パネル型スピーカ
【課題】 小型でしかも簡単な構造で、音響特性に優れたパネル型スピーカを提供する。
【解決手段】 圧電エキサイタの底面(10a,20a)を振動パネル(3)の一部に固着してなるパネル型スピーカにおいて、振動パネル(3)における圧電エキサイタの底面(10a,20a)と対向する面部分の限定した部分(P)と、圧電エキサイタの底面との間に固着部材(11)を設け、該圧電エキサイタを該振動パネル(3)に固着する。振動パネル(3)における圧電エキサイタの底面(10a,20a)と対向する面部分の限定した部分(P)以外の部分(Q)には、スポンジなどの柔軟な補助接続部材(12)を設けることができる。
【解決手段】 圧電エキサイタの底面(10a,20a)を振動パネル(3)の一部に固着してなるパネル型スピーカにおいて、振動パネル(3)における圧電エキサイタの底面(10a,20a)と対向する面部分の限定した部分(P)と、圧電エキサイタの底面との間に固着部材(11)を設け、該圧電エキサイタを該振動パネル(3)に固着する。振動パネル(3)における圧電エキサイタの底面(10a,20a)と対向する面部分の限定した部分(P)以外の部分(Q)には、スポンジなどの柔軟な補助接続部材(12)を設けることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパネル型スピーカに関するものであり、特に、携帯電話機など小型電子機器への応用に適した小型のパネル型スピーカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などに設置されるパネル型スピーカは、高性能でしかも小型であることが要求される。この従来技術としてパネル型スピーカ付き携帯電話機の例が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。図6は、従来技術におけるパネル型スピーカ付き携帯電話機の表示部分の構成を示す平面図である。この携帯電話機の表示部分は、ケース1、液晶パネル2、透光性の保護パネルを兼ねる振動パネル3およびエキサイタ(励振素子)6を備えている。液晶パネル2はスポンジなどの柔らかめの弾性結合部材を介在させながらケース1に保持されている。この液晶パネル2の上方には、パネル型スピーカの振動パネル3がスポンジなどの柔らかめの弾性結合部材を介在させながらケース1に保持される。また、振動パネル3の一部にエキサイタ(励振素子)6が保持されており、振動パネル3に撓み振動が励振される。
【0003】
このようなパネル型スピーカには振動パネルと振動パネルの一部に保持される圧電エキサイタを備えているものがあり、このパネル型スピーカに搭載される圧電エキサイタの従来技術として、機器の落下時の衝撃により圧電エキサイタに内蔵されている圧電素子が破壊されないようにするためと、取り扱いのし易さのために、圧電エキサイタを箱形ケース構造とし、内部の圧電素子を保護する構造とした例が開示されている。(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
図7は箱形ケース構造の圧電エキサイタの例を示す断面図である。図7に示すように、撓み振動型エキサイタのケースcは、電気絶縁性の樹脂を素材とするとともに、その外形は直方体の形状を呈している。このケースcの内部には、2本の矩形板状の圧電励振子b1、b2(以下においては、単に「ビーム」とする)がそれぞれの全長にわたって収容されている。各ビームは、それぞれの一端部分がケースcに保持されると共に他方の端子が自由端となる片持ち梁を構成している。すなわち、ケースcの一方の側(この実施例では図中の左側)に、ビームb1、b2を保持する保持部が形成されている。ビームb1、b2に対向するケースcの内壁面と、各ビームの一端部分との間に、接着剤層fが形成されることにより、ビームb1、b2がケースcの内部に保持される。この撓み振動型エキサイタは、スピーカとして携帯電話機などに組み込まれる。
【0005】
また、箱形の圧電エキサイタが透光性の保護パネルを兼ねる振動パネルの一部に取り付けられたパネル型スピーカの例が開示されている(例えば、非特許文献2参照。)。図8(a)に示すように、液晶パネル2には表示面を保護するための透明の保護パネルを兼ねる振動パネル3が取付けられている。この振動パネル3は液晶パネル2の一方の側において表示面の外側に延長されており、この延長部分の裏面に箱形の圧電エキサイタ20が接着剤によって取付けられている。
【0006】
図8(b)は、図8(a)のA−A線に沿ってみた圧電エキサイタ20の背面図を示す。この従来例における圧電エキサイタ20は、細長いケースに対して2枚のビームB1,B2が取付けられている。該ケースは、頂板部20a、底板部20b、(図8(b)で見て中央位置で)該頂板部20aと該底板部20bとの間に設けられた励振子支持部20d、(該ケースの前面側及び背面側のそれぞれ左右端部において)該頂板部20aと該底板部20bとを連結するように設けられた柱部20e,20eとからなる。このケースの底板部20bの全面が粘着テープ等の固着部材8によって保護パネルの一部に固着され取り付けられている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−336403号公報(第3−5頁、図1−5)
【非特許文献1】特願2003−365507号公報(第2頁、図1)
【非特許文献2】特願2003−189935号公報(第4頁、図1、9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術におけるパネル型スピーカは、落下時の衝撃で振動パネルから外れないように、圧電エキサイタの底面のほぼ全面で粘着テープ等を用いて振動パネルに固着されている。このため周波性特性の平坦性が悪く、音響特性が劣るという問題があった。また、従来技術におけるパネル型スピーカの音響特性は、パネル型スピーカを構成する様々の部材の影響を受けることが知られている。しかし、これらの様々の構成部材は、実際の機器の設計上は、必ずしも音響特性を優先した設計とする事ができず、機器の小型化、その他の構成部品の配置の都合により制約を受けるため音質補正のための調整機構を追加することが困難であり音響特性を調整することが難しいという問題があった。
【0009】
(発明の目的)
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、音響特性に優れたパネル型スピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
振動パネル(以下に述べる実施形態の説明において参照番号3で示す)と、
該振動パネルを振動させるための圧電エキサイタ(10,20)と
