説明

バルブポンプの制御装置および車両の油圧制御装置

【課題】液体を吸入および吐出する際に生じる打撃音が、相対的に大きくなることを抑制することのできるバルブポンプを提供する。
【解決手段】可動部材44の往復動により圧力が上昇および低下する液体室45と、液体室45に連通された吸入口48および吐出口51と、吸入口48を開閉する第1弁体50および第1弁座49と、吐出口541を開閉する第2弁体55および第2弁座52とを備え、可動部材44の往復動回数を制御することにより、吐出口51から吐出される液体の流量を制御するバルブポンプの制御装置において、吐出口51から吐出される液体の流量を、液体を使用する液体使用部の目標流量以上に制御する際に、第2弁体55と第2弁座52とが接触せず、かつ、第1弁体50と第1弁座49とが接触しないように、可動部材44の往復動回数を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体室に液体を吸入し、かつ、液体室から液体を吐出する際にバルブが開閉されるように構成されたバルブポンプの制御装置、およびバルブポンプを有する車両の油圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オイル使用部に供給するポンプを動力源により駆動するように構成された油圧制御装置の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された自動変速機の油圧制御装置は、エンジン自動停止およびエンジン始動制御をおこなう車両に搭載されている。この特許文献1に記載された油圧制御装置は、エンジンにより駆動される機械式油圧ポンプと、機械式油圧ポンプから供給される油圧を調圧し、かつ自動変速機の摩擦係合要素および発進クラッチへの油圧の供給を切り替える油圧制御ユニットと、エンジンの自動停止時に駆動されて前記発進クラッチに油圧を供給する電動式油圧ポンプと、油圧制御ユニットと発進クラッチとの間に設けられたフェールセーフ油圧回路とを備えている。
【0003】
このフェールセーフ油圧回路は、油圧制御ユニットから発進クラッチへの油圧の供給および遮断をおこなう電磁開閉弁と、この電磁開閉弁が閉じた状態で油圧制御ユニットからの油圧を電磁開閉弁を迂回して発進クラッチに供給する第1逆止弁とを備えている。この電磁開閉弁と第1逆止弁とは並列に設けられており、電磁開閉弁および第1逆止弁から発進クラッチに至る経路に、前記電動式油圧ポンプから吐出された作動油が供給される油路が接続されている。そして、その油路に、電動式油圧ポンプから吐出された作動油が逆流することを防止する第2逆止弁が設けられている。
【0004】
そして、エンジンが運転されて機械式油圧ポンプが駆動され、吐出された作動油が油圧制御ユニットを経由して発進クラッチに供給され、発進クラッチが係合される。これに対して、アイドルストップ時のように、エンジンが停止すると機械式油圧ポンプも停止する。そこで、エンジン再始動時の変速ショックを抑えるために、電動式油圧ポンプを駆動して発進クラッチへ油圧を供給する。このとき、電磁開閉弁を閉状態にすることにより、電動式油圧ポンプから発進クラッチに供給される作動油が、油圧制御ユニット側に漏れることを防止できる。このように、発進クラッチに最低限必要な油圧を供給することで、電動式油圧ポンプとして小型なものを使用可能であるとされている。なお、機械式オイルポンプおよび電動オイルポンプを有する油圧制御装置の一例は、特許文献2にも記載されている。
【0005】
一方、電動オイルポンプとは駆動原理が異なるポンプを有する油圧制御装置の一例が、特許文献3に記載されている。この特許文献3に記載された油圧制御装置は、エンジントルクがトルクコンバータを経由して自動変速機に伝達されるように構成された車両において、そのトルクコンバータにオイルを供給するものである。この特許文献3に記載された油圧制御装置は、エンジンにより駆動されるオイルポンプの他に、バルブポンプを有している。このバルブポンプは、給排出口に圧油を供給する方向に、直列に第一の逆止弁および第二の逆止弁が設けられ、第二の逆止弁はタンクまたはドレーンに吸い込みラインで接続されている。さらに、第一および第二の逆止弁間に連通するシリンダ室と、シリンダ室を拡縮するピストンと、ピストンを往復動する電磁コイルが設けられている。そして、コントローラからのON−OFF電流を電磁コイルに流して、ピストンを往動させることにより、吸入側逆止弁を開放させてオイルをシリンダ室に吸い込み、ピストンを復動させることにより排出側逆止弁を開放させて、シリンダ室のオイルを給排出口に圧油を供給するように構成されている。なお、バルブポンプのより具体的な構成例は特許文献4に記載されている。さらに、電動オイルポンプを有する油圧制御装置の一例が特許文献5に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−168330号公報
【特許文献2】特開平11−132321号公報
【特許文献3】特開2008−180303号公報
【特許文献4】特開平6−184866号公報
【特許文献5】特開2005−318680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1、2に記載されているように、エンジンにより駆動されるオイルポンプの他に電動オイルポンプが設けられている油圧制御装置においては、エンジンが停止されているときにも、電動オイルポンプを駆動すればオイル使用部にオイルを供給することができる。また、特許文献1、2に記載されている電動オイルポンプに代えて、特許文献3、4に記載されているバルブポンプを用いることもできる。しかしながら、オイル使用部にオイルを供給する油圧源として、特許文献3、4に記載されているようなバルブポンプを用いると、オイルの吸入および吐出をおこなうためにバルブが開閉すると打撃音が生じる問題があった。
