説明

ヒーター線

【課題】使用中のヒーター線の異常発熱によって生じる絶縁体の劣化に起因する発熱導体の断線及び断線時に発生するスパークを未然に防ぎ、迅速かつ安全な通電停止を行うことができるヒーター線を提供する。
【解決手段】被覆された発熱導体、被覆された検知導線及び露出した検知導線が全長に亘って内包するヒーター線であって、被覆された発熱導体は、巻き芯に発熱導体をスパイラル状に巻き付けた上にポリエステル樹脂を被覆した発熱導体であり、被覆された検知導線は、ナイロン樹脂被覆の検知導線であり、被覆された発熱導体と被覆された検知導線は、互いに撚り合わせて形成されてなり、露出した検知導線は、被覆された発熱導体と被覆された検知導線のいずれか一方の表面に旋回して巻き付けられてなり、被覆された発熱導体の異常発熱時の熱によって、検知導線のナイロン樹脂被覆が融解して、二つの検知導線が短絡したときに、その短絡を検知して、ヒーター線の電気回路を自動的に遮断する安全回路を設けたことを特徴とするヒーター線。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常発熱時には電流を直ちに遮断し、危険を防止することのできる暖房用ヒーター線に関する。
【背景技術】
【0002】
ホットカーペット、電気毛布など暖房器類に用いるヒーター線は、火災などの事故防止のため、異常発熱時の検知と通電停止する機能を有することが求められている。
事故原因として、例えば、ヒーター線が衝撃又は急角度の反復折り曲げを受けた場合などに、発熱導線に半断線状態が生じて半断線状態部分の断続的通電によって異常発熱を起こすことが挙げられる。そのため、ヒーター線の全長に沿って露出された検知導線を設け、この検知導線と異常発熱によって樹脂被覆が融解して露出した発熱導線との接触を通電回路によって感知し、発熱導線の断続的通電に起因する異常発熱を検知して、直ちに、自動的に発熱導線の通電停止機能を発揮することにより、発火事故を防止する方法が知られている。例えば、図4の従来技術の実施例の構成図に示すように、巻き芯1の外周に発熱導体2がスパイラル状に巻かれている。これを絶縁体8で被覆し、検知導線6がスパイラル状に巻かれている。さらに、外皮7で被覆したものがヒーター線となる。該ヒーター線が用いられている暖房機器の使用中に、異常発熱等の問題が発生した場合、異常発熱により絶縁体8が融解して発熱導体2に検知導線が接触することで検知回路が作動し通電を遮断する構成となっている。
特開平7−220854号公報には、巻き芯の外周に順次、発熱導体、熔断層、短絡信号線及び保護被覆層を設け、前記熔断層の樹脂の軟化又は熔断によって発熱導体と短絡信号線とが接触する熔断機能を有する構成が従来技術として知られている旨記載されている。この場合、発熱導体を被覆する樹脂の融点が190℃以下の樹脂では、発熱導体の使用中の正常の低温発熱時の表面温度においての樹脂の強度が問題となり、また、200℃以上の融点の被覆樹脂を使用すると、異常発熱時の樹脂の融解速度が遅いため通電停止機能が遅れる欠点がある。特に、ナイロン樹脂を被覆樹脂として用いた場合には、長期の使用期間(1年以上)の正常な低温加熱によって、ナイロンが劣化して、樹脂被覆にひび割れ又は切断が生じ、樹脂被覆が衝撃で破断又は折れ曲がり、断線又は突然のスパーク発火の原因となる(特許文献1)。
また、特開2005−183018号公報では、第一の発熱導体に融点175℃のポリアミドを被覆した発熱導体と第二の発熱導体に融点270℃のエチレン・4フッ化エチレンを被覆した戻り電線と検知導線に融点175℃のポリアミドを被覆した検知導線の3本の電線を互いに撚り合わせ外皮を被覆した構成において、手元部で第一の発熱導体と第二の発熱導体(戻り線)を電源に接続し、末端部で第一の発熱導体と第二の発熱導体(戻り線)を互いに接続することで発熱導体の通電における発生磁界を低減させる構成となっている。この場合に、異常発熱時に、第一の発熱導体及び検知導体に被覆された融点175℃のポリアミドが融け導体同士が短絡し、異常検知回路に電流が流れ、温度ヒューズを切断する仕組みになっている(特許文献2)。
