説明

ピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物を含有する接着性組成物

【解決手段】一般式(1)


(R1及びR2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基で各々同一又は異なっていてもよい。nは0〜2の整数である。)
で示されるピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物を含有する接着性組成物。
【効果】本発明によれば、上記ピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物を含有する接着性組成物を用いることにより、2種類以上の異なる材料の密着性を高め、それらを含む複合材料に高い機械的特性や耐熱性を付与することが出来る。また、上記有機ケイ素化合物は単一分子であるため、使用する際の効果のバラツキが小さく、信頼性の高い複合材料が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子・半導体、航空機、自動車、スポーツ用品、土木、建築等の分野において、高強度、耐久性が求められる材料において優れた接着性を与える組成物に関する。更に詳しくは、分子内にピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物を含有する接着性組成物に関するものである。また、本発明は、この接着性組成物を用いた各種材料に関する。
【背景技術】
【0002】
以前、本発明者はアルキルピペラジニルアルキルアルコキシシランを用いることで、2種類以上の異なる材料、例えば高分子材料と金属化合物、高分子材料とガラスや炭素といった繊維の密着性を向上し、これらを用いた複合材料の強度、耐熱性、電気的特性、耐久性等がよくなることを見出していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−143881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のアルキルピペラジニルアルキルアルコキシシランは、ケイ素部位の加水分解性基は有するものの、その他の反応性官能基は有していないため、2種類以上の化合物の密着性を向上させる際に、不十分な場合があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ケイ素部位以外に潜在的な反応性官能基を有する有機ケイ素化合物を含有する接着性組成物を使用することで異なる材料同士の密着性を高めた接着性組成物及びこれを用いた各種材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)
【化1】


(式中、R1及びR2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基で各々同一又は異なっていてもよい。nは0〜2の整数である。)
で示されるピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物を含有する接着性組成物を用いることで2種類以上の異なる材料の密着性が非常に向上することがわかった。また、上記一般式(1)の有機ケイ素化合物は単一分子であるため、使用した際の効果のバラツキが小さく、信頼性の高い複合材料が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
即ち、本発明は下記有機ケイ素化合物を含有する接着性組成物及び各種材料を提供する。
請求項1:
下記一般式(1)
【化2】

(式中、R1及びR2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基で各々同一又は異なっていてもよい。nは0〜2の整数である。)
で示されるピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物を含有する接着性組成物。
請求項2:
更に、前記有機ケイ素化合物を溶解する溶剤を含有する請求項1記載の接着性組成物。
請求項3:
更に、前記有機ケイ素化合物を溶解する重合性モノマーを含有する請求項1又は2記載の接着性組成物。
請求項4:
更に、前記有機ケイ素化合物を溶解するポリマーを含有する請求項1又は2記載の接着性組成物。
請求項5:
更に、前記溶剤に溶解する重合性モノマーを含有する請求項2記載の接着性組成物。
請求項6:
更に、前記溶剤に溶解するポリマーを含有する請求項2記載の接着性組成物。
請求項7:
更に、無機又は有機フィラーを含有する請求項1〜6のいずれか1項記載の接着性組成物。
請求項8:
請求項1又は2記載の接着性組成物にて表面処理された無機又は有機フィラー。
請求項9:
請求項1又は2記載の接着性組成物にて表面処理された金属部材。
請求項10:
請求項3又は5記載の接着性組成物中の重合性モノマーを重合することによって得られたポリマー。
請求項11:
請求項3又は5記載の接着性組成物中の重合性モノマーを無機又は有機フィラーの分散下に重合することによって得られたポリマーと無機又は有機フィラーとの複合体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記ピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物を含有する接着性組成物を用いることにより、2種類以上の異なる材料の密着性を高め、それらを含む複合材料に高い機械的特性や耐熱性を付与することが出来る。また、上記有機ケイ素化合物は単一分子であるため、使用する際の効果のバラツキが小さく、信頼性の高い複合材料が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】合成例1で得られた化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図2】合成例1で得られた化合物のIRスペクトルである。
