説明

フューエルリッドの開閉装置

【課題】給油の際、フューエルリッドの開状態を確実に保持できるようにする。
【解決手段】車両ボデーの所定位置に配置される給油口を囲むように形成されたフューエルインレットボックスの内側に一端側が固定されるヒンジブラケット3と、ヒンジブラケットの他端側を回動自在に軸支すると共に、フューエルインレットボックスの開口部を開閉自在に覆うためのフューエルリッド2の裏面の一端側が固定され、且つヒンジブラケットの他端側を回動自在に軸支する部位及びフューエルリッドが固定される部位以外の位置にカム部4aが形成されたヒンジピン4と、弾性変形可能な部材から構成されると共にヒンジブラケットに固定され、人間の手でフューエルリッドを開閉させることにより当該フューエルリッドの開閉動作に連動してヒンジピンが回転することで移動しているカム部が、部材の弾性変形によって乗り越えられるような当該カム部側に向かって山形に屈曲する係合部5aが形成された保持ブラケット5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両において、燃料タンクに給油するための給油口を囲むフューエルインレットボックスの開口部を開閉するためのフューエルリッドの開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の車両ボデーの後部の何れか一方の側面には、燃料タンクに給油するための給油口が設けられ、この給油口を開閉するためのフューエルリッドの構造が開示されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【0003】
このフューエルリッドの構造は図3に示すように、給油口12を囲むフューエルインレットボックス6と、フューエルインレットボックス6の開口部6aをフューエルリッド7で開閉自在に覆うためのヒンジ部8と、フューエルリッド7でフューエルインレットボックス6の開口部6aを閉じることで、当該フューエルリッド7を閉状態でフューエルインレットボックス6に係止するストライカ部9と、給油口12を封止するためのフューエルキャップ10の紛失を防止するために、フューエルキャップ10とフューエルインレットボックス6の内側6bとを連結するテザー11とから構成されている。
【0004】
ヒンジ部8は図3、図4(A)に示すように、フューエルインレットボックス6の内側6bに一端側が固定されるヒンジブラケット81と、フューエルリッド7の裏面の一端側に離隔して形成された第1の一対の軸受部82a、82bと、ヒンジブラケット81の他端側に離隔して形成された第2の一対の軸受部81a、81bと、第1の一対の軸受部82a、82b及び第2の一対の軸受部81a、81bの軸心を同心にしてすべての軸受部81a、81b、82a、82bに挿入するヒンジピン83とから構成されている。また、第1の一対の軸受部82a、82bとヒンジピン83とは回動自在に挿入され、第2の一対の軸受部81a、81bとヒンジピン83とは挿入後、固定されている。さらに、第1の一対の軸受部82a、82bとヒンジピン83とは、第1の一対の軸受部82a、82bの回動を摩擦抵抗によって抑制するように構成されているので、図4(B)に示すように、フューエルリッド7は全開の状態を保持することが可能になる。なお、図4(B)中においては、フューエルリッド7が全閉の状態は実線で示し、全開の状態は2点鎖線で示しており、また、見易くするためにヒンジ部8を省略している。
【0005】
このように構成されたフューエルリッドの構造において、運転者やガソリンスタンドの店員が燃料を給油するために、運転席に設けられているフューエルリッドオープナーによってストライカ部9を解除すると、フューエルリッド7がある程度、半開き状態になるので、そのフューエルリッド7を手で全開させることができる。そして、給油口12からフューエルキャップ10を取り外し、フューエルリッド7の裏面に設けられたハンガー9aに、テザー11に形成された引掛け部11aを引っ掛けることで、フューエルキャップ10をフューエルリッド7に保持することができる。この状態で、運転者やガソリンスタンドの店員が給油ガン(図示せず。)を持ってその先端部を給油口12に差し込み、フューエルタンク(図示せず。)に燃料を給油する。
【0006】
