説明

フィルム切れ検出機構

【課題】マルチフィルムの有無を確実に検出でき、ひいてはマルチフィルム被覆作業の作業性を向上させることができるフィルム切れ検出機構を提供する。
【解決手段】マルチフィルム被覆装置に適用されるフィルム切れ検出機構200は、マルチフィルムFの移動経路に介挿された支持軸211と、移動経路を移動するフィルムFと当接するように、付勢部材213を介して支持軸211に支持され、該フィルムFが存在しないときは付勢部材213によって支持軸211と同心上の同心位置に配置され、該フィルムFが存在するときは該フィルムFの張力によって前記支持軸211に対して偏心された偏心位置に配置される押さえ軸212と、該押さえ軸212が同心位置又は偏心位置の何れに位置するかを検出するセンサー部材220とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチフィルムロールから引き出されたマルチフィルムによって土壌を被覆するマルチフィルム被覆装置に適用されるフィルム切れ検出機構に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチフィルムロールから引き出されたマルチフィルムによって土壌を被覆するマルチフィルム被覆装置においては、従来、フィルム切れ検出機構によってマルチフィルムの有無を検出し、該検出結果に基づき警報装置(例えば、警報ブザー等)を作動させることによって、マルチフィルム被覆作業中にマルチフィルムが無くなったか否かを作業者に報知することがなされている。
【0003】
このマルチフィルム被覆装置に適用されるフィルム切れ検出機構として、例えば、検出スイッチに設けた作動片がマルチフィルムの上面に接触しているときにその押圧力により検出スイッチが開設するように、また、作動片へのマルチフィルムの接触が無くなると閉成するようにしたものが提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】実公昭60−24128号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記したようなフィルム切れ検出機構では、次のような問題がある。即ち、(i)各畦ごとのマルチフィルム被覆作業の開始時や、作業途中で走行を停止した場合、或いは、作業中に作業機が蛇行した場合などにおいて、マルチフィルムが弛むと、マルチフィルムと検出スイッチの作動片との接触が解除された状態となり、マルチフィルムが存在しているにもかかわらず、検出スイッチは、マルチフィルムが存在していないものと誤検出してしまうことがある。(ii)また、風や作業機の振動等により、マルチフィルムと検出スイッチの作動片との接触が解除された状態となり、前記と同様に、マルチフィルムが存在しているにもかかわらず、検出スイッチは、マルチフィルムが存在していないものと誤検出してしまうことがある。いずれにしても、検出スイッチによって、警報装置が作動すると、作業者がその都度作業を中断して、マルチフィルムの有無を確認しなければならず、マルチフィルム被覆作業の作業効率が低下しやすい。
【0005】
本発明は、前記従来技術に鑑みなされたものであり、マルチフィルムの有無を確実に検出でき、ひいてはマルチフィルム被覆作業の作業性を向上させることができるフィルム切れ検出機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、マルチフィルムロールから引き出されたマルチフィルムによって土壌を被覆するマルチフィルム被覆装置に適用されるフィルム切れ検出機構であって、前記マルチフィルムの移動経路に介挿された支持軸と、移動経路を移動する前記マルチフィルムと当接するように、付勢部材を介して前記支持軸に支持された押さえ軸であって、該マルチフィルムが存在しない状態においては前記付勢部材によって前記支持軸と同心上の同心位置に配置され、且つ、該マルチフィルムが存在する状態においては該マルチフィルムの張力によって前記支持軸に対して偏心された偏心位置に配置される押さえ軸と、前記押さえ軸が同心位置又は偏心位置の何れに位置するかを検出するセンサー部材とを備えていることを特徴とするフィルム切れ検出機構を提供する。
【0007】