【図3】合成例2で得られた化合物の1H−NMRスペクトルである。
【図4】合成例2で得られた化合物のIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で使用するピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)で示される。
【化3】


(式中、R1及びR2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基で各々同一又は異なっていてもよい。nは0〜2の整数である。)
【0011】
上記一般式(1)において、R1及びR2は炭素数1〜10、好ましくは1〜6の1価炭化水素基であり、直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基等が挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ビニル基、アリル基、メタリル基、ブテニル基等が例示される。
【0012】
一般式(1)で示される化合物としては、具体的には、2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2,2−ジエトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2−メトキシ−2−メチル−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2−エトキシ−2−メチル−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2,2−ジメチル−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2−メトキシ−2−エチル−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2−エトキシ−2−エチル−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン、2,2−ジメチル−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタン等が挙げられる。
【0013】
一般式(1)を含有する接着性組成物としては、例えば、一般式(1)で示されるピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物と無機材料、一般式(1)で示されるピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物と低分子材料、一般式(1)で示されるピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物と高分子材料、一般式(1)で示されるピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物と溶剤等が挙げられ、それぞれ単独又は混合組成物としても使用できる。また、一般式(1)で示されるピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物と上記材料や溶剤が反応を伴って結合してもよい。
【0014】
接着性組成物中に含有する一般式(1)の量に特に制限はないが、含有量が少なすぎると効果が低くなり、含有量が多すぎると経済的に不利になる場合があるため、好ましくは0.001〜50質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0015】
更に詳しくは、上記一般式(1)の有機ケイ素化合物は、溶剤に溶解して使用することが好ましい。この場合、上記溶剤としては、特に制限はないが、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド等の非プロトン性極性溶剤、アルコール、水等のプロトン性極性溶剤、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤等が例示される。これらの溶剤は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。また、pH調整剤として、酸又は塩基を使用してもよい。
【0016】
なお、上記一般式(1)の有機ケイ素化合物は、上記溶剤中に0.001〜50質量%、特に0.1〜10質量%の濃度で溶解していることが接着性向上とコストの両立という点で好ましい。
【0017】
また、本発明の接着性組成物は、上記有機ケイ素化合物を溶解する及び/又は上記溶剤に溶解する重合性モノマー(低分子材料)を含有することができる。低分子材料としては、分子量が1,000以下の化合物が挙げられ、特に制限はないが、官能基を有する場合は、例えば、ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、シアノ基、スルホニル基、ニトロ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、シリル基、スルフィド結合、アミド結合、ウレア結合、エステル結合、シロキサン結合、ビニル基、アクリル基といったラジカル重合性基、環状エーテル基、ビニルエーテル基といったカチオン重合性基、ノルボルネニル基、ジシクロペンタジエニル基といった開環メタセシス重合性基等を挙げることができ、これら官能基の数に制限はない。これらの低分子材料は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0018】
