説明

ヒンジ

【課題】第二連結対象物を第一連結対象物に対して緩やかかつ確実に閉じることが可能であり、かつ耐久性に優れたヒンジを提供する。
【解決手段】ヒンジ100に、ケース部材110と、ケース部材110に回動可能に連結され、カム部121を有し、カム部121には回動ピン130の周方向に延びる円弧状のダンパー孔121cが形成され、樹脂材料からなる回動部材120と、ケース部材110に支持されつつ移動可能なスライダ140と、スライダ140を回動部材120に接近する方向に付勢するバネ150と、金属材料からなり、ダンパー孔121cに貫装され、両端部がケース部材110に支持されるダンパーピン160と、ダンパー孔121cの閉側端部に嵌装される摩擦部材170と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば事務機器の本体に事務機器の原稿圧着板を開閉可能に連結する等、第一連結対象物に第二連結対象物を開閉可能に連結するヒンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、ファクシミリ、スキャナー等、オフィスで使用される事務機器の多くは、その本体の上面に設けられた原稿読み取り部(コンタクトガラス)、および当該原稿読み取り部を覆う原稿圧着板を具備する。
原稿圧着板は、原稿読み取り部に載置された原稿を原稿読み取り部に密着させるとともに当該原稿読み取り部に対する原稿の位置を保持するものであり、一般的には原稿圧着板の端部がヒンジにより事務機器の本体の上面の端部に回動可能に連結される。
【0003】
このような原稿圧着板は、原稿を原稿読み取り部に密着させるためにある程度の重量を要する。また、原稿圧着板に原稿自動送り装置(Auto Document Feeder;ADF)が設けられている場合、原稿圧着板の重量は更に増大する。
従って、従来の事務機器の本体と原稿圧着板とを連結するヒンジは、事務機器の本体に固定される取り付け部材と原稿圧着板に固定される支持部材との間にバネを介装し、当該バネの付勢力で原稿圧着板の重量を支えることにより、事務機器の本体に対する原稿圧着板の回動角度(開閉角度)を任意の角度で保持し(フリーストップ機能)、ひいては作業者が原稿圧着板を回動(開閉)させて原稿読み取り部へ原稿を載置する作業を容易にしている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0004】
また、上記ヒンジの多くは事務機器の本体に対する原稿圧着板の回動角度が所定の角度以下では回動角度が変化してもバネの圧縮量が同じとなるようにヒンジにおけるバネとの当接部(カム)の形状を工夫することにより、原稿圧着板を本体の上面に落下させ、原稿圧着板を完全に閉じる(原稿圧着板を本体の上面に当接させる)ことを可能とする。
しかし、原稿圧着板の重量が大きい場合、事務機器の本体に対する原稿圧着板の回動角度が所定の角度以下となった時点で原稿圧着板が勢いよく落下し、事務機器の本体に衝突するおそれがある。
【0005】
このような問題を解消するヒンジ(原稿圧着板開閉装置)としては、事務機器の本体に対する原稿圧着板の回動角度が所定の角度以下となった場合に流体ダンパーが作用することにより原稿圧着板の落下を緩やかにするものが知られている。例えば、特許文献2に記載の如くである。
しかし、特許文献2に記載のヒンジに設けられる流体ダンパーの構造は複雑であり、部品点数も多く、製造コストの観点から見て好ましくない。
【0006】
流体ダンパーを用いずに原稿圧着板の落下を緩やかにするヒンジとしては、特許文献3から特許文献6に記載のヒンジが知られている。
【0007】
特許文献3に記載のヒンジ(原稿圧着板開閉装置)は、事務機器の機器本体側に取り付けられる取付部材と、取付部材に回動可能に取り付けられるとともに原稿圧着板を支持する支持部材と、取付部材または支持部材のいずれか一方にスライド可能に収装されたスライダと、取付部材または支持部材のいずれか他方に設けられるとともにスライダと摺接するカム部材と、スライダをカム部材に圧接させて原稿圧着板の開成動作を制御する弾性部材と、を備え、スライダまたはカム部材のいずれか一方に嵌合凹部(溝)が設けられ、スライダまたはカム部材のいずれか他方に挿入凸部(凸条)が設けられ、嵌合凹部および挿入凸部の少なくとも一方に回転制御部(弾性変形しつつ当接する部分)が設けられる。
特許文献3に記載のヒンジが回動するとき、ある回動角度の範囲内では嵌合凹部と挿入凸部とが回転制御部において弾性変形しつつ当接し、嵌合凹部と挿入凸部との当接部分において摩擦力が発生する。
この摩擦力により、原稿圧着板を自重で閉じる方向に回動させようとするトルクの一部が相殺されるため、ヒンジの回動、ひいては原稿圧着板の落下が緩やかになる。
【0008】
特許文献4に記載のヒンジは、本体(事務機器本体)または揺動体(原稿圧着板)の一方に取り付けられる筒状のケースと、本体または揺動体の他方に取り付けられ、ケースの互いに向き合う側壁に回転自在に支持される回転体と、回転体に形成され側壁と圧接し側壁を回転体の回転軸方向に押圧する圧接部と、回転体に形成されるカム部と、ケースに往復移動自在に収容されカム部と摺接する斜面を有するくさび体と、ケースに収容されくさび体を回転体側に付勢する弾性部材と、を備える。
特許文献4に記載のヒンジが回動するとき、ある回動角度の範囲内では圧接部と側壁とが弾性変形しつつ当接し、圧接部と側壁との当接部分において摩擦力が発生する。
この摩擦力により、揺動体(原稿圧着板)を自重で閉じる方向に回動させようとするトルクの一部が相殺されるため、ヒンジの回動、ひいては揺動体(原稿圧着板)の落下が緩やかになる。
【0009】
特許文献5に記載のヒンジは、本体(事務機器本体)または揺動体(原稿圧着板)の一方に取り付けられる筒状のケースと、本体または揺動体の他方に取り付けられ、ケースの互いに向き合う側壁端部に回転自在に支持されるとともにカム部を有する回転体と、ケースに往復移動自在に収容され回動体が回動するとカム部と摺接する斜面を有するくさび体と、ケースに収容されくさび体を回転体側に付勢する弾性部材と、ケースの内壁の回動体の回動軸よりもくさび体側に形成され回動軸とほぼ平行な線分の平行移動軌跡に相当する凹に湾曲した摺接面と、回動体に形成され回動体が回動すると摺接面と摺接する摺接部と、を備える。
特許文献5に記載のヒンジが回動するとき、ある回動角度の範囲内では摺接部が弾性変形しつつ摺接面に当接し、摺接部と摺接面との当接部分において摩擦力が発生する。
この摩擦力により、揺動体(原稿圧着板)を自重で閉じる方向に回動させようとするトルクの一部が相殺されるため、ヒンジの回動、ひいては揺動体(原稿圧着板)の落下が緩やかになる。
【0010】
特許文献6に記載のヒンジは、一対の軸孔を有する軸受壁部を有しスキャナー等のベースに取り付けられる固定側ヒンジ体と、上下方向に開閉回動自在に設置される開閉体に取り付けられる可動側ヒンジ体と、一対の軸孔および可動側ヒンジ体に挿通され可動側ヒンジ体を固定側ヒンジ体に回動可能に支持する支軸と、可動側ヒンジ体に当接する斜面を上端に有するとともに固定側ヒンジ体に上下摺動自在に内装されるくさび体と、固定側ヒンジ体に内装されるとともにくさび体を上方に付勢する圧縮コイルばねと、を具備する。
特許文献6に記載のヒンジの可動側ヒンジ体は、支軸周りに回動可能に枢着されたボス部と、ボス部の外周下部から突接され開閉体の開閉に伴い斜面に擦接して可動側ヒンジに開方向の回転トルクを作用する円弧状突起と、を有する。
特許文献6に記載のヒンジの固定側ヒンジ体の軸受壁部の上端縁は軸孔を中心とする凸円弧縁に形成され、凸円弧縁の円周方向一部には小さい突子が設けられる。
特許文献6に記載のヒンジのボス部の軸方向両端面の各外周側には張出壁が形成される。
特許文献6に記載のヒンジの張出壁の内面には、軸孔中心を円弧中心とする凹円弧状に形成されるとともに開閉体の開閉に伴い突子と擦接する摺動凹円弧面が形成される。
特許文献6に記載のヒンジの摺動凹円弧面の円周方向中間部には、摺動凹円弧面と同心円状にかつ摺動凹円弧面よりも少し高く形成される隆起段部が形成される。
特許文献6に記載のヒンジが回動するとき、ある回動角度の範囲内では突子が隆起段部に乗り上げ、突子が弾性変形しつつ隆起段部に当接し、突子と隆起段部との当接部分において摩擦力が発生する。
この摩擦力により、開閉体(原稿圧着板)を自重で閉じる方向に回動させようとするトルクの一部が相殺されるため、ヒンジの回動、ひいては開閉体(原稿圧着板)の落下が緩やかになる。
【0011】
しかし、特許文献3から特許文献6までに記載のヒンジはいずれも、互いに当接する二つの部材が樹脂材料からなることを前提としている。
そのため、当該二つの部材の当接部分に発生する摩擦力を大きくするために二つの部材の一方を他方に押し付ける力を大きく設定した場合には、当該二つの部材の当接部分における摩耗が激しくなり、ヒンジに十分な耐久性を持たせることが困難である。
より詳細には、特許文献3から特許文献6までに記載のヒンジを開く方向および閉じる方向に交互に回動させることを繰り返した場合、上記二つの部材の当接部分が摩耗して当該当接部分において所望の摩擦力が発生しなくなり、原稿圧着板が事務機器の本体に向かって勢いよく落下する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−212910号公報
【特許文献2】特開2006−133532号公報
【特許文献3】特開2009−71804号公報
【特許文献4】特開2005−299748号公報
【特許文献5】特開2004−116208号公報
【特許文献6】特開2001−98839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、第二連結対象物を第一連結対象物に対して緩やかに閉じることが可能であり、かつ、耐久性に優れたヒンジを提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下では、上記課題を解決するための手段を説明する。
【0015】
即ち、請求項1においては、
第一連結対象物に第二連結対象物を開閉可能に連結するヒンジであって、
前記第一連結対象物または前記第二連結対象物のいずれか一方に固定される第一ウイング部材と、
前記第一連結対象物または前記第二連結対象物のいずれか他方に固定され、前記第一ウイング部材に回動可能に連結され、カム部を有し、前記カム部には前記第一ウイング部材に対する回動軸の周方向に延びる円弧状の長孔であって前記カム部を前記回動軸の軸線方向に貫通するダンパー孔が形成され、前記カム部のうち少なくとも前記ダンパー孔の周囲となる部分は樹脂材料からなる第二ウイング部材と、
前記第一ウイング部材に支持されつつ、前記第二ウイング部材に接近する方向および前記第二ウイング部材から離間する方向に移動可能なスライド部材と、
前記スライド部材を前記第二ウイング部材に接近する方向に付勢して前記スライド部材を前記カム部に当接させることにより、前記第二連結対象物が前記第一連結対象物に対して開く方向に回動するように前記第二ウイング部材にトルクを付与する付勢部材と、
金属材料からなり、前記ダンパー孔に貫装され、両端部が前記第一ウイング部材に支持されるダンパーピン部材と、
金属材料からなり、前記ダンパー孔の閉側端部に嵌装され、前記ダンパー孔に貫装されたダンパーピン部材が前記ダンパー孔の閉側端部に到達したときに前記ダンパーピン部材に当接し、前記ダンパーピン部材との当接部分に摩擦力を発生させる摩擦部材と、
を具備するものである。
【0016】
請求項2においては、
前記摩擦部材は、
半筒状に湾曲した湾曲部と、
基端部が前記湾曲部の一端部に連なる第一延長部と、
基端部が前記湾曲部の他端部に連なる第二延長部と、
を有し、
前記第一延長部の先端部および前記第二延長部の先端部が離間して開口部を成し、
前記ダンパー孔に貫装されたダンパーピン部材が前記ダンパー孔の閉側端部に到達したとき、前記ダンパーピン部材は前記開口部を通って前記第一延長部および第二延長部で挟まれる空間に収容され、前記ダンパーピン部材は前記第一延長部および前記第二延長部のうちいずれか一方または両方に当接するものである。
【0017】
請求項3においては、
前記ダンパー孔の閉側端部に一対の係合部が形成され、前記第一延長部の先端部および前記第二延長部の先端部が前記一対の係合部に係合するものである。
【0018】
請求項4においては、
前記摩擦部材を前記ダンパー孔に嵌装したときに前記ダンパー孔に貫装された前記ダンパーピン部材の軸線方向に対応する前記湾曲部の端部には切り欠きが形成されるものである。
