説明

バーナー

【課題】スピンドルで調整スプリングを押し込んだ際に、この調整スプリング及び弁体がその軸心方向から傾くことなく、まっすぐ付勢されるようにする。
【解決手段】弁体11をカウンタースプリング14で閉弁方向に付勢する一方で、スピンドル13のねじ込みによって調整スプリング12を押し込んで弁体11を開弁方向に付勢するようにしたレギュレータにおいて、スピンドル13と調整スプリング12との間に球体20を介在して設けた。この球体20を設けることによって、スピンドル13のねじ込みの際にねじの振れ等に起因して、そのねじ込み方向が調整スプリング12の軸心方向から傾いた状態でも、球体20がそのずれを修正して、調整スプリング12をその軸心方向にまっすぐに付勢し得る。このため、スピンドル13のねじ込み量に対応して、弁体11の開弁度が精度良く制御されて、一定の2次圧を保つようにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バーナーヘッドへのガス供給圧を一定のガス圧に維持し得るようにしたバーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
屋内やアウトドアにおいて使用するバーナーとして、ブタン等の液化ガスを封入した小型のガスボンベを取り付けて、この液化ガスを気化させつつバーナーヘッドで燃焼させるようにしたものがある。このバーナーの火力は、ガス流量を調節するレギュレータによって調節する。このレギュレータとして、弁体を閉弁又は開弁方向に付勢するダイヤフラムと、このダイヤフラムを介して前記弁体を開弁方向に付勢する調整スプリングと、この調整スプリングを開弁方向に押し込むスピンドルを有したものがある。このダイヤフラムには、ハウジングからのガス漏れを防止する機能を有したものもある。
【0003】
前記レギュレータを備えたバーナーの一例を図8に示して説明する。このバーナーのハウジング1には、ボンベホルダー2を介して小型のガスボンベBが取り付けられ、このガスボンベB内のガスがハウジング1に送り込まれる。また、このハウジング1には、吸気管3を介してバーナーヘッド4が設けられ、ハウジング1に送り込んだガスを、吸気管3に形成した空気口5から取り込んだ空気と混合して混合気とし、バーナーヘッド4に供給する。この混合気を、バーナーヘッド4に形成した火口から放出するとともに、圧電素子6と配線(図示せず)した芯線7から火口近傍に放電を生じさせることによって点火・燃焼する。なお、同図においては、鍋等を載置するための五徳は省略してある。
【0004】
このバーナーヘッド4に供給されるガスの流量は、前記レギュレータで調節する。このレギュレータは、ハウジング1内に形成された1次側ガス室8と、この1次側ガス室8よりもガス圧が低い2次側ガス室9と、両ガス室間8、9をつなぐ流路10を有するとともに、この流路10内に弁体11が設けられている。
【0005】
この弁体11には、ハウジング1からのガス漏れを防止しつつ弁体11を閉弁方向に付勢するダイヤフラム16と、このダイヤフラム16による前記閉弁方向への付勢力を補助するカウンタースプリング14と、連結部材18及びダイヤフラム16を介して弁体11を開弁方向に付勢する調整スプリング12と、この調整スプリング12を前記開弁方向に押し込むスピンドル13とが設けられている。このスピンドル13をハウジングキャップ17にねじ込んで、このスピンドル13の押し込み量を調節することによって、弁体11の開弁度が決まる。このスピンドル13は、止めナット19によってハウジングキャップ17から抜け落ちないようになっている。
【0006】
この弁体11は、その軸心が流路10を流動するガスの流動方向と平行方向になるように設けられており、流路10の内径よりも弁体11の外径を若干小さくすることによって、その隙間にガスが流動し得る(開弁する)ようにしている。また、この弁体11は、その軸心方向に自在に動き得るようになっていて、この弁体11の軸周りに設けたOリング15を流路10の内径面に当接して閉塞するように弁体11を軸心方向に動かして(弁体11を同図中において右側に動かして)、ガスの流動を停止する(閉弁する)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記レギュレータによって、バーナーの火力を一定に維持するためには、弁体11をその軸心方向にまっすぐに付勢して、一定の開弁度を維持する必要がある。しかしながら、前記ねじのねじ込みに際し、ねじの振れ等が生じると、調整スプリング12をその軸心方向にまっすぐに付勢できないことがある。例えば、図9に従来技術に係るレギュレータの要部を示して説明すると、調整スプリング12の一端側にスピンドル13からの付勢が片寄ってなされた場合(付勢力F1が付勢力F2よりも大きい場合(同図中の実線矢印を参照))、その付勢力の大小関係が維持されたまま、調整スプリング12の他端側に伝わる(同図中の破線矢印を参照)。その結果、この調整スプリング12でダイヤフラム16を均等に押し込んで、弁体11をその軸心方向にまっすぐに付勢することができない。そのため、弁体11の開弁度が不安定になって、一定の火力を維持することができない。
【0008】