しかし、この場合、第一の発熱導体に融点180℃のナイロンを被覆した発熱導体は、発熱導体による高温を常に接触しているため、比較的短期間の使用においても、ナイロンの劣化が起こる。ナイロンが劣化することにより伸び特性が無くなるため、使用による衝撃、圧力などの外力によってナイロンが割れ、発熱導体が引きちぎれ、その際、スパークが発生し、発生箇所の周囲を焦がしてしまう問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−220854号公報
【特許文献2】特開2005−183018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
使用中のヒーター線の異常発熱を迅速に検知し、かつ、使用時の正常な低温加熱における樹脂の劣化等に起因するヒーターの使用時における発熱導体の断線及び該断線時に発生するスパーク発火を未然に防ぎ、安全なヒーター線の使用及び異常時の通電停止を迅速に行うことができるヒーター線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、ヒーター線による発火事故防止手段について鋭意研究の結果、発熱導体を被覆している樹脂が融解することによりヒーター線の長手方向の全長に亘って設けられている検知導線と接触することで防止する方法では、発熱導体の被覆樹脂の融点が高い場合は、異常発熱の発見が遅れ、他方、被覆樹脂の融点が低い場合は、ヒーター使用時の低温加熱温度における耐久強度が劣り、さらに、ナイロン樹脂等の酸化されやすい樹脂の場合は、樹脂が劣化して、ヒビワレを生じ、断線を起こすという被覆樹脂の融点に関して二律背反の問題点を、発熱導体を被覆している樹脂は異常発熱時の初期段階では融解しない構成として、該初期段階で異常を検知する短絡用の検知導線を別に新設し、ヒーターとしての作用と短絡検知作用を、ヒーター線内で分離することによって、発火事故等を確実に防ぎ、異常発熱を初期の段階で感知できることを見出し、この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)被覆された発熱導体、被覆された検知導線及び露出した検知導線が全長に亘って内包するヒーター線であって、被覆された発熱導体は、巻き芯に発熱導体をスパイラル状に巻き付けた上にポリエステル樹脂を被覆した発熱導体であり、被覆された検知導線は、ナイロン樹脂被覆の検知導線であり、被覆された発熱導体と被覆された検知導線は、互いに撚り合わせて形成されてなり、露出した検知導線は、被覆された発熱導体と被覆された検知導線のいずれか一方の表面に旋回して巻き付けられてなり、被覆された発熱導体の異常発熱時の熱によって、検知導線のナイロン樹脂被覆が融解して、二つの検知導線が短絡したときに、その短絡を検知して、ヒーター線の電気回路を自動的に遮断する安全回路を設けたことを特徴とするヒーター線、
(2)被覆された発熱導体がヒーター線の末端基部で折り返されて、ヒーター線に2本の被覆された発熱導体が内包されているヒーター線である第(1)項記載のヒーター線、及び、
(3)被覆された検知導線が、巻き芯に検知導線をスパイラル状に巻き付けた上にナイロン樹脂を被覆したものである第(1)又は(2)項記載のヒーター線、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
