説明

ヒンジ装置

【課題】ヒンジ装置における固定体と回動体との間の隙間からの水の流出を防止する。
【解決手段】柱1に対し、ガラス板2がヒンジ装置10Aを介して取り付けられている。ヒンジ装置10Aは、ベース22、凸部24及び軸体26を有した固定体20と、コ字形の板体32,34を有した回動体30とからなる。板体34とガラス板2との間に設けられたパッキン40は、固定体20と回動体30との間に張り出す張出部44,46,48を備えており、水がかかっても浴室外に漏出しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジ装置に係り、特に浴室、シャワー室等の出入口のドアに設けるのに好適なヒンジ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒンジ装置の一例について第6図〜第8図を参照して説明する。
【0003】
柱1に対しドア板(この従来例ではガラス板2)がヒンジ装置10を介して回動可能に取り付けられている。このヒンジ装置10は、固定体20と回動体30とからなる。
【0004】
固定体20は、柱1にビス21で留め付けられた板状ベース22と該ベース22の板央部分から突設されたブロック状の凸部24と、該凸部24からベース22と平行方向に且つ互いに反対方向に同軸に突設された1対の軸体26,26とを有する。この軸体26と同軸に摺動パッキン28が装着されている。凸部24は、略々直方体形であり、回動体30側の角縁が円弧状に湾曲している。
【0005】
回動体30は、ガラス板2を両側から挟む板体32,34と、これら板体32,34同士を連結するボルト36と、板体32,34とガラス板2との間にそれぞれ介在されたパッキン38,38とを有する。板体32,34はコ字形であり、凸部24がその内側に入り込んでいる。
【0006】
第6図〜第8図では図示が省略されているが、板体32,34の合わせ面に、軸体26が入り込んだ溝が形成されている。また、板体34には、ボルト36の挿通孔が設けられ、板体32に該ボルト36が螺じ込まれるネジ穴が設けられている。
【0007】
このヒンジ装置10を用いたドアにあっては、柱1とガラス板2の側辺との間に隙間Aがあき、板体32,34と柱1及びベース22との間に隙間Bがあき、凸部24の上面及び下面と板体32,34との間にそれぞれ隙間Cがあき、凸部24の側面と板体32,34との間に隙間Dがあく。
【0008】
隙間Aについては、柱1にパッキンを貼ったり、あるいは柱1に戸当りを設ける(例えば特開平6−81550号)ことにより、止水することができるが、隙間B,C,Dについては開放したままである。そのため、ヒンジ装置10付近にシャワー水が掛かったりした場合には、この隙間B,C,Dを通って水が浴室外に流出する。
【特許文献1】特開平6−81550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかるヒンジ装置における固定体と回動体との間の隙間からの水の流出を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1のヒンジ装置は、建物に取り付けられる固定体と、該固定体に対し軸により回動自在に取り付けられた回動体とを有するヒンジ装置において、該固定体と回動体との間の隙間を塞ぐ充填体を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
請求項2のヒンジ装置は、請求項1において、該回動体は、ドア板を挟持するための1対の板体を有しており、前記充填体は、該板体に挟持され、該板体から前記隙間に延出していることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3のヒンジ装置は、請求項1又は2において、前記固定体は、建物に固定される板状ベースと、該板状ベースの板央部から突設された凸部と、該凸部から該板状ベースと平行方向に突出した軸体とを備えており、前記回動体は、該凸部を囲み、前記板状ベースに対峙したコ字形であり、前記充填体は、該回動体と該凸部との間の隙間及び該回動体と該板状ベースとの間の隙間を塞ぐように該回動体から延出していることを特徴とするものである。
【0013】
請求項4のヒンジ装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記回動体は、前記軸体の軸心線方向において前記板状ベースよりも幅広であり、該回動体のうち該板状ベースから該軸心線方向にはみ出した部分は前記建物に対峙しており、前記充填体は、該回動体と建物との間の隙間にも延出していることを特徴とするものである。
