バイポーラ・スーパーキャパシタとその製造方法
【課題】本発明はエネルギー貯蔵のための高電圧バイポーラ・エレメントの製造に関する。従来のスーパーキャパシタの使用では単体の稼動電圧が低いという制限のため、複数のスーパーキャパシタを直列に使わざるを得ない。それを低価格高機能で製造すれば、応用範囲は飛躍的に広がる。本発明は、スーパーキャパシタの持つ高効率のエネルギー蓄電能力を、両極性電極を使い一層の高電圧を単体で実現する仕組みと製造方法を述べる。そして両極性電極の組み合わせで様々な電力需要に応用できることを説明する。
【解決手段】スーパーキャパシタの単体エレメント内で複数の電極を直列につなぎ、エレメント単位で高稼働電圧のスーパーキャパシタを製造することが出来る。同様に一つの筐体内に複数のエレメントをイントラハウジング直列接続にすれば、高稼働電圧のスーパーキャパシタモジュールを作ることができる。このように単一ユニットまたはモジュールに高電圧スーパーキャパシタを入れることが出来れば、自動車、電動工具、工作機械、オートメーション等の高電圧応用に範囲が広がる。
【解決手段】スーパーキャパシタの単体エレメント内で複数の電極を直列につなぎ、エレメント単位で高稼働電圧のスーパーキャパシタを製造することが出来る。同様に一つの筐体内に複数のエレメントをイントラハウジング直列接続にすれば、高稼働電圧のスーパーキャパシタモジュールを作ることができる。このように単一ユニットまたはモジュールに高電圧スーパーキャパシタを入れることが出来れば、自動車、電動工具、工作機械、オートメーション等の高電圧応用に範囲が広がる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイポーラ(極式)電極を使用したスーパーキャパシタに使うエレメントの組み立て方法に関する。具体的には、イントラ・エレメント式直列によりスーパーキャパシタエレメント単体としての稼動電圧を増加させる方法、およびイントラ・ハウジング式直列・並列・直列並列組み合わせ接続によりスーパーキャパシタエレメントをモジュールの構成としてトータルの稼動電圧を増加させる方法を述べる。
【背景技術】
【0002】
乾電池や燃料電池でのピーク電流の供給は使用時間、寿命を大きく縮める性質がある。これら携帯電源の出力を上げるために色々と研究、投資が行われた。乾電池や燃料電池のエネルギーが化学反応で変換され電力にかわるが、そのエネルギー密度は基本的に小さい。すべての乾電池や燃料電池はその製造方法に依存して特定の化学反応によってのみエネルギー変換を行う。すべての化学反応は使用する材料によって一定の制限を受ける。一方、スーパーキャパシタは充電時のエネルギー貯蔵にイオンの表面吸収により、そして放電時のエネルギー供給にイオンの脱着により、機能する。スーパーキャパシタ放電時にエネルギー変換は起きず、放電そのものも高速の物理現象で高いエネルギー密度をもたらす。しかし乾電池、燃料セル、スーパーキャパシタの放電、充電には必ず水または有機溶剤が必要で、これらは低い電圧で分解するためどうしても稼動電圧も低電圧になってしまう。
【0003】
乾電池、燃料セル、スーパーキャパシタの電圧を上げる一般的方法は、単体を直列で複数つなげることである。直列つなぎでは別々に組み立てられたそれぞれ単体をパックとしてつなぎ合わせる。パックの過充電を防ぐため各デバイス内に高価な保護回路を組み込まざるを得ない。当然、パック自体の大きさも問題になってくる。それで高電圧を得る有効な解決策としてバイポーラ(二極式、両極式)設計で乾電池、燃料セル、スーパーキャパシタを作ることである。バイポーラでは電極を複数積み上げるが、両先端の電極のみが主電源と接続し、その間にある中間電極は主電源とはつながらず、一面側は正の極性を持ち、反対側は負の極性を持つ。中間電極が両面で二つの電極を持つためバイポーラ電極と呼ぶ。セルあたり0.7ボルトの稼動電圧しか持たない燃料電池ではバイポーラ電極はよく使われている。乾電池に応用された例が米国特許 3,954,502; 4,070,528; 4,211,833;
5,219,673; 5,582,937; 5,729,891; 5,955,215, 6,656,639等で確認された。稼動電圧の増加に加えて、特定の電力の増加の例も上記特許502及び833でも開示された。バイポーラ電極の使用で乾電池単体での稼動電圧が増加する。しかし引用されたすべての特許では、乾電池の構造がバイポーラ電極の垂直または水平積み上げ(スタック)式である。円筒状に両端の二つの電極とともにバイポーラ電極を同心円状にロール製造した乾電池は存在しない。但し、実際にはロール状の乾電池(アルカリ、ニッケルメタル、リチウムイオン)が市場の大半を占めている。
【0004】
円筒型バイポーラ式スーパーキャパシタの製造は米国特許6,510,043と6,579,327で開示された。バイポーラ電極の製造では二つの両端電極を同心円状にロール形に巻くが、通常のスーパーキャパシタの2倍の電圧を単体で実現する。バイポーラ電極を一つ増やすとセルの数も一つ増え、稼動電圧も一単位増える。有機電解質を使うスーパーキャパシタの製造でバイポーラ電極一つ増加するごとに2.3から2.5ボルトごとに稼動電圧が上がる。高電圧スーパーキャパシタ製造の別の方法として複数のバイポーラ電極をスタック式に積み重ねる仕方もある(米国特許6,174,337、6,187,061、6,576,365)。以上5つの特許は“イントラ・エレメント直列接続”式セル組み立てとして総称できる。二つの先端電極とバイポーラ電極が一つのエレメントとして構成されるからである。同様に前項の特許502と639のバイポーラ乾電池もイントラ・エレメント直列接続である。これらバイポーラ乾電池とバイポーラ・スーパーキャパシタはセル間の電解質の移動を防止するためエレメント内ですべてのセルの端を密閉シーリングするがこれは容易な工程ではない。そのため製造原価が高くなり量産に向かないが、特に円筒状に巻き上げる場合バイポーラ電極が2つ以上(特許043と327)、またはスタック式で10以上の場合(特許337、061、365)、コストが跳ね上がる。
【0005】
しかしこの高価な先端部分(エッジ)を密閉シーリングする工程は必ずしもバイポーラーセルを製造するにあたり必要ではない。例えばバイポーラ電極は電気化学セル内で0.5〜1ミリメートル直径のボールで形成できる(米国特許6,306,270)。同特許ではボール型バイポーラ電極へのエッジ密閉シーリングはせず、電極は直列接続として機能する。更に米国特許7,145,763では、高電圧円筒型スーパーキャパシタが単体で活性炭素コーティングにより製造できることを示す。具体的には有機電解質に浸す二つのセパレーターで隔離された二つの別々のアルミニウム箔上に一定の距離で活性炭素をコートする。炭素層上の互いに向き合う表面を一対としてセルを形成する。このセルを複数として、二つのセパレーターと共に二つの炭素コートされたアルミニウム箔を同心円状に巻きつけ、一つのエレメントに形成する。763特許の図8の通り、二つの先端電極を電源に接続し、すべての中間電極は電源には接続せず、充電される。更に一枚の電極の両面に二つの極を造成させる代わりに、一枚の電極の片側に二つの極を造成させる。ひとつのエレメント内で多数のセルがエッジ密閉シーリング無しに、ひとつのセパレーターを共有する。しかし763特許のスーパーキャパシタは稼動電圧が6ボルト以上であると主張している。同特許の20ミリメートル間隔の炭素コーティングは量産には向いていない。そしてスーパーキャパシタの最高稼動電圧はリーク電流のため制限をうける。リーク電流は一つのエレメント内のセルの数に比例する。
【0006】
高電圧スーパーキャパシタの組み立て製造について、更にエレメントを複数使い直列に並べることで一つのハウジングに入れることも出来る。このエレメント複数使いはイントラ・ハウジング直列と称して米国特許6,762,926、6,909,595で開示された。両特許とも電圧を上げるにあたりエッジ密閉シーリングで制約を受ける。926特許では高電圧スーパーキャパシタをハウジングの各部屋に一つのエレメントとして収容しモジュール構成するが、電解質は各部屋に密閉される。全エレメントは直列に接続され電圧を上げる。電圧はエレメントの数とエレメント単位の電圧の乗数である。よってモジュールハウジングの部屋の数が実現できる電圧の決定要因である。595特許でハウジング内の直列接続したエレメントのエッジ密閉シーリングは熱で縮小するチューブ等で密閉する。よって高電圧スーパーキャパシタ製造のコストと生産性に対してエッジ密閉シーリングが問題となる。低価格、高生産性で高電圧スーパーキャパシタを製造する方法が重要となる。
【発明の概要】
【0007】
[技術的課題]
【0008】
本発明は前述の既存技術の問題を解決する。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(1)本発明の第一点はエネルギー貯蔵のために次の構成のバイポーラ・エレメントの提供にある:
電源に接続するため専用の二つの先端電極;
上述の先端電極に挟まれ、そして電源に接続しない、少なくとも一枚の中間電極;
電極と電極に続いて配置するセパレータを同心円状に巻き、それらを筒状(ロール)に形成する;
二枚の電極ごとにセパレーターを配置して、それらを積み上げ(スタック式)多面体形状を形成する;