を有するパネル型スピーカであって、
該振動エキサイタが、ケース(c)と、該ケース内に設定される圧電励振子(b1、b2、B1,B2)とを有し、該ケースが該振動パネルの一面に近接し該パネルに面するパネル近接面(同実施形態の説明では底面10a,20aとして示す)を有し、該パネル近接面が固着領域(第1領域Pに相当する)と、他の残りの領域(第2領域Q、Rに相当)とを有し、
該振動パネルの該一面における、該振動エキサイタの該パネル近接面に対向する対向面部分が、固着領域(第1領域Pに相当)と他の残りの領域(第2領域Q、Rに相当)とを有し、
該振動エキサイタの該パネル近接面の該固着領域と、該振動パネルの該対向面部分の該固着領域との間に設けられ、該振動エキサイタを該振動パネルに固着する固着層(同実施形態における高弾性率の両面接着テープ11)を有することを特徴とするパネル型スピーカを提供する。
【0011】
該振動エキサイタのパネル近接面の該残りの領域と、該振動パネルの該対向面部分の該残りの領域との間には、少なくとも部分的に設けられて両残りの領域を連結する、柔軟な部材により形成されている補助層(低弾性率の両面接着テープ12に相当)を設けるようにすることができる。
【0012】
この場合、該補助層を、スポンジなどの柔軟な部材により形成することができる。
【0013】
また、該振動エキサイタの該パネル近接面の該残りの領域と、該振動パネルの該対向面部分の該残りの領域との間に、部分的に設けられて該残りの領域を連結する補助層を設け、該補助層(高弾性率の固着部材11c)が固着層と同じ材料で形成されるようにすることができる。
【0014】
該圧電励振子は、該ケースに固定される固定部分(保持部16に相当)と、該固定部分から自由端まで延びる振動部分とを有し、該固定部分が、該振動パネルの該一面に直交する方向で、該振動エキサイタの外面の該面部分の該固着領域、及び、該振動パネルの該対向面部分の該固着領域に整合されるようにすることができる。
【0015】
該圧電励振子の固定部分は、該ケースにおいて該振動パネルの該一面に平行な方向における一端にあり、該固定部分から該ケースの他端に向けて延びる振動部分を有するものとすることができる。
【0016】
別の例では、該圧電励振子の固定部分が、該ケースにおいて該振動パネルの該一面に平行な方向における中央部分に位置し、該圧電励振子が該固定部分から両側に延びる2つの振動部分を有するものとすることができる。
【0017】
該固着層は、両面接着テープにより形成することができる。
【0018】
上記補助層を設ける場合には、該固着層及び補助層を、それぞれ、両面接着テープにより形成することができる。
【0019】
本発明はまた、
パネル型スピーカであって、
振動パネルと、
該振動パネルを振動させるための圧電エキサイタであって、ケースと、該ケース内に設定される圧電励振子とを有し、該ケースが該振動パネルの一面に近接し該パネルに面するパネル近接面を有する振動エキサイタと、
該振動エキサイタの該パネル近接面、及び、該振動パネルの該一面において該振動エキサイタのパネル近接面に対向する対向面部分との間に設けられた固着部材(31)であって、該パネル近接面に固着される平坦部分(31a)と、相互に間隔をあけて該平坦部分から振動パネルに向けて延び、該振動パネルに固着される第1部分(31b)、及び、第2部分(31c)を有する固着部材(31)と、
を有することを特徴とするパネル型スピーカを提供する。
【0020】
該固着部材は、該ケースと一体成形されるようにすることもできる。
【0021】
該第1及び第2部分は、該振動パネルに溶着したり接着したりすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、振動パネルと固着する圧電エキサイタの底面の領域を選択的に限定し、圧電エキサイタの底面と振動パネルとを固着部材で固着する構成とすることによって、構造が簡単で、音質の向上を図ることが可能となり、音響特性に優れたパネル型スピーカを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【0024】
図1は、第1の実施形態に係るパネル型スピーカの構成を示し、図1(a)は、パネル型スピーカと組合せられる液晶表示装置と共に示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)におけるB−B断面図である。図1(a)においては、液晶表示装置2が裏側から描かれている。この液晶表示装置2の正面には振動パネル3が表示面を保護するための透明の保護パネルを兼ねて取付けられている。この振動パネル3は液晶表示装置2の一方の側において表示面の外側に延長されており、この延長部分の裏面に圧電エキサイタ10が取付けられている。
【0025】
図1(b)に示すように圧電エキサイタ10には、ケースcの一方の側(この実施例では図中の左側)に、ビーム(圧電励振子)b1、b2を保持する保持部16が形成されており、各ビームは、それぞれの一端部分がケースcに保持されると共に他端部が自由端15となる片持ち梁を構成している。尚、圧電エキサイタ10の構成は従来技術と同様であり詳細な説明は省略する。この片持ち梁構造の圧電エキサイタ10の底面10aにおいて、圧電エキサイタ10に内蔵する圧電素子であるビームb1、b2の保持部16側に対応する部分を第1の領域Pとし、自由端15側に対応する部分を第2の領域Qとする。
【0026】
この第1の領域Pは、高弾性の固着部材として高弾性率を有する両面接着テープ11を用いて振動パネル3と固着されている。一方、第2の領域Qは低弾性のスポンジ構造等をもつ低弾性率で柔軟性のある両面接着テープ12を用いて振動パネル3と接続されている。これによって、圧電エキサイタ10の底面10aにおける自由端15側に対応する第2の領域Qと振動パネル3との接続を緩やかなものとすることができ優れた音響特性を有するパネル型スピーカを得ることができる。
【0027】
すなわち、このパネル型スピーカにおいては、高弾性率の両面接着テープ11により形成される固着層によって、圧電エキサイタ10を振動パネル3に接続固定するとともに、圧電型スピーカからの振動を振動パネル3に高効率で伝達する作用を持たせ、一方、低弾性率で柔軟性のある両面接着テープ12により形成される補助層によって、圧電エキサイタ10を振動パネル3に接続し、当該パネル型スピーカが外部から衝撃などを受けても振動パネルから外れ難くするとともに、圧電エキサイタによる振動パネルの振動をなるべく抑制しないようにしているのである。
【0028】
この場合の固着層、すなわち、高弾性率の両面接着テープ11は、圧電エキサイタの底面10a全体の80パーセント以下、好ましくは50パーセント以下とすることが好ましい。また、固着層を形成するためには、両面接着テープの変わりに、例えば、熱硬化性の接着剤を用いることができる。