本発明に係るフィルム切れ検出機構では、適用される前記マルチフィルム被覆装置において前記マルチフィルムの被覆作業が行われるにあたり、前記マルチフィルムロールから引き出されたマルチフィルムは、前記支持軸に前記付勢部材を介して支持された前記押さえ軸に当接されつつ移動経路上を走行し、該マルチフィルムが無くなると、該押さえ軸から離間する。このとき、前記押さえ軸は、該マルチフィルムが存在しない状態においては前記付勢部材によって前記支持軸と同心上の同心位置に配置され、且つ、該マルチフィルムが存在する状態においては該マルチフィルムの張力によって前記支持軸に対して偏心された偏心位置に配置される。そして、前記センサー部材において、前記押さえ軸が同心位置又は偏心位置の何れに位置するかが検出される。そうすると、前記マルチフィルム被覆装置において、前記センサ部材による検出結果に基づき警報装置(例えば、警報ブザー等)が作動され、マルチフィルム被覆作業中に前記マルチフィルムが無くなったか否かが作業者に報知される。
【0008】
このように本発明に係るフィルム切れ検出機構によれば、前記マルチフィルムに当接される前記押さえ軸が前記付勢部材を介して前記支持軸に支持されていて、前記マルチフィルムが存在しない状態での前記押さえ軸の位置と、前記マルチフィルムが存在する状態での前記押さえ軸の位置とを前記センサー部材にて検出することで、前記マルチフィルムの有無を検出するので、換言すれば前記付勢部材の付勢力が働いた状態で前記マルチフィルムの有無を検出するので、前記マルチフィルム被覆作業の開始時や、作業途中で走行を停止した場合や、作業中に作業機が蛇行した場合、或いは、風や作業機の振動等が発生した場合であっても、前記センサー部材を確実に作動させることができ、これにより、前記マルチフィルムの有無を確実に検出することができる。また、前記マルチフィルム被覆装置においては、前記センサ部材によって、前記警報装置を作動させるので、作業者に対して確度の高い警報を行うことができ、それだけマルチフィルム被覆作業の作業性を向上させることができる。
【0009】
前記支持軸及び前記押さえ軸の態様として、次の態様を例示できる。即ち、(a)前記支持軸が軸線回り回転可能とされ、且つ、前記押さえ軸が前記支持軸と一体的に軸線回りに回転するように構成されている場合、(b)前記支持軸及び前記押さえ軸が軸線回り回転不能とされている場合である。前記(a)の場合には、前記押さえ軸が、該押さえ軸に当接された前記マルチフィルムの移動に伴って、前記支持軸と一体的に従動回転され得る。この場合、前記支持軸及び前記押さえ軸が、前記付勢部材によって相対回転不能に連結されていてもよいし、前記押さえ軸が、前記支持軸に対して、前記支持軸及び前記押さえ軸にそれぞれ形成された凹部又はピン等の凸部による凹凸係合によって係合された前記付勢部材を介して径方向移動可能且つ軸線回り相対回転不能に連結されていてもよい。また、前記(b)の場合には、前記マルチフィルムは前記押さえ軸に当接する際は該押さえ軸に摺動される。
【0010】
本発明に係るフィルム切れ検出機構において、前記押さえ軸が前記支持軸に外挿支持されていてもよいし、前記押さえ軸が前記支持軸に内挿支持されていてもよい。前記押さえ軸が前記支持軸に外挿支持されている場合、前記押さえ軸が前記支持軸に外挿される中空軸とされていて、前記付勢部材が前記支持軸の外周面と前記押さえ軸の内周面との間に配設されている場合を例示できる。また、前記押さえ軸が前記支持軸に内挿支持されている場合、前記支持軸が軸線方向に離間配置された一対の中空支持軸とされ、前記押さえ軸は両端部が前記一対の中空支持軸に内挿されていて、前記一対の中空支持軸と前記押さえ軸の両端部との間に、それぞれ、前記付勢部材が配設されている場合を例示できる。
【0011】
また、本発明に係るフィルム切れ検出機構において、前記付勢部材が、前記支持軸の軸線を基準にして周方向等間隔に配設された複数のスプリングとされていることが好ましい。こうすることで、該付勢部材を簡単且つ安価に設けることができる。
【0012】
また、本発明に係るフィルム切れ検出機構において、前記センサー部材が接触式センサーとされていて、該接触式センサーが、前記押さえ軸の外周面の前記マルチフィルムに当接する領域と相対する領域に当接するように配設されていることが好ましい。こうすることで、簡単な構成で前記センサー部材を確実に作動させることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明に係るフィルム切れ検出機構によると、前記マルチフィルムに当接される前記押さえ軸が前記付勢部材を介して前記支持軸に支持されていて、前記マルチフィルムが存在しない状態での前記押さえ軸の位置と、前記マルチフィルムが存在する状態での前記押さえ軸の位置を前記センサー部材にて検出することで、前記マルチフィルムの有無を検出するので、換言すれば前記付勢部材の付勢力が働いた状態で前記マルチフィルムの有無を検出するので、前記マルチフィルム被覆作業の開始時や、作業途中で走行を停止した場合や、作業中に作業機が蛇行した場合、或いは、風や作業機の振動等が発生した場合であっても、前記センサー部材を確実に作動させることができ、これにより、前記マルチフィルムの有無を確実に検出することができる。また、前記マルチフィルム被覆装置においては、前記センサ部材によって、前記警報装置を作動させるので、作業者に対して確度の高い警報を行うことができ、それだけマルチフィルム被覆作業の作業性を向上させることができる。
