合したボールネジ48が4本設けられており、4本のボールネジ48は、プレス板44に形成された4個のネジ孔44bに螺嵌されており、4個のボールネジ48が同期しながら回転することにより、プレス板44が上下することができるようになっている。
また、プレス板44は、図7(b)に示すような、柱状マスク41に対応する部分に格子状に貫通孔が形成された板である。
【0155】
従って、4個のモータ49を同期させながら駆動させると、プレス板44は下方に降下し、上記脱水体は槽本体下部47aの部分で圧縮され、圧縮体となる。槽本体下部47aは、図7(a)に示すように、ハニカム構造体の形状となっており、プレス板44がモータ49が配設されている部分まで下がることにより、円柱形状の圧縮体が形成される。
なお、槽本体下部47aは、円筒形状をなしており、脱水体がプレス板44によって圧縮されて、槽本体下部47aに充填されることによりハニカム構造体の形状となる。従って、槽本体下部47aの形状を変化させることによりハニカム構造体の形状を変化させることができる。
【0156】
(4)次に、上記脱水体から上記柱状マスクを取り外すことにより、長手方向に多数のセルが形成された柱形状の成形体を形成するマスク脱離工程を行う。これにより、所定形状のセル、所定の長さ及び密度を有する柱形状の成形体を得ることができる。
【0157】
また、本発明において形成されるセルの形状は、柱状マスクの形状を変更することで所望の形状とすることができる。
セルの垂直断面形状については、特に四角形に限定されず、例えば、三角形、六角形、八角形、十二角形、円形、楕円形、星型等の任意の形状を挙げることができる。
【0158】
また、槽本体47の形状を変更することにより様々な外形のハニカム構造体を製造することができる。上記ハニカム構造体のセルに垂直な断面形状は、円形に限られるものではなく、矩形等、種々の形状とすることができるが、曲線のみ又は曲線と直線とで囲まれた形状であることが望ましく、その具体例としては、円形以外には、例えば、楕円形、長円形(レーストラック形)、楕円形又は長円形等の単純閉曲線の一部が凹部を有する形状(concave形状)等を挙げることができる。槽本体47の平面視した形状を上記形状とすることにより、セルに垂直な断面形状が上記形状のハニカム構造体を製造することができる。
【0159】
その後は、第二〜第四の本発明のハニカム構造体の製造方法と同様にして、ハニカム構造体を製造することができる。そのため、ここではその詳細な説明については省略する。
【0160】
続いて第七の本発明のハニカムフィルタの製造方法について説明する。
第七の本発明のハニカムフィルタの製造方法は、第二〜五のいずれかの本発明のハニカム構造体の製造方法で製造したハニカム構造体の両端に、主に金属からなる端部用積層部材を積層する工程を含むことを特徴とする。
また、第七の本発明のハニカムフィルタの製造方法は、上記ハニカム構造体と主に金属からなる端部用積層部材を金属容器に設置する工程を含むことが望ましい。
【0161】
第七の本発明のハニカムフィルタの製造方法では、第二〜第五の本発明のいずれかの製造方法で製造されたハニカム構造体と、端部用積層部材とを積層することにより、セルのいずれか一端が封止されており、フィルタとして機能するハニカムフィルタを作製することができる。
具体的には、図3(b)に示すように、片側に押え用金具を有する円筒状のケーシング123(金属容器)を用い、まず、ケーシング123内に、端部用積層部材10bを積層した後、第二〜第五の本発明のいずれかの製造方法で製造されたハニカム構造体10aを設置する。そして、最後に、端部用積層部材を10bを積層し、その後、もう片方にも、押え用金具を設置、固定することにより、キャニングまで完了したハニカムフィルタを作製することができる。ケーシングの材質としては、例えば、ステンレス(SUS)、アルミニウム、鉄等の金属類が挙げられる。形状は特に限定されないが、収納されるハニカム構造体の外形に近似した形状であることが望ましい。
【0162】
端部用積層部材としては、所定の貫通孔を有する金属からなる端部用積層部材を積層することが望ましい。これにより、上記ハニカム構造体の両端に、主に金属からなる端部用積層部材が積層されてなるハニカムフィルタを作製することができる。
【0163】