【0019】
請求項5においては、
前記ダンパー孔の閉側端部における内周面には、連通口を通じて前記ダンパー孔の閉側端部に連通する窪みが形成され、
前記摩擦部材は前記窪みに嵌装され、
前記窪みに嵌装された前記摩擦部材の一部は前記連通口を通じて前記ダンパー孔の閉側端部に突出し、
前記ダンパー孔に貫装されたダンパーピン部材が前記ダンパー孔の閉側端部に到達したとき、前記ダンパーピン部材は前記摩擦部材において前記ダンパーピン孔の閉側端部に突出した部分に当接するものである。
【0020】
請求項6においては、
前記摩擦部材は円柱形状である。
【0021】
請求項7においては、
前記摩擦部材はスプリングピンである。
【0022】
請求項8においては、
前記摩擦部材は前記摩擦部材の軸線方向から見て上底および下低を有する台形状の棒であり、前記摩擦部材のうち前記台形の上底に対応する部分が前記連通口を通じて前記ダンパー孔の長孔部分に突出するものである。
【0023】
請求項9においては、
前記ダンパー孔には、前記ダンパー孔の閉側端部における内周面に連なり、前記ダンパー孔の貫通方向から見てL字型に屈曲した窪みが形成され、
前記摩擦部材は、
板状の当接部と、
一端部が前記当接部の一端部に連なるとともに前記当接部に対して屈曲する板状の中間部と、
一端部が前記中間部の他端部に連なるとともに前記中間部に対して屈曲し、前記中間部に対して前記当接部と同じ側に突出する板状の係止部と、
を有し、
前記係止部および前記中間部において前記係止部寄りとなる部分は前記窪みに嵌装され、
前記当接部および前記中間部において前記当接部寄りとなる部分は前記ダンパー孔の閉側端部に嵌装され、
前記ダンパー孔に貫装されたダンパーピン部材が前記ダンパー孔の閉側端部に到達したとき、前記ダンパーピン部材は前記当接部に当接するものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るヒンジは、第二連結対象物を第一連結対象物に対して緩やかに閉じることが可能であり、かつ、耐久性に優れる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るヒンジの実施の一形態を具備する複合機を示す右側面図。
【図2】本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す斜視図。
【図3】同じく本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す斜視図。
【図4】本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す右側面図。
【図5】回動角度θ=0°のとき(原稿圧着板が閉じているとき)の本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す右側面断面図。
【図6】ケース部材を示す斜視図。
【図7】同じくケース部材を示す斜視図。
【図8】回動部材を示す斜視図。
【図9】回動部材を示す右側面断面図。
【図10】(a)回動ピンを示す斜視図、(b)ダンパーピンを示す斜視図。
【図11】スライダを示す斜視図。
【図12】摩擦部材の第一実施形態を示す斜視図。
【図13】摩擦部材の第一実施形態を示す右側面図。
【図14】(a)摩擦部材の第一実施形態を示す平面図、(b)摩擦部材の第一実施形態を示す正面図。
【図15】本発明に係るヒンジの実施の一形態の回動部材、回動ピンおよび摩擦部材の関係を示す右側面断面図。
【図16】回動角度θ=60°のとき(原稿圧着板が開いているとき)の本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す右側面断面図。
【図17】回動角度θ=10°のときの本発明に係るヒンジの実施の一形態を示す右側面断面図。
【図18】本発明に係るヒンジの実施の一形態の回動角度θとダンパー孔の幅W(θ)との関係を示す図。
【図19】摩擦部材の第二実施形態を示す右側面図。
【図20】(a)摩擦部材の第三実施形態および第四実施形態を示す斜視図、(b)摩擦部材の第五実施形態を示す斜視図。
【図21】(a)摩擦部材の第六実施形態を示す斜視図、(b)摩擦部材の第七実施形態を示す斜視図。
【図22】ダンパー孔に嵌装された摩擦部材の第三実施形態を示す右側面断面図。
【図23】ダンパー孔に嵌装された摩擦部材の第四実施形態を示す右側面断面図。
【図24】ダンパー孔に嵌装された摩擦部材の第五実施形態を示す右側面断面図。
【図25】ダンパー孔に嵌装された摩擦部材の第六実施形態を示す右側面断面図。
【図26】ダンパー孔に嵌装された摩擦部材の第七実施形態を示す右側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、図1から図18を用いて本発明に係るヒンジの実施の一形態であるヒンジ100について説明する。
【0027】
図1に示す如く、ヒンジ100は複合機11の本体12に原稿圧着板13を回動可能に連結し、ひいては本体12に原稿圧着板13を開閉可能に連結する。
複合機11は事務機器の実施の一形態である。複合機11は本体12および原稿圧着板13を具備する。
【0028】
本体12は本発明に係る第一連結対象物の実施の一形態である。
本実施形態の本体12は原稿読み取り装置、制御装置、印刷装置、表示装置および入力装置を具備する。
本実施形態の原稿読み取り装置は本体12の上面に配置される。原稿読み取り装置は本体12の上面に載置された原稿を読み取る(原稿の画像情報を生成する)。
本実施形態の制御装置は複合機11の各部の動作、より詳細には原稿読み取り装置、印刷装置およびADFの動作を制御する。
本実施形態の制御装置は原稿読み取り装置が生成した画像情報および本体12に接続された回線(例えば、インターネット回線等)を通じて取得した画像情報を記憶することが可能である。
本実施形態の印刷装置は原稿読み取り装置の下方に配置される。印刷装置は制御装置が記憶した画像情報に基づいて紙に画像を印刷する。
本実施形態の表示装置は例えば液晶パネルからなり、複合機11の動作状況等に係る情報を表示する。
本実施形態の入力装置は例えばボタン、スイッチ等からなり、作業者が複合機11に対する指示等を入力する際に操作するものである。表示装置および入力装置は本体12の上面前端部に配置される。
【0029】
原稿圧着板13は本発明に係る第二連結対象物の実施の一形態である。
原稿圧着板13は原稿読み取り装置の上に載置された原稿を原稿読み取り装置に向かって押さえつける(圧着する)ことにより、原稿読み取り装置が原稿を読み取る際に原稿が動く(原稿読み取り装置との相対的な位置が変化する)ことを防止する。
本実施形態の原稿圧着板は読取前原稿収容トレイ、ADF(Auto Document Feeder)および読取後原稿収容トレイを具備する。
本実施形態のADFは読取前原稿収容トレイに積層状態で収容された複数枚の原稿を一枚ずつ順に取り出して原稿読み取り装置の上の所定の読取位置に載置し、原稿読み取り装置による原稿の読み取りが終了した後、当該読取位置に載置された原稿を読取後原稿収容トレイに搬送する。
【0030】
「事務機器」は、少なくとも原稿を読み取る(原稿の画像情報を取得する)機能を具備する装置を指す。
「原稿」は、シート状物(紙、樹脂製のシート等)のシート面(広い面)に文章、書画、写真等が記されたものを指す。
事務機器の具体例としては以下の(a)〜(d)等が挙げられる。
(a)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報を他の機器(例えば、パーソナルコンピュータ)に送信する機能を具備するスキャナー。
(b)原稿を読み取る機能、読み取った原稿に係る画像情報を通信回線を介して他の機器に送信する機能および他の機器から取得した画像情報をプリントアウトする機能を具備するファクス。
(c)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報をプリントアウトする機能を具備するコピー機。
(d)上記スキャナー、ファクス、およびコピー機としての機能を兼ねる複合機。
【0031】
本実施形態の場合、「原稿圧着板13が(本体12に対して)閉じている状態」は、原稿圧着板が原稿読み取り装置の上に載置された原稿を原稿読み取り装置に向かって押さえつけることが可能な状態を指す。
より具体的には、「原稿圧着板13が閉じている状態」は、原稿圧着板13の下面が本体12の上面に当接した状態、または、原稿圧着板13の下面が本体12の上面に当接していないが本体12の上面に近い位置で互いに概ね平行となるように配置された状態を指す(図1において実線で描かれた原稿圧着板13を参照)。
【0032】
本実施形態の場合、「原稿圧着板13が(本体12に対して)開いている状態」は、原稿読み取り装置の上に原稿を載置することおよび原稿読み取り装置の上から原稿を取り出すことが可能な状態を指す。
より詳細には、「原稿圧着板13が開いている状態」は、原稿圧着板13が本体12に対して回動することにより、原稿圧着板13の下面および本体12の上面(本実施形態の場合は特に、原稿圧着板13の下面前端部および本体12の上面前端部)が離間した状態を指す(図1において二点鎖線で描かれた原稿圧着板13を参照)。
【0033】
本実施形態のヒンジ100は複合機11の本体12に原稿圧着板13を回動可能に連結する用途に用いられるが、本発明に係るヒンジの用途はこれに限定されない。
すなわち、本発明に係るヒンジは、「二つの部材の一方の部材(第一連結対象物)に他方の部材(第二連結対象物)を開閉可能に連結する用途」に広く適用可能である。
本発明に係るヒンジが適用される他の用途の具体例としては、事務機器の本体にトナーカートリッジを交換するためのハッチ(蓋)を開閉可能に連結する用途、自動車の車体にボンネットを開閉可能に連結する用途、便器に便座を開閉可能に連結する用途、等が挙げられる。
【0034】
以下では、ヒンジ100を構成する各部材について説明する。
なお、以下の説明では便宜上、ヒンジ100が複合機11に取り付けられ、かつ、原稿圧着板13が本体12に対して閉じているときの複合機11の上下方向、前後方向および左右方向を基準とする。
すなわち、以下の説明では便宜上、原稿圧着板13が本体12に対して閉じているときの複合機11の上下方向、前後方向および左右方向をそれぞれヒンジ100の上下方向、前後方向および左右方向に対応させる。
【0035】
図2および図5に示す如く、ヒンジ100はケース部材110、回動部材120、回動ピン130、スライダ140、バネ150、ダンパーピン160および摩擦部材170を具備する。
【0036】
以下では、図1、図2、図3、図5、図6および図7を用いてケース部材110について説明する。
ケース部材110は本発明に係る第一ウイング部材の実施の一形態である。
本実施形態のケース部材110は金属板を適宜折り曲げることにより成形される。
図6および図7に示す如く、ケース部材110は後板111、左側板112、右側板113、前板114L・114R、底板115・116L・116R、前上カバー板117、前下カバー板118および後上カバー板119L・119Rを具備する。
【0037】
図6に示す如く、後板111はケース部材110の後部を成す板状の部材である。
後板111は前後一対の板面を有する。後板111の形状は背面視で上下方向に長い概ね長方形である。
後板111の上下中途部には突起111aが形成される。突起111aは後板111の後方に突出する。本実施形態では、後板111にプレス加工を施すことにより後板111の上下中途部を後方に塑性変形させ、当該後方に塑性変形した部分を突起111aと成す。
【0038】
図7に示す如く、左側板112はケース部材110の左側部を成す板状の部材である。
左側板112は左右一対の板面を有する。左側板112の形状は側面視で上下方向に長い概ね長方形であるが、より厳密には左側板112の上半部の幅(前後方向の長さ)は左側板112の下半部の幅(前後方向の長さ)よりもやや大きい。
左側板112の下半部かつ後端部となる部分は後板111の左端部に繋がっている。
本実施形態では、一枚の金属板を直角に折り曲げることにより後板111および左側板112が形成される。
左側板112の上端部かつ後端部となる位置には、左側板112の左右一対の板面を貫通する貫通孔112aが形成される。
左側板112の上端部かつ前端部となる位置には、左側板112の左右一対の板面を貫通する貫通孔112bが形成される。
左側板112の上下中途部には突起112cが形成される。突起112cは左側板112の左側方に突出する。