【0014】
また、前記付勢部材が、前記支持軸の軸線を基準にして周方向等間隔に配設された複数のスプリングとされている場合には、該付勢部材を簡単且つ安価に設けることができる。
【0015】
さらに、前記センサー部材が接触式センサーとされていて、該接触式センサーが、前記押さえ軸の外周面の前記マルチフィルムに当接する領域と相対する領域に当接するように配設されていると、簡単な構成で前記センサー部材を確実に作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るフィルム切れ検出機構の好ましい実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。図1は本発明の実施に係るフィルム切れ検出機構200が適用されたマルチフィルム被覆装置100が作業車輌の本機Aに付設されている状態を該作業車輌の後方から視た斜視図であり、図2は図1のマルチフィルム被覆装置100及びフィルム切れ検出機構200部分を中心に示した側面図である。
【0017】
図1に示すように、作業車輌の本機の一例であるトラクターA後部には、畝立て装置Bが装着されており、さらに車輌後方にはマルチフィルム被覆装置100が設けられている。
【0018】
前記畝立て装置Bは、図2に示すように、スパイラルローター11、該スパイラルローター11を覆うローターカバー12及び蒲鉾型の畝成形部13により構成されている。斯かる構成によって、畝の成形にあたり、前記スパイラルローター11にて土壌が耕耘されつつ車輌幅方向中央部に集められ、該中央部に集められた土壌が前記ローターカバー12及び前記畝成形部13により案内されて、前記畝成形部13を抜け出ることで、車輌幅方向中央で高くなった蒲鉾型の畝Cに成形される。
【0019】
前記マルチフィルム被覆装置100は、こうして成形された畝Cを両裾部から頂上にかけてマルチフィルムFによって被覆するものであり、車輌幅方向両端部に設けられた左右一対のメインフレーム110を備えていて、該一対のメインフレーム110がそれぞれ畝立て装置Bから後方に向けて突出している。
【0020】
前記一対のメインフレーム110には、左右一対のフィルムロール支持杆120がそれぞれ設けられており、該一対のフィルムロール支持杆120の車輌後方には、左右一対のテンションロール支持杆130がそれぞれ設けられている。
【0021】
前記一対のフィルムロール支持杆120は、それぞれ、車輌斜め下後方に突出し、途中で車輌後方に屈曲した屈曲部120aを有していて、該屈曲部120aが、前記マルチフィルムFの移動方向反転用の反転ロール230を回転自在に支持している。また、前記一対のフィルムロール支持杆120は、車輌後方にそれぞれ突設された左右一対のフィルムロール支持杆121と、該一対のフィルムロール支持杆121間に車輌幅方向に沿って架設されたセンサー支持杆122とを備えている。前記一対のフィルムロール支持杆121には、自由端部において車輌幅方向内方に向けて突出する左右一対のロール枢支軸123がそれぞれ設けられており、該一対のロール枢支軸123間でマルチフィルムロール140を回転自在に支持している。前記センサー支持杆122は、車輌幅方向中央部で前記フィルム切れ検出機構200を構成するセンサー部材220を支持している。
【0022】
前記一対のテンションロール支持杆130は、それぞれ、車輌上下方向下方に突出し、下端部において前記フィルム切れ検出機構200を構成するテンションロール210を回転自在に支持している。
【0023】
また、前記一対のメインフレーム110の車輌後端部には、左右一対の土寄せ輪支持杆111がそれぞれ延設されている。この一対の土寄せ輪支持杆111は、それぞれ、下方に突出し、且つ、途中で斜め下後方に屈曲しており、該屈曲部で支持部材111aを介して左右一対のフィルム抑え輪112を、下端部で左右一対の土寄せ輪113を支持している。なお、前記一対のフィルム抑え輪112は、畝Cに被覆された前記マルチフィルムFの裾部を抑えるものである。これにより、特に畝Cの裾部における隙間部分を抑えて、該隙間部分をなくすことができる。前記一対の土寄せ輪113は、圃場内の土壌を前記マルチフィルムFの裾部に載置すべく、該裾部に寄せ集めるものである。これにより、前記マルチフィルムFの裾部が風等によりめくれたり、舞い上がったりすることのないようにすることができる。
