説明

バンドギャップ定電圧回路

【課題】 電源投入時の立ち上がり時間を速くし、通常状態でもノイズなどの影響で出力電圧が0Vで安定してしまうことを防ぐことが可能なバンドギャップ定電圧回路を提供する。
【解決手段】 出力端子の電圧をモニタする出力電圧検出回路と、出力電圧検出回路の出力によって電流値を制御される電流源を設け、出力端子の電圧が所定の電圧より低いときに、電流源によってレベルシフト回路を構成するバイポーラトランジスタに電流を供給するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドギャップ定電圧回路に係り、さらに詳しくは電源投入時に確実に出力電圧を出力し、立ち上げ時間を短縮するスタートアップ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来のバンドギャップ定電圧回路の回路図である。この電圧源は、PMOSトランジスタP21、P22、P23、P24、P25とNMOSトランジスタNL21、NL22、NL23とNMOSデプレッショントランジスタND21とバイポーラトランジスタB21、B22と抵抗R21、R22、R23、R24で構成されている。図2において第一のバイポーラB21と第2のバイポーラB22の数の比を1:Nに設定すると安定状態において、式1なる出力電圧VREFが得られる。
【0003】
VREF=VBE+Vt×lnN(1+R21/R22) ・・・ (式1)
ここでVBEはバイポーラトランジスタのベースエミッタ間電圧、Vtはkをボルツマン定数、Tを絶対温度、qを電子電荷としてVt=kT/qで与えられる。この出力電圧VREFが出力されている状態を通常状態と呼ぶ。
【0004】
従って、高電位の電源端子VDDと低電位の電源端子VSSの間に電源電圧を印加することにより、安定した通常状態では、所定の出力電圧VREFが出力端子から得られるように構成されている。
【特許文献1】特許公開2004−318604
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図2に示した従来のバンドギャップ定電圧回路は、電源投入時の立ち上がり時間が遅く、通常状態でもノイズなどの影響で出力電圧が0Vに安定してしまうという欠点があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、電源投入時の立ち上がり時間を速くし、さらに通常状態でもノイズなどの影響で出力電圧が0Vで安定してしまうことのないバンドギャップ定電圧回路を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のバンドギャップ定電圧回路は、上記課題を解決するために、トランジスタNM11のゲートで出力端子VREF11の電圧をモニタすることを特徴とする。さらに、トランジスタP119のドレインをバイポーラトランジスタB11のエミッタに接続し、バイポーラトランジスタに電流を流すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上のような本発明のバンドギャップ定電圧回路は、電源投入時の立ち上がり時間を速くすることが出来て、通常状態でもノイズなどの影響で出力電圧が0Vで安定してしまうことを防ぐことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
【実施例】
【0010】
図1は、本発明のバンドギャップ定電圧回路の回路図である。
【0011】
図1に示すようにバンドギャップ定電圧回路は、差動増幅回路と、差動増幅回路の入力に接続されたレベルシフタ回路と、定電圧回路とを有する。
【0012】
バンドギャップ定電圧回路の差動増幅器は、1対のpチャネル型トランジスタP112およびP113と、閾値電圧の低い(例えば0.45V)nチャネル型トランジスタNL11およびNL12から構成される。(以下、nチャネル型トランジスタをn型トランジスタ、pチャネル型トランジスタをp型トランジスタと略す。)
n型トランジスタNL11のソースは基準電位となるグランドに接地され、ドレインはp型トランジスタP112のドレインに接続され、ゲートはn型トランジスタNL12のゲートに接続されている。さらにn型トランジスタN11のドレインとゲートが接続(ダイオード接続)されている。n型トランジスタNL12は、ソースがグランドに接続され、ドレインはp型トランジスタP113のドレインに接続され、ゲートはn型トランジスタNL11のゲートに接続されている。p型トランジスタP112およびp型トランジスタP113のソースおよびバックゲートはnode11で共通に接続され、p型トランジスタP108およびP104を介して電源電圧VCCに接続される。p型トランジスタP112のゲートはp型トランジスタP114のソースに接続され、p型トランジスタP113のゲートはp型トランジスタP115のソースに接続されている。
【0013】