発熱導体の異常発熱によって発熱導体を被覆している約220℃の融点のポリエステル樹脂の表面が180℃以上に発熱したときに、ヒーター線の長手方向の全長に亘って設けられている被覆された検知導線の融点約180℃のナイロン被覆樹脂の異常発熱箇所が融解して、融解箇所の内部の検知導線が露出した検知導線とが接触することによって、発熱導体を被覆しているポリエステル樹脂が融解するより前の早い時点で異常を感知してヒーター線の回路を遮断できる。また、ヒーター使用時に、検知導線には電流が流れないので、検知導線が発熱導体の通電時に発熱することがなく、検知導線のナイロン被覆樹脂の劣化等に基づく検知導線の断線事故を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施例の一態様の構成図である。
【図2】本発明の実施例の一態様の構成図である。
【図3】本発明の実施例の一態様の構成図である。
【図4】従来技術の実施例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に用いる発熱導体は、ヒーターの発熱源となる導線であり、断面寸法0.005〜0.2mm2程度の金属線で、発熱導体の単位長さ(cm)当たり、抵抗値0.002〜5Ω程度になるようにスパイラル状に絶縁材質の巻き芯に巻き付けて使用することができる。スパイラル状に巻くのは、発熱導体の単位長さ当たりの発熱量(抵抗値0.002〜5Ωに対応)を増加するためであり、また、ヒーター線の反復屈曲に対して、発熱導体が断線しない効果がある。金属線の材質としては、ヒーター線として使用されている公知の金属線は特に制限無く使用できるが、経済的で、電気抵抗が少なく、柔軟性を有する銅が最も好ましい。
本発明に用いる検知導線は、金属線であればよく、短絡用検知導線と接触したときに瞬間的に電流が流れるので、金属の種類にかかわらず、どのような金属でも使用することができる。特に、細い金属線にしたときに、屈曲、圧縮又は衝撃によって、断線しない耐屈曲性と耐衝撃性のよい金属線が好ましい。特に好ましいのは、繰り返し屈曲性に優れている点で、純ニッケル線などが好ましい。また、ヒーターの使用時においては、短絡用検知導線には電流は流れないので、異常時にのみに通電される点で、異常検知回路をヒーターの発熱回路に組み込む場合は、発熱導体よりも抵抗が大きい金属の方が望ましいこともある。
本発明に用いる短絡用検知導線は、ヒーター線の単位長さ当たりの抵抗値を維持するための制約がないため耐屈曲性が大きく、折り曲げ断線し難い金属線を使用することができる。そして、発熱導体のように、スパイラル状にすることが望ましいが、被覆された短絡用検知導線の場合は、巻き芯を用いないで使用することもできる。
本発明の発熱導体を被覆する樹脂は、融点が高く、耐屈曲性が大きく、化学的に安定な樹脂が望ましく、薄い樹脂被覆でも強度がある樹脂が望ましく、この観点から本発明では、広く用いられている融点約220℃のポリエステル樹脂を用いる。本発明のポリエステル樹脂には、一般にポリエステル系樹脂と称される樹脂であって、融点が約220℃、すなわち融点約200℃以上の樹脂は含まれる。例えば、融点210℃のポリエステル系樹脂エラストマーなどが柔軟性があるので好適に使用することができる。
本発明の短絡用検知導線4を被覆する樹脂は、ポリエステル樹脂3によって被覆された発熱導体2の異常発熱時に、ポリエステル樹脂3が融解するより前に、融解することによって、異常発熱を早く検知するものであり、ポリエステル樹脂3の融点よりも20℃以上低い融点の樹脂を使用する必要がある。しかし、ヒーターの使用中の正常加熱において低温加熱される。この低温加熱の条件で、短絡用検知導線4を被覆する樹脂が強度を保持するためには、融点の高い樹脂が求められる。この観点から本発明では、広く用いられている融点約180℃のナイロン樹脂を用いた。本発明の短絡用検知導線4を被覆するナイロン樹脂5には、一般にナイロン系樹脂と称される樹脂であって、融点が約180℃、すなわち約180℃以下のナイロン系樹脂が含まれる。
本発明に用いるヒーター線の電気回路を自動的に遮断する安全回路としては、公知の安全回路を特に制限無く使用することができる。