【0024】
前記マルチフィルム被覆装置100において、前記一対のフィルムロール支持杆120を基準にして車輌前方には、左右一対のガイド輪支持杆150がそれぞれ設けられており、該一対のガイド輪支持杆150が、下端部で左右一対のガイド輪151をそれぞれ支持している。これにより、前記畝立て装置Bに対する前記マルチフィルム被覆装置100全体の高さを調節することができる。また、前記一対のテンションロール支持杆130より車輌後方には、下端部で車輌幅方向外方に延出した延出部161を有するロール支持杆160が設けられており、該ロール支持杆160が、前記延出部161でU字型ロール162を支持している。これにより、前記マルチフィルムFが蒲鉾型の畝Cに隙間なく密着するように上から抑えることができる。
【0025】
次に前記フィルム切れ検出機構200について、図3及び図4を参照しながら以下に説明する。図3は図1及び図2のフィルム切れ検出機構200について前記マルチフィルムFが存在する状態での動作を説明するための概略側面図であって、図3(A)は該動作状態を示す全体図であり、図3(B)は該動作状態におけるフィルム切れ検出機構200部分を中心に示す拡大図である。また、図4は図1及び図2のフィルム切れ検出機構200について前記マルチフィルムFのフィルム切れ状態での動作を説明するための概略側面図であって、図4(A)は該動作状態を示す全体図であり、図4(B)は該動作状態におけるフィルム切れ検出機構200部分を中心に示す拡大図である。なお、図3及び図4において、前記センサ支持杆122、前記屈曲部120a及び前記テンションロール支持杆130は図示を省略してある。
【0026】
図3及び図4に示すように、前記フィルム切れ検出機構200は、前記したテンションロール210及びセンサー部材220を備えている。また、前記テンションロール210は、支持軸211、押さえ軸212及び付勢部材213を備えている。
【0027】
前記支持軸211は、前記マルチフィルムFの移動経路に介挿されており、前記一対の支持部材130(図3及び図4では図示省略)に軸線回り回転自在に支持されている。前記押さえ軸212は、本実施形態では、前記支持軸211に外挿される中空軸とされており、移動経路を移動する前記マルチフィルムFと当接するように、且つ、付勢部材213を介して前記支持軸211に該支持軸211と一体的に軸線回りに回転するように支持されている。これにより、前記押さえ軸212は、該押さえ軸212に当接された前記マルチフィルムFの移動に伴って、前記支持軸211と一体的に従動回転することができる。なお、前記支持軸211及び前記押さえ軸212は、軸線回り回転不能とされていてもよい。この場合、前記マルチフィルムFは前記押さえ軸212に当接する際は該押さえ軸212に摺動される。
【0028】
また、前記付勢部材213は、本実施形態では、前記支持軸211の外周面211aと前記押さえ軸212の内周面212aとの間に配設されており、前記支持軸211の軸線を基準にして周方向等間隔に配設された複数のスプリング(図示例では互いに相対するように配置された4個のスプリング)とされている。これにより、前記押さえ軸212を、前記マルチフィルムFが存在しない状態においては前記付勢部材213によって前記支持軸211と同心上の同心位置に配置し、且つ、該マルチフィルムFが存在する状態においては該マルチフィルムFの張力によって前記支持軸211に対して偏心された偏心位置に配置することができる。なお、前記複数のスプリング213は、いずれも一端部が前記支持軸211の外周面211aに他端部が前記押さえ軸212の内周面212aに固着されていて、前記支持軸211及び前記押さえ軸212が、前記複数のスプリング213によって相対回転不能に連結されていてもよいし、前記押さえ軸212が、前記支持軸211に対して前記複数のスプリング213を介して径方向移動可能且つ軸線回り相対回転不能に連結されていて、該複数のスプリング213が該支持軸211及び該押さえ軸212にそれぞれ形成された凹部又はピン等の凸部による凹凸係合によって係合されていてもよい。
【0029】
