バリ取り装置
【課題】 ワークを搬送する搬送ベルトの搬送面やワーク吸着用の透孔に粉塵や油等の異物が残ることを防ぎ、次のワークに悪影響を与えないバリ取り装置を提供する。
【解決手段】 搬送面4aからその裏面に貫通する無数の透孔4bが形成された無端の搬送ベルト4を有し、この搬送ベルト4の搬送面4aの上に、バリが上面に形成されたワークを載せて搬送するベルトコンベア1と、このベルトコンベア1の上方に配置されて搬送ベルト4上のワークのバリを取るバリ取りヘッドと、搬送ベルト4の裏面側から透孔4bを通じてエアを吸引し、ワークを搬送面4aに吸着させるエア吸引手段6と、エア吸引手段6のエア吸引用ブロア41の排気の一部を搬送ベルト4の搬送面4aに吹き付ける排気吹付け手段45とを備える。
【解決手段】 搬送面4aからその裏面に貫通する無数の透孔4bが形成された無端の搬送ベルト4を有し、この搬送ベルト4の搬送面4aの上に、バリが上面に形成されたワークを載せて搬送するベルトコンベア1と、このベルトコンベア1の上方に配置されて搬送ベルト4上のワークのバリを取るバリ取りヘッドと、搬送ベルト4の裏面側から透孔4bを通じてエアを吸引し、ワークを搬送面4aに吸着させるエア吸引手段6と、エア吸引手段6のエア吸引用ブロア41の排気の一部を搬送ベルト4の搬送面4aに吹き付ける排気吹付け手段45とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パンチプレスやその他各種の板材加工機により、切断や孔明け加工等の板金加工が行われて生じたバリを除去するバリ取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板金からなるワークのバリを除去するバリ取り装置として、バリが上面に形成されたワークをベルトコンベアによって水平方向に搬送し、このワークに対して水平な軸回りに回転するロール状のバリ取り部材を上方から接触させることで、ワーク上面のバリを取る構成のものがある(例えば特許文献1)。ベルトコンベアの搬送ベルトには、搬送面からその裏面に貫通する無数の透孔が形成されており、搬送ベルトの裏面側から前記透孔を通じてエアを吸引することで、搬送中のワークを搬送面に吸着させて動かないようにしている。また、バリ取り部材は、例えば芯部材の周囲に、短冊状の布やすりや紙やすりからなる無数のブラシ毛をロール状に植え付けたものが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−58241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バリ取り装置によるバリ取り処理時には、バリ取り部材により削り取られたバリの粉塵や、摩耗により生じるバリ取り部材の粉塵が発生する。これらの粉塵がワークに付着している油と混じり合ってヘドロ状となり、図14のように、ヘドロ状の異物60が、搬送ベルト4の搬送面4aに付着したり、透孔4bに溜まったりする。搬送コンベア4はゴム等の柔軟性のある材料で作られているため、使用中のバリ取り部材との接触による摩耗で、透孔4bの搬送面4a側の部分が搬送面4aに対して凹んだ凹み部4baとなっており、この凹み部4baに異物60が溜まり易い。このようなヘドロ状の異物60は、後で加工するワークに対して悪影響を与える。特に、透孔4bに残されたヘドロ状の異物60は、ワークの裏面に付着して吸引痕として残る。
【0005】
この発明の目的は、ワークを搬送する搬送ベルトの搬送面やワーク吸着用の透孔に粉塵や油等の異物が残ることを防ぎ、次のワークに悪影響を与えないバリ取り装置を提供することである。
この発明の他の目的は、上記目的のために設けられる排気吹付け手段を効果的な位置に配置することである。
この発明のさらに他の目的は、搬送ベルトの搬送面に付着した異物を除去する効果を高めることである。
この発明のさらに他の目的は、搬送ベルトの各透孔に均等に排気を吹き込んで、各透孔に溜まった異物を効果的に排出させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のバリ取り装置は、搬送面からその裏面に貫通する無数の透孔が形成された無端の搬送ベルトを有し、この搬送ベルトの前記搬送面の上に、バリが上面に形成されたワークを載せて搬送するベルトコンベアと、このベルトコンベアの上方に配置されて前記搬送ベルト上のワークのバリを取るバリ取りヘッドと、前記搬送ベルトの裏面側から前記透孔を通じてエアを吸引し、ワークを前記搬送面に吸着させるエア吸引手段と、前記エア吸引手段のエア吸引用ブロアの排気の一部を前記搬送ベルトの前記搬送面に吹き付ける排気吹付け手段とを備える。
【0007】
この構成によると、エア吸引手段により搬送ベルト上のワークが搬送ベルトの搬送面に吸着された状態で、ベルトコンベアによってワークが一定方向に搬送される。搬送中に、ワークがバリ取りヘッドの下方を通過し、バリ取りヘッドによってワークの上面に形成されているバリが取られる。
【0008】
バリ取りヘッドによるバリ取りの際に生じるバリの粉塵やバリ取りヘッドのバリ取り部材の粉塵と、ワークに付着している油とからなる異物が、搬送ベルトの搬送面に付着したり、搬送ベルトの透孔に溜まったりする。しかし、排気吹付け手段により、エア吸引手段のエア吸引用ブロアの排気の一部を搬送ベルトの搬送面に吹き付けることで、搬送ベルトの搬送面に付着した異物および搬送ベルトの透孔に溜まった異物を除去、または除去され易くする。具体的には、風圧で異物を飛ばして除去する。あるいは、風で異物や搬送ベルトの搬送面を乾燥させて、搬送面が下向きになったときに、異物が搬送ベルトから剥離して自重で落下し易くする。
【0009】
この発明において、前記排気吹付け手段は、前記搬送ベルトにおける戻り部分の搬送面に、前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き付けると良い。搬送ベルトにおける戻り部分は、搬送ベルトの移動経路中のワークの搬送を行わない部分のことである。
搬送ベルトにおける戻り部分の搬送面は、ワークが吸着された状態となることがないので、戻り部分の搬送面に排気を吹き付ければ、搬送ベルトの搬送面に付着した異物および搬送ベルトの透孔に溜まった異物を除去、または除去され易くする効果が高い。
【0010】
この発明において、前記搬送ベルトの前記搬送面における、前記排気吹付け手段により前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き付ける箇所よりも搬送ベルト移動方向の上流側に、前記搬送面に付着した異物を掻き取る掻き取り手段を設けても良い。