【0029】
図5は、本実施例におけるパネル型スピーカの効果を示す実験データであり、電話機の受話器として用いた場合の測定方法で測定した受話特性である。点線は、圧電エキサイタ10の底面10aの全面を通常の高弾性率を有する両面接着テープ11を用いて振動パネル3と固着した場合のパネル型スピーカの音圧レベル対周波数特性を示す実験データであり、実線は本実施例のパネル型スピーカの音圧レベル対周波数特性を示す実験データである。圧電エキサイタ10の底面10aの全面を通常の両面接着テープ11を用いて接着した場合と比較して、本実施例のパネル型スピーカの場合は、500Hz以下、1〜2KHzの音圧レベルが上昇し、3〜4KHzの音圧レベルのピークの抑圧がなされ全体的に音圧レベル対周波数特性が平坦になっている。
【0030】
本実施例のパネル型スピーカの音響特性は、図1(b)に示す低弾性率の両面接着テープ12の一端12aから他端12bまでの寸法に比例して変化する。したがって、この低弾性率の両面接着テープ12の一端12aから他端12bまでの寸法を変化させることによって、音響特性の調整、変更が可能である。即ち、第1の領域Pの面積と第2の領域Qの面積との割合を変化させることで音響特性の調整、変更が可能となる。また、両面接着テープ12の一端12aから他端12bまでの寸法を適正に設定することによって音響特性を改善することができる。
【0031】
以上のように、本実施例によれば、300Hzから4KHzの一般に電話の受話特性に必要な帯域の音圧レベルの平坦性を良くすることができる。また、圧電エキサイタ10の底面10aの全面を振動パネルに接続するため、機器の落下等の衝撃で外れることもない。
【0032】
次に、本発明に係るパネル型スピーカの他の実施形態を図2に示す。図2示すパネル型スピーカは、圧電エキサイタ10の底面10aにおける第1の領域Pのみが高弾性率を有する両面接着テープ11を用いて振動パネル3と固着されており、第2の領域Qは振動パネル3と固着されていない例である。本例におけるパネル型スピーカの音響特性は、高弾性率の両面接着テープ11の一端11aから他端11bまでの寸法に比例して変化する。したがって、この高弾性率の両面接着テープ11の一端11aから他端11bまでの寸法を変化させることによって、音響特性の調整、変更が可能である。また、高弾性率の両面接着テープ11の一端11aから他端11bまでの寸法を適正に設定することによって音響特性を改善することができる。
【0033】
図3は、本発明に係るパネル型スピーカの第三の実施形態を示す断面図である。本実施形態は振動パネル3に取り付けられる圧電エキサイタ20が実施例1における圧電エキサイタ10と異なっている。
【0034】
図3に示すように圧電エキサイタ20には、ケースの中央付近に、ビームB1、B2を保持する保持部26が形成されており、各ビームは、それぞれの中央部がケースに保持されると共に左右両端子が自由端25、27となっている。尚、圧電エキサイタ20の構成は従来技術と同様であり詳細な説明は省略する。この圧電エキサイタ20の底面20aにおいて、圧電エキサイタ20に内蔵する圧電素子であるビームB1、B2の保持部26側に対応する部分を第1の領域Pとし、左右両端の自由端25、27側に対応するそれぞれの部分を第2の領域Q、Rとする。
【0035】
この第1の領域Pは、高弾性の固着部材として高弾性率を有する両面接着テープ11を用いて振動パネル3と固着されている。一方、第2の領域Q、Rは低弾性のスポンジ構造等をもつ柔らかい低弾性率の両面接着テープ12、13を用いて振動パネル3と接続されている。これによって、圧電エキサイタ20の底面20aにおける第2の領域Q、Rと振動パネル3との接続を緩やかなものとすることができ、実施例1と同様に全体的に音圧レベル対周波数特性が平坦になり、優れた音響特性を有するパネル型スピーカを得ることができる。
【0036】
本実施例における音響特性は、高弾性率の両面接着テープ11の寸法と、低弾性率の両面接着テープ12、13の寸法とによって変化する。したがって、この低弾性率の両面接着テープ12、13の一端12aから他端12bまで、13aから他端13bまでの寸法を変化させることによって、音響特性の調整、変更が可能である。また、高弾性率の両面接着テープ11の一端から他端までの寸法を適正に設定することによって音響特性を改善することができる。
【0037】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に300Hzから4KHzの一般に電話の受話特性に必要な帯域の音圧レベルの平坦性を良くすることができる。また、圧電エキサイタ20の底面20aの全面を両面接着テープ11,12,13で振動パネルに接続保持するため、機器の落下等の衝撃で外れることもない。
【0038】
本発明に係るパネル型スピーカの他の実施形態を図4に示す。図4に示すパネル型スピーカは、圧電エキサイタ20の底面20aにおける第1の領域Pのみが高弾性率を有する両面接着テープ11を用いて振動パネル3と固着されており、第2の領域Q、Rは振動パネル3と固着されていない例である。本例におけるパネル型スピーカの音響特性は、高弾性率の両面接着テープ11の一端11aから他端11bまでの寸法に比例して変化する。したがって、この高弾性率の両面接着テープ11の一端11aから他端11bまでの寸法を変化させることによって、音響特性の調整、変更が可能である。また、高弾性率の両面接着テープ11の一端11aから他端11bまでの寸法を適正に設定することによって音響特性を改善することができる。
【0039】
図9(a)、図9(b)は、図2に示したパネル型スピーカの変形例を示している。この変形例では、エキサイタ10にブラケット10aが設けられている。すなわち、このブラケット10aは、エキサイタ10の矩形のケースの下部側縁部から液晶パネル2に向けて振動パネル3に平行に延びており、該ブラケット10aの底面と振動パネル3との間に高弾性の両面テープなどによりなる固着部材11が設けられている。すなわち、この変形例では、携帯電話のケースに取り付けられる振動パネル3の周縁部3aから固着部材11をなるべく離して設けるようにすることにより、エキサイタ10から固着部材11を介して振動パネル3に伝達される振動により振動される該パネルが、効率的に振動されるようにしている。同様の目的のためには、図9(c)に示すように、エキサイタにブラケットを設けない場合でも、振動パネル3の周縁部3aから離れた側に沿って固着部材11を設けることが好ましい。
【0040】
