説明

ハンドヘルドプリンタ及びその操作方法

【課題】使いやすく、印刷する画像のサイズにかかわらず表面に画像を印刷できるハンドヘルドポータブルプリンタとその操作方法を提供することである。
【解決手段】
ハンドヘルドのポータブルハウジングと、前記ポータブルハウジングにマウントされた印刷を制御するコントローラと、印刷する文書の画像を投影する、前記ポータブルハウジングにマウントされたプロジェクタと、前記コントローラからの信号に応じてインクを吐出する、前記ポータブルハウジングにマウントされ前記コントローラに結合した印刷ヘッドとを有する文書印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置に関し、特に、ハンドヘルドポータブルプリンタとその操作方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタは周知であり、レーザプリンタ、ドットマトリックスプリンタ、インクジェットプリンタ等、様々な種類がある。これらのプリンタは、印刷媒体(「紙」)に「インク」を塗布するために、それぞれ異なる種類の技術を使用する。しかし、ほとんどすべてのプリンタでは、印刷媒体が、その印刷媒体に「インク」を塗布する比較的静的なプリントヘッドを通過することを要する。ほとんどの場合、かかるプリンタは、一定の方向のプリントヘッドと、複雑なペーパーハンドリングトレイと、プリントヘッドに印刷媒体を供給し印刷出力を提供するメカニズムとを保持するハウジングを有する。ほとんどのプリンタはこのように大きなハウジングを必要とするので、ハンドヘルドではなく、8×11インチの標準的な用紙サイズよりかなり大きい装置である。モバイルコンピューティング環境のために作られたプリンタもあるが、かかるプリンタも長さが少なくとも8.5インチであるプリントヘッドまたはプリントヘッドメカニズムを有することが多い。
【0003】
先行技術ではハンドヘルドプリンタを提供する試みも為されている。これらの試みには、エレクトロニクス、電源、その他のプリンタ要素とともにプリントヘッドをポータブルハウジング内にマウントできるように、プリントヘッドのサイズを小さくする典型的なアプローチが含まれる。しかし、既存のハンドヘルドプリンタには大きな制約がある。既存の多数のハンドヘルドプリンタの場合、印刷できる画像のサイズが厳しく制限されている。例えば、先行技術の一部のプリンタは、静止している時にのみ印刷できるので、印刷できる画像はプリンタ自体またはプリントヘッドの大きさ以下に制限されてしまい、いずれにしても数インチ四方以下である。このため、プリンタはかさばり使いにくくなってしまう。
【0004】
他のハンドヘルドプリンタは、ユーザがそのハンドヘルドプリンタを印刷媒体上で動かすか「スワイプ(swipe)」する時に、印刷できる。しかし、これらのプリンタも印刷できる画像のサイズが少なくとも1つの次元で制限されている。具体的には、これらはプリントヘッドのサイズ以下の画像しか印刷できず、ほとんどの場合1回のパスまたはスワイプ(swipe)に制限されている。これらの区分的に印刷できるハンドヘルドプリンタの場合、別々な複数の印刷ステップ、スワイプ、またはセクションを調整することが非常に難しい。さらに、画像が複数の区分で印刷される一部のプリンタでは、特殊な用紙やレジストレーションマーク(registration marks)が必要であったり、端から印刷を始める必要があったりする。さらに、かかる複数区分(multiple section)のハンドヘルドプリンタはミスプリントや失敗の割合が高い。例えば、画像をうまく印刷できない失敗は、ユーザが印刷装置を印刷媒体の表面から離してしまうときに起こることが多い。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、必要とされているものは、使いやすく、印刷する画像のサイズにかかわらず表面に画像を印刷できるハンドヘルドポータブルプリンタとその操作方法である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ハンドヘルドポータブルプリンタとその操作方法を提供して、先行技術の欠点と制約を解消する。一実施形態では、本ハンドヘルドポータブルプリンタは、上部材と前部材と下部材とハンドルとを含み、これらの部材は一体となって概してO型の装置を形成する。上部材は、穴部を画成し、その穴部を通してスクロールダイアルが突出し、上部材の上面にリトラクタブル(retractable)なディスプレイをサポートするように構成されている。前部材は、より堅固な構造であり、消耗品とバッテリを格納する領域を提供し、印刷する画像の印刷表面に画像を投影するプロジェクタを格納(house)する。下部材は、ハンドヘルドプリンタが印刷媒体上を移動する時に、印刷能力を向上するために外側に向かって傾斜している。下部材は、ハンドヘルドプリンタの動きを検出・測定する光学センサと、印刷表面上におけるプリンタの動きを支援するローラと、印刷表面にインクを出力するプリントヘッドとを内蔵している。ハンドルには、画像をロックしたり印刷を開始するコマンドを入力するボタンが設けられる。一実施形態では、ハンドルは、印刷する画像の制御と投影や、ユーザへのフィードバックや、他の装置との通信をするエレクトロニクスを内蔵している。本発明は、いくつかの新規な方法も含む。該方法は、例えば、ハンドヘルドプリンタを用いた画像印刷方法、印刷画像の投影方法、プリンタ位置及び印刷画像の部分のレジストレーション(registering)方法が含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、添付した図面で例によって示すが、本発明を限定するものではない。同じ参照数字は同じ要素を示すために使用される。
【0008】
ハンドヘルドプリンタとその使用方法を説明する。以下の詳細な説明では、説明を目的として、本発明を完全に理解してもらうために、多数の具体的な詳細事項を記載する。しかし、言うまでもなく、本発明はこれらの詳細がなくても実施することができる。他の場合では、本発発明が不明瞭になることを避けるために、ブロック図の形式で構造とデバイスを示す。例えば、本発明は、基本的には読むための文書の印刷に関して説明する。しかし、本発明は、いかなる種類の印刷に適用してもよく、電子回路やマーキング用の部分的には見えない印刷やその他の印刷方法に適用される。
【0009】
本発明の説明において、ハンドヘルド(handheld)とは、「手で持って操作できる」又は「手で持って操作する」という意味で用いるものとする。
【0010】
本明細書において「一実施形態」とは、その実施形態に関して説明する具体的な機能、構造、特徴などが本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味している。本明細書ではいろいろな箇所で「一実施形態とは」と記載するが、必ずしも同じ実施形態を指すものではない。
【0011】
ここで説明するアルゴリズムとディスプレイは、特定のコンピュータその他の装置に本来的に関係するものではない。いろいろな汎用システムをここでの教示に従ったプログラムで用いることができるし、必要な方法ステップを実行することに特化した装置を構成しても便利である。これらのシステムに必要な構成を以下の説明により明らかになるであろう。また、本発明は特定のプログラミング言語により記述されるものではない。言うまでもなく、いろいろなプログラミング言語を用いてここに説明する本発明の教示を実施できる。
