説明

ブロック共重合体、その製造方法、粘着組成物及び粘着シート

【課題】より高い帯電防止効果と、安定した粘着力を有する粘着剤層を形成できるブロック共重合体を提供する。
【解決手段】分子内に、式(1)


(式中、XとYはイオン対を形成し得る対カチオンと対アニオンの組み合わせを、Rは水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を、Dは連結基を表す。)で示される繰り返し単位からなるブロックAと、(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の繰り返し単位からなるブロックBとを有するブロック共重合体;その製造方法;該ブロック共重合体を含有する粘着組成物;及び該組成物から得られる粘着剤層を有する粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン対を含む基を有する繰り返し単位からなるブロックAと、(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の繰り返し単位からなるブロックBとを有するブロック共重合体、その製造方法、粘着組成物、及び粘着組成物から得られる粘着剤層を有する粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
表面保護フィルムは、被保護体の加工、搬送時に生じる傷や汚れを防止する目的で用いられる。例えば、液晶ディスプレイに用いられる偏光板や波長板などの光学部材には、傷や汚れなどを防止する目的で、表面保護フィルムが粘着剤を介して貼り合わされる。
【0003】
ところで、かかる表面保護フィルムや光学部材は、合成樹脂材料により構成されているため、電気絶縁性が高く、保護フィルムを偏光板などの光学部材から剥離する際に静電気が発生し易い。静電気を帯びたままの状態で、液晶に電圧を印加すると、液晶分子の配向が損失したり、パネルの欠損が生じる。そのため、このような不具合を防止するため、表面保護フィルムには各種帯電防止処理が施されている。
【0004】
従来、上述したような静電気の帯電防止処理の方法として、例えば、特許文献1には、粘着剤に低分子の界面活性剤を添加し、粘着剤中から界面活性剤を被着体に転写させて帯電防止する方法が開示されている。
また、特許文献2には、ポリエーテルポリオールとアルカリ金属塩からなる帯電防止剤をアクリル粘着剤に添加し、粘着剤表面に帯電防止剤がブリードするのを抑制する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献1、2に記載された、粘着剤に低分子の界面活性剤や帯電防止剤を添加する方法においては、これらの界面活性剤や帯電防止剤が粘着剤表面にブリードし易く、経時的に粘着力が低下して、剥がれや浮きが発生したり、保護フィルムに適用した場合に被着体が汚染する場合があった。
【0005】
このような問題を解決すべく、特許文献3には、ベースポリマー(粘着性樹脂)に、含窒素オニウム塩等のイオン性液体を含有させた粘着剤組成物(粘着剤)が提案されている。この文献記載の粘着剤組成物(粘着剤)によれば、高い帯電防止効果を得ることができると共に、粘着力を安定化することができるとされている。
しかしながら、特許文献3に記載された粘着剤組成物は、低分子量のイオン性液体を用いるものであるため、高温高湿度の環境下に置かれたときなどに、該粘着剤組成物から形成された粘着剤層からイオン性液体成分が表面にしみ出し、製品を汚染する場合があった。
【0006】
本発明に関連して、非特許文献1には、イオン性液体ホモポリマーを原子移動ラジカル重合(ATRP)法にて重合した例が記されている。
また、特許文献4には、イオン性液体のポリマーを粘着剤中に分散させた帯電防止粘着剤が開示されている。
しかしながら、特許文献4に記載された帯電防止粘着剤は、高い導電性を得るためには、過剰量のイオン液体のポリマーを粘着剤中に添加しなくてはならず、粘着力との両立が困難な場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−165460号公報