閾値電圧の低い(例えば0.45V)n型トランジスタNL13は、差動増幅器の出力端子に接続され、p型トランジスタP111および抵抗R14を介して出力端子VREF11に接続されている。p型トランジスタP111のソースに、p型トランジスタP107のドレインが接続されている。p型トランジスタP107のゲートはp型トランジスタP104のゲートに接続されるとともに定電流源として用いられているp型トランジスタP103のゲートに接続されている。p型トランジスタP107はゲートに定電流源からの電流を供給されてゲートをオン・オフする。これに応じてp型トランジスタP107は電源電圧VCCから抵抗R14を介して出力端子VREF11に電流を供給する。
【0014】
p型トランジスタP104は定電流源として用いられているp型トランジスタP103に接続されている。p型トランジスタP104はドレインがp型トランジスタP108を介して差動増幅回路に接続され、ソースが電源電圧VCCに接続されている。そして、p型トランジスタP104はゲートがp型トランジスタP107、P106、P105のゲートに接続されるとともに、定電流源として用いられているp型トランジスタP103のゲートに接続される。p型トランジスタP104はゲートに定電流源からの電流を供給されてゲートをオン・オフする。これに応じてp型トランジスタP104は、電源電圧VCCから差動増幅器に電流を供給する。また、定電圧源として用いられているp型トランジスタP103とp型トランジスタP104とp型トランジスタP105とp型トランジスタP106とp型トランジスタP107はカレントミラー回路を構成している。
【0015】
p型トランジスタP104はp型トランジスタP108をカスコード接続して差動増幅器に接続している。これにより、チャネル長変調を防止することができ、差動増幅器に対して安定した電流を供給することができる。同様に、p型トランジスタP105はp型トランジスタP109をカスコード接続している。p型トランジスタP106はp型トランジスタP110をカスコード接続している。p型トランジスタP107はp型トランジスタP111をカスコード接続している。
【0016】
p型トランジスタP103とn型デプレッショントランジスタND13はドレインで接続されており、定電圧源として用いられている。直流電源として用いられるn型デプレッショントランジスタND13はソース及びゲートをグラウンドに接続し、ドレインをp型トランジスタP103のドレインに接続している。また、p型トランジスタP103のソースは電源電圧VCCに接続され、ドレインはn型デプレッショントランジスタND13のドレインに接続される。p型トランジスタP103はドレインゲート間を接続(ダイオード接続)されており、ゲートはp型トランジスタP104とp型トランジスタP105とp型トランジスタP106とp型トランジスタP107のゲートに接続されている。同様に、p型トランジスタP102とn型デプレッショントランジスタND12も定電圧源として用いられておりp型トランジスタP102のゲートがp型トランジスタP108とp型トランジスタP109とp型トランジスタP110のゲートに接続されている。また、p型トランジスタP101とn型デプレッショントランジスタND11も定電圧源として用いられておりp型トランジスタP101のゲートがp型トランジスタP111のゲートに接続されている。
【0017】
レベルシフタ回路として用いられるp型トランジスタP114はドレインがグランドに接続され、ソースはp型トランジスタP112のゲート及びp型トランジスタP109、p型トランジスタP105を介して電源電圧VCCに接続されている。また、p型トランジスタP114のゲートは抵抗R12とR14を介して出力端子VREF11に接続される。同様に、レベルシフタ回路として用いられるp型トランジスタP115はドレインがグランドに接続され、ソースがp型トランジスタP113のゲート及びp型トランジスタP110、p型トランジスタP106を介して電源電圧VCCに接続される。また、p型トランジスタP115のゲートは抵抗R11とR14を介して出力端子VREFF11に接続される。
【0018】
出力端子VREF11とグラウンドの間には出力端子VREF11側から順に抵抗R14を介して抵抗R12、抵抗R13、バイポーラトランジスタB12が接続されている。これらとは別に出力端子VREF11とグラウンドの間には出力端子VREF11から順に抵抗R14を介して抵抗R11、バイポーラトランジスタB11が接続されている。
【0019】
バイポーラトランジスタB12のベース、コレクタはグラウンドに接続され、エミッタは抵抗R13に接続されている。抵抗R13は一方がバイポーラトランジスタB12に接続されるとともに、他方が抵抗R12とp型トランジスタP114のゲートに接続されている。また、抵抗R12は一方が抵抗R13とp型トランジスタP114のゲートに接続されるとともに、他方がR14を介して出力端子VREF11に接続されている。
【0020】
バイポーラトランジスタB11のベース、コレクタはグラウンドに接続され、エミッタは抵抗R11とp型トランジスタP115のゲートに接続されている。また、抵抗R11は一方がバイポーラトランジスタB12に接続されるとともに、他方が抵抗R14を介して出力端子VREF11に接続されている。
【0021】