【0012】
さらに、特許請求の範囲に記載した本発明は、情報システムまたは情報ネットワーク上で動作、または情報システムまたは情報ネットワークと共に機能するものであってもよい。例えば、本発明はスタンドアロンプリンタとして動作でき、または構成に応じた追加的機能を用いてネットワークと通信することもできる。このように、本発明は、いかなる情報システムとも動作でき、その情報システムから最低限の機能を受け、その情報システムにここに開示するすべての機能を提供する。
【0013】
ここで、図1を参照して、ハンドヘルドプリンタ100の第1実施形態を示す。より具体的には、図1は、平坦面102上に置かれた用紙等である印刷媒体104上に印刷動作中であるハンドヘルドプリンタ100を示している。ハンドヘルドプリンタ100は、上部材106と前部材108と下部材110とハンドル112とを有するポータブルハウジングを含む。これらの部材106、108、110、112は一体とされ、概してO形状の装置を形成している。他の実施形態では、ハンドヘルドプリンタ100は横向きのU形状であり、前部材108がない。これらの形状は例として挙げたまでで、小さく釣り合いがとれていてハンドヘルドであり、上記の機能のための領域を提供する構造である限り、他の様々な構造が本発明の範囲に含まれる。これらの部材106、108、110、及び112の各々は、概して四角形状であり、サイズが異なる。この点については以下でより詳細に説明する。上部材106は、概して四角形状であり、その後側はテーパー(tapered)がついており、四角形の穴部が画成され、その穴部を通してスクロールダイアル114が付きだしている。上部材106は上部において幅が広く、リトラクタブルディスプレイ120(図2と図4を参照)をこの上面に配置できるようになっている。ハンドル112は、上部材106の後部分と、下部材110の後部分とにつながっている。ハンドル112は、人の手で握れるようなサイズと形状になっており、例えば、幅は約1インチであり長さは約3−4インチである。特に、一実施形態では、ハンドル112の前壁は4つの突部を有し、その突部がユーザの指があたる凹領域を画成している。下部材110の幅は前部材108及びハンドル112と同様である。しかし、下部材110は外側にテーパーがついており(taper)、ハンドヘルドプリンタ100が用紙104その他の平面上を動いた時により安定するようになっている。前部材108は、下部材110を上部材106にそれぞれの前部の近くで結合している。前部材108は、ハンドヘルドプリンタ100の構造を強固にするために設けられ、また消耗品808(図8参照)またはエレクトロニクス804(図8参照)を格納する領域も提供している。
【0014】
ここで図2を参照して、ハンドヘルドプリンタ100の第1実施形態をより詳細に説明する。図2は、非印刷モードにあるハンドヘルドプリンタ100を示す側面図である。この側面図では、スクロールダイアル114が、上部材106の後側から突出しているように示されている。また、この側面図には、上部材106が、ポータブルメディアデバイス150を受け入れて結合するように構成されたスロット122をどのように画成するかを示している。
【0015】
ポータブルメディアデバイス150には、デジタルカメラやポータブルミュージックプレーヤで一般的に使用されているSDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)カード、MDカード等のメモリカードや、画像やバーコードを含むカードであるメディアキー等が含まれる。バーコードはIDと暗号鍵を含み、これらを使用してインターネット上に置かれているメディアにアクセスして復号することができる。換言すると、(コードネーム)メディアキー上のバーコードを読み取り、暗号化された画像または文書をダウンロードして、それを復号して、それをハンドヘルドプリンタを用いて印刷することができる。
【0016】
図2には、リトラクトポジション(retracted position)にあるリトラクタブルディスプレイ(retractable display)120も示されている。このリトラクタブルディスプレイ120は、上部材106の上面にフラットに配置されている。例えば、リトラクタブルディスプレイ120は、上部材106の後上側と、リトラクタブルディスプレイ120の後下側とにマウントされたスプリングが入ったヒンジにより、上部材106に結合されている。図2には印刷ボタン116も示されている。この印刷ボタン116は、一部は上部材106、一部はハンドル112により画成された穴部に、前向きに延在(extends forward)している。ユーザは、ハンドヘルドプリンタ112を握って動かしながら、人差し指で印刷ボタン116を押すことができる。具体的には、ボタン116の設計は、拳銃の引き金に似ている。下部材110の前近くに、プリントヘッド118を収容する空洞(cavity)が画成されている。図2には、第1の印刷ポジションから第2のリトラクト(retracted)ポジションに移行しつつあるプリントヘッド118が示されている。最後に、プロジェクタ126が、上部材106の前側近くに配置されている。プロジェクタ126は、用紙104または表面102上に画像を投影することができる。一実施形態では、プロジェクタ126により投影される画像は、ユーザによるスクロールダイアル114の操作に応じて調整可能である。プロジェクタ126は従来タイプのいかなるものであってもよく、例えば、マイクロプロジェクタ(micro-projector)により供給されるもの、英国ケンブリッジのBlue Light Optics社により供給されるプロジェクタ、Fraunhofer社により供給されるMEMSレーザプロジェクションモジュール等である。
【0017】
ここで、図3を参照して、印刷モードにあるハンドヘルドプリンタ100の一実施形態を示す。図3には、ユーザの手124と、それがどのようにハンドヘルドプリンタ100とインターラクト(interact)するかを示す。印刷モードでは、ディスプレイデバイス120は、上部材106の上面に近接したリトラクト(retracted)ポジションから、角度のついたポジションに動く。ここで、上部材106の上面とディスプレイデバイス120の下面との間の角度は鋭角である。ディスプレイデバイス120を角度のついたポジションに動かすと、ディスプレイはより一層見やすくなる。ユーザは親指128でスクロールダイアル114を操作できる。スクロールダイアル114を親指128により前後に回転させて、投影される画像のサイズと位置を調整することができる。図2と対照的に、プリントヘッド118が完全に出されており、その前縁が用紙104に隣接し、インクを塗布する。点線130で示したように、ハンドヘルドプリンタ100のプロジェクタ126は、用紙104上に画像を有利に投影する。その境界は点線130で示した。印刷動作中、ユーザは人差し指132を使って印刷ボタン116を押す。印刷ボタン116を押すと、ハンドヘルドプリンタ100はプリントヘッド118を介して用紙104上にインクを吐出(output)する。一実施形態では、印刷ボタン116は2つのポジションを有し、第1ポジションでは、半分押された状態であり、投影された画像が「ロック(locked)」される。「ロック」モードでは、プリンタ100は、投影される画像の外観を調整してプリンタ100の動きを明らかにするために、投影の動きに係わらず用紙104上への投影の外観が一定となるようにする。ユーザが印刷ボタン116をさらに第2ポジションまで押すと、投影は引き続き「ロック」されているが、プリンタは印刷動作を実行してインクを吐出(output)する。
