説明

ヒンジ装置およびその製作方法

【課題】ヒンジ装置を改良して、2個のヒンジ片の組付・分解を迅速容易に行なうことができるようにし、しかも製造コストを低減させる。
【解決手段】断面コの字形の素材20をプレス成形して、該ヒンジ素材20のピボットアーム21aにピボット突起22を一体に連設して成形するとともに、ピボットアーム21bに軸受孔23を穿ち、この軸受孔にフランジ付きブッシュ12を嵌着してヒンジ片25を構成する。このようにして構成したヒンジ片の2個を組み合わせる。すなわち、ある1個のヒンジ片のピボット突起22を、他のヒンジ片(図示せず)のフランジ付きブッシュ12に差し込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のボディに対してドアを蝶着するヒンジ装置、及び、その製作方法に関するものである。
本発明のヒンジ装置は自動車のドアヒンジとして好適であるが、その適用範囲は自動車用に限定されない。
【背景技術】
【0002】
ヒンジの古典的な構造は、2枚のヒンジ片のそれぞれに設けられた軸受孔に頭付ピンを挿通し、抜け出さないようにピンの先端をカシメてあった。
その取付け取外しは、前記ヒンジ片を相手部材に固着しているネジの着脱によって行なわれ、2枚のヒンジ片を分解することは考えられていなかった。
その後、前記のピンを挿脱可能な構造に改良されたヒンジも広く用いられるようになっている。
大重量部材を確実に支承することができ、しかも分解・再組立が容易なドア用ヒンジとして、特許文献1として挙げた特開2003−127666号公報に記載の発明が公知である。
【0003】
図4は上記公知発明のドアヒンジを示し、(A)は分解斜視図、(B)は組立て状態の断面図である。
(図4(A)参照)符号1を付して示したのは車体に固定して用いられるボディコンポーネントであり、符号2はドアに固定して用いられるドアコンポーネントである。
上記ボディコンポーネント1には一対のピボットアーム1aと同ピボットアーム1bとが一体に連設され、ドアコンポーネント2には1対のピボットアーム2aと同ピボットアーム2bとが一体に連設されている。
前記のピボットアーム1bには、ピボット軸3に嵌合する軸受孔1cが穿たれており、
ピボットアーム1aには軸受筒1dが固着されるとともに、その内周にメネジ1eが形成されている。
【0004】
前記のピボットアーム2aにはピボット軸3に嵌合する軸受孔2cが穿たれ、ピボットアーム2bには同じく軸受孔2dが穿たれている。
前記ピボット軸3の上端付近にオネジ3aが形成され、上端には六角頭が形成されている。
符号1fを付して示したのは、ボディコンポーネント1を自動車の車体に固定するためのネジ孔である。
(図4(B)参照)ボディコンポーネント1とドアコンポーネント2とを組み合わせ、ピボット軸3を挿通し、オネジ3aをメネジ1eに螺合して締め付けるとヒンジ組立品が得られる。
【特許文献1】特開2003−127666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の公知発明によると、自動車用ドアの重量を支承して開閉自在に保持することができる。しかも、ピボット軸3のオネジ3aをメネジ1eに螺合し螺脱するだけでボディコンポーネント1とドアコンポーネント2とを着脱することができる。
しかしながら、ネジを締めたり緩めたりする作業には工具を必要とする。のみならず、品質管理上、規定トルクで締め付けなければならないので、熟練工がトルクレンチを用いて作業しなければならない。
その上、ヒンジ部材が振動や衝撃を受けたり繰り返し温度変化を受けたりするとネジが緩むので、適宜の緩み止め手段を講じなければならない。
【0006】
上述の不具合を解消して、ネジを用いずに2タッチ操作で組立・分解できる自動車用のヒンジ装置として、図5に示した構造が案出されている(ただし特許公報は未だ発行されていない)。(図5(A)参照)符号15を付して示したのは、ドアに装着して用いられるドアブラケットであり、符号16を付して示したのは車体に装着して用いられるボディブラケットである。15aおよび16aは、それぞれ回動角度を規制しているストッパである。
ヒンジとして作動する機構は、鎖線楕円で囲んで符号Mを付した主要部である。次に、この部分を説明する。
