説明

バイオシーリング

本発明は、地質学的構造物または地質学的物質を含む構築物における漏れを修復するための方法であって、嫌気性細菌のためのエネルギー源および多価金属イオンを含む液体栄養組成物を漏れの上流に投与すること、構造物または構築物中に存在する微生物にエネルギー源を発酵させ、かつ増殖させ、それによって漏れの中および/または周囲のバイオマスを増加させること、漏れの上流に無機粒子を放出すること、無機粒子を漏れの方へ移動させること、および無機粒子をバイオマス中に据えることを含む方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下層土構築物および/または地質学的構造物または、地質学的物質を含む構築物における漏れを修復するための方法に関する。本発明はさらに、液体栄養組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
オランダ国特許第1,022,510号は、細菌の増殖によって漏れを塞ぐように、細菌のための栄養を施与することによって地下構築物における漏れを塞ぐ方法を記載する。任意的に塩および水酸化物溶液を施与して、漏れの中または近くに沈殿させることができる。そのような方法を制御することは困難であるとわかった。
【0003】
英国特許出願第2,222,420号においては、細菌を使用して、石油生産貯蔵器からの石油回収率を高める。特定の細菌の胞子を、石油生産貯蔵器へ導入する必要がある。細菌を使用して地質学的構造物または地質学的物質を含む構築物における漏れを修復することが開示される。
【0004】
英国特許出願第2,222,420号の方法においては、石油貯蔵器の周りの透過性が、バイオマスの増殖およびエキソポリマー(exopolymer)の形成によって変えられる。英国特許出願第2,222,420号には、漏れの上流に無機粒子を放出すること、粒子を漏れの方へ移動させることおよび、無機粒子を、細菌により形成されたバイオマス中に据えることは開示されていない。ポリマーが生物分解性であり、かつ/または一旦栄養の投与が止まったなら微生物はどこへいくのかわからないので、本発明者らは、バイオマスおよびエキソポリマーは比較的短い期間についてのみ有効であると結論を下した。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の目的は、地質学的構造物、下層土構築物および/または地質学的物質を含む構築物における漏れを修復するための新規な方法を提供することである。
【0006】
特に本発明の目的は、構造物における透水性が低下されるそのような方法を提供することである。
【0007】
本発明に従い解決することができる1つ以上の他の目的は、本発明の説明および/または特許請求の範囲から明らかである。
【0008】
微生物および無機粒子が使用される特定の処置の組合せによって、地質学的構造物または地質学的物質を含む構築物における漏れを修復することが可能であると、ここでわかった。
【0009】
したがって、本発明は、地質学的構造物または地質学的物質を含む構築物における漏れを修復する方法に関する。
- 漏れの上流に、嫌気性細菌のためのエネルギー源を含む液体栄養組成物を投与することおよび、多価金属イオンを含む液体であって、栄養組成物であり得る液体を投与すること;
- 該構造物または構築物中に存在する微生物をして炭水化物を発酵させ、かつ増殖させ、それによって漏れの中および/または漏れの周りにバイオマスを増加させること;
- 漏れの上流に無機粒子を放出すること;
- 無機粒子を漏れの方へ移動させること;ならびに
- 無機粒子をバイオマス中に据えること。
【0010】
必要ではないが、多価金属イオンが栄養組成物中に存在することが、実際的な理由のために好ましい。別々の液体として投与されるなら、好ましくは、栄養組成物と一緒に同時に、またはその後で投与される。
【0011】
栄養組成物は通常、少なくとも1種の有機エネルギー源、好ましくは少なくとも1種の、炭水化物(特に糖、例えばグルコースまたはシュークロース、多糖、例えばデンプン(これは、(部分的に)分解されていることができる))、アミノ酸およびペプチド(特にポリペプチド、例えばタンパク質)から選択されるエネルギー源を含む。さらに好ましくは、有機エネルギー源の少なくとも一部分は糖である。
【0012】
バイオマスの好ましい増殖のためには、栄養組成物は通常また、1種以上の栄養アニオンを含む。栄養アニオンは特に、細菌により転化されることができるか、またはさもなければ増殖するのに使用することができるアニオンである。その好ましい例は、無機アニオン、例えば硝酸イオン(脱窒細菌によって使用される)およびリン酸イオンである。そのようなイオンは特に、少なくとも0.1g/l、より特には0.2〜8g/lの合計濃度で使用することができる。