【0014】
請求項5のヒンジ装置は、請求項2ないし4のいずれか1項において、前記充填体は、前記板体とドア板との間に介在されるパッキンと一連一体となっていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項6のヒンジ装置は、請求項2ないし4のいずれか1項において、前記充填体は、前記板体とドア板との間に介在されるパッキンと別体であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のヒンジ装置にあっては、固定体と回動体との間の隙間を充填体で塞いでおり、この隙間を通って水が流出することが防止される。
【0017】
請求項2のヒンジ装置によると、充填体が回動体にしっかりと保持される。
【0018】
請求項3のヒンジ装置によると、前記第6図〜第8図のヒンジ装置における隙間B,C,Dを塞ぐことができる。
【0019】
請求項4のヒンジ装置によると、ベースの側部からの水の流出も防止される。
【0020】
請求項5のヒンジ装置によると、パッキンが止水用とドア板挟持用とで共用されるので、部品点数の削減による施工の効率化、部材コストの低減を図ることができる。
【0021】
請求項6のヒンジ装置によると、ドア板固定用パッキンと隙間充填用充填体とでそれぞれ適切な硬度の材料を選択することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0023】
第1図は実施の形態に係るヒンジ装置の分解斜視図、第2図は板体及び充填体の斜視図、第3図は板体の第2図とは逆方向からの斜視図、第4図はヒンジ装置の側面図である。
【0024】
この実施の形態は、前記第6図〜第8図の従来例において、板体34にパッキン38の代わりに充填体兼用のパッキン40を設けたものである。
【0025】
第2,3図の通り、このパッキン40は、該板体34と略々同一大きさのコ字形シート状である。このパッキン40には、板体34のボルト挿通孔34aと同軸状に開口42が設けられている。また、このパッキン40には、板体34の隙間B側の側辺34bから張り出す張出部44と、この張出部44からさらに張り出す張出部46と、板体34におけるコ字形の内側の水平辺34cから張り出す張出部48とを有する。パッキン40の縦方向の内側縁40dは、板体34の縦方向の内側縁34dから所定幅はみ出している。
【0026】
なお、板体34は、軸体26の軸心線方向(上下方向)においてベース22よりも幅広となっており、側辺34bのうちベース22から該軸心線方向にはみ出した部分は、柱1に対峙している。パッキン40の張出部44は側辺34bとベース22との隙間を埋めるように張り出しており、張出部46は、この側辺34bのベース22からのはみ出し部分と柱1との隙間を埋めるように張り出している。該張出部44,46の段差面は、ベース22の側端面に当接している。
【0027】
第1図の通り、板体32は、その板体34側の板面から突出するコ字形の盤部32aと、該盤部32aに穿設されたネジ穴32bと、該盤部32aに凹設された軸体収容溝32cとを有する。この盤部32aは、コ字形板体32の内側縁に沿って延設されている。パッキン38は、コ字形シート状であり、この盤部32aの外側縁に沿って延在している。
【0028】
ガラス板2には、この盤部32aが内嵌する大きさの切欠部2aが設けられている。
【0029】
該盤部32aを該切欠部2aに嵌合させ、板体32,34の縁部で該切欠部2aの縁部を挟み、次いでボルト36をボルト挿通孔34aを通してネジ穴32bに螺じ込むことにより、板体32,34が切欠部2aの縁部を強力に挟み付け、ヒンジ装置10Aがガラス板2に固定される。
【0030】
なお、ドア施工に際しては、ベース22のビス挿通孔22a(第1図)を通してビス打ちすることにより、予め固定体22を柱や壁、間仕切り板などの建物部材に固定しておく。その後、切欠部2aに凸部24を嵌め入れるようにしてガラス板2をドア開口に配置し、この状態で板体32,34をガラス板2の両側から上記の通り切欠部2aの縁部を挟むようにして凸部24に係合させ、ボルト36を締め込み、回動体30を介してガラス板2を固定体20に連結する。
【0031】
このようにヒンジ装置10Aを介してガラス板2よりなるドアを設置施工した場合、第4図の通り、隙間Bに対し張出部44,46が張り出してベース22と回動体30との間が塞がれる。また、隙間Cは張出部48により塞がれ、隙間Dはパッキン40の内側縁40aによって塞がれる。このため、ヒンジ装置10Aに水がかかっても、水が漏れ出すことが防止される。