本発明のヒーター使用時の二つの検知導線が異常時の加熱によって、短絡したときにその短絡を検知して、ヒーター線の電気回路を自動的に遮断する公知の安全回路として、例えば、一方の短絡用検知導線4を発熱導体2の電源に接続し、他方の検知導線6を、フューズボックスFに接続して、短絡したときに、フューズボックスFのフューズfが飛んで、ヒーターの回路全体が遮断される構成とすることができる。
本発明の一態様の図1には、ポリエステル樹脂3で被覆された発熱導体2と、ナイロン樹脂5で被覆された短絡用検知導線4及び露出した検知導線6を全長に亘って内包するヒーター線が示されている。
図1では、検知導線6を短絡用検知導線4のナイロン樹脂5で被覆した表面に直接スパイラル状に巻き付けているので、発熱導体に異常発熱が発生して、短絡用検知導線4のナイロン樹脂5が融解した場合は、直ちに、検知導線6と短絡用検知導線4が接触して、検知器に電流が流れて、異常を検知して、通電を停止できる。
【0009】
図1において、発熱導体2に異常発熱が発生しても、発熱導体2を被覆しているポリエステル樹脂3が溶解するより先に、短絡用検知導線4を被覆しているポリエステルより融点が低いナイロン樹脂5が融解して、短絡用検知導線4は、ナイロン樹脂5の表面にあった検知導線6に接触する。発熱導体2はポリエステル樹脂3で被覆されているため短絡用検知導線4及び検知導線6に接触することはない。
そして、異常発熱を検知導線6と短絡用検知導線4の接触により異常検知回路で検知したときに通電が停止されるので、発熱導体2のポリエステル樹脂被覆が溶解することはない。
検知導線6が短絡用検知導線4の表面にスパイラル状に巻かれていて、互いに撚り合わせられている構造によって、異常発熱が発生する箇所がヒーター線の全長のどこであっても、必然的に異常発生箇所の短絡用検知導線4と検知導線6が接触することになる。
本発明の発熱導体2を被覆しているポリエステル樹脂3は、ヒーター線に必要な柔軟性を有し、反復屈折に対して耐えられる強度を有し、発熱導体2によって直接加熱されても、定常の加熱温度で化学的に安定であるので、発熱導体2の被覆樹脂として好適である。
一方、検知導線の被覆は、低温加熱においては化学的に安定であり、強度も維持していて、ナイロン樹脂を好適に使用することができる。
本発明の短絡用検知導線4を被覆しているナイロン樹脂5は、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などのポリアミド類などの合成樹脂製のものを使用することができる。特に、ナイロン12を好適に使用することができる。
本発明に用いる発熱導体2の直径は、暖房用具用ヒーター線の仕様に応じて適宜選択することができる。両者の直径は同一が望ましいが、通常は、直径0.5〜10mmのものを使用することができる。
本発明の巻き芯に用いる材質は、巻き芯の使用に耐えられる剛性と柔軟性がある絶縁材料であれば、いかなる材質も使用することができる。通常、直径0.6mmの樹脂線を使用することができる。この場合、樹脂は、熱硬化性樹脂でもある程度の柔軟性があれば使用することができる。
本発明のヒーター線の最外側の外皮7に用いる材質は、通常電線の外側被覆に用いるものであれば、布製、樹脂製又はゴム製のいずれも特に制限なく用いることができる。樹脂を用いる場合は、屈曲性がある比較的融点が高い熱可塑性樹脂又は屈曲性がある熱硬化性樹脂が望ましい。
被覆された発熱導体2は、巻き芯1に発熱導体2をスパイラル状に巻き付けた上にポリエステル樹脂3を被覆して形成されていて、発熱導体2の両端に電圧を印加することによって、連続的正常発熱のヒーター線の加温を行うことができる。被覆された短絡用検知導線4は、ナイロン樹脂5が被覆されていて、短絡用検知導線4の両端は電源に繋がっている。短絡用検知導線4の両端に電源を繋いでいるのは、万一短絡用検知導線4が断線した場合にどちらの末端からも接続されるように配慮しているのと通常運転では、短絡用検知導体に電流を流さない為である。露出した検知導線6は、被覆された短絡用検知導線4のナイロン樹脂5の表面に、スパイラル状に巻いている。短絡用検知導線4の両端は、異常検知回路にまとめられて接続され異常発熱を検知することができる。
