説明

ハロゲン化物粒子を含むガスの除害方法

【課題】ハロゲン化物ガスとハロゲン化物粒子とを含む除害対象ガスの除害処理を確実に行うことができる除害方法を提供する。
【解決手段】ハロゲン化物ガスと常温で固体であるハロゲン化物粒子とを含む除害対象ガスの除害方法において、前記除害対象ガスを、金属水酸化物、好ましくはアルカリ金属の水酸化物あるいはアルカリ土類金属の水酸化物を含む第1の除害剤に接触させた後、ハロゲン化物を除害可能で、前記第1の除害剤の大きさより小さな大きさを有する第2の除害剤に接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化物粒子を含むガスの除害方法に関し、詳しくは、半導体製造工程において、ハロゲン化物ガスによって基板上の固形物や製造装置に付着した固形物をドライエッチング又はドライクリーニングしたガスを乾式法によって除害する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種有害ガス成分を乾式法によって除害する除害剤には、除害対象となるガス成分や処理条件に応じて多種多様なものが用いられている。例えば、ハロゲン化物ガスを除害処理する際には、空気中などの酸素の存在下において活性炭に接触させて反応させる方法や、窒素などの不活性雰囲気下でアルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物に接触させて反応させる方法などが行われている。
【0003】
一方、近年の半導体の製造は、Si系だけでなく、GaNをはじめとするIII−V族デバイスの製造が増大している。半導体製造において、ドライエッチング工程やドライクリーニング工程にはハロゲン化物系ガスが使用されている。デバイスのドライエッチング装置、ドライクリーニング装置あるいはデバイス製造装置の洗浄装置などで、Si系ではフッ素及びフッ化物系ガスを使用することが多いのに対し、III−V族デバイスでは塩素及び塩化物素系ガスによる処理が行われており、これらから排出されるハロゲン系ガスを含む排ガスの除害処理には、主として乾式除害装置が使用されている。例えば、排ガスを活性炭に接触させた後に鉄の酸化物に接触させる方法や、排ガスを酸化鉄及び酸化マンガンに接触させた後、金属酸化物を担持した活性炭に接触させる方法などが知られている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−198128号公報
【特許文献1】特開平6−319947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような乾式除害装置、特にIII−V族、とりわけGaNデバイスからのハロゲン化物含有排ガスを処理する乾式除害装置では、想定される排ガス処理量よりも、処理量が少なくなってしまうことがあった。この乾式除害装置の寿命の短縮は、デバイス製造装置あるいはデバイス製造装置の洗浄装置内部で、除害処理時の温度、通常は常温で固体粒子となるハロゲン化物系の副生成物が生成することが原因であると考えられる。さらに、これらの固体粒子は、乾式除害装置の破過検知に使用している検知器にも悪影響を及ぼしている。
【0006】
そこで本発明は、常温で固体粒子となるハロゲン化物系の副生成物が生成しても、ハロゲン化物含有排ガスの除害処理を確実に行うことができるハロゲン化物粒子を含むガスの除害方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のハロゲン化物粒子を含むガスの除害方法は、ハロゲン化物ガスとハロゲン化物粒子とを含む除害対象ガスの除害方法において、前記除害対象ガスを、金属水酸化物を含む第1の除害剤に接触させた後、ハロゲン化物を除害可能な第2の除害剤に接触させることを特徴としている。
【0008】
さらに、本発明のハロゲン化物粒子を含むガスの除害方法は、前記第1の除害剤における前記金属水酸化物は、アルカリ金属の水酸化物あるいはアルカリ土類金属の水酸化物であることが好ましく、前記第2の除害剤の大きさが前記第1の除害剤の大きさより小さいことが望ましい。また、前記ハロゲン化物粒子が常温で固体であること、第13族又は第15族の原子を含んでいることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のハロゲン化物粒子を含む除害対象ガスの除害方法によれば、除害対象ガス中のハロゲン化物ガスと第1の除害剤との反応によって第1の除害剤の表面に水が生成し、この水にハロゲン化物粒子が接触することにより、ハロゲン化物粒子が溶解、分散、分解、反応するなどして第1の除害剤に捕捉される。