上記位置に掻き取り手段を設けると、搬送面に大量の異物が付着している場合でも、排気吹付け手段で排気を吹き付ける前に異物の大半を除去しておくことができる。そのため、排気を吹き付ける効果が残された異物の深層部まで行き渡り、異物が綺麗に除去され易い。
【0011】
この発明において、前記搬送ベルトの前記透孔は、搬送ベルトの移動方向および幅方向に対して散在状態で配置され、かつ前記排気吹出し手段における前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き出す吹出し口は、前記搬送ベルトの幅方向に長いスリット状であっても良い。
搬送ベルトの透孔が搬送ベルトの移動方向および幅方向に対して散在状態で配置されていても、排気吹出し手段の排気の吹出し口が搬送ベルトの幅方向に長いスリット状であれば、すべての透孔に均等に排気を吹き込むことができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明のバリ取り装置は、搬送面からその裏面に貫通する無数の透孔が形成された無端の搬送ベルトを有し、この搬送ベルトの前記搬送面の上に、バリが上面に形成されたワークを載せて搬送するベルトコンベアと、このベルトコンベアの上方に配置されて前記搬送ベルト上のワークのバリを取るバリ取りヘッドと、前記搬送ベルトの裏面側から前記透孔を通じてエアを吸引し、ワークを前記搬送面に吸着させるエア吸引手段と、前記エア吸引手段のエア吸引用ブロアの排気の一部を前記搬送ベルトの前記搬送面に吹き付ける排気吹付け手段とを備えるため、ワークを搬送する搬送ベルトの搬送面やワーク吸着用の透孔に粉塵や油等の異物が残ることを防ぎ、次のワークに悪影響を与えない。
【0013】
前記排気吹付け手段が、前記搬送ベルトにおける戻り部分の搬送面に、前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き付ける場合は、搬送ベルトの搬送面に付着した異物および搬送ベルトの透孔に溜まった異物を除去、または除去され易くする効果が高い。
【0014】
前記搬送ベルトの前記搬送面における、前記排気吹付け手段により前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き付ける箇所よりも搬送ベルト移動方向の上流側に、前記搬送面に付着した異物を掻き取る掻き取り手段を設けた場合は、搬送ベルトの搬送面に付着した異物を除去する効果が高まる。
【0015】
前記搬送ベルトの前記透孔は、搬送ベルトの移動方向および幅方向に対して散在状態で配置され、かつ前記排気吹出し手段における前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き出す吹出し口は、前記搬送ベルトの幅方向に長いスリット状である場合は、搬送ベルトの各透孔に均等に排気が吹き込まれ、各透孔に溜まった異物を効果的に排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施形態にかかるバリ取り装置の正面図である。
【図2】同バリ取り装置の側面図である。
【図3】同バリ取り装置の内部の平面図である。
【図4】同バリ取り装置の内部の正面図である。
【図5】同バリ取り装置の内部の側面図である。
【図6】同バリ取り装置のバリ取りヘッドとヘッド旋回駆動機構の関係を示す拡大側面図である。
【図7】同ヘッド旋回駆動機構のギヤ列の平面図である。
【図8】同バリ取り装置のバリ取りヘッドの概略斜視図である。
【図9】同バリ取りヘッドのバリ取り部材の概略斜視図である。
【図10】(A),(B)は同バリ取りヘッドの動作説明図である。
【図11】同バリ取り装置のエア吸引装置および排気吹付け装置を示す破断正面図である。
【図12】搬送ベルトの透孔と吹出し口および掻き出し手段との位置関係を示す平面図である。
【図13】(A)は掻き取り手段により搬送ベルトの搬送面に付着した異物を掻き取る状態を示す図、(B)は排気吹付け手段により搬送ベルトの透孔に溜まった異物を風圧で飛ばす状態を示す図である。
【図14】バリ取り装置における搬送ベルトに異物が付着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の一実施形態を図1ないし図12と共に説明する。このバリ取り装置は、図1および図2に示すように略直方体の外部カバー40を有し、この外部カバー40の内部に、図3ないし図5に示すように、ワークWを載せて搬送するベルトコンベア1と、このベルトコンベア1の上方に位置し搬送方向(矢印X方向)に並べて配置された第1および第2のバリ取りヘッド11,12とが設けられている。ワークWは、板金等の平板状の板材であって、孔hの孔明け加工や切断加工等が、パンチプレスやその他の板材加工機により施されたものである。
【0018】
ベルトコンベア1は、コンベアフレーム2の前後両端にそれぞれ設けられた一対のローラ3に、無段の搬送ベルト4を掛装して構成される。搬送コンベア4は、ゴム等の柔軟性のある材料で作られている。搬送方向下流側のローラ3は、モータ等の駆動源5により駆動される。コンベアフレーム2は、直方体形状の本体フレーム13に設置されている。
【0019】
ベルトコンベア1には、ワークWを搬送ベルト4の搬送面4aに吸着させるエア吸引手段6が設けられている。このエア吸引手段6は、図11に示すように、搬送ベルト4の全面に分散して無数に設けられ搬送面4aから裏面へ貫通する透孔4b(図12参照)と、搬送ベルト4の搬送側走行経路の下側に設けられて搬送ベルト4の下面に開口した負圧室7と、この負圧室7内のエアを吸引する吸引装置とで構成される。吸引装置は、外部カバー40の外に設置したブロア41等からなる。負圧室7とブロア41との間には、エア中の粉塵を除去するフィルタ42が設けられている。
【0020】
なお、搬送ベルト4の透孔4bは、本来は搬送面4aから裏面にかけて同じ内径であったものが、使用時における後記バリ取り部材22との接触による摩耗により、透孔4bの搬送面4a側の部分が、図11の拡大図に示すように搬送面4aに対してすり鉢状に凹んだ凹み部4baとなっている。
【0021】