そこで、この発明は、スピンドルで調整スプリングを押し込んだ際に、この調整スプリング及び弁体がその軸心方向から傾くことなく、まっすぐ付勢されるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため、この発明は、ガスボンベから供給されるガス圧力を、弁体を閉弁又は開弁方向に付勢するダイヤフラムと、このダイヤフラムを介して前記弁体を開弁方向に付勢する調整スプリングと、この調整スプリングを前記開弁方向に押し込むスピンドルとを有するレギュレータで減圧して、バーナーヘッドに送り込むようにしたバーナーにおいて、前記調整スプリングと前記スピンドルとの間に、球体を介在させて、前記調整スプリングの一端と前記球体とが円環状に線接触し得る構成とした。
【0010】
前記球体として、その直径が前記調整スプリングの巻径よりも大きいものを用いると、この調整スプリングの一端において、前記球体と調整スプリングとの間の安定した当接状態が維持される。しかも、両者は円環状に線接触しているので、スピンドルによる前記球体の押し込みの際に、このスピンドルが軸心方向から若干傾斜したとしても、前記円環状の線接触状態が維持される。このため、前記傾斜が修正されて前記調整スプリングがダイヤフラムを正確に軸心方向に付勢し、このダイヤフラムに設けられた弁体の開弁度を安定して制御し得る。
【0011】
前記構成において、前記スピンドルにテーパ面を形成し、このテーパ面によって、前記スピンドルと当接する前記球体が、このスピンドルの軸心に案内されるようにすることもできる。このテーパ面によって前記球体が前記軸心位置において安定するため、このスピンドルで前記球体を押し込む際に、この球体がスピンドルの径方向にずれて動く恐れが低い。このため、前記球体によって、前記調整スプリングをその軸心方向からまっすぐ付勢することができ、弁体の開弁度の制御を一層安定し得る。
【0012】
前記各構成においては、前記スピンドルを前記ハウジングにねじ込むことによって、前記球体の押し込み量を調整するようにすることができ、あるいは、前記スピンドルにカムを設け、このカムの作用によって、前記球体の押し込み量を調整するようにすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1にこの発明に係るバーナーを示す。このバーナーの構成は、レギュレータ以外は従来技術に係るバーナーと同じなので、レギュレータの構成についてのみ説明する。このレギュレータは、ハウジング1内に形成した1次側ガス室8と、この1次側ガス室8よりもガス圧が低い2次側ガス室9と、両ガス室8、9をつなぐ流路10と、この流路10内に設けた弁体11と、ハウジング1からのガス漏れを防止しつつ弁体11を閉弁方向に付勢するダイヤフラム16と、このダイヤフラム16による前記閉弁方向への付勢力を補助するカウンタースプリング14と、連結部材18及びダイヤフラム16を介して弁体11を開弁方向に付勢する調整スプリング12と、この調整スプリング12を前記開弁方向に押し込むスピンドル13とが設けられている。この調整スプリング12とスピンドル13との間には、球体20が介在して設けられている。また、調整スプリング12は、連結部材18によって弁体11と連結されている。
【0014】
この球体20は、その直径が調整スプリング12の巻径よりも大きいため、この球体20を調整スプリング12の一端にその軸心方向から当接させた際に、この調整スプリング12の中に入り込んでしまうことなく、調整スプリング12の一端と球体20とが円環状に線接触し得る。このため、スピンドル13による球体20の押し込みの際に、このスピンドル13が軸心方向から若干傾斜したとしても、前記円環状の線接触状態が維持される。
【0015】
また、スピンドル13には、その内側に円錐形状のテーパ面13aが形成してあって、このテーパ面13aの窪みに球体20が安定的に嵌ってスピンドル13の軸心に案内されるので、このスピンドル13と球体20との間でがたつきが生じにくい。このため、前記円環状の線接触状態が安定的に維持される。このテーパ面13aの形状は前記円錐形状に限定されるものではなく、球体20を前記軸心に案内し得るのであれば、例えば四角錐形状等も採用し得る。
【0016】
図2及び図3にレギュレータの要部を示して説明する。このレギュレータのスピンドル13は、ハウジング1に取り付けたハウジングキャップ17にねじ込まれていて、このねじ込みによって、球体20を弁体11の開弁方向に押し込む。スピンドル13と調整スプリング12との間に球体20を介在することによって、前記ねじ込みの際にスピンドル13に傾きが生じたとしても、球体20によってその傾きが修正されて、調整スプリング12の軸心方向に均等に付勢力が伝達される(図2の実線矢印Fを参照)。このため、連結部材18を介して、軸心方向にまっすぐに、弁体11が付勢される(図2の破線矢印を参照)。なお、このスピンドル13は、止めナット19によってハウジングキャップ17から脱落しないようになっている。
【0017】
この構成に係るレギュレータは、バーナーの使用に伴ってガスボンベBのガス圧が低下した場合でも、一定の2次圧を維持し得るようになっている。この時の弁体11の作用を図4に示して説明する。この弁体11は、調整スプリング12と、カウンタースプリング14及びダイヤフラム16の双方から、互いに逆方向に付勢されるとともに、1次側ガス室8から2次側ガス室9に流動するガスによって、閉弁方向に付勢される。
【0018】
このバーナーの使用開始直後等においては、ガスボンベBの温度は室温程度なので、この室温によって決まる1次圧(例えば、2.0kg/cm程度)となっている一方で、2次側ガス室9は所定の2次圧(例えば、0.5kg/cm程度)となるように調整スプリング12によって調整されている。弁体11と流路10の間の隙間を通って流動するガスの流速は、1次圧と2次圧の差圧(前記の例示においては、1.5kg/cm)の大きさによって決まる。このとき、弁体11の開弁度(弁体11のOリング15と、流路10の内壁面との間の隙間の大きさ)は、弁体11に対する、調整スプリング12、カウンタースプリング14及びダイヤフラム16による付勢力と、前記ガスの流動による閉弁方向への付勢力との兼ね合いによって決まる(同図(a)参照)。