本実施形態では、左側板112にプレス加工を施すことにより左側板112の上下中途部を左側方に塑性変形させ、当該左側方に塑性変形した部分を突起112cと成す。
【0039】
図6に示す如く、右側板113はケース部材110の右側部を成す板状の部材である。
右側板113は左右一対の板面を有する。右側板113の形状は側面視で上下方向に長い概ね長方形であるが、より厳密には右側板113の上半部の幅(前後方向の長さ)は右側板113の下半部の幅(前後方向の長さ)よりもやや大きい。
右側板113の下半部かつ後端部となる部分は後板111の右端部に繋がっている。
本実施形態では、一枚の金属板を直角に折り曲げることにより後板111および右側板113が形成される。
右側板113の上端部かつ後端部となる位置には、右側板113の左右一対の板面を貫通する貫通孔113aが形成される。
右側板113の上端部かつ前端部となる位置には、右側板113の左右一対の板面を貫通する貫通孔113bが形成される。
右側板113の上下中途部には突起113cが形成される。突起113cは右側板113の右側方に突出する。
本実施形態では、右側板113にプレス加工を施すことにより右側板113の上下中途部を右側方に塑性変形させ、当該右側方に塑性変形した部分を突起113cと成す。
【0040】
図7に示す如く、前板114L・114Rはケース部材110の前部を成す板状の部材である。前板114L・114Rは前後一対の板面を有する。
前板114Lの形状は正面視で上下方向に長い概ね長方形である。前板114Rの形状は正面視で上下方向に長い長方形の左上隅部分を斜めに切除した形状である。
前板114Lの左端部は左側板112の前端部に繋がっている。本実施形態では、一枚の金属板を直角に折り曲げることにより前板114Lおよび左側板112が形成される。
前板114Rの右端部は右側板113の前端部に繋がっている。本実施形態では、一枚の金属板を直角に折り曲げることにより前板114Rおよび右側板113が形成される。
前板114Lおよび前板114Rの前後方向の位置は同じである。すなわち、前板114Lの後側の板面および前板114Rの後側の板面は同一平面上に配置される。
前板114Lの右端部と前板114Rの左端部とは離間している。すなわち、前板114Lの右端部と前板114Rの左端部との間には隙間が形成される。
【0041】
図6に示す如く、底板115・116L・116Rはケース部材110の底部(下端部)を成す板状の部材である。底板115・116L・116Rは上下一対の板面を有する。
【0042】
底板115の形状は底面視で概ね正方形である。底板115の後端部には突起115aが形成される。突起115aは底板115の後方に突出する。突起115aの形状は底面視で前後方向にやや長い概ね長方形である。
底板115の左後端部は後板111の左下端部に繋がっており、底板115の右後端部は後板111の右下端部に繋がっている。
本実施形態では、一枚の金属板に切り込みを入れ、当該切り込みの両端部を通る線を折り線として直角に折り曲げることにより底板115および後板111が形成される。
なお、上記切り込みおよび折り線で囲まれる部分が突起115aを成す。
【0043】
底板116L・116Rの形状は前後方向に長い概ね長方形である。底板116Lの左端部は左側板112の下端部に繋がっており、底板116Rの右端部は右側板113の下端部に繋がっている。本実施形態では、一枚の金属板を直角に折り曲げることにより底板116Lおよび左側板112が形成され、当該金属板の別の部分を直角に折り曲げることにより底板116Rおよび右側板113が形成される。
底板116Lおよび底板116Rの上下方向の位置は同じである。すなわち、底板116Lの上側の板面および底板116Rの上側の板面は同一平面上に配置される。
底板116Lの右端部と底板116Rの左端部とは離間している。すなわち、底板116Lの右端部と底板116Rの左端部との間には隙間が形成される。
【0044】
本実施形態では、底板116Lの上側の板面は底板115の下側の板面の左半部に当接し、底板116Rの上側の板面は底板115の下側の板面の右半部に当接する。
従って、底板115に下向きの外力(本実施形態では、バネ150の付勢力)が作用した場合、底板115は後板111だけでなく、底板116Lおよび底板116R(ひいては左側板112および右側板113)により支持される。
【0045】
図7に示す如く、前上カバー板117はケース部材110の前上端部を成す板状の部材である。前上カバー板117は後述する回動部材120のカム部121の前方を覆う(図2および図5参照)。
前上カバー板117は前後一対の板面を有する。前上カバー板117の形状は正面視で上下方向にやや長い概ね長方形である。前上カバー板117の右端部は右側板113の右上端部に繋がっている。
本実施形態では、一枚の金属板を直角に折り曲げることにより前上カバー板117および右側板113が形成される。前上カバー板117の上端部および下端部は前上カバー板117の上下中途部よりも後方に向かってやや傾斜するように折り曲げられる。
【0046】
前下カバー板118はケース部材110の前下端部を成す板状の部材である。
前下カバー板118は前後一対の板面を有する。前下カバー板118の形状は正面視で左右方向に長い概ね長方形である。前下カバー板118の下端部は底板115の前端部に繋がっている。本実施形態では、一枚の金属板を直角に折り曲げることにより前下カバー板118および底板115が形成される。
【0047】
図6に示す如く、後上カバー板119L・119Rはケース部材110の後上端部を成す板状の部材である。後上カバー板119L・119Rは後述する回動部材120のカム部121の後方を覆う(図3および図5参照)。
後上カバー板119L・119Rは前後一対の板面を有する。後上カバー板119Lの形状は背面視で左辺が左右方向に対して垂直であり、かつ下辺が上辺よりも長い台形である。後上カバー板119Rの形状は背面視で右辺が左右方向に対して垂直であり、かつ下辺が上辺よりも長い台形である。
後上カバー板119Lの左端部は左側板112の後上端部に繋がっており、後上カバー板119Rの右端部は右側板113の後上端部に繋がっている。本実施形態では、一枚の金属板を直角に折り曲げることにより後上カバー板119Lおよび左側板112が形成され、当該金属板の別の部分を直角に折り曲げることにより後上カバー板119Rおよび右側板113が形成される。
【0048】
図6および図7に示す如く、ケース部材110の内部、より詳細には後板111、左側板112、右側板113、前板114L・114R、底板115、前上カバー板117、前下カバー板118および後上カバー板119L・119Rに囲まれる部分には空間が形成される。
ケース部材110の内部に形成される空間は、ケース部材110の上部において開口する。
【0049】
本実施形態では、複合機11の本体12の上面後端部に形成された平面視長方形状の固定穴(不図示)にケース部材110を差し込むことにより、ケース部材110が本体12に固定される(図1参照)。
【0050】
ケース部材110が上記固定穴に差しこまれたとき、前板114Lの前側の板面および前板114Rの前側の板面が固定穴の前側の内壁面に当接し、突起112cが固定穴の左側の内壁面に当接し、突起113cが固定穴の右側の内壁面に当接し、突起111aが固定穴の後側の内壁面に当接し、底板116Lの下側の板面および底板116Rの下側の板面が固定穴の底面に当接することにより、本体12に対するケース部材110、ひいてはヒンジ100の位置が定められる。
【0051】
また、ケース部材110が上記固定穴に差しこまれたとき、突起115aは上記固定穴の後側の内壁面の下半部に形成された「上下方向に延びた溝」に係合する。
このように構成することにより、ヒンジ100に過負荷が作用した場合(例えば、分厚い原稿を原稿圧着板13で本体12の上面に押し付けた場合等)に本体12に対するケース部材110(ひいてはヒンジ100)の上下方向の移動を許容して当該過負荷を回避し、かつ、ヒンジ100(ひいては原稿圧着板13)が本体12から脱落することを防止することが可能である。
【0052】
本実施形態のケース部材110は一枚の金属板を適宜折り曲げることにより成形されるが、本発明に係る第一ウイング部材はこれに限定されない。
より詳細には、第一ウイング部材は一つの部材からなるものに限定されず、複数の部材からなるもの(例えば、複数の部材をネジ、溶接等により相互に固定したもの)でも良い。
また、第一ウイング部材を構成する材料は金属材料に限定されず、第一ウイング部材に要求される強度を達成することが可能であれば他の材料で構成されても良い。
第一ウイング部材を構成する材料の具体例としては、金属材料の他、樹脂材料、金属材料と樹脂材料とを組み合わせたもの、等が挙げられる。
【0053】
以下では、図1、図8および図9を用いて回動部材120について説明する。
回動部材120は本発明に係る第二ウイング部材の実施の一形態である。
本実施形態の回動部材120は樹脂材料を一体成形することにより製造される。
図8および図9に示す如く、回動部材120はカム部121および取り付け部122を有する。
【0054】
カム部121は回動部材120の下半部を成す塊状の部分である。カム部121は左右一対の側面およびカム面121aを有する。カム面121aはカム部121の前面、下面および後面を成す曲面である。
【0055】
カム部121の後上部には貫通孔121bが形成される。貫通孔121bはカム部121の左右一対の側面を貫通する。
カム部121において貫通孔121bに対して概ね前下方となる位置にはダンパー孔121cが形成される。
図9に示す如く、ダンパー孔121cは貫通孔121bの周方向に延びる円弧状、すなわち貫通孔121b、ひいては、後述する「貫通孔121bに貫装される回動ピン130」の軸線(図15参照)を中心とする円周に沿った形状の長孔である。
ダンパー孔121cはカム部121を左右に貫通し、ダンパー孔121cの軸線方向(左右方向)における両端部はそれぞれカム部121の左右一対の側面に開口する。
図8の(b)および図9に示す如く、ダンパー孔121cの内周面においてダンパー孔121cの閉側端部(本実施形態では、前上側の端部)寄りとなる位置には、一対の段差121d・121eが形成される。
【0056】
取り付け部122は回動部材120の上半部を成す板状の部分である。
取り付け部122は上下一対の板面を有する。取り付け部122には貫通孔122a・122b・122c・122dが形成される。
貫通孔122aは取り付け部122の左後部において取り付け部122の上下一対の板面を貫通する孔である。貫通孔122aの形状は平面視でわずかに左右方向に延びた形状である。
貫通孔122bは取り付け部122の左前部において取り付け部122の上下一対の板面を貫通する孔である。貫通孔122bの形状は平面視で前後方向に延びた形状である。
貫通孔122cは取り付け部122の右後部において取り付け部122の上下一対の板面を貫通する孔である。貫通孔122cの形状は平面視で円形である。
貫通孔122dは取り付け部122の右前部において取り付け部122の上下一対の板面を貫通する孔である。貫通孔122dの形状は平面視で前後方向に延びた形状である。
【0057】
本実施形態では貫通孔122a・122b・122c・122dにネジ(不図示)を貫装し、これらのネジを複合機11の原稿圧着板13の下面後端部に形成されたネジ孔(不図示)に螺装することにより、取り付け部122、ひいては回動部材120が原稿圧着板13に固定される(図1参照)。
また、貫通孔122a・122b・122dは長孔であることから、回動部材120に対して原稿圧着板13を固定する位置を容易に微調整することが可能である。
【0058】
以下では、図2、図5、図6、図7および図10の(a)を用いて回動ピン130について説明する。
回動ピン130は本発明に係る回動軸の実施の一形態である。
図10の(a)に示す如く、回動ピン130は胴体部131および頭部132を有する。本実施形態の回動ピン130は金属材料からなる。より詳細には、本実施形態の回動ピン130はステンレス鋼の線材を圧延加工することにより製造される。
【0059】
胴体部131は回動ピン130の胴体を成す略円柱形状の部分である。胴体部131の一端部(先端部)にはカシメ穴131aが形成される。
カシメ穴131aは胴体部131の一端部(先端部)の端面に形成された穴である。カシメ穴131aが形成されることにより、胴体部131の一端部(先端部)には薄肉の部分(略円筒形状の部分)が形成される。