【特許文献2】特開平6−128539号公報
【特許文献3】特開2006−152154号公報
【特許文献4】特開2009−40996号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】SHIJIE DING et al. Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.42,5794−5801(2004)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述した従来技術の実情に鑑みてなされたものであって、より高い帯電防止効果を奏すると共に、安定した粘着力を有する粘着剤層を形成できるブロック共重合体、その製造方法、このブロック共重合体を含有する粘着組成物、及びこの組成物から得られる粘着剤層を有する粘着シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、後述する、イオン対を含む基を有する式(1)で表される繰り返し単位からなるブロックAと、(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の繰り返し単位からなるブロックBとを有するブロック共重合体を含有する粘着組成物を用いることにより、高い帯電防止効果と、安定した粘着力を有する粘着剤層を形成できることを見出した。また、このようなブロック共重合体は、リビングラジカル重合法により、簡便かつ効率よく製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
かくして本発明の第1によれば、下記〔1〕〜〔5〕のブロック共重合体が提供される。
〔1〕分子内に、式(1)
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、XとYは、イオン対を形成し得る対カチオンと対アニオンの組み合わせを表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、Dは連結基を表す。)で示される繰り返し単位からなるブロックAと、
(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の繰り返し単位からなるブロックBとを有することを特徴とするブロック共重合体。
〔2〕前記式(1)で示される繰り返し単位が、式(1)中、Xが、含窒素オニウムカチオン、含硫黄オニウムカチオン、又は含リンオニウムカチオンである繰り返し単位である〔1〕に記載のブロック共重合体。
【0014】
〔3〕前記式(1)で示される繰り返し単位が、式(1)中、Dが、式:*−(CHO−(式中、nは1〜6の整数を表し、*はXとの結合位置を示す。)で示される基である繰り返し単位である、〔1〕又は〔2〕に記載のブロック共重合体。
〔4〕前記(メタ)アクリル酸エステル化合物のホモポリマーのガラス転移温度が、−70〜0℃である〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のブロック共重合体。
〔5〕ブロック共重合体中の前記ブロックAとブロックBの存在割合が、重量比で、(ブロックAの存在量):(ブロックBの存在量)=1:9〜9:1である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のブロック共重合体。
【0015】
本発明の第2によれば、下記〔6〕のブロック共重合体の製造方法が提供される。
〔6〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のブロック共重合体の製造方法であって、下記の、工程(A1)、工程(A2)及び工程(B)を有するか、又は、工程(A3)及び工程(B)を有することを特徴とするブロック共重合体の製造方法。
工程(A1):式(2a)
【0016】
【化2】