燃料給油後は、運転者やガソリンスタンドの店員がフューエルリッド7に保持されているフューエルキャップ10を取り外すことで、テザー11の引掛け部11aがハンガー9aから外れることからフューエルキャップ10を給油口12まで移動することができる。そして、そのフューエルキャップ10を給油口12に締め付けて固定し、フューエルリッド7を閉じる方向に回転して閉めることで、当該フューエルリッド7をストライカ部9によって閉状態に係止することができる。これにより、給油作業は終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−46490号公報
【特許文献2】特開2009−196549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、背景技術に記載したフューエルリッドの構造では、給油の際、フューエルリッド7を全開後に給油口12からフューエルキャップ10を取り外し、フューエルリッド7の裏面に設けられたハンガー9aに、テザー11に形成された引掛け部11aを引っ掛ける等の作業を行なっている時にテザー11が引っ張られ、フューエルリッド7が閉じる方向に回転移動してしまう場合があった。これは、第1の一対の軸受部82a、82bとヒンジピン83との摩擦抵抗によってフューエルリッド7を全開状態に保持しているからで、摩擦抵抗が何らかの理由で弱くなっている場合には、運転者やガソリンスタンドの店員が何かの拍子にフューエルリッド7に触れただけでも、フューエルリッド7が閉じる方向に回転してしまう虞があった。また、この摩擦抵抗の設定の仕方が複雑で難しく、この設定を安易に行なってしまうと、フューエルリッド7の開閉動作が固くなったり緩くなったりする虞があった。
【0009】
本発明は、このような従来の難点を解消するためになされたもので、給油の際、フューエルリッドの開状態を確実に保持することができるフューエルリッドの開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成する本発明の第1の態様であるフューエルリッドの開閉装置は、車両ボデーの所定位置に配置される給油口を囲むように形成されたフューエルインレットボックスの開口部をフューエルリッドで開閉自在に覆うためのフューエルリッドの開閉装置において、フューエルインレットボックスの内側に一端側が固定されるヒンジブラケットと、ヒンジブラケットの他端側を回動自在に軸支すると共にフューエルリッドの裏面の一端側が固定され、且つヒンジブラケットの他端側を回動自在に軸支する部位及びフューエルリッドが固定される部位以外の位置にカム部が形成されたヒンジピンと、弾性変形可能な部材から構成されると共にヒンジブラケットに固定され、人間の手でフューエルリッドを開閉させることにより当該フューエルリッドの開閉動作に連動してヒンジピンが回転することで移動しているカム部が、部材の弾性変形によって乗り越えられるような当該カム部側に向かって山形に屈曲する係合部が形成された保持ブラケットとを備えているものである。ここで、「軸支」とは、軸で支えることを意味する。
【0011】
このような第1の態様であるフューエルリッドの開閉装置は、運転者やガソリンスタンドの店員が燃料を給油するために、フューエルインレットボックスの開口部を覆うように閉じているフューエルリッドを手で開いていくと、ヒンジピンはフューエルリッドの裏面の一端側が固定されているので、当該ヒンジピンに形成されているカム部もヒンジピンの回転と共に移動していく。この際、カム部は、ヒンジブラケットに固定されている保持ブラケットに形成された係合部に圧接するが、保持ブラケットが弾性変形可能な部材から構成されているので、その弾性変形により係合部を乗り越えることができる。ここで、「圧接」とは、圧することによって部材間を接触させることを意味する。保持ブラケットは、カム部が係合部を乗り越えると、部材の弾性作用に基づく復元力により係合部が元の位置に復帰することができるので、運転者やガソリンスタンドの店員が手によって一定以上の力でフューエルリッドを閉じる方向に押さなければ、フューエルリッドを閉じることはできなくなる。
【0012】
本発明の第2の態様は第1の態様であるフューエルリッドの開閉装置において、弾性変形可能な部材は、普通鋼板、防錆鋼板、ステンレス鋼板及びばね鋼からなる群から選択した何れか一つの要素である。
このような第2の態様であるフューエルリッドの開閉装置によれば、保持ブラケットの繰り返し弾性変形による弾性劣化に至るまでの時期を延ばすことが可能になる。
【0013】