【0060】
頭部132は胴体部131の他端部(基端部)に繋がる略円盤形状の部分である。頭部132の外径(直径)は胴体部131の外径(直径)よりも大きい。
【0061】
図2および図5に示す如く、回動ピン130の胴体部131はケース部材110の左側板112に形成された貫通孔112a(図6および図7参照)に貫装され、回動部材120のカム部121に形成された貫通孔121bに貫装され、ケース部材110の右側板113に形成された貫通孔113a(図6および図7参照)に貫装される。
貫通孔121bの内径(直径)は胴体部131の外径(直径)よりも僅かに小さく、かつ貫通孔112aおよび貫通孔113aの内径(直径)は胴体部131の外径(直径)よりも僅かに大きいので、回動ピン130は回動部材120に脱落不能(軸線方向に移動不能)かつ相対回転不能に固定されるとともにケース部材110に回動可能に軸支される。
従って、回動部材120は回動ピン130によりケース部材110に回動可能に連結され、ひいては、ヒンジ100により原稿圧着板13(の下面後端部)が本体12(の上面後端部)に回動可能に連結される。
【0062】
胴体部131の一端部(先端部)に形成された薄肉の部分を回動ピン130の半径方向(軸線方向に垂直な方向)に押し広げるようにカシメる(塑性変形させる)ことにより、回動ピン130の一端部、すなわちカシメられた部分の外径(直径)は貫通孔113aの内径(直径)よりも大きくなる。また、頭部132の外径(直径)は貫通孔112aよりも大きい。
このように、胴体部131の一端部(先端部)をカシメることにより、回動ピン130をケース部材110に対して脱落不能に固定することが可能である。
【0063】
本実施形態では回動ピン130をケース部材110および回動部材120に対して別体としたが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、十分な強度を確保することが可能であり、かつ本発明に係る第二ウイング部材を本発明に係る第一ウイング部材に回動可能に連結することが可能であれば、本発明に係る回動軸を本発明に係る第一ウイング部材または第二ウイング部材と一体としても良い(本発明に係る回動軸を本発明に係る第一ウイング部材または第二ウイング部材と一体的に成形しても良い)。
【0064】
以下では、図5および図11を用いてスライダ140について説明する。
スライダ140は本発明に係るスライド部材の実施の一形態である。
本実施形態のスライダ140は樹脂材料を一体成形することにより製造される。
図11の(a)および図11の(b)に示す如く、スライダ140は上面141、下面142、左面143、右面144、前面145および後面146を有する概ね直方体形状の部材である。
図11の(a)に示す如く、スライダ140には突起147が形成される。
突起147は左右方向に延びた形状の突起(凸条)であり、上面141の前後中途部から上方に突出する。
図11の(b)に示す如く、スライダ140にはバネ受け穴148が形成される。
バネ受け穴148は下面142に開口部を有し、上下方向に延びた穴である。バネ受け穴148の形状は底面視で円形である。バネ受け穴148は内周面および頂面を有する。
バネ受け穴148の頂面の中央部にはバネ150の位置を規制する(位置決めする)ための突起148aが形成される。
【0065】
図5に示す如く、スライダ140はケース部材110の内部に収容される。
スライダ140がケース部材110の内部に収容されたとき、スライダ140の前面145は前板114L・114Rの後側の板面に当接し、後面146は後板111の前側の板面に当接し、左面143は左側板112の右側の板面に当接し、右面144は右側板113の左側の板面に当接する。
従って、スライダ140は、上下方向に移動(摺動)可能であるが、前後方向および左右方向に移動不能かつケース部材110に対して相対回転不能である。
このように、ケース部材110の内部に収容されたスライダ140は、ケース部材110に支持されつつ、上下方向、すなわち、本実施形態においてはケース部材110に回動可能に連結された回動部材120に接近する方向および回動部材120から離間する方向に移動することが可能である。
スライダ140がケース部材110の内部に収容されたとき、スライダ140の上面141および突起147は回動部材120(より詳細には、カム部121のカム面121a)に対向する。
【0066】
以下では、図1および図5を用いてバネ150について説明する。
バネ150は本発明に係る付勢部材の実施の一形態である。
本実施形態のバネ150は金属材料からなる巻きバネであり、圧縮バネ(圧縮された状態で使用されるバネ)である。
図5に示す如く、バネ150はケース部材110の内部に収容される。
ケース部材110の内部に収容されたバネ150の一端部(下端部)は底板115の上側の板面に当接し、バネ150の他端部(上端部)はスライダ140のバネ受け穴148に挿入され、バネ受け穴148の頂面に当接する。
バネ150はスライダ140をケース部材110の開口部分(上端部)から突出する方向、すなわちケース部材110に回動可能に連結された回動部材120に接近する方向(本実施形態では上方)に付勢し、スライダ140の上面141に形成された突起147を回動部材120のカム部121のカム面121aに当接させる。
その結果、バネ150の付勢力(圧縮される方向に弾性変形したバネ150が元の形状に戻ろうとする力)はスライダ140を経て回動部材120に伝達され、回動部材120はケース部材110に対して右側面視で反時計回りに回動する方向に付勢され、原稿圧着板13は本体12に対して開く方向に付勢される(図1参照)。
このように、バネ150は原稿圧着板13が本体12に対して開く方向に回動するように回動部材120にトルクを付与する。
【0067】
以下では、図2、図5、図6、図7および図10の(b)を用いてダンパーピン160について説明する。
ダンパーピン160は本発明に係るダンパーピン部材の実施の一形態である。
図10の(b)に示す如く、ダンパーピン160は胴体部161および頭部162を有する。本実施形態のダンパーピン160は金属材料からなる。より詳細には、本実施形態のダンパーピン160はステンレス鋼の線材を圧延加工することにより製造される。
【0068】
胴体部161はダンパーピン160の胴体を成す略円柱形状の部分である。
ダンパーピン160の胴体部161の外径は、回動部材120のカム部121に形成されるダンパー孔121c(図9参照)の幅よりも小さい。
胴体部161の一端部(先端部)にはカシメ穴161aが形成される。
カシメ穴161aは胴体部161の一端部(先端部)の端面に形成された穴である。カシメ穴161aが形成されることにより、胴体部161の一端部(先端部)には薄肉の部分(略円筒形状の部分)が形成される。
【0069】
頭部162は胴体部161の他端部(基端部)に繋がる略円盤形状の部分である。頭部162の外径(直径)は胴体部161の外径(直径)よりも大きい。
【0070】
図2および図5に示す如く、ダンパーピン160の胴体部161はケース部材110の左側板112に形成された貫通孔112b(図6および図7参照)に貫装され、回動部材120のカム部121に形成されたダンパー孔121cに貫装され、ケース部材110の右側板113に形成された貫通孔113b(図6および図7参照)に貫装される。
【0071】
胴体部161の一端部(先端部)に形成された薄肉の部分をダンパーピン160の半径方向(軸線方向に垂直な方向)に押し広げるようにカシメる(塑性変形させる)ことにより、ダンパーピン160の一端部、すなわちカシメられた部分の外径(直径)は貫通孔113bの内径(直径)よりも大きくなる。また、頭部162の外径(直径)は貫通孔112bよりも大きい。
このように、胴体部161の一端部(先端部)をカシメることにより、ダンパーピン160をケース部材110に対して脱落不能に固定することが可能である。
【0072】
本実施形態では、ダンパーピン160の胴体部161の中途部がダンパー孔121cに貫装され、胴体部161の両端部(基端部および先端部)がケース部材110に支持される。
このように構成することにより、ダンパーピン160の軸線に垂直な方向の力(後で詳述するダンパーピン160(胴体部161)と摩擦部材170の第一延長部172との当接部分およびダンパーピン160(胴体部161)と摩擦部材170の第二延長部173との当接部分において発生する摩擦力に起因する力)がダンパーピン160に作用した場合でも、ダンパーピン160はケース部材110に確実に支持され、ひいてはケース部材110に対するダンパーピン160の位置あるいは姿勢の変動を防止することが可能である。
【0073】
本実施形態では、ダンパーピン160を構成する金属材料はステンレス鋼であるが、本発明に係るダンパーピン部材を構成する金属材料はこれに限定されず、ある程度の強度(ダンパーピン部材としての機能を果たし得る強度)を有する金属材料であれば他の金属材料でも良い。
本発明に係るダンパーピン部材を構成する金属材料の例としては、種々の鉄鋼材料(軟鉄、ステンレス鋼等)、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、銅、銅合金等が挙げられる。
【0074】
以下では、図5、図12、図13、図14および図15を用いて摩擦部材170について説明する。
摩擦部材170は本発明に係る摩擦部材の第一実施形態である。
図12、図13および図14に示す如く、摩擦部材170は湾曲部171、第一延長部172および第二延長部173を有する。
本実施形態の場合、摩擦部材170はバネ鋼からなる金属板(板状の金属材料)の中途部を湾曲させることにより製造され、当該金属板の中途部(湾曲された部分)が湾曲部171に対応し、当該金属板の中途部を挟む二つの端部がそれぞれ第一延長部172および第二延長部173に対応する。
【0075】
湾曲部171は本発明に係る湾曲部の実施の一形態である。
図13に示す如く、湾曲部171は摩擦部材170を構成する部分のうち、半筒状に湾曲した形状の部分である。湾曲部171は一対の板面171a・171bを有する。
「半筒状」は、筒を当該筒の軸線(中心線)に平行な平面で切断した如き形状である。
「半筒状」は円筒を当該円筒の軸線(中心線)に平行な平面で切断した如き形状だけでなく、角筒(例えば、三角筒、四角筒、六角筒等)を当該角筒の軸線(中心線)に平行な平面で切断した如き形状を含む。
湾曲部の形状である「半筒状」は、湾曲部の製造方法を「金属板を湾曲させる方法(金属板に曲げ加工を施す方法)に限定しない。すなわち、原料の塊に適宜切削加工を施す等の別の方法により湾曲部を製造しても良い。
【0076】
第一延長部172は本発明に係る第一延長部の実施の一形態である。
図13に示す如く、第一延長部172は平板状の部分であり、第一延長部172の基端部(上端部)は湾曲部171の一端部(後下側の端部)に連なる。第一延長部172は一対の板面172a・172bを有する。
板面172aは湾曲部171の板面171aに連なる平面であり、板面172bは湾曲部171の板面171bに連なる平面である。
【0077】
第二延長部173は本発明に係る第二延長部の実施の一形態である。
図13に示す如く、第二延長部173は平板状の部分であり、第二延長部173の基端部(上端部)は湾曲部171の他端部(前下側の端部)に連なる。
板面173aは湾曲部171の板面171aに連なる平面であり、板面173bは湾曲部171の板面171bに連なる平面である。
【0078】
板面171a、板面172aおよび板面173aを合わせたものが摩擦部材170の内周面を成し、板面171b、板面172bおよび板面173bを合わせたものが「摩擦部材170の外周面」を成す。
【0079】
図13に示す如く、第一延長部172の先端部(下端部)および第二延長部173の先端部(下端部)は離間している。
第一延長部172および第二延長部173で挟まれる空間(摩擦部材170の内周面(板面171a、板面172aおよび板面173a)で囲まれる空間)が「摩擦部材170の収容部」を成し、第一延長部172の先端部(下端部)および第二延長部173の先端部(下端部)で挟まれる部分が「摩擦部材170の(収容部の)開口部174」を成す。
【0080】
図12および図14に示す如く、湾曲部171の左右端部には切り欠き171d・171eが形成される。
切り欠き171d・171eが形成されることにより、湾曲部171の左右方向の長さL1は第一延長部172の左右方向の長さL2および第二延長部173の左右方向の長さL3よりも短くなり(L1<L2かつL1<L3が成立し)、第一延長部172の左右端部および第二延長部173の左右端部は湾曲部171の左右端部よりも左右方向に突出する。