以上、バイポーラ・エレメントは部分的にシーリングを行う。
【0010】
次に本発明の第一の点の具体的形態を説明する。
i)上述のロールは、電源に接続する手段を持たない先端はシーリングされる。
ii)上述のロールはディップ塗布、スピンコート、インジェクションモールドでシーリングされる。
iii)上述のロールはエポキシ、ゴム、シリコーン、ウレタンを含む素材群からなる接着剤でシーリングされる。
iv)多面体エレメントは電源に接続する手段を持たない3つの側をシーリングする。
v)上述の多面体エレメントはディップ塗布、スピンコート、インジェクションモールドでシーリングされる。
vi)上述の多面体エレメントはエポキシ、ゴム、シリコーン、ウレタンを含む素材群からなる接着剤でシーリングされる。
vii)有機電解液はテトラメチル・アンモニア・四価フッ化ホウ素酸塩、メチルトリエチル・アンモニウム・四価フッ化ホウ素酸塩から選択される塩を含む。
viii)有機電解溶液はアセトニトリル, ジメチル炭酸塩, ジエチル炭酸塩, エチレン炭酸塩, メチルエチル炭酸塩, メチルプロピル炭酸塩,γ-butyrolactone 及び上記の複数の組み合わせから選択された溶媒を含む。
【0011】
(2)本発明の第二の点は以下の構成からなるエネルギー貯蔵のためのバイポーラ・スーパーキャパシタの提供にある:
少なくとも一つのバイポーラ・エレメント;本発明の第一の点で説明された項目;
少なくとも一つのエレメント;
上記エレメントの電気接続のための少なくとも二つの専用の手段;
上記エレメント接続のための少なくとも一つの金属箔またはワイヤ;
上記エレメントを収容するための筐体;
上記筐体を密閉シールするための一つの上部キャップ。
【0012】
次に本発明の第二の点の具体的形態を説明する。
i)上記エレメントは直列接続、並列接続、或いはその組み合わせで接続される。
ii)上記筐体とキャップの材料はアルミ、ステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレンを含む一連から選ばれる。
iii)上記エレメントは稼動電圧が2.3ボルト以上のエネルギーを貯蔵できる。
iv)上記エレメントは1ファラド以上の静電容量を貯蔵できる。
上記本発明の第二の点の“少なくとも一つのエレメント”は第一の点で説明したバイポーラ・エレメント或いはそれ以外の形態である。
【発明の効果】
【0013】
本発明ではバイポーラ電極またはバイポーラ・エレメントを使い“イントラ・エレメント”(エレメント内)及び“イントラ・ハウジング”(ハウジング内)直列接続により高電圧のスーパーキャパシタとそのモジュールの製造方法を複数述べる。イントラ・エレメント組み立てで、複数の電極が同心円状に円筒形(シリンダー)に巻かれ(ワインディング)、または長方形エレメントに積み上げられる(スタック)。複数のつながれたエレメントのうち最両端の先端電極二枚のみが主電源に接続されエネルギーを受け、一つの極性を帯びるが、中間の電極群は両面にそれぞれ正極、負極の極性を帯びる。中間電極群は主電源に接続されないが直列つなぎのバイポーラ電極となる。その結果、二枚の単極電極と直列つなぎの複数のバイポーラ電極で単体の高電圧出力スーパーキャパシタデバイスとして出来上がる。更に単体ハウジング内にバイポーラ・エレメントを複数配置することによりイントラ・ハウジング直列接続になり、コンパクトなサイズで高電圧のスーパーキャパシタモジュールが実現する。高電圧、高容量のスーパーキャパシタモジュールを作るにはバイポーラ・エレメントを必要数つなぎ電圧を満足させ、さらに並列つなぎで必要な容量を得ることが出来る。上述の電源により上述の先端電極にポテンシャルがかけられエネルギを貯蔵するが、上記のセパレータに有機電解溶液が加えられる。
【0014】
ワインディングまたはスタッキングでバイポーラ・エレメントを組み立ての工程で、エレメント内の各電極のエッジは密閉シーリングせず露出したままである。バイポーラ電極はエレメント内でセルを直列につなぐコネクターの役割を果たす。ワインディング工程で二枚の先端電極はお互いに向き合うことで、先端電極が構成するセルと、バイポーラ電極が構成する複数セル間に発生する電圧ミスマッチを解決する2つの方法がある。一つは二枚の先端電極の内側面にエネルギー貯蔵機能を持たせないようセルを隔離する方法。エレメントは実質上、先端電極とその間のバイポーラ電極から構成される。別の方法は、単極電極毎に同じ数だけバイポーラ電極を配置して同心円状にワインディングし円筒にする。その結果、二つの対称的なバイポーラ(二極式)小エレメント(サブ・エレメント)が出来る。このサブ・エレメントはそれぞれ複数電極の直列接続である。中の二つの先端電極とそれに挟まれるバイポーラ電極が並列に接続される。
【0015】
バイポーラ・エレメントの構成に関わらず、組み立てられたエレメント群のエッジのみを粘着性物質でシーリングすれば組み立て工程は終了する。このシーリングは、バイポーラ・エレメント製造時の個々の電極のエッジ・シーリングとは異なる。エレメントのエッジ・シーリングは個々の電極に対するものよりコストも低く生産性も高い。スーパーキャパシタエレメントのエッジ・シーリングでは残り一辺のエッジはシーリングしない。その辺はエレメントから突き出る電気端子のある側である。シーリングしないエッジは、スーパーキャパシタ単体あるいはモジュール製造工程での、エレメントに電解質を追加するために露出しておく。更に露出エッジはスーパーキャパシタ内の充電放電サイクルから生じるガス抜きとしての目的を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0016】
発明を実施するための形態を次の通り図とともに説明する。
【図1】ワインディング工法による一般的キャパシタの例
【図2A】二枚の先端電極と一枚のバイポーラ電極とセパレーター(ワインディング前)
【図2B】二枚の先端電極と一枚のバイポーラ電極とセパレーター(ワインディング後)
【図3A】二枚の先端電極と二枚のバイポーラ電極とセパレーター(ワインディング前)
【図3B】二枚の先端電極と二枚のバイポーラ電極とセパレーター(ワインディング後)二つのサブ・エレメントが同じ先端電極を使い並列の接続
【図4A】七枚の長方形電極をスタックし内二枚が先端電極で接続端子用の突起を持ち残り五枚がバイポーラ電極。
【図4B】電極スタック(図4A)に一枚ずつ挿入される七枚のセパレーター
【図4C】七枚の電極と七枚のセパレーターをスタックしハウジングに入れたもの。
【図4D】スタックしたバイポーラ・エレメントを3セットにして一つのハウジングに入れた。
【図5】ボルタモグラム。一つのバイポーラ・スーパーキャパシタと直列につないだ二つの普通スーパーキャパシタ。バイポーラ・スーパーキャパシタの初期CVスキャンと二千回目のスキャン値。
【図6】0.5アンペアで放電する60ボルト、0.2Fのスーパーキャパシタ放電カーブ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
用語の使用を以下の通り定義する:
セル:正負二極の電極を一対とする。セルを有効にするため二つの電極はお互いに向き合う。
エレメント:一つのセルまたは複数のセルで構成する。二つの電極またはその倍数の電極でエレメントを構成する。複数の電極の内二枚が電力を受け渡す媒体となる。
モノポーラー:極性は正か負で、電極につながる。
バイポーラ:一つの電極の裏表に帯びる二つの異なる極性。片面に二つの異なる極性を帯びることもある。極性は電界または液体伝導体で誘電される。
イントラ・エレメント直列接続:複数の電極がエレメント内で直列接続。
イントラ・ハウジング直列/並列接続:複数のエレメントを直列または並列接続し一つのハウジング内に収め、すべてのエレメントを密閉する。
【0018】
本発明を実施する最良の方法は以下の通りである。
図1は円筒形のエレメントにスーパーキャパシタを入れ込んだ一般的なもので、2枚の電極と二枚のセパレーターを同心円状に巻いた。図の通りエレメントはアルミニウムの筒で、上部の2本のリードは電極からゴム製のシーリング蓋を通り、電源や負荷装置に接続される。伝統的表記ではリードは長い方が正極、短い方が負極である。実際は2つの電極とも同じ材料で作られる。アルミ箔に活性炭素をコートし、正極でも負極でもどちらにも機能する。両極とも極性は決定されていない。スーパーキャパシタは電気化学デバイスに属するも、貯蔵されたエネルギーは電気化学反応にはよらず、どちらかというと充電された電極表面に吸収されたイオンから起きる。セパレーターは電極の電気ショートを防ぐと共に、セパレーターに含まれる電解質からイオンの供給も行う。
【0019】
高電圧のスーパーキャパシタを実現するために、有機電解質がしばしば用いられる。例えば(C2H5)4NBF4は(C2H5)4N+及びBF4−だが、溶剤にPC(炭酸プロピレン)またはC4H6O3を使用し、2.5ボルト±0.2ボルトの出力をもたらす。他に使用できる電解質の候補はテトラメチル・アンモニア・四価フッ化ホウ素酸塩、メチルトリエチル・アンモニウム・四価フッ化ホウ素酸塩である。候補溶液としてはアセトニトリル, ジメチル炭酸塩, ジエチル炭酸塩, エチレン炭酸塩, メチルエチル炭酸塩, メチルプロピル炭酸塩, γ-butyrolactone 及び上記の複数の組み合わせが考えられる。これらすべてはスーパーキャパシタへ高い稼動電圧をもたらすことが出来る。一方で水溶液ベースの電解質で電圧は0.8から1.0ボルトに下がってしまう。スーパーキャパシタの正常エネルギー容量は電圧に比例するが次の式で表わされる。
