説明

フェイズドアレイアンテナ

【課題】 フェイズドアレイアンテナの素子ユニットにおいてアンテナ素子配列の位置精度と背面コネクタの位置合わせ、確実な嵌合状態と振動等で背面コネクタに無理な力を加えないような構造を提供する。
【解決手段】 アンテナ本体を形成するストラクチャー10と、上記ストラクチャーに設けられたバックパネル6とを有し、ストラクチャーの前面に形成された複数個の開口部3にそれぞれ複数のアンテナ素子を有する素子ユニット2を装着して構成されたフェイズドアレイアンテナにおいて、素子ユニットの背面に、バックパネルのコネクタ6Aと嵌合される接続コネクタ5Aを有するコネクタパネル5を位置ずれ吸収可能なフレーム7を介して装着すると共に、ストラクチャーに素子ユニット固定用のねじと係合するガイド穴11を設け、バックパネルにコネクタパネル固定用のねじと係合するガイド穴12を設けた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フェイズドアレイアンテナ、特にその素子ユニットの取り付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のフェイズドアレイアンテナは、図1に一般的な構成を示すように、アンテナ本体を形成するストラクチャー10と、上記ストラクチャーに設けられた後述するバックパネルとを有し、上記ストラクチャー10の前面に形成された複数個の開口部3に複数のアンテナ素子を有する素子ユニット2を装着して構成されており、所定の電気性能を確保するためのアンテナ素子の配列と、アンテナ素子とバックパネルとの電気接続のために、素子ユニット2の背面に設けられた接続コネクタとバックパネルのコネクタとを嵌合するため、上記素子ユニット及び接続コネクタの取り付けには高い位置精度と確実な電気接続が要求され、そのための素子ユニットの種々の取り付け構造が提案されていた。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−69255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の素子ユニットの取り付け構造においては、電気性能確保のため、アンテナ素子配列の位置精度と素子ユニットの背面におけるコネクタの確実な嵌合を確保し、かつ嵌合時にコネクタに無理な力を加えないようにするため、アレイアンテナ側のストラクチャ−10と素子ユニット2のインタフェ−ス寸法に高い精度が要求されていた。
【0005】
また、素子ユニット2の取り付けは、素子ユニット2の前面側のみでアレイアンテナ側ストラクチャ−10に固定されていたため、振動等で背面のコネクタに無理な力が加わらないようにするため、素子ユニット2のフレ−ムには高い剛性が必要であった。
これらを実現するためには、システム全体の製造コストの増大、装置規模の増大を招く他、実装上の制約等がでてくるなどの問題点があった。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、必要以上にアレイアンテナ側のストラクチャ−及び素子ユニットのインタフェ−ス寸法精度を高めたり、素子ユニットのフレ−ム剛性を上げることなく、所定のアンテナ素子配列の位置公差と背面側のコネクタの嵌合を実現し、かつコネクタに無理な力を加えることがない構造のフェイズドアレイアンテナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るフェイズドアレイアンテナは、アンテナ本体を形成するストラクチャーと、上記ストラクチャーに設けられたバックパネルとを有し、上記ストラクチャーの前面に形成された複数個の開口部にそれぞれ複数のアンテナ素子を有する素子ユニットを装着して構成されたフェイズドアレイアンテナにおいて、上記素子ユニットの背面に、上記バックパネルのコネクタと嵌合される接続コネクタを有するコネクタパネルを位置ずれ吸収可能なフレームを介して装着すると共に、上記ストラクチャーに上記素子ユニット固定用のねじと係合するガイド穴を設け、上記バックパネルに上記コネクタパネル固定用のねじと係合するガイド穴を設けたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るフェイズドアレイアンテナは上記のように構成されているため、要求される電気性能確保のために必要なアンテナ素子配列の位置精度と素子ユニットの背面におけるコネクタの確実な嵌合を実現し、かつ嵌合時および振動等によっても背面コネクタに無理な力が加わらない構造を実現すると共に、素子ユニットの剛性を抑え、アンテナのストラクチャ−および素子ユニットに要求されるインタフェ−ス寸法精度を緩めることができるため、システムの製造コストを低減することができる。