【0081】
図5、図9および図15に示す如く、摩擦部材170はダンパー孔121cの閉側端部(本実施形態では、ダンパー孔121cの前上側の端部)に嵌装される。
ここで、「ダンパー孔の閉側端部」は、長孔であるダンパー孔の両端部のうち、第二連結対象物が第一連結対象物に対して閉じた状態にあるときに当該ダンパー孔に貫装されているダンパーピン部材が配置されている方の端部を指す。
【0082】
ヒンジ100の組み立て時において、摩擦部材170は以下の手順でダンパー孔121cの閉側端部に嵌装される。
先ず、図13において二点鎖線で示す如く、第一延長部172の先端部(下端部)および第二延長部173の先端部(下端部)が互いに接近するように摩擦部材170を弾性変形させる。
次に、摩擦部材170が弾性変形した状態を保持しつつ、摩擦部材170をダンパー孔121cの閉側端部に挿入する。
続いて、摩擦部材170がダンパー孔121cの閉側端部に挿入された状態を保持しつつ、摩擦部材170が弾性変形した状態を解除する。
【0083】
図13および図15に示す如く、弾性変形した状態が解除され、ダンパー孔121cの閉側端部に嵌装された摩擦部材170の外周面(板面171b、板面172bおよび板面173bを合わせたもの)は、摩擦部材170が元の形状に戻ろうとする力(弾性力)によりダンパー孔121cの内周面のうちダンパー孔121cの閉側端部に対応する部分に強く当接する。
その結果、摩擦部材170の外周面とダンパー孔121cの内周面との当接部分には大きな摩擦力が発生し、当該摩擦力により摩擦部材170はダンパー孔121cの閉側端部に固定され、回動部材120に対する摩擦部材170の軸線方向(本実施形態では、左右方向)の移動、並びに回動部材120に対する摩擦部材170のダンパー孔121cの長手方向(回動ピン130の周方向)の移動は規制される。
【0084】
摩擦部材170がダンパー孔121cの閉側端部に嵌装されたとき、第一延長部172の先端部(下端部)および第二延長部173の先端部(下端部)はそれぞれダンパー孔121cの内周面に形成される一対の段差121d・121eに係合する。
そのため、回動部材120に対する摩擦部材170のダンパー孔121cの長手方向(回動ピン130の周方向)の移動は、「摩擦部材170の外周面とダンパー孔121cの内周面との当接部分に発生する摩擦力」だけでなく「カム部121の一対の段差121d・121eが摩擦部材170の第一延長部172の先端部および第二延長部173の先端部をダンパー孔121cの長手方向に押す力」によっても規制される。
【0085】
なお、本実施形態では第一延長部172の先端部および第二延長部173の先端部がそれぞれ一対の段差121d・121eに係合することにより回動部材120に対する摩擦部材170のダンパー孔121cの長手方向の移動が規制されるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、ダンパー孔121cの一対の段差121d・121eに対応する位置にそれぞれ突条(ダンパー孔の貫通方向(回動軸の軸線方向)に延びた形状の突起)を形成し、第一延長部172の先端部および第二延長部173の先端部を当該一対の突条に係合しても良い。
また、ダンパー孔121cの一対の段差121d・121eに対応する位置にそれぞれダンパー孔の貫通方向(回動軸の軸線方向)に並んだ複数の突起(突起列)を形成し、第一延長部172の先端部および第二延長部173の先端部を当該一対の突起列に係合しても良い。
すなわち、ダンパー孔の閉側端部に一対の係合部が形成され、第一延長部の先端部および第二延長部の先端部が当該一対の係合部に係合すればよい。
本実施形態の一対の段差121d・121e、上記一対の突条、および一対の突起列は、それぞれ本発明に係る係合部の実施の一形態に相当する。
【0086】
図15に示す如く、ダンパー孔121cの閉側端部に嵌装された摩擦部材170の開口部174は、ダンパー孔121cの長手方向(貫通孔121bの周方向)かつダンパー孔121cの開側端部(ダンパー孔121cの両端部のうち、原稿圧着板13が本体12に対して閉じた状態にあるときにダンパー孔121cに貫装されているダンパーピン160が配置されている方の端部であり、本実施形態ではダンパー孔121cの後下側の端部)に向かう方向に開口する。
【0087】
図8の(b)および図12に示す如く、湾曲部171の左右端部(摩擦部材170をダンパー孔121cに嵌装したときにダンパー孔121cに貫装されたダンパーピン160の軸線方向に対応する端部)に切り欠き171d・171eを形成することにより、湾曲部171の左右端部よりも左右方向に突出した第一延長部172の左右端部および第二延長部173の左右端部を摩擦部材170をダンパー孔121cの閉側端部に嵌装するときのガイドとして利用することが可能であり、摩擦部材170をダンパー孔121cの閉側端部に嵌装する作業が容易となる。
【0088】
以下では、図1、図5、図15、図16、図17および図18までを用いて原稿圧着板13を閉じるときのヒンジ100の挙動について説明する。
より詳細には、(1)原稿圧着板13の回動角度θ、(2)「フリーストップ領域」および「落下領域」、(3)原稿圧着板13の回動角度θ、ダンパー孔121c、ダンパーピン160および摩擦部材170の関係、について順に説明する。
【0089】
以下では(1)原稿圧着板13の回動角度θについて説明する。
図5に示す如く、本実施形態では原稿圧着板13が完全に閉じているとき、すなわち原稿圧着板13の下面が本体12の上面に当接しているときの原稿圧着板13の回動角度θ(本体12に対する原稿圧着板13の回動角度θ)を「0°」とし、原稿圧着板13が開く方向に回動した場合に回動角度θが増加する(回動角度θが正になる)ように原稿圧着板13の回動角度θを定義する。
なお、本実施形態では原稿圧着板13が完全に開いたとき(回動角度θが最大になったとき)の原稿圧着板13の回動角度θは「60°」である。
【0090】
以下では(2)「フリーストップ領域」および「落下領域」について説明する。
図1に示す如く、本実施形態では、原稿圧着板13の回動角度θが10°以上(θ≧10°)の場合には原稿圧着板13が「フリーストップ領域」に属し、原稿圧着板13の回動角度θが10°未満(0°≦θ<10°)の場合には原稿圧着板13が「落下領域」に属する。
【0091】
本実施形態における「フリーストップ領域」は、(A)「原稿圧着板13の重量に起因して回動ピン130を中心として回動部材120に作用する回転力(トルク)」と(B)「バネ150の付勢力に起因して回動ピン130を中心として回動部材120に作用する回転力(トルク)」とが概ね平衡する領域である。
ここで、『本実施形態における「フリーストップ領域」では(A)の回転力と(B)の回転力とが概ね平衡する』としたのは、本実施形態における「フリーストップ領域」には、(α)「(A)の回転力と(B)の回転力とが完全に平衡する領域((A)−(B)=0が成立する領域)」だけでなく、(β)「(A)の回転力と(B)の回転力との間に差分があり((A)−(B)≠0)、かつカム面121aと突起147との当接部分に発生する摩擦力が当該差分を相殺可能な領域」も含まれるからである。なお、(A)の回転力と(B)の回転力との間の差分は正の値の場合も負の値の場合もあり得る。
【0092】
原稿圧着板13が「フリーストップ領域」に属する状態で原稿圧着板13が閉じる方向(原稿圧着板13の回動角度θが小さくなる方向)に回動した場合、(A)の回転力は増大する。
これは、原稿圧着板13に作用する重力を回動ピン130の半径方向(側面視で原稿圧着板13の前端部と回動ピン130を結ぶ方向)の成分および周方向(側面視で半径方向に垂直な方向)の成分に分解した場合、原稿圧着板13の回動角度θが小さくなるほど周方向の成分、すなわち(A)の回転力が大きくなることによる。
【0093】
一方、原稿圧着板13が「フリーストップ領域」に属する状態で原稿圧着板13が閉じる方向に回動した場合、図16および図17に示す如く回動部材120がケース部材110に対して右側面視で時計回りに回動し、回動部材120のカム部121のカム面121aとスライダ140の突起147とが当接する位置が変化し、スライダ140は図16に示す場合に比べて下方に移動する(押し下げられる)。
スライダ140が下方に移動することにより、バネ150は圧縮され(バネ150の全長は小さくなり)、バネ150の付勢力が増大し、(B)の回転力が増大する。
その結果、原稿圧着板13が「フリーストップ領域」に属するとき、原稿圧着板13の回動角度θが変化しても(A)の回転力と(B)の回転力とが概ね平衡する。
より厳密には、原稿圧着板13が「フリーストップ領域」に属するときには原稿圧着板13の回動角度θが変化しても(A)の回転力と(B)の回転力とが概ね平衡するように回動部材120(カム部121)およびスライダ140(突起147)の形状が予め設定される。
従って、原稿圧着板13が「フリーストップ領域」に属するときに作業者が原稿圧着板13から手を離した場合、原稿圧着板13の回動角度θは保持される。
【0094】
本実施形態における「落下領域」は(A)の回転力が(B)の回転力よりも大きくなる領域である。より厳密には、本実施形態における「落下領域」は「(A)の回転力が(B)の回転力よりも大きく、かつカム面121aと突起147との当接部分に発生する摩擦力が(A)の回転力と(B)の回転力との差分を相殺不能な領域」である。
原稿圧着板13が「落下領域」に属するときに作業者が原稿圧着板13から手を離した場合、原稿圧着板13は自重(より厳密には、(A)の回転力と(B)の回転力との差分)により閉じる方向に回動する。
【0095】
本実施形態では、原稿圧着板13が「落下領域」に属するとき、原稿圧着板13の回動角度θが変化してもケース部材110に対するスライダ140の位置がほとんど変化しない。
より厳密には、原稿圧着板13が「落下領域」に属するときには原稿圧着板13の回動角度θが変化してもケース部材110に対するスライダ140の位置がほとんど変化しないように回動部材120(カム部121)およびスライダ140(突起147)の形状が予め設定される。
その結果、原稿圧着板13が「落下領域」に属するときには(B)の回転力は実質的にゼロとなり、(A)の回転力が(B)の回転力よりも大きくなる。
【0096】
以下では(3)原稿圧着板13の回動角度θ、ダンパー孔121c、ダンパーピン160および摩擦部材170の関係について説明する。
図15に示す如く、ダンパー孔121cは回動ピン130の軸線方向(左右方向)から見て回動ピン130の軸線を中心とする円周に沿って延びた形状を有する。
また、当該円周の半径は、ケース部材110に支持された回動ピン130の軸線(中心線)からダンパーピン160の軸線(中心線)までの距離と同じである。
従って、回動部材120がケース部材110に対して回動するとき、ダンパー孔121cに貫装されたダンパーピン160は、ダンパー孔121cの内部をダンパー孔121cの長手方向に(回動ピン130の周方向に)相対移動する。
【0097】
図15に示す如く、本実施形態では、ダンパー孔121cの幅W(θ)は、「原稿圧着板13の回動角度がθであるときに回動ピン130の軸線方向(ダンパーピン160の軸線方向)から見て回動ピン130の軸線(中心線)およびダンパーピン160の軸線(中心線)を通る直線1」と「ダンパー孔121cの内周面」とが交わる二つの点の間の距離として定義される。
従って、ダンパー孔121cの幅W(θ)は原稿圧着板13の回動角度θの関数として表される(図18参照)。
【0098】
図15、図16、図17および図18に示す如く、10°<θ≦60°のとき(回動部材120がケース部材110に対して図16に示す位置から図17に示す位置までの間で回動するとき)、ダンパー孔121cの幅W(θ)はダンパーピン160の外径(直径)Rdpよりも大きく、ダンパーピン160の胴体部161の外周面はダンパー孔121cの内周面に当接しない。
従って、10°<θ≦60°のとき、ダンパーピン160が回動部材120の動作(回動部材120がケース部材110に対して回動すること)を阻害するような力を回動部材120に作用させることはない。
【0099】