また、端部用積層部材としては、無機繊維からなる端部用積層部材を積層してもよく、無機繊維からなる端部用積層部材は、第二の本発明のハニカム構造体の製造方法における押出し成形工程においてダイスに形成する孔の形状を変更して、市松模様に形成されたセルを有するハニカム構造体を製造し、上記切断工程において上記ハニカム構造体を薄く切断することによって製造することができる。
【0164】
なお、金属からなる端部用積層部材の製造方法は以下の通りである。
まず、厚さが0.1〜20mmの主に金属からなる多孔質金属板をレーザ加工又は打ち抜き加工して、貫通孔が市松模様に形成された端部用積層部材を製造する。
【0165】
次に、必要に応じて、端部用積層部材に酸化物触媒を担持させる。
酸化物触媒を担持する方法としては、例えば、CZ(nCeO・mZrO)10g、エタノール1l(リットル)、クエン酸5g及びpH調整剤を適量含む溶液に、端部用積層部材を5分間浸漬し、その後、500℃で焼成処理を施す方法等が挙げられる。
なお、この場合、上記した浸漬、焼成工程を繰り返すことにより、担持させる触媒量を調整することができる。
なお、上記触媒は、一部の端部用積層部材にのみ担持させても良いし、全ての端部用積層部材に担持させても良い。
【0166】
第一の本発明のハニカム構造体及び第六の本発明のハニカムフィルタの用途は特に限定されないが、車両の排気ガス浄化装置に用いることが望ましい。
図8は、第六の本発明のハニカムフィルタが設置された車両の排気ガス浄化装置の一例を模式的に示した断面図である。
【0167】
図8に示したように、排気ガス浄化装置200では、第六の本発明のハニカムフィルタ1の外方をケーシング123が覆っており、ケーシング123の排気ガスが導入される側の端部には、エンジン等の内燃機関に連結された導入管124が接続されており、ケーシング123の他端部には、外部に連結された排出管125が接続されている。なお、図8中、矢印は排気ガスの流れを示している。
【0168】
このような構成からなる排気ガス浄化装置200では、エンジン等の内燃機関から排出された排気ガスは、導入管124を通ってケーシング123内に導入され、ハニカムフィルタ1のセルから壁部(セル壁)を通過してこの壁部(セル壁)でパティキュレートが捕集されて浄化された後、排出管125を通って外部へ排出されることとなる。
【0169】
そして、ハニカムフィルタ1の壁部(セル壁)に大量のパティキュレートが堆積し、圧力損失が高くなると、ポストインジェクション等の所定の手段によってハニカムフィルタ1の再生処理を行い、ハニカムフィルタ1を再生させることができる。
【実施例】
【0170】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0171】
(実施例1)
ハニカム構造体の製造方法として、押出し成形による製造方法を用いて、ハニカム構造体を製造した。
(1)混合工程
まず、アルミナ72%とシリカ28%とからなるアルミナファイバ(平均繊維長:0.3mm、平均繊維径:5μm)12.3重量部、ガラスファイバ(平均繊維径:9μm、平均繊維長:3mm)6.2重量部、有機バインダ(メチルセルロース)11.7重量部、造孔剤(アクリル)7.1重量部、可塑剤(日本油脂社製 ユニルーブ)を8.1重量部、潤滑剤(グリセリン)を3.8重量部、及び、水50.9重量部を混合し、充分撹拌することにより混合物を調整した。
【0172】
(2)押出し成形工程
(1)で得られた混合物をプランジャー式押出成形機の混合物タンクよりシリンダ内に投入し、ピストンをダイス側に押し込んでダイスより混合物を押し出し、長手方向に4.5mm×4.5mmのセルを2mm間隔で有する、円柱形状の成形体(円の直径:160mm)を作製した。
【0173】
(3)切断工程
(2)で得られた円柱形状の成形体を、切断ディスクを切断部材として備えた切断装置を用いて長さ60mmに切断した。これにより、直径160mm×長手方向の長さ60mmの大きさの成形体を得た。
【0174】
(4)乾燥工程
(3)で得られた円柱形状の成形体を、マイクロ波乾燥機及び熱風乾燥機により、大気雰囲気下、200℃で3時間乾燥処理し、成形体中に含まれる水分を除去した。
【0175】
(5)脱脂工程
(4)で得られた円柱形状の成形体を、電気炉中で、大気雰囲気下、400℃で3時間加熱処理し、成形体中に含まれる有機物を除去した。
【0176】
(6)熱処理及び酸処理工程
(5)で得られた円柱形状の成形体に対し、焼成炉中で、大気雰囲気下、950℃で5時間の条件で加熱処理を行った。
