説明

バイト工具を備えた加工装置

【課題】被加工物の旋削面にムシレが生じることなく、チャックテーブルの熱膨張を抑制することができるとともに、被加工物への旋削屑の付着を防止することができるバイト工具を備えた加工装置を提供する。
【解決手段】被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブル52と、チャックテーブル52に保持された被加工物を旋削するためのバイト工具33を備えた旋削手段と、旋削手段によって被加工物を旋削する加工領域において、加工領域を移動するチャックテーブル52に保持された被加工物の旋削面に冷却水を噴出する噴出ノズル61を備えた冷却水供給手段6を具備し、噴出ノズル61は加工領域におけるバイト工具33の回転方向上流側から下流側に向けて冷却水を噴出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を旋削するためのバイト工具を備えた加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップが複数個形成された半導体ウエーハはダイシング装置等によって個々の半導体チップに分割され、この分割された半導体チップは携帯電話やパソコン等の電気機器に広く用いられている。
近年、電気機器の軽量化、小型化を可能にするために、半導体チップの電極に50〜100μmの突起状のバンプを形成し、このバンプを実装基板に形成された電極に直接接合するようにしたフリップチップと称する半導体チップが開発され実用に供されている。また、インターポーザーといわれる基板に複数の半導体チップを併設したり、積層したりして小型化を図る技術も開発され実用化されている。
【0003】
しかるに、上述した各技術は半導体チップ等の基板の表面に複数個の突起状のバンプ(電極)を形成し、その突起状の電極を介して基板同士を接合するため、突起状のバンプ(電極)の高さを揃える必要がある。この突起状のバンプ(電極)の高さを揃えるためには、一般的に研削が用いられている。しかしながら、バンプ(電極)を研削すると、バンプ(電極)が金等の粘りのある金属によって形成されている場合にはバリが発生し、このバリが隣接するバンプ(電極)と短絡するという問題がある。
【0004】
また、半導体チップ等の基板の表面に複数個の突起状のバンプ(電極)を形成する技術として、金等のワイヤーの先端を加熱溶融してボールを形成した後、半導体チップの電極にそのボールを超音波併用熱圧着し、ボールの頭を破断するスタッドバンプ形成法がある。このスタッドバンプ形成法によって形成されたバンプ(電極)は、熱圧着されたボールの頭を破断する際に針状の髭が発生することから研磨することが困難であり、加熱した板をバンプに押し当ててバンプの高さを揃えるようにしている。
【0005】
しかるに、加熱した板をバンプに押し当ててバンプの高さを揃えると、バンプの頭が潰れる際に隣接するバンプと短絡するという問題がある。従って、上記問題を解消するためにバンプの先端部を除去する余分な工程を設けている。
【0006】
上述した問題を解消するために、板状物の表面に突出して形成された複数個の電極の先端部をバイト工具によって旋削して除去する加工装置が提案されている。このバイト工具を備えた加工装置は、被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を旋削するためのバイト工具を備えた旋削手段と、該チャックテーブルと該旋削手段とを該保持面と平行な水平面内において加工送り方向に相対移動せしめる加工送り機構と、該旋削手段を該保持面に対して垂直な切り込み送り方向に移動せしめる切り込み送り機構とを具備し、旋削手段が回転スピンドルと該回転スピンドル下端に装着されたバイト工具装着部材と該バイト工具装着部材に回転軸芯から偏芯した位置に装着されたバイト工具を具備している。(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−327838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、上記特許文献1に開示された加工装置は、加工時におけるバイト工具の冷却が不十分であり、被加工物の旋削面にムシレが生じて被加工物の品質を低下させるという問題がある。
また、加工時におけるバイト工具と被加工物との摩擦熱によりチャックテーブルに僅かな熱膨張が生じて被加工物の加工精度が低下するという問題がある。
更に、被加工物の旋削によって生成される微細な旋削屑がバイト工具と被加工物との摩擦によっては発生する静電気に起因して被加工物に付着し品質を低下させるという問題がある。