図5、図15、図17および図18に示す如く、0°≦θ≦10°のとき(回動部材120がケース部材110に対して図17に示す位置から図5に示す位置までの間で回動するとき)、ダンパー孔121cの閉側端部には摩擦部材170が嵌装されているため、ダンパーピン160は摩擦部材170の開口部174を通って摩擦部材170の収容部(第一延長部172および第二延長部173で挟まれる空間)に収容され、実質的なダンパー孔121cの幅W(θ)はダンパーピン160の外径(直径)Rdpよりも小さくなる。
ここで、「実質的なダンパー孔121cの幅W(θ)」は、摩擦部材170の内周面(板面171a、板面172aおよび板面173aを合わせたもの)をダンパー孔121cの内周面と見なした場合のダンパー孔121cの幅を指す。
【0100】
図5および図17に示す如く、0°≦θ≦10°のとき、ダンパーピン160の胴体部161の外周面が摩擦部材170の内周面に当接し、回動部材120のカム部121のうち摩擦部材170の周囲に対応する部分が弾性変形する。
そのため、0°≦θ≦10°のとき、ダンパーピン160の胴体部161の外周面と摩擦部材170の内周面との当接部分(特に、胴体部161の外周面と第一延長部172の板面172aとの当接部分、および胴体部161の外周面と第二延長部173の板面173aとの当接部分)には摩擦力が発生し、当該摩擦力が(A)の回転力と(B)の回転力との差分の一部を相殺するので、原稿圧着板13が閉じる方向に回動する速度が遅くなる(緩和される)。
その結果、原稿圧着板13は本体12の上面に柔らかく(強い衝撃を伴わずに)当接するので、原稿圧着板13は緩やかに閉じられる。
【0101】
以上の如く、ヒンジ100は、
複合機11の本体12に原稿圧着板13を開閉可能に連結するものであって、
本体12に固定されるケース部材110と、
原稿圧着板13に固定され、ケース部材110に回動可能に連結され、カム部121を有し、カム部121にはケース部材110に対する回動軸(本実施形態の場合、回動ピン130)の周方向に延びる円弧状の長孔であってカム部121を当該回動軸の軸線方向(本実施形態の場合、左右方向)に貫通するダンパー孔121cが形成され、樹脂材料からなる回動部材120と、
ケース部材110に支持されつつ、回動部材120に接近する方向および回動部材120から離間する方向に移動可能なスライダ140と、
スライダ140を回動部材120に接近する方向に付勢してスライダ140をカム部121に当接させることにより、原稿圧着板13が本体12に対して開く方向に回動するように回動部材120にトルクを付与するバネ150と、
金属材料からなり、ダンパー孔121cに貫装され、両端部がケース部材110に支持されるダンパーピン160と、
金属材料からなり、ダンパー孔121cの閉側端部に嵌装され、ダンパー孔121cに貫装されたダンパーピン160がダンパー孔121cの閉側端部に到達したときにダンパーピン160に当接し、ダンパーピン160との当接部分に摩擦力を発生させる摩擦部材170と、
を具備する。
このように構成することにより、原稿圧着板13を本体12に対して緩やかに閉じることが可能である。
また、金属材料からなるダンパーピン160と金属材料からなる摩擦部材170との当接部分(ダンパーピン160と第一延長部172との当接部分およびダンパーピン160と第二延長部173との当接部分)に摩擦力が発生するので、樹脂材料からなる二つの部材の当接部分に同じ大きさの摩擦力が発生する場合(従来のヒンジ)に比べて摩擦力の発生に関与する部材(ダンパーピン160および摩擦部材170)の摩耗を抑えることが可能であり、耐久性に優れる。
さらに、摩擦部材170が摩耗することによりダンパーピン160と第一延長部172との当接部分およびダンパーピン160と第二延長部173との当接部分に発生する摩擦力の大きさが変化した場合でも、摩耗した摩擦部材170を別の(新品の)摩擦部材170に交換することにより当該摩擦力の大きさを容易に元の状態に戻すことが可能である。
【0102】
また、ヒンジ100の摩擦部材170は、
半筒状に湾曲した湾曲部171と、
基端部が湾曲部171の一端部に連なる第一延長部172と、
基端部が湾曲部171の他端部に連なる第二延長部173と、
を有し、
第一延長部172の先端部および第二延長部173の先端部が離間して開口部174を成し、
ダンパー孔121cに貫装されたダンパーピン160がダンパー孔121cの閉側端部に到達したとき(本実施形態の場合、0°≦θ≦10°のとき)、ダンパーピン160は開口部174を通って第一延長部172および第二延長部173で挟まれる空間に収容され、ダンパーピン160は第一延長部172および第二延長部173の両方に当接する。
このように構成することは、以下の利点を有する。
すなわち、摩擦部材170の形状(例えば、厚さ等)を変更することにより、ダンパーピン160と第一延長部172との当接部分およびダンパーピン160と第二延長部173との当接部分に発生する摩擦力の大きさを容易に変更することが可能である。
【0103】
本実施形態ではダンパーピン160が第一延長部172および第二延長部173の両方に当接するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、ダンパーピン160が第一延長部172および第二延長部173のいずれか一方に当接しても良い。
【0104】
本実施形態では、0°≦θ≦10°のときに実質的なダンパー孔121cの幅W(θ)がダンパーピン160(胴体部161)の外径Rdpよりも小さくなるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、摩擦部材170の第一延長部172の基端部から先端部までの長さおよび第二延長部173の基端部から先端部までの長さを長くすることにより0°≦θ≦15°のときに実質的なダンパー孔121cの幅W(θ)をダンパーピン160の外径Rdpよりも小さくすることが可能であり、摩擦部材170の第一延長部172の基端部から先端部までの長さおよび第二延長部173の基端部から先端部までの長さを短くすることにより0°≦θ≦7°のときに実質的なダンパー孔121cの幅W(θ)をダンパーピン160の外径Rdpよりも小さくしたりすることが可能である。
【0105】
このように、「摩擦部材の形状」をどのような形状にするか、言い換えれば第一ウイング部材に対する第二ウイング部材の回動角度(第一連結対象物に対する第二連結対象物の開き具合)がどのような範囲にあるときにダンパーピン部材の外周面と摩擦部材との間で摩擦力を発生させるべきか、を本発明に係るヒンジの用途(第一連結対象物および第二連結対象物の形状、重量等)に応じて適宜選択することが可能である。
【0106】
本実施形態では回動部材120の全体が樹脂材料からなるが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、本発明の第二ウイング部材のカム部のうち少なくとも「ダンパー孔の周囲となる部分」、より詳細には、少なくとも「ダンパー孔の閉側端部の周囲となる部分」、すなわち、ダンパーピン部材と摩擦部材とが当接することにより弾性変形する部分が樹脂材料で構成されていれば(樹脂材料からなっていれば)、ダンパーピン部材と摩擦部材とが当接する部分に摩擦力を発生させることが可能である。
【0107】
本実施形態の回動部材120を構成する樹脂材料はポリアセタール(Polyacetal/Polyoxymethylene;POM)であるが、本発明に係るカム部のうちダンパー孔の周囲となる部分を構成する樹脂材料はこれに限定されず、ダンパーピン部材と摩擦部材とが当接したときに弾性変形し、ダンパーピン部材と摩擦部材との当接部分に摩擦力を発生させることが可能な樹脂材料であれば、他の樹脂材料でも良い。
本発明に係るカム部のうちダンパー孔の周囲となる部分を構成する樹脂材料の他の例としては、ポリアミド(Polyamide;PA)、ポリブチレンテレフタレート(Polybutyleneterephtalate;PBT)、ポリフェニレンスルファイド(Polyphenylenesulfide;PPS)等が挙げられる。
【0108】
本実施形態ではケース部材110が複合機11の本体12に固定され、回動部材120が原稿圧着板13に固定されるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、本体12および原稿圧着板13の形状によっては、ケース部材110が原稿圧着板13に固定され、回動部材120が本体12に固定されても良い。
このように、本発明に係る第一ウイング部材が第一連結対象物または第二連結対象物のいずれか一方に固定され、本発明に係る第二ウイング部材が第一連結対象物または第二連結対象物のいずれか他方(第一連結対象物または第二連結対象物のうち、第一ウイング部材が固定されなかった部材)に固定されれば良い。
【0109】
本実施形態では「フリーストップ領域」から「落下領域」に移行するときの回動角度θ1は、ダンパーピン部材と摩擦部材とが当接しない状態から当接する状態に移行する(第二連結対象物を閉じる方向に回動させた場合にダンパーピン部材と摩擦部材との当接部分に摩擦力が発生し始める)ときの回動角度θ2と同じである(θ1=θ2=10°)が、本発明はこれに限定されない。
すなわち、第二連結対象物を第一連結対象物に対して緩やかに閉じることが可能であれば、θ1>θ2となってもθ1<θ2となっても良い。すなわち、θ1およびθ2の大小関係は、本発明に係るヒンジの用途に応じて適宜選択されることが望ましい。
【0110】
以下では、図19を用いて本発明に係る摩擦部材の第二実施形態である摩擦部材270について説明する。
摩擦部材270は湾曲部271、第一延長部272および第二延長部273を有する。
本実施形態の場合、摩擦部材270はバネ鋼からなる金属板(板状の金属材料)の中途部を湾曲させることにより製造され、当該金属板の中途部(湾曲された部分)が湾曲部271に対応し、当該金属板の中途部を挟む二つの端部がそれぞれ第一延長部272および第二延長部273に対応する。
【0111】
湾曲部271は本発明に係る湾曲部の実施の一形態である。
湾曲部271は摩擦部材270を構成する部分のうち、半筒状に湾曲した形状の部分である。湾曲部271は一対の板面271a・271bを有する。
【0112】
第一延長部272は本発明に係る第一延長部の実施の一形態である。
第一延長部272は板状の部分であり、第一延長部272の基端部(上端部)は湾曲部271の一端部(後下側の端部)に連なる。第一延長部272は一対の板面272a・272bを有する。
板面272aは湾曲部271の板面271aに連なり、板面272bは湾曲部271の板面271bに連なる。
【0113】
第二延長部273は本発明に係る第二延長部の実施の一形態である。
第二延長部273は板状の部分であり、第二延長部273の基端部(上端部)は湾曲部271の他端部(前下側の端部)に連なる。
板面273aは湾曲部271の板面271aに連なる平面であり、板面273bは湾曲部271の板面271bに連なる平面である。
【0114】
板面271a、板面272aおよび板面273aを合わせたものが摩擦部材270の内周面を成し、板面271b、板面272bおよび板面273bを合わせたものが「摩擦部材270の外周面」を成す。
【0115】
第一延長部272の先端部(下端部)および第二延長部273の先端部(下端部)は離間している。
摩擦部材270の内周面(板面271a、板面272aおよび板面273a)で囲まれる空間が「摩擦部材270の収容部」を成し、第一延長部272の先端部(下端部)および第二延長部273の先端部(下端部)で挟まれる部分が「摩擦部材270の(収容部の)開口部274」を成す。
【0116】
摩擦部材270はダンパー孔121cの閉側端部(本実施形態ではダンパー孔121cの前上側の端部、図9参照)に嵌装される。
【0117】
図19に示す摩擦部材270は、第一延長部272および第二延長部273が中途部において摩擦部材270の内周面側に向かって屈曲し、第一延長部272および第二延長部273の中途部における「第一延長部272の板面272aから第二延長部273の板面273aまでの距離(言い換えれば、実質的なダンパー孔121cの幅)」はダンパーピン160の外径よりも小さく、第一延長部272および第二延長部273の基端部における「第一延長部272の板面272aから第二延長部273の板面273aまでの距離」はダンパーピン160の外径よりも大きい、という点において、図13に示す摩擦部材170と異なる。
このように摩擦部材270を構成することにより、摩擦部材270をダンパー孔121cの閉側端部に嵌装した場合には、回動角度θが「ダンパーピン160が第一延長部272および第二延長部273の中途部に対向する位置」にあるときにはダンパーピン160と摩擦部材270との間に摩擦力が発生し、回動角度θがゼロ近傍であるときにはダンパーピン160と摩擦部材270との間に摩擦力が発生しない。
