説明

ハニカム構造体およびこれを用いたガス処理装置

【課題】 微粒子の捕集効率が向上するハニカム構造体と、このハニカム構造体を用いたガス処理装置を提供する。
【解決手段】 筒状部5と、筒状部5の内側に格子状に配置された通気性を有する隔壁部2とにより形成され、隔壁部2に仕切られて流体の流入口および流出口が封止材4により交互に封止された複数の流通孔3とを備えてなるハニカム構造体1であって、筒状部2に接する少なくとも一部の流通孔3において、隔壁部2が湾曲しているハニカム構造体である。隔壁部2が湾曲していることから隔壁部2の表面積が広くなり微粒子の捕集効率を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスを浄化するためのフィルタ等に用いられるハニカム構造体およびこれを用いたガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関,焼却炉およびボイラー等から発生する排気ガス中に含まれる微粒子等を捕集するのにフィルタが用いられている。
【0003】
このようなフィルタは、排気ガス処理装置に備えられ、筒状部と、筒状部の内側に格子状に配置された通気性を有する隔壁部により形成され、排気ガスの流入口および流出口が封止材により交互に封止された複数の流通孔を備えたハニカム構造体が用いられている。
【0004】
そして、捕集した微粒子等が蓄積されたハニカム構造体を再生する方法として、例えば、600℃以上に加熱して、微粒子を燃焼除去する方法や、フィルタの排気ガスの流入側に
酸化触媒を配置し、この酸化触媒に軽油等の燃料を供給することによって生じる酸化反応によって発生する熱を利用して、微粒子を燃焼除去する方法等があり、再生を繰り返すことで効率よく排気ガス中に含まれる微粒子等を捕集していた。
【0005】
しかしながら、これらの方法によりフィルタを再生する場合に、微粒子の捕集量が多いほど、微粒子を燃焼除去するのに多くの時間を要し、この間、フィルタの温度が上昇し、温度上昇による熱応力に起因してフィルタにクラックや溶損が生じる場合があった。
【0006】
このようなクラックや溶損を防止するために、例えば、特許文献1では、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設し、これらの貫通孔のどちらか一方の端部を封止してなる、柱状の多孔質セラミック部材の一つまたは複数個の組合せからなるハニカム構造体であって、ハニカム構造体は、一方の端面の開口面積と他方の端面の開口面積が異なっており、セラミック部材がセラミックスとシリコンとからなるシリコン−セラミック複合材にて形成したハニカム構造体が提案されており、貫通孔は、長手方向に垂直な断面の面積が相対的に大きい大容積貫通孔と、断面の面積が相対的に小さい小容積貫通孔との2種類の貫通孔からなり、大容積貫通孔は、ハニカムフィルタの排気ガス出口側の端部で封止材により封止される一方、小容積貫通孔は、ハニカムフィルタの排気ガス入口側の端部で封止材により封止され、これらの貫通孔同士を隔てる隔壁がフィルタとして機能するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2004/113252号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に提案されているハニカムフィルタは、微粒子の捕集効率の向上については十分考慮されたものではなく、そのため捕集効率が低いという問題があった。
【0009】
本発明は上記課題を解決すべく案出されたものであり、微粒子の捕集効率が向上したハニカム構造体と、このハニカム構造体を用いたガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のハニカム構造体は、筒状部と、該筒状部の内側に格子状に配置された通気性を有する隔壁部とにより形成され、該隔壁部に仕切られて流体の流入口および流出口が封止材により交互に封止された複数の流通孔とを備えてなるハニカム構造体であって、前記筒状部に接する少なくとも一部の前記流通孔において、前記隔壁部が湾曲していることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明のガス処理装置は上記構成のハニカム構造体を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のハニカム構造体によれば、筒状部と、該筒状部の内側に格子状に配置された通気性を有する隔壁部とにより形成され、該隔壁部に仕切られて流体の流入口および流出口が封止材により交互に封止された複数の流通孔とを備えてなるハニカム構造体であって、前記筒状部に接する少なくとも一部の前記流通孔において、前記隔壁部が湾曲していることから、この隔壁部の表面積が増えているので、微粒子の捕集効率が高くなりやすい。
【0013】
また、本発明のガス処理装置によれば、本発明のハニカム構造体を備えているときには、微粒子の捕集効率が高くなりやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態のハニカム構造体の一例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるB−B’線での断面図である。
【図2】図1に示す例のハニカム構造体の図1(b)のC−C’線での断面における、(a),(b)はそれぞれ筒状部側,中心部側の一例を示す部分拡大図である。