【0007】
(図5(B)参照)ボディブラケット16に一体成形されたピボットアーム6a、同6bと、ドアブラケット15に一体成形されたピボットアーム7c、同7dとが相互に対向している。説明の便宜上、符号6aの部材を第1のピボットアーム、符号6bの部材を第2のピボットアーム、符号7cの部材を第3のピボットアーム、符号7dの部材を第4のピボットアームと名付ける。
第1のピボットアーム6aに固着された第1のピボット突起8が、第3のピボットアーム7cに穿たれた第1の軸受孔9に嵌合するとともに、第4のピボットアーム7dに固着された第2のピボット突起10が、第2のピボットアーム6bに穿たれた第2の軸受孔11に嵌合している。
仮想線で描かれた抜止めスペーサ14を装着すると、前記ピボット突起が軸受孔から抜けなくなる。該抜止めスペーサを装着していなければ、挿脱自在である。
【0008】
図6は、前掲の図5に示した改良型ヒンジ装置の部分的拡大分解図である。
(図6(A)参照)第1のピボット突起8は、ヒンジピンとして機能する本体部8aと、フランジブ8bと、取付け用の植込部8cとが同心に一体連設されていて、上記の植込部8cの端面にはカシメ用の穴8dが穿たれている。
一方、第1のピボットアーム6aには、前記植込部8cに嵌合する植込孔6cが穿たれている。
上記の植込部8cを植込孔6cに差し込み、前記の穴8dを拡開する形に(図6(B)参照)カシメ付けると、第1のピボット突起8が第1のピボットアーム6aに対して植設される。図示を省略するが、第2のピボット突起10を第4のピボットアーム7dに植設する構造も同様である。
【0009】
前掲の図6に示した構造においては、ピボット突起にフランジや植込部を形成したり、穴を穿ったりしなければならない上に、カシメ加工を必要とするので、構成部品点数が多く、製作コストが割高である。
本発明は以上に述べた事情に鑑みて為されたもので、図6に示した改良型のヒンジ装置を改良して、構成部品点数を減じるとともに、製作コストを低減し得る新規な技術を提供しょうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために創作した本発明の基本的な原理について、その1実施形態に対応する図1を参照して略述すると次の通りである。
((A)図参照)ヒンジ素材20は鋼板をコの字状にプレス成形した部材であって、平行な2枚のピボットアーム21a、同21bを有している。
((B)図参照)前記ピボットアーム21aに、プレス加工でピボット突起22を形成するとともに、ピボットアーム21bに軸受孔23を穿つ。この工程で取付孔24を穿っておくと好都合である。
符号12は、別体に構成されたフランジ付きブッシュである。この部材は、オイルレスメタル(含油合金)で構成しておくことが望ましい。
((C)図参照)前記軸受孔23にフランジ付きブッシュ12を嵌着するとヒンジ平25が出来あがる。必要に応じてブラケット26を一体成形することもできる。
【0011】
上述の原理に基づく具体的な構成として請求項1の発明に係るヒンジ装置の製作方法は、(図2参照)基準面に平行な第1のピボットアーム(6a)および基準面に平行な第2のピボットアーム(6b)を有する第1のヒンジ片(4)と、基準面に平行な第3のピボットアーム(6c)および基準面に平行な第4のピボットアーム(6d)を有する第2のヒンジ片(5)とを具備し、
前記第1のヒンジ片(4)の第1のピボットアーム(6a)に、基準面と垂直なZ軸に沿って第1のピボット突起(8)が固着されるとともに、該第1のヒンジ片(4)の第2のピボットアーム(6b)に、Z軸方向の第2の軸受孔(11)が設けられていて、
前記第2のヒンジ片(5)の第3のピボットアーム(7c)に、Z軸と同心の第1の軸受孔(9)が設けられるとともに、Z軸に沿って第2のピボット突起(10)が固着されており、
かつ前記第1のピボット突起(8)が第1の軸受孔(9)に挿入されるとともに、前記第2のピボット突起(10)が第2の軸受孔(11)に挿入され、
前記第1のピボット突起(8)および第2のピボット突起(10)に抜止めスペーサ(14)が嵌合されて、第2のピボットアーム(6b)と第3のピボットアーム(7c)との間隔が維持されているヒンジ装置を製作する方法であって、
