説明

バキュームカー

【課題】バキュームカーのみで、汚水槽からの汚水等の汲み取り作業と洗浄作業とを行えるようにする。
【解決手段】バキュームカー1の自走可能なトラック本体2上に正面から見て長軸が車幅方向に延びる楕円形のレシーバタンク6と、このレシーバタンク6に汚泥を吸引する真空ポンプ4とを搭載する。さらに、このレシーバタンク6の上面に、このレシーバタンク6に接続される吸引ホース21を巻き取る吸引ホース用ホースリール22を設置する。そして、トラック本体2のエンジンあるいはバッテリーで洗浄装置40(水ポンプ)を駆動し、レシーバタンク6上面に設置した水タンク41から洗浄ホースを通して放水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプの吸引力を利用してレシーバタンク内にし尿や汚水を吸引するバキュームカーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、自走可能なトラック本体と、このトラック本体上に搭載されたレシーバタンクと、このレシーバタンクに汚泥を吸引する真空ポンプとを備えたバキュームカーは知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種のバキュームカーは、駐車した場所からレシーバタンクに接続された吸引ホースを汚水槽等まで延ばしてし尿や汚水を汲み取る作業を行う。このため、この吸引ホースを巻き取る吸引ホール用ホースリールは、比較的大きなものとなり、通常、レシーバタンクの上面に設置される。このような場合、車高制限の関係から、レシーバタンクの形状は、正面から見たときに長軸が車幅方向に延びる楕円形となっている。
【特許文献1】実公昭61−14770号公報(特に第3図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のバキュームカーは、給水装置を備えていないため、汚水槽から汚水等を汲み取った後などに汚水槽を洗浄するために別に洗浄車を必要とする場合があった。このため、2台分の作業スペースを必要とすると共に、多くの人員を必要とし、作業効率が悪いという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、バキュームカーのみで、汚水槽からの汚水等の汲み取り作業と洗浄作業とを行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、バキュームカーに洗浄装置を設けた。
【0007】
具体的には、第1の発明では、自走可能なトラック本体と、該トラック本体上に搭載され、正面から見ると長軸が車幅方向に延びる楕円形のレシーバタンクと、該レシーバタンクに汚泥を吸引する真空ポンプと、該レシーバタンクの上面に設置されると共に、該レシーバタンクに接続される吸引ホースを巻き取る吸引ホース用ホースリールとを備えたバキュームカーを対象とし、
上記バキュームカーは、上記トラック本体のエンジンあるいはバッテリーで駆動される洗浄装置を備えている。
【0008】
上記の構成によると、トラック本体のエンジンあるいはバッテリーの動力を利用して洗浄水を放水することにより、汚水槽の汲み取り後の汚水槽の洗浄が行われる。このため、別に洗浄車を必要とするとはないので、余計な駐車スペースや多くの人員を必要としない。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、
上記洗浄装置は、
上記レシーバタンク上面に設置した水タンクと、
上記トラック本体のエンジンあるいはバッテリーで駆動される水ポンプと、
上記水タンク及び水ポンプに接続される洗浄ホースとを備えている。
【0010】
上記の構成によると、トラック本体のエンジンあるいはバッテリーで水ポンプを駆動してレシーバタンク上の水タンクから洗浄ホースを介して洗浄水を放水することにより、汚水槽の汲み取り後の汚水槽の洗浄が行われる。このため、別に洗浄車を必要とするとはないので、余計な駐車スペースや多くの人員を必要としない。また、水タンクを正面視楕円形のレシーバタンク上の空いたスペースに配置しているので、車両の全高が増えることはない。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
上記洗浄装置は、上記水ポンプの吐出側に圧力調整弁を有し、該圧力調整弁の戻り側は、上記水タンクに接続されている。
【0012】
上記の構成によると、圧力調整弁の戻り側に水が流れるようにすることで、水ポンプを利用して水タンクに給水が行われる。
【0013】
第4の発明は、第1乃至第3の発明において、
上記水タンクは、上記レシーバタンク上面に左右一対設けられている。
【0014】
上記の構成によると、水タンクが左右に配置されているので、質量バランスがよい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、トラック本体のエンジンあるいはバッテリーで駆動される洗浄装置を設けたことにより、バキュームカーのみで汚水槽からの汚水等の汲み取り作業と、洗浄作業とを行うことができるので、小さい作業スペースで作業効率を向上させることができる。
【0016】
第2の発明によれば、正面視楕円形のレシーバタンク上面に水タンクを設置してトラック本体のエンジンあるいはバッテリーで水ポンプを駆動して洗浄ホースから洗浄水を放水するようにしたことにより、車両の全高を増やすことなく、バキュームカーのみで、容易に汚水槽からの汚水等の汲み取り作業と洗浄作業とを行うことができる。
【0017】
第3の発明によれば、水ポンプにより水タンクに給水を行うようにしたことにより、給水作業を極めて容易に行うことができる。
【0018】
第4の発明によれば、水タンクをレシーバタンク上面に左右一対設けたことにより、バキュームカーの質量バランスがよくなり、運転操作がしやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1乃至図3は、本発明の実施形態のバキュームカー1を示し、このバキュームカー1は、自走可能なトラック本体2を備えている。トラック本体2は、図示しないエンジンを備え、このエンジンには、動力伝達装置3(図5にのみ示す)が設けられている。動力伝達装置3からの動力は、真空ポンプ4及び水ポンプ5(図5及び図6に示す)に伝達されるようになっている。なお、水ポンプ5はトラック本体2に搭載のバッテリー(図示せず)に直接接続したモータで駆動してもよい。
【0021】
上記トラック本体2上には、正面から見ると長軸が車幅方向に延びる楕円形の前後に長いレシーバタンク6が搭載されている。本実施形態では、レシーバタンク6は固定式であるが、ダンプ可能なものでもよい。このレシーバタンク6には、上記真空ポンプ4が接続されている。
【0022】
具体的には、図4に示すように、レシーバタンク6の上方には、フロートバルブ7が設けられ、このフロートバルブ7を介して接続用エア配管9が四方向弁10に接続されている。なお、接続用エア配管9の途中には、セーフティバルブ8が接続され、レシーバタンク6の過加圧を防止している。四方向弁10の1つのポートがドレンセパレータ12に接続され、さらに、チェックバルブ13を介して2つの真空ポンプ4の吸引口4aに接続されている。真空ポンプ4の吐出口4bは、サブオイルセパレータ14を介してオイルセパレータ15に接続され、四方向弁10の1つのポートに接続されている。四方向弁10の残りの1ポートは、脱臭装置16に接続されている。サブオイルセパレータ14及びオイルセパレータ15で回収されたオイルは、オイルストレーナ17を介して真空ポンプ4に戻されるようになっている。
【0023】
また、レシーバタンク6の背面に設けた吸引バルブ20を介して吸引ホース21が接続されている。この吸引ホース21は、通常、40m〜60mの長さのものであるため、レシーバタンク6の上面に設置された円柱状の吸引ホース用ホースリール22に巻き取られている。そして、エンジンの動力を利用して真空ポンプ4を駆動し、レシーバタンク6内の気圧を下げて吸引ホース21からし尿や汚水等を吸引可能に構成されている。レシーバタンク6が正面から見たときに楕円形状であるので、吸引ホース用ホースリール22を設けても全高規制内に収まるようになっている。
【0024】
また、レシーバタンク6の後方下端に設けた排出バルブ23には、排出用ホース(図示せず)が接続可能となっている。この排出バルブ23は一対設けているが、1つのみ設けてもよい。
【0025】
図5に示すように、動力伝達装置3に伝達された動力でギヤポンプ25を駆動し、その高圧油が電磁パイロット切換弁26を介して油圧モータ27に供給され、この油圧モータ27によって水ポンプ5が駆動されるようになっている。なお、作動油は、リターンフィルタ28を介してオイルタンク29に戻される。
【0026】
そして、本発明の特徴として、バキュームカー1は、加圧された洗浄水を放出するための洗浄装置40を備えている。洗浄装置40は、レシーバタンク6上面に例えば、一対の水タンク41を備えている。水タンク41は、正面視楕円形のレシーバタンク6上の空いたスペースに左右均等に配置されているので、車両の全高が増えることはなく、質量バランスもよい。図6に示すように、この水タンク41は、給水ホース42を介して水ポンプ5に接続されている。水ポンプ5の圧力は、該水ポンプ5の吐出側に設けた圧力調整弁43で調整可能に構成されている。圧力調整弁43から延びる接続用水ホース44は、スイベルジョイント45を介して洗浄ホースリール46に接続され、この洗浄ホースリール46に巻き取られた洗浄ホース47の先端の放水ガン48から加圧された洗浄水が放水されるようになっている。洗浄ホースリール46は、例えば、トラック本体2の後端下側に設けられている。スイベルジョイント45と圧力調整弁43との間には、給水用開閉弁49が設けられている。
【0027】
また、圧力調整弁43の戻り側は、水タンク41に接続されている。水ポンプ5の吸水側には、Y型ストレーナ50が設けられている。Y型ストレーナ50には、ドレーンコック51が接続され、このドレーンコック51を開くことでY型ストレーナ50内に回収されたごみが排出されるようになっている。各水タンク41にも、ドレーンコック51が接続され、このドレーンコック51を開くことで各水タンク41内の水が排出されるようになっている。水タンク41には、給水用バルブ52が接続され、加圧された水道水が給水ホース57から給水可能となっている。また、貯水タンク56から給水可能とするために、給水バルブ53,54,55が設けられている。給水用開閉弁49を閉じて圧力調整弁43の戻り側に給水することで、水ポンプ5を利用して水タンク41に給水を行えるようになっている。
【0028】
−作動−
次に、本実施形態にかかるバキュームカー1の作動について説明する。
【0029】
まず、し尿や汚水等の吸引を行う場合には、図4の一点鎖線の矢印でエアの流れを示すように、PTOを介して真空ポンプ4を駆動させ、レシーバタンク6内の気圧を低下させる。このことで、吸引ホース21からレシーバタンク6内にし尿等が回収される。真空ポンプ4の故障の原因となるエア中の水分は、ドレンセパレータ12で吸収される。真空ポンプ4から吐出されたエアは、サブオイルセパレータ14及びオイルセパレータ15でオイルを回収された後、脱臭装置16を介して大気に放出される。
【0030】