【図3】本実施形態のハニカム構造体を構成する隔壁部が湾曲している状態を示す模式図である。
【図4】他のハニカム構造体の断面における、(a),(b)はそれぞれ筒状部側,中心部側の例を示す部分拡大図である。
【図5】さらに他のハニカム構造体の断面における、(a),(b)はそれぞれ筒状部側,中心部側の例を示す部分拡大図である。
【図6】本実施形態のガス処理装置の一例を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態のハニカム構造体およびこれを用いたガス処理装置の一例について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態のハニカム構造体の一例を示す、(a)は斜視図であり、(b)は(a)におけるB−B’線での断面図である。
【0017】
また、図2は、図1に示す例のハニカム構造体の図1(b)のC−C’線での断面における、(a),(b)はそれぞれ筒状部側,中心部側の一例を示す部分拡大図である。
【0018】
図1,図2に示す例のハニカム構造体1は、筒状部5と、この筒状部5の内側に格子状に配置された通気性を有する隔壁部2により形成され、隔壁部に仕切られて流体の流入口(IF)側および流出口(OF)側が封止材4により交互に封止された複数の流通孔3とを備えてなるハニカム構造体1である。
【0019】
そして、流体の流れる方向(以下、単に軸方向Aという場合がある。)に対して垂直な
断面(以下、単に断面という場合がある。)において、筒状部5に接する少なくとも一部の流通孔3を仕切る隔壁部2が湾曲しており、湾曲した隔壁部2によって仕切られた流通孔3c,3dを除き、他の流通孔3a,3bの形状は例えば、図2(b)に示すハニカム構造体1の断面における中心部側のように、それぞれ8角形状,4角形状である。
【0020】
そして、このようなハニカム構造体1は、例えば、外径が140〜270mm、軸方向Aの長さLが100〜250mmの円柱形状であって、軸方向Aに対して垂直な断面における流通孔3は個数が100mm当たり5〜124個(32〜800CPSI)である。また、隔壁部2は、厚
みが0.05mm以上0.25mm以下であり、封止材4は、厚みが1mm以上5mm以下である。なお、CPSIとはCells Per Square Inchesのことである。
【0021】
このようなハニカム構造体1は、流入側にディーゼルエンジンまたはガソリンエンジン等の内燃機関(図示しない)が配置され、この内燃機関が作動して発生した排気ガスが、図1(b)に示すようにハニカム構造体1の流入口(IF)側の封止材4aが形成されていない流通孔3aから導入され、流出口(OF)側に形成された封止材4bによってその流出が遮られる。流出が遮られた排気ガスは、通気性の隔壁部2を通過して、隣接する流通孔3bに導入される。排気ガスが隔壁部2を通過するとき、隔壁部2の壁面や隔壁部2の気孔の表面で排気ガス中の炭素を主成分とする微粒子,硫黄が酸化してできる硫酸塩を主成分とする微粒子および高分子からなる未燃の炭化水素等の微粒子(以下、これらを総称して単に微粒子という。)が捕集される。微粒子が捕集された排気ガスは、浄化された状態で、封止材4bが形成されていない流通孔3bから外部に排出される。
【0022】
そして、このようなハニカム構造体1では、筒状部5に接する少なくとも一部の流通孔3において、隔壁部2が湾曲していることが重要である。
【0023】
筒状部2に接する少なくとも一部の流通孔3において、隔壁部2が湾曲していると、この隔壁部2の表面積が増えることから、排気ガスが隔壁部2を通過するとき、隔壁部2の壁面や隔壁部2の気孔の表面で排気ガス中の微粒子の捕集される量が増えるので、筒状部5の近傍における微粒子の捕集効率が高くなりやすい。
【0024】
また、本実施形態のハニカム構造体1は、湾曲した隔壁部2によって仕切られた流通孔3が連続して設けられた領域を有していることが好適である。
【0025】
図3は、本実施形態のハニカム構造体を構成する隔壁部が湾曲している状態を示す模式図である。
【0026】
ここで、湾曲した隔壁部2によって仕切られた流通孔3が連続して設けられた領域とは、図3に示すように、例えば、流出側が封止材4で封止された任意の流通孔3を仕切る隔壁部2のうち、隔壁部2aにそれぞれ交差する隔壁部2b,隔壁部2cの隣り合う交点2b,2cを結ぶ仮想直線からの変位の最大値Wが仮想直線の長さLに対して25%以上である隔壁部2aによって仕切られる流通孔3c,3dを含む領域をいい、この比率W/Lが25%以上である隔壁部は流通孔3を仕切る隔壁部のうち少なくとも1個あればよい。
【0027】
なお、仮想直線からの変位の最大値Wおよび仮想直線の長さLは、光学顕微鏡を用いて、倍率を例えば50倍以上100倍以下で測定すればよい。
【0028】
特に、本実施形態のハニカム構造体1は、領域と断面の中心とがなす中心角が30°以上60°以下であることが好適である。この領域と断面の中心とがなす中心角がこの範囲であるときには、中心角が30°以上であることにより、筒状部5の近傍における隔壁部2の表面積が増え微粒子の捕集効率は高くなりやすく、中心角が60°以下であることにより、隔
壁部2が湾曲していない部分の領域を広く確保できることによりハニカム構造体1としての機械的強度が高くなるので、捕集効率と機械的強度とを十分兼ね備えたハニカム構造体となりやすい。