【0008】
この発明は上記課題を解決するためになされたもので、液体を吸入および吐出する際に生じる打撃音を相対的に小さくすることのできるバルブポンプおよび車両の油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために請求項1の発明は、往復動する可動部材と、この可動部材の往復動により圧力の上昇および低下が交互に発生する液体室と、この液体室に連通され、かつ、前記流体室の圧力が低下する過程で前記液体室に吸入される液体が通る吸入口と、前記液体室に連通され、かつ、前記液体室の圧力が上昇する過程で前記液体室から吐出される液体が通る吐出口と、前記液体室の圧力が低下する過程で第1弁座から離れるように移動して前記吸入口を開放し、かつ、前記液体室の圧力が上昇する過程で前記第1弁座に近づくように移動して前記吸入口を閉じる第1弁体と、前記液体室の圧力が低下する過程で第2弁座に近づくように移動して前記吐出口を閉じ、かつ、前記液体室の圧力が上昇する過程で前記第2弁座から離れるように移動して前記吐出口を開放する第2弁体とを備え、前記可動部材の往復動を制御することにより、前記吐出口から吐出される液体の流量を制御するバルブポンプの制御装置において、前記吐出口から吐出される液体の流量が、前記液体を使用する液体使用部における目標流量以上となるように制御する際に、前記液体室の圧力を低下させて前記液体室に液体を吸入する過程で前記第2弁体と前記第2弁座とが接触せず、かつ、前記液体室の圧力を上昇させて前記液体室から液体を吐出する過程で前記第1弁体と前記第1弁座とが接触しないように、前記可動部材の往復動を制御することを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記可動部材が磁性材料により構成されており、電圧が断続されて前記可動部材を往復動させる磁気吸引力を発生する電磁コイルと、この電磁コイルに電圧を印加する駆動電源とが設けられており、前記駆動電源から前記電磁コイルに印加する電圧の周波数を制御することにより、単位時間あたりにおける前記可動部材の往復動回数および前記吐出口から吐出される液体の流量が制御されるように構成されていることを特徴とするバルブポンプの制御装置である。
【0011】
請求項3の発明は、オイル使用部に供給するオイルを吐出し、かつ、車両の走行用動力源により駆動される機械式オイルポンプと、可動部材が往復動されて前記オイル使用部に供給するオイルを吐出するバルブポンプとを有し、このバルブポンプが、前記可動部材の往復動により圧力の上昇および低下が交互に発生する油室と、この油室に連通され、かつ、前記油室の圧力が低下する過程で前記油室に吸入されるオイルが通る吸入口と、前記油室に連通され、かつ、前記油室の圧力が上昇する過程で前記油室から吐出されるオイルが通る吐出口と、前記油室の圧力が低下する過程で第1弁座から離れるように移動して前記吸入口を開放し、かつ、前記油室の圧力が上昇する過程で前記第1弁座に近づくように移動して前記吸入口を閉じる第1弁体と、前記油室の圧力が低下する過程で第2弁座に近づくように移動して前記吐出口を閉じ、かつ、前記油室の圧力が上昇する過程で前記第2弁座から離れるように移動して前記吐出口を開放する第2弁体とを備え、前記可動部材の往復動を制御することにより、前記吐出口から吐出されるオイルの流量を制御するように構成されているとともに、前記機械式オイルポンプまたは前記バルブポンプのいずれか一方から吐出されたオイルを選択的に前記オイル使用部に供給するように構成されている車両の油圧制御装置において、前記エンジンが停止されて機械式オイルポンプからオイルが吐出されず、かつ、前記バルブポンプの吐出口から吐出するオイルの流量が、前記オイル使用部における目標流量以上となるように制御する際に、前記油室の圧力を低下させて前記油室にオイルを吸入する過程で前記第2弁体と前記第2弁座とが接触せず、かつ、前記油室の圧力を上昇させて前記油室からオイルを吐出する過程で前記第1弁体と前記第1弁座とが接触しないように、前記可動部材の往復動を制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、バルブポンプの吐出口から吐出される液体の流量が目標流量以上となるように制御する際に、流体室に流体を吸入するときには第2弁体が第2弁座に接触せず、流体室から流体を吐出するときには第1弁体が第1弁座に接触しないように、可動部材の往復動を制御する。したがって、弁体と弁座との接触による打撃音を相対的に小さくすることができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、駆動電源から電磁コイルに印加する電圧の周波数を制御することより、バルブポンプから吐出される液体の流量および可動部材の往復動回数を制御することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、機械式オイルポンプが停止されているときに、バルブポンプから吐出されるオイルの流量が、オイル使用部の目標流量以上となるように制御する際に、バルブポンプの油室にオイルを吸入するときには、第2弁体が第2弁座に接触せず、バルブポンプの油室からオイルを吐出するときには、第1弁体が第1弁座に接触しないように、可動部材の往復動を制御する。したがって、弁体と弁座との接触による打撃音を相対的に小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明におけるバルブポンプの構成例を示す断面図である。
【図2】この発明における油圧制御装置を備えた車両の構成を示す模式図である。
【図3】この発明における油圧制御装置の構成例を示す模式図である。