E = 1/2 CV2
ここでCはキャパシタンスである。式の通りエネルギーを上げるにはVを上げるのが効率がよい。ほとんどの電気機器は最低3.3ボルトの駆動電圧を必要とするので、最低2つの2.5ボルト電圧スーパーキャパシタを直列に接続する。
【0020】
そのため高稼働電圧スーパーキャパシタはメリットがある。スーパーキャパシタの単位稼動電圧を上げることは、常に新しい電解質を探すことである。しかし、化学上の革新電解質が必ずしも安価に提供されるとは限らない。複数の個々のデバイスを単純に直列につないでも場所をとるパックになってしまいがちなので、ユニークな組み立て技術で安価で量産が容易な高電圧スーパーキャパシタを作ることが望まれる。“背景技術”及び“Annu.Rep.Prog.Chem.,Sec. C, 1999,95,163 〜197ページにある具体的なバイポーラセルの配置を利用することである。
【0021】
マルチ電極バイポーラ式エレメントでは丸型か長方形に作るが、中間の電極群は主電源には接続しない。両端の先端電極のポテンシャルで電界が生じ、電極につながる電解質を通じて、中間の電極すべてが充電を受ける。エネルギーの貯蔵に加えバイポーラ電極は、電気コネクターとしてすべてのセルを高稼働電圧の1ブロックに仕立て、“イントラ・エレメント”(エレメント内)直列接続を構築する。従来の個々のスーパーキャパシタの直列接続に比べて、イントラ・エレメント直列接続は、より小さい容積と少ない原料で単体の高電圧スーパーキャパシタを製造できる。重要なのはイントラ・エレメント直列接続で低価格で量産が可能なことである。
【0022】
図2では3つの電極を使うセル組み立てによる高電圧スーパーキャパシタの例である。図2Aで2つの先端電極E1とE2がバイポーラ電極Bを挟む。その間にセパレーターSが介在し、最後に同心円状に巻き上げる。三枚の電極、E1,E2,Bは同じ方法で製造され、例としてアルミ箔に活性炭素コーティングをする。三枚のセパレーター、S1からS3は多孔状ポリプロピレンを使い、電極のショートを防止し、電解液を含む。電解質の存在と先端電極への主電源からの電流により、先先端電極はつながった主電源の端子と同じ極性を帯びる。もしE1が正極でE2が負極の場合、E1に相対するBの左側は負極になる。一方E2に相対するBの右側は正極になる。
【0023】
主電源に物理的に接続させないが、Bの両側に起きる二つの極性は電解質の伝導性のため、E1とE2の間に起きる電界に誘発される。セルは正と負の電極一対で構成されるので図2Aでは2セル(E1/BとB/E2)が直列接続しており、電圧はE1/E2の倍になる。E1/E2セルが2.5ボルトの電圧であればE1/B/E2は5ボルトである。図2Bでは3枚の電極と3枚のセパレーター、計6枚が同心円状に巻かれ、先端電極はE1とE2になる。図2Bをよく見ると2つのセル、すなわちE1/B/E2とE1/E2は同じ先端電極の対E1とE2を共有し、並列につながっている。5ボルトセルと2.5ボルトセルを並列につなぎ一つのデバイスに組み立てると、デバイスと2.5ボルトでしか機能しない。5ボルトで稼動させるための一つの解決策はE1とE2の面の片面のみを活性炭素でコートし、それぞれの電極のもう片面はコートしない。更にE1とE2のコートしない面は同心円に巻いたあとはお互いを向き合うがE1/E2構成が出来ないように絶縁する(絶縁するとE1/E2は電極の機能を失う)。その結果、E1/B/E2は5ボルトのキャパシターとなる。
【0024】
図3では円筒型バイポーラ型スーパーキャパシタの電圧バランス問題のもうひとつの解決を示す。図3Aは先端電極E1とE2と、バイポーラ電極B1とB2を図示する。各電極はセパレーターS1からS4を挟む。4枚の電極と4枚のセパレーターが同心円状に巻かれる。二つの組み合わせセル、E1/B1/E2とE1/B2/E2は同じ先端電極一対を共有し、並列に接続される。これら組み合わせセルはそれぞれバイポーラ電極をコネクターとして、直列につながっている。要約すると図3Bの通り四つのセル(E1/B1, B1/E2, B2/E2, E1/B2)があり、うち、E1/B1とB1/E2は直列接続、B2/E2, E1/B2も同様である。そしてこれら二つの直列接続のパックはエレメント内で並列につながれる。このエレメントは直列接続セルと並列接続セルを内部に含む。巻きを行うワインディング・マシン次第だが、複数の電極シートとセパレーターシートを同時に同心円状に巻き、図2Bや図3Bに示す通り複数のバイポーラ電極を作る。水電解液ではバイポーラ電極を一枚増やす毎に1.0ボルトの電圧を得、また有機電解液ではエレメントに一枚のバイポーラ電極を追加すれば2.5ボルト±0.2だけ電圧を増やすことが出来る。
【0025】
シリンダー型スーパーキャパシタ・エレメントの製造はワインディング・マシンで行う。バイポーラ電極追加で電圧を上げることが出来るが、ワインディング・マシンの製造は高価であり、操作自体も複雑になってくる。そのためこの製法による“イントラ・エレメント”直列接続のバイポーラ電極枚数は制限を受ける。しかし積み上げ式“イントラ・エレメント”直列接続は製造がより簡単に電圧を上げることができる。図4Aから4Cは、七枚のスーパーキャパシタ電極(300)を積み上げ式で示した。先端電極E1とE2は端子が出ている。B1からB5は5枚の電極である。スタック300には有機電解質を使い、表面積20 cmの電極でスタックの各セルは2.5ボルト、30Fの能力を持つ。図4Bのパック310は6枚のセパレータ(S1からS6)からなり、パック300に順番に挿入し、S1は最初の電極ギャップに入り、S2は第二の電極ギャップに入る。図4Cはそれを箱型(33)に入れた。
【0026】
電極組み立て300の全6セルは直列でバイポーラ電極につながり、エレメントは全体で15ボルトの稼動電圧を持つ。トータルのキャパシタンスは5F である。30を6で割った数字になる。15ボルト、5Fのエレメント、P1、P2、P3をさらに並列につなぎ、つまりコネクター61で正極に、コネクター63で負極につなぐ(図4D)。15ボルト電圧、15Fのスーパーキャパシタモジュール350が一つの筐体55に組み立てた。筐体の上部は蓋で密閉し、湿度、酸素等の環境からの劣化を防ぐため、必要な処置を施す。筐体と蓋の素材はアルミ、ステンレススチール、ポリエチレン、ポリプロピレンが使われる。P1からP3までのエレメントは筐体55に入るが、これは“イントラ・ハウジング並列接続”で組み立てる。もし、P1からP3を筐体55内で直列接続されると、45ボルト、1.67Fのスーパーキャパシタが形成される。これは“イントラ・ハウジング直列接続”である。“イントラ・エレメント”、“イントラ・ハウジング”直列、並列、そしてその組み合わせを使うと、様々な要求にあうスーパーキャパシタを単体、モジュール等で製造できる。
【0027】
円筒型長方形型のいずれもバイポーラ・エレメントを形成する個々の電極の周囲を密閉する代わりに、組み立てた後にエレメントの周辺の部分のみを密閉するだけで良い。図1の円筒型の場合、ロールの底部をシーリングすればよく、ロール上部の端子が突き出ている側は、エレメントに電解質を注入するために開放していて構わない。上部開放のためスーパーキャパシタ稼動時に出るかもしれないガス等のエスケープが期待できる。同様に図4Cでは長方形エレメントの3方向の側面のみをシーリングし、端子側はガス抜きまたは電解質注入用に開放しておける。バイポーラ・エレメント内の各電極すべての側面をシーリングしないので、電解質はエレメント内のセル間を移動し、“ツリー化”(樹状結晶)という隣接電極表面間のショートにつながる。電極ショートは直列接続の失敗または電圧降下の原因になりうる。それにもかかわらず、電解質のプールでもバイポーラ電極使用の電気化学セルは、側面シーリングなしで電極をそれぞれ直列接続しても高電圧を実現している。米国特許6,307,270、3,954,502は例として挙げられる。
【0028】
スーパーキャパシタ使用で、不純物と使用金属系物質の接触で起きるガス発生は、製品の信頼性を損なう。そのため原料となる活性炭素、バインダー、電解質はすべて厳格にコントロールする。また、巻き式、積み上げ式のいずれでもエレメント形成は電極、セパレーターの組み合わせ時も高張度の制御技術を要する。パックされたエレメントの部分的側面シーリングは、水等不純物と露出された金属物質の接触による化学反応を防止できる。本発明のエレメントのエッジシーリングは、エポキシ、ゴム、シリコン、ウレタン等をディップコート、スピンコート、注入で行うことが出来る。さらに部分シーリングは高電圧スーパーキャパシタ製造時のコストを削減することが出来る。
【0029】
高電圧エレメントを基礎部品として、“イントラ・ハウジング”直列、並列方式により様々な電圧、容量の製品を実現できる。複数のエレメントを使う“イントラ・ハウジング”接続は従来の方法に比べて個別にスーパーキャパシタを密閉するより少ない材料で同一の電圧を実現する。さらに重要なのは本発明の“イントラ・ハウジング”直列接続によるスーパーキャパシタモジュール製造は、充電で本来の電圧を実現するとき、モジュール内の個々のエレメント間で均一の電圧分布が得られることである。電圧均一分布の理由は、一定の温度共有と、圧力環境が全く同一でモジュール内で共有しているからである。さらにエレメント間の接続距離が短いため、電気抵抗も少なくなる。その結果、直列接続時の充電、放電時に起きうる電圧不均等防止の余計な保護回路も必要なくなる。