【0029】
また、本実施形態のハニカム構造体1は、領域を複数有するとともに、それぞれの領域における中心に対応する筒状部5の部位が、断面において等間隔に位置することが好適である。このように領域が等間隔に位置することにより、ハニカム構造体1において、特定の部位に対する応力集中を防ぐことができクラックの発生を抑制できる。
【0030】
そして、領域における中心に対応する筒状部5の部位が、断面の中心を回転中心として30°±2°,45°±2°,60°±3°または90°±3°の間隔に位置することで、捕集した微粒子の燃焼除去を頻繁に繰り返しても、応力が分散され機械的強度が低下しにくくなるので好適である。なお、本実施形態において等間隔とは、筒状部5の部位が上記角度の範囲で位置することを意味するものとする。
【0031】
図4は、他のハニカム構造体の断面における、(a),(b)はそれぞれ筒状部側,中心部側の例を示す部分拡大図である。
【0032】
図4に示す例のハニカム構造体20は、筒状部5の中心方向に隣接する湾曲した隔壁部2によって仕切られ、筒状部5の中心方向に隣接する流通孔3c,3dにおいて、筒状部5の外周から中心方向に延びる隔壁部を隔壁部A、隔壁部Aと接続する隔壁部を隔壁部Bとしたとき、隣接する流通孔3c,3dを仕切る隔壁部Aが、隔壁部Bに対してずれて位置するハニカム構造体20である。図4(a)に示す例のハニカム構造体20のように、隔壁部Aが、隔壁部Bに対してずれて位置する場合には、捕集した微粒子の燃焼除去を頻繁に繰り返して、隔壁部Aにクラックが生じたとしても、隔壁部Bにクラックが伝播して進展しにくいので、長期間に亘って用いることができる。
【0033】
図5は、さらに他のハニカム構造体の断面における、(a),(b)はそれぞれ筒状部側,中心部側の例を示す部分拡大図である。
【0034】
図5に示す例のハニカム構造体30は、流出側の封止材4bによって封止された流通孔3aおよび流入側の封止材4aによって封止された流通孔3bの開口形状がいずれも4角形状であり、開口部の角部が円弧状である。また、開口面積が流入口側である流通孔3bより流出口側である流通孔3aの方が大きいハニカム構造体30である。
【0035】
図5に示すように、流通孔3aおよび流通孔3bは、開口部の形状がいずれも4角形状であり、開口部の角部が円弧状である場合には、、角部の周りに応力が集中しにくくなるので、加熱、冷却を繰り返しても角部からクラックが生じにくくなり、また、開口面積が流入口側である流通孔3bより流出口側である流通孔3aの方が大きいので、微粒子を吸着することのできる隔壁部2および封止材4bのそれぞれの表面積が大きくなり、微粒子を効率よく捕集することができる。
【0036】
また、図1,図2,図4,図5に示す例のハニカム構造体1,20,30では、流出側が封止材4bで封止され、湾曲していない隔壁部2によって仕切られた流通孔3aの直径は、流入側が封止材4aで封止された、湾曲していない隔壁部2によって仕切られた流通孔3bの直径に対して、1.55倍以上1.95倍以下であることが好適である。このように、直径の比を1.55倍以上とすることで、微粒子を吸着することのできる隔壁部2および封止材4bのそれぞれの表面積が大きくなるので、微粒子の捕集量を増大させることができるとともに、直径の比を1.95倍以下とすることで、隔壁部2が極端に薄くならないので、機械的強度が損なわれにくい。ここで、流通孔3a,3bのそれぞれの直径とは、流入口(IF)
側の端面における隔壁部2に接する内接円の直径をいい、光学顕微鏡を用いて測定することができる。
【0037】
また、隔壁部2,封止材4および筒状部5をそれぞれ構成する成分は、主成分が、いずれも線膨張係数が小さい成分、例えば、コージェライト(2MgO・2Al・5SiO),β−ユークリプタイト(LiO・Al・2SiO),β−スポジュメン(LiO・Al・4SiO),炭化珪素(SiC),窒化珪素(Si),サイアロン(Si6−ZAl8−Z,但しzは固溶量で0.1以上1以下で
ある。),ムライト(3Al・2SiO),アルミン酸カルシウム(CaAl),燐酸ジルコニウムカリウム(KZr(PO))およびチタン酸アルミニウム(AlTiO)の少なくともいずれか1種であることが好適である。
【0038】
ここで、隔壁部2,封止材4および筒状部5の各主成分とは、それぞれ前記各部材を構成する全成分100質量%に対して50質量%より多い量を占める成分をいい、この成分の同
定はX線回折法によって行ない、また成分の含有量はICP発光分光分析法または蛍光X線分析法により求めることができる。
【0039】
また、隔壁部2,封止材4および筒状部5がいずれもチタン酸アルミニウム(AlTiO)を主成分とする場合、チタン酸マグネシウム(MgTi)およびチタン酸鉄(FeTiO)をそれぞれ16質量%以上24質量%以下含んでいることが好適である。この比率は、耐熱性に優れたチタン酸アルミニウム(AlTiO)、耐食性に優れたチタン酸マグネシウム(MgTi)および耐熱劣化性に優れたチタン酸鉄(FeTiO)の最適比率であり、前記各部材の耐熱性,耐食性および耐熱劣化性が良くなる比率である。
【0040】
また、隔壁部2,封止材4および筒状部5がいずれもチタン酸アルミニウム(AlTiO)を主成分とする場合、隔壁部2,封止材4および筒状部5のそれぞれの粒界相の少なくともいずれかは、珪素酸化物を主成分とすることが好適である。これら粒界相の少なくともいずれかが珪素酸化物を主成分とするときには、その粒界相と隣接する結晶粒子同士を強く結合する傾向があるとともに、結晶粒子の異常な粒成長を抑制するため、機械的強度を高くすることができる傾向がある。