【0013】
(漏れの)「上流」という位置は一般に、そこから液体が漏れの方向へ流れ得る位置を示すように使用される。特に、それは、地下水の流れ方向に関連する。
【0014】
「漏れ」は、本明細書においては、周りの領域に比べて透水性が増加される構造物内の区域として定義される。特に、透水性は、100倍より上の高さであり得るか、または1000倍より上の高さでさえあり得る。
【0015】
「漏れを修復する」とは一般に、自然の原因または自然でない原因により透水性が増加される区域(漏れ)を通る水の流れを減らすことを意味する。
【0016】
本発明によれば、(漏れが存在する)構造物または構築物(の規定領域)中の透水性を2倍以上減らすことが可能だとわかった。好ましくは透水性は10倍以上、特に30倍以上減らされる。50倍またはそれ以上の減少さえ可能である。漏れが完全に塞がれないとしても、上記した減少のいずれかに至る修復は一般に有益であることが注目される。というのは、漏れの下流での溢れまたは氾濫を避けるために、そのことは漏れを通る流れの著しい減少に至り、それによって、漏れの下流で排出される必要のある液体の量の著しい減少に至るからである。そのような減少はまた、あるいは汚染した地下水の流れを減らすのに有効であり得る。
【0017】
本発明はさらに、栄養組成物および/または他の組成物を、漏れから比較的長い距離で、例えば約10mまたはそれ以上ですらある比較的長い距離で、投与することができることにおいて、利点を提供する。もちろん、そのような組成物は、漏れのより近くで投与することができる。
【0018】
本発明は、長期間透水性を減少させるのに適当であることがさらに見出された。かくして本発明は特に、持続可能な修復のために適当である。透水性の減少は、一年を越えて続くことができる。本発明は、10年以上の期間、25年以上、50年以上または80年以上の期間さえ漏れの部分的または全部の詰めを可能にすることが予見される。特に、漏れに無機粒子を導入することは、持続可能な修復に大きく寄与することが予想される。というのはこれらは、バイオマス、特にその中のエキソポリマーが少なくとも実質的な程度まで分解した後にまた、有効であるままでいることができるからである。
【0019】
したがって、本発明はさらに、本明細書において定義される液体栄養組成物を、地質学的構造物または地質学的物質を含む構築物の透水性を減らすために使用することに関する。
【0020】
本発明はさらに、本明細書において定義される多価金属イオンを含む液体を、地質学的構造物または地質学的物質を含む構築物中に無機粒子を固定するために使用することに関する。多価金属イオンは、短期間の修復よりむしろ、持続可能な修復を達成することに関して特に重要であると考えられる。
【0021】
さらには、本発明は、1価カチオンの塩、例えば本明細書において定義されるような1価カチオンの塩を含む組成物を、地質学的構造物または地質学的物質を含む構築物中に無機粒子を移動させるために使用することに関する。
【0022】
本発明の利点は、漏れが、地質学的物質に対して自然の成分から本質的になる物質によって、すなわち、腐食した無機物、例えば構造物または構築物中に天然に存在する微生物で形成されたバイオマス中に取り込まれた長石、雲母またはクレーによって、およびその場で(in situ)形成された無機物凝塊によって、部分的または完全に詰められることができることである。
【0023】
地質学的構造物という語は好ましくは、砂利、砂、粘土および/もしくは泥炭を含む(地下)層またはピート層および/または割ったかもしくは継ぎ合わせた岩石である。
【0024】
本発明に従って適当に処理することができる構築物は特に、地質学的物質、例えば砂、泥炭、粘土、ピートまたはそれらの組合せを含む構築物である。本発明は特に、ダムまたは堤防の中または下、トンネルの中または近く、地下空間(例えば地下駐車場または地下室)、シートパイルまたはダイヤフラム壁、ジオメンブラン構築物、水管または下水道での漏水を減らすのに適当である。コンクリートおよび/またはセメントを含む構築物をまた、本発明に従い処理することができる。本発明はまた、異なる帯水層、被圧井戸および配管間の自然の接続の処理のために有用である。
【0025】
酸性、中性および/またはアルカリ性の物質を含む構造物/構築物を処理するために使用することができることが、本発明の利点である。
【0026】