【0030】
例1:
二種類のスーパーキャパシタAとBを使う。両者とも同じ材料、活性炭素、有機電解質で製造されるが違う長さのアルミ筐体に入れる。Aは両サイドをコーティングした二つの電極を持つ。Bは片側のみをコーティングした二枚の先端電極と一枚のバイポーラ電極。図5と表1で示す。
【表1】
【0031】
表1の通り、AはBの電圧を得るために2本の直列接続が必要である。そのためAが2本で最低直径が36mm、重量が16gである。明らかにB単体より大きく重い。図5では、基準電極を使わないでボルタモCVテストの結果を比較して表示した。CVスキャンを毎秒50mVで-0.5Vから5.0V範囲で記録した。電圧(E)を継続的に変化させ、電流(i)の変化をプロットした。CVスキャンの最初のサイクルで、Aの2本直列のほうがBよりも、電圧範囲内の両極端でスキャンを反転させると、より速い電流のスイッチが観測できるが、これは単一のバイポーラの方が一般のもの2本直列よりも高いESRを持つことを示す。同じ電圧を実現した一般の直列接続のスーパーキャパシタと比べて、バイポーラ・スーパーキャパシタは低い容量と高いESRを性質として持つ。しかし、バイポーラの持つ高稼働電圧とコンパクトなサイズは、ESRとキャパシタンスに対する要求の少ないアプリケーション(PC,携帯端末等)には都合が良い場合がある。図5のスーパーキャパシタBの二千回目のボルタモグラムのサイクルと最初のスキャンをオーバーラップして示しているが、充電放電サイクルの劣化は無いことがわかる。よって、本発明“イントラ・エレメント”直列接続はバイポーラ・スーパーキャパシタの製造工程を簡単化するだけでなく、製品の信頼性を著しく向上させる。
【0032】
第2例として表2を挙げる。3枚のバイポーラ電極使用で電圧10ボルトを持つバイポーラ・スーパーキャパシタを5本用意した。5本の10ボルト耐圧スーパーキャパシタの電気特性を表2に示した。
【表2】
【0033】
5本とも電気特性は同様な内容である。IRドロップ(電流Iと抵抗Rの積の低下)は、内部抵抗を持つキャパシターが放電で失うエネルギーロスを表わす。IRドロップが低い実働エネルギーが多いことになる。表2のバイポーラ・スーパーキャパシタは5枚のセパレーターと5枚の電極を同心円状に巻いた。10枚のシートを巻くワインディングマシンはまだ入手していないので、手作りで用意したサンプルである。手作りサンプルのデータから判断して、大量生産時はより高い電気特性を期待できる。
【0034】
第3例として表3を挙げる。4個の長方形型バイポーラ・スーパーキャパシタを準備した。複数の薄い電極プレートを使い、寸法は縦5cm横10cmである。各個ともに端子の出ている両端電極2枚を使う。これは4つの電極スタックを2つのグループに分け、第一グループは25枚のバイポーラ電極を使い、第二グループには26枚の電極を使う。すべて4つのスタックはそれぞれ3側面を密閉したが、端子側の側面は開放したままである。ここから有機電解質を注入する。最後に4つのエレメントは個別にプラスチックで密閉包装され、63mm x 130mm x 12mmの寸法のスーパーキャパシタになる。
【表3】
【0035】
表3の通り、スーパーキャパシタの電圧は65ボルト或いは67ボルトで、リーク電流は低電圧での使用の方が、ずっと小さい。低電圧でのスーパーキャパシタの使用はその製品寿命を延ばすことになる。本発明の“イントラ・エレメント直列接続”によりバイポーラ・スーパーキャパシタの製造、特にスタック式の場合、セル単位当たりわずか2.0ボルトを使えば、簡単に高電圧製品が、可能になる。応用の分野が広がる。図6の放電カーブは表3のスーパーキャパシタのものであるが、60ボルトでの素晴らしいデータを示している。
【0036】
[結論]
【0037】
上記の例で明らかな通り本発明の“イントラ・エレメント直列接続により高電圧バイポーラ・スーパーキャパシタを製造できる高い可能性を詳述した。“イントラ・ハウジング直列、並列、組み合わせ接続”で本発明では、色々な用途に合ったモジュールをカスタムで準備でき、パイポーラースーパーキャパシタの高エネルギー密度を実現する。そのため、これら高性能エレメントを基礎にして、各種電気製品、電気自動車、オートメーション等に適用できる。
【0038】
単エレメント内に複数の電極を直列接続により、高電圧を持った単体のスーパーキャパシタの製造が可能になった。同様に複数エレメントをイントラ・ハウジング直列接続し単筐体に収納し、コンパクトな高電圧スーパーキャパシタの製造が可能になった。単体あるいはモジュールとして高電圧スーパーキャパシタの存在により、キャパシターを、特に大電力応用(電気自動車、電動工具、オートメーション機械等)の電力管理にも利用を広げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のバイポーラ・エレメント及びバイポーラ・スーパーキャパシタは電気自動車、電動工具、オートメーション機械等に応用できるので産業上の有用性がある。
【技術分野】
【0001】
本発明はバイポーラ(極式)電極を使用したスーパーキャパシタに使うエレメントの組み立て方法に関する。具体的には、イントラ・エレメント式直列によりスーパーキャパシタエレメント単体としての稼動電圧を増加させる方法、およびイントラ・ハウジング式直列・並列・直列並列組み合わせ接続によりスーパーキャパシタエレメントをモジュールの構成としてトータルの稼動電圧を増加させる方法を述べる。
【背景技術】
【0002】
乾電池や燃料電池でのピーク電流の供給は使用時間、寿命を大きく縮める性質がある。これら携帯電源の出力を上げるために色々と研究、投資が行われた。乾電池や燃料電池のエネルギーが化学反応で変換され電力にかわるが、そのエネルギー密度は基本的に小さい。すべての乾電池や燃料電池はその製造方法に依存して特定の化学反応によってのみエネルギー変換を行う。すべての化学反応は使用する材料によって一定の制限を受ける。一方、スーパーキャパシタは充電時のエネルギー貯蔵にイオンの表面吸収により、そして放電時のエネルギー供給にイオンの脱着により、機能する。スーパーキャパシタ放電時にエネルギー変換は起きず、放電そのものも高速の物理現象で高いエネルギー密度をもたらす。しかし乾電池、燃料セル、スーパーキャパシタの放電、充電には必ず水または有機溶剤が必要で、これらは低い電圧で分解するためどうしても稼動電圧も低電圧になってしまう。
【0003】
乾電池、燃料セル、スーパーキャパシタの電圧を上げる一般的方法は、単体を直列で複数つなげることである。直列つなぎでは別々に組み立てられたそれぞれ単体をパックとしてつなぎ合わせる。パックの過充電を防ぐため各デバイス内に高価な保護回路を組み込まざるを得ない。当然、パック自体の大きさも問題になってくる。それで高電圧を得る有効な解決策としてバイポーラ(二極式、両極式)設計で乾電池、燃料セル、スーパーキャパシタを作ることである。バイポーラでは電極を複数積み上げるが、両先端の電極のみが主電源と接続し、その間にある中間電極は主電源とはつながらず、一面側は正の極性を持ち、反対側は負の極性を持つ。中間電極が両面で二つの電極を持つためバイポーラ電極と呼ぶ。セルあたり0.7ボルトの稼動電圧しか持たない燃料電池ではバイポーラ電極はよく使われている。乾電池に応用された例が米国特許 3,954,502; 4,070,528; 4,211,833;
5,219,673; 5,582,937; 5,729,891; 5,955,215, 6,656,639等で確認された。稼動電圧の増加に加えて、特定の電力の増加の例も上記特許502及び833でも開示された。バイポーラ電極の使用で乾電池単体での稼動電圧が増加する。しかし引用されたすべての特許では、乾電池の構造がバイポーラ電極の垂直または水平積み上げ(スタック)式である。円筒状に両端の二つの電極とともにバイポーラ電極を同心円状にロール製造した乾電池は存在しない。但し、実際にはロール状の乾電池(アルカリ、ニッケルメタル、リチウムイオン)が市場の大半を占めている。
【0004】
円筒型バイポーラ式スーパーキャパシタの製造は米国特許6,510,043と6,579,327で開示された。バイポーラ電極の製造では二つの両端電極を同心円状にロール形に巻くが、通常のスーパーキャパシタの2倍の電圧を単体で実現する。バイポーラ電極を一つ増やすとセルの数も一つ増え、稼動電圧も一単位増える。有機電解質を使うスーパーキャパシタの製造でバイポーラ電極一つ増加するごとに2.3から2.5ボルトごとに稼動電圧が上がる。高電圧スーパーキャパシタ製造の別の方法として複数のバイポーラ電極をスタック式に積み重ねる仕方もある(米国特許6,174,337、6,187,061、6,576,365)。以上5つの特許は“イントラ・エレメント直列接続”式セル組み立てとして総称できる。二つの先端電極とバイポーラ電極が一つのエレメントとして構成されるからである。同様に前項の特許502と639のバイポーラ乾電池もイントラ・エレメント直列接続である。これらバイポーラ乾電池とバイポーラ・スーパーキャパシタはセル間の電解質の移動を防止するためエレメント内ですべてのセルの端を密閉シーリングするがこれは容易な工程ではない。そのため製造原価が高くなり量産に向かないが、特に円筒状に巻き上げる場合バイポーラ電極が2つ以上(特許043と327)、またはスタック式で10以上の場合(特許337、061、365)、コストが跳ね上がる。