本発明の第3の態様は第1の態様又は第2の態様であるフューエルリッドの開閉装置において、保持ブラケットは、板材がくさび形に屈曲され、一方の片はヒンジブラケットに固定され、他方の片は係合部が形成され、一方の片及び他方の片で囲まれる空間内にカム部が位置するように構成されているものである。
このような第3の態様であるフューエルリッドの開閉装置によれば、屈曲部位に弾性作用を持たせることができるようになる。
【0014】
本発明の第4の態様は第3の態様であるフューエルリッドの開閉装置において、保持ブラケットの屈曲した部位は、円弧状に形成されているものである。
このような第4の態様であるフューエルリッドの開閉装置によれば、屈曲部位に耐久性を持たせることができる。
【0015】
本発明の第5の態様は第1の態様乃至第4の態様のうち何れか1つの態様であるフューエルリッドの開閉装置において、フューエルリッドの裏面の一端側には、ヒンジピンが挿入され且つ固定される一対の軸受部が離隔して形成され、ヒンジブラケットの他端側には、ヒンジピンが回動自在に挿入される一対の軸受部が離隔して形成され、保持ブラケットはヒンジブラケットの一対の軸受部間に配置されているものである。
【0016】
このような第5の態様であるフューエルリッドの開閉装置によれば、本装置の構成をシンプルにすることができる。
【0017】
本発明の第6の態様は第1の態様乃至第5の態様のうち何れか1つの態様であるフューエルリッドの開閉装置において、ヒンジピンのカム部のカムプロフィールは、フューエルリッドをフューエルインレットボックスの開口部を閉じた状態から所定位置まで開いていくことで、保持ブラケットの弾性変形によって係合部を乗り越えると、部材の弾性作用に基づく復元力により係合部が元の位置に復帰できるような形状に形成されていると共に、フューエルリッドの所定位置からフューエルインレットボックスの開口部を閉塞する位置までフューエルリッドを閉じていくことで、保持ブラケットの弾性変形によって係合部を乗り越えると、部材の弾性作用に基づく復元力により係合部が元の位置に復帰できるような形状に形成されているものである。
【0018】
このような第6の態様であるフューエルリッドの開閉装置によれば、フューエルリッドが開いた位置及び閉じた位置の何れでも、保持ブラケットの係合部でヒンジピンのカム部をその位置で保持できるようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のフューエルリッドの開閉装置によれば、ヒンジピンとヒンジブラケットとの間に介在する簡易な構造であるカム部及び保持ブラケットだけで、給油の際、フューエルリッドの開状態を確実に保持することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のフューエルリッドの開閉装置における好ましい実施の形態例を示す図で、(A)はフューエルリッドの裏面を示す平面図、(B)は(A)のA−A線断面図、(C)は(A)のB−B線断面図である。
【図2】図1(C)に示す保持ブラケットを拡大した詳細図である。
【図3】フューエルリッドを開いた状態を示す斜視図である。
【図4】従来のフューエルリッドの構造を示す図で、(A)はフューエルリッドの裏面を示す平面図、(B)は(A)のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のフューエルリッドの開閉装置を実施するための形態例について、図面を参照して説明する。この本発明のフューエルリッドの開閉装置は図3に示すフューエルリッドの構造と基本的には類似構造で、ヒンジ部のみが従来にはない進歩性を有する新規な構造である。したがって、フューエルインレットボックス6、ストライカ部9、フューエルキャップ10、テザー11及び給油口12については図3に付された符号を用いて説明する。
【0022】
なお、ストライカ部9は図3には示されていないフューエルインレットボックス6の内側6bに設けられたロック機構によって嵌脱自在にロックすることができる。ここで、「嵌脱」とは、嵌めたり脱したりすることを意味する。このようなストライカ部9及びロック機構は周知技術のものが使用されている。
【0023】