本実施形態では、前記押さえ軸212が前記支持軸211に外挿支持されているが、前記押さえ軸212が前記支持軸211に内挿支持されていてもよい。この場合、図5に示すように、前記支持軸211を軸線方向(車輌幅方向)に離間配置された一対の中空支持軸とし、前記押さえ軸212は両端部212’を前記一対の中空支持軸211に内挿すると共に、前記一対の中空支持軸211と前記押さえ軸212の両端部との間に、それぞれ、前記付勢部材213を配設するようにしてもよい。なお、図5では、両端部のうち一方側の押さえ軸212端部212’及び中空支持軸211のみを図示しているが、他方側の押さえ軸212端部212’及び中空支持軸211も一方側と実質的に同様の構成をしており、ここでは他方側は図示を省略してある。
【0030】
また、この場合、前記付勢部材213は、前記支持軸211の内周面211bと前記押さえ軸212の外周面212bとの間に配設されていて、前記押さえ軸212の軸線を基準にして周方向等間隔に配設された複数のスプリング(図示例のように、互いに相対するように配置された4個のスプリング)とされていることが好ましい。こうすることで、前記押さえ軸212を、前記マルチフィルムFが存在しない状態においては前記付勢部材213によって前記支持軸211と同心上の同心位置に配置し、且つ、該マルチフィルムFが存在する状態においては該マルチフィルムFの張力によって前記支持軸211に対して偏心された偏心位置に配置することができる。なお、前記複数のスプリング213は、いずれも一端部が前記支持軸211の内周面211bに他端部が前記押さえ軸212の外周面212bに固着されていて、前記支持軸211及び前記押さえ軸212が、前記複数のスプリング213によって相対回転不能に連結されていてもよいし、前記押さえ軸212が、前記支持軸211に対して前記複数のスプリング213を介して径方向移動可能且つ軸線回り相対回転不能に連結されていて、該複数のスプリング213が該支持軸211及び該押さえ軸212にそれぞれ形成された凹部又はピン等の凸部による凹凸係合によって係合されていてもよい。
【0031】
前記センサー部材220は、前記押さえ軸212が同心位置又は偏心位置の何れに位置するかを検出するものであり、本実施形態では、前記押さえ軸212の外周面の前記マルチフィルムFに当接する領域212cと相対する領域212dに当接するように配設されており、該押さえ軸212が同心位置に位置するときは(図4(B)参照)該押さえ軸212とは非接触の非作動状態となり、該押さえ軸212が偏心位置に位置するときは(図3(B)参照)該押さえ軸212に接触した作動状態となる接触式センサーとされている。
【0032】
また、前記マルチフィルム被覆装置100においては、作業中に前記マルチフィルムFの残量を作業者が認識できる手段が設けられていてもよい。このように前記マルチフィルムFの残量を作業者が作業をしながら認識できることで、例えば、現在装着しているマルチフィルムロール140が、これから作業する畝分全てについて、作業可能か否かを判断することができる。また、作業途中でも、畝のどの辺りで前記マルチフィルムFが無くなるかを事前に予測でき、マルチフィルムロール140の交換等の作業に早期に対応することができる。
【0033】
前記残量認識手段としては、図6に示すように、前記マルチフィルムFの移動に応じて回転する回転部材20aの回転回数を計測する計測器20を含むものを例示できる。この場合、前記計測器20は、前記マルチフィルムロール140と前記テンションロール210との間に配設されていて、前記回転部材20aは、図6(A)に示すように、最大径の状態にある前記マルチフィルムロール140から前記マルチフィルムFを引き離す方向に押圧する位置に配置されていてもよいし、図6(B)に示すように、最小径の状態にある前記マルチフィルムロール140に対して前記マルチフィルムFを巻き付ける方向に押圧する位置に配置されていてもよい。なお、本実施形態では、前記マルチフィルムFは、前記マルチフィルムロール140と前記テンションロール210とが逆方向に回転するように前記テンションロール210に巻き掛けられているが、図6(C)及び図6(D)に示すように、前記マルチフィルムロール140と前記テンションロール210とが同方向に回転するように前記テンションロール210に巻き掛けられていてもよい。この場合についても、前記回転部材20aは、図6(C)に示すように、最大径の状態にある前記マルチフィルムロール140から前記マルチフィルムFを引き離す方向に押圧する位置に配置され、図6(D)に示すように、最小径の状態にある前記マルチフィルムロール140に対して前記マルチフィルムFを巻き付ける方向に押圧する位置に配置されていてもよい。いずれにしても、前記マルチフィルムロール140の径が使用に伴って減少しても前記計測器20の位置を調整することなく前記マルチフィルムロール140の使用を通じて前記回転部材20aの回転回数を継続的に計測することができる。