液体栄養組成物を投与する前に、通常水文学的影響領域が明確にされ、そこにおいて、透水性が減少され/漏れが修復されるべきである。水文学的領域は、従来公知のやり方で、例えばテクスプロール-ベネルクスのテクスプロール法(Texplor technique ofTexplore-Benelux)(パペンドレヒト(Papendrecht)、オランダ国;例えばパンフレット:Geofysische Lekdetectie ECR(商標)/EFT(商標)met multisensorentechnologieまたはウェブサイトwww.texplore-benelux.nl/参照)によって、決定することができる。
【0027】
本発明は通常、構造物/構築物に細菌を添加することなく行うことができる。というのは、これらは通常天然にその中に存在するからである。所望なら、細菌、特にエネルギー源を発酵させることができる細菌を投与することができる。好ましい細菌としては、クロストリジウム(Clostridium)、バクテリオデス(Bacteriodes)、エウバクテリウム(Eubacterium)、ペプト(ストレプト)コッカス(Pepto(strepto)coccus)およびラクトバシルス(Lactocacillus)を包含する。
【0028】
本発明の基礎をなすメカニズムは、生物学的、物理学的および地質学的段階の組合せを含むことが予想される。
【0029】
栄養組成物は、透水性を減少させることにおいて重要な要因であることがわかった。理論に束縛されることなく、構造物/構築物におけるエネルギー源の発酵の結果、酸が形成され、これは今度は、地質学的物質中に存在する無機粒子を腐食させることに寄与することが予想される。特に粘度無機物は、非常に効率的に腐食され得る。エネルギー源、例えば炭水化物、アミノ酸または(ポリ)ペプチドの発酵中、通常1種以上の有機酸(例えば酢酸)が形成され、細菌が増殖する。有機酸は今度は、(他の)細菌によって消化されることができ、この細菌はまた増殖される。かくして、バイオマス/バイオスライムが、特に漏れの中および/または漏れの近くに形成される。というのは、この区画では、栄養組成物の流れが比較的高いからである。その場で(in situ)形成された腐食された粒子は、漏れの方向に移動させられ、そこで、それらはバイオマス中に捕らえられる。発酵が十分に進むにつれて、特に(ほとんど)完了するにつれて、無機粒子は沈殿/凝集/凝固することが予想される。エネルギー源が枯渇してくるにつれて、pHは再び上昇し得る。多価イオン(例えば鉄(II)、鉄(III)、カルシウムイオンおよび/またはマグネシウムイオン)の存在は、透水性を減らすのに有利であることがさらにわかった。
【0030】
pHが上昇した後、イオンが粒子の表面に付着し、その電気二重層を還元し、粒子の沈殿/凝集/凝固を助けると思われる。
【0031】
多価金属イオンを使用しない匹敵する方法に比べて、金属イオン(カルシウム、鉄、マグネシウム)の存在は、持続可能な(長期間の)透水性の減少を作るのに重要であることが、さらにわかった。
【0032】
栄養組成物および、多価金属イオンを含む液体(好ましくは同じ組成物)は好ましくは水性組成物である。好ましくは水道水または地下水が、液体担体として使用される。
【0033】
水の濃度は好ましくは、全組成物の95〜99.8重量%である。
【0034】
エネルギー源、特に炭水化物(混合物)の濃度は、通常0.02〜5重量%の範囲、特に0.2〜5重量%の範囲にある。特に、塩水または半塩水の帯水層中での使用のためには好ましくは、少なくとも1.0重量%である。特に、(淡水の)地下水帯水層のためには、好ましくは0.5重量%以下である。濃度は、構築物または構造物中の地質学的物質に依存して、うまく適合させることができる。比較的細かい無機物のためには、比較的低濃度が好ましく、比較的粗い無機質のためには、比較的高い濃度が好ましい。かくして、濃度は、1.0重量%まで、0.5重量%まで、または0.25重量%までで選択することができるか、または濃度は、少なくとも1.0重量%または少なくとも2重量%であると選択することができる。
【0035】
(栄養組成物および/または別の液体中の)多価金属イオンの濃度は通常、0.1〜5グラム/リットルの範囲にある。塩水または半塩水の帯水層中での使用のためには好ましくは、少なくとも2グラム/リットルである。淡水の帯水層における使用のためには、好ましくは1.5グラム/リットル以下である。好ましい金属イオンとしては、Ca、MgおよびFeイオンを包含し、その組合せを含む。対イオンは、十分に溶解性の塩に至る任意のイオンであることができ、特に、ハロゲン、特に塩化物イオンおよび硫酸イオンから選択することができる。硫酸イオンは、金属イオンと共に漏れの場所またはその近くで沈殿し得る、スルフィドの形成下で、硫酸イオン還元細菌によって使用され得ることにおいて有利である。