図10(a),図10(b)は、図2の実施形態の別の変形例を示している。すなわち、この変形例では、固着部材11の他に高弾性の追加の固着部材11cが設けられている。
【0041】
図11(a)は、図2の実施形態の更に他の変形例を示している。この変形例では、エキサイタのケースcと振動パネル3との間に固着部材31が設けられている。すなわち、この固着部材は、高弾性率(高弾性)の材料で作られ、エキサイタのケースcの底面の全体に固着された平坦部分31aと、該平坦部分31aから振動パネル3に向けて延び、該振動パネル3に溶着されている第1及び第2の固着部分31b、31cとを有している。該固着部材31は、好ましくは、振動パネル3と同じ材料、例えば、アクリルで形成する。
【0042】
図11(b)、図11(a)の変形例を示している。すなわち、この変形例では、第1及び第2固着部分31b、31cがエキサイタのケースcに一体的に形成されており、振動パネル3に溶着されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例1におけるパネル型スピーカの構成を示し、図1(a)は斜視図、図1(b)は図1(a)におけるB−B断面図である。
【図2】本発明の実施例1におけるパネル型スピーカの他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例2におけるパネル型スピーカを示す断面図である。
【図4】本発明の実施例2におけるパネル型スピーカの他の例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例1におけるパネル型スピーカと従来構造のパネル型スピーカの音圧レベル対周波数特性を比較して示す実験データである。
【図6】従来のパネル型スピーカ付き携帯電話機の表示部分の構成を示す平面図である。
【図7】従来のパネル型スピーカに搭載されている箱形ケース構造の圧電エキサイタの例を示す図で、携み振動型エキサイタの構成を示す断面図である。
【図8】従来のパネル型スピーカ付き液晶表示装置の構成を示し、図8(a)は斜視図、図8(b)は図8(a)におけるA−A断面図である。
【図9】図2に示すパネル型スピーカの変形例を示し、図9(a)は該パネル型スピーカの平面図、図9(b)は側面図、図9(c)は図9(a)の変形例を示す側面図である。
【図10】図2に示すパネル型スピーカの別の変形例を示し、図10(a)は該パネル型スピーカの平面図、図10(b)は側面図である。
【図11】図11(a)は、図2に示すパネル型スピーカの更に別の変形例の側面図、図11(a)のパネル型スピーカの変形したものの側面図である。
【符号の説明】
【0044】
2 液晶パネル
3 振動パネル
10、20 圧電エキサイタ
10a、20a 圧電エキサイタの底面
11 高弾性両面接着テープ(固着層)
12、13 低弾性両面接着テープ(補助層)
16、26 保持部
31 固着部材
P 第1の領域(固着領域)
Q、R 第2の領域(残りの領域)
【技術分野】
【0001】
本発明はパネル型スピーカに関するものであり、特に、携帯電話機など小型電子機器への応用に適した小型のパネル型スピーカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機などに設置されるパネル型スピーカは、高性能でしかも小型であることが要求される。この従来技術としてパネル型スピーカ付き携帯電話機の例が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。図6は、従来技術におけるパネル型スピーカ付き携帯電話機の表示部分の構成を示す平面図である。この携帯電話機の表示部分は、ケース1、液晶パネル2、透光性の保護パネルを兼ねる振動パネル3およびエキサイタ(励振素子)6を備えている。液晶パネル2はスポンジなどの柔らかめの弾性結合部材を介在させながらケース1に保持されている。この液晶パネル2の上方には、パネル型スピーカの振動パネル3がスポンジなどの柔らかめの弾性結合部材を介在させながらケース1に保持される。また、振動パネル3の一部にエキサイタ(励振素子)6が保持されており、振動パネル3に撓み振動が励振される。
【0003】
このようなパネル型スピーカには振動パネルと振動パネルの一部に保持される圧電エキサイタを備えているものがあり、このパネル型スピーカに搭載される圧電エキサイタの従来技術として、機器の落下時の衝撃により圧電エキサイタに内蔵されている圧電素子が破壊されないようにするためと、取り扱いのし易さのために、圧電エキサイタを箱形ケース構造とし、内部の圧電素子を保護する構造とした例が開示されている。(例えば、非特許文献1参照。)。
【0004】
図7は箱形ケース構造の圧電エキサイタの例を示す断面図である。図7に示すように、撓み振動型エキサイタのケースcは、電気絶縁性の樹脂を素材とするとともに、その外形は直方体の形状を呈している。このケースcの内部には、2本の矩形板状の圧電励振子b1、b2(以下においては、単に「ビーム」とする)がそれぞれの全長にわたって収容されている。各ビームは、それぞれの一端部分がケースcに保持されると共に他方の端子が自由端となる片持ち梁を構成している。すなわち、ケースcの一方の側(この実施例では図中の左側)に、ビームb1、b2を保持する保持部が形成されている。ビームb1、b2に対向するケースcの内壁面と、各ビームの一端部分との間に、接着剤層fが形成されることにより、ビームb1、b2がケースcの内部に保持される。この撓み振動型エキサイタは、スピーカとして携帯電話機などに組み込まれる。
【0005】
また、箱形の圧電エキサイタが透光性の保護パネルを兼ねる振動パネルの一部に取り付けられたパネル型スピーカの例が開示されている(例えば、非特許文献2参照。)。図8(a)に示すように、液晶パネル2には表示面を保護するための透明の保護パネルを兼ねる振動パネル3が取付けられている。この振動パネル3は液晶パネル2の一方の側において表示面の外側に延長されており、この延長部分の裏面に箱形の圧電エキサイタ20が接着剤によって取付けられている。
【0006】
図8(b)は、図8(a)のA−A線に沿ってみた圧電エキサイタ20の背面図を示す。この従来例における圧電エキサイタ20は、細長いケースに対して2枚のビームB1,B2が取付けられている。該ケースは、頂板部20a、底板部20b、(図8(b)で見て中央位置で)該頂板部20aと該底板部20bとの間に設けられた励振子支持部20d、(該ケースの前面側及び背面側のそれぞれ左右端部において)該頂板部20aと該底板部20bとを連結するように設けられた柱部20e,20eとからなる。このケースの底板部20bの全面が粘着テープ等の固着部材8によって保護パネルの一部に固着され取り付けられている。
【0007】
