説明

ヒンジ構造及び折り畳み型電子機器

【課題】組立が容易で二つの筐体を確実に連結可能でき、しかも、解体後に再組立が可能なヒンジ構造及びこれを用いた折り畳み型電子機器を提供する。
【解決手段】ストッパ12は長軸部12aと短軸部12bとからなる略L字形状の金属製であり、ユニット固定ピース11には、ヒンジ軸と直交するとともに長軸部12aが回動可能となるように挿入可能な挿入穴14が形成されており、ヒンジ筒7には、カバーが装着される部分に、ユニット固定ピース11が装着された際に挿入穴14を露出させる挿入穴13と短軸部12bを嵌合可能な溝部16とが、筒内面に、挿入穴13と対向する部分に長軸部12aの先端部を挿入可能な凹部15が形成されており、挿入穴13、14を貫通させて長軸部12aの先端部を凹部15にまで到達させた後でストッパ12を回動させることにより、短軸部12bが溝部16に嵌合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み型電子機器の二つの筐体を回動可能に連結するためのヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の主要な態様の一つとして、表示部を備えた側の筐体と操作部を備えた側の筐体とをヒンジを介して回動自在に連結した「折り畳み型」がある。
【0003】
このような折り畳み型の電子機器のヒンジ部の構成は下記(a)〜(d)のいずれかになっていた。
(a)加飾パーツを取り付けたヒンジユニットをフロントケースに爪嵌合させる。
(b)固定ピースをケースに爪嵌合又は両面テープで接着する。
(c)直線状のストッパを固定ピースに挿入し、フロントケースヒンジ部内の凹部に挿入する(特許文献1参照)。
(d)筐体裏面にリブを設置し、リブによってヒンジユニットの抜けを防止する。
【特許文献1】特開2005−121175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、(a)や(b)の構成とした場合、樹脂の爪や両面テープの接着力による固定となるため、ストラップ締結部を兼ねた固定ピースにすると、強度を保つことができない。また、解体時、部品を変形させてしまうため、部品を再利用できない。
また、(c)の構成とした場合、ストッパが直線状であるため、抜け防止の構造を設けられず、組立作業時に部品を傾けた際にストッパが滑り、フロントケースから抜けてしまう。
さらに、(d)の構成とした場合、ストラップ締結部を別ピースで構成、又は、別の箇所に構成する必要があり、強度を確保する別の方法を検討する必要がある。
【0005】
本発明は係る問題に鑑みてなされたものであり、組立が容易で二つの筐体を確実に連結可能でき、しかも、解体後に再組立が可能なヒンジ構造及びこれを用いた折り畳み型電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、第1の態様として、第1のヒンジ筒を備え、その一部を含む部分にカバーが装着される第1のケースと、第2のヒンジ筒が設けられた第2のケースと、第1のヒンジ筒側から挿入され第1及び第2のヒンジ筒にまたがるように配置されるヒンジユニットと、ヒンジユニットの挿入方向の後方から第1のヒンジ筒に挿入される固定部材と、固定部材の脱落を防止するためのストッパとを有し、第1及び第2のケースを回動自在に連結するヒンジ構造であって、ストッパは長軸部と短軸部とからなる略L字形状の金属製であり固定部材には、ヒンジ軸と直交するとともに長軸部が回動可能となるように挿入可能な第1の貫通穴が形成されており、第1のヒンジ筒のカバーが装着される部分には、固定部材が装着された際に第1の貫通穴を露出させる第2の貫通穴と短軸部を嵌合可能な溝部とが形成されており、第1のヒンジ筒の筒内面には、第2の貫通穴と対向する部分に長軸部の先端部を挿入可能な凹部が形成されており、第1及び第2の貫通穴を貫通させて長軸部の先端部を凹部にまで到達させた後でストッパを長軸部を枢軸として回動させることにより、該ストッパの短軸部が溝部に嵌合することを特徴とするヒンジ構造を提供するものである。
【0007】
本発明の第1の態様においては、溝部に嵌合した短軸部がカバーによって溝部から脱落しないように保持されることが好ましい。これに加えて、カバーには、短軸部を溝部内に保持するための押さえリブが形成されていることがより好ましい。
【0008】
本発明の第1の態様の上記のいずれの構成においても、長軸部の先端部の断面は長手方向と短手方向とを有する形状であり、第1及び第2の貫通穴は、先端部の断面の長手方向が通過不能な向きを有する形状であることが好ましい。これに加えて、長軸部の先端部の断面及び第1の貫通穴が長方形状であることがより好ましい。
【0009】
本発明の第1の態様の上記のいずれの構成においても、第1のケースが第1のヒンジ筒と同軸の第3のヒンジ筒を、第2のケースが第2のヒンジ筒と同軸の第4のヒンジ筒をそれぞれ備え、第4のヒンジ筒側から挿入され第3及び第4のヒンジ筒にまたがるように配置されるダミーヒンジをさらに有することが好ましい。
【0010】
