説明

フエルト製靴底の製造方法

【課題】 靴底の減りを少なくして耐久性を向上したフエルト製靴底の効率的な製造方法を提供すること。
【解決手段】 フエルト製靴底材Fを成形装置4の基台5の上に置いて、その側面部3cを加熱装置6のローラ6b及び押圧体7のローラ7bに共に接触するようにする。
フエルト製靴底材Fを動かして側面部3cに加熱装置6で加熱して表面に溶融した合成樹脂層を形成した後、この溶融した合成樹脂層を押圧体7で押圧しながら平滑化した溶融硬化部Aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚釣りや運動等のレジャ−に用いるフエルト製靴底の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
川や海などの水辺や水中を歩行するときに苔などに足を取られやすいため、フエルト製の靴底を有する靴が用いられている。
例えば、釣りにおいては、フエルト製の靴底を有する短靴、長靴、足袋、サンダル、ウエ−ダ−など様々な種類の靴が用いられている。
これらの靴は、その靴底の形状に合致した形状に形成された板状のフエルト製の靴底を有し、靴本体に接着されていたり、着脱して交換できるようになっており、交換用靴底も販売されている。
この様なフエルト製の靴底の靴を使用すると、歩行中の滑りはなくなるが、フエルトの減りが早いという問題があり以下の提案がされている。
【0003】
特許文献1の公報にはフエルト製の靴底の底面に加熱した金属棒を当ててその内面が溶融硬化した穴部を凹設しフエルト製の靴底の耐久性を向上させたことが記載されている。
このような方法で溶融硬化した部分を形成すると金属棒を引き抜く時に穴部の開口周辺に溶融した合成樹脂の屑が凹凸を形成してしまい、商品価値を下げるため、これを切除する必要があった。
【特許文献1】実開平5−93204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
解決しようとする課題は、フエルト製の靴底に溶融硬化部を設けると溶融した合成樹脂が凹凸状に形成され外観が好ましくなく、場合によってはこれを形成し取り除く作業を要すること。
【0005】
本発明の目的は前記欠点に鑑み、靴底の減りを少なくして耐久性を向上したフエルト製靴底の効率的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、
請求項1に係わる本発明は、合成樹脂繊維を含むフエルト製靴底の表面部の少なくとも一部を加熱して溶融させた後、押圧体で押圧することを要旨とするものである。
請求項2に係わる本発明は、押圧体をフエルト製靴底の表面部に沿って移動させながら押圧することを要旨とするものである。
請求項3に係わる本発明は、押圧体は回動しながらフエルト製靴底の表面部を押圧することを要旨とするものである。
請求項4に係わる本発明は、押圧体はフエルト製靴底の表面部を冷却することを要旨とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1から4の本発明により、フエルト製靴底の表面部の加熱して溶融させた部分の凹凸をならして外観が良好なフエルト製靴底を容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明すると、図1から図6は第1実施例で、図1はフエルト製靴底の靴の断面図、図2はフエルト製靴底の上面側の斜視図、図3はフエルト製靴底の底面側の斜視図、図4はフエルト製靴底の拡大断面図、図5はフエルト製靴底の製造工程の全体図、図6はフエルト製靴底の製造工程の要部拡大図である。
【0009】
図1のように、フエルト製靴底の靴は、靴本体1が布やウレタン等の合成樹脂やネオプレン等のゴムなどの柔軟性を有する材料で一体に形成され、底部1aの下側に底部材2が固定され、底部材2の下側にフエルト製靴底3が固定されている。
フエルト製靴底3は、合成樹脂繊維Sがランダムに絡み合って形成された板状のフエルトを靴底形状に合わせて切断した靴底で、接地面になる底面部3aの反対側の上面部3bが靴本体1に取り付けた底部材2の下側に接着等で止着されおり、フエルト製靴底3の周縁に沿って側面部3cが形成されている。
【0010】
フエルト製靴底3の側面部3cに沿ってその表面部にフエルトを形成する繊維Sを1度溶融させて硬化することで形成した溶融硬化部Aが形成されている。
溶融硬化部Aは、合成樹脂繊維で形成したフエルトの層より密度の高い合成樹脂層となっている。
【0011】
溶融硬化部Aは、フエルト製靴底3の側面部3cに沿ってその表面に形成されているが、表面から内側に厚味を持って形成されるため図2、図3、図4のようにフエルト製靴底3の上面部3b、底面部3aにも及んでそれぞれの周縁に沿って形成されている。
【0012】