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、被加工物の旋削面にムシレが生じることなく、チャックテーブルの熱膨張を抑制することができるとともに、被加工物への旋削屑の付着を防止することができるバイト工具を備えた加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を旋削するためのバイト工具を備えた旋削手段と、該旋削手段によって被加工物を旋削する加工領域において該チャックテーブルを該保持面と平行な水平面内において加工送り方向に移動せしめるチャックテーブル移動機構とを具備し、該旋削手段が回転スピンドルと該回転スピンドル下端に装着されたバイト工具装着部材と該バイト工具装着部材に回転軸芯から偏芯した位置に装着されたバイト工具を具備している、バイト工具を備えた加工装置において、
該加工領域を移動する該チャックテーブルに保持された被加工物の旋削面に冷却水を噴出する噴出ノズルを備えた冷却水供給手段を具備し、
該噴出ノズルは、該加工領域における該バイト工具の回転方向上流側から下流側に向けて冷却水を噴出する、
ことを特徴とするバイト工具を備えた加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明による加工装置は、加工領域を移動するチャックテーブルに保持された被加工物の旋削面に冷却水を噴出する噴出ノズルを備えた冷却水供給手段を具備し、該噴出ノズルは加工領域におけるバイト工具の回転方向上流側から下流側に向けて冷却水を噴出するように構成されているので、被加工物の研削面およびバイト工具に冷却水が供給されるため、バイト工具は十分に冷却され、被加工物の旋削面にムシレが生ずることはない。また、被加工物の旋削面も冷却されるのでチャックテーブルが加熱されることはなく、チャックテーブルが熱膨張することによって生ずる加工精度の低下が防止される。更に、冷却水はバイト工具による加工領域におけるバイト工具の回転方向上流側から下流側に向けて噴出されるので、微細な旋削屑が被加工物の旋削面から洗い流され旋削面に付着することがない。また、冷却水がバイト工具による加工領域におけるバイト工具の回転方向上流側から下流側に向けて噴出されるので、バイト工具に与える水の抵抗が軽減されるため、バイト工具に微振動が発生することがない。更に、バイト工具による加工領域に冷却水が供給され湿式加工されるので、静電気が発生し難くなるため、被加工物への旋削屑の付着を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に従って構成されたバイト工具を備えた加工装置の斜視図。
【図2】図1に示す加工装置に装備される旋削ユニットの斜視図。
【図3】図1に示すバイト工具を備えた加工装置に装備されるチャックテーブル機構およびチャックテーブル移動機構を示す斜視図。
【図4】図1に示す加工装置に装備される冷却水供給手段の噴出ノズルから噴出される冷却水とチャックテーブルに保持された被加工物を旋削するためのバイト工具との関係を示す説明図。
【図5】被加工物としての半導体ウエーハの平面図および要部拡大図。
【図6】図1に示すバイト工具を備えた加工装置による旋削工程の説明図。
【図7】半導体チップに形成されたバンプ(電極)を図1に示すバイト工具を備えた加工装置によって旋削した状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成されたバイトを備えた加工装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1には本発明に従って構成されたバイト工具を備えた加工装置の斜視図が示されている。
図示の実施形態における加工装置は、全体を番号2で示す装置ハウジングを具備している。装置ハウジング2は、細長く延在する直方体形状の主部21と、該主部21の後端部(図1において右上端)に設けられ上方に延びる直立壁22とを有している。直立壁22の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール221、221が設けられている。この一対の案内レール221、221に旋削手段としての旋削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0015】