また、上記目的を達成するため、本発明は、第2の態様として、上記本発明の第1の態様のいずれかの構成に係るヒンジ構造を備えた折り畳み型電子機器を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、組立が容易で二つの筐体を確実に連結可能でき、しかも、解体後に再組立が可能なヒンジ構造及びこれを用いた折り畳み型電子機器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
〔第1の実施形態〕
図1に、本発明を好適に実施した第1の実施形態に係る携帯電話端末の構成を示す。
この携帯電話端末は、表示側筐体1とボタン側筐体2とを有する。表示側筐体1とボタン側筐体2とはヒンジ部を介して連結されている。ヒンジ部は折り畳み型携帯電話端末の回転の軸となっている。
【0013】
表示側筐体1は、フロントケース3及びリアカバー4で構成される。一方、ボタン側筐体2は、フロントケース5及びリアカバー6で構成される。
【0014】
ヒンジ部は、フロントケース3と一体のヒンジ筒7、フロントケース5と一体のヒンジ筒8、ダミーヒンジ9、ヒンジユニット10、ストラップ締結の機能を持たせたユニット固定ピース11、金属製のストッパ12で構成される。ストッパ12は、長軸部12aと短軸部12bとが略直交する略L字形状である。
【0015】
本実施形態に係る携帯電話端末の組立手順について説明する。
フロントケース3、フロントケース5のヒンジ部の軸を合わせた状態で、ヒンジユニット10をフロントケース3の外側からフロントケース5に突き当たるまで挿入した後、ユニット固定ピース11を挿入する。ダミーヒンジ9は、フロントケース5内側からフロントケース3側に押し出す(図2)。
【0016】
フロントケース3裏面から、挿入穴13及びユニット固定ピース11の挿入穴14にストッパ12の長軸部12aを挿入し、ユニット固定ピース11を貫通させた長軸部12aの先端をフロントケース3のヒンジ部内凹部15にまで到達させる。その後、長軸部12aを挿入穴13及び14内で回転させ、フロントケース3の裏面の溝部16に短軸部12bをはめ込む(図3)。
【0017】
リアカバー4をフロントケース3に嵌合させ、リアカバー4裏面の押さえリブ17にて短軸部12bを固定し(押さえリブ17によってフロントケース3とリアカバー4との間に短軸部12bを挟み込み)、ストッパ12の抜けを押さえる(図4)。
【0018】
本実施形態に係る携帯電話端末は、ストッパ12の長軸部12aをユニット固定ピース11に貫通させ、短軸部12bをフロントケース3に設けられた溝部16で保持する構成としている。これにより、ストラップ締結部と兼用したユニット固定ピース11を、金属製のストッパ12の側面で挿入方向に押さえることができ、部品の抜けを防止し、引き抜きに対する強度を向上させられる。
【0019】
また、ストッパ12をL字形状としたことにより、ストッパ12は保持時に持ちやすくなっている。また、ストッパ12の長軸部12aをユニット固定ピース11に挿入後、回転させ、フロントケース3裏面の溝部16内に短軸部12bを嵌め込む構成であるため、リアカバー4を嵌合する前の状態でもストッパ12がフロントケース3から脱落することを防止できる。
【0020】
リアカバー4をフロントケース3から外した後、ストッパ12を回転させ、フロントケース3裏面の溝部から短軸部12bを取り出すことで、ストッパ12の長軸部12aをフロントケース3から抜き取る際に指や冶具を引っかけやすい形状となっている。ストッパ12を抜き取ることで、ユニット固定ピース11を挿入方向に容易に抜き取ることができ、ヒンジユニット10も抜き取ることが可能となる。
【0021】
さらに、ダミーヒンジ9を抜き取ることにより、表示側筐体1とボタン側筐体2とを分離可能となる。解体しても部品は変形しないため、再組立時に部品を再利用できる。
【0022】
このように、本実施形態に係る携帯電話端末が備えるヒンジは、組立が容易で二つの筐体を確実に連結可能でき、しかも、解体後に部品を交換することなく再組立が可能である。
【0023】
〔第2の実施形態〕
本発明を好適に実施した第2の実施形態について説明する。
図5に、本実施形態に係る携帯電話端末のヒンジ部の構成を示す。第1の実施形態とほぼ同様の構成であるが、フロントケース20の挿入穴21、ユニット固定ピース22の挿入穴23、及びストッパ24の形状が相違する。
【0024】
図6に示すように、フロントケース20の挿入穴21の形状を長円に、ユニット固定ピース22の挿入穴23の形状を長方形としている。また、ストッパ24の形状を「L字形状+フラット」としている。
【0025】
このような形状とすることで、図7に示すようにストッパ24を固定する際にストッパ24を回転させることで、フラット部25がユニット固定ピースに引っかかり、ストッパ24は第1の実施形態のストッパ12よりもさらに抜けにくくなる。
【0026】
ここではストッパ24の先端部の断面形状が長方形である場合を例としたが、ストッパ24の先端部は長手方向と短手方向とを有する形状であり、かつ挿入穴21及び23はストッパ24の先端部が断面の長手方向では通過不能な向きを有する形状あれば長方形に限定されることはない。例えば、ストッパ24の先端部や挿入穴21及び23が楕円形状であっても同様の効果が得られる。