このような本発明のフューエルリッドの開閉装置は図1(A)に示すように、フューエルインレットボックス6の開口部6aを覆うためのフューエルリッド2と、フューエルインレットボックス6の内側6bに一端側が固定されるヒンジブラケット3と、ヒンジブラケット3の他端側を回動自在に軸支すると共にフューエルリッド2の裏面の一端側が固定され、且つヒンジブラケット3の他端側を回動自在に軸支する部位及びフューエルリッド2が固定される部位以外の位置にカム部4aが形成されたヒンジピン4と、弾性変形可能な部材から構成されると共にヒンジブラケット3に固定され、人間の手でフューエルリッド2を開閉させることにより当該フューエルリッド2の開閉動作に連動してヒンジピン4が回転することで移動しているカム部4aが、部材の弾性変形によって乗り越えられるような当該カム部側に向かって山形に屈曲する係合部5aが形成された保持ブラケット5とを備えている。これらフューエルリッド2、ヒンジブラケット3ヒンジピン4及び保持ブラケット5がヒンジ部として機能する。
【0024】
フューエルリッド2は、フューエルリッド2の車両ボデーの外側部を構成するアウタパネル21と、アウタパネル21を補強するためにアウタパネル21の裏面(車両ボデーの内側部)に固定されるインナパネル22とから構成されている。このアウタパネル21とインナパネル22との固定手段は、スポット溶接、アーク溶接やボルト等による締結手段が考えられる。インナパネル22は、フューエルリッド2の一端側となる部位に第1の一対の軸受部22a、22bが離隔して形成され、フューエルリッド2の他端側となる部位にストライカ部9が車両ボデーの内側部へと向かって突設されている。ここで、「突設」とは、突き出した状態に設けることを意味する。
【0025】
ヒンジピン4は図1(A)、(B)、(C)に示すように、実質的に中央となる中央部にカム部4aが形成され、その他の部位は円柱状に形成されている。このヒンジピン4は両側がフューエルリッド2のインナパネル22の第1の一対の軸受部22a、22bに挿入され固定されている。この場合、カム部4aはインナパネル22の第1の一対の軸受部22a、22b間に位置すると共にアウタパネル21とは離隔して配置されるようになっている。なお、第1の一対の軸受部22a、22bとヒンジピン4との固定手段は、スポット溶接、アーク溶接やボルト等による締結手段が考えられる。また、図1(B)においては、見易くするためにヒンジブラケット3及び保持ブラケット5を省略し、図1(C)においては、見易くするためにインナパネル22を省略している。
【0026】
保持ブラケット5は、弾性変形可能な部材が、普通鋼板、防錆鋼板、ステンレス鋼板及びばね鋼からなる群から選択した何れか一つの要素である。このような要素を保持ブラケット5の部材として選択することで、保持ブラケット5の繰り返し弾性変形による弾性劣化に至るまでの時期を延ばすことが可能になる。
【0027】
また、保持ブラケット5は図1(C)、図2に示すように、板材がくさび形に屈曲され、一方の片5bはヒンジブラケット3に固定され、他方の片5cは係合部5aが形成され、一方の片5b及び他方の片5cで囲まれる空間内にカム部4aが位置するように構成されている。このように保持ブラケット5を構成することで、屈曲部位に弾性作用を持たせることができるようになる。
さらに、保持ブラケット5の屈曲した部位5dは、円弧状に形成されている。このように保持ブラケット5の屈曲した部位5dを形成することで、屈曲部位に耐久性を持たせることができる。
【0028】
このように構成された保持ブラケット5が固定されるヒンジブラケット3は図1(A)に示すように、離隔して配置される取付け孔3a、3bが穿孔され、これら取付け孔3a、3bにボルト(図示せず。)を挿入してフューエルインレットボックス6の内側6bに固定できるようになっている(図3参照。)。また、ヒンジブラケット3の他端側にはヒンジピン4が回動自在に挿入される第2の一対の軸受部3c、3dが離隔して形成され、当該第2の一対の軸受部3c、3dは第1の一対の軸受部22a、22b間に配置されるようになっている。なお、第2の一対の軸受部3c、3dは必ずしも第1の一対の軸受部22a、22b間に配置されていなくてもよく、保持ブラケット5が第2の一対の軸受部3c、3d間に位置してヒンジブラケット3に固定することができれば、第2の一対の軸受部3c、3d間に第1の一対の軸受部22a、22bが配置されたり、第1の一対の軸受部22a、22bの何れか一方の軸受部だけが第2の一対の軸受部3c、3d間に配置されたりするようになってもよい。
【0029】