(図1参照)2枚の鋼板(本図1には、1枚のみ図示す)をヒンジ素材(20)として用い、
上記ヒンジ素材をプレス加工して第1のピボットアームおよび第2のピボットアーム、並びに第3のピボットアームおよび基準面と平行な第4のピボットアームを成形し、
かつプレス加工によって、前記第1のピボットアーム(21a)に第1のピボット突起(22)を形成し、
プレス加工によって、前記第2のピボットアーム(21b)に第2の軸受孔(23)を穿つとともに、
プレス加工によって、前記第4のピボットアームに第2のピボット突起を形成し(図示省略)、プレス加工によって、前記第3のピボットアームに第1の軸受孔を穿つ(図示省略)ことを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明に係るヒンジ装置の製作方法は、前記請求項1の発明方法の構成要件に加えて、
(図2参照)前記第1の軸受孔(9)に、第1のピボット突起(8)に嵌合するフランジ付きブッシュ(12)を嵌着するとともに、前記第2の軸受孔(11)に、第2のピボット突起(10)に嵌合するフランジ付きブッシュ(12)を嵌着し、
第1の軸受孔に嵌着されたフランジ付きブッシュのフランジ部分を第1のピボットアーム(6a)と第3のピボットアーム(7c)との間に位置せしめるとともに、第2の軸受孔に嵌着されたフランジ付きブッシュのフランジ部分を第2のピボットアーム(6b)と第4のピボットアーム(7d)との間に位置せしめて、
上記フランジ部分のそれぞれを、スラスト軸受として機能させることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明に係るヒンジ装置の構成は、
(図2参照)基準となる平面(X)と、該平面に垂直なZ軸とを想定し、
基準面と平行な第1のピボットアーム(6a)および基準面と平行な第2のピボットアーム(6b)を有する第1のヒンジ片(4)と、基準面と平行な第3のピボットアーム(6c)および基準面と平行な第4のピボットアーム(6d)を有する第2のヒンジ片(5)とを具備し、
前記第1のヒンジ片(4)の第1のピボットアーム(6a)に、Z軸に沿って第1のピボット突起(8)が固着されるとともに、該第1のヒンジ片(4)の第2のピボットアーム(6b)に、Z軸と同心の第2の軸受孔(11)が設けられていて、
前記第2のヒンジ片(5)の第3のピボットアーム(7c)に、Z軸と同心の第1の軸受孔(9)が設けられるとともに、Z軸に沿って第2のピボット突起(10)が固着されており、
かつ前記第1のピボット突起(8)が第1の軸受孔(9)に挿入されるとともに、前記第2のピボット突起(10)が第2の軸受孔(11)に挿入され、
前記第1のピボット突起(8)および第2のピボット突起(10)に抜止めスペーサ(14)が嵌合されて、第2のピボットアーム(6b)と第3のピボットアーム(7c)との間隔が維持されているヒンジ装置であって、
(図1参照)前記第1のピボットアームと第2のピボットアームとが、1枚の鋼板(20)を素材としてプレス成形され、かつ、前記第1のピボット突起が第1のピボットアームをプレス加工して成形されたものであり、
前記第3のピボットアームと第4のピボットアームとが、1枚の鋼板を素材としてプレス成形され、かつ、前記第2のピボット突起が第4のピボットアームをプレス加工して成形されたものであることを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明に係るヒンジ装置の構成は、前記請求項3の発明装置の構成要件に加えて、(図2参照)前記第1の軸受孔(9)に、第1のピボット突起(8)に嵌合するフランジ付きブッシュ(12)が嵌着されるとともに、前記第2の軸受孔(11)に、第2のピボット突起(10)に嵌合するフランジ付きブッシュ(12)が嵌着されており、
第1の軸受孔に嵌着されたフランジ付きブッシュのフランジ部分が第1のピボットアーム(6a)と第3のピボットアーム(7c)との間に位置するとともに、第2の軸受孔に嵌着されたフランジ付きブッシュのフランジ部分が第2のピボットアーム(6b)と第4のピボットアーム(7d)との間に位置していて、