【0027】
本実施形態の構造を採用することにより、強度・修理時の容易性を確保しつつ、さらに組立作業時のヒンジの脱落を防止できる。
【0028】
なお、上記各実施形態は本発明の好適な実施の一例であり、本発明はこれらに限定されることない。
例えば、上記各実施形態においては携帯電話端末を例として説明したが、本発明は携帯電話端末に限定されることはなく、あらゆる折り畳み型の電子機器(携帯型ゲーム機、電子辞書、ノート型コンピュータ、PDAなど)に適用可能である。
このように、本発明は様々な変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を好適に実施した第1の実施形態に係る携帯電話端末の構成を示す図である。
【図2】ヒンジユニット及びユニット固定ピースをヒンジ筒に挿入した状態を示す図である。
【図3】ストッパによってユニット固定ピースが固定された状態を示す図である。
【図4】リアカバーによってストッパの抜けが防止された状態を示す図である。
【図5】本発明を好適に実施した第2の実施形態に係る携帯電話端末のヒンジ部の構成を示す図である。
【図6】第2の実施形態に係る携帯電話端末のヒンジ構造に適用されるストッパ、ユニット固定ピース、及びフロントケースの構成を示す図である。
【図7】ストッパを回転させることによってロック状態、非ロック状態が切り替わることを示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 表示側筐体
2 ボタン側筐体
3、5、20 フロントケース
4、6 リアカバー
7、8 ヒンジ筒
9 ダミーヒンジ
10 ヒンジユニット
11、22 ユニット固定ピース
12、24 ストッパ
12a 長軸部
12b 短軸部
13、14、21、23 挿入穴
15 凹部
16 溝部
17 押さえリブ
25 フラット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のヒンジ筒を備え、その一部を含む部分にカバーが装着される第1のケースと、第2のヒンジ筒が設けられた第2のケースと、前記第1のヒンジ筒側から挿入され前記第1及び第2のヒンジ筒にまたがるように配置されるヒンジユニットと、前記ヒンジユニットの挿入方向の後方から前記第1のヒンジ筒に挿入される固定部材と、前記固定部材の脱落を防止するためのストッパとを有し、前記第1及び第2のケースを回動自在に連結するヒンジ構造であって、
前記ストッパは長軸部と短軸部とからなる略L字形状の金属製であり
前記固定部材には、前記ヒンジ軸と直交するとともに前記長軸部が回動可能となるように挿入可能な第1の貫通穴が形成されており、
前記第1のヒンジ筒の前記カバーが装着される部分には、前記固定部材が装着された際に前記第1の貫通穴を露出させる第2の貫通穴と前記短軸部を嵌合可能な溝部とが形成されており、
前記第1のヒンジ筒の筒内面には、前記第2の貫通穴と対向する部分に前記長軸部の先端部を挿入可能な凹部が形成されており、
前記第1及び第2の貫通穴を貫通させて前記長軸部の先端部を前記凹部にまで到達させた後で前記ストッパを前記長軸部を枢軸として回動させることにより、該ストッパの前記短軸部が前記溝部に嵌合することを特徴とするヒンジ構造。
【請求項2】
前記溝部に嵌合した前記短軸部が前記カバーによって前記溝部から脱落しないように保持されることを特徴とする請求項1記載のヒンジ構造。
【請求項3】
前記カバーには、前記短軸部を前記溝部内に保持するための押さえリブが形成されていることを特徴とする請求項2記載のヒンジ構造。
【請求項4】
前記長軸部の先端部の断面は長手方向と短手方向とを有する形状であり、前記第1及び第2の貫通穴は、前記先端部の断面の長手方向が通過不能な向きを有する形状であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のヒンジ構造。
【請求項5】
前記長軸部の先端部の断面及び前記第1の貫通穴が長方形状であることを特徴とする請求項4記載のヒンジ構造。
【請求項6】
前記第1のケースが前記第1のヒンジ筒と同軸の第3のヒンジ筒を、前記第2のケースが前記第2のヒンジ筒と同軸の第4のヒンジ筒をそれぞれ備え、前記第4のヒンジ筒側から挿入され前記第3及び第4のヒンジ筒にまたがるように配置されるダミーヒンジをさらに有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載のヒンジ構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項記載のヒンジ構造を備えた折り畳み型電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−68671(P2009−68671A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240735(P2007−240735)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】