【0018】
ここで、図4も参照する。図4は、ハンドヘルドプリンタ100を示す底面図である。ハンドヘルドプリンタ100の底面図には、下部材110の下側と、前部材108の前側と、上部材106の一部とが示されている。留意すべきこととして、図4では、プリントヘッド118はリトラクトポジション(retracted position)にある。印刷ポジションでは、プリントヘッド118は、図4に前部材108が示されている領域に延伸(extend)する。図4から分かるように、下部材110は、位置検出センサ140、142と、ローラ114と、プリントヘッド118のための複数の開口部を画成する。ハンドヘルドプリンタ100には、複数のローラ144が有利に設けられ、ハンドヘルドプリンタ100を印刷媒体104または平面上に置いて、その上を容易に動かせるようになっている。この実施形態では、ハンドヘルドプリンタ100には、下部材110の下側の各コーナー近くに位置する4つのローラが設けられている。位置検出センサ140、142は光学センサである。この実施形態では、2つの光学センサ140、142が設けられている。第1の光学センサ140は、下部材110の下側で、前左側に近くに配置されている。第2の光学センサ142は、下部材110の下側で、右後側近くに配置されている。センサ140、142は、表面102または印刷媒体104上でのハンドヘルドプリンタ100の動きを検出して、「ロック」モード時に、印刷される画像の投影を調整できるように設けられている。プリントヘッド118のための開口部は、下部材110の前縁の中央に設けられている。
【0019】
ここで、図5を参照して、ハンドヘルドプリンタ100の背面図を示す。例示を目的として、ポータブルメディアデバイス150を示す。矢印508で示したように、ポータブルメディアデバイス150は、ハンドヘルドプリンタ100の上部材106の左側にあるスロット122に挿入することができる(図2と図3も参照)。ポータブルメディアデバイス150にはハンドヘルドプリンタ100で印刷する任意の画像やデータを格納することができる。ポータブルメディアデバイス150は、外部ソースからハンドヘルドプリンタ100に印刷データを転送する方法の単なる一例である。図5には、角度をつけたポジションにあるリトラクタブルディスプレイデバイス120も示されている。より具体的に、ディスプレイデバイス120には印刷する文書の画像502の例が示されている。図5には、下部材110の左側すなわち後側(trailing side)504と、下部材110の右側すなわち前側(front side)506とが示されている。これらの側504、506は、ハンドヘルドプリンタ100を表面102または印刷媒体104上を動かす時の能力を向上するように有利に形成されている。ハンドヘルドプリンタ100は、1回の印刷において、いずれの方向に動かしてもよいし、両方向に動かすこともでき、かかる動きができるように設計されている。
【0020】
この実施形態では、ハンドヘルドプリンタ100の外側には現れていないが、ハンドヘルドプリンタ100は、ワイヤレストランシーバ、USBトランシーバ、ブルートゥース(登録商標)トランシーバ、赤外線トランシーバ等の通信デバイスや、カメラ等の画像キャプチャデバイスを含んでもよい。
【0021】
図6は、ハンドヘルドプリンタ100に収納され、本発明による方法を実行するコンピューティングシステム600の一実施形態を示すブロック図である。コンピューティングシステム600は、好ましくは、制御部620、ディスプレイデバイス120、1つ以上の入力ボタン610、プロジェクタ126、位置検出センサ140、142、及びプリントヘッド制御モジュール614を含む。他の実施形態では、コンピューティングシステム600は、カメラその他の画像キャプチャデバイス616と、トランシーバやコネクタを含む通信モジュール618とを含む。
【0022】
制御部620は、プロセッサ602とメインメモリ604とデータ記憶デバイス606とを含むように示した。これらはすべてシステムバス608に通信可能に結合している。
プロセッサ602は、データ信号を処理するものであり、CISC(complex instruction set computer)アーキテクチャ、RISC(reduced instruction set computer)アーキテクチャ、命令セットの組合せを実行するアーキテクチャを含む様々なコンピューティングアーキテクチャを有し得る。図6には単一のプロセッサのみを示したが、複数のプロセッサが含まれてもよい。プロセッサ602は、例えば、算術論理ユニット、マイクロプロセッサ、汎用コンピュータ、その他の情報機器であり、ディスプレイ装置120に電子的ディスプレイ信号を供給する。
【0023】
メインメモリ604は、プロセッサ602が実行する命令及び/またはデータ等を格納する。命令及び/またはデータは、ここに説明する方法をすべて実行するコードを含み得る。メインメモリ604は、DRAM(dynamic random access memory)デバイス、SRAM(static random access memory)デバイス、フラッシュRAM(不揮発性記憶)、これらの組合せ、または本技術で知られているその他のメモリデバイスである。メモリ604は、図7を参照して下でより詳細に説明する。
【0024】
データ記憶デバイス606は、プロセッサ602のデータと命令を格納し、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリデバイス、その他の本技術分野で知られた大規模記憶デバイスを含む1つ以上のデバイスである。別の実施形態では、データ記憶デバイス606は外部データ記憶ユニットとの接続で置き換えてもよい。
【0025】
システムバス608は、制御部620中の情報とデータを通信するための共有バスを表す。システムバス608は、ISA(industry standard architecture)バス、PCI(peripheral component interconnect)バス、USB(universal serial bus)、I2C、SPI、または同様な機能を提供するその他の本技術分野で知られたバスを含む1つ以上のバスである。システムバス608により制御部620に結合されている別のコンポーネントには、ディスプレイデバイス120、1つ以上の入力ボタン610、プロジェクタ126、位置検出センサ140、142、プリントヘッド制御モジュール614、画像キャプチャデバイス616、及び通信モジュール618が含まれる。
【0026】