上記フランジ部分のそれぞれが、スラスト軸受として機能するようになっていることを特徴とする。
【0015】
請求項5の発明に係るヒンジ装置の構成は、前記請求項3または請求項4の発明装置の構成要件に加えて、
(図3(A)参照)第1のピボット突起(8)を形成された第1のピボットアーム(6a)および第2の軸受孔(11)を穿たれた第2のピボットアーム(6b)を有する第1のヒンジ片(4)と、第1の軸受孔(9)を穿たれた第3のピボットアーム(7c)および第2のピボット突起(10)を形成された第4のピボットアーム(7d)を有する第2のヒンジ片(5)とが、相互に同形同寸であり、
または(図3(B)参照)相互に鏡像対称であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の方法で製作されたヒンジ装置は、2個のヒンジ片をワンタッチで蝶着し、更にワンタッチで抜け止めを施すことができ、しかも、組み立てられたヒンジ装置を分解する際は、ワンタッチで抜け止めを取り外し、更にワンタッチで蝶着を解除して分離させることができる。
その上、この請求項1の方法によれば、ヒンジ装置を迅速容易に、かつ低コストで製作することができる。
【0017】
請求項2の発明方法を適用すると、フランジ付きブッシュのフランジ部がスラスト軸受として機能するので、ヒンジ装置に重力荷重が掛かってもピボットアーム同士が擦れ合う虞れが無い。
さらに、上記のブッシュをオイルレスメタル(含油合金)で構成すれば給油脂が不要でメンテナンス性が良い。
【0018】
請求項3の発明に係るヒンジ装置を適用すると、2個のヒンジ片をワンタッチで蝶着し、更にワンタッチで抜け止めを施すことができ、しかも、ワンタッチで抜け止めを取り外し、更にワンタッチで蝶着を解除することができる。
その上、この請求項3のヒンジ装置は、迅速容易に、かつ低コストで製作することができる。
【0019】
請求項4の発明装置を前記請求項3の発明装置に併せて適用すると、ブッシュのフランジがスラスト軸受として機能するので、ヒンジ装置に重力荷重が掛かってもピボットアーム同士が擦れ合う虞れが無い。
さらに、上記のブッシュをオイルレスメタル(含油合金)で構成すれば給油脂が不要でメンテナンス性が良い。
【0020】
請求項5の発明装置を、前記請求項3または同4の発明装置に併せて適用すると、同一形状寸法の2個の部材を組み合わせてヒンジ装置を製造し、
または、類似形状寸法の2個の部材を組み合わせてヒンジ装置を製造することができるので、大量生産に因るメリット(コストの低減、品質の均一、管理の容易性等)を享受することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図2は本発明の1実施形態を示し、(A)は分解断面正面図、(B)は組立断正面面図である。
本実施形態に係るヒンジ装置は、2個のヒンジ片4,同5が、2個のブッシュ12を介して組み合わされ、スペーサ14で抜け止めされている。
すなわち、部品種類3、部品個数5という簡単な構成である。
部品構成が簡単であることは、設計の自由度を向上させ、製作資材の手配を容易ならしめて材料コストを低減させ、加工工程を簡素化して加工コストを低減させ、加工機械の台数を減少させて設備コストを低減させ、組立工数を減少させて製作コストを低減させ、検査を容易ならしめて品質確保を容易ならしめ、補給部品の負担を軽減する等、数多の利点が有る。
【0022】
第1のヒンジ片4は第1のピボット突起8を一体連設され、第2のヒンジ片5は第2のピボット突起10を一体連設されている。この一体連設された部材の加工工程について、次に説明する。
(図1(A)参照)鋼板をコの字形にプレス成形したヒンジ素材20は、2個のピボットアーム21a、同21bを備えている。
(図1(B)参照)前記ピボットアーム21aにプレス加工を施してピボット突起22を成形するとともに、プレス加工で軸受孔23および取付孔24を穿つ。
符号12を付して示したのはオイルレスメタル(含油合金)によって別体に構成されたフランジ付きブッシュである。
(図1(C)参照)前記軸受孔23にフランジ付きブッシュ12を嵌着する。この際、ブッシュのフランジはヒンジ片のコの字形の外側に当たる箇所に位置させておく。これにより、1個のヒンジ片25が構成される。必要に応じてブラケット26を一体に連設しておくことも可能である。