その後、得られた成形体を90℃、4mol/lのHCl溶液に1時間浸漬することにより酸処理を施し、さらに、1050℃で5時間の条件で再度熱処理を行ってハニカム構造体を製造した。
【0177】
(7)触媒担持工程
(6)で得られたハニカム構造体を、CZ(nCeO・mZrO)10g、水40ml及びpH調整剤を適量含む溶液に5分間浸漬し、その後、500℃で焼成処理を施すことで、酸化物触媒としてCeOとZrOを担持させた。
【0178】
(8)端部用積層部材の作製工程
Ni−Cr合金製金属板を、直径160mm×厚さ1mmの円盤状に加工した後、レーザ加工することで、4.5mm×4.5mmの孔が市松模様に形成された端部用積層部材を製造した。この工程で、端部用積層部材は2枚作製し、それぞれの端部用積層部材には、下記の積層工程で端部用積層部材を積層した際に、ハニカム構造体の入口側端面と出口側端面とで封止箇所が異なる形態となるように、互いに異なる位置に孔を形成した。
【0179】
(9)キャニング工程
まず、別途、片側に押え用金具が取り付けられた円筒状のケーシング(金属容器)を、金具が取り付けられた側が下になるように立てた。そして、上記(8)の工程で得た端部用積層部材を1枚積層した後、この端部用積層部材の孔とハニカム構造体のセルの位置が合うように、上記(7)の工程で得たハニカム構造体を設置し、最後に端部用積層部材1枚を積層し、その後、もう片方にも、押え用金具を設置、固定することにより、その長さが60mmのハニカムフィルタを製造した。
なお、この工程ではハニカムフィルタの入口側端面と出口側端面とで封止箇所が異なるように(重なりあったセルのいずれか一方のみが封止されるように)、端部用積層部材を積層した。
なお、本キャニング工程では、ケーシングにハニカム構造体を1つ設置しており、その両端に端部用積層部材を積層(配置)している。このハニカム構造体を積層部材として捉えると、本キャニング工程終了後のハニカムフィルタの状態は、端部用積層部材を含めて合計3枚の積層部材が積層されてケーシングに設置された状態に相当し、一体形成したハニカム構造体を積層部材1枚と表すこととする。
【0180】
(実施例2)
ハニカム構造体の製造方法として、樹脂硬化(中子立設)による製造方法を用いて、ハニカム構造体を製造した。
(1)混合工程
まず、アルミナ72%とシリカ28%とからなるアルミナファイバ(平均繊維長:0.3mm、平均繊維径:5μm)14.0重量部、ガラスファイバ(平均繊維径:9μm、平均繊維長:3mm)7.1重量部、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)78.9重量部とを混合し、充分撹拌することにより混合物を調整した。
【0181】
(2)中子立設工程及び混合物充填工程
(1)で得られた混合物を、中子砂からなる柱形状(4.5mm×4.5mm×60mm)の中子が2mm間隔で平面視格子状に立設された円筒状容器(内径:直径160mm×長手方向の長さ60mm)内に流し込み、混合物を充填した。
【0182】
(3)樹脂硬化工程
(2)で得られた、混合物を充填した円筒状容器を120℃、30分加熱処理して、エポキシ樹脂を硬化させ、樹脂硬化体を作製した。
【0183】
(4)中子除去工程
円筒状容器を樹脂硬化体から外し、中子部分を細い棒状体で突いて中子を崩して、中子を樹脂硬化体より除去した。これにより直径160mm×長手方向の長さ60mmの大きさの成形体を得た。
以下、上記乾燥工程以降の工程を実施例1と同様に行って、ハニカム構造体及びハニカムフィルタを製造した。
【0184】
(実施例3)
混合物に予めエポキシ樹脂用硬化剤を10重量部加えておき、その後速やかに混合物充填工程を行って、硬化剤の作用によってエポキシ樹脂を硬化させ、樹脂硬化のための加熱処理を行わなかった他は、実施例2と同様にしてハニカム構造体及びハニカムフィルタを製造した。
【0185】
(実施例4)
ポリカーボネート(PC)製の中子を用い、硬化体形成後の脱脂工程での加熱によりエポキシ樹脂の脱脂と中子の除去を同時に行った他は、実施例2と同様にしてハニカム構造体及びハニカムフィルタを製造した。
【0186】
(実施例5)
低融点金属であるスズ製の中子を用い、硬化体形成後にスズの融点以上の240℃に加熱することで中子を熱融出させて除去した他は、実施例2と同様にしてハニカム構造体及びハニカムフィルタを製造した。
【0187】
(実施例6)