具体的には、炭素数1〜50の炭化水素であって、鎖状、分岐状、環状構造や芳香族を含んでもよく、また、炭化水素の水素原子の一部又は全部が置換されていてもよい。該置換基としては、具体的には、ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、シアノ基、スルホニル基、ニトロ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、アルキルシリル基、アルコキシシリル基、ビニル基、アクリル基といったラジカル重合性基、環状エーテル基、ビニルエーテル基といったカチオン重合性基、ノルボルネニル基、ジシクロペンタジエニル基といった開環メタセシス重合性基等が挙げられ、スルフィド結合、アミド結合、ウレア結合、エステル結合、シロキサン結合を含んでもよく、これらの官能基を複数含有してもよい。
低分子材料の配合量は、組成物中好ましくは99質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは1〜30質量%である。
【0019】
更に、本発明の接着性組成物は、上記溶剤と共にこの溶剤に溶解するポリマー(高分子材料)を含有することができる。この高分子材料としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000超、好ましくは1,000超〜10万、特に2,000〜5万の高分子化合物が好ましい。この場合、上記高分子材料としては、特に制限はないが、官能基を有する場合は、例えば、ヒドロキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、シアノ基、スルホニル基、ニトロ基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、シリル基、スルフィド結合、アミド結合、ウレア結合、エステル結合、シロキサン結合、ビニル基やアクリル基といったラジカル重合性基、環状エーテル基やビニルエーテル基といったカチオン重合性基、ノルボルネニル基やジシクロペンタジエニル基といった開環メタセシス重合性基等を挙げることができ、これら官能基の数に制限はなく、これら官能基を反応させることで得た高分子材料も含まれる。これらの高分子材料は1種を単独で使用してもよく、あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0020】
具体的には、たんぱく質、核酸、脂質、多糖類、天然ゴム等の天然高分子材料やフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、ニトリル樹脂、イソプレン樹脂、ウレタン樹脂、エチレンプロピレン樹脂、エピクロルヒドリン樹脂、クロロプレン樹脂、ブタジエン樹脂、スチレン・ブタジエン樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン等の合成高分子材料が挙げられ、これらの共重合体、ポリマーアロイ等を用いることができる。
高分子材料の配合量は、組成物中好ましくは99質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは1〜30質量%である。
【0021】
本発明の接着性組成物には、無機又は有機フィラーを含有でき、それらは粉粒状、ウイスカー状、繊維状、板状等、いずれの形状でもよい。この場合、無機フィラーとしては、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硼化物、金属水酸化物、炭素、ガラス、セラミックス等が挙げられ、上記金属としては、鉄、銅、チタン、マグネシウム、アルミニウム、スズ、亜鉛、ケイ素等が例示される。また、有機フィラーとしては、上記合成高分子化合物の繊維、粉粒物等が挙げられる。なお、フィラーの形状が繊維状の場合、その製品形態に限定されない。繊維製品は多岐にわたるが、例えば、繊維径が3〜50μmの糸(フィラメント)の繊維束、撚糸、織物を挙げることができる。
フィラーの配合量は、組成物中50質量%以下、特に1〜30質量%が好ましい。
【0022】
本発明の効果を損なわない範囲であれば、接着性組成物中に、顔料、消泡剤、潤滑剤、防腐剤、pH調節剤、フィルム形成剤、帯電防止剤、抗菌剤、界面活性剤、染料、重合開始剤、重合促進剤等から選択される他の添加剤の1種以上を含有するものであってもよい。
【0023】
本発明の接着性組成物、特に一般式(1)の有機ケイ素化合物を溶剤に溶解したものは、無機又は有機フィラーの表面処理に有効に用いられるほか、金属部材の表面処理にも有効に用いられる。この場合、金属部材としては、金属板、金属粒子、金属繊維等が挙げられる。なお、フィラーの種類、金属の種類は上述したものが例示される。このように処理したフィラーは、例えばプラスチックやゴム中に配合され、上記一般式(1)の有機ケイ素化合物がフィラー表面に存在していることにより、プラスチックやゴムとフィラーとの間の接着性を支持、向上させる。また、処理された金属板等の金属部材は、例えば自動車の製造等において、プラスチックやゴムと金属とを貼り合わせるときに金属部材表面に存在する一般式(1)の有機ケイ素化合物が接着剤として作用する。
【0024】