【0023】
(図2(A)参照)基準となる平面Xと、これに垂直なZ軸とを想定する。
第1のヒンジ片4は、基準面Xに平行な2個のピボットアーム6a、および同6bを有しており、
上記のピボットアーム6aにはピボット突起8が設けられるとともに、ピボットアーム6bには軸受孔11が穿たれてブッシュ12が嵌着されている。
図2(A)の構成部材と図1(C)の構成部材とを対照すると、第1のヒンジ片4はヒンジ片25に対応し、ピボットアーム6aはピボットアーム21aに対応し、ピボットアーム6bは21bに対応し、ピボット突起8はピボット突起22に対応し、軸受孔11は23に対応している。
【0024】
前記ヒンジ片25を180度回動させて上下を反転すると、図2(A)のヒンジ片5
に対応している。
説明の便宜上、符号4のヒンジ片を第1のヒンジ片と名付け、符号5のヒンジ片を第2のヒンジ片と名付ける。
同様に説明の便宜上、符号6aのピボットアームを第1のピボットアームと名付け、符号6bのピボットアームを第2のピボットアームと名付け、符号7cのピボットアームを第3のピボットアームと名付け、符号7dのピボットアームを第4のピボットアームと名付ける。
符号8のピボット突起を第1のピボット突起と名付け、符号10のピボット突起を第2のピボット突起と名付ける。
さらに、符号9の軸受孔を第1の軸受孔9と名付け、符号11の軸受孔を第2の軸受孔と名付ける。
【0025】
前記の第1のピボット突起8と第2の軸受孔11とは予め同心に配置され、第2のピボット突起10と第1の軸受孔9とも同心に配置されている。
これらの構成部分を図2(A)のようにZ軸に揃え、第1のピボット突起8及び第1の軸受孔9をそれぞれフランジ付きブッシュ12の中へ挿入すると、ワンタッチで図2(B)のように組み立てられる。
さらに、ワンタッチの操作で抜止めスペーサ14を踏み付けると、前記のピボットアームが軸受孔から抜け出さなくなる。該抜止めスペーサ14の立体的な構造は図3(A)を参照して後に説明する。
【0026】
第3のピボットアーム7cの第1の軸受孔9に嵌着されているフランジ付きブッシュ12はオイルレスベアリングで構成され、そのフランジ部を図の上方に(すなわち第1のピボットアーム6aに)向けている。
また、第2のピボットアーム6bの第2の軸受孔11に嵌着されているフランジ付きブッシュ12もオイルレスベアリングで構成され、そのフランジ部を下方に(すなわち第4のピボットアーム7dに)向けている。
このため(図3(B)参照)第1のピボットアーム6aと第3のピボットアーム7cとの間にフランジ付きブッシュ12のフランジが介装され、かつ、第2のピボットアーム6bと第4のピボットアーム7dとの間にフランジ付きブッシュ12のフランジが介装される。このため、ピボットアーム6aとピボットアーム7c、ピボットアーム6bとピボットアーム7dが相互に擦れ合わない。
上述のようにして、第1のヒンジ片4と第2のヒンジ片5とがZ軸を中心として相互に回動する際、2個のフランジ付きブッシュ12それぞれのフランジ部がスラスト軸受として機能する。
上記フランジ付きブッシュ12がオイルレスメタルで構成されているので、給油脂の手数が掛からない。
【0027】
本発明のヒンジ装置を自動車のドア用ヒンジとして用いる場合は、例えば図1(C)に
示したブラケット26のように、自動車メーカーが指定する仕様のブラケットを一体に連設してプレス成形することになる。
しかし、例えば家具などの建材器具として用いる場合は、取付孔4aを利用して装着することができる。
図3は、前掲の図2に示したヒンジ装置を建材用として構成した例を描いた外観斜視図である。
【0028】
図2は断面のみを模式的に描き、図3は立体的な外観を模式的に描いてあるが、本質的には同じ実施形態のヒンジ装置を描いてあり、符号を付して示した構成部分は互いに対応している。
図3(A)のヒンジ装置は、2個のヒンジ片4、およびヒンジ片5が鏡像対称になっており、これらに装着されている第1のピボット突起8と第2のピボット突起10とは同形同寸である。
2個のフランジ付きブッシュ12も同形同寸である。従って、これらのブッシュを嵌着されている取付孔(図3では隠れている)も同径である。