水溶性塩である塩化ナトリウム(NaCl)を溶融成型した中子を用い、硬化体形成後に60℃の温水中で塩化ナトリウムを溶解させることで中子を溶出させて除去した他は、実施例2と同様にしてハニカム構造体及びハニカムフィルタを製造した。
【0188】
(実施例7)
図5(c)に示すような段差を有する中子(4.5mm×4.5mm部と3.5mm×3.5mm部を有し、全長60mm)を用いた他は、実施例2と同様にしてハニカム構造体及びハニカムフィルタを製造した。
【0189】
(実施例8)
ハニカム構造体の製造方法として、樹脂硬化(金型成形)による製造方法を用いて、ハニカム構造体を製造した。
(1)混合工程
実施例2と同様にして、混合物を調整した。
【0190】
(2)混合物充填工程
Ni−Crステンレス製で、柱形状(4.5mm×4.5mm×60mm)の柱体が2mm間隔で平面視格子状に立設された円形(直径160mm)の底板体とその周囲に設けられた円筒状(内径:直径160mm×長手方向の長さ60mm)容器からなる型枠体内に(1)で得られた混合物を流し込み、混合物を充填した。
【0191】
(3)樹脂硬化工程
実施例2と同様にして、樹脂硬化体を作製した。
【0192】
(4)型枠体脱離工程
樹脂硬化体から柱体を引き抜くとともに外枠体も外して型枠体全体を樹脂硬化体から脱離させた。これにより直径160mm×長手方向の長さ60mmの大きさの成形体を得た。
以下、上記乾燥工程以降の工程を実施例2と同様に行って、ハニカム構造体及びハニカムフィルタを製造した。
【0193】
(実施例9)
ハニカム構造体の製造方法として、立体抄造による製造方法を用いて、ハニカム構造体を製造した。
(1)混合工程
まず、アルミナ72%とシリカ28%とからなるアルミナファイバ(平均繊維長:0.3mm、平均繊維径:5μm)1.0重量部、ガラスファイバ(平均繊維径:9μm、平均繊維長:3mm)0.5重量部、有機バインダ(ポリビニルアルコール)0.08重量部、水50重量部とを混合し、充分撹拌することにより混合物を調整した。
【0194】
(2)混合物充填工程及び攪拌工程
(1)で得られた混合物を、容積が50リットル、液充填部の高さが200mmである槽内の液充填部に投入し、槽に設けられたバイブレーターを作動させて槽内の混合物が均一になるように攪拌した。
【0195】
(3)脱水工程及び圧縮工程(立体抄造工程)
槽下部のコックを開き、排水用ポンプを作動させて、槽内の混合物中の水分をメッシュを通じて排出し、混合物を脱水し、脱水体を形成した。
続いて、プレス板の貫通孔と柱状マスクの位置を合わせてプレス板を載置し、ボールネジに結合したモータを稼働させて、プレス板を下部方向に押し込むことで、上記脱水体の長さが60mmになるまで加圧圧縮し、圧縮体を形成した。
【0196】
(4)マスク脱離工程
上記圧縮体から柱状マスクを取り外して、直径160mm×長手方向の長さ60mmの大きさの成形体を得た。
以下、上記乾燥工程以降の工程を実施例1と同様に行って、ハニカム構造体及びハニカムフィルタを製造した。
【0197】
(比較例1)
ハニカム構造体の製造方法として、シート状の積層部材を多数枚積層する製造方法を用いて、ハニカム構造体を製造した。
(1)抄造用スラリーの調製
実施例1と同様にして、混合物を調整し、充分撹拌することにより抄造用スラリーを調製した。
【0198】
(2)抄造工程
(1)で得られたスラリーを、直径160mmのメッシュにより抄き、得られたものを150℃で乾燥し、その後、打ち抜き加工を施すことにより、4.5mm×4.5mmのセルが互いに2mmの間隔で全面に形成された1mmの厚さのシート状の無機繊維集合体を得た。
【0199】
(3)触媒担持工程
(2)で得られたシート状の無機繊維集合体を、CZ(nCeO・mZrO)10g、水40ml及びpH調整剤を適量含む溶液に5分間浸漬し、その後、500℃で焼成処理を施すことで、酸化物触媒としてCeOとZrOを担持させた。
【0200】
(4)積層工程
そして、実施例1と同様、端部用積層部材を1枚積層した後、この端部用積層部材の孔とシート状無機繊維集合体の貫通孔の位置が合うようにしてシート状無機繊維集合体を68枚積層し、最後に金属積層部材1枚を積層し、さらにプレスを行い、その後、もう片方にも、押え用金具を設置、固定することにより、その長さが60mmの積層体からなるハニカムフィルタを得た。
上記金属積層部材は、ハニカムフィルタの入口側端面と出口側端面とで封止箇所が異なるように(重なりあったセルのいずれか一方のみが封止されるように)積層した。