【0005】
しかしこの高価な先端部分(エッジ)を密閉シーリングする工程は必ずしもバイポーラーセルを製造するにあたり必要ではない。例えばバイポーラ電極は電気化学セル内で0.5〜1ミリメートル直径のボールで形成できる(米国特許6,306,270)。同特許ではボール型バイポーラ電極へのエッジ密閉シーリングはせず、電極は直列接続として機能する。更に米国特許7,145,763では、高電圧円筒型スーパーキャパシタが単体で活性炭素コーティングにより製造できることを示す。具体的には有機電解質に浸す二つのセパレーターで隔離された二つの別々のアルミニウム箔上に一定の距離で活性炭素をコートする。炭素層上の互いに向き合う表面を一対としてセルを形成する。このセルを複数として、二つのセパレーターと共に二つの炭素コートされたアルミニウム箔を同心円状に巻きつけ、一つのエレメントに形成する。763特許の図8の通り、二つの先端電極を電源に接続し、すべての中間電極は電源には接続せず、充電される。更に一枚の電極の両面に二つの極を造成させる代わりに、一枚の電極の片側に二つの極を造成させる。ひとつのエレメント内で多数のセルがエッジ密閉シーリング無しに、ひとつのセパレーターを共有する。しかし763特許のスーパーキャパシタは稼動電圧が6ボルト以上であると主張している。同特許の20ミリメートル間隔の炭素コーティングは量産には向いていない。そしてスーパーキャパシタの最高稼動電圧はリーク電流のため制限をうける。リーク電流は一つのエレメント内のセルの数に比例する。
【0006】
高電圧スーパーキャパシタの組み立て製造について、更にエレメントを複数使い直列に並べることで一つのハウジングに入れることも出来る。このエレメント複数使いはイントラ・ハウジング直列と称して米国特許6,762,926、6,909,595で開示された。両特許とも電圧を上げるにあたりエッジ密閉シーリングで制約を受ける。926特許では高電圧スーパーキャパシタをハウジングの各部屋に一つのエレメントとして収容しモジュール構成するが、電解質は各部屋に密閉される。全エレメントは直列に接続され電圧を上げる。電圧はエレメントの数とエレメント単位の電圧の乗数である。よってモジュールハウジングの部屋の数が実現できる電圧の決定要因である。595特許でハウジング内の直列接続したエレメントのエッジ密閉シーリングは熱で縮小するチューブ等で密閉する。よって高電圧スーパーキャパシタ製造のコストと生産性に対してエッジ密閉シーリングが問題となる。低価格、高生産性で高電圧スーパーキャパシタを製造する方法が重要となる。
【発明の概要】
【0007】
[技術的課題]
【0008】
本発明は前述の既存技術の問題を解決する。
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(1)本発明の第一点はエネルギー貯蔵のために次の構成のバイポーラ・エレメントの提供にある:
電源に接続するため専用の二つの先端電極;
上述の先端電極に挟まれ、そして電源に接続しない、少なくとも一枚の中間電極;
電極と電極に続いて配置するセパレータを同心円状に巻き、それらを筒状(ロール)に形成する;
二枚の電極ごとにセパレーターを配置して、それらを積み上げ(スタック式)多面体形状を形成する;
以上、バイポーラ・エレメントは部分的にシーリングを行う。
【0010】
次に本発明の第一の点の具体的形態を説明する。
i)上述のロールは、電源に接続する手段を持たない先端はシーリングされる。
ii)上述のロールはディップ塗布、スピンコート、インジェクションモールドでシーリングされる。
iii)上述のロールはエポキシ、ゴム、シリコーン、ウレタンを含む素材群からなる接着剤でシーリングされる。
iv)多面体エレメントは電源に接続する手段を持たない3つの側をシーリングする。
v)上述の多面体エレメントはディップ塗布、スピンコート、インジェクションモールドでシーリングされる。
vi)上述の多面体エレメントはエポキシ、ゴム、シリコーン、ウレタンを含む素材群からなる接着剤でシーリングされる。
vii)有機電解液はテトラメチル・アンモニア・四価フッ化ホウ素酸塩、メチルトリエチル・アンモニウム・四価フッ化ホウ素酸塩から選択される塩を含む。
viii)有機電解溶液はアセトニトリル, ジメチル炭酸塩, ジエチル炭酸塩, エチレン炭酸塩, メチルエチル炭酸塩, メチルプロピル炭酸塩,γ-butyrolactone 及び上記の複数の組み合わせから選択された溶媒を含む。
【0011】
(2)本発明の第二の点は以下の構成からなるエネルギー貯蔵のためのバイポーラ・スーパーキャパシタの提供にある:
少なくとも一つのバイポーラ・エレメント;本発明の第一の点で説明された項目;
少なくとも一つのエレメント;
上記エレメントの電気接続のための少なくとも二つの専用の手段;
上記エレメント接続のための少なくとも一つの金属箔またはワイヤ;
上記エレメントを収容するための筐体;
上記筐体を密閉シールするための一つの上部キャップ。
【0012】
次に本発明の第二の点の具体的形態を説明する。
i)上記エレメントは直列接続、並列接続、或いはその組み合わせで接続される。
ii)上記筐体とキャップの材料はアルミ、ステンレス、ポリエチレン、ポリプロピレンを含む一連から選ばれる。
iii)上記エレメントは稼動電圧が2.3ボルト以上のエネルギーを貯蔵できる。
iv)上記エレメントは1ファラド以上の静電容量を貯蔵できる。
上記本発明の第二の点の“少なくとも一つのエレメント”は第一の点で説明したバイポーラ・エレメント或いはそれ以外の形態である。
【発明の効果】
【0013】
本発明ではバイポーラ電極またはバイポーラ・エレメントを使い“イントラ・エレメント”(エレメント内)及び“イントラ・ハウジング”(ハウジング内)直列接続により高電圧のスーパーキャパシタとそのモジュールの製造方法を複数述べる。イントラ・エレメント組み立てで、複数の電極が同心円状に円筒形(シリンダー)に巻かれ(ワインディング)、または長方形エレメントに積み上げられる(スタック)。複数のつながれたエレメントのうち最両端の先端電極二枚のみが主電源に接続されエネルギーを受け、一つの極性を帯びるが、中間の電極群は両面にそれぞれ正極、負極の極性を帯びる。中間電極群は主電源に接続されないが直列つなぎのバイポーラ電極となる。その結果、二枚の単極電極と直列つなぎの複数のバイポーラ電極で単体の高電圧出力スーパーキャパシタデバイスとして出来上がる。更に単体ハウジング内にバイポーラ・エレメントを複数配置することによりイントラ・ハウジング直列接続になり、コンパクトなサイズで高電圧のスーパーキャパシタモジュールが実現する。高電圧、高容量のスーパーキャパシタモジュールを作るにはバイポーラ・エレメントを必要数つなぎ電圧を満足させ、さらに並列つなぎで必要な容量を得ることが出来る。上述の電源により上述の先端電極にポテンシャルがかけられエネルギを貯蔵するが、上記のセパレータに有機電解溶液が加えられる。
【0014】
ワインディングまたはスタッキングでバイポーラ・エレメントを組み立ての工程で、エレメント内の各電極のエッジは密閉シーリングせず露出したままである。バイポーラ電極はエレメント内でセルを直列につなぐコネクターの役割を果たす。ワインディング工程で二枚の先端電極はお互いに向き合うことで、先端電極が構成するセルと、バイポーラ電極が構成する複数セル間に発生する電圧ミスマッチを解決する2つの方法がある。一つは二枚の先端電極の内側面にエネルギー貯蔵機能を持たせないようセルを隔離する方法。エレメントは実質上、先端電極とその間のバイポーラ電極から構成される。別の方法は、単極電極毎に同じ数だけバイポーラ電極を配置して同心円状にワインディングし円筒にする。その結果、二つの対称的なバイポーラ(二極式)小エレメント(サブ・エレメント)が出来る。このサブ・エレメントはそれぞれ複数電極の直列接続である。中の二つの先端電極とそれに挟まれるバイポーラ電極が並列に接続される。
【0015】
バイポーラ・エレメントの構成に関わらず、組み立てられたエレメント群のエッジのみを粘着性物質でシーリングすれば組み立て工程は終了する。このシーリングは、バイポーラ・エレメント製造時の個々の電極のエッジ・シーリングとは異なる。エレメントのエッジ・シーリングは個々の電極に対するものよりコストも低く生産性も高い。スーパーキャパシタエレメントのエッジ・シーリングでは残り一辺のエッジはシーリングしない。その辺はエレメントから突き出る電気端子のある側である。シーリングしないエッジは、スーパーキャパシタ単体あるいはモジュール製造工程での、エレメントに電解質を追加するために露出しておく。更に露出エッジはスーパーキャパシタ内の充電放電サイクルから生じるガス抜きとしての目的を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0016】
発明を実施するための形態を次の通り図とともに説明する。