ディスプレイデバイス120は、ここで説明する電子的画像やデータを表示するように構成された任意のデバイスを表す。ディスプレイデバイス120は、例えば、有機LED(organic light emitting diode display)、液晶ディスプレイ(LCD)、その他の同様に構成されたディスプレイデバイス、スクリーン、またはモニタである。一実施形態では、ディスプレイデバイス120はタッチスクリーンを備えており、接触を検知する透明パネルがディスプレイデバイス120の画面をカバーしている。上で留意したように、好ましい実施形態では、ディスプレイデバイス120は、上部材106に合わせたサイズの有機LEDパネルであり、リトラクタブルなポジショニング(retractable positioning)ができるようにマウントされている。別の実施形態では、ディスプレイデバイス120は、一連のLEDその他のライトであり、ハンドヘルドプリンタ100の状態を表示するものであってもよい。
【0027】
1つ以上の入力ボタン610は、ハンドヘルドプリンタ100にユーザ入力を提供するスイッチ、カーソルコントローラ、キーボード等の任意のデバイスである。一実施形態では、入力ボタンは、印刷ボタン116、スクロールダイアル114、電源ボタン812、メニューボタン814、スケーリングノブ816を含む。一実施形態では、入力ボタン610には英数字入力には英数字入力デバイスを含んでもよい。例えば、QWERTYキーボード、キーパッド、またはこれらがタッチスクリーン上に作られたものである。これらは、制御部620に結合され、プロセッサ602に情報とコマンド選択を伝達する。別の実施形態では、入力ボタン610は、位置データ及びコマンド選択をプロセッサ602に伝達するように構成されたユーザ入力デバイスである。例えば、ジョイスティック、マウス、トラックボール、スタイラス、ペン、タッチスクリーン、カーソル方向キー、その他の画像の動きを調節するメカニズムである。
【0028】
プロジェクタ126は制御部620により供給される画像を出力する。プロジェクタ126は、制御部620からの信号に応答して、画像のサイズと位置を調整することができる。プロジェクタ126は、上記の通り、ハンドヘルドプリンタ100のポータブルハウジングにマウント(mounted)されている。プロジェクタ126はバス608により制御部620に電気的に結合されている。プロジェクタ126は従来タイプのいかなるものであってもよく、例えば、マイクロプロジェクタ(micro-projector)、英国ケンブリッジのBlue Light Optics社により供給されるプロジェクタ、Fraunhofer社により供給されるMEMSレーザプロジェクションモジュール等である。さらに、プロジェクタ126は、ハンドヘルドプリンタ100のハウジングにマウントされ、対象とする平面に対する角度が、プリンタ100がその平面104上を動かされても一定であるようになっている。
【0029】
位置検出センサ140、142はバス608により制御部602に結合している。位置検出センサ140、142の一実施形態は、上記では光センサとして説明した。複数のセンサ140と142を示したが、本技術分野の当業者には、別の実施形態では、X−Yの位置と角度方向を含む3自由度を測定する単一の位置検出センサ140のみを使用できることが明らかである。位置検出センサ140、142を使用して、表面102または用紙104上でのハンドヘルドプリンタ100の動きを追跡(track)する。位置検出センサ140、142が信号を発生し、その信号はプロセッサ602により処理され、表面102上におけるハンドヘルドプリンタ100のX−Y位置を決定する。そのX−Y位置の決定には、ハンドヘルドプリンタ100の方向、速さ、回転も含まれる。このX−Y位置データを使用して、投影システムは画像投影情報を調整し、印刷システムはインク(ink material)をどこで吐出するかを知る。
【0030】
プリントヘッド制御モジュール614はプリントヘッド118と通信可能に結合しており、印刷の制御に使用される。より具体的には、プリントヘッド制御モジュール614は信号をフォーマットし直し、プリントヘッド118に送る。プリントヘッドは、その信号により、リトラクトポジションから動作ポジションへ、またはその逆に動く。プリントヘッド制御モジュール614は、プリントヘッドに、印刷媒体104にいつマーク(mark)するか知らせる信号も送る。さらに、プリントヘッド制御モジュール614は、プリントヘッド602の故障や消耗品がなくなったことをプロセッサ602にフィードバックするインターフェイスとしても使用される。ユーザにはディスプレイ装置120を介して通知される。
【0031】
画像キャプチャ装置616は、好ましくは、ハンドヘルドプリンタ100内に取り付けられたデジタルカメラとレンズである。画像キャプチャ装置616はバス608に結合しており、制御信号・ステータス信号を送受信し、キャプチャした画像を送信することができる。例えば、画像キャプチャ装置616は、ズーム、オートフォーカス等のカメラ機能を有する。画像キャプチャ装置616は、従来から携帯電話で使用されているものやその他の小型(small form factor)のものであってもよく、例えば、ESSテクノロジー社が供給しているES2196Mなどである。一実施形態では、画像キャプチャ装置には画像プロセッサ(図示せず)も含まれる。画像プロセッサは、印刷された画像の部分を検知するために使用され、画像キャプチャ装置616、制御部620のプロセッサ602と通信するように構成されている。画像キャプチャ装置616を使用して表面104の画像をキャプチャ(capture)し、画像プロセッサがその画像を元の画像と比較することができる。キャプチャした画像と元の画像との差異は、表面104へのマーキングの制御のための入力として使用できる。
【0032】
通信モジュール618は、制御部620をネットワーク(図示せず)や他の処理システムにリンクする。処理システムのネットワークは、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)(例えば、インターネット)、その他の相互接続されたデータパス(data path)であって複数の装置が通信できるものなどである。一実施形態では、通信モジュール618は、他のシステム(例えば、TCP/IP、http、https、SMTP等の標準ネットワークプロトコルを用いてファイルや情報を配信するネットワーク等のシステム)に対するイーサネット(登録商標)やUSB等の従来の接続方法であり、本技術分野の当業者には明らかであろう。ポータブルメディアデバイススロット/インターフェイス122の一例は上で説明した。他の実施形態では、通信モジュール618は、赤外線通信、WiFi通信、802.11abg通信、ブルーツース(登録商標)通信、3G通信、無線周波数通信等に使用される従来タイプの任意のトランシーバである。本技術分野の当業者には言うまでもないことだが、その他の装置がバス608に結合して、従来の様々な方法でプロセッサ602とインターラクション(interaction)してもよい。
【0033】