【特許文献1】特開2004−336403号公報(第3−5頁、図1−5)
【非特許文献1】特願2003−365507号公報(第2頁、図1)
【非特許文献2】特願2003−189935号公報(第4頁、図1、9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来技術におけるパネル型スピーカは、落下時の衝撃で振動パネルから外れないように、圧電エキサイタの底面のほぼ全面で粘着テープ等を用いて振動パネルに固着されている。このため周波性特性の平坦性が悪く、音響特性が劣るという問題があった。また、従来技術におけるパネル型スピーカの音響特性は、パネル型スピーカを構成する様々の部材の影響を受けることが知られている。しかし、これらの様々の構成部材は、実際の機器の設計上は、必ずしも音響特性を優先した設計とする事ができず、機器の小型化、その他の構成部品の配置の都合により制約を受けるため音質補正のための調整機構を追加することが困難であり音響特性を調整することが難しいという問題があった。
【0009】
(発明の目的)
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、音響特性に優れたパネル型スピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
振動パネル(以下に述べる実施形態の説明において参照番号3で示す)と、
該振動パネルを振動させるための圧電エキサイタ(10,20)と
を有するパネル型スピーカであって、
該振動エキサイタが、ケース(c)と、該ケース内に設定される圧電励振子(b1、b2、B1,B2)とを有し、該ケースが該振動パネルの一面に近接し該パネルに面するパネル近接面(同実施形態の説明では底面10a,20aとして示す)を有し、該パネル近接面が固着領域(第1領域Pに相当する)と、他の残りの領域(第2領域Q、Rに相当)とを有し、
該振動パネルの該一面における、該振動エキサイタの該パネル近接面に対向する対向面部分が、固着領域(第1領域Pに相当)と他の残りの領域(第2領域Q、Rに相当)とを有し、
該振動エキサイタの該パネル近接面の該固着領域と、該振動パネルの該対向面部分の該固着領域との間に設けられ、該振動エキサイタを該振動パネルに固着する固着層(同実施形態における高弾性率の両面接着テープ11)を有することを特徴とするパネル型スピーカを提供する。
【0011】
該振動エキサイタのパネル近接面の該残りの領域と、該振動パネルの該対向面部分の該残りの領域との間には、少なくとも部分的に設けられて両残りの領域を連結する、柔軟な部材により形成されている補助層(低弾性率の両面接着テープ12に相当)を設けるようにすることができる。
【0012】
この場合、該補助層を、スポンジなどの柔軟な部材により形成することができる。
【0013】
また、該振動エキサイタの該パネル近接面の該残りの領域と、該振動パネルの該対向面部分の該残りの領域との間に、部分的に設けられて該残りの領域を連結する補助層を設け、該補助層(高弾性率の固着部材11c)が固着層と同じ材料で形成されるようにすることができる。
【0014】
該圧電励振子は、該ケースに固定される固定部分(保持部16に相当)と、該固定部分から自由端まで延びる振動部分とを有し、該固定部分が、該振動パネルの該一面に直交する方向で、該振動エキサイタの外面の該面部分の該固着領域、及び、該振動パネルの該対向面部分の該固着領域に整合されるようにすることができる。
【0015】
該圧電励振子の固定部分は、該ケースにおいて該振動パネルの該一面に平行な方向における一端にあり、該固定部分から該ケースの他端に向けて延びる振動部分を有するものとすることができる。
【0016】
別の例では、該圧電励振子の固定部分が、該ケースにおいて該振動パネルの該一面に平行な方向における中央部分に位置し、該圧電励振子が該固定部分から両側に延びる2つの振動部分を有するものとすることができる。
【0017】
該固着層は、両面接着テープにより形成することができる。
【0018】
上記補助層を設ける場合には、該固着層及び補助層を、それぞれ、両面接着テープにより形成することができる。
【0019】
本発明はまた、
パネル型スピーカであって、
振動パネルと、
該振動パネルを振動させるための圧電エキサイタであって、ケースと、該ケース内に設定される圧電励振子とを有し、該ケースが該振動パネルの一面に近接し該パネルに面するパネル近接面を有する振動エキサイタと、
該振動エキサイタの該パネル近接面、及び、該振動パネルの該一面において該振動エキサイタのパネル近接面に対向する対向面部分との間に設けられた固着部材(31)であって、該パネル近接面に固着される平坦部分(31a)と、相互に間隔をあけて該平坦部分から振動パネルに向けて延び、該振動パネルに固着される第1部分(31b)、及び、第2部分(31c)を有する固着部材(31)と、
を有することを特徴とするパネル型スピーカを提供する。
【0020】
該固着部材は、該ケースと一体成形されるようにすることもできる。
【0021】
該第1及び第2部分は、該振動パネルに溶着したり接着したりすることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明によれば、振動パネルと固着する圧電エキサイタの底面の領域を選択的に限定し、圧電エキサイタの底面と振動パネルとを固着部材で固着する構成とすることによって、構造が簡単で、音質の向上を図ることが可能となり、音響特性に優れたパネル型スピーカを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【0024】
図1は、第1の実施形態に係るパネル型スピーカの構成を示し、図1(a)は、パネル型スピーカと組合せられる液晶表示装置と共に示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)におけるB−B断面図である。図1(a)においては、液晶表示装置2が裏側から描かれている。この液晶表示装置2の正面には振動パネル3が表示面を保護するための透明の保護パネルを兼ねて取付けられている。この振動パネル3は液晶表示装置2の一方の側において表示面の外側に延長されており、この延長部分の裏面に圧電エキサイタ10が取付けられている。
【0025】
図1(b)に示すように圧電エキサイタ10には、ケースcの一方の側(この実施例では図中の左側)に、ビーム(圧電励振子)b1、b2を保持する保持部16が形成されており、各ビームは、それぞれの一端部分がケースcに保持されると共に他端部が自由端15となる片持ち梁を構成している。尚、圧電エキサイタ10の構成は従来技術と同様であり詳細な説明は省略する。この片持ち梁構造の圧電エキサイタ10の底面10aにおいて、圧電エキサイタ10に内蔵する圧電素子であるビームb1、b2の保持部16側に対応する部分を第1の領域Pとし、自由端15側に対応する部分を第2の領域Qとする。