【0017】
〔式中、Rは前記と同じ意味を表し、R13は、下記式
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、D、X及びYは、前記と同じ意味を示す。)で表される基に変換可能な基を表す。〕で示される単量体を、リビングラジカル重合法により重合して、式(2)
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、R及びR13は、前記と同じ意味を表す。)で示される繰り返し単位からなるブロックA’を得る工程
工程(A2):前記ブロックA’を前記ブロックAに変換する工程
工程(A3):式(1a)
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、R、D、X及びYは、前記と同じ意味を示す。)で示される単量体を、リビングラジカル重合法により重合して、式(1)
【0024】
【化6】

【0025】
(式中、R、X及びYは、前記と同じ意味を示す。)で示される繰り返し単位からなるブロックAを得る工程
工程(B):(メタ)アクリル酸エステル化合物を、リビングラジカル重合法により重合して、前記(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の繰り返し単位からなるブロックBを得る工程
〔7〕前記リビングラジカル重合法が、原子移動ラジカル重合(ATRP)法又は可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法である、〔6〕に記載のブロック共重合体の製造方法。
【0026】
本発明の第3によれば、下記〔8〕の粘着組成物が提供される。
〔8〕〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のブロック共重合体を含有する粘着組成物。
本発明の第4によれば、下記〔9〕の粘着シートが提供される。
〔9〕支持体上の片面又は両面に、〔8〕に記載の粘着組成物からなる粘着剤層を有する粘着シート。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、高い帯電防止効果と、安定した粘着力とを有する粘着剤層を形成できるブロック共重合体及び粘着組成物、及びこの粘着組成物から得られる粘着剤層を有する粘着シートが提供される。
また、本発明によれば、高い帯電防止効果と、安定した粘着力とを有する粘着剤層を形成できるブロック共重合体を、簡便かつ効率よく製造することができるブロック共重合体の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を、1)ブロック共重合体、2)ブロック共重合体の製造方法、3)粘着組成物、4)粘着シートに項分けして詳細に説明する。
【0029】
1)ブロック共重合体
本発明のブロック共重合体は、分子内に、前記式(1)で示される繰り返し単位からなるブロックAと、(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の繰り返し単位からなるブロックBとを有することを特徴とする。
【0030】
(A)ブロックA
本発明のブロック共重合体中のブロックAは、前記式(1)で示される繰り返し単位からなる。
式(1)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。Rの炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられ、メチル基であるのが好ましい。
【0031】
とYは、イオン対を形成し得る対カチオンと対アニオンの組み合わせを表し、Xはカチオン成分を、Yはアニオン成分を示す。
の好ましい具体例としては、含窒素オニウムカチオン、含硫黄オニウムカチオン、含リンオニウムカチオンが挙げられる。より好ましい具体例としては、下記に示すものが挙げられる。
【0032】
【化7】

【0033】
上記式(X−1)〜(X−6)中、R〜R10はそれぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表し、**は、Dとの結合位置を示す。
【0034】
前記R〜R10の、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基の炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等の炭素数1〜20のアルキル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜20のアリール基;等が挙げられる。
【0035】
前記置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基の置換基としては、フェニル基、4−メチルフェニル基などの置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子;などが挙げられる。
【0036】
前記(X−1)〜(X−3)で表される基は、含窒素複素環を構成する任意の炭素原子に置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、メチル基、エチル基などのアルキル基;フェニル基、4−メチルフェニル基などの置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子;などが挙げられる。
【0037】
これらの中でも、前記Xとしては、環内に1〜3個の窒素原子を含有する複素環基のオニウムカチオンであるのが好ましく、前記(X−1)、(X−2)、(X−3)で表される基がより好ましく、(X−1)又は(X−2)で表される基がさらに好ましく、(X−1)で表される基が特に好ましい。
【0038】
としては、Xとイオン対を形成し得るものであれば、特に限定されない。例えば、Cl、Br、I、AlCl、AlCl、BF、PF、ClO、NO、CHCOO、CFCOO、CHSO、CFSO、(CFSO、(CFSO、AsF、SbF、NbF、TaF、F(HF)(pは任意の自然数を表す。)、(CN)、CSO、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N、FeClなどが挙げられる。これらの中でも、製造容易性などの観点から、Br、BF、(CFSOが好ましい。
【0039】
Dは連結基を表す。Dの連結基としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0040】
【化8】

【0041】
(式中、nは1〜6のいずれかの整数を表し、*はXとの結合位置を示す。)
これらの中でも、入手容易性などの観点から、前記Dとしては、*−(CHO−(nは前記と同じ意味を表す。)で示される基が好ましく、*−(CHO−で示される基がより好ましい。
【0042】
(B)ブロックB
本発明のブロック共重合体中のブロックBは、(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の繰り返し単位からなる。ここで、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを意味する。
本発明のブロック共重合体は、ポリ(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の繰り返し単位からなる部分、すなわちブロックBを有することで、粘着組成物、又は粘着組成物の主成分と成り得る。
【0043】
本発明に用いる(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の繰り返し単位は、下記式(3)で表される。
【0044】
【化9】