図4および図5に示すように、第1および第2のバリ取りヘッド11,12は、共通のヘッド搭載台9に設置されていて、本体フレーム13に対し、ヘッド左右移動機構14およびヘッド昇降機構15を介して、左右方向(搬送ベルト4の幅方向)Yおよび上下方向Zに、ヘッド搭載台9と共に移動可能である。バリ取りヘッド11,12の左右移動は、後で説明するように、旋回および回転との複合動作によりバリ取り効果を向上させるためと、バリ取りヘッド11,12により左右方向Yの処理可能範囲を広げるために行われる。バリ取りヘッド11,12の上下移動は、非処理時にバリ取りヘッド11,12を搬送ベルト4の搬送面4aから離れさせて摩耗を回避する回避動作として行われる。
【0022】
図5に示すように、ヘッド左右移動機構14は、ベルトコンベア1の上方で左右に延びる上フレーム材13aに左右移動体16を左右移動自在に設置し、この左右移動体16を一定範囲で周期的に往復移動させる左右移動駆動源17を設けたものである。上フレーム材13aは、本体フレーム13の一部を成す。左右移動体16は、走行車輪18を有している。左右移動駆動源17はモータからなり、その回転を、クランク機構等の回転・直線運動変換機構を介して左右移動体16に伝達する。なお、ヘッド左右移動機構14によるバリ取りヘッド11,12の移動範囲は、例えば、移動端が搬送ベルト4の左右の縁になる程度とされる。
【0023】
図4に示すように、ヘッド昇降機構15は、左右移動体16に設置されてヘッド搭載台9を昇降案内する昇降ガイド19と、昇降駆動源20とでなる。昇降ガイド19は、複数本のガイドロッドにより構成され、昇降駆動源20には電動モータ等が用いられる。
【0024】
図3に示すように、第1および第2のバリ取りヘッド11,12は、それぞれ垂直な旋回中心O1,O2回りに旋回自在に設けられて、その旋回中心O1,O2回りに両側に延びる複数の水平なスピンドル21と、各スピンドル21に設けられたロール状のバリ取り部材22とを有する。図示例では、第1および第2のバリ取りヘッド11,12は、それぞれスピンドル21の本数が2本であって、これら2本のスピンドル21は互いに一直線上に位置する。各スピンドル21の基端は、上記旋回中心O1,O2回りに回転する中心回転部材25に、軸受(図示せず)を介して回転自在に支持されている。
【0025】
バリ取り部材22は、例えば図8、図9に示すように、芯筒22aの回りにブラシ毛22bを設けたロール状ブラシからなる。ブラシ毛22bは、例えば短冊状の布やすりまたは紙やすり等の可撓性やすり片からなり、その短辺方向が芯筒22aの軸方向に沿うように、芯筒22aの周方向および軸方向に並べて無数に取付けられ、外形がロール状のブラシを構成する。このバリ取り部材22は、芯筒22aでスピンドル21の外周に嵌合し、両端でスピンドル21に止め付けられる。これらスピンドル21とバリ取り部材22とで、一体に回転するロール状の回転バリ取り体23が構成される。
【0026】
バリ取り部材22は、上記ロール状ブラシの他に、セラミックスのロールであっても良い。なお、バリ取り部材22とスピンドル21とは、必ずしも別体である必要はなく、一体の回転バリ取り体23として構成しても良い。
【0027】
図3において、上記第1および第2のバリ取りヘッド11,12は、バリ取りヘッド旋回駆動機構26により互いに同期して旋回させられる。また、各バリ取りヘッド11,12のスピンドル21は、各スピンドル自動駆動機構27,28により回転させられる。
【0028】
第1および第2のバリ取りヘッド11,12は、これらバリ取りヘッド11,12の旋回によるバリ取り部材22の旋回領域R1,R2が互いに重なるオーバーラップ領域R12(図3に斜線を施した部分)が生じるように配置される。このオーバーラップ領域R12は、第1および第2のバリ取りヘッド11,12を、互いに旋回方向を逆方向として同期旋回させた場合に、互いの干渉は回避可能な範囲とされる。
【0029】
バリ取りヘッド旋回駆動機構26は、第1および第2のバリ取りヘッド11,12をオーバーラップ領域R12で互いに干渉させずに、これらバリ取りヘッド11,12を互いに旋回方向を逆回転として同期旋回させる機構である。このバリ取りヘッド旋回駆動機構26は、図10(A),(B)に各動作状態を示すように、いずれか一方のバリ取りヘッド11,12のスピンドル21が、その軸方向が搬送方向Xである前後方向を向いて前記オーバーラップ領域R12に位置するとき、他方のバリ取りヘッド11,12のスピンドル21は、その軸方向が左右方向Yを向いてオーバーラップ領域R12から外れるように位置させる。
【0030】
図6、図7と共に、バリ取りヘッド旋回駆動機構26の具体的構成例を説明する。図6のように、第1および第2のバリ取りヘッド11,12は、それぞれの中心回転部材25が、ヘッド搭載台9の下面に回転支持部材29を介して上記旋回中心O1,O2回りに回転自在支持されている。バリ取りヘッド旋回駆動機構26は、旋回駆動用モータ30と、この旋回駆動用モータ30の回転を2系列に分岐して、各バリ取りヘッド11,12の中心回転部材25に同期して伝達する同期伝達機構31とで構成される。この同期伝達機構31は、各バリ取りヘッド11,12の中心回転部材25にその旋回中心O1,O2と同心に設けられた従動ギヤ32と、これら2枚の従動ギヤ32の間に配置され両従動ギヤ32にそれぞれ噛み合う2枚の中間ギヤ33と、片方の中間ギヤ33に噛み合う駆動ギヤ34とでなるギヤ列により構成される。駆動ギヤ34は、旋回駆動用モータ30の出力軸30aに直接に、または減速機(図示せず)を介して接続されている。上記2枚の中間ギヤ33は、それぞれヘッド搭載台9の下面に支軸35を介して回転自在に支持され、かつ互いに噛み合っている。このように、両バリ取りヘッド11,12の従動ギヤ32が、2枚の中間ギヤ33,33を介して互いに噛み合い状態にあるため、両バリ取りヘッド11,12は、互いの回転方向A,Bを逆方向として同期旋回する。
【0031】
なお、バリ取りヘッド旋回駆動機構26は、上記ように同期伝達機構31を用いる構成とする他に、バリ取りヘッド11,12に対して個別のモータを設け、両モータの回転を電気的に同期させる制御を行うものであっても良い。
【0032】
図6において、各バリ取りヘッド11,12のスピンドル自転駆動機構27,28は、ヘッド搭載台9に設置されたスピンドル駆動モータ36と、このスピンドル駆動モータ36の出力軸に連結されて中心回転部材25の旋回中心O1,O2で回転自在な駆動軸37と、この駆動軸37の回転を各スピンドル21に分岐して伝達する分岐伝達機構38とで構成される。駆動軸37は、中空とされた中心回転部材25内に軸受(図示せず)を介して回転自在に支持されている。分岐伝達機構38は、内部構成の図示は省略するが、例えば駆動軸37に設けられた駆動側傘歯車と、各スピンドル21に設けられて駆動側傘歯車に噛み合う従動側傘歯車等で構成される。