【0032】
なお第1図〜第4図のその他の構成は前記第6図〜第8図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0033】
上記実施の形態では、パッキン40を板体34とガラス板2との間で挟持しており、パッキン40の保持が強固である。
【0034】
上記実施の形態では、パッキン40は、ガラス板2と板体34との間の緩衝・固定用パッキンと、漏水防止用パッキンとを兼ねているため、部品点数が少なく、施工の手間が少ないと共に、コストダウンを図ることが可能である。
【0035】
ただし、本発明では、第5図の通り、ガラス板2と板体34との間の緩衝・固定用パッキン50と、漏水防止用パッキン40Aとを別体としてもよい。パッキン50は、コ字形の板体34の外側縁に沿って配置され、パッキン40Aは内側縁に沿って配置される。このパッキン40Aは、例えば粘着剤によって板体34に貼り付けられる。
【0036】
このパッキン40Aは、前記パッキン40からパッキン50の分だけ外側縁を切り取った形状のものであり、張出部44,46,48はパッキン40と同一位置に設けられている。
【0037】
このように別体のパッキン40A,50を用いた場合、パッキン40Aをパッキン50よりも軟質な、シールに好適な硬度のものとし、パッキン50をガラス板2の保持固定に好適な硬度のものとするように材料選定することが可能である。
【0038】
上記実施の形態ではパッキンが用いられているが、張出部はブラシ状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施の形態に係るヒンジ装置の分解斜視図である。
【図2】板体及び充填体の斜視図である。
【図3】板体の第2図とは逆方向からの斜視図である。
【図4】ヒンジ装置の側面図である。
【図5】別の実施の形態に用いられる板体とパッキンの斜視図である。
【図6】従来のヒンジ装置を用いたガラス扉の斜視図である。
【図7】図6の正面図である。
【図8】図7のVI−VI線断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10,10A ヒンジ装置
20 固定体
22 ベース
24 凸部
26 軸体
30 回動体
40,40A,50 パッキン
44,46,48 張出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に取り付けられる固定体と、該固定体に対し軸により回動自在に取り付けられた回動体とを有するヒンジ装置において、
該固定体と回動体との間の隙間を塞ぐ充填体を設けたことを特徴とするヒンジ装置。
【請求項2】
請求項1において、該回動体は、ドア板を挟持するための1対の板体を有しており、
前記充填体は、該板体に挟持され、該板体から前記隙間に延出していることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記固定体は、建物に固定される板状ベースと、該板状ベースの板央部から突設された凸部と、該凸部から該板状ベースと平行方向に突出した軸体とを備えており、
前記回動体は、該凸部を囲み、前記板状ベースに対峙したコ字形であり、
前記充填体は、該回動体と該凸部との間の隙間及び該回動体と該板状ベースとの間の隙間を塞ぐように該回動体から延出していることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記回動体は、前記軸体の軸心線方向において前記板状ベースよりも幅広であり、該回動体のうち該板状ベースから該軸心線方向にはみ出した部分は前記建物に対峙しており、
前記充填体は、該回動体と建物との間の隙間にも延出していることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項において、前記充填体は、前記板体とドア板との間に介在されるパッキンと一連一体となっていることを特徴とするヒンジ装置。
【請求項6】
請求項2ないし4のいずれか1項において、前記充填体は、前記板体とドア板との間に介在されるパッキンと別体であることを特徴とするヒンジ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−307559(P2006−307559A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132236(P2005−132236)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】