【図1】ワインディング工法による一般的キャパシタの例
【図2A】二枚の先端電極と一枚のバイポーラ電極とセパレーター(ワインディング前)
【図2B】二枚の先端電極と一枚のバイポーラ電極とセパレーター(ワインディング後)
【図3A】二枚の先端電極と二枚のバイポーラ電極とセパレーター(ワインディング前)
【図3B】二枚の先端電極と二枚のバイポーラ電極とセパレーター(ワインディング後)二つのサブ・エレメントが同じ先端電極を使い並列の接続
【図4A】七枚の長方形電極をスタックし内二枚が先端電極で接続端子用の突起を持ち残り五枚がバイポーラ電極。
【図4B】電極スタック(図4A)に一枚ずつ挿入される七枚のセパレーター
【図4C】七枚の電極と七枚のセパレーターをスタックしハウジングに入れたもの。
【図4D】スタックしたバイポーラ・エレメントを3セットにして一つのハウジングに入れた。
【図5】ボルタモグラム。一つのバイポーラ・スーパーキャパシタと直列につないだ二つの普通スーパーキャパシタ。バイポーラ・スーパーキャパシタの初期CVスキャンと二千回目のスキャン値。
【図6】0.5アンペアで放電する60ボルト、0.2Fのスーパーキャパシタ放電カーブ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
用語の使用を以下の通り定義する:
セル:正負二極の電極を一対とする。セルを有効にするため二つの電極はお互いに向き合う。
エレメント:一つのセルまたは複数のセルで構成する。二つの電極またはその倍数の電極でエレメントを構成する。複数の電極の内二枚が電力を受け渡す媒体となる。
モノポーラー:極性は正か負で、電極につながる。
バイポーラ:一つの電極の裏表に帯びる二つの異なる極性。片面に二つの異なる極性を帯びることもある。極性は電界または液体伝導体で誘電される。
イントラ・エレメント直列接続:複数の電極がエレメント内で直列接続。
イントラ・ハウジング直列/並列接続:複数のエレメントを直列または並列接続し一つのハウジング内に収め、すべてのエレメントを密閉する。
【0018】
本発明を実施する最良の方法は以下の通りである。
図1は円筒形のエレメントにスーパーキャパシタを入れ込んだ一般的なもので、2枚の電極と二枚のセパレーターを同心円状に巻いた。図の通りエレメントはアルミニウムの筒で、上部の2本のリードは電極からゴム製のシーリング蓋を通り、電源や負荷装置に接続される。伝統的表記ではリードは長い方が正極、短い方が負極である。実際は2つの電極とも同じ材料で作られる。アルミ箔に活性炭素をコートし、正極でも負極でもどちらにも機能する。両極とも極性は決定されていない。スーパーキャパシタは電気化学デバイスに属するも、貯蔵されたエネルギーは電気化学反応にはよらず、どちらかというと充電された電極表面に吸収されたイオンから起きる。セパレーターは電極の電気ショートを防ぐと共に、セパレーターに含まれる電解質からイオンの供給も行う。
【0019】
高電圧のスーパーキャパシタを実現するために、有機電解質がしばしば用いられる。例えば(C2H5)4NBF4は(C2H5)4N+及びBF4−だが、溶剤にPC(炭酸プロピレン)またはC4H6O3を使用し、2.5ボルト±0.2ボルトの出力をもたらす。他に使用できる電解質の候補はテトラメチル・アンモニア・四価フッ化ホウ素酸塩、メチルトリエチル・アンモニウム・四価フッ化ホウ素酸塩である。候補溶液としてはアセトニトリル, ジメチル炭酸塩, ジエチル炭酸塩, エチレン炭酸塩, メチルエチル炭酸塩, メチルプロピル炭酸塩, γ-butyrolactone 及び上記の複数の組み合わせが考えられる。これらすべてはスーパーキャパシタへ高い稼動電圧をもたらすことが出来る。一方で水溶液ベースの電解質で電圧は0.8から1.0ボルトに下がってしまう。スーパーキャパシタの正常エネルギー容量は電圧に比例するが次の式で表わされる。
E = 1/2 CV2
ここでCはキャパシタンスである。式の通りエネルギーを上げるにはVを上げるのが効率がよい。ほとんどの電気機器は最低3.3ボルトの駆動電圧を必要とするので、最低2つの2.5ボルト電圧スーパーキャパシタを直列に接続する。
【0020】
そのため高稼働電圧スーパーキャパシタはメリットがある。スーパーキャパシタの単位稼動電圧を上げることは、常に新しい電解質を探すことである。しかし、化学上の革新電解質が必ずしも安価に提供されるとは限らない。複数の個々のデバイスを単純に直列につないでも場所をとるパックになってしまいがちなので、ユニークな組み立て技術で安価で量産が容易な高電圧スーパーキャパシタを作ることが望まれる。“背景技術”及び“Annu.Rep.Prog.Chem.,Sec. C, 1999,95,163 〜197ページにある具体的なバイポーラセルの配置を利用することである。
【0021】
マルチ電極バイポーラ式エレメントでは丸型か長方形に作るが、中間の電極群は主電源には接続しない。両端の先端電極のポテンシャルで電界が生じ、電極につながる電解質を通じて、中間の電極すべてが充電を受ける。エネルギーの貯蔵に加えバイポーラ電極は、電気コネクターとしてすべてのセルを高稼働電圧の1ブロックに仕立て、“イントラ・エレメント”(エレメント内)直列接続を構築する。従来の個々のスーパーキャパシタの直列接続に比べて、イントラ・エレメント直列接続は、より小さい容積と少ない原料で単体の高電圧スーパーキャパシタを製造できる。重要なのはイントラ・エレメント直列接続で低価格で量産が可能なことである。
【0022】
図2では3つの電極を使うセル組み立てによる高電圧スーパーキャパシタの例である。図2Aで2つの先端電極E1とE2がバイポーラ電極Bを挟む。その間にセパレーターSが介在し、最後に同心円状に巻き上げる。三枚の電極、E1,E2,Bは同じ方法で製造され、例としてアルミ箔に活性炭素コーティングをする。三枚のセパレーター、S1からS3は多孔状ポリプロピレンを使い、電極のショートを防止し、電解液を含む。電解質の存在と先端電極への主電源からの電流により、先先端電極はつながった主電源の端子と同じ極性を帯びる。もしE1が正極でE2が負極の場合、E1に相対するBの左側は負極になる。一方E2に相対するBの右側は正極になる。
【0023】
主電源に物理的に接続させないが、Bの両側に起きる二つの極性は電解質の伝導性のため、E1とE2の間に起きる電界に誘発される。セルは正と負の電極一対で構成されるので図2Aでは2セル(E1/BとB/E2)が直列接続しており、電圧はE1/E2の倍になる。E1/E2セルが2.5ボルトの電圧であればE1/B/E2は5ボルトである。図2Bでは3枚の電極と3枚のセパレーター、計6枚が同心円状に巻かれ、先端電極はE1とE2になる。図2Bをよく見ると2つのセル、すなわちE1/B/E2とE1/E2は同じ先端電極の対E1とE2を共有し、並列につながっている。5ボルトセルと2.5ボルトセルを並列につなぎ一つのデバイスに組み立てると、デバイスと2.5ボルトでしか機能しない。5ボルトで稼動させるための一つの解決策はE1とE2の面の片面のみを活性炭素でコートし、それぞれの電極のもう片面はコートしない。更にE1とE2のコートしない面は同心円に巻いたあとはお互いを向き合うがE1/E2構成が出来ないように絶縁する(絶縁するとE1/E2は電極の機能を失う)。その結果、E1/B/E2は5ボルトのキャパシターとなる。
【0024】
図3では円筒型バイポーラ型スーパーキャパシタの電圧バランス問題のもうひとつの解決を示す。図3Aは先端電極E1とE2と、バイポーラ電極B1とB2を図示する。各電極はセパレーターS1からS4を挟む。4枚の電極と4枚のセパレーターが同心円状に巻かれる。二つの組み合わせセル、E1/B1/E2とE1/B2/E2は同じ先端電極一対を共有し、並列に接続される。これら組み合わせセルはそれぞれバイポーラ電極をコネクターとして、直列につながっている。要約すると図3Bの通り四つのセル(E1/B1, B1/E2, B2/E2, E1/B2)があり、うち、E1/B1とB1/E2は直列接続、B2/E2, E1/B2も同様である。そしてこれら二つの直列接続のパックはエレメント内で並列につながれる。このエレメントは直列接続セルと並列接続セルを内部に含む。巻きを行うワインディング・マシン次第だが、複数の電極シートとセパレーターシートを同時に同心円状に巻き、図2Bや図3Bに示す通り複数のバイポーラ電極を作る。水電解液ではバイポーラ電極を一枚増やす毎に1.0ボルトの電圧を得、また有機電解液ではエレメントに一枚のバイポーラ電極を追加すれば2.5ボルト±0.2だけ電圧を増やすことが出来る。
【0025】
シリンダー型スーパーキャパシタ・エレメントの製造はワインディング・マシンで行う。バイポーラ電極追加で電圧を上げることが出来るが、ワインディング・マシンの製造は高価であり、操作自体も複雑になってくる。そのためこの製法による“イントラ・エレメント”直列接続のバイポーラ電極枚数は制限を受ける。しかし積み上げ式“イントラ・エレメント”直列接続は製造がより簡単に電圧を上げることができる。図4Aから4Cは、七枚のスーパーキャパシタ電極(300)を積み上げ式で示した。先端電極E1とE2は端子が出ている。B1からB5は5枚の電極である。スタック300には有機電解質を使い、表面積20 cmの電極でスタックの各セルは2.5ボルト、30Fの能力を持つ。図4Bのパック310は6枚のセパレータ(S1からS6)からなり、パック300に順番に挿入し、S1は最初の電極ギャップに入り、S2は第二の電極ギャップに入る。図4Cはそれを箱型(33)に入れた。