【0033】
第1のバリ取りヘッド11のスピンドル自転駆動機構27と、第2のバリ取りヘッド112のスピンドル自転駆動機構28とは、互いに異なる回転速度でスピンドル21を駆動させる。この場合に、スピンドル21の回転速度を速くする方のバリ取りヘッドは、第1、第2のいずれのバリ取りヘッド11,12であっても良い。また、両バリ取りヘッド11,12は、必ずしもスピンドル21の回転速度を異ならせる必要はなく、同じ回転速度としても良い。
【0034】
図1および図2において、前記ブロア41の排気は、ダクト43を通って外部カバー40内の空間に送られて、バリ取り処理時に発生する粉塵を吹き飛ばすのに利用される。また、外部カバー40に設けたダクト接続口44に集塵ダクト(図示せず)が接続され、外部カバー40内の空間の粉塵が前記集塵ダクトを通って集塵装置(図示せず)へ送られる。
【0035】
前記ダクト43には、途中から分岐させて排気吹付け手段45用のダクト46が接続されている。排気吹付け手段45は、ブロア41の排気の一部を搬送ベルト4の搬送面4aに吹き付けて、搬送面4aに付着した異物および透孔4bに溜まった異物を除去され易くするためのものである。
【0036】
排気吹付け手段45は、図11に示すように、搬送ベルト4における戻り部分の下方に、ブロア41から前記ダクト46を介して排気が送り込まれるエア溜り47を設け、このエア溜り47の上部に設けた吹出し口48から搬送ベルト4の搬送面4aに排気を上向きに吹き付けるようになっている。搬送ベルト4における戻り部分は、搬送ベルト4の移動経路中のワークWの搬送を行わない部分のことであり、この例では、搬送ベルト4における一対のローラ3間の部分に排気を吹き付ける。搬送ベルト4におけるローラ3に掛っている部分に排気を吹き付けるようにしても良い。
【0037】
エア溜り47の上部に設けた吹出し口48は、図12のように、搬送ベルト4の幅方向に長いスリット状である。先に説明したように、搬送ベルト4の透孔4bは、搬送ベルトの移動方向および幅方向に対して散在状態で配置されているが、吹出し口48が上記のようなスリット状であると、すべての透孔4bに均等に排気を吹き込むことができる。
【0038】
また、上記吹出し口48よりも搬送ベルト移動方向の上流側の位置に、搬送ベルト4の搬送面4aに付着した異物を掻き取る掻き取り手段50が設けられている。この例の掻き取り手段50は、搬送ベルト4と同程度の幅で先端が鋭利に形成された板状のスクレーパであって、このスクレーパを搬送ベルト4の搬送面4aに押し当てて異物を掻き取る構成である。掻き取り手段50は他の構成であってもよい。例えば、ワイパーのように掻き取り用部材(図示せず)を搬送面4aに沿って移動させる構成としてもよく、あるいはブラシ状の掻き取り用部材(図示せず)を、先端が搬送面4aに接する状態で回転または直線運動させる構成としてもよい。
【0039】
この構成の動作を説明する。人手により、ベルトコンベア1の図1における左端に、板金加工品である板材のワークWが載せられる。ワークWは、エア吸引手段6により搬送ベルト4の搬送面4aに吸着された状態で、図1の右方向へ搬送される。この搬送中に、ワークWが第1および第2のバリ取りヘッド11,12の下方を通過し、これらバリ取りヘッド11,12によってワークWの上面に形成されているバリが取られる。ベルトコンベア1の右端で、バリが取られたワークWが、人手により取り上げられる。
【0040】
搬送ベルト4の戻り行程において、まず図13(A)のように、掻き取り手段50によって、搬送ベルト4の搬送面4aに付着している異物60が掻き取られる。次に、図13(B)のように、排気吹付け手段45の吹出し口48から搬送ベルト4の透孔4b内へブロア41の排気が吹き付けられて、透孔4bの凹み部4baに残っている異物60が風圧で飛ばされて除去される。掻き取り手段50による掻き取りや、排気吹付け手段45による排気の吹き付けで、搬送ベルト4の搬送面4aおよび透孔4b内の異物60が完全に除去されなくても、排気を吹き付けることで残った異物60が乾燥するため、搬送ベルト4から剥離しやすくなる。そのため、搬送面4aを下向きにして搬送ベルト4が移動中に、異物60が自重で落下する。
【0041】
この実施形態のように、排気吹付け手段45によりブロア41の排気を吹き付ける箇所よりも搬送ベルト移動方向の上流側に掻き取り手段50を設けると、搬送面4aに大量の異物60が付着している場合でも、排気を吹き付ける前に異物60の大半を除去しておくことができる。そのため、排気を吹き付ける効果が残された異物60の深層部まで行き渡り、異物を綺麗に除去することができる。場合によっては、掻き取り手段50が設けなくても良い。
【符号の説明】
【0042】
1…ベルトコンベア
4…搬送ベルト
4a…搬送面
4b…透孔
6…エア吸引手段
11…第1のバリ取りヘッド
12…第2のバリ取りヘッド
41…ブロア
45…排気吹付け手段
48…吹出し口
50…掻き取り手段
60…異物
W…ワーク
【技術分野】
【0001】
この発明は、パンチプレスやその他各種の板材加工機により、切断や孔明け加工等の板金加工が行われて生じたバリを除去するバリ取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板金からなるワークのバリを除去するバリ取り装置として、バリが上面に形成されたワークをベルトコンベアによって水平方向に搬送し、このワークに対して水平な軸回りに回転するロール状のバリ取り部材を上方から接触させることで、ワーク上面のバリを取る構成のものがある(例えば特許文献1)。ベルトコンベアの搬送ベルトには、搬送面からその裏面に貫通する無数の透孔が形成されており、搬送ベルトの裏面側から前記透孔を通じてエアを吸引することで、搬送中のワークを搬送面に吸着させて動かないようにしている。また、バリ取り部材は、例えば芯部材の周囲に、短冊状の布やすりや紙やすりからなる無数のブラシ毛をロール状に植え付けたものが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−58241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バリ取り装置によるバリ取り処理時には、バリ取り部材により削り取られたバリの粉塵や、摩耗により生じるバリ取り部材の粉塵が発生する。これらの粉塵がワークに付着している油と混じり合ってヘドロ状となり、図14のように、ヘドロ状の異物60が、搬送ベルト4の搬送面4aに付着したり、透孔4bに溜まったりする。搬送コンベア4はゴム等の柔軟性のある材料で作られているため、使用中のバリ取り部材との接触による摩耗で、透孔4bの搬送面4a側の部分が搬送面4aに対して凹んだ凹み部4baとなっており、この凹み部4baに異物60が溜まり易い。このようなヘドロ状の異物60は、後で加工するワークに対して悪影響を与える。特に、透孔4bに残されたヘドロ状の異物60は、ワークの裏面に付着して吸引痕として残る。