【図4】図1に示されたバルブポンプを制御する際に用いるマップである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明において、液体を使用する液体使用部には、動力伝達装置の変速比、または動力伝達装置のトルク容量を制御する油圧室と、動力伝達により発熱、摩耗、焼き付きなどが発生する可能性があり、かつ、液体が供給されて潤滑もしくは冷却がおこなわれる被潤滑部と、液体を燃焼させるエンジンの燃焼室とが含まれる。この発明におけるオイル使用部には、動力源の動力が伝達される動力伝達装置のトルク容量、動力伝達装置の変速比を制御する油圧室、オイルが供給されて潤滑または冷却される被潤滑部が含まれる。前記動力伝達装置には、クラッチおよびブレーキなどの摩擦係合装置、変速機が含まれる。この変速機には、入力回転数と出力回転数との間の変速比を無段階(連続的)に変更可能な無段変速機と、入力回転数と出力回転数との間の変速比を段階的(不連続)に変更可能な有段変速機が含まれる。前記無段変速機にはベルト型無段変速機、トロイダル型無段変速機が含まれる。また、有段変速機には遊星歯車式変速機、選択歯車式変速機などが含まれる。前記被潤滑部には、動力伝達装置の一部を構成する回転要素、例えば、歯車、プーリ、ベルト、ディスク、ローラなどの他、回転要素を支持する軸受が含まれる。さらに、この発明における吸入口および吐出口は、液体もしくはオイルが通る経路であり、吸入口および吐出口には、開口部、ケーシングに形成した貫通穴、切欠部などが含まれる。この発明における機械式オイルポンプは、動力源の動力により可動部材が回転運動または往復運動することにより、オイルの吸入および吐出をおこなうオイルポンプであり、機械式オイルポンプには、ギヤポンプ、ベーンポンプ、プランジャポンプなどが含まれる。
【0017】
この発明の油圧制御装置を備えた車両の構成を、図2および図3に基づいて説明する。図2に示された車両1においては、駆動輪(図示せず)に動力を伝達する動力源としてエンジン2が設けられている。このエンジン2は燃料を燃焼させた時に発生する熱エネルギを運動エネルギに変換して出力する動力装置である。このエンジン2としては内燃機関、具体的にはガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを用いることができる。また、駆動輪に伝達する動力を発生する動力源として電動モータを用いた車両でもよい。さらには、動力源としてエンジンおよび電動モータを有する車両であってもよい。
【0018】
この実施例では、動力源としてエンジン2を単独で用いているものとして説明する。前記エンジン2から駆動輪に至る動力伝達経路には、前後進切換装置3および無段変速機4が設けられている。この前後進切換装置3および無段変速機4は、ケーシング(図示せず)の内部に設けられている。前後進切換装置3は、トルクを伝達する入力部材5および出力部材6が同軸上に配置されている。そして、エンジントルクが流体伝動装置(図示せず)を経由して入力部材5に伝達されるとともに、その入力部材5に回転方向に対して、出力部材6の回転方向を正逆に切り換えることができるように構成されている。この実施例においては、遊星歯車機構式の前後進切換装置3が用いられている。具体的に説明すると、前後進切換装置3はダブルピニオン型の遊星歯車機構を備えている。
【0019】
この遊星歯車機構は、同軸上に配置されたサンギヤ7およびリングギヤ8と、サンギヤ7に噛合された第1ピニオンギヤ9と、第1ピニオンギヤ9およびリングギヤ8に噛合された第2ピニオンギヤ10と、第1ピニオンギヤ9および第2ピニオンギヤ10を自転かつ公転可能に支持したキャリヤ11とを有している。また、前後進切換装置3は、サンギヤ7とキャリヤ11とを接続または解放するクラッチC1と、リングギヤ8を固定または解放するブレーキBRとを備えている。そして、クラッチC1が係合され、かつ、ブレーキBRが解放されると、サンギヤ7とキャリヤ11とが一体回転し、入力部材5の回転方向と出力部材6の回転方向とが同じになる。これに対して、ブレーキBRが係合され、かつ、クラッチC1が解放されると、リングギヤ8が反力要素となり、入力部材5が正回転し、出力部材6が逆回転する。この実施例においては、クラッチC1の係合および解放を制御する油圧室12が設けられているとともに、ブレーキBRの係合および解放を制御する油圧室が設けられている。
【0020】
前記無段変速機4にはベルト型無段変速機およびトロイダル型無段変速機が含まれる。ここでは、ベルト型無段変速機が用いられているものとして説明し、便宜上、「ベルト型無段変速機4」と記す。このベルト型無段変速機4はプライマリプーリ13およびセカンダリプーリ14を有しており、そのプライマリプーリ13およびセカンダリプーリ14に環状のベルト15が巻き掛けられている。このプライマリプーリ13が前記出力部材6と一体回転するように連結されている。また、プライマリプーリ13は、軸線に沿った方向に移動可能な可動片と、軸線に沿った方向には移動しない固定片とを有している。また、プライマリプーリ13の可動片に与える推力を調整することにより、プライマリプーリ13におけるベルト15の巻き掛け半径を制御する油圧室16が設けられている。
【0021】
さらに、セカンダリプーリ14は、軸線に沿った方向に移動可能な可動片と、軸線に沿った方向には移動しない固定片とを有している。また、セカンダリプーリ14の可動片に与える推力を調整することにより、セカンダリプーリ14からベルト15に加えられる挟圧力を制御する油圧室17が設けられている。そして、油圧室16のオイル量を制御することにより、ベルト型無段変速機4の変速比が制御される。これに対して、油圧室17の油圧を制御することにより、ベルト型無段変速機4の伝達トルクが制御される。前記油圧室12,16,17にオイルを供給する油圧制御装置18が設けられている。