【0041】
特に、この珪素酸化物は、粒界相を構成するそれぞれの酸化物の合計100質量%に対し
て90質量%以上であることが好適である。
【0042】
なお、この珪素酸化物は、組成式がSiOで示される二酸化珪素は安定性が高いため好適であるが、組成式がSiO2−x(ただし、xは0<x<2である。)で示される不定比の酸化珪素であっても何等差し支えない。
【0043】
また、各粒界相は、アルカリ金属の酸化物を含んでいてもよいが、アルカリ金属の酸化物はエンジンオイルに含まれる硫酸ナトリウム,硫酸カルシウム等の硫酸塩に対する耐食性が低いので、その含有量は少ない方が好ましく、各粒界相をそれぞれ構成する酸化物100質量%に対して、12質量%以下であることが好適である。アルカリ金属の酸化物は、こ
の範囲であれば、硫酸塩に対して、隔壁部2,封止材4および筒状部5は、耐食性がほとんど損なわれないからである。
【0044】
特に、酸化リチウムおよび酸化ナトリウムは、粒界相をそれぞれ構成する酸化物の合計100質量%に対して、それぞれ2質量%以下であることがより好適である。
【0045】
また、酸化アルミニウムも硫酸塩に対する耐性が低いので、粒界相をそれぞれ構成する
酸化物の合計100質量%に対して、15質量%以下であることが好適である。
【0046】
ところで、図1,図2,図4,図5に示す例の本実施形態のハニカム構造体1,20,30では、隔壁部2は気孔率が35体積%以上60体積%以下であって、平均気孔径が5μm以上26μm以下である多孔質のセラミック焼結体からなることが好適である。このような隔壁部2を形成するセラミック焼結体の気孔率および平均気孔径がこの範囲であると、機械的特性を維持しながら、圧力損失の増加を抑制することができるからであり、平均気孔径および気孔率は水銀圧入法に準拠して求めればよい。
【0047】
具体的には、まず、隔壁部2から質量が0.6g以上0.8g以下となるように平均気孔径および気孔率を測定するための試料を切り出す。
【0048】
次に、水銀圧入型ポロシメータを用いて、試料の気孔に水銀を圧入し、水銀に加えられた圧力と、気孔内に浸入した水銀の体積を測定する。
【0049】
この水銀の体積は気孔の体積に等しく、水銀に加えられた圧力と気孔径には以下の式(1)(Washburnの関係式)が成り立つ。
【0050】
d=−4σcosθ/P・・・(1)
但し、d:気孔径(m)
P:水銀に加えられた圧力(Pa)
σ:水銀の表面張力(0.485N/m)
θ:水銀と気孔の表面との接触角(130°)
式(1)から各圧力Pに対する各気孔径dが求められ、各気孔径dの分布および累積気孔体積を導くことができる。そして、累積気孔体積の百分率が50%に相当する気孔径(D50)を平均気孔径とし、試料の体積に対する累積気孔体積の百分率を気孔率とすればよい。
【0051】
図6は、本実施形態のガス処理装置の一例を模式的に示す概略断面図である。
【0052】
図6に示す例の本実施形態のガス処理装置10は、隔壁部2の壁面に触媒(図示しない)を担持した本実施形態のハニカム構造体1,20,30を備え、流通孔3a,3cの封止されていない一端を流入口とし、この流通孔3a,3cと隔壁部2を介した他の流通孔3b,3dの封止されていない他端を流出口として排気ガス(EG)を通過させることによって、排気ガス(EG)中の微粒子を隔壁部2で捕集するガス処理装置である。ハニカム構造体1は、その外周を断熱材層6に保持された状態でケース7に収容され、断熱材層6は、例えばセラミックファイバ,ガラスファイバ,カーボンファイバおよびセラミックウィスカーの少なくとも1種から形成されている。また、ケース7は、例えば、SUS303,S
US304およびSUS316等のステンレスからなり、その中央部が円筒状に、両端部が円錐台状にそれぞれ形成され、排気ガス(EG)が供給されるケース7の流入口8aおよび排気ガス(EG)が排出される流出口8bを有している。ケース7の流入口8aには排気管9が連結され、排気ガス(EG)は排気管9からケース7内に流入するように構成されている。
【0053】
このようなガス処理装置10の流入側には、ディーゼルエンジンまたはガソリンエンジン等の内燃機関(図示しない)が排気管9を介して接続され、この内燃機関が作動して、排気ガス(EG)が排気管9からケース7に供給されると、ハニカム構造体1,20および30の流入側の封止材4aが形成されていない流通孔3a,3cの中に、排気ガス(EG)が
導入されるが、流出側に形成された封止材4bによってその流出が遮られる。流出が遮られた排気ガス(EG)は、通気性の隔壁部2を通過して、隣接する流通孔3b,3dに導
入される。排気ガス(EG)が隔壁部2を通過するとき、隔壁部2の壁面や隔壁部2の気孔の表面で排気ガス(EG)中の微粒子が捕集される。微粒子が捕集された排気ガス(EG)は、浄化された状態で、封止材4bが形成されていない流通孔3b,3dから流出口8bに接続される排気管(図示せず)を介して外部に排出される。
【0054】