【0036】
好ましくは有機酸は、一次エネルギー源、例えば炭水化物、アミノ酸および/または(ポリ)ペプチドのほかに、二次エネルギー源として存在する。好ましい有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、蟻酸(formiate)および酪酸を包含する。これらは、ある種の細菌、特に硫酸イオンを還元することができる細菌のためのエネルギー源としてふるまうことができる。有機酸濃度は、好ましくは0.1〜2g/lの範囲、さらに好ましくは0.5〜1.5 g/lの範囲、特に約1 g/lである。
【0037】
栄養組成物および/または多価金属イオンを含む液体および/または無機粒子を放出するための塩溶液の密度が、水文学的影響領域内の地下水の密度とほぼ同じである場合に、効率(特別の減少を得るために必要とされる栄養組成物の量)が改善されることがわかった。1つ以上の該液体間の密度の差が最大±15%([地下水密度−液体密度]/地下水密度として計算した)、好ましくは最大±10%である方法を用いると、良好な結果が達成された。所望なら、密度は、適当な添加剤を添加することによって変えることができる。例えば塩を使用して、密度を上げることができる。密度を低下させることは、例えば地下水より低い密度を有する水(通常、地下水より低いイオン強度を有する水、例えば水道水または、地下水が塩水である場合には淡水)で液体を希釈することによって達成することができる。
【0038】
理論に束縛されることなく、適合する密度を有する組成物は、地下水によってより容易に、またはより効率的に、漏れの方へ持っていかれることが予想される。
【0039】
ハーク(Haake)ロトビスコメーター試験によって決定することができる12℃での栄養組成物の粘度が10mPa.秒以下、好ましくは1〜5mPa.秒である栄養組成物を使用することが有利であるとさらにわかった。エネルギー源および/または多価イオンを
定量的におよび/または定性的に選択することによって粘度を変えることがまた可能である。例えば、より高い粘度のためには、ポリマーのエネルギー源(デンプン、オリゴ糖)を含むことができる。多価金属イオンはまた、特にポリマーと組合せて、粘度に影響を及ぼすことができる。適当な粘度および成分の選択は、通常の一般的な知識および本発明の説明に基づいて慣例的に決定することができる。
【0040】
栄養組成物は、微生物を増殖させるために微生物に十分な栄養を与えるのに十分な持続期間、連続的または断続的に投与することができる。
【0041】
栄養組成物は、例えば1週間に少なくとも1回程度、好ましくは毎週少なくとも4回程度、通常規則正しい間隔で投与することができる。投与期間は、通常少なくとも2週間である。好ましくは投与は、2〜4週間の期間断続的にまたは連続的に行われる。栄養組成物が毎日少なくとも1回程度投与される方法を用いると、良好な結果が達成された。添加される液体栄養の量は、処理される領域に依存する。しかしながら、指針として、毎投与(注入)は通常、処理される土壌の孔空間の体積の少なくとも25%、好ましくは少なくとも50%である。通常150%以下の体積が、良好な結果のためには十分である。好ましくは100%までの体積が、投与当たり使用される。
【0042】
無機粒子の放出は、カチオン、例えばプロトン(およびH3O+)および/または1価カチオン、例えばカリウムおよび/またはナトリウムの存在によって促進され得る。プロトン/H3O+は、エネルギー源の発酵の結果として、その場で(in situ)形成される。1価カチオンは、栄養溶液中に存在するか、または別々に塩溶液として投与することができる。対イオンは、十分に溶解性である塩を生じる任意のイオンであることができる。特に適当なものは塩化物イオンである。1価カチオンは粒子に付着し、その表面電荷を還元し、すると、粒子はより可動になり、地下水の流れの中の漏れの方へ移動することができ、そこで、粒子はバイオマス中に捕らえられ、2価イオン、例えばカルシウム、マグネシウム鉄等の存在下で凝集/凝固/沈殿させられることが予想される。1価カチオンはこのプロセスを触媒することができることがさらに予想される。
【0043】
有利な実施態様においては、1価カチオンの塩を含む塩溶液が、栄養組成物の投与後に投与される。多価カチオンを含む液体が、栄養組成物と別々に投与されるなら、1価カチオンの塩を含む塩溶液は好ましくは、多価カチオンを含む液体の後に(および、微生物にエネルギー源の少なくとも一部分を発酵させ、それによってpHを低下させかつ地質学的物質を腐食させ、無機粒子を放出させた後に)投与される。