【0022】
上記の油圧制御装置18の構成例を図3に基づいて説明する。前記エンジン2の動力により駆動されてオイルパン19からオイルを吸入し、吸入したオイルを油路20へ吐出するオイルポンプ(機械式オイルポンプ)21が設けられている。このオイルポンプ21から油路20へ吐出されたオイルは、オイル必要部22へ供給されるとともに、油圧室12,17にも供給されるように構成されている。このオイル必要部22には流体伝動装置が含まれる。流体伝動装置は前記エンジンから入力部材5に至る動力伝達経路の一部を構成する装置であり、作動油の運動エネルギにより動力伝達をおこなうように構成されている。
【0023】
前記油路20と油圧室12との間にはチェック弁(逆止弁)23およびクラッチコントロールバルブ24が設けられている。このクラッチコントロールバルブ24は、入力ポート25および出力ポート26ならびにドレーンポート27を有している。このクラッチコントロールバルブ24は、入力ポート25と出力ポート26とを接続または遮断することができるとともに、出力ポート26とドレーンポート27とを接続また遮断することができるように構成されている。
【0024】
そして、出力ポート26が油路28を介在させて油圧室12に接続されている。また、ドレーンポート27はオイルパン19に接続されている。さらに、入力ポート25には油路29が接続されており、その油路29と前記油路20との間に前記チェック弁23が設けられている。このチェック弁23は、油路20と油路29との圧力差により開閉されるバルブであり、オイルポンプ21から油路20に吐出されたオイルが油路29に供給されることを許容(開く)し、油路29のオイルが油路20に向けて流れることを阻止する(閉じる)ように構成されている。
【0025】
一方、油路20と油圧室17との間にはチェック弁(逆止弁)30およびシーブコントロールバルブ31が設けられている。シーブコントロールバルブ31は、入力ポート32および出力ポート33ならびにドレーンポート34を有している。このシーブコントロールバルブ31は、入力ポート32と出力ポート33とを接続または遮断することができるとともに、出力ポート33とドレーンポート34とを接続また遮断することができるように構成されている。
【0026】
そして、出力ポート33が油路35を介在させて油圧室17に接続されている。また、ドレーンポート34はオイルパン19に接続されている。さらに、入力ポート32には油路36が接続されており、その油路36と前記油路20との間にチェック弁30が設けられている。このチェック弁30は、油路20と油路36との圧力差により開閉されるバルブであり、オイルポンプ21から油路20に吐出されたオイルが油路36に供給されることを許容(開く)し、油路36のオイルが油路20に向けて流れることを阻止する(閉じる)ように構成されている。
【0027】
また、前記油圧室12,17にオイルを供給する油圧源としてバルブポンプ41が設けられている。このバルブポンプ41の具体的な構成例を図1に基づいて説明する。この実施例で用いるバルブポンプ41は、いわゆる電磁ポンプと呼ばれるものであり、バルブポンプ41は、ケーシング42内に設けられ、かつ、電圧が印加されて磁気吸引力を形成する電磁コイル43と、ケーシング42内に往復動可能に設けられたプランジャ(ピストン)44と、プランジャ44を磁気吸引力とは逆向きに移動させる力を生じるバネ(図示せず)と、ケーシング42内に形成された油室45と、油室45を通るオイルの流通方向を一方向に規制する逆止弁54,47とを有している。
【0028】
前記プランジャ44は磁性材料により構成されており、その中心軸線に沿った方向に往復動自在にケーシング42内に配置されている。このプランジャ44の中心軸線に沿った方向の端部は、前記油室45に配置されている。さらに、プランジャが中心軸線に沿った方向に移動するときのストローク(移動範囲)を規制するストッパ(図示せず)が設けられている。さらに、電磁コイル43に電圧を印可する駆動電源58が設けられている。この駆動電源58は直流電源または交流電源のいずれでもよく、駆動電源58から電磁コイル43に印可される電圧が、電子制御装置46により制御されるように構成されている。
【0029】
前記逆止弁54は、オイルパン19と油室45とを接続するオイルの通過経路に設けられており、逆止弁54は、吸入口(ポート)48が開口された弁座49と、油室45内に配置され、かつ、吸入口48を開閉する弁体(ボール)50とを有する。また、吸入口48は油路56を経由してオイルパン19に接続されている。この弁体50は油室45内で自由な移動が可能に構成されており、弁体50は弁座49に接触したり、弁座49から離れたりすることができる。このように構成された逆止弁54は、弁体50が弁座49から離れて吸入口48が開放されると、オイルパン19のオイルが吸入口48を経由して油室45内へ吸入されることを許容する。一方、弁体50が弁座49に接触して吸入口48が閉じられると、油室45のオイルが吸入口48を経て油路56へ流出することを防止する。
【0030】
これに対して、逆止弁47は、油路38と油室45とを接続するオイルの通過経路に設けられており、逆止弁47は、吐出口(ポート)51が開口された弁座52と、吐出口51と油路38とを接続する通路57に配置され、かつ、吐出口51を開閉する弁体(ボール)55とを有する。このように、弁体55は油室45の外部に配置されており、前記通路57で自由に移動が可能である。弁体55は弁座52に接触したり、弁座52から離れたりすることができる。このように構成された逆止弁47は、弁体55が弁座52から離れて吐出口51が開放されると、油室45のオイルが吐出口51を経由して油路38へ吐出されることを許容する。一方、弁体55が弁座52に接触して吐出口51を閉じると、油路38のオイルが吐出口51を経て油室45へ戻ることを防止する。