このヒンジブラケット3のフューエルリッド側の面の取付け孔3a、3b間に保持ブラケット5の一方の片5bが固定されている。この場合、図1(C)に示すように、保持ブラケット5は、他方の片5cがフューエルリッド2の一端側に向かって開くように傾斜するように配置されている。また、他方の片5cのフューエルリッド側はヒンジブラケット3のフューエルリッド側の面に向かって傾斜する係止片5eが形成されている。この係止片5eは、フューエルリッド2の全開位置として機能させることもできる。即ち、ヒンジピン4が回転することで移動しているカム部4aが、この係止片5eに係止されることでフューエルリッド2の全開位置とすることができる。
【0030】
また、ヒンジピン4のカム部4aのカムプロフィールは図1(C)、図2に示すように、フューエルリッド2をフューエルインレットボックス6の開口部6aを閉じた状態から所定位置、例えば全開位置まで開いていくことで、保持ブラケット5の弾性変形によって係合部5aを乗り越えると、部材の弾性作用に基づく復元力により係合部5aが元の位置に復帰できるような形状に形成されている。また、このカム部4aのカムプロフィールは、フューエルリッド2の全開位置からフューエルインレットボックス6の開口部6aを閉塞する位置までフューエルリッド2を閉じていくことで、保持ブラケット5の弾性変形によって係合部5aを乗り越えると、部材の弾性作用に基づく復元力により係合部5aが元の位置に復帰できるような形状に形成されている。
【0031】
このようにヒンジピン4のカム部4aのカムプロフィールを形成することで、フューエルリッド2が開いた位置及び閉じた位置の何れでも、保持ブラケット5の係合部5aでヒンジピン4のカム部4aをその位置で保持できるようになる。
【0032】
このように構成された本発明のフューエルリッドの開閉装置の動作について説明する。
運転者やガソリンスタンドの店員が燃料を給油するために、例えば運転席に設けられているフューエルリッドオープナーによってストライカ部9をロック機構から解除すると、フューエルリッド2がある程度、半開き状態になるので、フューエルインレットボックス6の開口部6aを覆うように閉じていたフューエルリッド2を手で開くことができる。フューエルリッド2を手で開いていくと、ヒンジピン4はフューエルリッド2の裏面の一端側の一対の軸受部22a、22bに固定されているので、当該ヒンジピン4に形成されているカム部4aもヒンジピン4の回転と共に移動していく。この際、カム部4aは、ヒンジブラケット3に固定されている保持ブラケット5に形成された係合部5aに圧接するが、保持ブラケット5が弾性変形可能な部材から構成されているので、その弾性変形により係合部5aを乗り越えることができる。
【0033】
保持ブラケット5は、カム部4aが係合部5aを乗り越えると、部材の弾性作用に基づく復元力により係合部5aが元の位置に復帰することができるので、運転者やガソリンスタンドの店員が手によって一定以上の力でフューエルリッド2を閉じる方向に押さなければ、フューエルリッド2を閉じることはできなくなる。
【0034】
このようにして、フューエルリッド2を手で全開させた後に、給油口12からフューエルキャップ10を取り外し、フューエルリッド2の裏面に設けられたハンガー9aに、テザー11に形成された引掛け部11aを引っ掛けることで、フューエルキャップ10をフューエルリッド2に保持することができる。この状態で、運転者やガソリンスタンドの店員が給油ガン(図示せず。)を持ってその先端部を給油口12に差し込み、フューエルタンク(図示せず。)に燃料を給油する。
【0035】
この給油の際、フューエルリッド2を全開後に給油口12からフューエルキャップ10を取り外し、フューエルリッド2の裏面に設けられたハンガー9aに、テザー11に形成された引掛け部11aを引っ掛ける等の作業を行なっている時にテザー11が引っ張られても、フューエルリッド2と連動するカム部4が係合部5aに引っ掛かるので、フューエルリッド2が閉じる方向に回転移動してしまうことを防ぐことができる。
【0036】
したがって、給油中に運転者やガソリンスタンドの店員が何かの拍子にフューエルリッド2に触れた場合でも、複雑な摩擦抵抗の設定が不要で、ヒンジピン4とヒンジブラケット3との間に介在する簡単な機構であるカム部4a及び保持ブラケット5だけで、フューエルリッド2が閉じる方向に回転してしまうことを確実に防ぐことができる。
【0037】