【0009】
また、実装される素子ユニットの剛性を抑えることによりフレ−ムサイズを小さくすることができるため、実装スペ−スの拡大や、装置規模の縮小、実装上の制約条件を緩和することができる。さらに、素子ユニットの脱着を容易に行い、素子ユニットの軽量化に寄与できるため、整備性を向上することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図にもとづいて説明する。図2〜図4は、実施の形態1の構成及びストラクチャーへの取り付け状態を示す概略図で、図2は素子ユニットをストラクチャーに実装した状態を示す側面図、図3は素子ユニットをフェイズドアレイアンテナのストラクチャーに実装する過程を示す説明図、図4は位置ずれを吸収できる素子ユニットのフレキシブルフレームの構成及び位置ずれに対応する状況を示す説明図である。
【0011】
これらの図において、フェイズドアレイアンテナ1は、アンテナ本体を形成するストラクチャー10と、ストラクチャーの裏面に設けられたバックパネル6とを有し、ストラクチャー10の前面に図1に示すように形成された複数個のアレイ開口部3にそれぞれ素子ユニット2を装着して構成されている。
【0012】
素子ユニット2には複数個のアンテナ素子4が開口面側に取り付けられており、素子ユニット2が全てアレイ開口部3に実装された状態で、開口面側の全てのアンテナ素子4は電気性能上必要な要求精度で配置される構造となっている。また、素子ユニット2には、その背面にコネクタパネル5が位置ずれ吸収可能な2個のフレーム7を介して装着されている。
【0013】
フレーム7は図4(b)に正面図、図4(c)に側面図を示すように、コイルばね状に巻回した構造とされ、図4(a)に実線及び仮想線並びに矢印Aで示すように、いずれの方向にも変位できるフレキシブル構造とされている。また、コネクタパネル5には接続コネクタ5Aが複数個設けられ、各接続コネクタに対応してバックパネル6に設けられたバックパネル側コネクタ6Aと嵌合され、素子ユニット2の電気的な接続が行なわれるようになっている。
【0014】
また、素子ユニット2をストラクチャー10に装着、実装する際の位置決め用として素子ユニット2の前面周縁に拡大面2Aを設け、この部分にねじ用の孔(図示せず)を設けると共に、この孔に前面固定ねじ8を貫通させる一方、ストラクチャー10の前面に前面固定ねじ8に対する位置合せ用のガイド穴11を形成し、前面固定ねじ8をこのガイド穴11に係合することにより、図2に示すように、素子ユニット2の位置合せとストラクチャー10への固定が完了するようにされている。
【0015】
また、コネクタパネル5にねじ孔(図示せず)を設けて背面固定ねじ9を貫通させると共に、バックパネル6にガイド穴12を形成し、背面固定ねじ9をガイド穴12に係合することにより、接続コネクタ5Aとバックパネル側コネクタ6Aとが嵌合可能な位置合せとコネクタパネル5の固定が完了するようにされている。
【0016】
背面固定ねじ9の締め付けには図3に示すように、素子ユニット2の背面に形成したドライバー孔14に長尺のドライバー13を外方から貫通させて締め付け作業を行なう。
【0017】
上記のように構成することにより、前面固定ねじ8とガイド穴11とによって素子ユニット2及びアンテナ素子4の位置精度を確保すると共に、背面固定ねじ9とガイド穴12とによってコネクタパネル5の接続コネクタ5Aとバックパネル6のコネクタ6Aとの位置合せを行なうことができる。
【0018】
この場合、コイルばね状のフレキシブルフレーム7が曲がることや変形することによって接続コネクタ5Aとバックパネル側コネクタ6Aとの嵌合時における位置ずれを吸収することができ、また、背面固定ねじ9とガイド穴12とによってコネクタパネル5を接続コネクタ5Aとバックパネル側コネクタ6Aとを確実に嵌合させた状態で取り付けることができる。
【0019】
これによってバックパネル6、ストラクチャー10及び素子ユニット2の製造、組立時に高い精度を要求することなく、適正なアンテナ素子4の配列位置公差を確保し、かつ背面のコネクタパネル5の位置精度確保及びコネクタ間の嵌合を実現することが可能である。また、コネクタパネル5とバックパネル6を直接固定しているので、素子ユニット2に高い剛性がなくても振動等による背面の接続コネクタの破損を未然に防ぐことができる。
【0020】
このような機能を実現するにあたり、フレーム7の剛性や各構成品の寸法精度を必要以上に上げる必要がないため、システムの製造コストを抑え、かつ素子ユニット2のフレーム7やストラクチャー10の軽量化等による装置規模の縮小、実装スペースの拡大等を実現することができる。さらに、素子ユニット2の軽量化に寄与できるため、整備時の取扱いが容易となる。