【0005】
この発明の目的は、ワークを搬送する搬送ベルトの搬送面やワーク吸着用の透孔に粉塵や油等の異物が残ることを防ぎ、次のワークに悪影響を与えないバリ取り装置を提供することである。
この発明の他の目的は、上記目的のために設けられる排気吹付け手段を効果的な位置に配置することである。
この発明のさらに他の目的は、搬送ベルトの搬送面に付着した異物を除去する効果を高めることである。
この発明のさらに他の目的は、搬送ベルトの各透孔に均等に排気を吹き込んで、各透孔に溜まった異物を効果的に排出させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のバリ取り装置は、搬送面からその裏面に貫通する無数の透孔が形成された無端の搬送ベルトを有し、この搬送ベルトの前記搬送面の上に、バリが上面に形成されたワークを載せて搬送するベルトコンベアと、このベルトコンベアの上方に配置されて前記搬送ベルト上のワークのバリを取るバリ取りヘッドと、前記搬送ベルトの裏面側から前記透孔を通じてエアを吸引し、ワークを前記搬送面に吸着させるエア吸引手段と、前記エア吸引手段のエア吸引用ブロアの排気の一部を前記搬送ベルトの前記搬送面に吹き付ける排気吹付け手段とを備える。
【0007】
この構成によると、エア吸引手段により搬送ベルト上のワークが搬送ベルトの搬送面に吸着された状態で、ベルトコンベアによってワークが一定方向に搬送される。搬送中に、ワークがバリ取りヘッドの下方を通過し、バリ取りヘッドによってワークの上面に形成されているバリが取られる。
【0008】
バリ取りヘッドによるバリ取りの際に生じるバリの粉塵やバリ取りヘッドのバリ取り部材の粉塵と、ワークに付着している油とからなる異物が、搬送ベルトの搬送面に付着したり、搬送ベルトの透孔に溜まったりする。しかし、排気吹付け手段により、エア吸引手段のエア吸引用ブロアの排気の一部を搬送ベルトの搬送面に吹き付けることで、搬送ベルトの搬送面に付着した異物および搬送ベルトの透孔に溜まった異物を除去、または除去され易くする。具体的には、風圧で異物を飛ばして除去する。あるいは、風で異物や搬送ベルトの搬送面を乾燥させて、搬送面が下向きになったときに、異物が搬送ベルトから剥離して自重で落下し易くする。
【0009】
この発明において、前記排気吹付け手段は、前記搬送ベルトにおける戻り部分の搬送面に、前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き付けると良い。搬送ベルトにおける戻り部分は、搬送ベルトの移動経路中のワークの搬送を行わない部分のことである。
搬送ベルトにおける戻り部分の搬送面は、ワークが吸着された状態となることがないので、戻り部分の搬送面に排気を吹き付ければ、搬送ベルトの搬送面に付着した異物および搬送ベルトの透孔に溜まった異物を除去、または除去され易くする効果が高い。
【0010】
この発明において、前記搬送ベルトの前記搬送面における、前記排気吹付け手段により前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き付ける箇所よりも搬送ベルト移動方向の上流側に、前記搬送面に付着した異物を掻き取る掻き取り手段を設けても良い。
上記位置に掻き取り手段を設けると、搬送面に大量の異物が付着している場合でも、排気吹付け手段で排気を吹き付ける前に異物の大半を除去しておくことができる。そのため、排気を吹き付ける効果が残された異物の深層部まで行き渡り、異物が綺麗に除去され易い。
【0011】
この発明において、前記搬送ベルトの前記透孔は、搬送ベルトの移動方向および幅方向に対して散在状態で配置され、かつ前記排気吹出し手段における前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き出す吹出し口は、前記搬送ベルトの幅方向に長いスリット状であっても良い。
搬送ベルトの透孔が搬送ベルトの移動方向および幅方向に対して散在状態で配置されていても、排気吹出し手段の排気の吹出し口が搬送ベルトの幅方向に長いスリット状であれば、すべての透孔に均等に排気を吹き込むことができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明のバリ取り装置は、搬送面からその裏面に貫通する無数の透孔が形成された無端の搬送ベルトを有し、この搬送ベルトの前記搬送面の上に、バリが上面に形成されたワークを載せて搬送するベルトコンベアと、このベルトコンベアの上方に配置されて前記搬送ベルト上のワークのバリを取るバリ取りヘッドと、前記搬送ベルトの裏面側から前記透孔を通じてエアを吸引し、ワークを前記搬送面に吸着させるエア吸引手段と、前記エア吸引手段のエア吸引用ブロアの排気の一部を前記搬送ベルトの前記搬送面に吹き付ける排気吹付け手段とを備えるため、ワークを搬送する搬送ベルトの搬送面やワーク吸着用の透孔に粉塵や油等の異物が残ることを防ぎ、次のワークに悪影響を与えない。
【0013】
前記排気吹付け手段が、前記搬送ベルトにおける戻り部分の搬送面に、前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き付ける場合は、搬送ベルトの搬送面に付着した異物および搬送ベルトの透孔に溜まった異物を除去、または除去され易くする効果が高い。
【0014】
前記搬送ベルトの前記搬送面における、前記排気吹付け手段により前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き付ける箇所よりも搬送ベルト移動方向の上流側に、前記搬送面に付着した異物を掻き取る掻き取り手段を設けた場合は、搬送ベルトの搬送面に付着した異物を除去する効果が高まる。
【0015】