旋削ユニット3は、移動基台31と該移動基台31に装着されたスピンドルユニット32を具備している。移動基台31は、後面両側に上下方向に延びる一対の脚部311、311が設けられており、この一対の脚部311、311に上記一対の案内レール221、221と摺動可能に係合する被案内溝312、312が形成されている。このように直立壁22に設けられた一対の案内レール221、221に摺動可能に装着された移動基台31の前面には支持部材313が装着され、この支持部材313にスピンドルユニット32が取り付けられる。
【0016】
スピンドルユニット32は、支持部材313に装着されたスピンドルハウジング321と、該スピンドルハウジング321に回転自在に配設された回転スピンドル322と、該回転スピンドル322を回転駆動するための駆動源としてのサーボモータ323とを具備している。回転スピンドル322の下端部はスピンドルハウジング321の下端を越えて下方に突出せしめられており、その下端には円板形状のバイト工具装着部材324が設けられている。なお、バイト工具装着部材324には、バイト工具33が着脱可能に装着される。
【0017】
ここで、バイト工具33のバイト工具装着部材324への着脱構造について、図2を参照して説明する。
バイト工具装着部材324には、回転軸芯から偏芯した外周部の一部に上下方向に貫通するバイト取り付け穴324aが設けられているとともに、このバイト取り付け穴324aと対応する外周面からバイト取り付け穴324aに達する雌ネジ穴324bが設けられている。このように構成されたバイト工具装着部材324のバイト取り付け穴324aにバイト工具33を挿入し、雌ネジ穴324bに締め付けボルト35を螺合して締め付けることにより、バイト工具33はバイト工具装着部材324に着脱可能に装着される。なお、バイト工具33は、図示の実施形態においては超硬合金等の工具鋼によって棒状に形成された断面が矩形のバイト本体331と、該バイト本体331の先端部に設けられたダイヤモンド等で形成された切れ刃332とによって構成したものが用いられている。このように構成されバイト工具装着部材324に装着されているバイト工具33は、上記回転スピンドル322が回転することにより、後述するチャックテーブルの被加工物を保持する保持面と平行な面内で回転せしめられる。
【0018】
図1に戻って説明を続けると、図示の実施形態における加工装置は、上記旋削ユニット3を上記一対の案内レール221、221に沿って上下方向(後述するチャックテーブルの保持面と垂直な方向)に移動せしめる旋削ユニット送り機構4を備えている。この旋削ユニット送り機構4は、直立壁22の前側に配設され上下方向に延びる雄ネジロッド41を具備している。この雄ネジロッド41は、その上端部および下端部が直立壁22に取り付けられた軸受部材42および43によって回転自在に支持されている。上側の軸受部材42には雄ネジロッド41を回転駆動するための駆動源としてのパルスモータ44が配設されており、このパルスモータ44の出力軸が雄ネジロッド41に伝動連結されている。移動基台31の後面にはその幅方向中央部から後方に突出する連結部(図示していない)も形成されており、この連結部には上下方向に延びる貫通雌ネジ穴が形成されており、この雌ネジ穴に上記雄ネジロッド41が螺合せしめられている。従って、パルスモータ44が正転すると移動基台31および移動基台31に装着された旋削ユニット3が下降即ち前進せしめられ、パルスモータ44が逆転すると移動基台31および移動基台31に装着された旋削ユニット3が上昇即ち後退せしめられる。
【0019】
図1および図3を参照して説明を続けると、ハウジング2の主部21の後半部上には略矩形状の加工作業部211が形成されており、この加工作業部211にはチャックテーブル機構5が配設されている。チャックテーブル機構5は、図3に示すように支持基台51とこの支持基台51に配設されたチャックテーブル52とを含んでいる。支持基台51は、上記加工作業部211上に前後方向(直立壁22の前面に垂直な方向)である矢印23aおよび23bで示す方向に延在する一対の案内レール23、23上に摺動自在に載置されており、後述するチャックテーブル移動機構56によって図1に示す被加工物搬入・搬出領域24(図3において実線で示す位置)と上記スピンドルユニット32を構成するバイト工具33と対向する加工領域25(図3において2点鎖線で示す位置)との間で移動せしめられる。
【0020】
上記チャックテーブル52は、ステンレス鋼等の金属材によって円柱状に形成されたチャックテーブル本体521と、該チャックテーブル本体521の上面に配設された吸着チャック52とからなっている。吸着チャック52は多孔質セラミッックスの如き適宜の多孔性材料から構成されており、図示しない吸引手段に連通されている。従って、吸着チャック52を図示しない吸引手段に選択的に連通することにより、上面である保持面上に載置された被加工物を吸引保持する。なお、図示のチャックテーブル機構5は、チャックテーブル52を挿通する穴を有し上記支持基台51等を覆い支持基台51とともに移動可能に配設されたカバー部材54を備えている。