【0031】
このように構成されたバルブポンプ41においては、電磁コイル43に電圧が印加されると磁気吸引力が発生してプランジャ44がバネの力に抗して所定方向に移動し、電圧が遮断されるとバネの力でプランジャ44が逆方向に移動する。したがって、電磁コイル43への電圧の印加および遮断を交互に繰り返すことにより、プランジャ44がケーシング42内で往復動する。このプランジャ44の往復動により、油室45の容積が拡大および縮小される。
【0032】
具体的には、図1においてプランジャ44が下向きに移動して油室45の容積が拡大されると、その油室45が負圧となり(油圧が低下し)、逆止弁54が開放されてオイルパン19のオイルが油室45内に吸入されるとともに、逆止弁47が閉じられる。これに対して、プランジャ44が図1で上向きに移動して油室45の容積が縮小される過程では油室45の油圧が上昇する。すると、逆止弁54が閉じられるとともに、逆止弁47が開放されて油室45内のオイルが油路38へ吐出される。このように、バルブポンプ41においては、オイルの吸入と吐出とを繰り返しておこなうことができ、バルブポンプ41は往復動型の容積ポンプとして機能する。
【0033】
また、油路38と油路28との間にはチェック弁40が設けられている。このチェック弁40は、油路38と油圧室12との差圧により開閉されるバルブであり、バルブポンプ41から吐出されたオイルが油路28に供給されることを許容(開く)し、油路28のオイルが油路38に向けて流れることを阻止する(閉じる)ように構成されている。またバルブポンプ41から油路38に吐出されたオイルを油路35に供給する経路が設けられており、その経路にはチェック弁53が設けられている。このチェック弁53は、油路38と油圧室17との差圧により開閉されるバルブであり、バルブポンプ41から吐出されたオイルが油圧室17に供給されることを許容(開く)し、油路35のオイルが油路38に向けて流れることを阻止する(閉じる)ように構成されている。
【0034】
一方、エンジン2および前後進切換装置3およびベルト型無段変速機4を制御する電子制御装置46が設けられており、この電子制御装置46には、エンジン回転数、ベルト型無段変速機4の入力回転数および出力回転数、車速、アクセルペダルの踏み込み量、ブレーキペダルの踏み込み量、シフトポジション、油圧制御装置18内におけるオイルの温度(油温)などを検知するセンサの信号が入力される。そして、電子制御装置46に入力される信号に基づいて、エンジン出力が制御され、かつ、ベルト型無段変速機4の変速比および伝達トルクが制御され、さらには、前後進切換装置3のクラッチC1の係合および解放が制御され、ブレーキBRの係合および解放が制御され、さらには、バルブポンプ41の吐出流量が制御される。
【0035】
つぎに、図1に示された油圧制御装置18の制御および作用を説明する。まず、エンジン2の動力によりオイルポンプ21が駆動されると、そのオイルポンプ21から吐出されたオイルが油路20に供給される。また、車両を走行させるシフトポジションとしてドライブ(D)ポジションが選択されると、クラッチコントロールバルブ24が制御されて、入力ポート25と出力ポート26が接続されるとともに、ドレーンポート27と出力ポート26とが遮断される。そして、油路20の油圧と油路29との差圧によりチェック弁23が開放されると、油路20のオイルがクラッチコントロールバルブ24および油路28を経由して油圧室12に供給される。このようにして、油圧室12の油圧が上昇し、クラッチC1が係合される。なお、ドライブポジションが選択された場合は、ブレーキBRの係合または解放を制御する油圧室の油圧が低下し、ブレーキBRが解放される。このようにして、クラッチC1が係合され、かつ、ブレーキBRが解放されると、エンジントルクが前後進切換装置3を経由して、ベルト型無段変速機4のプライマリプーリ13に伝達される。
【0036】
また、ドライブポジションが選択されているときに、前記電子制御装置46において、ベルト型無段変速機4の目標変速比が求められ、ベルト型無段変速機4の変速比を目標変速比に近づける制御がおこなわれる。例えば、ベルト型無段変速機4の変速比を相対的に大きくする変速をおこなう場合は、油圧室16のオイル量が減少され、プライマリプーリ13におけるベルト15の巻き掛け半径が相対的に小さくなる。これに対して、ベルト型無段変速機4の変速比を相対的に小さくする変速をおこなう場合は、油圧室16のオイル量が増加され、プライマリプーリ13におけるベルト15の巻き掛け半径が相対的に大きくなる。また、ベルト型無段変速機4の変速比を一定に維持する場合は、油圧室16のオイル量が一定に維持される。
【0037】
一方、エンジン2からベルト型無段変速機4に入力されるトルクに基づいて、ベルト型無段変速機4の目標トルク容量が求められ、その目標トルク容量に基づいて、シーブコントロールバルブ31が制御される。例えば、ベルト型無段変速機4のトルク容量を増加する場合は、入力ポート32と出力ポート33が接続されるとともに、ドレーンポート34と出力ポート33とが遮断される。そして、油路20の油圧と油路36の油圧との差によりチェック弁30が開放されると、油路20のオイルがシーブコントロールバルブ31および油路35を経由して油圧室17に供給され、油圧室17の油圧が上昇する。このようにして、セカンダリプーリ14からベルト15に加えられる挟圧力が高められ、ベルト型無段変速機4のトルク容量が増加する。
【0038】
これに対して、エンジン2からベルト型無段変速機4に入力されるトルクが低下する場合は、入力ポート32と出力ポート33が遮断されるとともに、ドレーンポート34と出力ポート33とが接続される。すると、油圧室17のオイルが油路35およびシーブコントロールバルブ31を経由してオイルパンに排出される。このようにして、セカンダリプーリ14からベルト15に加えられる挟圧力が低下し、ベルト型無段変速機4のトルク容量が低下する。