前記搬送ベルトの前記透孔は、搬送ベルトの移動方向および幅方向に対して散在状態で配置され、かつ前記排気吹出し手段における前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き出す吹出し口は、前記搬送ベルトの幅方向に長いスリット状である場合は、搬送ベルトの各透孔に均等に排気が吹き込まれ、各透孔に溜まった異物を効果的に排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施形態にかかるバリ取り装置の正面図である。
【図2】同バリ取り装置の側面図である。
【図3】同バリ取り装置の内部の平面図である。
【図4】同バリ取り装置の内部の正面図である。
【図5】同バリ取り装置の内部の側面図である。
【図6】同バリ取り装置のバリ取りヘッドとヘッド旋回駆動機構の関係を示す拡大側面図である。
【図7】同ヘッド旋回駆動機構のギヤ列の平面図である。
【図8】同バリ取り装置のバリ取りヘッドの概略斜視図である。
【図9】同バリ取りヘッドのバリ取り部材の概略斜視図である。
【図10】(A),(B)は同バリ取りヘッドの動作説明図である。
【図11】同バリ取り装置のエア吸引装置および排気吹付け装置を示す破断正面図である。
【図12】搬送ベルトの透孔と吹出し口および掻き出し手段との位置関係を示す平面図である。
【図13】(A)は掻き取り手段により搬送ベルトの搬送面に付着した異物を掻き取る状態を示す図、(B)は排気吹付け手段により搬送ベルトの透孔に溜まった異物を風圧で飛ばす状態を示す図である。
【図14】バリ取り装置における搬送ベルトに異物が付着した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の一実施形態を図1ないし図12と共に説明する。このバリ取り装置は、図1および図2に示すように略直方体の外部カバー40を有し、この外部カバー40の内部に、図3ないし図5に示すように、ワークWを載せて搬送するベルトコンベア1と、このベルトコンベア1の上方に位置し搬送方向(矢印X方向)に並べて配置された第1および第2のバリ取りヘッド11,12とが設けられている。ワークWは、板金等の平板状の板材であって、孔hの孔明け加工や切断加工等が、パンチプレスやその他の板材加工機により施されたものである。
【0018】
ベルトコンベア1は、コンベアフレーム2の前後両端にそれぞれ設けられた一対のローラ3に、無段の搬送ベルト4を掛装して構成される。搬送コンベア4は、ゴム等の柔軟性のある材料で作られている。搬送方向下流側のローラ3は、モータ等の駆動源5により駆動される。コンベアフレーム2は、直方体形状の本体フレーム13に設置されている。
【0019】
ベルトコンベア1には、ワークWを搬送ベルト4の搬送面4aに吸着させるエア吸引手段6が設けられている。このエア吸引手段6は、図11に示すように、搬送ベルト4の全面に分散して無数に設けられ搬送面4aから裏面へ貫通する透孔4b(図12参照)と、搬送ベルト4の搬送側走行経路の下側に設けられて搬送ベルト4の下面に開口した負圧室7と、この負圧室7内のエアを吸引する吸引装置とで構成される。吸引装置は、外部カバー40の外に設置したブロア41等からなる。負圧室7とブロア41との間には、エア中の粉塵を除去するフィルタ42が設けられている。
【0020】
なお、搬送ベルト4の透孔4bは、本来は搬送面4aから裏面にかけて同じ内径であったものが、使用時における後記バリ取り部材22との接触による摩耗により、透孔4bの搬送面4a側の部分が、図11の拡大図に示すように搬送面4aに対してすり鉢状に凹んだ凹み部4baとなっている。
【0021】
図4および図5に示すように、第1および第2のバリ取りヘッド11,12は、共通のヘッド搭載台9に設置されていて、本体フレーム13に対し、ヘッド左右移動機構14およびヘッド昇降機構15を介して、左右方向(搬送ベルト4の幅方向)Yおよび上下方向Zに、ヘッド搭載台9と共に移動可能である。バリ取りヘッド11,12の左右移動は、後で説明するように、旋回および回転との複合動作によりバリ取り効果を向上させるためと、バリ取りヘッド11,12により左右方向Yの処理可能範囲を広げるために行われる。バリ取りヘッド11,12の上下移動は、非処理時にバリ取りヘッド11,12を搬送ベルト4の搬送面4aから離れさせて摩耗を回避する回避動作として行われる。
【0022】
図5に示すように、ヘッド左右移動機構14は、ベルトコンベア1の上方で左右に延びる上フレーム材13aに左右移動体16を左右移動自在に設置し、この左右移動体16を一定範囲で周期的に往復移動させる左右移動駆動源17を設けたものである。上フレーム材13aは、本体フレーム13の一部を成す。左右移動体16は、走行車輪18を有している。左右移動駆動源17はモータからなり、その回転を、クランク機構等の回転・直線運動変換機構を介して左右移動体16に伝達する。なお、ヘッド左右移動機構14によるバリ取りヘッド11,12の移動範囲は、例えば、移動端が搬送ベルト4の左右の縁になる程度とされる。
【0023】
図4に示すように、ヘッド昇降機構15は、左右移動体16に設置されてヘッド搭載台9を昇降案内する昇降ガイド19と、昇降駆動源20とでなる。昇降ガイド19は、複数本のガイドロッドにより構成され、昇降駆動源20には電動モータ等が用いられる。
【0024】
図3に示すように、第1および第2のバリ取りヘッド11,12は、それぞれ垂直な旋回中心O1,O2回りに旋回自在に設けられて、その旋回中心O1,O2回りに両側に延びる複数の水平なスピンドル21と、各スピンドル21に設けられたロール状のバリ取り部材22とを有する。図示例では、第1および第2のバリ取りヘッド11,12は、それぞれスピンドル21の本数が2本であって、これら2本のスピンドル21は互いに一直線上に位置する。各スピンドル21の基端は、上記旋回中心O1,O2回りに回転する中心回転部材25に、軸受(図示せず)を介して回転自在に支持されている。
【0025】
バリ取り部材22は、例えば図8、図9に示すように、芯筒22aの回りにブラシ毛22bを設けたロール状ブラシからなる。ブラシ毛22bは、例えば短冊状の布やすりまたは紙やすり等の可撓性やすり片からなり、その短辺方向が芯筒22aの軸方向に沿うように、芯筒22aの周方向および軸方向に並べて無数に取付けられ、外形がロール状のブラシを構成する。このバリ取り部材22は、芯筒22aでスピンドル21の外周に嵌合し、両端でスピンドル21に止め付けられる。これらスピンドル21とバリ取り部材22とで、一体に回転するロール状の回転バリ取り体23が構成される。