【0026】
電極組み立て300の全6セルは直列でバイポーラ電極につながり、エレメントは全体で15ボルトの稼動電圧を持つ。トータルのキャパシタンスは5F である。30を6で割った数字になる。15ボルト、5Fのエレメント、P1、P2、P3をさらに並列につなぎ、つまりコネクター61で正極に、コネクター63で負極につなぐ(図4D)。15ボルト電圧、15Fのスーパーキャパシタモジュール350が一つの筐体55に組み立てた。筐体の上部は蓋で密閉し、湿度、酸素等の環境からの劣化を防ぐため、必要な処置を施す。筐体と蓋の素材はアルミ、ステンレススチール、ポリエチレン、ポリプロピレンが使われる。P1からP3までのエレメントは筐体55に入るが、これは“イントラ・ハウジング並列接続”で組み立てる。もし、P1からP3を筐体55内で直列接続されると、45ボルト、1.67Fのスーパーキャパシタが形成される。これは“イントラ・ハウジング直列接続”である。“イントラ・エレメント”、“イントラ・ハウジング”直列、並列、そしてその組み合わせを使うと、様々な要求にあうスーパーキャパシタを単体、モジュール等で製造できる。
【0027】
円筒型長方形型のいずれもバイポーラ・エレメントを形成する個々の電極の周囲を密閉する代わりに、組み立てた後にエレメントの周辺の部分のみを密閉するだけで良い。図1の円筒型の場合、ロールの底部をシーリングすればよく、ロール上部の端子が突き出ている側は、エレメントに電解質を注入するために開放していて構わない。上部開放のためスーパーキャパシタ稼動時に出るかもしれないガス等のエスケープが期待できる。同様に図4Cでは長方形エレメントの3方向の側面のみをシーリングし、端子側はガス抜きまたは電解質注入用に開放しておける。バイポーラ・エレメント内の各電極すべての側面をシーリングしないので、電解質はエレメント内のセル間を移動し、“ツリー化”(樹状結晶)という隣接電極表面間のショートにつながる。電極ショートは直列接続の失敗または電圧降下の原因になりうる。それにもかかわらず、電解質のプールでもバイポーラ電極使用の電気化学セルは、側面シーリングなしで電極をそれぞれ直列接続しても高電圧を実現している。米国特許6,307,270、3,954,502は例として挙げられる。
【0028】
スーパーキャパシタ使用で、不純物と使用金属系物質の接触で起きるガス発生は、製品の信頼性を損なう。そのため原料となる活性炭素、バインダー、電解質はすべて厳格にコントロールする。また、巻き式、積み上げ式のいずれでもエレメント形成は電極、セパレーターの組み合わせ時も高張度の制御技術を要する。パックされたエレメントの部分的側面シーリングは、水等不純物と露出された金属物質の接触による化学反応を防止できる。本発明のエレメントのエッジシーリングは、エポキシ、ゴム、シリコン、ウレタン等をディップコート、スピンコート、注入で行うことが出来る。さらに部分シーリングは高電圧スーパーキャパシタ製造時のコストを削減することが出来る。
【0029】
高電圧エレメントを基礎部品として、“イントラ・ハウジング”直列、並列方式により様々な電圧、容量の製品を実現できる。複数のエレメントを使う“イントラ・ハウジング”接続は従来の方法に比べて個別にスーパーキャパシタを密閉するより少ない材料で同一の電圧を実現する。さらに重要なのは本発明の“イントラ・ハウジング”直列接続によるスーパーキャパシタモジュール製造は、充電で本来の電圧を実現するとき、モジュール内の個々のエレメント間で均一の電圧分布が得られることである。電圧均一分布の理由は、一定の温度共有と、圧力環境が全く同一でモジュール内で共有しているからである。さらにエレメント間の接続距離が短いため、電気抵抗も少なくなる。その結果、直列接続時の充電、放電時に起きうる電圧不均等防止の余計な保護回路も必要なくなる。
【0030】
例1:
二種類のスーパーキャパシタAとBを使う。両者とも同じ材料、活性炭素、有機電解質で製造されるが違う長さのアルミ筐体に入れる。Aは両サイドをコーティングした二つの電極を持つ。Bは片側のみをコーティングした二枚の先端電極と一枚のバイポーラ電極。図5と表1で示す。
【表1】
【0031】
表1の通り、AはBの電圧を得るために2本の直列接続が必要である。そのためAが2本で最低直径が36mm、重量が16gである。明らかにB単体より大きく重い。図5では、基準電極を使わないでボルタモCVテストの結果を比較して表示した。CVスキャンを毎秒50mVで-0.5Vから5.0V範囲で記録した。電圧(E)を継続的に変化させ、電流(i)の変化をプロットした。CVスキャンの最初のサイクルで、Aの2本直列のほうがBよりも、電圧範囲内の両極端でスキャンを反転させると、より速い電流のスイッチが観測できるが、これは単一のバイポーラの方が一般のもの2本直列よりも高いESRを持つことを示す。同じ電圧を実現した一般の直列接続のスーパーキャパシタと比べて、バイポーラ・スーパーキャパシタは低い容量と高いESRを性質として持つ。しかし、バイポーラの持つ高稼働電圧とコンパクトなサイズは、ESRとキャパシタンスに対する要求の少ないアプリケーション(PC,携帯端末等)には都合が良い場合がある。図5のスーパーキャパシタBの二千回目のボルタモグラムのサイクルと最初のスキャンをオーバーラップして示しているが、充電放電サイクルの劣化は無いことがわかる。よって、本発明“イントラ・エレメント”直列接続はバイポーラ・スーパーキャパシタの製造工程を簡単化するだけでなく、製品の信頼性を著しく向上させる。
【0032】
第2例として表2を挙げる。3枚のバイポーラ電極使用で電圧10ボルトを持つバイポーラ・スーパーキャパシタを5本用意した。5本の10ボルト耐圧スーパーキャパシタの電気特性を表2に示した。
【表2】
【0033】
5本とも電気特性は同様な内容である。IRドロップ(電流Iと抵抗Rの積の低下)は、内部抵抗を持つキャパシターが放電で失うエネルギーロスを表わす。IRドロップが低い実働エネルギーが多いことになる。表2のバイポーラ・スーパーキャパシタは5枚のセパレーターと5枚の電極を同心円状に巻いた。10枚のシートを巻くワインディングマシンはまだ入手していないので、手作りで用意したサンプルである。手作りサンプルのデータから判断して、大量生産時はより高い電気特性を期待できる。
【0034】
第3例として表3を挙げる。4個の長方形型バイポーラ・スーパーキャパシタを準備した。複数の薄い電極プレートを使い、寸法は縦5cm横10cmである。各個ともに端子の出ている両端電極2枚を使う。これは4つの電極スタックを2つのグループに分け、第一グループは25枚のバイポーラ電極を使い、第二グループには26枚の電極を使う。すべて4つのスタックはそれぞれ3側面を密閉したが、端子側の側面は開放したままである。ここから有機電解質を注入する。最後に4つのエレメントは個別にプラスチックで密閉包装され、63mm x 130mm x 12mmの寸法のスーパーキャパシタになる。
【表3】
【0035】
表3の通り、スーパーキャパシタの電圧は65ボルト或いは67ボルトで、リーク電流は低電圧での使用の方が、ずっと小さい。低電圧でのスーパーキャパシタの使用はその製品寿命を延ばすことになる。本発明の“イントラ・エレメント直列接続”によりバイポーラ・スーパーキャパシタの製造、特にスタック式の場合、セル単位当たりわずか2.0ボルトを使えば、簡単に高電圧製品が、可能になる。応用の分野が広がる。図6の放電カーブは表3のスーパーキャパシタのものであるが、60ボルトでの素晴らしいデータを示している。
【0036】
[結論]
【0037】
上記の例で明らかな通り本発明の“イントラ・エレメント直列接続により高電圧バイポーラ・スーパーキャパシタを製造できる高い可能性を詳述した。“イントラ・ハウジング直列、並列、組み合わせ接続”で本発明では、色々な用途に合ったモジュールをカスタムで準備でき、パイポーラースーパーキャパシタの高エネルギー密度を実現する。そのため、これら高性能エレメントを基礎にして、各種電気製品、電気自動車、オートメーション等に適用できる。
【0038】
単エレメント内に複数の電極を直列接続により、高電圧を持った単体のスーパーキャパシタの製造が可能になった。同様に複数エレメントをイントラ・ハウジング直列接続し単筐体に収納し、コンパクトな高電圧スーパーキャパシタの製造が可能になった。単体あるいはモジュールとして高電圧スーパーキャパシタの存在により、キャパシターを、特に大電力応用(電気自動車、電動工具、オートメーション機械等)の電力管理にも利用を広げることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のバイポーラ・エレメント及びバイポーラ・スーパーキャパシタは電気自動車、電動工具、オートメーション機械等に応用できるので産業上の有用性がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と接続するための専用の手段を持つ2つの端末電極と、
電源とは接続手段を持たず、端末電極間に位置するか或いは各端末電極に続いて位置する、少なくとも一つの中間電極と、
電極とともに同心円上に巻かれ、丸いエレメントとして形作る、各電極毎に配置されるセパレーターと、