本技術分野の当業者には言うまでもなく、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、コンピューティングシステム600に含まれるコンポーネントは、図6に示したものよりも多くても少なくてもよい。例えば、コンピューティングシステム600は、別のメモリ(例えば、第1レベルキャッシュと第2レベルキャッシュ)や特定目的半導体回路(ASIC)を含んでいてもよい。同様に、他のコンポーネントや入出力装置を制御部620に結合してもよい。例えば、RFIDタグリーダや、デジタルスチルカメラまたはデジタルビデオカメラや、その他の装置であり、印刷された文書の対象表面または部分をキャプチャするものでもしないものでもよい。カメラ616や通信モジュール618などの1つ以上のコンポーネントがなくてもよい。
【0034】
図7は、制御部620のメモリユニット604の一実施形態を示すブロック図である。制御ユニット620のメモリユニット604は、好ましくは、オペレーティングシステム702、制御モジュール704、投影モジュール706、印刷制御モジュール708、ユーザ通信・ディスプレイモジュール710、カメラ制御モジュール712、及び通信制御モジュール714を含む。上記の通り、メモリユニット604は、プロセッサ602が実行する命令及び/またはデータ等を格納する。命令及び/またはデータは、ここに説明する方法をすべて実行するコードを含み得る。これらのモジュール702−714は、バス608によりプロセッサ602に結合して通信かつ協働しており、制御ユニット620の機能を提供している。本技術分野の当業者には言うまでもなく、ここでは本発明をコンピュータシステムのメモリユニット604のモジュールまたは一部として説明するが、そのモジュールまたは一部は永続的データ記憶装置606等の他の媒体に格納してもよく、ハンドヘルドプリンタ100が通信するように構成されたクライアント/サーバ環境等にある複数のコンピュータを有するネットワークに分散していてもよい。さらに、当業者には言うまでもなく、具体的には示さないが、メモリ604にはデータを一時的に格納する領域とワーキングメモリ領域が含まれ得る。
【0035】
オペレーティングシステム702は、好ましくは、従来タイプのウィンドウズ(登録商標)、ソラリス(登録商標)、リナックス(登録商標)ベース等のオペレーティングシステムである。図示していないが、メモリユニット604は、1つ以上のアプリケーションプログラムを無制限に含んでいてもよい。
【0036】
制御モジュール704は、メモリ604のその他のモジュールを制御するために使用される。制御モジュール704は、投影モジュール706、印刷制御モジュール708、ユーザ通信・ディスプレイモジュール710、カメラ制御モジュール712、通信制御モジュール714と通信するように構成されている。制御モジュール704の動作は、図8及び図9に関する以下の説明から明らかであろう。制御モジュール704は入力ボタン610、位置検出センサ140、142、カメラ616、及び通信モジュール618に結合し、これらから入力を受け取る。制御モジュール704は、ディスプレイ装置120、プロジェクタ126、プリントヘッドコントロール614、通信モジュール618と通信し、インターラクト(interacts)し、データとコマンドを送る。制御モジュール704はメモリ604とは別のモジュールとして示したが、本技術分野の当業者には、別の実施形態では、その他のモジュール706−714中のルーチン(routines)として分散していてもよい。
【0037】
投影モジュール706は、プロセッサ602がハンドヘルドプリンタ100のプロジェクタ126とインターラクトして制御するために使用するソフトウェアである。プロジェクタ126は、有利にも、印刷する文書の画像を投影すなわち出力する。投影(projection)モジュール706はプロジェクタ126に、投影される画像を形成する信号、投影される画像のサイズ、その位置、その明るさ、そのコントラストその他の表示特性を調節または修正する信号を、ユーザからの入力に応じて送る。プロジェクタ126により投影(projected)される画像は、本発明の方法によりプロセッサ602が制御する。例えば、ユーザは、入力ボタン610を用いて、プロジェクタ126の表示特性を表示してユーザに見せる様々な画像に合わせて調節する。ロック入力に応じて、ハンドヘルドプリンタ100は自分の動きを追跡記録(track)して、投影される画像が、ハンドヘルドプリンタ100の位置が変化しても、表面104上において、ロックボタン116が最初に押された時と同じように見えるように、投影する画像を自動的に調節する。
【0038】
印刷制御モジュール708は、ユーザまたはプロセッサ602からプリントヘッド制御部614にコマンドを送るために使用される。より具体的には、上記の通り、印刷制御モジュール708は、インクを吐出(output)する信号、プリントヘッドを引き込める(retract)する信号、プリントヘッドを動作ポジションに動かす信号を送信する。印刷制御モジュール708は、ハンドヘルドプリンタ100のユーザへの最終的なプレゼンテーションのために、プリントヘッド118からプロセッサ602へのステータス情報を送信するためにも使用される。印刷制御モジュール708は、プロセッサ602と共に動作し、プロセッサ602と通信しインターラクトするためにバス608により結合されている。印刷制御モジュール708は、任意的に、ハンドヘルドプリンタ100が動いている間、いつインクを吐出(output)したか追跡記録(tracks and records)する。このように、ハンドヘルドプリンタ100が表面104上の同じ点の上を複数回動いて画像を印刷しても、プリントヘッド118は選択的に駆動されて、表面の一領域には1回だけインクを吐出(output)する。換言すると、ユーザがハンドヘルドプリンタ100を、ロックされて投影される画像が示される表面104のある領域上を何回ドラッグ(drag)しても、ハンドヘルドプリンタ100はその領域には1パス(one pass)のみインクを吐出し、その後パス(pass)では吐出しない。印刷制御モジュール708は、インクが吐出された箇所を監視し、1回のパスのみにインクが吐出されるようにプリントヘッド118を選択的にオン・オフする。
【0039】
ユーザ通信・表示モジュール710は、ユーザとインターラクトし、ディスプレイ装置120に情報を表示させ、入力ボタン610から信号を受け取る。ユーザ通信・表示モジュール710は、文書の画像を印刷させ、表示装置120上に表示させることもできる。ユーザ通信・表示モジュール710は、投影された画像がロックされたか、印刷中か、プリントヘッド118または消耗品808の状態(図8を参照)等の動作ステータス情報をプロセッサ602にディスプレイ装置120上に表示させることもできる。上記の通り、ユーザ通信・表示モジュール710は入力ボタン610から信号を受け取り処理するが、さらに下でも説明する。これらの入力により本発明のその他のルーチンが起動される。
【0040】
画像キャプチャ装置616が含まれている実施形態では、メモリ604にはカメラ制御モジュール712も含まれている。カメラ制御モジュール712は、プロセッサ602に画像キャプチャ装置616を制御させるソフトウェアであり、その機能にはキャプチャした画像と画像をキャプチャする時の管理が含まれる。一実施形態では、カメラ制御モジュール712はキャプチャした画像を処理し、それをデータ記憶装置606または作業メモリ(working memory)に格納する。他の実施形態では、カメラ制御モジュール712は画像処理も行う。
【0041】