燃料給油後は、運転者やガソリンスタンドの店員がフューエルリッド2に保持されているフューエルキャップ10を取り外すことで、テザー11の引掛け部11aがハンガー9aから外れることからフューエルキャップ10を給油口12まで移動することができる。そして、そのフューエルキャップ10を給油口12に締め付けて固定し、フューエルリッド2を閉じる方向に回転して閉めることで、当該フューエルリッド2をロック機構及びストライカ部9によって閉状態に係止することができる。これにより、給油作業は終了する。
【0038】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0039】
2……フューエルリッド
22a、22b……一対の軸受部
3……ヒンジブラケット
3c、3d……一対の軸受部
4……ヒンジピン
4a……カム部
5……保持ブラケット
5a……係合部
5b……一方の片
5c……他方の片
5e……屈曲した部位
6……フューエルインレットボックス
6a……開口部
12……給油口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボデーの所定位置に配置される給油口を囲むように形成されたフューエルインレットボックスの開口部をフューエルリッドで開閉自在に覆うためのフューエルリッドの開閉装置において、
前記フューエルインレットボックスの内側に一端側が固定されるヒンジブラケットと、
前記ヒンジブラケットの他端側を回動自在に軸支すると共に前記フューエルリッドの裏面の一端側が固定され、且つ前記ヒンジブラケットの前記他端側を回動自在に軸支する部位及び前記フューエルリッドが固定される部位以外の位置にカム部が形成されたヒンジピンと、
弾性変形可能な部材から構成されると共に前記ヒンジブラケットに固定され、人間の手で前記フューエルリッドを開閉させることにより当該フューエルリッドの開閉動作に連動して前記ヒンジピンが回転することで移動している前記カム部が、前記部材の弾性変形によって乗り越えられるような当該カム部側に向かって山形に屈曲する係合部が形成された保持ブラケットとを備えていることを特徴とするフューエルリッドの開閉装置。
【請求項2】
前記弾性変形可能な部材は、普通鋼板、防錆鋼板、ステンレス鋼板及びばね鋼からなる群から選択した何れか一つの要素であることを特徴とする請求項1記載のフューエルリッドの開閉装置。
【請求項3】
前記保持ブラケットは、板材がくさび形に屈曲され、一方の片は前記ヒンジブラケットに固定され、他方の片は前記係合部が形成され、前記一方の片及び前記他方の片で囲まれる空間内に前記カム部が位置するように構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のフューエルリッドの開閉装置。
【請求項4】
前記保持ブラケットの屈曲した部位は、円弧状に形成されていることを特徴とする請求項3記載のフューエルリッドの開閉装置。
【請求項5】
前記フューエルリッドの前記裏面の前記一端側には、前記ヒンジピンが挿入され且つ固定される一対の軸受部が離隔して形成され、
前記ヒンジブラケットの他端側には、前記ヒンジピンが回動自在に挿入される一対の軸受部が離隔して形成され、
前記保持ブラケットは前記ヒンジブラケットの前記一対の軸受部間に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち何れか1項に記載のフューエルリッドの開閉装置。
【請求項6】
前記ヒンジピンの前記カム部のカムプロフィールは、前記フューエルリッドを前記フューエルインレットボックスの前記開口部を閉じた状態から所定位置まで開いていくことで、前記保持ブラケットの前記弾性変形によって前記係合部を乗り越えると、前記部材の弾性作用に基づく復元力により前記係合部が元の位置に復帰できるような形状に形成されていると共に、前記フューエルリッドの前記所定位置から前記フューエルインレットボックスの前記開口部を閉塞する位置まで前記フューエルリッドを閉じていくことで、前記保持ブラケットの前記弾性変形によって前記係合部を乗り越えると、前記部材の前記弾性作用に基づく前記復元力により前記係合部が元の位置に復帰できるような形状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち何れか1項に記載のフューエルリッドの開閉装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate