説明

バスにおけるリクライニング・シートの配置方法

【課題】利用者が、前後のシートの利用者に気兼ねせずに、背もたれを最大角(160度)に傾けることが出来、かつその前後の間隔を増大させる必要の無いリクライニング・シートの設置方法を提供すること。
【解決手段】背もたれ3と座部5とを備える複数のリクライニング・シート1c,1d,1eを、一方向に向けて配置する。これら複数のリクライニング・シートの内の前後に位置する2個のリクライニング・シートの内の前方に位置するものを第一のリクライニング・シート1cとし、かつその後方に位置するものを第二のリクライニング・シート1dとする。第二のリクライニング・シートが設置される床面13を、第一のリクライニング・シートが設置される床面13より低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長距離路線用バス(以下、「長距離バス」と称する)・列車・船等の乗物、映画館等の劇場、及びプラネタリウム等におけるリクライニング・シートの配置方法に関し、リクライニング・シートの利用者が、前後の座席に座っている利用者に気兼ねすることなく、長時間、フル・フラットに近い状態で、ゆったりとした姿勢をとることを可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路の普及により、またその料金が鉄道・飛行機に比較して廉価であることから、長距離バスが全国的に普及している。長距離バスの場合、乗客は、数時間またはそれ以上それを利用するので、その快適性を保つことは非常に重要である。現在、日本国内で運行可能な最大のバスである、大型スーパーハイデッカー(全長12m × 全幅2.5m × 全高3.8m)の場合、座席数は、縦4列構成で54席(補助席9を含む)であるが、その快適性を向上させたグレードの高い長距離バスでは、その座席数を、縦3列構成で28席程度に減少させて、各シートの幅と前後のシートの間隔を広げ、その快適性を向上させている(特許文献1)。さらに、このようなグレードの高い長距離バスには、背もたれを後方へ傾斜させることができるリクライニング・シート(通常、140度まで傾斜可能)が採用されている(非特許文献1)。夜行運転される長距離バスにおいては、乗客の快適な就寝を可能にするために、座席数を減少させて各シートの幅を広げ、かつシートをリクライニング・シートにすることは、必須である。夜行運転される長距離バスでは、背もたれの高さは、頭まで支えられるように、かなり高くなっている。さらに、長時間座りつづけても楽な姿勢が取れるように、レッグ・レストやフット・レストなどが設置されている。また、このような長距離バスは、通常の路線バスには設けられていない、水洗式のトイレ、簡単な飲料提供設備を備えている。
【0003】
近年、映画の人気が回復して来ている状況で、従来の固定シートに代えて、プレミアムシート等と称したリクライニング・シートを設けた映画館が登場している。このシートは、背もたれを後方に倒せるので、足を十分伸ばせ、3時間座っていても疲れない快適な状況を提供する。これは、豪華なソファ・広々としたロビーと共に、映画館のファーストクラスと言うような環境を実現している。
【0004】
このような状況は、サーカス・ショー等が催される劇場にも当てはまる。天井近くで演じられるサーカス・ショー等を観るには、リクライニング・シートが最適である。同様な理由で、プラネタリウムにおいても、天井に投影される星を見るには、通常のシートに比較して、リクライニング・シートを使用する方が望ましい。さらに、リクライニング・シートの傾斜角が大きく取れないことから、リクライニング・シートに座っている利用者が、ドーム・スクリーン投影される自分の左右の映像を見ることを可能にするために、リクライニング・シートを左右に30度回転可能にしたプラネタリウムがある(非特許文献2)。この場合、リクライニング・シートの回転可能にするために、其々のリクライニング・シートの間には、スペースを設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−208665号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】(楽天トラベル)高速バス・夜行バス予約 グレートアップシート、page 4 of 21(http://travel.rakuten.co.jp/bus/special/gradeup/)
【非特許文献2】名古屋市科学館、プラネタリウム、ドーム (http://www.ncsm.city.nagoya.jp/visit/planetarium/about/domemap.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図6により、28席程度のリクライニング・シートの従来の配置状態を説明する。ここには、複数のリクライニング・シートの内の一部のリクライニング・シート1c、1d、1eが、示されている。床13に設置されている各リクライニング・シートは、背もたれ3とそれに結がるクッション10と、座部5を有している。座部5は、肘掛7と、脚部11とを有している。座部5の奥行寸法をa、その高さをbとし、背もたれ3の寸法をcとし、さらに、前後のリクライニング・シートの距離をdとする。そして、座部5の上面と背もたれ3の形成角をθとする。非特許文献1に示されるようなグレードの高い長距離バスに採用される具体的寸法を用い、aは50cm、bは42cm、cは80cm、dは1mである。リクライニングさせることが出来る最大角は、140度である。図6のリクライニング・シート1a、1b、1cは、これらの数値関係のもとに図示されている。例えば、リクライニング・シート1cの背もたれ3が最大限、つまり140度傾けてられている状態では、リクライニング・シート1cの背もたれ3が邪魔をして、リクライニング・シート1dの利用者がトイレなどのために直立に立ち上ることは、非常に困難である。また、後ろの座席の人に気兼ねして、シートを最大限の140度までリクライニングさせずに、リクライニング角を100〜120度のままにしている利用者もいる。このため、このような問題が発生しない最前列または最後列のシートしか利用しない利用者もいる。
【0008】
従来、10数席のシートしか設置されていない豪華バス等を除き、28席程度のシートが設置されたバスにおいては、リクライニング・シートのリクライニング角を160度にすることは出来なかった。図6においては、点線で示した背もたれ3のポジションは、そのリクライニング角を160度に想定した状態を示す。この状態では、リクライニング・シート1dの利用者は、リクライニング・シート1cの背もたれ3が邪魔をして、立ち上がるどころか、寝返りすら出来ないであろう。従来、この問題は、バス1台の28席のシートを10数席に減らして、リクライニング・シートの前後の間隔を広げることにより、解決されていた。しかしながら、この解決方法は、バス1台に設置できるシート数を半減させてしまうので、経営的には魅力に欠けるものであった。
【0009】
このため、28席程度のリクライニング・シートが従来の方法で配置された長距離バスの場合、利用者は、前後のシートの利用者に気兼ねして、背もたれを最大角(140度)に傾けることが出来ず、ましてや、それを160度にして、フル・フラットに近い状態を得ることは不可能である。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するものであり、利用者が、リクライニング角を160度にして、フル・フラットに近い状態にしても、前後のシートの利用者に気兼ねすることなく、ゆったりと快適に座れる又は横になれるリクライニング・シートの配置方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明においては、背もたれと座部とを備える複数のリクライニング・シートを配置する際に、前記複数のリクライニング・シートを、一方向に配置し、前記複数のリクライニング・シートの内の前記方向で前後に位置する2個のリクライニング・シートの内の前方に位置するものを第一のリクライニング・シートとし、かつその後方に位置するものを第二のリクライニング・シートとし、前記第二のリクライニング・シートが設置される床面を、前記第一のリクライニング・シートが設置される床面より低くする。
【0012】
これによると、複数のリクライニング・シートの内の第一のリクライニング・シートと第二のリクライニング・シートを考察すると、1)第一のリクライニング・シートは、一方向で見て、第二のリクライニング・シートの前方に配置される。さらに、2)第二のリクライニング・シートが設置される床面は、第一のリクライニング・シートが設置される床面より低く配置される。これにより、第二のリクライニング・シートが、第一のリクライニング・シートよりも低い位置に配置されているため、第一のリクライニング・シートの背もたれが、最大限倒されても、第一のリクライニング・シートの背もたれと第二のリクライニング・シートの背もたれの間には、十分なスペースが確保されることになる。この結果、利用者は、リクライニング角を最大限にしても前後のリクライニング・シートの利用者に気兼ねすることなく、ゆったりと快適に座れる又は横になることが出来る。しかも、リクライニング・シートの前後の間隔は、従来のものと変わらないので、一定面積に対するリクライニング・シートの総数に変わりはない。
【0013】
本発明の方法により、複数のリクライニング・シートを、バス、乗用車、列車、船、飛行機等の乗物に配置することができる。
【0014】
本発明の方法により乗物に配置された複数のリクライニング・シートにおいて、背もたれと座部が成す角度を、少なくとも160度とし、フル・フラットに近い状態を実現することができる。このことは、第一のリクライニング・シートが設置される床面と、第二のリクライニング・シートが設置される床面との距離を初め、背もたれ・座部等の寸法を適切に選択することにより実現することが出来る。
【0015】
本発明の方法により複数のリクライニング・シートが配置されているバスのような乗物、特に、利用者が、長時間、就寝するような長距離バス等の場合、利用者が、ゆったりと快適に横になることができる。しかも、リクライニング・シートの前後の間隔が従来のものと変わらないので、バス1台当たりの使用可能なリクライニング・シートの総数は、従来のバスのそれと変わらない。
【0016】
バスのように利用可能な空間が限られている乗物の場合、複数のリクライニング・シートを2群以上に形成することにより、空間利用率を向上させることができる。
【0017】
本発明の方法により、ワゴンなどの乗用車に複数のリクライニング・シートを配置させると、その乗用車のリクライニング・シートを、全てフル・フラットの状態にすることが可能になるので、利用者は、ドライブ先で快適な睡眠を取ることが出来る。
【0018】
本発明の方法により複数のリクライニング・シートが配置されている映画館を含む劇場は、特に、利用者が、ゆったりと快適に横になって天井近くを見ることができるので、天井近くで上演されるサーカス、ショー、映画等の観劇に適する。しかも、全てのリクライニング・シートの設置に要する床面積は、従来のそれと相違しない。
【0019】
本発明の方法により複数のリクライニング・シートが配置されているプラネタリウムは、特に、利用者が、ゆったりと快適に横になって天井近くを見ることができるので、天井近くに投影される星・星座を見るのに適している。しかも、全てのリクライニング・シートの設置に要する床面積は、リクライニング・シートを左右に回転可能にしたプラネタリウムより、少なくて済む。
【発明の効果】
【0020】
本発明のリクライニング・シートの配置方法により、利用者は、リクライニング角を160度にして、フル・フラットに近い状態にしても前後のシートの利用者に気兼ねすることなく、ゆったりと快適に座れ、又は横になることができる。このことは、特に、長距離バスなどの乗物において、効果を奏する。しかも、リクライニング・シートの前後の間隔は、従来のものと変わらないので、使用可能なシート数を減らす必要はない。また、本発明による劇場またはプラネタリウムにおいても、利用者は、天井近くで行われるサーカス等の上演を、または天井近くに映しだされる星・星座を、前後のリクライニング・シートの利用者に気兼ねすることなく、ゆったりと快適に見ることが出来る。また、プラネタリウムにおいて、各リクライニング・シートを回転させることを可能にするためにスペースを設ける必要がないので、プラネタリウムの総スペースを有効に利用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明によるリクライニング・シートの配置方法を示す図である。
【図2】本発明によるリクライニング・シートの配置方法を適用した長距離バスの断面図である。
【図3】本発明によるリクライニング・シートの配置方法を適用した長距離バスの上面図である。
【図4】本発明によるリクライニング・シートの配置方法を適用した劇場の配置図である。
【図5】本発明によるリクライニング・シートの配置方法を適用したプラネタリウムの配置図である。
【図6】従来のリクライニング・シートの配置方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
図1により、本発明のリクライニング・シートの配置方法を説明する。ここで、座部5の奥行寸法a、その高さb、背もたれ3の寸法c、及び前後のリクライニング・シート間の距離dは、図6の従来例におけるものと同一で、それぞれ、a:50cm、b:42cm、c:80cm、d:1mである。座部5の上面と背もたれ3の形成角θは、実線で示された背もたれ3のポジションの場合が、140度で、破線で示されている場合が、160度である。
【0023】
図1には、一方向に配置させた複数のリクライニング・シートの内の3個のリクライニング・シート1c,1d,1eが、示されている。第二のリクライニング・シート1dの脚部11が固定されている床13は、第一のリクライニング・シート1cが固定されている床13より20cmの段差S分低く設置されている。同様に、リクライニング・シート1eが設置されている床13も、第二のリクライニング・シート1dが設置されている床13よりも20cm低く設置されている。図1に示されるように、第一のリクライニング・シート1cと第二のリクライニング・シート1dとの間の段差をSと称し、第二のリクライニング・シート1dと第三のリクライニング・シート1eとの間の段差をSと称する。
【0024】
この段差Sが存在するために、第一のリクライニング・シート1cの背もたれ3を座部5の上面に対し、θ:160度にまで傾けても、第一のリクライニング・シート1cの背もたれ3と第二のリクライニング・シート1dの肘掛7の先端に、25cmもの距離を保つことが可能になる。従って、第二のリクライニング・シート1dの利用者は、例え、リクライニング・シート1eの背もたれ3が、最大限傾けられていても、中腰で、リクライニング・シート1dから立つことができる。さらに、リクライニング・シート1c,1d,1eを160度傾けた場合には、シートは、ほとんどフル・フラットになり、従来のリクライニング・シートに比較し、その快適性は格段に向上する。段差Sを20cmからさらに増大させれば、同一のθ角に対して、リクライニング・シートの背もたれと、その後ろのリクライニング・シートの肘掛との距離はさらに拡大し快適性も、一層向上する。
【0025】
図1においては、第一のリクライニング・シート1cと第二のリクライニング・シート1dに段差Sを設ける関係は、第二のリクライニング・シート1dとリクライニング・シート1eの間にも保たれている。前後のリクライニング・シート間に段差Sを設ける関係は、一方向に向けて配置されている全てのリクライニング・シートに適用させても良いし、一部のリクライニング・シートのみに適用させても良い。
【0026】
(実施形態2)
図2及び3により、リクライニング・シートを本発明の方法により配置させた長距離バスを説明する。図2は、長距離バス9を横から見た図で、図3は、長距離バス9の上面図である。このバス9の大きさは、全長12m、高さ3.8m、幅2.5mである。バス9の先端部には、乗降口20と、運転席15と、前階段22が設けられ、後部には、エンジン・ルーム17が設けられている。さらに、中央部には、後階段24、トイレ21及びドリンク・サービス設備25が設けられている。さらに、手荷物等を収容するトランク・ルーム19が、前後2箇所に設けられている。図2に示されるように、長距離バス9の後部の屋根部分には、長距離バス9が高速で走行する場合の空気抵抗を下げる目的で、曲部23が設けられている。
【0027】
長距離バス9には、第一グループを構成する6組のリクライニング・シート1a〜1fが、其々、段差Sを設けて設置されている。第一グループのリクライニング・シート1a〜1fに加え、バス9の後部には、第二グループを構成する5組のリクライニング・シート1g〜1kが設けられている。これらのリクライニング・シートの各組は、基本的には、横方向に並べられた3列のシートからなる。図3に示されるように、リクライニング・シート1aとリクライニング・シート1bの乗降口20側にある2個のリクライニング・シートは、除去され、そこには、前階段22と乗降口20前の場所が設けられている。また、リクライニング・シート1fとリクライニング・シート1gの中央部分に位置するリクライニング・シートは、それぞれ、除去され、そこには後階段24が設けられている。リクライニング・シート1g、1hが設けられている床の下には、トイレ21と、ドリンク・サービス設備21が設けられている。
【0028】
この長距離バス9には、11組 × 3 − 4 = 29個のリクライニング・シートが配置されている。この数は、従来のハイグレードの長距離バスにおけるシートの数28個より1個多い。これに加え、図3における各リクライニング・シートの幅は65cmであるが、リクライニング・シート1kのみ、その幅を60cmにすれば、この位置においては4シートを設置することができる(ただしシート間に間隔は存在しない)。その結果、長距離バス9全体のシート数は、30個とすることができる。
【0029】
図2に示されるように、リクライニング・シート1gの前にある壁は、このシートに座る利用客が感じる圧迫感を減少させるために、斜め前方に傾けられている。この壁と天井との結合部には、Tが付されている。図3は、上面からバス9を見た図であるが、一点鎖線I−I’( 壁・天井結合部T)より右側に示される部分には、第二グループのリクライニング・シート1g〜1kが実線で、かつ第一グループのリクライニング・シート1eおよび1fが点線で示されている。
【0030】
例えば、バスの外にいる利用客がリクライニング・シート1aの席に行くためには、利用客は、まず、乗降口20から長距離バス9に乗り込む。そして、利用客は、右側にある前階段22を上って、リクライニング・シート1cが設置されている床13に至り、そこから、段差SとSを越えてリクライニング・シート1aに至る。
【0031】
次に、リクライニング・シート1aに座っている利用客が、トイレに行く場合には、利用客は、通路16を通り、リクライニング・シート1fと後階段24の間を通過して、その先にあるトイレ21に至る。また、利用客は、トイレ21の横に設置してあるドリンク・サービス設備25からコーヒ、ジュース等を得ることができる。
【0032】
利用客が、バス9の最後尾にあるリクライニング・シート1kに行くためには、リクライニング・シート1fが設置されている床13から、後階段24を上って、リクライニング・シート1hが設置されている床13に行き、そこから13と13を通って、床13に設置されているリクライニング・シート1kに行く。
【0033】
このような長距離バスでは、リクライニング・シートがほとんどフル・フラットになるので、利用客は、前後の利用客に気兼ねすることなく、安眠することができる。また、例えば、図1において、リクライニング・シート1dが段差S分リクライニング・シート1eより低くなっているので、リクライニング角度を従来のものと同一の140度にしたとしても、リクライニング・シート1dの利用者は、従来のものに比べ、リクライニング・シート1cに対し十分な間隔を持つことができる。
【0034】
さらに、これらのリクライニング・シートに、足裏を支えるフット・レストと脹脛を支えるレッグ・レストとを設けた場合には、足先から頭に至るフル・フラットに近い状態を実現することができる。
【0035】
(実施形態3)
本発明のリクライニング・シートを配置する方法は、ワゴン車等の乗用車にも適用できる。この場合には、運転席を含む一列目のリクライニング・シートの床を、二列目のリクライニング・シートの床より段差S分高くする。さらに、三列目のリクライニング・シートの床を二列目のリクライニング・シートの床より段差S分低くさせてもよい。このような乗用車では、全てのリクライニング・シートが、フル・フラットに近い状況になるので、ワゴン車で夜を明かす場合には、利用者は、快適な睡眠をとることができる。
【0036】
上記説明では、本発明のリクライニング・シートを配置する方法を長距離バス・乗用車に適用した例を説明したが、本発明のリクライニング・シートを配置する方法は、船、列車、飛行機等の乗物にも適用可能である。
【0037】
(実施形態4)
図4により、本発明のリクライニング・シートを配置する方法を劇場に適用した例を説明する。ここでは、実施形態1に示した様に配置した13個のリクライニング・シートが、スクリーン27に向けて配置されている。図4には、リクライニング・シートが一列しか図示されていないが、実際には、図面の垂直方向にリクライニング・シートが複数配置されている。スクリーン27には、映画等が投影される。観客は、フル・フラットに近い状態のリクライニング・シートで映画等を観賞することが出来る。このスクリーン27に代えて、演劇の舞台、サーカスのブランコ等をこの位置に置くこともできる。本発明の方法によれば、総リクライニング・シートに必要な床面積は、従来のものと変わらない劇場を実現することが出来る。
【0038】
(実施形態5)