【0026】
この第1の領域Pは、高弾性の固着部材として高弾性率を有する両面接着テープ11を用いて振動パネル3と固着されている。一方、第2の領域Qは低弾性のスポンジ構造等をもつ低弾性率で柔軟性のある両面接着テープ12を用いて振動パネル3と接続されている。これによって、圧電エキサイタ10の底面10aにおける自由端15側に対応する第2の領域Qと振動パネル3との接続を緩やかなものとすることができ優れた音響特性を有するパネル型スピーカを得ることができる。
【0027】
すなわち、このパネル型スピーカにおいては、高弾性率の両面接着テープ11により形成される固着層によって、圧電エキサイタ10を振動パネル3に接続固定するとともに、圧電型スピーカからの振動を振動パネル3に高効率で伝達する作用を持たせ、一方、低弾性率で柔軟性のある両面接着テープ12により形成される補助層によって、圧電エキサイタ10を振動パネル3に接続し、当該パネル型スピーカが外部から衝撃などを受けても振動パネルから外れ難くするとともに、圧電エキサイタによる振動パネルの振動をなるべく抑制しないようにしているのである。
【0028】
この場合の固着層、すなわち、高弾性率の両面接着テープ11は、圧電エキサイタの底面10a全体の80パーセント以下、好ましくは50パーセント以下とすることが好ましい。また、固着層を形成するためには、両面接着テープの変わりに、例えば、熱硬化性の接着剤を用いることができる。
【0029】
図5は、本実施例におけるパネル型スピーカの効果を示す実験データであり、電話機の受話器として用いた場合の測定方法で測定した受話特性である。点線は、圧電エキサイタ10の底面10aの全面を通常の高弾性率を有する両面接着テープ11を用いて振動パネル3と固着した場合のパネル型スピーカの音圧レベル対周波数特性を示す実験データであり、実線は本実施例のパネル型スピーカの音圧レベル対周波数特性を示す実験データである。圧電エキサイタ10の底面10aの全面を通常の両面接着テープ11を用いて接着した場合と比較して、本実施例のパネル型スピーカの場合は、500Hz以下、1〜2KHzの音圧レベルが上昇し、3〜4KHzの音圧レベルのピークの抑圧がなされ全体的に音圧レベル対周波数特性が平坦になっている。
【0030】
本実施例のパネル型スピーカの音響特性は、図1(b)に示す低弾性率の両面接着テープ12の一端12aから他端12bまでの寸法に比例して変化する。したがって、この低弾性率の両面接着テープ12の一端12aから他端12bまでの寸法を変化させることによって、音響特性の調整、変更が可能である。即ち、第1の領域Pの面積と第2の領域Qの面積との割合を変化させることで音響特性の調整、変更が可能となる。また、両面接着テープ12の一端12aから他端12bまでの寸法を適正に設定することによって音響特性を改善することができる。
【0031】
以上のように、本実施例によれば、300Hzから4KHzの一般に電話の受話特性に必要な帯域の音圧レベルの平坦性を良くすることができる。また、圧電エキサイタ10の底面10aの全面を振動パネルに接続するため、機器の落下等の衝撃で外れることもない。
【0032】
次に、本発明に係るパネル型スピーカの他の実施形態を図2に示す。図2示すパネル型スピーカは、圧電エキサイタ10の底面10aにおける第1の領域Pのみが高弾性率を有する両面接着テープ11を用いて振動パネル3と固着されており、第2の領域Qは振動パネル3と固着されていない例である。本例におけるパネル型スピーカの音響特性は、高弾性率の両面接着テープ11の一端11aから他端11bまでの寸法に比例して変化する。したがって、この高弾性率の両面接着テープ11の一端11aから他端11bまでの寸法を変化させることによって、音響特性の調整、変更が可能である。また、高弾性率の両面接着テープ11の一端11aから他端11bまでの寸法を適正に設定することによって音響特性を改善することができる。
【0033】
図3は、本発明に係るパネル型スピーカの第三の実施形態を示す断面図である。本実施形態は振動パネル3に取り付けられる圧電エキサイタ20が実施例1における圧電エキサイタ10と異なっている。
【0034】
図3に示すように圧電エキサイタ20には、ケースの中央付近に、ビームB1、B2を保持する保持部26が形成されており、各ビームは、それぞれの中央部がケースに保持されると共に左右両端子が自由端25、27となっている。尚、圧電エキサイタ20の構成は従来技術と同様であり詳細な説明は省略する。この圧電エキサイタ20の底面20aにおいて、圧電エキサイタ20に内蔵する圧電素子であるビームB1、B2の保持部26側に対応する部分を第1の領域Pとし、左右両端の自由端25、27側に対応するそれぞれの部分を第2の領域Q、Rとする。
【0035】
この第1の領域Pは、高弾性の固着部材として高弾性率を有する両面接着テープ11を用いて振動パネル3と固着されている。一方、第2の領域Q、Rは低弾性のスポンジ構造等をもつ柔らかい低弾性率の両面接着テープ12、13を用いて振動パネル3と接続されている。これによって、圧電エキサイタ20の底面20aにおける第2の領域Q、Rと振動パネル3との接続を緩やかなものとすることができ、実施例1と同様に全体的に音圧レベル対周波数特性が平坦になり、優れた音響特性を有するパネル型スピーカを得ることができる。
【0036】
本実施例における音響特性は、高弾性率の両面接着テープ11の寸法と、低弾性率の両面接着テープ12、13の寸法とによって変化する。したがって、この低弾性率の両面接着テープ12、13の一端12aから他端12bまで、13aから他端13bまでの寸法を変化させることによって、音響特性の調整、変更が可能である。また、高弾性率の両面接着テープ11の一端から他端までの寸法を適正に設定することによって音響特性を改善することができる。
【0037】
本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に300Hzから4KHzの一般に電話の受話特性に必要な帯域の音圧レベルの平坦性を良くすることができる。また、圧電エキサイタ20の底面20aの全面を両面接着テープ11,12,13で振動パネルに接続保持するため、機器の落下等の衝撃で外れることもない。
【0038】