従って、原稿圧着板13が閉じる方向に回動し、回動角度θがゼロ近傍となったときには原稿圧着板13が本体12に向かって落下するので、強い衝撃を伴わずに原稿圧着板13の下面を確実に本体12の上面に当接させ、ひいては原稿圧着板13を本体12に対して確実に閉じることが可能である。
【0118】
以下では、図20の(a)および図22を用いて本発明に係る摩擦部材の第三実施形態である摩擦部材370について説明する。
【0119】
図20の(a)に示す如く、摩擦部材370は円柱形状の部材であり、金属材料からなる。本実施形態の場合、摩擦部材370はステンレス鋼の丸棒を所望の長さで切断することにより製造される。なお、摩擦部材370を別の金属材料で製造することも可能である。
【0120】
図1に示すヒンジ100に摩擦部材170に代えて摩擦部材370を適用する場合、図22に示す如く、回動部材120のダンパー孔121cの閉側端部における内周面には窪み121fが形成される。
窪み121fは連通口121gを通じてダンパー孔121cの閉側端部に連通する。
【0121】
図22に示す如く、摩擦部材370は窪み121fに嵌装される。このとき、摩擦部材370の外周面と窪み121fの内周面との間には強い摩擦力が発生し、当該摩擦力により摩擦部材370はダンパー孔121cの閉側端部に固定され、回動部材120に対する摩擦部材370の軸線方向(本実施形態では、左右方向)の移動は規制される。
摩擦部材370が窪み121fに嵌装されたとき、摩擦部材370の一部は連通口121gを通じてダンパー孔121cの閉側端部に突出する。
また、摩擦部材370の外径は連通口121gの幅(回動部材120の回動軸(回動ピン130)の周方向における幅)よりも大きいので、摩擦部材370が窪み121fから連通口121gを通ってダンパー孔121cの長孔部分に移動する(窪み121fから脱落する)ことはない。
【0122】
原稿圧着板13が閉じる方向に回動し(ヒンジ100の回動部材120がケース部材110に対して閉じる方向に回動し)、図22において二点鎖線で示す如くダンパーピン160がダンパー孔121cの閉側端部に到達したとき、ダンパーピン160(より詳細には、胴体部161)の外周面は摩擦部材370の外周面のうち、連通口121gを通じてダンパー孔121cの閉側端部に突出する部分に当接する。
その結果、摩擦部材370および回動部材120のカム部121のうち窪み121fの周囲となる部分は弾性変形し、ダンパーピン160と摩擦部材370との当接部分には摩擦力が発生し、原稿圧着板13が閉じる方向に回動する速度が遅くなる(緩和される)。
そのため、原稿圧着板13は本体12の上面に柔らかく(強い衝撃を伴わずに)当接するので、原稿圧着板13は緩やかに閉じられる。
【0123】
また、金属材料からなるダンパーピン160と金属材料からなる摩擦部材370との当接部分に摩擦力が発生するので、樹脂材料からなる二つの部材の当接部分に同じ大きさの摩擦力が発生する場合(従来のヒンジ)に比べて摩擦力の発生に関与する部材(ダンパーピン160および摩擦部材370)の摩耗を抑えることが可能であり、耐久性に優れる。
さらに、摩擦部材370が摩耗することによりダンパーピン160と摩擦部材370との当接部分に発生する摩擦力の大きさが変化した場合でも、摩耗した摩擦部材370を別の(新品の)摩擦部材370に交換することにより当該摩擦力の大きさを容易に元の状態に戻すことが可能である。
【0124】
以下では、図20の(a)および図23を用いて本発明に係る摩擦部材の第四実施形態である摩擦部材471・472について説明する。
【0125】
図20の(a)に示す如く、摩擦部材471・472は円柱形状の部材であり、金属材料からなる。本実施形態の場合、摩擦部材471・472はステンレス鋼の丸棒を所望の長さで切断することにより製造される。なお、摩擦部材471・472を別の金属材料で製造することも可能である。
【0126】
図1に示すヒンジ100に摩擦部材170に代えて摩擦部材471・472を適用する場合、図23に示す如く、回動部材120のダンパー孔121cの閉側端部における内周面には窪み121f・121hが形成される。
窪み121fは連通口121gを通じてダンパー孔121cの閉側端部に連通する。また、窪み121hは連通口121iを通じてダンパー孔121cの閉側端部に連通する。
窪み121fの連通口121gおよび窪み121hの連通口121iはダンパー孔121cの閉側端部において互いに対向する位置に配置される。
【0127】
図23に示す如く、摩擦部材471は窪み121fに嵌装され、摩擦部材472は窪み121hに嵌装される。このとき、摩擦部材471の外周面と窪み121fの内周面との間、および摩擦部材472の外周面と窪み121hの内周面との間には強い摩擦力が発生し、当該摩擦力により摩擦部材471・472はダンパー孔121cの閉側端部に固定され、回動部材120に対する摩擦部材471・472の軸線方向(本実施形態では、左右方向)の移動は規制される。
摩擦部材471が窪み121fに嵌装されたとき、摩擦部材471の一部は連通口121gを通じてダンパー孔121cの閉側端部に突出する。
摩擦部材472が窪み121hに嵌装されたとき、摩擦部材472の一部は連通口121iを通じてダンパー孔121cの閉側端部に突出する。
また、摩擦部材471の外径は連通口121gの幅よりも大きく、摩擦部材472の外径は連通口121iの幅よりも大きいので、摩擦部材471が窪み121fから連通口121gを通ってダンパー孔121cの長孔部分に移動したり(窪み121fから脱落したり)、摩擦部材472が窪み121hから連通口121iを通ってダンパー孔121cの長孔部分に移動したり(窪み121hから脱落したり)することはない。
【0128】
原稿圧着板13が閉じる方向に回動し(ヒンジ100の回動部材120がケース部材110に対して閉じる方向に回動し)、図23において二点鎖線で示す如くダンパーピン160がダンパー孔121cの閉側端部に到達したとき、ダンパーピン160(より詳細には、胴体部161)の外周面は「摩擦部材471の外周面のうち、連通口121gを通じてダンパー孔121cの閉側端部に突出する部分」および「摩擦部材472の外周面のうち、連通口121iを通じてダンパー孔121cの閉側端部に突出する部分」に当接する。
その結果、摩擦部材471・472および回動部材120のカム部121のうち窪み121f・121hの周囲となる部分は弾性変形し、ダンパーピン160と摩擦部材471・472との当接部分には摩擦力が発生し、原稿圧着板13が閉じる方向に回動する速度が遅くなる(緩和される)。
そのため、原稿圧着板13は本体12の上面に柔らかく(強い衝撃を伴わずに)当接するので、原稿圧着板13は緩やかに閉じられる。
【0129】
また、金属材料からなるダンパーピン160と金属材料からなる摩擦部材471・472との当接部分に摩擦力が発生するので、樹脂材料からなる二つの部材の当接部分に同じ大きさの摩擦力が発生する場合(従来のヒンジ)に比べて摩擦力の発生に関与する部材(ダンパーピン160および摩擦部材471・472)の摩耗を抑えることが可能であり、耐久性に優れる。
さらに、摩擦部材471・472が摩耗することによりダンパーピン160と摩擦部材471・472との当接部分に発生する摩擦力の大きさが変化した場合でも、摩耗した摩擦部材471・472を別の(新品の)摩擦部材471・472に交換することにより当該摩擦力の大きさを容易に元の状態に戻すことが可能である。
【0130】
以下では、図20の(b)および図24を用いて本発明に係る摩擦部材の第五実施形態である摩擦部材570について説明する。
【0131】
図20の(b)に示す如く、摩擦部材570はいわゆるスプリングピンである。
「スプリングピン」は例えばステンレス鋼板、バネ鋼板等の金属材料からなる板材に曲げ加工を施すことにより概ね円筒形状に成形されたものである。
スプリングピンにはその外周面と内周面とを連通する溝がスプリングピンの軸線方向において一端部から他端部まで切り通す形で形成される。
スプリングピンは、当該溝の幅を変化させることにより、スプリングピンの半径方向(軸線方向に垂直な方向)に弾性変形することが可能である。
【0132】
図1に示すヒンジ100に摩擦部材170に代えて摩擦部材570を適用する場合、図24に示す如く、回動部材120のダンパー孔121cの閉側端部における内周面には窪み121fが形成される。
窪み121fは連通口121gを通じてダンパー孔121cの閉側端部に連通する。
【0133】
図24に示す如く、摩擦部材570は窪み121fに嵌装される。このとき、摩擦部材570の外周面と窪み121fの内周面との間には強い摩擦力が発生し、当該摩擦力により摩擦部材570はダンパー孔121cの閉側端部に固定され、回動部材120に対する摩擦部材570の軸線方向(本実施形態では、左右方向)の移動は規制される。
摩擦部材570が窪み121fに嵌装されたとき、摩擦部材570の一部は連通口121gを通じてダンパー孔121cの閉側端部に突出する。
また、摩擦部材570の外径は連通口121gの幅よりも大きいので、摩擦部材570が窪み121fから連通口121gを通ってダンパー孔121cの長孔部分に移動する(窪み121fから脱落する)ことはない。
【0134】
原稿圧着板13が閉じる方向に回動し(ヒンジ100の回動部材120がケース部材110に対して閉じる方向に回動し)、図24において二点鎖線で示す如くダンパーピン160がダンパー孔121cの閉側端部に到達したとき、ダンパーピン160(より詳細には、胴体部161)の外周面は摩擦部材570の外周面のうち、連通口121gを通じてダンパー孔121cの閉側端部に突出する部分に当接する。
その結果、摩擦部材570および回動部材120のカム部121のうち窪み121fの周囲となる部分は弾性変形し、ダンパーピン160と摩擦部材570との当接部分には摩擦力が発生し、原稿圧着板13が閉じる方向に回動する速度が遅くなる(緩和される)。
そのため、原稿圧着板13は本体12の上面に柔らかく(強い衝撃を伴わずに)当接するので、原稿圧着板13は緩やかに閉じられる。
【0135】
また、金属材料からなるダンパーピン160と金属材料からなる摩擦部材570との当接部分に摩擦力が発生するので、樹脂材料からなる二つの部材の当接部分に同じ大きさの摩擦力が発生する場合(従来のヒンジ)に比べて摩擦力の発生に関与する部材(ダンパーピン160および摩擦部材570)の摩耗を抑えることが可能であり、耐久性に優れる。
さらに、摩擦部材570が摩耗することによりダンパーピン160と摩擦部材570との当接部分に発生する摩擦力の大きさが変化した場合でも、摩耗した摩擦部材570を別の(新品の)摩擦部材570に交換することにより当該摩擦力の大きさを容易に元の状態に戻すことが可能である。
【0136】
以下では、図21の(a)および図25を用いて本発明に係る摩擦部材の第六実施形態である摩擦部材670について説明する。
【0137】
図21の(a)に示す如く、摩擦部材670は摩擦部材670の軸線方向(本実施形態では左右方向)から見て上底および下低を有する台形状の棒である。
本実施形態の場合、摩擦部材670はステンレス鋼の角棒に適宜切削加工を施すことにより製造される。なお、摩擦部材670を別の金属材料で製造することも可能である。
【0138】
図1に示すヒンジ100に摩擦部材170に代えて摩擦部材670を適用する場合、図25に示す如く、回動部材120のダンパー孔121cの閉側端部における内周面には窪み121jが形成される。
窪み121jは連通口121kを通じてダンパー孔121cの閉側端部に連通する。
【0139】
図25に示す如く、摩擦部材670は窪み121jに嵌装される。このとき、「摩擦部材670の外周面のうち、台形の上底と下底とを繋ぐ二つの辺および下底に対応する外周面」と「窪み121jの内周面」との間には強い摩擦力が発生し、当該摩擦力により摩擦部材670はダンパー孔121cの閉側端部に固定され、回動部材120に対する摩擦部材670の軸線方向(本実施形態では、左右方向)の移動は規制される。
摩擦部材670が窪み121jに嵌装されたとき、摩擦部材670のうち「台形の上底に対応する部分」が連通口121kを通じてダンパー孔121cの長孔部分(回動ピン130の周方向に延びた形状の部分)に突出する。