通信モジュール618が含まれる実施形態では、メモリ604には通信制御モジュール714も含まれる。通信制御モジュール714は、通信モジュール618を用いて外部装置(図示せず)と通信するように構成されたソフトウェアである。通信フォーマットに係わらず、通信制御モジュール714は、コマンド、ファイルの一部、ファイル、及びデータの通信モジュール618を介した送受信を管理する。
【0042】
ここで、本発明によるハンドヘルドプリンタの一実施形態を示す概念的ブロック図である図8を参照する。図8の概念的にブロック図には、上記のハンドヘルドプリンタ100のコンポーネント間の関係が示されている。より具体的には、ハンドヘルドプリンタ100のユーザインターフェイス802は、スケーリングノブ114、ディスプレイ120、電源ボタン812、ロックボタン114、印刷ボタン116、及びメニューボタン814を含んでいる。ディスプレイ120、ロックボタン116及び印刷ボタン116は上で説明したので、ここでは繰り返して説明しない。スケーリングノブ114により、ユーザは投影される画像のサイズと位置を調節できる。スケーリングノブ114の操作に応じて、プロセッサ602は画像調整信号を発生し、それをプロジェクタ126に送る。この実施形態では、ハンドヘルドプリンタ100をオン・オフする電源ボタン812が備えられている。この実施形態では、ユーザにディスプレイ120上に別の追加的情報を示させるメニューボタン814も備えられている。メニューボタン814の選択に応じて、プロセッサ602はディスプレイ装置120上にステータス情報と選択可能なオプションとを表示する。選択可能オプションはスケーリングノブ816を用いて選択できる。さらに別の実施形態では、スクロールダイアル114は、スケーリングの部816とロックボタン114の上記の機能を合わせたものである。スクロールダイアル114は入力をスケーリングすることもできるが、ユーザがハンドヘルドプリンタ100のハウジングに向けて押すと、ロックボタン116として機能する。
【0043】
ユーザインターフェイス802とそのコンポーネントは、内部エレクトロニクス804、特に制御ユニット620と通信するように構成されている。内部エレクトロニクス804は、画像キャプチャ装置616、ポータブルメディアデバイススロット122、消耗品808、制御ユニット620/プロセッサ602、プロジェクタ126及びバッテリ810を含む。カメラ616、ポータブルメディアデバイススロット122、制御ユニット620/プロセッサ602、及びプロジェクタ126は上で説明したので、ここでは説明を繰り返さない。消耗品808には、ハンドヘルドプリンタ100が使用するインクその他のものが含まれる。バッテリ810は従来のものであり、ハウジング内に格納され、コンピューティングシステム600その他のコンポーネントの動作に必要なパワーを供給する。
【0044】
内部エレクトロニクス804は表面コンタクトコンポーネント806と通信し制御するように構成されている。表面コンタクトコンポーネント806には、光センサ140、142、ローラ144、及びプリントヘッド118が含まれる。これらのコンポーネントの動作は、それらの制御ユニット620/プロセッサ602とのインターラクションと合わせて上で説明した。
【0045】
ここで、本発明によるハンドヘルドプリンタ100とともに用いる印刷方法の一実施形態を示す図9を参照する。本方法では、最初に、ハンドヘルドプリンタ100が印刷する画像を受信またはキャプチャする(ステップ902)。ハンドヘルドプリンタ100は、メディアスロット122にポータブルメディアデバイス150を挿入されて、印刷する画像を受け取る。他の実施形態では、ハンドヘルドプリンタ100は、例えば、メモリカードをUSBインターフェイスまたは同様のインターフェイスに接続することにより、またはファイルを赤外線リンクまたはブルーツース(登録商標)リンクにより送信することにより、通信モジュール618を介して、印刷する画像を受信する。また、ハンドヘルドプリンタ100は、カメラ616を含む場合、スキャン・プリント(scan-to-print)動作を行うことができる。このスキャン・プリント動作では、カメラ616で表面104の画像または文書をキャプチャ(capture)し、ハンドヘルドプリンタ100を別のブランク表面上に動かして、キャプチャしたばかりの画像を印刷する。印刷する画像をキャプチャまたは受信すると(ステップ902)、次に、図3を参照して上で説明したように、プロジェクタ126を用いて、印刷する画像を投影する(ステップ904)。次に、ユーザは、投影画像を調整して、その文書を印刷すべき所望の位置に動かす(ステップ906)。ユーザは、ハンドヘルドプリンタ100を物理的に動かして、投影画像の位置を調節する。ユーザは、スクロールダイアル114、スケーリングノブ816、その他の入力ボタン610を使用して、投影画像が文書を印刷すべき所望の位置に来るように、画像の投影のしかたを修正する。投影画像が所望の位置に来ると、ユーザは、入力ボタン610の1つを選択して、またはロック/印刷ボタン116を半分押してロック画像信号を入力する(ステップ906)。ハンドヘルドプリンタ100は、画像をそれに応じた位置にロックする(ステップ908)。次に、ユーザは、画像が投影されている領域上にハンドヘルドプリンタ100を動かして(ステップ910)、印刷ボタン116を押す。画像はロックされているので、ハンドヘルドプリンタ100により投影(projected)された画像は、ハンドヘルドプリンタ100が動いても、投影画像は表面104上に静止(固定)しているように、ハンドヘルドプリンタ100の動きに対して調整される(ステップ912)。ハンドヘルドプリンタ100は、継続的に、光センサ140、142からの情報に基づき、自分の位置を決定する(ステップ914)。ハンドヘルドプリンタ100が動かされると、プロセッサ602は、ハンドヘルドプリンタ100の位置が、すでに印刷された領域上にあるかどうか決定する。すでに印刷された領域上になければ、プリントヘッド118を駆動し、印刷すなわちインクを吐出(output)する(ステップ918)。その後、ステップ920に進む。ハンドヘルドプリンタ100がすでに印刷した領域にある場合、本方法はステップ916からステップ920に直接進む。ステップ920では、本方法では、画像全体が印刷されたかどうか決定される。まだであれば、ステップ910に戻り、ユーザは、引き続き、画像が投影された領域上でハンドヘルドプリンタ100を動かす。一実施形態では、ハンドヘルドプリンタ100は、ディスプレイ122上にフィードバックをして、ユーザに画像全体が印刷されたかどうか知らせる。画像全体が印刷された場合、本方法は完了する。
【0046】
当業者には、印刷する画像を投影することが特に有利であることが分かるであろう。例えば、画像を一部だけ印刷し、ハンドヘルドプリンタ100を一時的に脇に置いておくこともできる。この場合に、投影を使用すると有利である。ハンドヘルドプリンタ100で画像の残りを容易に印刷できるからである。ユーザは画像を投影して、投影画像を部分的に印刷された画像に合わせて、画像の残りを印刷するだけでよい。投影(projection)を使うと位置合わせプロセスが特に簡単になる。ユーザは部分的に印刷された画像と投影された画像との差異を識別して、正確に位置合わせすることができるからである。