また、上述した重合性モノマーを含有する接着性組成物の場合は、該重合性モノマーを重合することにより、一般式(1)の有機ケイ素化合物を含有するポリマーが得られる。この場合、この重合性モノマーを含有する接着性組成物に上述したフィラー(このフィラーは一般式(1)の有機ケイ素化合物で表面処理されていなくても表面処理されていてもよい)を配合し、該モノマーを重合することにより、ポリマー中にフィラーが分散したポリマーとフィラーとの複合体が得られる。
【0025】
更に、溶剤にポリマー(高分子材料)が溶解され、かつ一般式(1)の有機ケイ素化合物が含有された接着性組成物は、例えば塗料として有効に用いられる。
【実施例】
【0026】
以下、合成例、実施例、応用例及び比較応用例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0027】
[合成例1]2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンの合成
撹拌機、還流器、滴下ロート及び温度計を備えたフラスコに、メチルピペラジン30g(0.30モル)を仕込み、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン71g(0.30モル)を85〜95℃で4時間かけて滴下し、その温度で2時間撹拌して、透明な反応液を得た。得られた反応液を蒸留することで、沸点140〜142℃/0.4kPaの透明留分を39g得た。
【0028】
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶剤)、IRスペクトルを測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図1には1H−NMRスペクトルのチャート、図2にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 304,273,234,139,113
以上の結果より、得られた化合物は2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンであることが確認された。
【0029】
[実施例1]2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンを含有したメタノール組成物
内容量100mlのビーカーにメタノール20gを入れ、撹拌しながら、2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンを20g添加し、均一に溶解させてメタノール組成物を得た。得られたメタノール組成物は、室温で1ヶ月以上均一で透明なまま保存可能であった。
【0030】
[合成例2]2,2−ジエトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンの合成
合成例1において、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの代わりにγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを用いて反応液を得た。得られた反応液を蒸留することで、沸点145〜147℃/0.2kPaの透明留分を40g得た。
【0031】
得られた留分の質量スペクトル、1H−NMRスペクトル(重クロロホルム溶剤)、IRスペクトルを測定した。質量スペクトルの結果を下記に示す。また、図3には1H−NMRスペクトルのチャート、図4にはIRスペクトルのチャートを示した。
質量スペクトル
m/z 332,287,262,139,113
以上の結果より、得られた化合物は2,2−ジエトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンであることが確認された。
【0032】
[実施例2]2,2−ジエトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンを含有したエタノール組成物
内容量100mlのビーカーにエタノール20gを入れ、撹拌しながら、2,2−ジエトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンを20g添加し、均一に溶解させてエタノール組成物を得た。得られたエタノール組成物は、室温で1ヶ月以上均一で透明なまま保存可能であった。
【0033】
[実施例3]2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンを含有した水組成物
内容量100mlのビーカーに水20gを入れ、撹拌しながら、2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンを20g添加し、均一に溶解させて水組成物を得た。得られた水組成物は、室温で1ヶ月以上均一で透明なまま保存可能であった。
【0034】
[実施例4]2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンを含有した水・メタノール混合組成物
内容量100mlのビーカーに水20g、メタノール20gを入れ、撹拌しながら、2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンを20g添加し、均一に溶解させて水・メタノール混合組成物を得た。得られた水・メタノール混合組成物は、室温で1ヶ月以上均一で透明なまま保存可能であった。
【0035】
[実施例5]2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンを含有したメタクリル酸メチル組成物
内容量100mlのビーカーにメタクリル酸メチル20gを入れ、撹拌しながら、2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンを1g添加し、均一に溶解させてメタクリル酸メチル組成物を得た。得られたメタクリル酸メチル組成物は、室温で1ヶ月以上均一で透明なまま保存可能であった。