また、摩擦部材670の軸線方向から見て摩擦部材670の台形の断面の下底に対応する辺の長さは連通口121kの幅よりも大きいので、摩擦部材670が窪み121jから連通口121kを通ってダンパー孔121cの長孔部分に移動する(窪み121jから脱落する)ことはない。
【0140】
原稿圧着板13が閉じる方向に回動し(ヒンジ100の回動部材120がケース部材110に対して閉じる方向に回動し)、図25において二点鎖線で示す如くダンパーピン160がダンパー孔121cの閉側端部に到達したとき、ダンパーピン160(より詳細には、胴体部161)の外周面は摩擦部材670の外周面のうち、連通口121kを通じてダンパー孔121cの閉側端部(長孔部分)に突出する部分に当接する。
その結果、摩擦部材670および回動部材120のカム部121のうち窪み121jの周囲となる部分は弾性変形し、ダンパーピン160と摩擦部材670との当接部分には摩擦力が発生し、原稿圧着板13が閉じる方向に回動する速度が遅くなる(緩和される)。
そのため、原稿圧着板13は本体12の上面に柔らかく(強い衝撃を伴わずに)当接するので、原稿圧着板13は緩やかに閉じられる。
【0141】
また、金属材料からなるダンパーピン160と金属材料からなる摩擦部材670との当接部分に摩擦力が発生するので、樹脂材料からなる二つの部材の当接部分に同じ大きさの摩擦力が発生する場合(従来のヒンジ)に比べて摩擦力の発生に関与する部材(ダンパーピン160および摩擦部材670)の摩耗を抑えることが可能であり、耐久性に優れる。
さらに、摩擦部材670が摩耗することによりダンパーピン160と摩擦部材670との当接部分に発生する摩擦力の大きさが変化した場合でも、摩耗した摩擦部材670を別の(新品の)摩擦部材670に交換することにより当該摩擦力の大きさを容易に元の状態に戻すことが可能である。
【0142】
以下では、図21の(b)および図26を用いて本発明に係る摩擦部材の第七実施形態である摩擦部材770について説明する。
【0143】
図21の(b)に示す如く、摩擦部材770は当接部771、中間部772および係止部773を有する。
本実施形態の場合、摩擦部材770はバネ鋼からなる金属板(板状の金属材料)を中途部の異なる二箇所で屈曲させることにより製造され、当該金属板の一端部から屈曲された二箇所の一方までの部分が当接部771に対応し、屈曲された二箇所で挟まれる部分が中間部772に対応し、屈曲された二箇所の他方から当該金属板の他端部までの部分が係止部773に対応する。なお、摩擦部材770を別の金属材料で製造することも可能である。
当接部771、中間部772および係止部773はいずれも一対の板面を有する。これらの一対の板面は摩擦部材770を製造するための出発材たる板状の金属板が有する一対の板面に対応する。
【0144】
中間部772の一端部(本実施形態では、中間部772の前端部)は当接部771の一端部(本実施形態では、上端部)に連なり、中間部772は当接部771に対して概ね垂直に屈曲される(中間部772の一対の板面が当接部771の一対の板面に対して概ね垂直となるように屈曲される)。
また、係止部773の一端部(本実施形態では、係止部773の上端部)は中間部772の他端部(本実施形態では、中間部772の後端部)に連なり、係止部773は中間部772に対して概ね垂直に屈曲される(係止部773の一対の板面が中間部772の一対の板面に対して概ね垂直となるように屈曲される)。
当接部771および係止部773は、中間部772に対して同じ側(本実施形態の場合、中間部772の下方)に突出する。
【0145】
図1に示すヒンジ100に摩擦部材170に代えて摩擦部材770を適用する場合、図26に示す如く、回動部材120のダンパー孔121cの閉側端部における内周面には窪み121mが形成される。窪み121mはダンパー孔121cの閉側端部における内周面連なる。窪み121mの形状はダンパー孔121cの貫通方向(本実施形態の場合、左右方向)から見てL字型に屈曲した形状である。
【0146】
図26に示す如く、摩擦部材770は窪み121mおよびダンパー孔121cの閉側端部に嵌装される。
より詳細には、摩擦部材770のうち、係止部773および中間部772において係止部773寄りとなる部分(本実施形態の場合、中間部772の後半部)は窪み121mに嵌装される。
また、摩擦部材770のうち、当接部771および中間部772において当接部771寄りとなる部分(本実施形態の場合、中間部772の前半部)はダンパー孔121cの閉側端部に嵌装される。
摩擦部材770が窪み121mおよびダンパー孔121cの閉側端部に嵌装されたとき、
係止部773の外側の板面(後側の板面)と窪み121mの内周面との間、および、当接部771の外側の板面(前側の板面)とダンパー孔121cの内周面との間には強い摩擦力が発生し、当該摩擦力により摩擦部材770はダンパー孔121cの閉側端部に固定され、回動部材120に対する摩擦部材770の軸線方向(本実施形態では、左右方向)の移動、およびダンパー孔121cの長手方向(回動ピン130の周方向)の移動は規制される。
【0147】
原稿圧着板13が閉じる方向に回動し(ヒンジ100の回動部材120がケース部材110に対して閉じる方向に回動し)、図26において二点鎖線で示す如くダンパーピン160がダンパー孔121cの閉側端部に到達したとき、ダンパーピン160(より詳細には、胴体部161)の外周面は摩擦部材770のうち、当接部771の内側の板面(本実施形態では、後側の板面)に当接する。
その結果、摩擦部材770、および回動部材120のカム部121のうち当接部771の周囲となる部分は弾性変形し、ダンパーピン160と摩擦部材770との当接部分には摩擦力が発生し、原稿圧着板13が閉じる方向に回動する速度が遅くなる(緩和される)。
そのため、原稿圧着板13は本体12の上面に柔らかく(強い衝撃を伴わずに)当接するので、原稿圧着板13は緩やかに閉じられる。
【0148】
また、金属材料からなるダンパーピン160と金属材料からなる摩擦部材770との当接部分に摩擦力が発生するので、樹脂材料からなる二つの部材の当接部分に同じ大きさの摩擦力が発生する場合(従来のヒンジ)に比べて摩擦力の発生に関与する部材(ダンパーピン160および摩擦部材770)の摩耗を抑えることが可能であり、耐久性に優れる。
さらに、摩擦部材770が摩耗することによりダンパーピン160と摩擦部材770との当接部分に発生する摩擦力の大きさが変化した場合でも、摩耗した摩擦部材770を別の(新品の)摩擦部材770に交換することにより当該摩擦力の大きさを容易に元の状態に戻すことが可能である。
【符号の説明】
【0149】
11 複合機(事務機器)
12 本体(第一連結対象物)
13 原稿圧着板(第二連結対象物)
100 ヒンジ
110 ケース部材(第一ウイング部材)
120 回動部材(第二ウイング部材)
121 カム部
121c ダンパー孔
130 回動ピン(回動軸)
140 スライダ(スライド部材)
150 バネ(付勢部材)
160 ダンパーピン(ダンパーピン部材)
170 摩擦部材(第一実施形態)
171 湾曲部
172 第一延長部
173 第二延長部
174 開口部
270 摩擦部材(第二実施形態)
370 摩擦部材(第三実施形態)
471・472 摩擦部材(第四実施形態)
570 摩擦部材(第五実施形態)
670 摩擦部材(第六実施形態)
770 摩擦部材(第七実施形態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一連結対象物に第二連結対象物を開閉可能に連結するヒンジであって、
前記第一連結対象物または前記第二連結対象物のいずれか一方に固定される第一ウイング部材と、
前記第一連結対象物または前記第二連結対象物のいずれか他方に固定され、前記第一ウイング部材に回動可能に連結され、カム部を有し、前記カム部には前記第一ウイング部材に対する回動軸の周方向に延びる円弧状の長孔であって前記カム部を前記回動軸の軸線方向に貫通するダンパー孔が形成され、前記カム部のうち少なくとも前記ダンパー孔の周囲となる部分は樹脂材料からなる第二ウイング部材と、
前記第一ウイング部材に支持されつつ、前記第二ウイング部材に接近する方向および前記第二ウイング部材から離間する方向に移動可能なスライド部材と、
前記スライド部材を前記第二ウイング部材に接近する方向に付勢して前記スライド部材を前記カム部に当接させることにより、前記第二連結対象物が前記第一連結対象物に対して開く方向に回動するように前記第二ウイング部材にトルクを付与する付勢部材と、
金属材料からなり、前記ダンパー孔に貫装され、両端部が前記第一ウイング部材に支持されるダンパーピン部材と、
金属材料からなり、前記ダンパー孔の閉側端部に嵌装され、前記ダンパー孔に貫装されたダンパーピン部材が前記ダンパー孔の閉側端部に到達したときに前記ダンパーピン部材に当接し、前記ダンパーピン部材との当接部分に摩擦力を発生させる摩擦部材と、
を具備するヒンジ。
【請求項2】
前記摩擦部材は、
半筒状に湾曲した湾曲部と、
基端部が前記湾曲部の一端部に連なる第一延長部と、
基端部が前記湾曲部の他端部に連なる第二延長部と、
を有し、
前記第一延長部の先端部および前記第二延長部の先端部が離間して開口部を成し、
前記ダンパー孔に貫装されたダンパーピン部材が前記ダンパー孔の閉側端部に到達したとき、前記ダンパーピン部材は前記開口部を通って前記第一延長部および第二延長部で挟まれる空間に収容され、前記ダンパーピン部材は前記第一延長部および前記第二延長部のうちいずれか一方または両方に当接する、
請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記ダンパー孔の閉側端部に一対の係合部が形成され、前記第一延長部の先端部および前記第二延長部の先端部が前記一対の係合部に係合する、
請求項1または請求項2に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記摩擦部材を前記ダンパー孔に嵌装したときに前記ダンパー孔に貫装された前記ダンパーピン部材の軸線方向に対応する前記湾曲部の端部には切り欠きが形成される、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のヒンジ。
【請求項5】
前記ダンパー孔の閉側端部における内周面には、連通口を通じて前記ダンパー孔の閉側端部に連通する窪みが形成され、
前記摩擦部材は前記窪みに嵌装され、
前記窪みに嵌装された前記摩擦部材の一部は前記連通口を通じて前記ダンパー孔の閉側端部に突出し、
前記ダンパー孔に貫装されたダンパーピン部材が前記ダンパー孔の閉側端部に到達したとき、前記ダンパーピン部材は前記摩擦部材において前記ダンパーピン孔の閉側端部に突出した部分に当接する、
請求項1に記載のヒンジ。
【請求項6】
前記摩擦部材は円柱形状である、
請求項5に記載のヒンジ。
【請求項7】
前記摩擦部材はスプリングピンである、
請求項5に記載のヒンジ。
【請求項8】
前記摩擦部材は前記摩擦部材の軸線方向から見て上底および下低を有する台形状の棒であり、
前記摩擦部材のうち前記台形の上底に対応する部分が前記連通口を通じて前記ダンパー孔の長孔部分に突出する、
請求項5に記載のヒンジ。
【請求項9】
前記ダンパー孔には、前記ダンパー孔の閉側端部における内周面に連なり、前記ダンパー孔の貫通方向から見てL字型に屈曲した窪みが形成され、
前記摩擦部材は、
板状の当接部と、
一端部が前記当接部の一端部に連なるとともに前記当接部に対して屈曲する板状の中間部と、
一端部が前記中間部の他端部に連なるとともに前記中間部に対して屈曲し、前記中間部に対して前記当接部と同じ側に突出する板状の係止部と、
を有し、
前記係止部および前記中間部において前記係止部寄りとなる部分は前記窪みに嵌装され、
前記当接部および前記中間部において前記当接部寄りとなる部分は前記ダンパー孔の閉側端部に嵌装され、
前記ダンパー孔に貫装されたダンパーピン部材が前記ダンパー孔の閉側端部に到達したとき、前記ダンパーピン部材は前記当接部に当接する、
請求項1に記載のヒンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−57663(P2012−57663A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199372(P2010−199372)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【出願人】(592264101)下西技研工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】