【0047】
また、ユーザは、投影で示された画像全体を印刷する必要はない。それどころか、ユーザは投影された画像の一部のみを実際に印刷することができる。すなわち、ユーザは自分の文書の一部のみを印刷することができる。ユーザは、文書の一部のみに関心を持っていることもある。この場合、投影画像によりユーザに画像全体が表示され、ユーザは自分が関心を持つ部分を目的の表面に位置合わせして、その部分上でプリンタを動かすだけでよい。これは、印刷画像の「インスタントトリミング(instant cropping)」と考えられる。画像の投影、及びハンドヘルドプリンタのフレキシビリティにより、編集ツール(例えば、カリフォルニア州サンノゼのアドビシステム社のフォトショップのようなプログラム)で印刷画像データを前処理しなくても画像のトリミング(cropping)ができる。
【0048】
図10は、本発明によるハンドヘルドプリンタ1100の第2実施形態を示す。この第2実施形態では、ハンドヘルドプリンタ1100はプロジェクタを含まない。しかし、プロジェクタ1102は、部屋にある机その他の構造物の一部になっている。プロジェクタ1102は、ネットワーク1104により通信装置(図示せず)に結合している。ネットワーク1104はここでは従来のものであり、例えばサーバ(図示せず)と接続されている。ハンドヘルドプリンタ1100は、上記の通り、通信モジュール618を含む。通信モジュール618は、プロセッサ1102との間で情報とコマンドを送受信できる。ハンドヘルドプリンタ1100は、通信モジュールを使用して、印刷する画像をネットワーク1104に、そしてプロジェクタ1102に送信する。プロジェクタ1102は画像を受信して、投影して投影1106を形成する。ハンドヘルドプリンタ1100を上記のように印刷表面104上で動かし、表面104に画像を印刷する。図10は、ハンドヘルドプリンタ1100が少ない数のコンポーネントを有するが、既存のインフラストラクチャのコンポーネントにアクセスして、本発明によるハンドヘルド印刷をする一実施形態を示している。当業者には、どのコンポーネントがハンドヘルドプリンタ1100の一部、または既存インフラストラクチャの一部であるかについて、多数の置換があると分かるであろう。例えば、カメラ616が、プロジェクタ1102と同様に既存インフラストラクチャの一部であってもよい。
【0049】
本発明の他の実施形態では、プリントヘッドが二種類のインクを吐出(output)できる。1つは肉眼で見えるものであり、もう1つは紫外線等の別のスペクトルで見えるものである。あるいは、異なるインクの種類に対して別のプリントヘッドを使用してもよい。いずれにしても、プロセッサ602の制御下のプリントヘッドは、表面104に紫外光スペクトルで見えるレジストレーションマークをすることができる。一実施形態では、ハンドヘルドプリンタ100は紫外光源を含み、その紫外光源を選択的に駆動してレジストレーションマークを見せる(reveal)。別の実施形態では、室内プロジェクタ1102は紫外光源を含み、その紫外光源を(ハンドヘルドプリンタ1100とプロジェクタ1102との間の通信を介して)選択的に駆動してレジストレーションマークを見せる。
【0050】
本発明の実施形態の上記の説明は、例示と説明を目的にしたものである。包括的であること、開示した詳細な内容に本発明を限定することを目的としたものではない。上記の教示を考慮して、多くの修正と変形が可能である。例えば、プリントヘッドが1つだけの上記の実施形態は、モノクロプリンタ(単色インク)であると考えてもよい。しかし、当業者には言うまでもないことであるが、ここでの開示をプリントヘッドが4つある場合に拡張することによりフルカラー印刷が可能である。本発明の範囲はこの詳細な説明により限定されるのではなく、本出願の特許請求の範囲により限定される。当業者には言うまでもなく、本発明はその精神と本質的特徴から逸脱することなく、他の具体的な形式に化体させることができる。同様に、モジュール、ルーチン、機能、属性、方法その他の態様の具体的な名称や分け方は必須でも重要でもなく、本発明を実施するメカニズムや機能の名称、分け方、フォーマットは異なるものであってもよい。さらに、当業者には言うまでもなく、本発明のモジュール、ルーチン、機能、属性、方法、その他の態様は、ソフトウェア、ハードウェア、ファームウェア、またはこれらの任意の組合せとして実施することができる。もちろん、本発明のコンポーネント(例えばモジュール)がソフトウェアとして実施された場合、そのコンポーネントはスタンドアロンのプログラムとして、大きなプログラムの一部として、複数の個別プログラムとして、静的または動的にリンクされたライブラリとして、カーネルロードモジュールとして、デバイスドライバとして、及び/またはコンピュータプログラミングの当業者が現在または将来知り得るその他の任意の方法として実施することができる。また、本発明は、特定のプログラミング言語や特定のオペレーティングシステムや環境における実装に決して限定されない。従って、本発明の開示は、本発明の範囲を例示することを目的とするものであり、限定することを目的とはしていない。本発明の範囲は特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明によるハンドヘルドプリンタの第1実施形態を示す上後面斜視図である。
【図2】本発明によるハンドヘルドプリンタの第1実施形態を示す側面図であり、ディスプレイはリトラクト(retracted)位置にあり、プリントヘッドは印刷位置からリトラクト位置に移動しつつある。
【図3】本発明によるハンドヘルドプリンタの第1実施形態を示す側面図であり、ディスプレイは第2の位置にあり、プリントヘッドは印刷位置にある。
【図4】本発明によるハンドヘルドプリンタの第1実施形態を示す底面図である。
【図5】本発明によるハンドヘルドプリンタの第1実施形態を示す背面図である。
【図6】本発明によるハンドヘルドプリンタのコンピューティングシステムの一実施形態を示すブロック図である。
【図7】本発明によるハンドヘルドプリンタのコンピューティングシステムのメモリの一実施形態を示すブロック図である。
【図8】本発明によるハンドヘルドプリンタの一実施形態を示す概念的ブロック図である。
【図9】ハンドヘルドプリンタを用いた本発明による印刷方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図10】本発明によるハンドヘルドプリンタの第2実施形態を示す概念的ブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
120 ディスプレイ装置
126 プロジェクタ
140、142 位置検出センサ
602 プロセッサ
604 メインメモリ
606 データ記憶装置
610 入力ボタン
614 プリントヘッド制御部
616 画像キャプチャ装置
618 通信モジュール
620 制御部
702 オペレーティングシステム
704 制御モジュール
706 投影モジュール
708 印刷制御モジュール
710 ユーザ通信・表示モジュール
712 カメラ制御モジュール
714 通信制御モジュール
802 ユーザインターフェイス
812 電源
814 メニュー