接着剤でシーリングされる丸いエレメントの一方の端と、
電極とセパレーターを満たす電解質を注入される丸いエレメントの別の一方と、
エネルギー貯蔵のために構成される電解質を注入されシーリングされた丸いエレメントを包む筐体と、を備え、この中には二つの同一のバイポーラグループから成り、一つはすべての電極を直列に接続し、もう一つは二つの端末電極を共有する並列に接続する電極から成るエネルギー貯蔵のためのバイポーラ・エレメント。
【請求項2】
電解質注入用に選ばれた丸いエレメントの端は電源と接続する手段を持たない請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項3】
丸いエレメントはディプ塗布、スピン塗布、射出形成によりシーリングされる請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項4】
使用接着剤の種類は、エポキシ、シリコーン、ゴム、ウレタン、それらの組み合わせから選択する請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項5】
電解質はテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレイト、テトラメチルアンモニウムテトラフルオロボレイト、メチルトリエチルアンモニウムテトラフルオロボレイトから成る一連の溶液を含む有機溶液である請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項6】
電解質はアセトニトリル、ジメチルカーボネート、ダイエチルカーボネイト、エチレンカーボネイト、メチルプロピルカーボネイト、プロピレンカーボネイト、ガンマブチロラクトン、それらの組み合わせからなる溶媒を含む有機溶液である請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項7】
各バイポーラグループの稼動電圧は2.5ボルトの倍数で決まるが、中間電極の枚数に依存する請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項8】
容量はバイポーラグループを構成する電極の表面積で決まる請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項9】
エレメントはバイポーラグループの容量の合計に等しい容量を持つことになる請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項10】
電源と接続するための専用の手段を持つ2つの端末電極と、
電源とは接続手段を持たない端末電極間に位置する少なくとも一つの中間電極と、
多面的形状エレメントを形成するため各電極間に隣り合って挿入されるセパレーターと、
電源接続のための物理的手段のための二つの側面と、電源に接続しない四つの側面を持つ多面的形状エレメントと、
接着剤でシーリングされる多面的形状エレメントの三つの側面と、
電極とセパレーターに有機電解質を注入したあとの多面的形状エレメントの残りの側面と、
直列接続をした少なくとも3枚の電極を含むバイポーラ・スーパーキャパシタを形成するために多面的形状エレメントに電解質を注入し、エレメントを密閉包含する筐体で、キャップを持つ筐体と、
を備えているエネルギー貯蔵のためのバイポーラ・スーパーキャパシタ。
【請求項11】
稼動電圧は2.5ボルトの倍数で決まるが、中間電極の枚数に依存する請求項10のバイポーラ・スーパーキャパシタ。
【請求項12】
筐体内には分離した部屋は無い請求項10のバイポーラ・スーパーキャパシタ。
【請求項13】
多面的形状エレメントの側面のシーリングが二つの相対する電極により定義されるそれぞれのスペース内に有機電解質を閉じ込める請求項10のバイポーラ・スーパーキャパシタ。
【請求項1】
電源と接続するための専用の手段を持つ2つの端末電極と、
電源とは接続手段を持たず、端末電極間に位置するか或いは各端末電極に続いて位置する、少なくとも一つの中間電極と、
電極とともに同心円上に巻かれ、丸いエレメントとして形作る、各電極毎に配置されるセパレーターと、
接着剤でシーリングされる丸いエレメントの一方の端と、
電極とセパレーターを満たす電解質を注入される丸いエレメントの別の一方と、
エネルギー貯蔵のために構成される電解質を注入されシーリングされた丸いエレメントを包む筐体と、を備え、この中には二つの同一のバイポーラグループから成り、一つはすべての電極を直列に接続し、もう一つは二つの端末電極を共有する並列に接続する電極から成るエネルギー貯蔵のためのバイポーラ・エレメント。
【請求項2】
電解質注入用に選ばれた丸いエレメントの端は電源と接続する手段を持たない請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項3】
丸いエレメントはディプ塗布、スピン塗布、射出形成によりシーリングされる請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項4】
使用接着剤の種類は、エポキシ、シリコーン、ゴム、ウレタン、それらの組み合わせから選択する請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項5】
電解質はテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレイト、テトラメチルアンモニウムテトラフルオロボレイト、メチルトリエチルアンモニウムテトラフルオロボレイトから成る一連の溶液を含む有機溶液である請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項6】
電解質はアセトニトリル、ジメチルカーボネート、ダイエチルカーボネイト、エチレンカーボネイト、メチルプロピルカーボネイト、プロピレンカーボネイト、ガンマブチロラクトン、それらの組み合わせからなる溶媒を含む有機溶液である請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項7】
各バイポーラグループの稼動電圧は2.5ボルトの倍数で決まるが、中間電極の枚数に依存する請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項8】
容量はバイポーラグループを構成する電極の表面積で決まる請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項9】
エレメントはバイポーラグループの容量の合計に等しい容量を持つことになる請求項1のバイポーラ・エレメント。
【請求項10】
電源と接続するための専用の手段を持つ2つの端末電極と、
電源とは接続手段を持たない端末電極間に位置する少なくとも一つの中間電極と、
多面的形状エレメントを形成するため各電極間に隣り合って挿入されるセパレーターと、
電源接続のための物理的手段のための二つの側面と、電源に接続しない四つの側面を持つ多面的形状エレメントと、
接着剤でシーリングされる多面的形状エレメントの三つの側面と、
電極とセパレーターに有機電解質を注入したあとの多面的形状エレメントの残りの側面と、
直列接続をした少なくとも3枚の電極を含むバイポーラ・スーパーキャパシタを形成するために多面的形状エレメントに電解質を注入し、エレメントを密閉包含する筐体で、キャップを持つ筐体と、
を備えているエネルギー貯蔵のためのバイポーラ・スーパーキャパシタ。
【請求項11】
稼動電圧は2.5ボルトの倍数で決まるが、中間電極の枚数に依存する請求項10のバイポーラ・スーパーキャパシタ。
【請求項12】
筐体内には分離した部屋は無い請求項10のバイポーラ・スーパーキャパシタ。
【請求項13】
多面的形状エレメントの側面のシーリングが二つの相対する電極により定義されるそれぞれのスペース内に有機電解質を閉じ込める請求項10のバイポーラ・スーパーキャパシタ。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【公表番号】特表2010−524200(P2010−524200A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542854(P2009−542854)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【国際出願番号】PCT/JP2008/057641
【国際公開番号】WO2008/130042
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(306011610)リンクロス株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【国際出願番号】PCT/JP2008/057641
【国際公開番号】WO2008/130042
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(306011610)リンクロス株式会社 (12)
【Fターム(参考)】
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