本発明に係るパネル型スピーカの他の実施形態を図4に示す。図4に示すパネル型スピーカは、圧電エキサイタ20の底面20aにおける第1の領域Pのみが高弾性率を有する両面接着テープ11を用いて振動パネル3と固着されており、第2の領域Q、Rは振動パネル3と固着されていない例である。本例におけるパネル型スピーカの音響特性は、高弾性率の両面接着テープ11の一端11aから他端11bまでの寸法に比例して変化する。したがって、この高弾性率の両面接着テープ11の一端11aから他端11bまでの寸法を変化させることによって、音響特性の調整、変更が可能である。また、高弾性率の両面接着テープ11の一端11aから他端11bまでの寸法を適正に設定することによって音響特性を改善することができる。
【0039】
図9(a)、図9(b)は、図2に示したパネル型スピーカの変形例を示している。この変形例では、エキサイタ10にブラケット10aが設けられている。すなわち、このブラケット10aは、エキサイタ10の矩形のケースの下部側縁部から液晶パネル2に向けて振動パネル3に平行に延びており、該ブラケット10aの底面と振動パネル3との間に高弾性の両面テープなどによりなる固着部材11が設けられている。すなわち、この変形例では、携帯電話のケースに取り付けられる振動パネル3の周縁部3aから固着部材11をなるべく離して設けるようにすることにより、エキサイタ10から固着部材11を介して振動パネル3に伝達される振動により振動される該パネルが、効率的に振動されるようにしている。同様の目的のためには、図9(c)に示すように、エキサイタにブラケットを設けない場合でも、振動パネル3の周縁部3aから離れた側に沿って固着部材11を設けることが好ましい。
【0040】
図10(a),図10(b)は、図2の実施形態の別の変形例を示している。すなわち、この変形例では、固着部材11の他に高弾性の追加の固着部材11cが設けられている。
【0041】
図11(a)は、図2の実施形態の更に他の変形例を示している。この変形例では、エキサイタのケースcと振動パネル3との間に固着部材31が設けられている。すなわち、この固着部材は、高弾性率(高弾性)の材料で作られ、エキサイタのケースcの底面の全体に固着された平坦部分31aと、該平坦部分31aから振動パネル3に向けて延び、該振動パネル3に溶着されている第1及び第2の固着部分31b、31cとを有している。該固着部材31は、好ましくは、振動パネル3と同じ材料、例えば、アクリルで形成する。
【0042】
図11(b)、図11(a)の変形例を示している。すなわち、この変形例では、第1及び第2固着部分31b、31cがエキサイタのケースcに一体的に形成されており、振動パネル3に溶着されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施例1におけるパネル型スピーカの構成を示し、図1(a)は斜視図、図1(b)は図1(a)におけるB−B断面図である。
【図2】本発明の実施例1におけるパネル型スピーカの他の例を示す断面図である。
【図3】本発明の実施例2におけるパネル型スピーカを示す断面図である。
【図4】本発明の実施例2におけるパネル型スピーカの他の例を示す断面図である。
【図5】本発明の実施例1におけるパネル型スピーカと従来構造のパネル型スピーカの音圧レベル対周波数特性を比較して示す実験データである。
【図6】従来のパネル型スピーカ付き携帯電話機の表示部分の構成を示す平面図である。
【図7】従来のパネル型スピーカに搭載されている箱形ケース構造の圧電エキサイタの例を示す図で、携み振動型エキサイタの構成を示す断面図である。
【図8】従来のパネル型スピーカ付き液晶表示装置の構成を示し、図8(a)は斜視図、図8(b)は図8(a)におけるA−A断面図である。
【図9】図2に示すパネル型スピーカの変形例を示し、図9(a)は該パネル型スピーカの平面図、図9(b)は側面図、図9(c)は図9(a)の変形例を示す側面図である。
【図10】図2に示すパネル型スピーカの別の変形例を示し、図10(a)は該パネル型スピーカの平面図、図10(b)は側面図である。
【図11】図11(a)は、図2に示すパネル型スピーカの更に別の変形例の側面図、図11(a)のパネル型スピーカの変形したものの側面図である。
【符号の説明】
【0044】
2 液晶パネル
3 振動パネル
10、20 圧電エキサイタ
10a、20a 圧電エキサイタの底面
11 高弾性両面接着テープ(固着層)
12、13 低弾性両面接着テープ(補助層)
16、26 保持部
31 固着部材
P 第1の領域(固着領域)
Q、R 第2の領域(残りの領域)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動パネルと、
該振動パネルを振動させるための圧電エキサイタと
を有するパネル型スピーカであって、
該振動エキサイタが、ケースと、該ケース内に設定される圧電励振子とを有し、該ケースが該振動パネルの一面に近接し該パネルに面するパネル近接面を有し、該パネル近接面が固着領域と、他の残りの領域とを有し、
該振動パネルの該一面における、該振動エキサイタの該パネル近接面に対向する対向面部分が、固着領域と他の残りの領域とを有し、
該振動エキサイタの該パネル近接面の該固着領域と、該振動パネルの該対向面部分の該固着領域との間に設けられ、該振動エキサイタを該振動パネルに固着する固着層を有することを特徴とするパネル型スピーカ。
【請求項2】
該振動エキサイタの該パネル近接面の該残りの領域と、該振動パネルの該対向面部分の該残りの領域との間に、少なくとも部分的に設けられて該残りの領域を連結する柔軟な部材により形成されている補助層を有することを特徴とする請求項1に記載のパネル型スピーカ。
【請求項3】
該柔軟な部材がスポンジとされていることを特徴とする請求項3に記載のパネル型スピーカ。
【請求項4】
該圧電励振子が、該ケースに固定される固定部分と、該固定部分から自由端まで延びる振動部分とを有し、該固定部分が、該振動パネルの該一面に直交する方向で、該振動エキサイタの該パネル近接面の該固着領域、及び、該振動パネルの該対向面部分の該固着領域に整合されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のパネル型スピーカ。
【請求項5】
該圧電励振子の固定部分が、該ケースにおいて該振動パネルの該一面に平行な方向における一端にあり、該固定部分から該ケースの他端に向けて延びる振動部分を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のパネル型スピーカ。
【請求項6】
該圧電励振子の固定部分が、該ケースにおける該振動パネルの該一面に平行な方向における中央部分に位置し、該圧電励振子が該固定部分から両側に延びる2つの振動部分を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のパネル型スピーカ。
【請求項7】