本発明に用いる公知の異常検知回路は、図2に示す態様が考えられる。
回路図における発熱導体2の抵抗は70Ωであり、70Ωの発熱導体2に、電源Dによって、100Vの電源が接続され、スイッチSを接続すると、発熱導体2が加熱され、ヒーターの定常加熱が開始される。
図1及び図2の検知導線は、二つの検知導線を合わせて、500〜1100Ωの抵抗を有する導線である。材質は、短絡用検知導線4は銅線であり、検知導線6はニッケル線である。ナイロン被覆の短絡用検知導線4の両端は、図2に示すように、発熱導体2の一方の端末と同一電圧の回路に接続されているので、ヒーターの定常加熱時には、検知導線6に電流は流れないので加熱されることはない。
一方、露出している検知導線6の両末端は、まとめられて、C点で合一して、フューズボックスFに接続されるとともに、分岐点Pで分岐して、ナイロン被覆の短絡用検知導線4の両端と同様に、発熱導体2の一方の端末の回路に、100000Ωの抵抗R1を介在させて接続されている。フューズボックスFに接続された検知導線6は、470Ωの抵抗R2を介して、発熱導体2の他方の末端基の回路に、Q点で接続されている。そして、470Ωの抵抗R2に対向してフューズfが設置され、フューズfは、図2に示すように発熱導体2の回路に接続している。
図2の回路において、スイッチSを接続し、発熱導体2が加熱され、ヒーターの定常加熱が継続しているときは、100000Ωの抵抗R1があるので、検知導線6には電流は殆ど流れない。
定常加熱状態では、電流は、電源Dから発熱導体2、スイッチS、Q点、フューズfを経由して、電源Dに戻るのみである。従って、短絡用検知導線4及び検知導線6のいずれにも電流は流れないので、短絡用検知導線4を被覆しているナイロン樹脂5が、短絡用検知導線4及び検知導線6によって、加熱されることもなく、発熱導体2の直接加熱にさらされることはない。
この状態で、発熱導体2に異常発熱が発生して、発熱導体2の周辺の温度が180℃以上になったときに、その温度は速やかに、ナイロン被覆に伝達され、ナイロンは融解して短絡用検知導線4と検知導線6は、この融解箇所で短絡する。短絡したときは、フューズボックスF内の抵抗R2に電流が流れて、その加熱によってフューズfが融解して、発熱回路全体の通電が遮断される。
【0010】
図3は、本発明の実施例の他の態様の構成図である。図3は、図1において、発熱導体2が一本のみとなっている構成を、発熱導体2を終端部で折り返した第二発熱導体9の二本の構成とした以外は、図1と同一である。
図3の発熱導体2及び第二発熱導体9は、ヒーター線の手元側の電源と接続している。電源D−発熱導体2−第二発熱導体9−電源Dの回路を形成している。この発熱導体の形態以外は、図1と構成は同一である。
発熱導体2及び第二発熱導体9は、巻き芯1に発熱導体2及び第二発熱導体9がスパイラル状に巻かれて、ポリエステル樹脂3によって被覆して形成されている。巻き芯1に発熱導体2がスパイラル状に巻かれて、融点220℃のポリエステル樹脂3によって被覆して形成されている。
短絡用検知導線4のナイロン樹脂5の表面には、直径0.08mmのニッケル製検知導線6がスパイラル状にピッチ間隔0.75mmで巻き付けられている。検知導線6は、ナイロン樹脂5の表面に食い込むように巻き付いているので、検知導線6つき短絡用検知導線4は、一体的電線として取り扱える。そして、検知導線6は、短絡用検知導線4のナイロン樹脂5の全長に亘って、密着している。
この撚り合わせた複合電線の表面を、塩化ビニル樹脂で被覆して、直径3.25mmのヒーター線を形成している。
本実施例では、発熱導体2及び第二発熱導体9は同一の断面寸法0.045×0.3mmの銅合金平角線を使用している。そして巻き芯1は、ポリエステル製の直径0.75mmのモノフィラメントを用いている。