【0044】
塩溶液は好ましくは、地下水の密度とほぼ同じである密度を有する。粘度は好ましくは、1〜5mPa.秒である。
【0045】
塩溶液中の1価カチオンの塩の濃度は、通常0.5〜10g/lの範囲で選択される。該塩の濃度は、好ましくは少なくとも0.8g/l、特に少なくとも約1.0g/lである。該塩の濃度は、好ましくは5g/l以下、特に2 g/l以下である。
【0046】
塩溶液は、連続的または断続的に投与することができる。好ましくは塩溶液は、例えば12〜60時間の範囲、特に24〜48時間の範囲の間隔を置いて、断続的に投与される。好ましくは塩溶液は、少なくとも大部分の栄養組成物の投与後に、特に各栄養組成物の投与後に投与される。
【0047】
有利な実施態様においては、栄養組成物、多価カチオンを含む液体の投与後に、および/または(もし投与されるなら)1価カチオン塩溶液の投与後に、水が構造物または構築物に投与される。このことは、漏れの上流で栄養組成物(および他の溶液)の容易な投与を可能にするために、構造物または構築物を漏れの上流で十分に透水性に保持することに関して、有利であるとわかった。
【0048】
本発明はさらに、地質学的物質、例えば粘土、砂、泥炭等中に見出される細菌のための液体栄養組成物であって、
- 水;
- 0.2〜5g/lの合計濃度で、好ましくは炭水化物、アミノ酸、ペプチドおよびそれらの組合せから選択される、有機エネルギー源;
- 0.1〜5g/lの合計濃度で、好ましくはマグネシウムイオン、カルシウムイオン、鉄イオンおよびそれらの組合せから選択される、多価金属イオン;
- 0.1〜8g/l、特に0.2〜6g/l、さらに特に0.3〜4g/lの合計濃度で、好ましくは硝酸イオン、リン酸イオンおよびそれらの組合せから選択される、栄養(無機)アニオン;ならびに、任意的に
- 0.1〜2g/lの濃度で有機酸
を含む組成物に関する。
【0049】
そのような組成物は、特に本発明の方法において、地質学的構造物または地質学的物質を含む構築物の透水性を減らすために特に適当である。
【0050】
(淡水の地下水において使用するための)水の含量は、通常少なくとも約940 g/l、好ましくは少なくとも960 g/l、さらに好ましくは少なくとも975 g/lである。(半塩水または塩水の地下水において使用するための)水の含量は、通常少なくとも約920 g/l、好ましくは少なくとも940 g/l、さらに好ましくは少なくとも955 g/lである。
【0051】
任意的に1価カチオンの塩、特にNaClが、特に処理されるべき領域の地下水が半塩水かまたは塩水である場合に、存在することができる。NaCl濃度は好ましくは、処理されるべき地下水中とほぼ同じである。そこで、存在するなら、それは通常約1mg/l(低ナトリウム、淡水)〜約15g/l(高い塩含量を有する海水)の範囲、特に約10mg/l〜約10g/lの範囲である。特に淡水用途のためには、NaClは通常1g/l未満である。
【0052】
他の好ましい特徴は、本発明の方法について議論したときに、先に明らかにしたのと同様である。
【0053】
以下の実施例によって本発明をここで説明する。
実施例1
20フィートのシーコンテナを、コンテナの底に0.08m直径を有する6個の穴をあけた後、土中に埋め込み、掘り出した砂を入れた。図1は、構成を概略的に示す。漏れ2を有するコンテナ1が土中に配置される。その上流に、貯蔵タンク5中の栄養組成物3が土中にポンプで送られる。矢印6は、それによって、土(7)中に注入される栄養組成物が漏れに向かって流れる地下水の流れを示す。他の液体(例えば水)が同様の方法で投与される(示されず)。
【0054】
漏れを通る流れは、+3.73mNAP〜+4.86NAPで変化する地下水の液面に依存して、7.5〜9.7m3/日であると決定された(NAPは、「ノルマール アムステルダムス ペイル(Normaal AmsterdamsPeil)」で、海抜を定義するためのオランダ規格であり、0 NAPは(ほぼ)海水面である)。
【0055】
構成は、図1に概略的に示される。
【0056】
以下の表に示されたように、1.5g/lの炭水化物および500ppmの多価カチオン(アベベ(Avebe)、フォックスホール(Foxhol)、オランダ国から入手可能なNutrolaseに基づく)を含む濃縮された栄養組成物を水道水で希釈し、漏れの約2.5m上流に位置するスタンドパイプを通してコンテナに投与した。投与の管理形態は、以下の表に示す。毎投与後に、水を投与した。