該固着層が、両面接着テープにより形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のパネル型スピーカ。
【請求項8】
該固着層及び補助層が、それぞれ、両面接着テープにより形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のパネル型スピーカ。
【請求項9】
該振動エキサイタの該パネル近接面の該残りの領域と、該振動パネルの該対向面部分の該残りの領域との間に、部分的に設けられて該残りの領域を連結する補助層を有し、該補助層が固着層と同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパネル型スピーカ。
【請求項10】
パネル型スピーカであって、
振動パネルと、
該振動パネルを振動させるための圧電エキサイタであって、ケースと、該ケース内に設定される圧電励振子とを有し、該ケースが該振動パネルの一面に近接し該パネルに面するパネル近接面を有する振動エキサイタと、
該振動エキサイタの該パネル近接面、及び、該振動パネルの該一面において該振動エキサイタのパネル近接面に対向する対向面部分との間に設けられた固着部材であって、該パネル近接面に固着される平坦部分と、相互に間隔をあけて該平坦部分から振動パネルに向けて延び、該振動パネルに固着される第1部分、及び、第2部分を有する固着部材と、
を有することを特徴とするパネル型スピーカ。
【請求項11】
該固着部材が該ケースと一体成形されていることを特徴とする請求項10に記載のパネル型スピーカ。
【請求項12】
該第1及び第2部分が該振動パネルに溶着されていることを特徴とする請求項10又は11に記載のパネル型スピーカ。
【請求項13】
圧電エキサイタの底面を振動パネルの一部に固着してなるパネル型スピーカにおいて、前記振動パネルと前記圧電エキサイタの底面との選択的に限定した領域において固着したことことを特徴とするパネル型スピーカ。
【請求項1】
振動パネルと、
該振動パネルを振動させるための圧電エキサイタと
を有するパネル型スピーカであって、
該振動エキサイタが、ケースと、該ケース内に設定される圧電励振子とを有し、該ケースが該振動パネルの一面に近接し該パネルに面するパネル近接面を有し、該パネル近接面が固着領域と、他の残りの領域とを有し、
該振動パネルの該一面における、該振動エキサイタの該パネル近接面に対向する対向面部分が、固着領域と他の残りの領域とを有し、
該振動エキサイタの該パネル近接面の該固着領域と、該振動パネルの該対向面部分の該固着領域との間に設けられ、該振動エキサイタを該振動パネルに固着する固着層を有することを特徴とするパネル型スピーカ。
【請求項2】
該振動エキサイタの該パネル近接面の該残りの領域と、該振動パネルの該対向面部分の該残りの領域との間に、少なくとも部分的に設けられて該残りの領域を連結する柔軟な部材により形成されている補助層を有することを特徴とする請求項1に記載のパネル型スピーカ。
【請求項3】
該柔軟な部材がスポンジとされていることを特徴とする請求項3に記載のパネル型スピーカ。
【請求項4】
該圧電励振子が、該ケースに固定される固定部分と、該固定部分から自由端まで延びる振動部分とを有し、該固定部分が、該振動パネルの該一面に直交する方向で、該振動エキサイタの該パネル近接面の該固着領域、及び、該振動パネルの該対向面部分の該固着領域に整合されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のパネル型スピーカ。
【請求項5】
該圧電励振子の固定部分が、該ケースにおいて該振動パネルの該一面に平行な方向における一端にあり、該固定部分から該ケースの他端に向けて延びる振動部分を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のパネル型スピーカ。
【請求項6】
該圧電励振子の固定部分が、該ケースにおける該振動パネルの該一面に平行な方向における中央部分に位置し、該圧電励振子が該固定部分から両側に延びる2つの振動部分を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のパネル型スピーカ。
【請求項7】
該固着層が、両面接着テープにより形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のパネル型スピーカ。
【請求項8】
該固着層及び補助層が、それぞれ、両面接着テープにより形成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のパネル型スピーカ。
【請求項9】
該振動エキサイタの該パネル近接面の該残りの領域と、該振動パネルの該対向面部分の該残りの領域との間に、部分的に設けられて該残りの領域を連結する補助層を有し、該補助層が固着層と同じ材料で形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパネル型スピーカ。
【請求項10】
パネル型スピーカであって、
振動パネルと、
該振動パネルを振動させるための圧電エキサイタであって、ケースと、該ケース内に設定される圧電励振子とを有し、該ケースが該振動パネルの一面に近接し該パネルに面するパネル近接面を有する振動エキサイタと、
該振動エキサイタの該パネル近接面、及び、該振動パネルの該一面において該振動エキサイタのパネル近接面に対向する対向面部分との間に設けられた固着部材であって、該パネル近接面に固着される平坦部分と、相互に間隔をあけて該平坦部分から振動パネルに向けて延び、該振動パネルに固着される第1部分、及び、第2部分を有する固着部材と、
を有することを特徴とするパネル型スピーカ。
【請求項11】
該固着部材が該ケースと一体成形されていることを特徴とする請求項10に記載のパネル型スピーカ。
【請求項12】
該第1及び第2部分が該振動パネルに溶着されていることを特徴とする請求項10又は11に記載のパネル型スピーカ。
【請求項13】
圧電エキサイタの底面を振動パネルの一部に固着してなるパネル型スピーカにおいて、前記振動パネルと前記圧電エキサイタの底面との選択的に限定した領域において固着したことことを特徴とするパネル型スピーカ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−180827(P2007−180827A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376184(P2005−376184)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】
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