したがって、第1の除害剤においてハロゲン化物粒子の大部分を捕捉できるとともに、ハロゲン化物ガスの除害処理を行うことが可能であり、第2の除害剤によって除害対象ガス中に残存するハロゲン化物ガス及びハロゲン化物粒子を除害処理することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、ハロゲン化物粒子を含む除害対象ガスの除害処理は、第1の除害剤と第2の除害剤とを充填した除害塔(充填塔)にハロゲン化物ガスとハロゲン化物粒子を含む除害対象ガスを流通させることにより行われる。本発明における除害対象ガスは、ハロゲン化物ガスとハロゲン化物粒子を含むガスであって、例えば、ハロゲン化物ガスによって基板上の固形物や半導体製造装置に付着した固形物をドライエッチングやドライクリーニングして装置から排出されたガスである。
【0011】
前記ハロゲン化物粒子は、除害処理時の温度、通常は常温で固体となるものであって、例えば、フッ化アルミニウム,フッ化ガリウム,フッ化インジウム,フッ化タリウム,フッ化ヒ素,フッ化アンチモン,フッ化ビスマス,塩化アルミニウム,塩化ガリウム,塩化インジウム,塩化タリウム,塩化ヒ素,塩化アンチモン,塩化ビスマス,臭化アルミニウム,臭化ガリウム,臭化インジウム,臭化タリウム,臭化ヒ素,臭化アンチモン,臭化ビスマス,ヨウ化アルミニウム,ヨウ化ガリウム,ヨウ化インジウム,ヨウ化タリウム,ヨウ化窒素,ヨウ化リン,ヨウ化ヒ素,ヨウ化アンチモン,ヨウ化ビスマスなどのいずれか一種あるいはこれらの混合物、さらには、第13族元素であるB,Al,Ga,In,Tlの原子、第15族元素であるN,P,As,Sb,Biの原子、エッチングやクリーニングで使用したガスに含まれるハロゲンのF,Cl,Br,Iの原子を含む化合物である。また、前記ハロゲン化物ガスは、除害処理時の温度でガス状のものであって、例えば、フッ素,四フッ化炭素などの各種フッ化物系ガス、塩素,塩化水素などの各種塩化物系ガス、臭素,臭化水素などの各種臭化物系ガス、ヨウ素,ヨウ化水素などの各種ヨウ化物系ガスである。
【0012】
前記第1の除害剤は、金属水酸化物を含む除害剤であって、特に、水酸化リチウム,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化ルビジウム,水酸化セシウム,水酸化フランシウムといったアルカリ金属の水酸化物、あるいは、水酸化ベリリウム,水酸化マグネシウム,水酸化カルシウム,水酸化ストロンチウム,水酸化バリウム,水酸化ラジウムといったアルカリ土類金属の水酸化物のいずれか1種以上を含んでいればよく、他の金属水酸化物や金属酸化物,金属炭酸塩,活性炭などと混合したものを用いることができる。また、第1の除害剤の大きさは、特に規定されるものではないが、ある程度のハロゲン化物粒子の通過を考慮すると、粒子径が2〜10mm程度のものが現実的である。
【0013】
前記第2の除害剤は、ハロゲン化物の除害剤として従来から用いられている各種除害剤、例えば、金属酸化物,金属水酸化物,金属炭酸塩,酸化銅などを添着した添着活性炭などを使用することができる。この第2の除害剤には、前記第1の除害剤の大きさより小さいものを用いることが好ましい。例えば、前述のように、第1の除害剤として粒子径が2〜10mm程度のものを用いた場合、第2の除害剤には、第1の除害剤の大きさ以下で、粒子径が0.5〜8mm程度のものを用いることが望ましい。
【0014】
第1の除害剤と第2の除害剤とは、除害処理時における除害対象の流れ方向上流側に第1の除害剤、下流側に第2の除害剤が位置するように配置する。第1の除害剤及び第2の除害剤は、一つの充填塔内に、第1の除害剤が上流側に位置するように層状に充填することもでき、第1の除害剤を充填した第1の充填塔の下流側に、第2の除害剤を充填した第2の充填塔を直列に配置することもできる。
【0015】
第1の除害剤及び第2の除害剤の使用量は、除害対象ガスの種類や各除害剤の能力などの条件に応じて任意に選択することができる。また、第1の除害剤は、該第1の除害剤中に金属水酸化物を5重量%以上含んでいるもの、好ましくは金属水酸化物を20重量%以上含んでいるものを使用することが望ましい。第1の除害剤中における金属水酸化物の含有量が5重量%未満ではハロゲン化物粒子を捕捉する能力が、第1の除害剤の使用量に対して十分ではなく、第1の除害剤を大量に必要とするために好ましくない。金属水酸化物の含有量が5〜20重量%の範囲では、第1の除害剤の使用量が多くはなるが、ハロゲン化物粒子を捕捉する目的は達成することができる。さらに、金属水酸化物の含有量が20重量%以上、特に50重量%以上であれば、第1の除害剤の使用量を少なくしても、ハロゲン化物粒子を十分に捕捉することができるので、充填塔の小型化、圧力損失の低減などを図ることができる。