フエルト製靴底3は、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成樹脂繊維Sの集合体にニ−ドルパンチを施し、さらに加圧して上記繊維がランダムに絡み合って形成された板状のフエルトを靴底形状に合わせて切断して形成されており、接地面になる底面部3aとその反対側の靴本体1に止着する上面部3bとフエルト製靴底3の周縁に沿って側面部3cが形成されている
【0013】
フエルト製靴底3を形成する繊維Sは、繊度が2〜40デニ−ルで、繊維長は、10〜100mmを用いる。 そして、圧力200〜1000N/m
で3〜10分押圧し、密度0.1〜0.3g/cm とし、厚さ5〜30mmとしたフエルト材を用いている。
【0014】
図5、図6は、第1実施例のフエルト製靴底3の製造方法を示した図で、フエルト製靴底3に溶融硬化部Aを形成するため基台5とこの上面に加熱装置6と押圧体7を併設した成形装置4を用いている。
加熱装置6は基台5から突出する軸6aとこの軸6aに回動可能に保持された金属製のローラ6bからなり、このローラ6bが繊維Sを構成する合成樹脂の融点より高い温度に加熱されている。
押圧体7は基台5から突出する軸7aとこの軸7aに回動可能に保持された金属製のローラ7bからなり、このローラ7bがフエルト製靴底3を押圧するようになっている。
【0015】
フエルト製靴底3を形成するためのフエルト製靴底材Fを上面部3bが上になるように成形装置4の基台5の上に置いて、その側面部3cを加熱装置6のローラ6b及び押圧体7のローラ7bに共に接触するようにする。
この状態でフエルト製靴底材Fを矢印Xの方向に回しながらその側面部3cの加熱装置6及び押圧体7への接触位置を徐々に移動させると加熱装置6のローラ6bと押圧体7のローラ7bがその動きに応じてそれぞれ矢印Z、矢印Y方向に回転する。
【0016】
このようにして、フエルト製靴底材Fを回転させていくと、フエルト製靴底材Fの側面部3cの表面は図6のように繊維が突出した状態となっているが、側面部3cに沿って加熱装置6のローラ6bが触れて加熱されると表面の合成樹脂繊維Sが融解し、側面部3cの表面に溶融して軟化した状態の合成樹脂層(図6のA1部分)が形成される。
この状態で側面部3cの溶融して軟化した状態の合成樹脂層の表面は凹凸状に形成されている。
【0017】
次に、加熱装置6に併設された押圧体7が側面部3cの表面の溶融して軟化した状態の合成樹脂層を押圧しながらその表面をならすため前記溶融した合成樹脂層A1はフエルト製靴底材Fのさらに内側に充填されるように押圧されながらその表面の凹凸が潰され押圧前に比し表面が平滑化される。
また、押圧体7は、常温に置かれ加熱されていないため溶融した状態の合成樹脂層に触れてこれを冷却し硬化を促進する。
なお、押圧体7は、冷却しても良い。
【0018】
押圧体7は、加熱装置6に遅れて側面部3cを押圧するため、加熱直後より合成樹脂層の硬化が進行しており、また、押圧体7はローラ7bが回転して接触部分が移動するため溶融した合成樹脂の押圧体7への付着を少なくすることが出来る。
押圧体7で押圧されて形成した溶融硬化部Aの表面は押圧前に比し平滑化され、外観がきれいで商品価値が高い。
【0019】
フエルト材から切断したフエルト製靴底材Fの側面部3cがその繊維Sを構成する合成樹脂の融点より高い温度で加熱されるが、例えば、繊維がポリプロピレン、ポリエチレンであれば160〜180度で加熱し、フエルト製靴底3の側面部3cの表面を溶融させ、押圧体7で押圧した後、冷却又は、常温で放置することで溶融硬化部Aが形成され、繊維同士が溶着した状態で硬化し、加熱前の状態より側面部3cの表面から繊維がほつれないようになり、溶融硬化部Aを有するフエルト製靴底3が形成される。
【0020】
なお、フエルト製靴底材Fは治具で支持して回動させても良いし、手で回動させても良い。
また、フエルト製靴底材Fを固定しておいて、押圧体7と加熱装置6を移動させても良い。
加熱装置6はフエルト製靴底材Fに接触させたが、これに接触させず近づけて加熱しても良い。
押圧体7によるフエルト製靴底材Fの押圧力は、少なくとも溶融した合成樹脂層の表面がならされる程度あればよい。
【0021】
溶融硬化部Aは、フエルト製靴底3の側面部3cに沿ってこれを1周して設けたが、側面部3cの1部に設けても良い。
例えば側面部3cの踵部に設けたり、また、つま先部に設けたりしても良い。
さらに、溶融硬化部Aをすべて溶融するのではなく溶融硬化部Aの合成樹脂層の中に繊維が残るように溶融してもよい。
また、さらに、溶融硬化部Aはフエルト製靴底3の側面部3cの他に底面部3aに設けても良い。
【0022】
図7、図8は第2実施例で、図7はフエルト製靴底の製造工程の全体図、図8はフエルト製靴底の製造工程の要部拡大図である。
【0023】
この実施例では第1実施例のローラ6bを有する加熱装置6に代えて熱風による加熱装置8を用いている。