【0039】
さらに、エンジン2から前後進切換装置4に入力されるトルクが一定であり、かつベルト型無段変速機4に入力されるトルクが一定である場合について説明する。この場合は、シーブコントロールバルブ21が制御されて、出力ポート33が閉じられ、クラッチC1のトルク容量を一定に制御することができる。なお、オイルポンプ21からオイルが吐出されているときはバルブポンプ41が停止されている。つまり、バルブポンプ41からオイルは吐出されないため、油路38の油圧は油路28の油圧よりも低く、かつ、油路38の油圧は油路28の油圧よりも低い。したがって、チェック弁40,53が共に閉じられており、油圧室12,17のオイルが油路38へ排出されることはない。上記のようにして、ベルト型無段変速機4の変速比およびトルク容量が制御され、エンジンから前後進切換装置3を経由してベルト型無段変速機4に伝達されたトルクが駆動輪に伝達されて駆動力が発生する。
【0040】
これに対して、ニュートラル(N)ポジションまたはパーキング(P)ポジションが選択されると、クラッチコントロールバルブ24が制御されて、入力ポート25と出力ポート26とが遮断されるとともに、ドレーンポート27と出力ポート26とが接続される。すると、油圧室12の油圧が油路28およびクラッチコントロールバルブ24を経由してオイルパン19にドレーンされ、クラッチC1が解放される。また、ニュートラル(N)ポジションまたはパーキング(P)ポジションが選択されると、シーブコントロールバルブ31が制御されてドレーンポート34と出力ポート33とが接続され、かつ、入力ポート32が閉じられる。このため、油圧室17のオイルが油路35およびシーブコントロールバルブ31を経由してオイルパン19にドレーンされ、ベルト型無段変速機4のトルク容量が低下する。
【0041】
ところで、ドライブポジションが選択されている場合であっても、車両が停止し、かつ、アクセルペダルが戻され、さらにブレーキペダルが踏み込まれた場合に、エンジン2を停止する制御、つまり、エコラン制御をおこなうことが可能である。このエコラン制御は、信号待ち、渋滞などで一時的に車両が停止するときに実行される。このエコラン制御が実行されると、エンジン2が停止されるため、オイルポンプ21からはオイルが吐出されなくなる。
【0042】
このエコラン制御を実行中に、ブレーキペダルが戻され、かつ、アクセルペダルが踏み込まれると、エンジン2が始動してオイルポンプ21が駆動され、そのオイルポンプ21から吐出されたオイルが、前記と同様の作用により油圧室12および油圧室17に供給される。このように、エコラン制御によりエンジン2が一時的に停止されている場合は、比較的短時間でエンジン2が再始動される。このため、エコラン制御によりエンジン2を停止している間、ニュートラルポジションまたはパーキングポジションが選択されている場合と同じように、油圧室12から完全にオイルを排出し、かつ、油圧室17から完全にオイルを排出すると、エンジン2が始動されてから、油圧室12の油圧が必要油圧(目標油圧)に到達するまでの待機時間、および油圧室17の油圧が必要油圧(目標油圧)に到達するまでの待機時間が相対的に長くなり、運転者が違和感を持つ。特に、油圧室17の油圧が低下していると、車両の発進時における駆動力不足を招くおそれがある。
【0043】
そこで、この実施例においては、エコラン制御によりエンジン2が停止している間、油圧室12,17からオイルを排出せずに、バルブポンプ41を駆動して、そのバルブポンプ41から吐出されたオイルを油圧室12,17に供給することにより、油圧室12,17の油圧を必要油圧に保持することができる。以下、エコラン制御によりエンジン2が停止しているときに、バルブポンプ41を駆動して油圧室12,17にオイルを供給する作用および制御を説明する。
【0044】
まず、車両が停止し、かつ、エコラン制御によりエンジン2が停止しているときには、クラッチコントロールバルブ24の出力ポート26が閉じられるとともに、シーブコントロールバルブ31の出力ポート33が閉じられる。また、電磁コイル43への通電および非通電が交互に繰り返されて、バルブポンプ41からオイルが油路38へ吐出される。油路38の油圧が油圧室12の油圧を超えるとチェック弁40が開放されて、バルブポンプ41から吐出されたオイルが油路28を経由して油圧室12に供給される。また、油路38の油圧が油圧室17の油圧を超えるとチェック弁53が開放されて、バルブポンプ41から吐出されたオイルが油路35を経由して油圧室17に供給される。上記のようにして、油圧室12,17の油圧が上昇する。
【0045】
ここで、バルブポンプ41の吐出流量の制御について説明する。バルブポンプ41は、油圧室12,17にオイルを供給するものであるから、バルブポンプ41の吐出流量は、油圧室12,17の必要油圧(目標油圧)、より具体的には高い方の必要油圧を満たすような値に制御される。例えば、油圧室12の必要油圧(目標油圧)は、エンジン2からクラッチC1に入力されるトルクに対してクラッチC1で滑りを回避することのできる油圧の最低値である。また、油圧室17の必要油圧(目標油圧)は、エンジン2からベルト型無段変速機4に入力されるトルクに対して、ベルト15の滑りを回避することのできる油圧の最低値である。上記した油圧室12,17の必要油圧のうち、いずれか高い方の必要油圧から、バルブポンプ41から吐出するオイルの必要流量(目標流量)を求める。なお、この必要流量を求めるにあたり、油圧室、油路、バルブなどにおける漏れ量を加味してもよい。そして、バルブポンプ41における実際の吐出流量が必要流量以上となるように、駆動電源59から電磁コイル43に印加される電圧の周波数を制御する。