このようなガス処理装置10では、隔壁部2の壁面に担持される触媒は、例えば、ルテニウム,ロジウム,パラジウム,イリジウム,白金等の白金族金属およびその酸化物、金,銀,銅等の周期表第11族金属、酸化バナジウムのうちの少なくともいずれか1種からなり、軽油等の燃料が気化したガスが供給されると、隔壁部2で捕集された排気ガス中の微粒子を酸化して燃焼させる。特に、金,銀,銅等の周期表第11族金属を選んだ場合、その粒子はナノメートルレベルの微粒であることが好適である。
【0055】
さらに、壁面に担持された触媒と排気ガスとの接触面積を大きくするために、γアルミナ,δアルミナおよびθアルミナ等の比表面積が大きい粉体を隔壁部2の壁面に担持しても好適である。
【0056】
本実施形態のハニカム構造体1,20および30では、上述したように、隔壁部2の壁面に触媒を担持しているときには、ハニカム構造体を再生するとき低い温度で微粒子を燃焼除去しやすくなるので、隔壁部2には溶損やクラックが生じにくくなる。さらに、壁面のみならず、隔壁部2の気孔の表面に触媒を担持していても好適である。
【0057】
さらに、排気ガス中の微粒子を酸化して燃焼させるための触媒とともに、窒素酸化物(NOx)を吸蔵して還元するための触媒であるZSM−5,ZSM−11,ZSM−12,ZSM−18,ZSM−23,MCMゼオライト,モルデナイト,ファージャサイト,フェリエライトおよびゼオライトベータの少なくとも1種を隔壁部2の壁面および隔壁部2の気孔の表面の少なくともいずれかに担持させてもよい。
【0058】
このような本実施形態のガス処理装置10は、例えば、本実施形態の例であるハニカム構造体1,20および30を備えているときには、ハニカム構造体1,20および30にクラックが生じにくくなっているので、長期間に亘って効率よく使用することができるとともに、活性金属が担持された担体やNOx吸蔵材が担持された担体を不要にすることができるので、省スペース化を実現することもできる。
【0059】
また、その用途は、例えば、自動車,フォークリフト,発電機,船舶,油圧ショベル,ブルドーザ,ホイールローダ,ラフテレンクレーン,トラクタ,コンバイン,耕転機,鉄道車両,工事用車両等の動力源である内燃機関,焼却炉およびボイラー等から発生する排気ガスに含まれる炭素を主成分とする微粒子等を捕集するフィルタ、有害なダイオキシンを分解して除去するフィルタ等に用いることができる。
【0060】
また、本実施形態では流体が気体である排気ガスを用いた例について説明したが、流体として液体を用いることも可能である。例えば、流体として上水または下水を用いることが可能であり、本実施形態のガス処理装置を液体の濾過用としても適用することができる。
【0061】
次に、ハニカム構造体1,20および30の製造方法の一例について説明する。
【0062】
隔壁部2,封止材4および筒状部5の主成分がいずれもチタン酸アルミニウムであるセラミック焼結体からなるハニカム構造体1を得る場合には、まず、酸化アルミニウムの粉末を27〜33質量%,酸化第二鉄の粉末を13〜17質量%,酸化マグネシウムの粉末を7〜13質量%および残部を酸化チタンの粉末とし、これら粉末を調合した調合原料を水,アセト
ンまたは2−プロパノールとともに混合して一次原料を得る。ここで、用いる前記各粉末は、いずれも純度が高い粉末を用いることが好ましく、その純度は99.0質量%以上、特に99.5質量以上であることがさらに好適である。なお、チタン酸マグネシウム(MgTi)およびチタン酸鉄(FeTiO)がチタン酸アルミニウム(AlTiO)に固溶することができるのであれば、これら金属酸化物の粉末以外に炭酸塩,水酸化物および硝酸塩などの粉末を用いてもよく、またこれらの化合物の粉末を用いてもよい。
【0063】
次に、得られた一次原料を大気雰囲気中、温度を1400℃以上1500℃以下として、1時間以上5時間以下で仮焼することにより、元素Ti,Al,MgおよびFeが互いに固溶した擬ブルッカイト型の結晶からなる仮焼粉末を得ることができる。
【0064】
この仮焼粉末をASTM E 11−61に記載されている粒度番号が230のメッシュの篩い
に通すことによって、例えば、粒径が61μm以下に分級された仮焼粉末を得る。そして、この分級された仮焼粉末に、例えば、平均粒径が1μm以上3μm以下であって、添加量が仮焼粉末100質量部に対して、0.4質量部以上4.6質量部以下である酸化珪素の粉末と、
添加量が仮焼粉末100質量部に対して、1質量部以上13質量部以下であるグラファイト,
澱粉またはポリエチレン樹脂等の造孔剤とを添加した後、さらに可塑剤,増粘剤,滑り剤および水等を加えて、万能攪拌機,回転ミルまたはV型攪拌機等を使って混練物を作製する。そして、この混練物を三本ロールミルや混練機等を用いて混練し、可塑化した坏土を得る。また、前述した混練物の一部にさらに水を加えて封止材4を設けるためのスラリーを作製する。
【0065】
次に、この坏土を押出成形機を用いて成形する。この押出成形機には成形型が装着され、その成形型は成形体の外径を決定する内径が、例えば155mm以上300mm以下であり、ハニカム構造体1の隔壁部2および筒状部5を形成するためのスリットを有している。そして、筒状部5の近傍における少なくとも一部の隔壁部2が湾曲している領域を、筒状部5に沿って所定間隔おきに複数有するようにするには、成形型の外周側で湾曲したスリットを有する領域を、成形型の外周に沿って所定間隔おきに複数設ければよい。
【0066】
また、例えば隔壁部2の湾曲している領域が、隔壁部2の湾曲している領域と断面の中心とがなす中心角が30°以上60°以下であるようにするには、湾曲したスリットを有する領域と断面の中心とがなす中心角が30°以上60°以下、より好適には32°以上58°以下である成形型を用いればよい。