【0016】
一方、第2の除害剤は、従来から行われている通常の状態で使用することができ、第1の除害剤と同じ組成の除害剤の粒径を小さくしたものを使用することもできる。この第2の除害剤と第1の除害剤との使用割合は、除害対象ガス中のハロゲン化物粒子の種類や処理ガス中の含有量、各除害剤の能力や価格などの条件に応じて任意に選択することができるが、通常は、1:1の割合に設定することが好ましい。
【0017】
このように、上流側に金属水酸化物を含む第1の除害剤を配置し、該第1の除害剤の下流側にハロゲン化物ガスを除害可能な第2の除害剤を配置することにより、除害対象ガス中に存在するハロゲン化物粒子を第1の除害剤で捕捉することができるので、第2の除害剤ではハロゲン化物粒子をほとんど含まない状態で、従来と同様にして除害対象ガス中のハロゲン化物ガスの除害処理を行うことができる。
【0018】
すなわち、第1の除害剤では、除害対象ガス中に存在するハロゲン化物ガスが金属水酸化物と接触することにより、除害剤表面に水が生成し、この水にハロゲン化物粒子が接触することにより、ハロゲン化物粒子が溶解,分散,分解,反応するなどして第1の除害剤に捕捉されるので、第2の除害剤に向かって流れる除害対象ガス中からハロゲン化物粒子を除去することができる。また、第1の除害剤として比較的大きな粒径のものを用いることにより、除害剤表面にハロゲン化物粒子が付着してもガス流れの抵抗となることはほとんどなく、圧力損失が増加することを抑えることができる。さらに、第2の除害剤として比較的小さな粒径のものを用いることにより、ハロゲン化物ガスを効率よく除害処理できるとともに、万一、ハロゲン化物粒子が残存していたとしても、第2の除害剤にて物理的に捕捉して除去することが可能であり、第2の除害剤が金属水酸化物を含むものであれば、前記同様にしてハロゲン化物粒子を溶解,分散,分解,反応させて除去することができる。
【0019】
これにより、除害対象ガス中に含まれるハロゲン化物粒子をあらかじめ除去するためのスクラバーやフィルターが不要になるだけでなく、フィルターでは除去が困難な極微細なハロゲン化物粒子も除去することができる。
【実施例1】
【0020】
容積500mmの充填塔を使用し、表1に示すように、各種除害剤を使用して各種プロセスから排出された各種ガスを流通させ、これらの除害能力の比較を行った。除害剤の破過は、市販のハロゲン化物用検知剤を用いて確認した。除害能力の評価は、ハロゲン化物粒子を含まないガスを除害処理したときの処理量を基準処理量として比較し、基準処理量に対して90%以上のものには二重丸を、80%以上90%未満のものには丸を、50%以上80%未満のものには白三角を、50%未満のものにはバツ印を表中に記載した。なお、黒三角のものは、破過前に圧力上昇して除害処理が継続できなかったものである。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲン化物ガスとハロゲン化物粒子とを含む除害対象ガスの除害方法において、前記除害対象ガスを、金属水酸化物を含む第1の除害剤に接触させた後、ハロゲン化物を除害可能な第2の除害剤に接触させるハロゲン化物粒子を含むガスの除害方法。
【請求項2】
前記第1の除害剤における前記金属水酸化物は、アルカリ金属の水酸化物あるいはアルカリ土類金属の水酸化物である請求項1記載のハロゲン化物粒子を含むガスの除害方法。
【請求項3】
前記第2の除害剤の大きさは、前記第1の除害剤の大きさより小さい請求項1又は2記載のハロゲン化物粒子を含むガスの除害方法。
【請求項4】
前記ハロゲン化物粒子は、常温で固体である請求項1乃至3のいずれか1項記載のハロゲン化物粒子を含むガスの除害方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化物粒子は、第13族又は第15族の原子を含んでいる請求項1乃至4のいずれか1項記載のハロゲン化物粒子を含むガスの除害方法。

【公開番号】特開2013−86088(P2013−86088A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232506(P2011−232506)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】