図5により、本発明のリクライニング・シートを配置する方法をプラネタリウムに適用した例を説明する。実施形態1に示した様に配置した10個のリクライニング・シートが、投影機29の両側に配置されている(図5では、それぞれ、一列のみが図示されている)。投影機29により、星・星座の映像が、ドーム・スクリーン31に投影される。観客は、フル・フラットに近い状態のリクライニング・シートで投影された星・星座を観賞することが出来る。プラネタリウムでは、天井の全面にドーム・スクリーン31が設けられるので、フル・フラットの状態に出来るリクライニング・シートは、プラネタリウムには最適である。本発明の方法によれば、総リクライニング・シートに必要な床面積は、従来のものと変わらないプラネタリウム施設を実現することが出来る。
【0039】
ここまで、本発明が、いくつかの実施形態を例に説明されたが、本発明の範囲が、これらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1a〜1k リクライニング・シート
3 背もたれ
5 座部
7 肘掛
9 バス
10 クッション
11 脚部
13 床
15 運転席
16 通路
17 エンジン・ルーム
19 トランク・ルーム
20 乗降口
21 トイレ
22 前階段
23 曲部
24 後階段
25 ドリンク・サービス設備
27 スクリーン
29 投影機
31 ドーム・スクリーン
〜S段差
T 壁・天井結合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背もたれと座部とを備える複数のリクライニング・シートを配置する方法であって、
前記複数のリクライニング・シートを、一方向に配置し、
前記複数のリクライニング・シートの内の前記方向で前後に位置する2個のリクライニング・シートの内の前方に位置するものを第一のリクライニング・シートとし、かつその後方に位置するものを第二のリクライニング・シートとし、
前記第二のリクライニング・シートが設置される床面を、前記第一のリクライニング・シートが設置される床面より低くする、
複数のリクライニング・シートを配置する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法により、複数のリクライニング・シートを配置した乗物。
【請求項3】
前記背もたれと前記座部が成す角度を、少なくとも160度とすることができる請求項2に記載の乗物。
【請求項4】
前記複数のリクライニング・シートを、少なくとも2群に形成する請求項2または3に記載の乗物。
【請求項5】
前記複数のリクライニング・シートの全てが、前記第一リクライニング・シートと前記第二リクライニング・シートとの関係を有する請求項2〜4の何れかに記載の乗物。
【請求項6】
前記乗物が、フット・レストとレッグ・レストを備える請求項2〜5の何れかに記載の乗物。
【請求項7】
前記乗物が、バスである請求項2〜6の何れかに記載の乗物。
【請求項8】
前記乗物が、乗用車である請求項2〜6の何れかに記載の乗物。
【請求項9】
前記乗物が、列車である請求項2〜6の何れかに記載の乗物。
【請求項10】
前記乗物が、船である請求項2〜6の何れかに記載の乗物。
【請求項11】
前記乗物が、飛行機である請求項2〜6の何れかに記載の乗物。
【請求項12】
請求項1に記載の方法により、複数のリクライニング・シートを配置した劇場。
【請求項13】
前記背もたれと前記座部が成す角度を、少なくとも160度とすることができる請求項12に記載の劇場。
【請求項14】
前記複数のリクライニング・シートの全てが、前記第一リクライニング・シートと前記第二リクライニング・シートとの関係を有する請求項12または13に記載の劇場。
【請求項15】
請求項1に記載の方法により、複数のリクライニング・シートを配置したプラネタリウム。
【請求項16】
前記背もたれと前記座部が成す角度を、少なくとも160度とすることができる請求項15に記載のプラネタリウム。
【請求項17】
前記複数のリクライニング・シートの全てが、前記第一リクライニング・シートと前記第二リクライニング・シートとの関係を有する請求項15または16に記載のプラネタリウム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−236446(P2012−236446A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105238(P2011−105238)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【特許番号】特許第4944999号(P4944999)
【特許公報発行日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【出願人】(596079770)
【Fターム(参考)】