これら2組の部材は、前掲の図2(B)のように組み合わされ、ピボット突起に抜止めスペーサ14を嵌め合わせて抜け止めされる。
本例のフランジ付きブッシュは図3(A)に外観を描いてあるように、円筒を切り欠いた形になっている。
【0029】
図3(B)のヒンジ装置は、第1のヒンジ片4と第2のヒンジ片5、およびこれらに付属する部材の全部が相互に同形同寸である。
本例を実施する場合は、第1のヒンジ片4と第2のヒンジ片5との区別が無い。
従って1種類のヒンジ片の多数を製作すればよい。すなわち、ヒンジ装置製作個数の2倍のヒンジ片(ピボット突起、並びに軸受孔および取付孔がプレス成形されている部材)を製作し、2個ずつ組み合わせ、抜止めスペーサを取り付けると所望個数のヒンジ装置が得られる。
このようにして同一部品を大量生産すると、コストの低減、品質の均一、管理の容易性等の優れた経済効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の1実施形態における製作工程を示し、(A)は素材の模式的な断面図、(B)ハプレス加工した状態の模式的な分解断面図、(C)は組み立てた状態の模式的な断面図
【図2】本発明の1実施形態を示し、(A)は模式的な分解断面図、(B)は模式的な組立断面図
【図3】本発明の2実施形態を示し、(A)は2個のヒンジ片を鏡像対称に成形した例の分解斜視図に抜止めスペーサの斜視図を付記した図、(B)は2個のヒンジ片を同形同寸に成形した例の分解斜視図
【図4】特開2003−127666号公報に記載されている自動車ヒンジを示し、(A)は分解斜視図、(B)は組立断面図
【図5】改良されたヒンジ装置の1例を示し、(A)は全体的斜視図、(B)は要部断面図
【図6】前掲の図5に示したヒンジ装置におけるピボット突起の取り付け構造を示し、(A)は組み付け前の状態を描いた模式的な断面図、(B)は組みつけ後の状態を描いた模式的な断面図
【符号の説明】
【0031】
1…ボディコンポーネント
1a,1b…ピボットアーム
1c…軸受孔
1d…軸受筒
1e…メネジ
1f…取付孔
2…ドアコンポーネント
2a,2b…
2c…軸受孔
2d…軸受孔
3…ピボット軸
3a…オネジ
4…第1のヒンジ片
4a…取付孔
5…第2のヒンジ片
5a…取付孔
6a…第1のピボットアーム
6b…第2のピボットアーム
7c…第3のピボットアーム
7d…第4のピボットアーム
8…第1のピボット突起
9…第1の軸受孔
10…第2のピボット突起
11…第2の軸受孔
12…フランジ付きブッシュ
14…抜止めスペーサ
15…ドアブラケット
16…ボディブラケット
20…ヒンジ素材
21a,21b…ピボットアーム
22…ピボット突起
23…軸受孔
24…取付孔
25…ヒンジ片
26…ブラケット
X…基準面
Z…基準面に垂直な線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準面に平行な第1のピボットアームおよび第2のピボットアームを有する第1のヒンジ片と、基準面に平行な第3のピボットアームおよび第4のピボットアームを有する第2のヒンジ片とを具備し、
前記第1のヒンジ片の第1のピボットアームに、基準面と垂直なZ軸に沿って第1のピボット突起を固着されるとともに、該第1のヒンジ片の第2のピボットアームに、Z軸と同心の第2の軸受孔が設けられていて、
前記第2のヒンジ片の第3のピボットアームに、Z軸方向の第1の軸受孔が設けられるとともに、Z軸に沿って第2のピボット突起が固着されており、
かつ前記第1のピボット突起が第1の軸受孔に挿入されるとともに、前記第2のピボット突起が第2の軸受孔に挿入され、
前記第1のピボット突起および第2のピボット突起に抜止めスペーサが嵌合されて、第2のピボットアームと第3のピボットアームとの間隔が維持されているヒンジ装置を製作する方法であって、
2枚の鋼板をヒンジ素材として用い、
上記ヒンジ素材をプレス加工して第1のピボットアームおよび第2のピボットアーム、並びに第3のピボットアームおよび基準面と平行な第4のピボットアームを成形し、
かつプレス加工によって、前記第1のピボットアームに第1のピボット突起を形成し、