【0067】
また、例えば隔壁2の湾曲している領域が、断面において等間隔で位置するようにするには、湾曲したスリットを有する領域が、断面において等間隔で位置するように成形型に設ければよい。
【0068】
そして、上述したような成形型が装着された押出成形機に坏土を投入し、圧力を加えてハニカム状の成形体を作製し、得られた成形体を乾燥して所定長さに切断する。
【0069】
次に、切断された成形体の複数の流通孔3の流入口(IF)側の端面および流出口(OF)側の端面のそれぞれを交互に封止する封止材4を作製する。具体的には、まず、流出口(OF)側の端面で封止材4bが封止する部分ができるように市松模様にマスキングし、成形体の流出口(OF)側の端面を、スラリー化された混錬物に浸漬する。なお、マスキングが施されていない流通孔3a,3cには、流入口(IF)側の端面から撥水性の樹脂が被覆された先端部を備え、この先端部が平坦に形成されたピンを、予め挿入しておき、流出口(OF)側の端面で流通孔3a,3cに浸入したスラリーを常温にて乾燥する。このようにすることによって、成形体の流出口(OF)側の端面の封止材4bが形成される。そして、前記ピンを抜き、上述の作業と同じ作業を成形体の流入口(IF)側の端面
でも行ない、封止材4aを形成する。
【0070】
次に、得られた成形体を、温度を1300℃〜1500℃として2〜10時間ほど焼成炉の中に保持することにより焼成され、本実施形態のハニカム構造体1,20および30を得ることができる。
【0071】
次に、隔壁部2,封止材4および筒状部5の主成分がいずれもコージェライトであるセラミック焼結体からなるハニカム構造体1,20および30を得る場合には、焼結体におけるコージェライトの組成がSiOが40〜56質量%、Alが30〜46質量%、MgOが12〜16質量%となるように、カオリン、仮焼カオリン、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、タルクまたは焼タルクなどのコージェライト化する原料を調合して調合原料を得る。これ以降、ハニカム構造体1を得るまでの工程は、成分がチタン酸アルミニウムの場合と同様である。
【0072】
このように作製されたハニカム構造体1は、内周側における微粒子の捕集量を低減することなく、外周側の強度を高くすることができるので、筒状部5を形成するために外周研磨を施したり、ハニカム構造体を再生するために、捕集した微粒子の燃焼除去を頻繁に繰り返したりしても、クラックが生じにくくなる。
【0073】
さらに、隔壁部2の壁面に触媒を担持するハニカム構造体を得るには、上述した製造方法によって得られたハニカム構造体1,20および30を、触媒となる、例えば、ルテニウム,ロジウム,パラジウム,オスミウム,イリジウムおよび白金等の白金族金属の可溶性の塩と、ポリビニルアルコール等のバインダーと水とからなるスラリーに、上述した焼成によって得られたハニカム構造体1,20および30を浸漬させた後、温度を100℃以上150℃以下で1時間以上48時間以下保持することによって乾燥すればよい。
【0074】
ここで、可溶性の塩としては、例えば、硝酸パラジウム(Pd(NO),硝酸ロジウム(Rh(NO)),塩化ルテニウム(RuCl),塩化イリジウム酸(HIrCl・nHO),塩化白金酸(HPtCl・nHO)およびジニトロジアンミン白金(Pt(NO(NH)等があり、担持させようとする触媒に応じてこれら可溶性の塩から選べばよい。また、不純物の混入を防ぐため、水はイオン交換水であることが好適である。
【0075】
また、窒素酸化物(NOx)を吸蔵して還元するための触媒であるZSM−5,ZSM−11,ZSM−12,ZSM−18,ZSM−23,MCMゼオライト,モルデナイト,ファージャサイト,フェリエライトおよびゼオライトベータの少なくとも1種を隔壁部2の壁面および隔壁部2の気孔の表面の少なくともいずれかに担持させる場合には、白金族金属に加え、アルカリ金属,アルカリ土類金属および希土類金属から選択される少なくともいずれかをスラリーに添加しておけばよい。
【0076】
そして、上述した方法によって作製されたハニカム構造体1,20および30の外周を断熱材層6で被覆した状態で、ケース7に収容した後、排気管9をケース7の流入口8aに、また、排気管(図示せず)をケース7の流出口8bに、それぞれ接続することで、図6に示す例の本実施形態のガス処理装置10を得ることができる。
【0077】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0078】
まず、酸化アルミニウムの粉末を30質量%,酸化第二鉄の粉末を14質量%,酸化マグネ
シウムの粉末10質量%および酸化チタンの粉末を46質量%として調合した調合原料を水とともに混合したスラリーを噴霧乾燥法で乾燥し、平均粒径が175μmの顆粒を得た。ここ
で、前記各粉末の純度は、いずれも99.5質量%とした。
【0079】
次に、得られた顆粒を大気雰囲気中、温度を1450℃として、3時間で仮焼することにより、元素Ti,Al,MgおよびFeが互いに固溶した擬ブルッカイト型の結晶からなる仮焼粉末を得た。
【0080】
この仮焼粉末をASTM E 11−61に記載されている粒度番号が230のメッシュの篩い