この加熱装置8により熱風をフエルト製靴底3の側面部3cに当てて側面部3cに溶融して軟化した状態の合成樹脂層A1を形成するため加熱装置8は直接側面部3cに接触しない。
したがって、この加熱装置8には溶融した合成樹脂の付着が防止できる。
その他は第1実施例と同じである。
【0024】
図9、図10は第3実施例で、図9はフエルト製靴底の製造工程の全体図、図10はフエルト製靴底の製造工程の要部拡大図である。
【0025】
この実施例では、第1実施例の成形装置4のローラ6bを有する加熱装置6に代えて、熱風による加熱装置8を用いて熱風をフエルト製靴底3の側面部3cに当てて側面部3cに溶融して軟化した状態の合成樹脂層A1を形成し、さらに、ローラ7bを有する押圧体7に代えて握持部を有する小手が押圧体9となっている。
【0026】
加熱装置8により熱風をフエルト製靴底3の側面部3cに当てて側面部3cに溶融して軟化した状態の合成樹脂層を形成し、加熱装置8に続いて溶融した状態の合成樹脂層A1を小手(押圧体9)で押さえて溶融した状態の合成樹脂をフエルト製靴底材Fの内側に押圧して充填させ、その表面をならし、また、表面を冷却し硬化させている。
この時、小手(押圧体9)はフエルト製靴底3の側面部3cに当てたまま側面部3cに沿って移動しながらこれを押圧しても良い。
また、 加熱装置8により熱風をフエルト製靴底3の側面部3cに当てて側面部3c全体に溶融して軟化した状態の合成樹脂層を形成した後、小手(押圧体9)に持ち替えて側面部3cに沿って押圧しても良い。
【0027】
このように、側面部3cに溶融硬化部Aを設けると、底面部3aの中央側に露出するフエルトによって水中を歩行する時の滑りが防止されると共に、側面部3cに溶融硬化部Aによって使用後すぐに減りやすい角部3dとその近傍からの繊維のほつれを防止することができる。
上記のように側面部3c、又は側面部3cから角部3dに溶融硬化部Aを設けたが、これらの構成に加え、必要に応じて底面部3aにも溶融硬化部Aを設けてもよい。
【0028】
本願のフエルト製靴底の製造方法によって押圧体7、9が溶融した状態の合成樹脂A1をフエルト製靴底材Fの内側に押圧して充填させ、その表面をならし、また、表面を冷却し硬化させるため、溶融硬化部Aを有するフエルト製靴底3が容易に形成でき、溶融時に生じる合成樹脂の屑の発生を抑えて耐久性が高く、仕上がりが良好なフエルト製靴底が製造できる。
また、押圧体7、9で溶融した状態の合成樹脂A1をフエルト製靴底材Fの内側に押圧して充填させるためフエルト製靴底3の表面に形成した溶融硬化部Aは剥離など容易に破損することが防止される。
【0029】
前記説明では靴本体1の底部1aの下側に踵側が高い底部材2が固定され、底部材2の下側にフエルト製靴底3が接着固定される図面で述べたが、底部材2とフエルト製靴底3の双方にベルベット式ファスナ−を設けて着脱自在(交換自在)としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明はフエルト製靴底の製造に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施例で、フエルト製靴底の靴の断面図である。
【図2】同フエルト製靴底の上面側の斜視図である。
【図3】同フエルト製靴底の底面側の斜視図である。
【図4】同フエルト製靴底の拡大断面図である。
【図5】同フエルト製靴底の製造工程の全体図である。
【図6】同フエルト製靴底の製造工程の要部拡大図である。
【図7】第2実施例で、フエルト製靴底の製造工程の全体図である。
【図8】同フエルト製靴底の製造工程の要部拡大図である。
【図9】第3実施例で、製造工程の全体図である。
【図10】同フエルト製靴底の製造工程の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0032】
1 靴本体
3 フエルト製靴底
3a 底面部
3c 側面部
4、4’ 成形装置
6、8 加熱装置
7、9 押圧体
A 溶融硬化部
F フエルト製靴底材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂繊維を含むフエルト製靴底の表面部の少なくとも一部を加熱して溶融させた後、押圧体で押圧することを特徴とするフエルト製靴底の製造方法。
【請求項2】
押圧体をフエルト製靴底の表面部に沿って移動させながら押圧することを特徴とする請求項1記載のフエルト製靴底の製造方法。
【請求項3】
押圧体は回動しながらフエルト製靴底の表面部を押圧することを特徴とする請求項1または2のフエルト製靴底の製造方法。
【請求項4】
押圧体はフエルト製靴底の表面部を冷却することを特徴とする請求項1乃至3のフエルト製靴底の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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