【0021】
図3を参照して説明を続けると、図示の実施形態における加工装置は、上記チャックテーブル機構5を一対の案内レール23に沿って矢印23aおよび23bで示す方向に移動せしめるチャックテーブル移動機構56を具備している。チャックテーブル移動機構56は、一対の案内レール23、23間に配設され案内レール23、23と平行に延びる雄ネジロッド561と、該雄ネジロッド561を回転駆動するサーボモータ562を具備している。雄ネジロッド561は、上記支持基台51に設けられたネジ穴511と螺合して、その先端部が一対の案内レール23、23を連結して取り付けられた軸受部材563によって回転自在に支持されている。サーボモータ562は、その駆動軸が雄ネジロッド561の基端と伝動連結されている。従って、サーボモータ562が正転すると支持基台51即ちチャックテーブル機構5が矢印23aで示す方向に移動し、サーボモータ562が逆転すると支持基台51即ちチャックテーブル機構5が矢印23bで示す方向に移動せしめられる。このように矢印23aおよび23bで示す方向に移動せしめられるチャックテーブル機構5は、図3において実線で示す被加工物搬入・搬出領域と2点鎖線で示す加工領域に選択的に位置付けられる。また、チャックテーブル移動機構56は、加工領域においては所定範囲に渡って矢印23aおよび23bで示す方向、即ち吸着チャック52の上面である保持面と平行に往復動せしめられる。
【0022】
図1に戻って説明を続けると、上記チャックテーブル機構5を構成するカバー部材54の移動方向両側には、横断面形状が逆チャンネル形状であって、上記一対の案内レール23、23や雄ネジロッド561およびサーボモータ562等を覆っている蛇腹手段57および58が付設されている。蛇腹手段57および58はキャンパス布の如き適宜の材料から形成することができる。蛇腹手段57の前端は加工作業部211の前面壁に固定され、後端はチャックテーブル機構5のカバー部材54の前端面に固定されている。蛇腹手段58の前端はチャックテーブル機構5のカバー部材54の後端面に固定され、後端は装置ハウジング2の直立壁22の前面に固定されている。チャックテーブル機構5が矢印23aで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段57が伸張されて蛇腹手段58が収縮され、チャックテーブル機構5が矢印23bで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段57が収縮されて蛇腹手段58が伸張せしめられる。
【0023】
図1を参照して説明を続けると、図示の実施形態におけるバイト工具を備えた加工装置は、加工領域25を移動するチャックテーブル52に保持された被加工物の旋削面に冷却水を噴出する冷却水供給手段6を具備している。この冷却水供給手段6は、加工領域25を移動するチャックテーブル52の移動経路の側方に配設され、加工領域25を移動するチャックテーブル52に保持された被加工物の旋削面に薄板状の冷却水を噴出する噴出口(例えば、横が50mmで縦が1mmの開口)を有する噴出ノズル61を備えている。この噴出ノズル61は、図4に示すように加工領域におけるバイト工具33の矢印33aで示す回転方向上流側から下流側に向けて冷却水を噴出するように配設することが重要である。なお、冷却水供給手段6は、冷却水として純水を供給する。
【0024】
図1に基づいて説明を続けると、装置ハウジング2の主部21における前半部上には、第1のカセット載置領域11aと、第2のカセット載置領域12aと、被加工物仮置き領域13aと、洗浄領域14aが設けられている。第1のカセット載置領域11aには加工前の被加工物を収容する第1のカセット11が載置され、第2のカセット載置領域12aには加工後の被加工物を収容する第2のカセット12が載置されるようになっている。上記被加工物仮置き領域13aには、第1のカセット載置領域11aに載置された第1のカセット11から搬出された加工前の被加工物を仮置きする被加工物仮載置き手段13が配設されている。また、洗浄領域14aには、加工後の被加工物を洗浄する洗浄手段14が配設されている。
【0025】