【0057】

【0058】
1:5に希釈した濃縮物の粘度は、地下水の粘度の約2倍高く、このことは、漏れの中または漏れの近くの微生物に対して栄養溶液を放出することに関して不都合であったと結論された。他の希釈物は、地下水の粘度とより接近して適合しており(約1%低い粘度)、より良い放出を可能にした。
【0059】
1:40希釈物および1:50希釈物の密度は、地下水の粘度により接近して適合し、これはまた、栄養と地下水流との比較的均質な混合に関して有利であるとわかった。
【0060】
漏れを通る流れは毎日決定され、その日の透水性で最初の透水性を割ることによって、詰まりの程度(透水性の減少率)が決定された。毎日の地下水流の変動についての補償を可能にするために、コンテナの外の地下水流をまた監視した。これらの補償を考慮して、透水性は、栄養組成物の最初の投与から45日後に5倍減少し、栄養組成物の最初の投与から69日後に30倍減少した。
【0061】
さらに、pHの低下および有機酸の発生が2004年4月2日から観察され、このことは、物質中に天然に存在する微生物が、栄養組成物を発酵するのに有効であったことを示す。
【0062】
また漏れを含む異なるコンテナに、栄養組成物を投与しなかった。透水性を2ヶ月間監視した。いかなる有意の詰まりも観察されなかった。
【0063】
実施例2
ポルダーの湿った土(ピート)中に作られた水管に漏れを検出した。水管は水中用コンクリートを用いて作られていた。コンクリートの床の下に、粗い砂利および砕かれた岩石の層が堆積していた。半塩水の地下水が、更新世の水を有する層から上方へ染み出したことがわかった。漏れは、表面で局所的出水に至る。さらに、ポルダーは、半塩水になってきた。
【0064】
(テクスプロア(Texplor)法を用いた)ECRおよびEFT測定によって、幾つかの漏れが検出された。水管の区画の仕切りの近くに、1つの漏れがみつかった。水管の近くの地質学的構造物の一部分を形成する、基部のピート層中にさらに多数の漏れが検出された。また漏水の水流が、ダム壁の近くで検出された。
【0065】
200リットルの栄養組成物(硝酸イオン、リン酸イオン(共に、約2グラム/リットルの濃度)、カルシウムイオンおよび鉄イオン(共に、約1グラム/リットルの濃度)を補足された1:40体積/体積のNutrolase/水混合物)の15回の注入を3週間の期間にわたって(毎作業日)、区画の仕切りの近くの漏れのだいたいの位置の1〜2日上流に投与した。栄養組成物の毎回の注入後に、200リットルの水を注入した。
【0066】
図2は、最初の注入後、開始4日間の漏れを通る流れを示す。最初の注入から1ヶ月以内に、流れは10%より多く減らされたことが示される。
【0067】
区画の仕切り近くの漏れおよびピート層中の漏れの1つは塞がれたと結論を下された。残りの流れは、あるいは基部のピート層中の穿孔と組み合わされた、ダム壁の近くの漏水の流れによって引き起こされた。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、本発明の方法の作業を説明するための試験において使用される構成を概略的に示す。
【図2】図2は、本発明の方法を行うことによって実現される、水管での漏れを通る水流の減少を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地質学的構造物または地質学的物質を含む構築物における漏れを修復する方法であって、
- 漏れの上流に、嫌気性細菌のためのエネルギー源を含む液体栄養組成物を投与することおよび、多価金属イオンを含む液体であって、上記液体栄養組成物と同じであることができる液体を投与すること;
- 該構造物または構築物中に存在する微生物をして該エネルギー源を発酵させ、かつ増殖させ、それによって漏れの中および/または漏れの周りにバイオマスを増加させること;
- 漏れの上流に無機粒子を放出すること;
- 該無機粒子を漏れの方へ移動させること;ならびに
- 該無機粒子をバイオマス中に定着させること
を含む方法。
【請求項2】
栄養組成物が、有機エネルギー源および栄養アニオンを含み、アニオンが好ましくは栄養無機アニオンであり、さらに好ましくは硝酸イオン、リン酸イオンおよびそれらの組合せからなる群より選択される請求項1記載の方法。
【請求項3】
無機粒子が、地質学的物質から無機粒子を放出するのに有効な量で1価カチオンを含む塩溶液を投与することによって、その場で(in situ)放出される請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