一方、レシーバタンク6内の回収物を排出するときには、図4の実線の矢印でエアの流れを示すように、まず、PTOを介して真空ポンプ4を駆動させると共に、四方向弁10を切り換えることにより、レシーバタンク6内を加圧させる。このことで、排水用ホースからレシーバタンク6内の回収物を排出する。なお、中正時のエアの流れを破線で示す。
【0031】
そして、汚水槽からし尿等を回収した後に汚水槽を洗浄するには、まず、図5に示すように、動力伝達装置3に伝達された動力でギヤポンプ25を駆動する。電磁パイロット切換弁26を操作することで、ギヤポンプ25からの高圧油が電磁パイロット切換弁26を介して油圧モータ27に供給され、この油圧モータ27によって水ポンプ5が駆動される。すると、図6に矢印で示すように、放水ガン48を操作することで、レシーバタンク6上の水タンク41から洗浄ホース47を介して洗浄水が放水される。このとき、別に洗浄車を必要とすることはないので、余計な駐車スペースや多くの人員を必要としない。例えば、洗浄後の汚水を吸引ホース21から同時に吸引すれば極めて効率がよい。
【0032】
また、水タンク41に給水を行う場合には、まず、補充用ホース57を水道等につなぎ、給水バルブ52を開いて破線の矢印のように水を供給する。また、貯水タンク56から給水する場合には、給水バルブ53,55を開き、給水バルブ54、ドレーンコック51及び給水用開閉弁49を閉じ、水ポンプ5を駆動する。このことで、破線の矢印のように、貯水タンク56の水が各水タンク41に供給される。
【0033】
−実施形態の効果−
したがって、本実施形態にかかるバキュームカー1によると、正面視楕円形のレシーバタンク6上面に水タンク41を設置してトラック本体2のエンジンあるいはバッテリーで水ポンプ5駆動して洗浄ホース47から洗浄水を放水するようにしたことにより、バキュームカー1のみで、汚水槽からの汚水等の汲み取り作業と汚水槽の洗浄作業とを行うことができるので、小さい作業スペースで作業効率を向上させることができる。
【0034】
また、水ポンプ5により水タンク41に給水を行うようにしたことにより、給水作業を極めて容易に行うことができる。
【0035】
さらに、水タンク41をレシーバタンク上面に左右一対設けたことにより、バキュームカー1の質量バランスがよくなり、運転操作がしやすい。
【0036】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0037】
すなわち、上記実施形態では、レシーバタンク6の前側上面に水タンク41を2つ配置したが、その個数は1個や3個以上でもよい。設置場所は、レシーバタンク6の吸引ホース用ホースリール22のない空いたスペースであればよく、水タンク41の高さが吸引ホース用ホースリール22の高さを超えなければよい。
【0038】
上記実施形態では、洗浄装置40をし尿等の回収後の汚水槽の洗浄に使用したが、回収前に洗浄水を汚水槽内に放水してし尿等を回収しやすくしてもよいし、バキュームカー1自体の洗浄等に使用してもよいことはもちろんのことである。
【0039】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態にかかるバキュームカーの側面図である。
【図2】バキュームカーの平面図である。
【図3】バキュームカーの背面図である。
【図4】バキュームカーのエア配管図である。
【図5】水ポンプを駆動するための油圧配管図である。
【図6】洗浄装置の水配管図である。
【符号の説明】
【0041】
1 バキュームカー
2 トラック本体
4 真空ポンプ
5 水ポンプ
6 レシーバタンク
21 吸引ホース
22 吸引ホース用ホースリール
40 洗浄装置
41 水タンク
44 接続用水ホース
47 洗浄ホース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能なトラック本体と、該トラック本体上に搭載され、正面から見ると長軸が車幅方向に延びる楕円形のレシーバタンクと、該レシーバタンクに汚泥を吸引する真空ポンプと、該レシーバタンクの上面に設置されると共に、該レシーバタンクに接続される吸引ホースを巻き取る吸引ホース用ホースリールとを備えたバキュームカーであって、
上記トラック本体のエンジンあるいはバッテリーで駆動される洗浄装置を備えている
ことを特徴とするバキュームカー。
【請求項2】
請求項1に記載のバキュームカーにおいて、
上記洗浄装置は、
上記レシーバタンク上面に設置した水タンクと、
上記トラック本体のエンジンあるいはバッテリーで駆動される水ポンプと、
上記水タンク及び水ポンプに接続される洗浄ホースとを備えている
ことを特徴とするバキュームカー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバキュームカーにおいて、
上記洗浄装置は、上記水ポンプの吐出側に圧力調整弁を有し、該圧力調整弁の戻り側は、上記水タンクに接続されている
ことを特徴とするバキュームカー。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載のバキュームカーにおいて、
上記水タンクは、上記レシーバタンク上面に左右一対設けられている
ことを特徴とするバキュームカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−138471(P2009−138471A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317521(P2007−317521)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【Fターム(参考)】