上記第1のカセット載置領域11aと第2のカセット載置領域12aとの間には被加工物搬送手段15が配設されており、この被加工物搬送手段15は第1のカセット載置領域11aに載置された第1のカセット11内に収納されている加工前の被加工物を被加工物仮置き手段13に搬出するとともに洗浄手段14で洗浄された加工後の被加工物を第2のカセット載置領域12aに載置された第2のカセット12に搬送する。上記被加工物仮置き領域13aと被加工物を被加工物搬入・搬出域24との間には被加工物搬入手段16が配設されており、この被加工物搬入手段16は被加工物仮置き手段13に載置された加工前の被加工物を被加工物搬入・搬出域24に位置付けられたチャックテーブル機構5のチャックテーブル52上に搬送する。上記被加工物を被加工物搬入・搬出域24と洗浄部14aとの間には被加工物搬出手段17が配設されており、この被加工物搬出手段17は被加工物搬入・搬出域24に位置付けられたチャックテーブル52上に載置されている加工後の被加工物を洗浄手段14に搬送する。
【0026】
上記第1のカセット11に収容される加工前の被加工物は、図5の(a)に示すように表面に複数個の半導体チップ110が格子状に形成され半導体ウエーハ10からなっている。半導体ウエーハ10に形成された複数個の半導体チップ110の表面には、それぞれ複数個のスタッドバンプ(電極)120が形成されている。このスタッドバンプ(電極)120は、例えば図5の(b)に示すように半導体チップ110に形成された例えばアルミニウム等からなる電極板130に金ワイヤーを加熱溶融して装着する。このようにして形成された複数個のスタッドバンプ(電極)120は、図5の(b)に示すように針状の髭121が残った状態となるとともに、その高さにバラツキがある。
【0027】
上述したような被加工物を収容した第1のカセット11は、装置ハウジング2の第1のカセット載置領域11aに載置される。そして、第1のカセット載置領域11aに載置された第1のカセット11に収容されていた加工前の被加工物が全て搬出されると、空になったカセット11に代えて複数個の加工前の被加工物を収容した新しいカセット11が手動で第1のカセット載置領域11aに載置される。一方、装置ハウジング2の第2のカセット載置領域12aに載置された第2のカセット12に所定数の加工後の被加工物が搬入されると、かかる第2のカセット12が手動で搬出され、新しい空の第2のカセット12が載置される。
【0028】
図示の実施形態におけるバイト工具を備えた加工装置は以上のように構成されており、以下その作動について主に図1を参照して説明する。
第1のカセット11に収容された加工前の被加工物としての半導体ウエーハ10は被加工物搬送手段15の上下動作および進退動作により搬送され、被加工物仮置き手段13に載置される。被加工物仮置き手段13に載置された半導体ウエーハ10は、ここで中心合わせが行われた後に被加工物搬入手段16の旋回動作によって被加工物搬入・搬出領域24に位置付けられているチャックテーブル機構5のチャックテーブル52上に載置される。チャックテーブル52上に載置された半導体ウエーハ10は、図示しない吸引手段によってチャックテーブル52上に吸引保持される。
【0029】
チャックテーブル52上に半導体ウエーハ10を吸引保持したならば、チャックテーブル移動機構56(図3参照)を作動してチャックテーブル機構5を矢印23aで示す方向に移動し、半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル52を加工領域25に位置付ける。このようにして半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル52が加工領域25に位置付けられたならば、半導体ウエーハ10に設けられた半導体チップ110の表面に形成された複数個のスタッドバンプ(電極)120を旋削して高さを揃える旋削工程を実施する。
【0030】
先ず、回転スピンドル322を回転駆動し、バイト工具33が取り付けられたバイト工具装着部材324を図6において矢印33aで示す方向に例えば6000rpmの回転速度で回転する。そして、旋削ユニット3を下降させバイト工具33を所定の切り込み位置に位置付ける。次に、例えばバイト工具33の切れ刃332の旋削幅が20数μmの場合には、半導体ウエーハ10を保持したチャックテーブル52を図6において実線で示す位置から矢印23aで示すように右方に例えば2mm/秒の送り速度で移動する。この結果、回転スピンドル322の回転に伴って回転するバイト工具33の切れ刃332によって半導体ウエーハ10に設けられた半導体チップ110の表面に形成された複数個のスタッドバンプ(電極)120の上端部が削り取られる。そして、図6において2点鎖線で示すようにチャックテーブル52に保持された半導体ウエーハ10の中心がバイト工具装着部材324の中心位置まで移動することにより、半導体ウエーハ10に設けられた半導体チップ110の表面に形成された複数個のスタッドバンプ(電極)120の全てが、図7に示すようにその先端部が旋削によって除去され、高さが揃えられる(旋削工程)。