プレス加工によって、前記第2のピボットアームに第2の軸受孔を穿つとともに、
プレス加工によって、前記第4のピボットアームに第2のピボット突起を形成し、プレス加工によって、前記第3のピボットアームに第1の軸受孔を穿つことを特徴とするヒンジ装置の製作方法。
【請求項2】
前記第1の軸受孔に、第1のピボット突起に嵌合するフランジ付きブッシュを嵌着するとともに、前記第2の軸受孔に、第2のピボット突起に嵌合するフランジ付きブッシュを嵌着し、
第1の軸受孔に嵌着されたフランジ付きブッシュのフランジ部分を第1のピボットアームと第3のピボットアームとの間に位置せしめるとともに、第2の軸受孔に嵌着されたフランジ付きブッシュのフランジ部分を第2のピボットアームと第4のピボットアームとの間に位置せしめて、
上記フランジ部分のそれぞれを、スラスト軸受として機能させることを特徴とする、請求項1に記載したヒンジ装置の製作方法。
【請求項3】
基準となる平面と、該平面に垂直なZ軸とを想定し、
基準面と平行な第1のピボットアームおよび基準面と平行な第2のピボットアームを有する第1のヒンジ片と、基準面と平行な第3のピボットアームおよび基準面と平行な第4のピボットアームを有する第2のヒンジ片とを具備し、
前記第1のヒンジ片の第1のピボットアームに、Z軸に沿って第1のピボット突起が固着されるとともに、該第1のヒンジ片の第2のピボットアームに、Z軸と同心の第2の軸受孔が設けられていて、
前記第2のヒンジ片の第3のピボットアームに、Z軸と同心の第1の軸受孔が設けられるとともに、Z軸に沿って第2のピボット突起が固着されており、
かつ前記第1のピボット突起が第1の軸受孔に挿入されるとともに、前記第2のピボット突起が第2の軸受孔に挿入され、
前記第1のピボット突起および第2のピボット突起に抜止めスペーサが嵌合されることにより、第2のピボットアームと第3のピボットアームとの間隔が維持されているヒンジ装置であって、
前記第1のピボットアームと第2のピボットアームとが、1枚の鋼板を素材としてプレス成形され、かつ、前記第1のピボット突起が第1のピボットアームをプレス加工して成形されたものであり、
前記第3のピボットアームと第4のピボットアームとが、1枚の鋼板を素材としてプレス成形され、かつ、前記第2のピボット突起が第4のピボットアームをプレス加工して成形されたものであることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項4】
前記第1の軸受孔に、第1のピボット突起に嵌合するフランジ付きブッシュが嵌着されるとともに、前記第2の軸受孔に、第2のピボット突起に嵌合するフランジ付きブッシュが嵌着されており、
第1の軸受孔に嵌着されたフランジ付きブッシュのフランジ部分が第1のピボットアームと第3のピボットアームとの間に位置するとともに、第2の軸受孔に嵌着されたフランジ付きブッシュのフランジ部分が第2のピボットアームと第4のピボットアームとの間に位置していて、
上記フランジ部分のそれぞれが、スラスト軸受として機能するようになっていることを特徴とする、請求項3に記載したヒンジ装置。
【請求項5】
第1のピボット突起を形成された第1のピボットアームおよび第2の軸受孔を穿たれた第2のピボットアームを有する第1のヒンジ片と、第1の軸受孔を穿たれた第3のピボットアームおよび第2のピボット突起を形成された第4のピボットアームを有する第2のヒンジ片とが、相互に同形同寸であり、または相互に鏡像対称であることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載したヒンジ装置。






























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−25790(P2008−25790A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201831(P2006−201831)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(591162686)株式会社ニイテック (16)
【Fターム(参考)】