【0034】
また、前記計測器20は、前記回転部材20aの回転回数に基づいて、前記マルチフィルムFの引き出し量をカウントアップするようにしてもよいし、前記マルチフィルムロール140に巻かれた前記マルチフィルムF全体の長さを予め設定しておき、該予め設定された前記マルチフィルムF全体の長さから前記回転部材20aの回転回数に基づく前記マルチフィルムFの引き出し量を差し引いて、前記マルチフィルムFの残量をカウントダウンするようにしてもよい。いずれにしても、前記計測器20にて算出された算出値は、例えば、前記トラクターAの操作パネル等に設けられた表示装置(図示省略)に数値表示され得る。こうすることで、作業者は作業中に前記マルチフィルムFの残量を認識することができる。
【0035】
また、図7に示すように、作業状態を撮影し得る位置(例えば、前記トラクターAの後部等)に撮像装置30が配設されていてもよい。この場合、前記撮像装置30にて撮影された画像は、作業者が作業時に視線を移動させるだけで視認できる位置に配設された表示装置31に画像表示することができる。こうすることで、作業状態(例えば、前記マルチフィルムFのフィルム切れ状態や、前記マルチフィルムFがうまく被覆されているか否か等の作業精度)を作業者の目視で認識できるので、該作業状態に不具合(例えば、前記マルチフィルムFのフィルム切れや、前記マルチフィルムFがうまく被覆されていないといった不具合)が発生した場合でも、前記表示装置31ですぐに確認でき、該不具合が発生した状態で作業を続けてしまうといった無駄を省くことができる。また、前記表示装置31は、作業者が作業時に視線を移動させるだけで視認できる位置に配設されており、作業者が前記トラクタAに乗って前方を見ながら作業できるので、運転操作に支障をきたすことなく、作業状態を視認することができ、これにより、精度の高い作業が可能となり、それだけ作業者の負担を軽減させることができる。
【0036】
ところで、前記計測器20や前記撮像装置30等の有無に拘わらず、作業者は作業時に後方を振り返って、作業状態を直接視認する場合がある。この場合、前記トラクタAのフレーム等や、例えば、運転席の周囲を覆うキャビンを備えたキャビン仕様のトラクタでは、キャビンのフレーム等により死角ができやすい。そこで、前記トラクタAにおいて、運転席Sを基準にして車輌後方に、前記マルチフィルム被覆装置100の作業状態を作業者が視認できる鏡40(図8参照)が設けられていてもよい。こうすることで、作業者が作業時に後方を振り返って該鏡40を見ることで、作業状態を死角少なく視認することができる。この鏡40は、運転席Sを基準にして車輌後方に設けられた作業灯41(例えば、図8に示すように、キャビン仕様のトラクタAにおいてキャビンの上部後方に設けられた作業灯41)に設けられていることが好ましい。図8に示すように、前記作業灯41が高い位置に設けられていると、作業状態を高い位置から見下ろすことができ、これにより該作業状態を全体的に視認することができる。また、前記鏡40が作業灯41に一体的に配設されていてもよい。こうすることで、該鏡40を別体として設ける必要がないので、該鏡40の設置スペースを削減できると共に、それだけコストを低減させることができる。また、運転席を基準にして前方に設けられたバックミラーMと、前記鏡40との位置関係にもよるが、作業者が該バックミラーMの反射を利用して該鏡40を視認することができるようにすれば、作業者は該鏡40から該バックミラーMを介して前記マルチフィルム被覆装置100の作業状態を運転姿勢で確認することができ、それだけ作業者の負担を軽減させることができる。
【0037】
また、前記マルチフィルム被覆装置100に適用される前記マルチフィルムロール140について、前記マルチフィルムFの所定の残量位置から終端にかけて、マーカが付設されていてもよい。こうすることで、前記マルチフィルムFの残量を認識できるので、前記マルチフィルムロール140の交換時期を事前に知ることができ、これにより作業能率を向上させることができる。このマーカとしては、前記マルチフィルムFの色とは異なる色の線状のマーカm1(図9(A)参照)や、前記マルチフィルムFの残りの長さを示す数字等のマーカm2(図9(B)参照)を例示できる。図9(A)に示すように、前記マルチフィルムFが残り少なくなると、該マルチフィルムFの色(例えば、黒色)とは異なる色(例えば、緑色)の線状のマーカm1が表れ、このマーカm1によって前記マルチフィルムFの残量を認識することができる。また、図9(B)に示すように、前記マルチフィルムFが残り少なくなると、該マルチフィルムFの残りの長さを示す数字等のマーカm2が表示され、このマーカm2によって前記マルチフィルムFの残量を認識することができる。なお、前述したように、前記撮像装置30や前記表示装置31を設けたり、前記鏡40を設ける構成と組み合わせることで作業者の負担をさらに軽減させることができる。