【0201】
【表1】

【0202】
(評価)
図9に示したような圧力損失測定装置170を用いて圧力損失を測定した。図9は、圧力損失測定装置の説明図である。
この圧力損失測定装置170は、送風機176の排気ガス管177に、ハニカムフィルタ1を金属ケーシング171内に固定して配置し、ハニカムフィルタ1の前後の圧力を検出可能に圧力計178を取り付けたものである。
そして、送風機176を排気ガスの流通量が750m/hになるように運転し、運転開始から5分後の差圧(圧力損失)を測定した。
結果は、表1に示した通りである。
【0203】
表1に示したように、実施例1〜9に示したように積層枚数が1枚であるハニカム構造体では初期圧力損失が13.5〜14.6と小さい。
特に、貫通孔内に凹凸を形成した実施例10では圧力損失が小さくなっている。
【0204】
一方、比較例1のように、積層枚数が68枚ともなると、多くの積層界面が存在することから、その圧力損失が高くなっている。
以上のことから、シート状の無機繊維集合体が多数枚積層されたハニカム構造体と比較して、積層枚数が1枚のハニカム構造体(すなわち、無機繊維が一体形成されてなるハニカム構造体)を用いることにより、排気ガス処理の際の圧力損失を低減させることができることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0205】
1、100 ハニカムフィルタ
10a ハニカム構造体
10b 端部用積層部材
11、111 セル
13、113 壁部
20 筒状容器
21 中子
22 混合物
23 樹脂硬化体
24 柱形状の成形体
30 型枠体
31 柱体
32 底板体
33 外枠体
40 槽
41 柱状マスク
42 メッシュ
43 液充填部
47 槽本体
51 無機繊維
52 無機物
74 ダイス
123 ケーシング(金属容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維Aと、前記無機繊維Aが溶融又は昇華しない温度で溶融する無機繊維B及び/又は無機粒子Cとを混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物を、所定の孔が形成されたダイスを介して押し出すことにより、長手方向に多数のセルが形成された柱形状の成形体を形成する、押出し成形工程と、
前記成形体を前記無機繊維Aの耐熱温度以下、かつ、前記無機繊維B及び/又は前記無機粒子Cの軟化温度以上の温度で加熱処理する熱処理工程と、
前記柱形状の成形体を酸処理する酸処理工程とを含み、
前記無機繊維B及び/又は前記無機粒子Cは、シリカを含有していることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項2】
無機繊維Aと、前記無機繊維Aが溶融又は昇華しない温度で溶融する無機繊維B及び/又は無機粒子Cと、樹脂とを混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物を充填するための筒状容器の長手方向とハニカム構造体のセルを形成するための柱形状中子の長軸方向とが平行になり、かつ、平面視格子状になるように複数の前記中子を前記筒状容器内に立設する中子立設工程と、
前記中子立設工程で前記中子を立設した前記筒状容器中に、前記混合物を充填する混合物充填工程と、
前記混合物充填工程で充填された前記混合物中の樹脂を硬化させ、樹脂硬化体を形成する樹脂硬化工程と、
前記樹脂硬化工程で得られた前記樹脂硬化体内の前記中子を除去することにより、長手方向に多数のセルが形成された柱形状の成形体を形成する中子除去工程と、
前記中子除去工程で得られた前記成形体中に含まれる有機物を加熱脱脂により除去する脱脂工程と、
前記脱脂工程で脱脂した前記成形体を前記無機繊維Aの耐熱温度以下、かつ、前記無機繊維B及び/又は前記無機粒子Cの軟化温度以上の温度で加熱処理する熱処理工程と、
前記柱形状の成形体を酸処理する酸処理工程とを含み、
前記無機繊維B及び/又は前記無機粒子Cは、シリカを含有していることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項3】