発熱導体2の発熱導体は、ヒーター線の長さ当たりの抵抗を0.1043Ω/cmになるように、スパイラル状の巻きピッチを調整し、第二発熱導体9の電線は、0.0501Ω/cmになるように、巻きピッチを調整して第二発熱導体9の電線の発熱量を発熱導体2の電線より少し低くなるようにした。巻きピッチの間隔によって、発熱導体2及び第二発熱導体9の全長が決まり、発熱量も決まる。
ナイロン樹脂5で被覆された短絡用検知導線4には、検知導線6がスパイラル状に巻き付けてあり、発熱導体2及び第二発熱導体9に異常発熱が発生してナイロン樹脂5が融解して、短絡用検知導線4が露出した場合に、直ちに、検知導線6に接触して、通電されて異常を検知できる。
被覆された発熱導体2の及び第二発熱導体9の電線と被覆された短絡用検知導線4の電線は、互いに強く密着して撚り合わせられている。
そして、被覆された発熱導体2及び第二発熱導体9の電線に異常が発生した場合、ポリエステル樹脂3より融点の低いナイロン樹脂5が先に異常発熱の熱によって融解する。そのため、短絡用検知導線4が先に露出し、検知導線6に接触する。被覆された発熱導体2及び第二発熱導体9の電線のポリエステル樹脂3が融解して、発熱導体2又は第二発熱導体9が露出して、検知導線6に接触する前に、短絡用検知導線4と接触した検知導線6の信号を受けた検知器によって、通電が停止されるので、発熱導体2又は第二発熱導体9との接触はしない。この接触が起こると、スパーク等が発生する。
本発明による被覆された短絡用検知導線4の電線を設けることにより、通電している発熱導体2及び第二発熱導体9との接触が避けられるため、安全かつ確実に通電を停止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明は、暖房用ヒーター線を用いる暖房機器分野において、火災発生を予防する安全なヒータとして有用に利用できる。
【符号の説明】
【0012】
1 巻き芯
2 発熱導体
3 ポリエステル樹脂
4 短絡用検知導線
5 ナイロン樹脂
6 検知導線
7 外皮
8 絶縁体
9 第二発熱導体
D 電源
S スイッチ
F フューズボックス
f フューズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆された発熱導体、被覆された検知導線及び露出した検知導線が全長に亘って内包するヒーター線であって、被覆された発熱導体は、巻き芯に発熱導体をスパイラル状に巻き付けた上にポリエステル樹脂を被覆した発熱導体であり、被覆された検知導線は、ナイロン樹脂被覆の検知導線であり、被覆された発熱導体と被覆された検知導線は、互いに撚り合わせて形成されてなり、露出した検知導線は、被覆された発熱導体と被覆された検知導線のいずれか一方の表面に旋回して巻き付けられてなり、被覆された発熱導体の異常発熱時の熱によって、検知導線のナイロン樹脂被覆が融解して、二つの検知導線が短絡したときに、その短絡を検知して、ヒーター線の電気回路を自動的に遮断する安全回路を設けたことを特徴とするヒーター線。
【請求項2】
被覆された発熱導体がヒーター線の末端基部で折り返されて、ヒーター線に2本の被覆された発熱導体が内包されているヒーター線である請求項1記載のヒーター線。
【請求項3】
被覆された検知導線が、巻き芯に検知導線をスパイラル状に巻き付けた上にナイロン樹脂を被覆したものである請求項1又は2記載のヒーター線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−238437(P2011−238437A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108080(P2010−108080)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(594096885)荏原電線株式会社 (4)
【Fターム(参考)】