【0038】
以上説明した前記フィルム切れ検出機構200では、前記マルチフィルム被覆装置100において前記マルチフィルムFの被覆作業が行われるにあたり、前記マルチフィルムロール140から引き出されたマルチフィルムFは、前記支持軸211に前記付勢部材213を介して支持された前記押さえ軸212に当接されつつ移動経路上を走行し、該マルチフィルムFが無くなると、該押さえ軸212から離間する。このとき、前記押さえ軸212は、該マルチフィルムFが存在しない状態においては前記付勢部材213によって前記支持軸211と同心上の同心位置に配置され、且つ、該マルチフィルムFが存在する状態においては該マルチフィルムFの張力によって前記支持軸211に対して偏心された偏心位置に配置される。そして、前記センサー部材220において、前記押さえ軸212が同心位置に位置するときは該押さえ軸212とは非接触の非作動状態となり(図4参照)、該押さえ軸212が偏心位置に位置するときは該押さえ軸212に接触した作動状態となる(図3参照)。そうすると、前記マルチフィルム被覆装置100において、前記センサ部材220による検出結果に基づき、図示を省略した警報装置(例えば、警報ブザー等)が作動され、マルチフィルム被覆作業中に前記マルチフィルムFが無くなったか否かが作業者に報知される。
【0039】
このように前記フィルム切れ検出機構200によれば、前記マルチフィルムFに当接される前記押さえ軸212が前記付勢部材213を介して前記支持軸211に支持されていて、前記マルチフィルムFが存在しない状態での前記押さえ軸212の位置と、前記マルチフィルムFが存在する状態での前記押さえ軸212の位置とを前記センサー部材220にて検出することで、前記マルチフィルムFの有無を検出するので、換言すれば前記付勢部材213の付勢力が働いた状態で前記マルチフィルムFの有無を検出するので、前記マルチフィルム被覆作業の開始時や、作業途中で走行を停止した場合や、作業中に作業機が蛇行した場合、或いは、風や作業機の振動等が発生した場合であっても、前記センサー部材220を確実に作動させることができ、これにより、前記マルチフィルムFの有無を確実に検出することができる。また、前記マルチフィルム被覆装置200においては、前記センサ部材220によって、前記警報装置を作動させるので、作業者に対して確度の高い警報を行うことができ、それだけマルチフィルム被覆作業の作業性を向上させることができる。
【0040】
また、前記付勢部材213が、前記支持軸211の軸線を基準にして周方向等間隔に配設された複数のスプリングとされているので、該付勢部材213を簡単且つ安価に設けることができる。
【0041】
さらに、前記センサー部材220が接触式センサーとされていて、該接触式センサー220が、前記押さえ軸212の外周面の前記マルチフィルムFに当接する領域212cと相対する領域212dに当接するように配設されていることで、簡単な構成で前記センサー部材220を確実に作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明の実施に係るフィルム切れ検出機構が適用されたマルチフィルム被覆装置が作業車輌の本機に付設されている状態を該作業車輌の後方から視た斜視図である。
【図2】図2は、図1のマルチフィルム被覆装置及びフィルム切れ検出機構部分を中心に示した側面図である。
【図3】図3は、図1及び図2のフィルム切れ検出機構についてマルチフィルムが存在する状態での動作を説明するための概略側面図であって、図3(A)は、該動作状態を示す全体図であり、図3(B)は、該動作状態におけるフィルム切れ検出機構部分を中心に示す拡大図である。
【図4】図4は、図1及び図2のフィルム切れ検出機構についてマルチフィルムのフィルム切れ状態での動作を説明するための概略側面図であって、図4(A)は、該動作状態を示す全体図であり、図4(B)は、該動作状態におけるフィルム切れ検出機構部分を中心に示す拡大図である。
【図5】図5は、フィルム切れ検出機構において、押さえ軸が支持軸に内挿支持されている構成の一例を示す概略斜視図である。