【0046】
ところで、バルブポンプ41がオイルを吸入および吐出する場合、逆止弁47,54の開閉が繰り返される。具体的には、逆止弁47では弁体55が弁座52に接触したり離れたりする作用を繰り返す一方、逆止弁54では弁体50が弁座49に接触したり離れたりする作用を繰り返して打撃音が生じる。この実施例においては、バルブポンプ41の吐出流量を制御するにあたり、逆止弁47,54の開閉による打撃音を相対的に小さくする(弱くする)制御を実行する。このように、逆止弁47,54の開閉による打撃音を相対的に小さくする制御に用いる図4のマップが、電子制御装置46に記憶されている。図4のマップにおいては、横軸に電磁コイル43に電圧を印加する駆動電源58の周波数が示され、縦軸にバルブポンプ41の吐出流量が示されている。周波数が所定値X1未満では、周波数が相対的に高くなることに伴い、吐出流量が増加する傾向である。これに対して、周波数が所定値X1以上になると、周波数が相対的に高くなることに伴い、吐出流量が減少する傾向となる。
【0047】
このような特性となる理由は以下の通りである。周波数が所定値X1未満では、単位時間あたりにおけるプランジャ44の往復動回数が増加すると、プランジャ44の往復動に対して弁体50,55が追従して動作し、弁体50が弁座49に完全に接触したり離れたりするとともに、弁体55が弁座52に完全に接触したり離れたりする。つまり、プランジャ44が図1で下向きに移動して逆止弁54が開放されて油室45にオイルが吸入され、ついで、プランジャ44が図1で上向きに移動して油室45の油圧が上昇すると、逆止弁47が開放され、かつ逆止弁54が閉じられて、油室45のオイルが油路38へ吐出される。このように油室45のオイルを油路38へ吐出するときに、逆止弁54が完全に閉じられているから、油室45のオイルがポート48を経由してオイルパン19に戻ることはない。
【0048】
これに対して、周波数が所定値X1以上になると、単位時間あたりにおけるプランジャ44の往復動回数が増加しても、そのプランジャ44の往復動に対して弁体50,55が追従できなくなる。これは、オイルと弁体との間に生じる流動抵抗(摩擦抵抗)が高まるからである。すると、弁体50が弁座49に接触しなくなるとともに、弁体55が弁座52に接触しなくなり、弁体55と弁座52との間に隙間が形成される。つまり、プランジャ44が図1で上向きに動作しても、弁体50が弁座49に接触しないため、油室45のオイルを油路38へ吐出する際に、油室45のオイルの一部がポート48を経由してオイルパン19に戻る。そして、周波数が相対的に高くなるほど、弁体50と弁座49との間に形成される隙間量が相対的に大きくなる。したがって、図4のマップのように、周波数が相対的に高くなるほど、吐出流量が相対的に低下する特性となる。また、弁体50も同様に弁座52には接触することなく、弁座52に近づいたり離れたりする動作を繰り返す。
【0049】
以上のように、バルブポンプ41が図4のマップに示す特性を有しているので、この実施例においては、バルブポンプ41における実際の吐出流量が必要流量以上となるように、電磁コイル43に印加する電圧の周波数を制御するにあたり、所定値X1以上の周波数を選択する。すると、プランジャ44が往復動しても弁体50は弁座に接触せず、かつ、弁体55は弁座52に接触しないため、打撃音が相対的に小さくなるか、または打撃音が生じなくなり、静粛性が向上する。特に、バルブポンプ41が駆動するときはエンジン2が停止しているため、有効である。また、バルブポンプ41は電動オイルポンプと比べて構造がシンプルである。具体的には、磁性材料により構成されたプランジャ44が磁気回路を兼ねている。さらに、バルブポンプ41は電磁コイル43が1組であり、電動オイルポンプを駆動するブラシレス回転モータに比べて駆動回路が単純である。
【0050】
ここで、具体例で説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、車両1が、この発明の車両に相当し、プランジャ44が、この発明の可動部材に相当し、油室45が、この発明の液体室および油室に相当し、吸入口48が、この発明の吸入口に相当し、吐出口51が、この発明の吐出口に相当し、弁体50が、この発明の第1弁体に相当し、弁座49が、この発明の第1弁座に相当し、弁体55が、この発明の第2弁体に相当し、弁座52が、この発明の第2弁座に相当し、バルブポンプ41が、この発明のバルブポンプに相当し、エンジン2が、この発明の走行用動力源に相当し、オイルポンプ21が、この発明の機械式オイルポンプに相当し、駆動電源58がこの発明の駆動電源に相当する。
【0051】
上記の各具体例においては、オイルポンプ21またはバルブポンプ41から吐出されたオイルが、クラッチC1の係合および解放を制御する油圧室12にオイルが供給されるように構成されているが、オイルポンプ21またはバルブポンプ41から吐出されたオイルが、ブレーキBRの係合および解放を制御する油圧室に供給されるように構成されていてもよい。また、第1動力源はエンジンではなくフライホイールでもよい。
【0052】
さらに、ベルト型無段変速機を例として説明しているが、他の無段変速機、例えば、トロイダル型無段変速機であってもよい。このトロイダル型無段変速機は、入力ディスクおよび出力ディスクと、パワーローラとを有するものであり、パワーローラの傾転角度を制御することにより変速比が制御されるように構成されている。また、入力ディスクおよび出力ディスクの回転軸線に沿った方向に挟圧力を加えることにより伝達トルクを制御する挟圧力発生装置が設けられている。その挟圧力発生装置により発生する挟圧力は、油圧室の油圧により制御されるように構成される。このトロイダル型無段変速機の挟圧力を発生させる油圧室に、オイルポンプ21またはバルブポンプ41から吐出されたオイルが供給されるように構成することもできる。