【0026】
バリ取り部材22は、上記ロール状ブラシの他に、セラミックスのロールであっても良い。なお、バリ取り部材22とスピンドル21とは、必ずしも別体である必要はなく、一体の回転バリ取り体23として構成しても良い。
【0027】
図3において、上記第1および第2のバリ取りヘッド11,12は、バリ取りヘッド旋回駆動機構26により互いに同期して旋回させられる。また、各バリ取りヘッド11,12のスピンドル21は、各スピンドル自動駆動機構27,28により回転させられる。
【0028】
第1および第2のバリ取りヘッド11,12は、これらバリ取りヘッド11,12の旋回によるバリ取り部材22の旋回領域R1,R2が互いに重なるオーバーラップ領域R12(図3に斜線を施した部分)が生じるように配置される。このオーバーラップ領域R12は、第1および第2のバリ取りヘッド11,12を、互いに旋回方向を逆方向として同期旋回させた場合に、互いの干渉は回避可能な範囲とされる。
【0029】
バリ取りヘッド旋回駆動機構26は、第1および第2のバリ取りヘッド11,12をオーバーラップ領域R12で互いに干渉させずに、これらバリ取りヘッド11,12を互いに旋回方向を逆回転として同期旋回させる機構である。このバリ取りヘッド旋回駆動機構26は、図10(A),(B)に各動作状態を示すように、いずれか一方のバリ取りヘッド11,12のスピンドル21が、その軸方向が搬送方向Xである前後方向を向いて前記オーバーラップ領域R12に位置するとき、他方のバリ取りヘッド11,12のスピンドル21は、その軸方向が左右方向Yを向いてオーバーラップ領域R12から外れるように位置させる。
【0030】
図6、図7と共に、バリ取りヘッド旋回駆動機構26の具体的構成例を説明する。図6のように、第1および第2のバリ取りヘッド11,12は、それぞれの中心回転部材25が、ヘッド搭載台9の下面に回転支持部材29を介して上記旋回中心O1,O2回りに回転自在支持されている。バリ取りヘッド旋回駆動機構26は、旋回駆動用モータ30と、この旋回駆動用モータ30の回転を2系列に分岐して、各バリ取りヘッド11,12の中心回転部材25に同期して伝達する同期伝達機構31とで構成される。この同期伝達機構31は、各バリ取りヘッド11,12の中心回転部材25にその旋回中心O1,O2と同心に設けられた従動ギヤ32と、これら2枚の従動ギヤ32の間に配置され両従動ギヤ32にそれぞれ噛み合う2枚の中間ギヤ33と、片方の中間ギヤ33に噛み合う駆動ギヤ34とでなるギヤ列により構成される。駆動ギヤ34は、旋回駆動用モータ30の出力軸30aに直接に、または減速機(図示せず)を介して接続されている。上記2枚の中間ギヤ33は、それぞれヘッド搭載台9の下面に支軸35を介して回転自在に支持され、かつ互いに噛み合っている。このように、両バリ取りヘッド11,12の従動ギヤ32が、2枚の中間ギヤ33,33を介して互いに噛み合い状態にあるため、両バリ取りヘッド11,12は、互いの回転方向A,Bを逆方向として同期旋回する。
【0031】
なお、バリ取りヘッド旋回駆動機構26は、上記ように同期伝達機構31を用いる構成とする他に、バリ取りヘッド11,12に対して個別のモータを設け、両モータの回転を電気的に同期させる制御を行うものであっても良い。
【0032】
図6において、各バリ取りヘッド11,12のスピンドル自転駆動機構27,28は、ヘッド搭載台9に設置されたスピンドル駆動モータ36と、このスピンドル駆動モータ36の出力軸に連結されて中心回転部材25の旋回中心O1,O2で回転自在な駆動軸37と、この駆動軸37の回転を各スピンドル21に分岐して伝達する分岐伝達機構38とで構成される。駆動軸37は、中空とされた中心回転部材25内に軸受(図示せず)を介して回転自在に支持されている。分岐伝達機構38は、内部構成の図示は省略するが、例えば駆動軸37に設けられた駆動側傘歯車と、各スピンドル21に設けられて駆動側傘歯車に噛み合う従動側傘歯車等で構成される。
【0033】
第1のバリ取りヘッド11のスピンドル自転駆動機構27と、第2のバリ取りヘッド112のスピンドル自転駆動機構28とは、互いに異なる回転速度でスピンドル21を駆動させる。この場合に、スピンドル21の回転速度を速くする方のバリ取りヘッドは、第1、第2のいずれのバリ取りヘッド11,12であっても良い。また、両バリ取りヘッド11,12は、必ずしもスピンドル21の回転速度を異ならせる必要はなく、同じ回転速度としても良い。
【0034】
図1および図2において、前記ブロア41の排気は、ダクト43を通って外部カバー40内の空間に送られて、バリ取り処理時に発生する粉塵を吹き飛ばすのに利用される。また、外部カバー40に設けたダクト接続口44に集塵ダクト(図示せず)が接続され、外部カバー40内の空間の粉塵が前記集塵ダクトを通って集塵装置(図示せず)へ送られる。
【0035】
前記ダクト43には、途中から分岐させて排気吹付け手段45用のダクト46が接続されている。排気吹付け手段45は、ブロア41の排気の一部を搬送ベルト4の搬送面4aに吹き付けて、搬送面4aに付着した異物および透孔4bに溜まった異物を除去され易くするためのものである。
【0036】
排気吹付け手段45は、図11に示すように、搬送ベルト4における戻り部分の下方に、ブロア41から前記ダクト46を介して排気が送り込まれるエア溜り47を設け、このエア溜り47の上部に設けた吹出し口48から搬送ベルト4の搬送面4aに排気を上向きに吹き付けるようになっている。搬送ベルト4における戻り部分は、搬送ベルト4の移動経路中のワークWの搬送を行わない部分のことであり、この例では、搬送ベルト4における一対のローラ3間の部分に排気を吹き付ける。搬送ベルト4におけるローラ3に掛っている部分に排気を吹き付けるようにしても良い。
【0037】
エア溜り47の上部に設けた吹出し口48は、図12のように、搬送ベルト4の幅方向に長いスリット状である。先に説明したように、搬送ベルト4の透孔4bは、搬送ベルトの移動方向および幅方向に対して散在状態で配置されているが、吹出し口48が上記のようなスリット状であると、すべての透孔4bに均等に排気を吹き込むことができる。
【0038】