【0019】
このバーナーの使用とともに、ガスボンベBの温度がガスの気化熱によって低下し、前記1次圧が低下した場合(例えば、1.0kg/cm程度)、この1次圧と2次圧との差圧が小さくなって、ガスの流速が低下する。この場合においては、弁体11に対する、前記ガスの流動に伴う閉弁方向への付勢力が小さくなるため、この弁体11は、調整スプリング12の付勢力によって開弁方向に移動する(同図(b)参照)。これによって、ガスの流量が回復し、所定の2次圧を維持し得る。しかも、球体20の作用によって弁体11の開弁度が安定的に保たれるため、前記2次圧の維持が一層確実になされる。
【0020】
なお、前記レギュレータは、前記の態様に限定されるものではない。例えば、スピンドル13にテーパ面13aを形成せずに、スピンドル13と球体20とを点接触する態様とすることもできる(図5参照)。また、球体20を用いる代わりに、先端に球面を形成した砲弾形スペーサ21を介在する態様とすることもできる(図6参照)。いずれの態様においても、調整スプリング12と球体20又は砲弾形スペーサ21との間の円環状の線接触状態を維持し得ることができ、弁体11の開弁度を安定的に保ち得るからである。
【0021】
また、スピンドル13をねじ込み方式とする代わりに、図7に示すように、スピンドルにリブ22を形成し、このリブ22をハウジングキャップ17の内面に形成した溝に嵌め込み、カムの作用によってスピンドル13を押し込むようにすることもできる。
このカムの構成は、このようにスピンドル13を軸心周りに回転させるものに限定されない。例えば、スピンドル13に開閉レバーを設け、この開閉レバーの動きを前記カムによってスピンドル13の軸心方向の動きに変換して、このスピンドル13をハウジング1に押し込む態様のものも採用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係るバーナーの一実施形態を示す側面断面図
【図2】一実施形態の要部を示す側面断面図
【図3】一実施形態の要部を示す分解斜視図
【図4】一実施形態のガスの流動を示す側面断面図であって、(a)は開弁度が小さい場合(1次圧が高い場合)、(b)は開弁度が大きい場合(1次圧が低い場合)
【図5】この発明に係るバーナーの他の実施形態の要部を示す側面断面図
【図6】この発明に係るバーナーの他の実施形態の要部を示す側面断面図
【図7】他の実施形態の要部を示す分解斜視図
【図8】従来技術に係るバーナーを示す側面断面図
【図9】従来技術に係るバーナーの要部を示す側面断面図
【符号の説明】
【0023】
1 ハウジング
2 ボンベホルダー
3 吸気管
4 バーナーヘッド
5 空気口
6 圧電素子
7 芯線
8 1次側ガス室
9 2次側ガス室
10 流路
11 弁体
12 調整スプリング
13 スピンドル
13a テーパ面
14 カウンタースプリング
15 Oリング
16 ダイヤフラム
17 ハウジングキャップ
18 連結部材
19 止めナット
20 球体
21 砲弾形スペーサ
22 リブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスボンベ(B)から供給されるガス圧力を、弁体(11)を閉弁又は開弁方向に付勢するダイヤフラム(16)と、このダイヤフラム(16)を介して前記弁体(11)を開弁方向に付勢する調整スプリング(12)と、この調整スプリング(12)を前記開弁方向に押し込むスピンドル(13)とを有するレギュレータで減圧して、バーナーヘッド(4)に送り込むようにしたバーナーにおいて、
前記調整スプリング(12)と前記スピンドル(13)との間に、球体(20)を介在させて、前記調整スプリング(12)の一端と前記球体(20)とが円環状に線接触し得るようにしたことを特徴とするバーナー。
【請求項2】
前記スピンドル(13)にテーパ面(13a)を形成し、このテーパ面(13a)によって、前記スピンドル(13)と当接する前記球体(20)が、このスピンドル(13)の軸心に案内されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のバーナー。
【請求項3】
前記スピンドル(13)を前記ハウジング(1)にねじ込むことによって、前記球体(20)の押し込み量を調整するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のバーナー。
【請求項4】
前記スピンドル(13)にカムを設け、このカムの作用によって前記スピンドル(13)をその軸心方向に押し込み、前記球体(20)の押し込み量を調整するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のバーナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−229033(P2009−229033A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77801(P2008−77801)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(592073123)新富士バーナー株式会社 (8)
【Fターム(参考)】