【0053】
さらに、無段変速機ではなく、有段変速機のクラッチまたはブレーキの係合および開放を制御する油圧室に、オイルポンプ21またはバルブポンプ41から吐出されたオイルが供給されるように構成された油圧制御装置でもよい。さらにまた、図3の油圧制御装置においては、オイルポンプ21およびバルブポンプ41から吐出されたオイルが、複数の油圧室に供給されるように構成されているが、オイルの供給先(オイル使用部)は単数でもよい。さらに、オイルポンプ21が設けられておらず、バルブポンプ41から吐出された液体が液体使用部に供給されるように構成された装置であってもよい。例えば、車両の燃料タンクからバルブポンプ41が燃料(液体)を吸入し、そのバルブポンプ41から吐出された燃料が、インジェクタを経由してエンジンの燃焼室(液体使用部)に供給されるように構成されていてもよい。このとき、エンジンの燃焼室に供給される燃料の目標供給量(目標流量)は、例えば、車速およびアクセルペダルの踏み込み量に基づいて求められる。このように、図1に示されたバルブポンプ41を車両用エンジンの燃料供給装置に用いることもできる。
【符号の説明】
【0054】
1…車両、 2…エンジン、 21…オイルポンプ、 41…バルブポンプ、 43…電磁コイル、 44…プランジャ、 45…油室、 48…吸入口、 49,52…弁座、 51…吐出口、 50,55…弁体、 58…駆動電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動する可動部材と、この可動部材の往復動により圧力の上昇および低下が交互に発生する液体室と、この液体室に連通され、かつ、前記流体室の圧力が低下する過程で前記液体室に吸入される液体が通る吸入口と、前記液体室に連通され、かつ、前記液体室の圧力が上昇する過程で前記液体室から吐出される液体が通る吐出口と、前記液体室の圧力が低下する過程で第1弁座から離れるように移動して前記吸入口を開放し、かつ、前記液体室の圧力が上昇する過程で前記第1弁座に近づくように移動して前記吸入口を閉じる第1弁体と、前記液体室の圧力が低下する過程で第2弁座に近づくように移動して前記吐出口を閉じ、かつ、前記液体室の圧力が上昇する過程で前記第2弁座から離れるように移動して前記吐出口を開放する第2弁体とを備え、前記可動部材の往復動を制御することにより、前記吐出口から吐出される液体の流量を制御するバルブポンプの制御装置において、
前記吐出口から吐出される液体の流量が、前記液体を使用する液体使用部における目標流量以上となるように制御する際に、前記液体室の圧力を低下させて前記液体室に液体を吸入する過程で前記第2弁体と前記第2弁座とが接触せず、かつ、前記液体室の圧力を上昇させて前記液体室から液体を吐出する過程で前記第1弁体と前記第1弁座とが接触しないように、前記可動部材の往復動を制御することを特徴とするバルブポンプの制御装置。
【請求項2】
前記可動部材が磁性材料により構成されており、電圧が断続されて前記可動部材を往復動させる磁気吸引力を発生する電磁コイルと、この電磁コイルに電圧を印加する駆動電源とが設けられており、前記駆動電源から前記電磁コイルに印加する電圧の周波数を制御することにより、単位時間あたりにおける前記可動部材の往復動回数および前記吐出口から吐出される液体の流量が制御されるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバルブポンプの制御装置。
【請求項3】
オイル使用部に供給するオイルを吐出し、かつ、車両の走行用動力源により駆動される機械式オイルポンプと、可動部材が往復動されて前記オイル使用部に供給するオイルを吐出するバルブポンプとを有し、このバルブポンプが、前記可動部材の往復動により圧力の上昇および低下が交互に発生する油室と、この油室に連通され、かつ、前記油室の圧力が低下する過程で前記油室に吸入されるオイルが通る吸入口と、前記油室に連通され、かつ、前記油室の圧力が上昇する過程で前記油室から吐出されるオイルが通る吐出口と、前記油室の圧力が低下する過程で第1弁座から離れるように移動して前記吸入口を開放し、かつ、前記油室の圧力が上昇する過程で前記第1弁座に近づくように移動して前記吸入口を閉じる第1弁体と、前記油室の圧力が低下する過程で第2弁座に近づくように移動して前記吐出口を閉じ、かつ、前記油室の圧力が上昇する過程で前記第2弁座から離れるように移動して前記吐出口を開放する第2弁体とを備え、前記可動部材の往復動を制御することにより、前記吐出口から吐出されるオイルの流量を制御するように構成されているとともに、前記機械式オイルポンプまたは前記バルブポンプのいずれか一方から吐出されたオイルを選択的に前記オイル使用部に供給するように構成されている車両の油圧制御装置において、
前記エンジンが停止されて機械式オイルポンプからオイルが吐出されず、かつ、前記バルブポンプの吐出口から吐出するオイルの流量を、前記オイル使用部における目標流量以上となるように制御する際に、前記油室の圧力を低下させて前記油室にオイルを吸入する過程で前記第2弁体と前記第2弁座とが接触せず、かつ、前記油室の圧力を上昇させて前記油室からオイルを吐出する過程で前記第1弁体と前記第1弁座とが接触しないように、前記可動部材の往復動を制御することを特徴とする車両の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−111974(P2011−111974A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269124(P2009−269124)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】