無機繊維Aと、前記無機繊維Aが溶融又は昇華しない温度で溶融する無機繊維B及び/又は無機粒子Cと、樹脂とを混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物を充填するための型枠体であって、ハニカム構造体のセルを形成するための柱体が、主面に対して垂直、かつ、平面視格子状に立設された底板体と、前記底板体と前記柱体の周囲を包囲するように設けられた外枠体とからなる型枠体内に、前記混合工程で得られた混合物を充填する混合物充填工程と、
前記混合物充填工程で充填された前記混合物中の樹脂を硬化させ、樹脂硬化体を形成する樹脂硬化工程と、
前記樹脂硬化工程で得られた前記樹脂硬化体から前記柱体を抜いて前記型枠体全体を取り外すことにより、長手方向に多数のセルが形成された柱形状の成形体を形成する型枠体脱離工程と、
前記型枠体脱離工程で得られた前記成形体中に含まれる有機物を加熱脱脂により除去する脱脂工程と、
前記脱脂工程で脱脂した前記成形体を前記無機繊維Aの耐熱温度以下、かつ、前記無機繊維B及び/又は前記無機粒子Cの軟化温度以上の温度で加熱処理する熱処理工程と、
前記柱形状の成形体を酸処理する酸処理工程とを含み、
前記無機繊維B及び/又は前記無機粒子Cは、シリカを含有していることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
槽本体と、前記槽本体の底部に形成されたメッシュと、前記メッシュに対して垂直、かつ、平面視格子状にメッシュに立設され、ハニカム構造体のセルを形成するための柱状マスクと、前記メッシュを底面とし、かつ、前記柱状マスクで囲まれた空間であり、混合物を投入するための液充填部とを備えた槽を用いて行うハニカム構造体の製造方法であって、
無機繊維Aと、前記無機繊維Aが溶融又は昇華しない温度で溶融する無機繊維B及び/又は無機粒子Cとを混合する混合工程と、
前記混合工程で得られた混合物を、前記液充填部に投入する混合物充填工程と、
前記混合物内の水分を前記メッシュを通じて排出し、脱水体を形成する脱水工程と、
前記脱水体から前記柱状マスクを取り外すことにより、長手方向に多数のセルが形成された柱形状の成形体を形成するマスク脱離工程と、
前記マスク脱離工程で形成した前記成形体を前記無機繊維Aの耐熱温度以下で、かつ、前記無機繊維B及び/又は前記無機粒子Cの軟化温度以上の温度で加熱処理する熱処理工程と、
前記柱形状の成形体を酸処理する酸処理工程とを含み、
前記無機繊維B及び/又は前記無機粒子Cは、シリカを含有していることを特徴とするハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記酸処理工程は、1〜10mol/lの濃度の処理溶液中に前記成形体を浸漬する工程である請求項1〜4のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
前記酸処理工程の処理時間は0.5〜24時間である請求項1〜5のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項7】
前記酸処理工程の処理温度は70〜100℃である請求項1〜6のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項8】
前記熱処理工程は、1次焼成工程と2次焼成工程とを含み、
前記1次焼成工程を行った後に前記酸処理工程を行い、その後前記2次焼成工程を行う請求項1〜7のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
前記無機繊維Aは、炭化珪素、アルミナ、玄武岩、シリカ、シリカ−アルミナ、チタニア及びジルコニアよりなる群から選ばれた少なくとも1種からなる請求項1〜8のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
前記無機繊維に酸化物触媒を担持させる工程を含む請求項1〜9のいずれかに記載のハニカム構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−235283(P2011−235283A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119007(P2011−119007)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【分割の表示】特願2007−114032(P2007−114032)の分割
【原出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】