塩溶液が、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンから選択される少なくとも1種の1価カチオンを含む請求項3記載の方法。
【請求項5】
1価カチオンの塩の濃度が、0.5〜10g/l(好ましくは0.8〜5g/l)の範囲にある請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
栄養組成物、多価金属イオンを含む液体および/または無機粒子を放出するための塩溶液の密度が、水文学的影響領域内の地下水の密度とほぼ同じである請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
栄養組成物のエネルギー源含量が0.02〜5重量%(特に0.2〜5重量%)である請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
多価金属イオンを含む液体の多価金属イオン濃度が0.1〜5g/lである請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
多価金属イオンが、カルシウムイオン、マグネシウムイオンおよび鉄イオンからなる群より選択される請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
栄養組成物が、炭水化物(特にグルコース、グルコース含有糖、グルコース含有オリゴ糖およびグルコース含有多糖)、アミノ酸、(ポリ)ペプチド(特にタンパク質)および有機酸から選択される少なくとも1種の有機栄養成分を含む請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
栄養組成物、多価金属イオンを含む液体および/または1価カチオンを含む塩溶液の12℃での粘度が、10mPa.秒以下である請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
地質学的構造物または構築物が、砂利、粘土、砂、泥炭、ピートおよび、破砕もしくは接合された岩石形成物からなる群より選択される少なくとも1種の成分を含む請求項1〜11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
構造物または構築物が、ダム、堤防、トンネル、地下駐車場、地下室、シートパイル壁、ダイヤフラム壁、ジオメンブラン、建物、下水道および帯水層(異なる帯水層間の天然の結合)からなる群より選択される請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
地質学的物質中の細菌のための液体栄養組成物であって、
- 水;
- 0.2〜50g/lの合計濃度で、炭水化物、アミノ酸およびペプチドから選択される少なくとも1種の有機エネルギー源;
- 0.1〜5g/lの合計濃度で、マグネシウムイオン、カルシウムイオンおよび鉄イオンから選択される少なくとも1種の多価金属イオン;
- 0.1〜8g/lの合計濃度で、好ましくは硝酸イオンおよびリン酸イオンから選択される、少なくとも1種の栄養アニオン;ならびに、任意的に
- 0.1〜2g/lの濃度で少なくとも1種の有機酸
を含む液体栄養組成物。
【請求項15】
請求項1、2、7、8、9、10、11または14のいずれか1項記載の液体栄養組成物を、地質学的構造物または地質学的物質を含む構築物の透水性を減少させるために使用する方法。
【請求項16】
請求項2〜6または14のいずれか1項に記載されているような1価カチオンの塩を含む組成物を、地質学的構造物または地質学的物質を含む構築物中で無機粒子を可動化させるために使用する方法。
【請求項17】
請求項1、2、6、8、9または14のいずれか1項に記載されているような多価金属イオンを含む液体を、地質学的構造物または地質学的物質を含む構築物中に無機粒子を固定するために使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−536243(P2009−536243A)
【公表日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509460(P2009−509460)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050135
【国際公開番号】WO2007/129889
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(508178423)
【Fターム(参考)】