【0021】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2を図にもとづいて説明する。図5は、実施の形態2の構成を示す概略図である。この図において、図3と同一または相当部分には同一符号を付して説明を省略する。図3と異なる点は、背面固定ねじ9のねじ頭を素子ユニット2の前面近くまで延長した長いねじ頭とした点である。
【0022】
図3に示す実施の形態1においては、背面固定ねじ9のねじ頭が通常の短いものであったため、これを締め付けるために図示のような長尺のドライバー13が必要となり、ドライバーの保管に場所を取ったり、特殊な専用工具が必要になる場合があったが、背面固定ねじ9を図5に示すように、長いねじ頭にすると、ドライバー13は汎用の通常の長さのもので作業ができ、素子ユニット2の脱着が容易にできる。
【0023】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3を図にもとづいて説明する。図6は、実施の形態3の構成を示す概略図で、(a)は素子ユニット2の実装状態を示し、(b)は素子ユニット2の背面とフレーム7との取付部、即ち図6(a)の丸印で示す部分の構成を示すものである。これらの図において、図5と同一または相当部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
図5と異なる点は、フレーム7Aがコイルばね状の構造ではなく、適度な剛性をもった材料で形成され、素子ユニット2の背面との取付部に、図6(b)に矢印Bで示すように適度の範囲で動き得るようなクリアランスを設けた点である。
【0025】
フレーム7自体に適度な剛性を与えることで、この部分に内部部品等の取り付けが可能であるため、素子ユニット2の実装可能部材を増やすことが可能となり、素子ユニット2の内部実装の自由度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】フェイズドアレイアンテナの素子ユニットの一般的な実装構造を示す概略斜視図である。
【図2】この発明の実施の形態1の素子ユニットの実装構造を示す側面図である。
【図3】実施の形態1において、素子ユニットを実装する過程を示す説明図である。
【図4】実施の形態1において、フレキシブルフレームにより位置ずれに対応する状況を示す説明図である。
【図5】この発明の実施の形態2の素子ユニットの実装構造を示す側面図である。
【図6】この発明の実施の形態3の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0027】
1 フェイズドアレイアンテナ、 2 素子ユニット、 3 開口部、
4 アンテナ素子、 5 コネクタパネル、 6 バックパネル、 7 フレーム、 8 前面固定ねじ、 9 背面固定ねじ、 10 ストラクチャー、
11、12 ガイド穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ本体を形成するストラクチャーと、上記ストラクチャーに設けられたバックパネルとを有し、上記ストラクチャーの前面に形成された複数個の開口部にそれぞれ複数のアンテナ素子を有する素子ユニットを装着して構成されたフェイズドアレイアンテナにおいて、上記素子ユニットの背面に、上記バックパネルのコネクタと嵌合される接続コネクタを有するコネクタパネルを位置ずれ吸収可能なフレームを介して装着すると共に、上記ストラクチャーに上記素子ユニット固定用のねじと係合するガイド穴を設け、上記バックパネルに上記コネクタパネル固定用のねじと係合するガイド穴を設けたことを特徴とするフェイズドアレイアンテナ。
【請求項2】
上記フレームは、コイルばね状でフレキシブル構造とされたことを特徴とする請求項1記載のフェイズドアレイアンテナ。
【請求項3】
上記コネクタパネル固定用のねじは、上記ストラクチャーの前面方向に延在する長いねじ頭を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のフェイズドアレイアンテナ。
【請求項4】
上記フレームは、上記素子ユニットへの取付部にクリアランスを有するフレキシブル構造とされたことを特徴とする請求項1または請求項3記載のフェイズドアレイアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−135530(P2006−135530A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320983(P2004−320983)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】