【図6】図6は、マルチフィルムロールと押さえ軸との間に配設された計測器を示す概略側面図であって、図6(A)及び図6(C)は、回転部材が、最大径の状態にあるマルチフィルムロールからマルチフィルムを引き離す方向に押圧する位置に配置されている状態を示しており、図6(B)及び図6(D)は、回転部材が、最小径の状態にある前記マルチフィルムロール140に対して前記マルチフィルムFを巻き付ける方向に押圧する位置に配置されている状態を示している。
【図7】図7は、作業状態を撮影し得る位置に撮像装置が配設されている構成の一例を示す概略側面図である。
【図8】図8は、トラクターにおいて、運転席を基準にして車輌後方に、マルチフィルム被覆装置の作業状態を作業者が視認できる鏡が設けられている構成の一例を正面斜め上から視た概略斜視図である。
【図9】図9は、マルチフィルムの所定の残量位置から終端にかけて、マーカが付設されたマルチフィルムロールの例を示す図であって、図9(A)は、マルチフィルムの色とは異なる色の線状のマーカが付設されたマルチフィルムロールを示しており、図9(B)は、マルチフィルムの残りの長さを示す数字等のマーカが付設されたマルチフィルムロールを示している。
【符号の説明】
【0043】
F…マルチフィルム 100…マルチフィルム被覆装置
140…マルチフィルムロール 200…フィルム切れ検出機構
211…支持軸(中空支持軸) 211a…支持軸の外周面 212…押さえ軸
212’…押さえ軸の両端部 212a…押さえ軸の内周面
212c…マルチフィルム当接領域
212d…マルチフィルム当接領域と相対する領域 213…付勢部材
220…センサー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチフィルムロールから引き出されたマルチフィルムによって土壌を被覆するマルチフィルム被覆装置に適用されるフィルム切れ検出機構であって、
前記マルチフィルムの移動経路に介挿された支持軸と、
移動経路を移動する前記マルチフィルムと当接するように、付勢部材を介して前記支持軸に支持された押さえ軸であって、該マルチフィルムが存在しない状態においては前記付勢部材によって前記支持軸と同心上の同心位置に配置され、且つ、該マルチフィルムが存在する状態においては該マルチフィルムの張力によって前記支持軸に対して偏心された偏心位置に配置される押さえ軸と、
前記押さえ軸が同心位置又は偏心位置の何れに位置するかを検出するセンサー部材とを備えていることを特徴とするフィルム切れ検出機構。
【請求項2】
前記支持軸は軸線回り回転可能とされ、且つ、前記押さえ軸は前記支持軸と一体的に軸線回りに回転するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルム切れ検出機構。
【請求項3】
前記押さえ軸は前記支持軸に外挿される中空軸とされており、
前記付勢部材は前記支持軸の外周面と前記押さえ軸の内周面との間に配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム切れ検出機構。
【請求項4】
前記支持軸は軸線方向に離間配置された一対の中空支持軸とされ、
前記押さえ軸は両端部が前記一対の中空支持軸に内挿されており、
前記一対の中空支持軸と前記押さえ軸の両端部との間に、それぞれ、前記付勢部材が配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルム切れ検出機構。
【請求項5】
前記付勢部材は、前記支持軸の軸線を基準にして周方向等間隔に配設された複数のスプリングとされていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のフィルム切れ検出機構。
【請求項6】
前記センサー部材は接触式センサーとされており、
該接触式センサーは、前記押さえ軸の外周面の前記マルチフィルムに当接する領域と相対する領域に当接するように配設されていることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のフィルム切れ検出機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−204131(P2006−204131A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−17822(P2005−17822)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】