に通すことによって、粒径が61μm以下に分級された仮焼粉末を得た。そして、この分級された仮焼粉末100質量部に対して、添加量が2.5質量部である、平均粒径が2μmの酸化珪素の粉末、添加量が7質量部であるポリエチレン樹脂を添加した後、さらに可塑剤,増粘剤,滑り剤および水および成形助剤であるメチルセルロースを加えて混合体とし、この混合体を万能攪拌機に投入して混練物を作製した。そして、この混練物を混練機を用いてさらに混練し、可塑化した坏土を得た。また、前述した混合体の一部にさらに水を加えて封止材4を設けるためのスラリーを作製した。
【0081】
次に、図2(a)および(b)に示されるハニカム構造体1となる成形体を得るための成形型が装着された横型押出成形機に坏土を投入し、圧力を加えてハニカム状に成形し、乾燥させてから、所定長さに切断した。
【0082】
次に、切断された成形体の複数の流通孔3の流入口(IF)側の端面および流出口(OF)側の端面のそれぞれを交互に封止する封止材4を作製した。具体的には、まず、流出口(OF)側の端面を封止材4bが封止する部分ができるように市松模様にマスキングし、封止材4bを設けるためのスラリーに端面を浸漬した。なお、マスキングが施されていない流通孔3a,3cには、流入口(IF)側の端面から撥水性の樹脂が被覆された先端部を備え、この先端部が平坦に形成されたピンを、予め挿入しておき、流通孔3a,3cの流出口(OF)側の端面に浸入したスラリーを常温にて乾燥して、成形体の流出口(OF)側の端面の封止材4bを形成した。そして、前記ピンを抜き、上述の作業と同じ作業を成形体の流入口(IF)側の端面でも行ない、封止材4aを形成した。
【0083】
また、比較例として、筒状部の近傍において、隔壁部が湾曲していない成形体を得るための成形型が装着された横型押出成形機に坏土を投入し、圧力を加えてハニカム状に成形し、乾燥させてから、所定長さに切断した。そして、上述した方法と同じ方法で切断された成形体の複数の流通孔3の流入側および流出側のそれぞれを交互に封止する封止材4を形成した。
【0084】
なお、隔壁部2が湾曲している領域が複数ある場合には、表1に領域の個数および中心角を示し、その配置はいずれも等間隔とした。
【0085】
次に、電気炉の中に、ハニカム成形体を流入口が下側になるように載置して、焼成温度を1380℃として、3時間保持することにより、焼成して、外径,高さ,隔壁部2の厚さおよび軸方向Aに対する垂直な断面における流通孔3の個数がそれぞれ144mm,152mm,0.2mm,300CPIであるハニカム構造体の試料No.1〜15を得た。なお、このときの流
出口(OF)側の端面で封止された、流通孔3aの直径は、流入側(IF)側の端面で封止された、流通孔3bの直径に対して、1.4倍とし、隔壁部2の気孔率および平均気孔径
は、いずれの試料もそれぞれ44体積%,14μmとした。
【0086】
なお、試料毎にアイソスタティック破壊強度測定用試料および微粒子の捕集量測定用試料を準備した。
【0087】
そして、各試料の捕集効率を評価するために、各試料を図6に示すガス処理装置10のケース7にそれぞれ収容し、排気管9をカーボン発生装置(日本カノマックス(株)製,型式S4102図示せず)に接続した後、流入口(IF)側の端面に対する流出口(OF)側の端面の圧力損失(PL)をマノメーターによって測定した。そして、カーボン発生装置から微粒子を含む、温度が25℃の乾燥空気を流量が2.27Nm/分で直接噴射して、ハニカム構造体の体積0.001mに対して、微粒子が12g捕集されたときの流入口(IF)側
の端面に対する流出口(OF)側の端面の圧力損失(PL)をマノメーターによって測定し、これら測定値を表1に示した。また、圧力損失の上昇を示すΔPL(=PL−PL)を算出し、その値を表1に示した。このΔPLの値が小さいほど、捕集効率が高いと言える。
【0088】
【表1】

【0089】
表1に示すように、試料No.2〜15は、試料No.1に比べ隔壁部2の表面積が広いことから、圧力損失の上昇も抑えられ微粒子の捕集効率が高くなることが分かる。以上のことから、筒状部5に接する少なくとも一部の流通孔3において、隔壁部2が湾曲していることで、捕集した微粒子の燃焼除去を頻繁に繰り返しても捕集効率を高くすることができることが分かる。
【実施例2】
【0090】
次に、実施例1で用いた坏土を用いて、ハニカム構造体1の中心部の形状が図4(b)であって、隔壁部2が湾曲している部分は、隣接する流通孔3における隔壁部Aが、隔壁部Bに対してずれて位置する形状である図4(a)が試料No.16,隣接する流通孔3の隔壁部2がずれて位置していない図5(a)が試料No.17および、全周に湾曲した隔壁部2を有する流通孔3が形成されている実施例1の試料No.15が試料No.18となる成形体を得るための成形型がそれぞれ装着された横型押出成形機に坏土を投入し、圧力を加えてハニカム状に成形し、乾燥させてから、所定長さに切断した。
【0091】
なお、試料No.16および17は、流通孔3における流体の流れる方向に対して垂直な断面において、領域と断面の中心とがなす中心角が45°である領域を有するもので、領域の個数は、いずれの成形体も4個とした。
【0092】
次に、電気炉の中に、ハニカム成形体を流入口が下側になるように載置して、焼成することによって、外径,高さ,隔壁部2の厚さおよび軸方向Aに対する垂直な断面における流通孔3の個数がそれぞれ144mm,152mm,0.2mm,300CPIであるハニカム構造体を