また、上記吹出し口48よりも搬送ベルト移動方向の上流側の位置に、搬送ベルト4の搬送面4aに付着した異物を掻き取る掻き取り手段50が設けられている。この例の掻き取り手段50は、搬送ベルト4と同程度の幅で先端が鋭利に形成された板状のスクレーパであって、このスクレーパを搬送ベルト4の搬送面4aに押し当てて異物を掻き取る構成である。掻き取り手段50は他の構成であってもよい。例えば、ワイパーのように掻き取り用部材(図示せず)を搬送面4aに沿って移動させる構成としてもよく、あるいはブラシ状の掻き取り用部材(図示せず)を、先端が搬送面4aに接する状態で回転または直線運動させる構成としてもよい。
【0039】
この構成の動作を説明する。人手により、ベルトコンベア1の図1における左端に、板金加工品である板材のワークWが載せられる。ワークWは、エア吸引手段6により搬送ベルト4の搬送面4aに吸着された状態で、図1の右方向へ搬送される。この搬送中に、ワークWが第1および第2のバリ取りヘッド11,12の下方を通過し、これらバリ取りヘッド11,12によってワークWの上面に形成されているバリが取られる。ベルトコンベア1の右端で、バリが取られたワークWが、人手により取り上げられる。
【0040】
搬送ベルト4の戻り行程において、まず図13(A)のように、掻き取り手段50によって、搬送ベルト4の搬送面4aに付着している異物60が掻き取られる。次に、図13(B)のように、排気吹付け手段45の吹出し口48から搬送ベルト4の透孔4b内へブロア41の排気が吹き付けられて、透孔4bの凹み部4baに残っている異物60が風圧で飛ばされて除去される。掻き取り手段50による掻き取りや、排気吹付け手段45による排気の吹き付けで、搬送ベルト4の搬送面4aおよび透孔4b内の異物60が完全に除去されなくても、排気を吹き付けることで残った異物60が乾燥するため、搬送ベルト4から剥離しやすくなる。そのため、搬送面4aを下向きにして搬送ベルト4が移動中に、異物60が自重で落下する。
【0041】
この実施形態のように、排気吹付け手段45によりブロア41の排気を吹き付ける箇所よりも搬送ベルト移動方向の上流側に掻き取り手段50を設けると、搬送面4aに大量の異物60が付着している場合でも、排気を吹き付ける前に異物60の大半を除去しておくことができる。そのため、排気を吹き付ける効果が残された異物60の深層部まで行き渡り、異物を綺麗に除去することができる。場合によっては、掻き取り手段50が設けなくても良い。
【符号の説明】
【0042】
1…ベルトコンベア
4…搬送ベルト
4a…搬送面
4b…透孔
6…エア吸引手段
11…第1のバリ取りヘッド
12…第2のバリ取りヘッド
41…ブロア
45…排気吹付け手段
48…吹出し口
50…掻き取り手段
60…異物
W…ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送面からその裏面に貫通する無数の透孔が形成された無端の搬送ベルトを有し、この搬送ベルトの前記搬送面の上に、バリが上面に形成されたワークを載せて搬送するベルトコンベアと、
このベルトコンベアの上方に配置されて前記搬送ベルト上のワークのバリを取るバリ取りヘッドと、
前記搬送ベルトの裏面側から前記透孔を通じてエアを吸引し、ワークを前記搬送面に吸着させるエア吸引手段と、
前記エア吸引手段のエア吸引用ブロアの排気の一部を前記搬送ベルトの前記搬送面に吹き付ける排気吹付け手段とを備えたバリ取り装置。
【請求項2】
前記排気吹付け手段は、前記搬送ベルトにおける戻り部分の搬送面に、前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き付ける請求項1記載のバリ取り装置。
【請求項3】
前記搬送ベルトの前記搬送面における、前記排気吹付け手段により前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き付ける箇所よりも搬送ベルト移動方向の上流側に、前記搬送面に付着した異物を掻き取る掻き取り手段を設けた請求項1または請求項2記載のバリ取り装置。
【請求項4】
前記搬送ベルトの前記透孔は、搬送ベルトの移動方向および幅方向に対して散在状態で配置され、かつ前記排気吹出し手段における前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き出す吹出し口は、前記搬送ベルトの幅方向に長いスリット状である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のバリ取り装置。
【請求項1】
搬送面からその裏面に貫通する無数の透孔が形成された無端の搬送ベルトを有し、この搬送ベルトの前記搬送面の上に、バリが上面に形成されたワークを載せて搬送するベルトコンベアと、
このベルトコンベアの上方に配置されて前記搬送ベルト上のワークのバリを取るバリ取りヘッドと、
前記搬送ベルトの裏面側から前記透孔を通じてエアを吸引し、ワークを前記搬送面に吸着させるエア吸引手段と、
前記エア吸引手段のエア吸引用ブロアの排気の一部を前記搬送ベルトの前記搬送面に吹き付ける排気吹付け手段とを備えたバリ取り装置。
【請求項2】
前記排気吹付け手段は、前記搬送ベルトにおける戻り部分の搬送面に、前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き付ける請求項1記載のバリ取り装置。
【請求項3】
前記搬送ベルトの前記搬送面における、前記排気吹付け手段により前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き付ける箇所よりも搬送ベルト移動方向の上流側に、前記搬送面に付着した異物を掻き取る掻き取り手段を設けた請求項1または請求項2記載のバリ取り装置。
【請求項4】
前記搬送ベルトの前記透孔は、搬送ベルトの移動方向および幅方向に対して散在状態で配置され、かつ前記排気吹出し手段における前記エア吸引用ブロアの排気の一部を吹き出す吹出し口は、前記搬送ベルトの幅方向に長いスリット状である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のバリ取り装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−107139(P2013−107139A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251409(P2011−251409)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】
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