本発明のバンドギャップ定電圧回路は、さらに以下に説明するスタートアップ回路1を備えている。
スタートアップ回路1は、出力端子VREF11の電圧を検出する出力電圧検出回路であるn型トランジスタNM11と、出力電圧検出回路の出力によって制御される電流源であるp型トランジスタP119とから構成される。
n型トランジスタNM11は、ゲートに出力端子VREF11を接続され、ソースにp型トランジスタP117のドレインを接続されている。p型トランジスタP117は、p型トランジスタP116とカレントミラー回路を構成して、n型デプレッショントランジスタND14が発生する定電流をn型トランジスタNM11に流す。直流電源として用いられるn型デプレッショントランジスタND14はソース及びゲートをグラウンドに接続している。
【0022】
p型トランジスタP118とn型トランジスタNM12はインバータを構成して、p型トランジスタP117とn型トランジスタNM11の接続点を入力として接続している。p型トランジスタP118とn型トランジスタNM12のインバータの出力は、電流源であるp型トランジスタP119のゲートに接続している。p型トランジスタP119のソースは、電源電圧VCCに接続され、ドレインはバイポーラトランジスタB11のエミッタに接続されている。
【0023】
次に、上記した本発明のバンドギャップ定電圧回路のスタートアップ回路1の動作について説明する。
電源投入時、出力端子VREF11の電圧はn型トランジスタNM11の閾値より低い電圧であるためn型トランジスタNM11はオフしている。このため、n型トランジスタNM12がオンし、p型トランジスタP119がオンする。p型トランジスタP119がオンすると、バイポーラトランジスタB11に電流が流れるので、バイポーラトランジスタB11のエミッタ電圧が上がり、出力端子VREF11の電圧が上昇する。出力端子VREF11の電圧が上昇し、n型トランジスタNM11の閾値以上になったとき、n型トランジスタNM11がオンする。このため、p型トランジスタP118がオンし、p型トランジスタP119がオフするので、バイポーラトランジスタB11への電流の供給が停止する。
【0024】
従って、上述のスタートアップ回路1によって、バンドギャップ定電圧回路の電源投入時の立ち上がり時間を速くする事が可能となる。さらに、p型トランジスタP119のサイズを調節することで、電源投入時の立ち上がり時間を調節することもできる。
また、電源投入時以外においても、n型トランジスタNM11が出力端子VREF11の電圧をモニタして、出力端子VREF11の電圧を一定になるように動作するため、ノイズなどの影響で出力端子VREFF11の電圧が0Vで安定することを防ぐことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のバンドギャップ定電圧回路の回路図である。
【図2】従来のバンドギャップ定電圧回路の回路図である。
【符号の説明】
【0026】
1 スタートアップ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力端子に定電圧を出力する定電圧源と、
前記出力端子の電圧をレベル変換する第一及び第二のレベルシフト回路と、
前記第一及び第二のレベルシフト回路の出力を入力して前記出力端子の電圧を制御する差動増幅回路と、
前記出力端子の電圧をモニタする出力電圧検出回路と、
前記出力電圧検出回路の出力によって電流値を制御される電流源を備え、
前記出力端子の電圧が所定の電圧より低いときに、前記電流源によって前記レベルシフト回路を構成するトランジスタに電流を供給するバンドギャップ定電圧回路。
【請求項2】
前記出力電圧検出回路は、
前記出力端子をゲートに接続し、ソースを接地した検出トランジスタであるn型トランジスタと、
ソースとゲートを共通に接地した定電流源であるn型デプレッショントランジスタと、
前記n型デプレッショントランジスタが流す定電流を、前記n型トランジスタに流すカレントミラー回路と、
前記n型トランジスタのドレインと入力を接続したインバータ回路とで構成し、
前記電流源は、
前記インバータ回路の出力にゲートを接続し、ソースを電源電圧に接続し、ドレインを前記レベルシフト回路を構成するバイポーラトランジスタのエミッタに接続したp型トランジスタで構成し、
電源投入時の前記出力端子の電圧が所定の電圧より低いときに、前記p型トランジスタが前記バイポーラトランジスタに電流を供給するように構成された請求項1記載のバンドギャップ定電圧回路。
【請求項3】
前記p型トランジスタのサイズによって、電源投入時の立ち上がり時間を調節することを特徴とする請求項2記載のバンドギャップ定電圧回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−249948(P2007−249948A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16107(P2007−16107)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】