【0031】
上述した旋削工程においては、冷却水供給手段6を作動して噴出ノズル61から図4に示すようにバイト工具33による加工領域におけるバイト工具33の矢印33aで示す回転方向上流側から下流側に向けて冷却水を噴出せしめる。なお、冷却水の供給量は、図示の実施形態においては1分間に2リットルに設定されている。この結果、半導体ウエーハ10の旋削面およびバイト工具33に冷却水が供給されるため、バイト工具33は十分に冷却され、半導体ウエーハ10の旋削面にムシレが生ずることはない。また、半導体ウエーハ10の旋削面も冷却されるのでチャックテーブル52が加熱されることはなく、チャックテーブル52が熱膨張することによって生ずる加工精度の低下が防止される。更に、冷却水はバイト工具33による加工領域におけるバイト工具33の矢印33aで示す回転方向上流側から下流側に向けて噴出されるので、微細な旋削屑が半導体ウエーハ10の旋削面から洗い流され旋削面に付着することがない。なお、図示の実施形態においては、冷却水がバイト工具33による加工領域におけるバイト工具33の矢印33aで示す回転方向上流側から下流側に向けて噴出されるので、バイト工具33に与える水の抵抗が軽減されるため、バイト工具33に微振動が発生することがない。
【0032】
上述したように半導体ウエーハ10に設けられた半導体チップ110の表面に形成された複数個のバンプ(電極)120の旋削工程が終了したら、旋削ユニット3を上昇せしめ、チャックテーブル52の回転を停止する。次に、チャックテーブル52を図1において矢印23bで示す方向に移動して被加工物搬入・搬出域24に位置付け、チャックテーブル52上の旋削加工された半導体ウエーハ10の吸引保持を解除する。そして、吸引保持が解除された半導体ウエーハ10は被加工物搬出手段17により搬出されて洗浄手段14に搬送される。洗浄手段14に搬送された半導体ウエーハ10は、ここで洗浄される。洗浄手段14で洗浄された半導体ウエーハ10は、被加工物搬送手段15よって第2のカセット12の所定位置に収納される。
【符号の説明】
【0033】
2:装置ハウジング
3:研削ユニット
31:移動基台
32:スピンドルユニット
321:スピンドルハウジング
322:回転スピンドル
323:サーボモータ
324:工具装着部材
33:バイト工具
331:バイト本体
332:切れ刃
4:旋削ユニット送り機構
44:パルスモータ
5:チャックテーブル機構
51:支持基台
52:チャックテーブル
53:サーボモータ
54:カバー部材
56:チャックテーブル移動機構
57、58:蛇腹手段
6:冷却水供給手段
61:噴出ノズル
11:第1のカセット
12:第2のカセット
13:被加工物仮置き手段
14:洗浄手段
15:被加工物搬送手段
16:被加工物搬入手段
17:被加工物搬出手段
10:半導体ウエーハ
110:半導体チップ
120:バンプ(電極)
130:電極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を備えたチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を旋削するためのバイト工具を備えた旋削手段と、該旋削手段によって被加工物を旋削する加工領域において該チャックテーブルを該保持面と平行な水平面内において加工送り方向に移動せしめるチャックテーブル移動機構とを具備し、該旋削手段が回転スピンドルと該回転スピンドル下端に装着されたバイト工具装着部材と該バイト工具装着部材に回転軸芯から偏芯した位置に装着されたバイト工具を具備している、バイト工具を備えた加工装置において、
該加工領域を移動する該チャックテーブルに保持された被加工物の旋削面に冷却水を噴出する噴出ノズルを備えた冷却水供給手段を具備し、
該噴出ノズルは、該加工領域における該バイト工具の回転方向上流側から下流側に向けて冷却水を噴出する、
ことを特徴とするバイト工具を備えた加工装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−24885(P2012−24885A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165699(P2010−165699)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】