【0036】
[実施例6]2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンを含有したシロキサン組成物
内容量100mlのビーカーにポリジメチルシロキサン(信越化学工業(株)製KF96 100cs)20gを入れ、撹拌しながら、2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンを1g添加し、均一に溶解させてシロキサン組成物を得た。得られたシロキサン組成物は、室温で1ヶ月以上均一で透明なまま保存可能であった。
【0037】
[実施例7]2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンで処理した銅板
内容量100mlのビーカーに水100gを入れ、撹拌しながら、2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンを1g添加し、均一に溶解させて水組成物を得た。この水組成物に約20mm×50mmの銅板を30分間浸漬し、取り出した後、オーブン中で70℃にて2時間乾燥することによって表面処理銅板を得た。
【0038】
[実施例8]2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンで処理したガラス繊維。
内容量100mlのビーカーに水100gを入れ、撹拌しながら、2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンを1g添加し、均一に溶解させて水組成物を得た。この水組成物に約300mmの長さに切断したガラス繊維(直径約23μm)を30分間浸漬し、取り出した後、オーブン中で70℃にて2時間乾燥することによって表面処理ガラス繊維を得た。
【0039】
[応用例]
接着性の測定法
ガラス繊維に付着した樹脂ドロップ(マイクロドロップレット)を固定し、ガラス繊維を引き抜くときの最大荷重を求め、これからガラスと樹脂との界面せん断強度を測定した。測定には、複合材界面特性評価装置HM410(東栄産業(株)製)を用いた。
界面せん断強度は、用いたガラス繊維の直径及び樹脂ドロップの長さ、引き抜き最大荷重から以下の式で求めた。
界面せん断強度(N/m2)=最大引き抜き荷重/(π×繊維直径×ドロップ長さ)
無処理のガラス繊維サンプルを用いて得られた界面せん断強度を100とした場合における、表面処理ガラス繊維サンプルの相対界面せん断強度を求めた。数値が大きい程接着性が優れる。
【0040】
試験片の作製に用いた樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパン エポキシ レジン(株)製エピコート828)100gに対し、硬化剤としてトリエチレンテトラミン11gを混合したものである。硬化条件は80℃で90分、100℃で120分とした。
【0041】
[応用例1]
実施例8で得られた表面処理ガラス繊維に上記の方法で硬化したエポキシ樹脂ドロップを固定し、ドロップ引き抜き時の最大荷重を測定して求めた相対界面せん断強度は208であった。
【0042】
[比較応用例1]
実施例8において、2,2−ジメトキシ−8−(4−メチルピペラジニル)メチル−1,6−ジオキサ−2−シラシクロオクタンの代わりに、4−メチルピペラジニルプロピルトリメトキシシランを用いること以外は同様にして、表面処理ガラス繊維を得た。得られたガラス繊維に上記の方法で硬化したエポキシ樹脂ドロップを固定し、ドロップ引き抜き時の最大荷重を測定して求めた相対界面せん断強度は176であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

(式中、R1及びR2は炭素数1〜10の非置換又は置換の1価炭化水素基で各々同一又は異なっていてもよい。nは0〜2の整数である。)
で示されるピペラジニル基を有する有機ケイ素化合物を含有する接着性組成物。
【請求項2】
更に、前記有機ケイ素化合物を溶解する溶剤を含有する請求項1記載の接着性組成物。
【請求項3】
更に、前記有機ケイ素化合物を溶解する重合性モノマーを含有する請求項1又は2記載の接着性組成物。
【請求項4】
更に、前記有機ケイ素化合物を溶解するポリマーを含有する請求項1又は2記載の接着性組成物。
【請求項5】
更に、前記溶剤に溶解する重合性モノマーを含有する請求項2記載の接着性組成物。
【請求項6】
更に、前記溶剤に溶解するポリマーを含有する請求項2記載の接着性組成物。
【請求項7】
更に、無機又は有機フィラーを含有する請求項1〜6のいずれか1項記載の接着性組成物。
【請求項8】
請求項1又は2記載の接着性組成物にて表面処理された無機又は有機フィラー。
【請求項9】
請求項1又は2記載の接着性組成物にて表面処理された金属部材。
【請求項10】
請求項3又は5記載の接着性組成物中の重合性モノマーを重合することによって得られたポリマー。
【請求項11】
請求項3又は5記載の接着性組成物中の重合性モノマーを無機又は有機フィラーの分散下に重合することによって得られたポリマーと無機又は有機フィラーとの複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−25788(P2012−25788A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153641(P2010−153641)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】