得た。なお、このときの流出口側で封止した流通孔3aの直径は、流入口側で封止された流通孔3bの直径に対して、1.4倍とし、隔壁部2の気孔率および平均気孔径は、いずれ
の試料もそれぞれ44体積%,14μmとした。
【0093】
そして、実施例1に示した方法と同じ方法を用いて、封止材4a,4bを形成した後、電気炉を用いて成形体を、焼成温度1380℃で、3時間保持することにより焼成して、ハニカム構造体である試料No.16,17および18を得た。
【0094】
なお、試料No.16,17および18の外径,高さ,隔壁部2の厚さおよび軸方向Aに対する垂直な断面における流通孔3の個数は、それぞれ144mm,152mm,0.2mm,300CPI
である。
【0095】
そして、各試料を、図6に示すガス処理装置10のケース7に収容した後、排気管9をそれぞれディーゼル微粒子発生装置(図示しない)に接続した。そして、この装置から微粒子を含む、温度25℃の乾燥空気を単位時間当たりの流量を2.27Nm/分として各試料に向かって噴射して、ハニカム構造体の体積0.001mに対して、微粒子を12g捕集した。
【0096】
そして、ハニカム構造体の流入口(IF)端面側に配置された電気ヒータ(図示しない)を用い、捕集された微粒子を燃焼除去することによってハニカム構造体を再生した。
【0097】
再生条件は、実施例1に示した再生条件と同じ条件とした。そして、この捕集および再生を1サイクルとして、このサイクルを15サイクル終了した後に、ワイヤーソーを用いて、流通孔3における流体の流れる方向に対して垂直に切断して、隔壁部Aに生じたクラックの有無を目視で観察した。また、隔壁部Aで観察されたクラックが試料No.16,17および18の隔壁部Bに伝播しているかどうかについて観察して、その本数を確認した。
【0098】
その結果を表2に示す。
【0099】
【表2】

【0100】
表2に示すように、試料No.17は、クラックが隔壁部Bに伝播していなかった。このことから、隔壁部Aが、隔壁部Bに対してずれて位置することから、隔壁部Aにクラックが生じても、隔壁部Bにクラックが伝播しにくいので、長期間に亘って用いることができるといえる。
【0101】
上述した通り、本実施形態のガス処理装置10は、実施例1,2で示した本実施形態のハニカム構造体を備えているときには、機械的強度が低下しにくい上に、筒状部近傍における微粒子の捕集効率が高くなっているので、耐久性を高くすることができるといえる。
【0102】
また、本実施形態のガス処理装置10は、隔壁部2の壁面に触媒を担持しているハニカム構造体を備えているときには活性金属が担持された担体やNOx吸蔵材が担持された担体を不要にすることができるので、省スペース化を実現することができるといえる。
【符号の説明】
【0103】
1,20,30:ハニカム構造体
2:隔壁部
3:流通孔
4:封止材
5:筒状部
6:断熱材層
7:ケース
8a:流入口
8b:流出口
9:排気管
10:ガス処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部と、該筒状部の内側に格子状に配置された通気性を有する隔壁部とにより形成され、該隔壁部に仕切られて流体の流入口および流出口が封止材により交互に封止された複数の流通孔とを備えてなるハニカム構造体であって、前記筒状部に接する少なくとも一部の前記流通孔において、前記隔壁部が湾曲していることを特徴とするハニカム構造体。
【請求項2】
湾曲した前記隔壁部によって仕切られた前記流通孔が連続して設けられた領域を有していることを特徴とする請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記流通孔における流体の流れる方向に対して垂直な断面において、前記領域と前記断面の中心とがなす中心角が30°以上60°以下であることを特徴とする請求項2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
前記領域を複数有するとともに、それぞれの領域における中心に対応する前記筒状部の部位が、前記断面において等間隔に位置することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記筒状部の中心方向に隣接する湾曲した前記隔壁部によって仕切られ、前記筒状部の中心方向に隣接する前記流通孔において、前記筒状部の外周から中心方向に延びる前記隔壁部を隔壁部A、前記隔壁部Aと接続する前記隔壁部を隔壁部Bとしたとき、前記隣接する流通孔を仕切る前記隔壁部Aが、前記隔壁部Bに対してずれて位置することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のハニカム構造体。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のハニカム構造体を備えていることを特徴とするガス処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−245475(P2012−245475A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119811(P2011−119811)
【出願日】平成23年5月28日(2011.5.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】