816 スケーリングノブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文書印刷装置であって、
ハンドヘルドのポータブルハウジングと、
前記ポータブルハウジングにマウントされた印刷を制御するコントローラと、
印刷する文書の画像を投影する、前記ポータブルハウジングにマウントされたプロジェクタと、
前記コントローラからの信号に応じてインクを吐出する、前記ポータブルハウジングにマウントされ前記コントローラに結合した印刷ヘッドとを有する装置。
【請求項2】
前記プロジェクタは、前記装置の動きに応じて前記投影画像を調整する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
位置検出センサをさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記位置検出センサは複数の光学センサである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ポータブルハウジングはハンドルサイズであり、人間が手で握れる形状である、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
印刷する文書の第2の画像を表示する、前記ポータブルハウジングに取り付けられ前記コントローラと通信するように構成されたディスプレイ装置をさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ディスプレイ装置は、第1のリトラクトポジションから第2の動作ポジションに動けるように前記ポータブルハウジングに取り付けられた、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記コントローラと通信するように構成された画像キャプチャ装置をさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記画像キャプチャ装置は前記装置の一部であり、前記ポータブルハウジングにマウントされ前記装置が置かれる表面の画像をキャプチャする、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記画像キャプチャ装置は前記装置の外部にあり、前記装置が置かれる表面の画像をキャプチャするようにマウントされた、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
投影画像を一定の位置にロックする、前記コントローラと通信するように構成された入力装置をさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記プリントヘッドにインクを吐出させる、前記コントローラと通信するように構成された入力装置をさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
印刷される画像の投影調整する、前記コントローラと通信するように構成された入力装置をさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
前記入力装置は、投影画像のサイズと位置を制御するスクロールダイアルである、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記装置の動きに応じて印刷された投影画像の部分を決定する、前記位置検出センサと結合され前記入力装置に応答するレジストレーションモジュールをさらに有する、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
表面の未印刷領域上にインクを吐出させる、前記入力装置、コントローラ、及びプリントヘッドと通信するように構成された印刷モジュールをさらに有する、請求項12に記載の装置。
【請求項17】
前記コントローラと通信するように構成された通信インターフェイスをさらに有する、請求項1に記載の装置。
【請求項18】
印刷された画像の部分を検出する、前記画像キャプチャ装置及び前記コントローラと通信するように構成された画像プロセッサをさらに有する、請求項9に記載の装置。
【請求項19】
ハンドヘルドプリンタを用いた印刷方法であって、
印刷する画像を目標表面上に表示する段階と、
前記ハンドヘルドプリンタの動きを検出する段階と、
前記ハンドヘルドプリンタの動きに応じてインクを吐出する段階とを有する方法。
【請求項20】
前記ハンドヘルドプリンタの動きに応じて前記画像の表示を動かす段階、または前記入力画像の動きに応じて前記画像の表示のサイズを変更する段階をさらに有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記画像を表示する段階は、前記画像の表示をトリミングする段階をさらに有する、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記ハンドヘルドプリンタに隣接した表面の画像をキャプチャする段階をさらに有する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
印刷された画像の部分と元の出力画像との間の差異を決定する段階をさらに有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
表示された画像の表示特性に関する入力を受け取る段階と、
前記入力に応じて前記画像の表示を修正する段階とをさらに有する、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記表示特性に関する入力はスクロールホイールから受け取る、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記表示された画像の印刷された部分を決定する段階と、
前記吐出する段階を選択的に制御して、前記部分以外の前記表面の領域上にインクを吐出する段階とをさらに有する、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
通信インターフェイスを介して画像を受信する段階をさらに有する、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
画像キャプチャ装置を用いて、印刷する画像をキャプチャする段階をさらに有する、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
目標表面の表面画像をキャプチャする段階と、
インクの吐出を制御するために前記表面画像を処理する段階とをさらに有する、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
目標表面から前記ハンドヘルドプリンタを離す段階と、
目標表面上に前記画像の表示を再度レジストレーションする段階とをさらに有する、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−94101(P2008−94101A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265847(P2007−265847)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】