【0045】
式中、R11は、水素原子又はメチル基を表す。
【0046】
12は、炭素数1〜14のアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を表す。但し、基:OR12は、後述するR13が式:−D−Xで表される基に変換される場合において、式:−D−Xで表される基に変換可能な基ではない。
【0047】
12の炭素数1〜14のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルへキシル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基等が挙げられる。
置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、4−クロロフェニル基、2−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基等が挙げられる。
【0048】
(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の繰り返し単位は、前記式(3)で表される繰り返し単位の一種のみからなるものであっても、前記式(3)で表される繰り返し単位の複数種からなるものであってもよい。
【0049】
なお、用いる(メタ)アクリル酸エステル化合物からなるポリマーのガラス転移温度は、−70〜0℃であるのが好ましい。このような(メタ)アクリル酸エステル化合物を用いることにより、本発明の効果がより発現しやすくなる。
【0050】
本発明のブロック共重合体中の前記ブロックAとブロックBの存在割合は、特に限定されないが、重量比で、(ブロックAの存在量):(ブロックBの存在量)が1:9〜9:1であるのが好ましく、3:7〜7:3であるのがより好ましく、3:7〜5:5であるのが特に好ましい。
ブロックAとブロックBの存在割合がこのような値であるブロック共重合体は、より高い導電性と優れた粘着力を有する。
【0051】
本発明のブロック共重合体としては、少なくとも1つのブロックAと、少なくとも1つのブロックBを有するものであれば、ジブロック共重合体であっても、トリブロック共重合体であっても、4ブロック以上のマルチブロック共重合体であってもよい。ブロックの構成としては、例えば、ブロックA−ブロックB、ブロックA−ブロックB−ブロックA、ブロックB−ブロックA−ブロックB、ブロックA−ブロックB−ブロックA−ブロックB、ブロックA−ブロックB−ブロックA−ブロックB−ブロックA、ブロックB−ブロックA−ブロックB−ブロックA−ブロックB等が挙げられる。
【0052】
本発明のブロック共重合体の数平均分子量(Mn)は、通常、10,000〜100,000、好ましくは20,000〜70,000である。
数平均分子量(Mn)が10,000より小さいと、十分な粘着力が得られないおそれがある。
【0053】
本発明のブロック共重合体の分子量分布(PDI)は、通常1.05〜1.5、好ましくは、1.05〜1.4である。このような範囲とすることで、凝集力にすぐれた粘着性組成物を得ることができる。
【0054】
なお、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(PDI)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)法により測定して、標準ポリスチレン換算値として算出された値である。
【0055】
本発明のブロック共重合体を製造する方法としては、特に限定されないが、リビングラジカル重合法を用いる方法が好ましい。リビングラジカル重合法を用いることにより、前述のような大きい数平均分子量(Mn)と、1に近い分子量分布(PDI)を有する、粘着性及び凝集性に優れたブロック共重合体を、効率よく製造することができる。
なかでも、本発明のブロック共重合体は、後述する本発明の製造方法により、簡便かつ効率よく製造することができる。
【0056】
2)ブロック共重合体の製造方法
本発明のブロック共重合体の製造方法は、「本発明のブロック共重合体」の製造方法であって、下記「工程(A1)、工程(A2)及び工程(B)を有する」か、又は、下記「工程(A3)及び工程(B)を有する」ことを特徴とする。
【0057】
工程(A1):前記式(2a)で示される単量体を、リビングラジカル重合法により重合して、式(2)で示される繰り返し単位からなるブロックA’を得る工程
工程(A2):前記ブロックA’を前記ブロックAに変換する工程
工程(A3):前記式(1a)で示される単量体を、リビングラジカル重合法により重合して、式(1)で示される繰り返し単位からなるブロックAを得る工程
工程(B) :(メタ)アクリル酸エステル化合物を、リビングラジカル重合法により重合して、前記(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の繰り返し単位からなるブロックBを得る工程
【0058】
ここで、リビングラジカル重合法は、重合末端の活性が失われることなく維持されるラジカル重合法であって、通常、末端が常に活性を持ち続ける重合法のことをいう。リビングラジカル重合法としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いる方法、コバルトポルフィリン錯体(J.Am.Chem.Soc.,116,7943(1994))や、ニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いる方法(Macromolecules,27,7228(1994))、原子移動ラジカル重合(ATRP)法、及び可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法等が挙げられる。これらの中でも、制御の容易さ等から、ATRP法、RAFT重合法が好ましい。
【0059】
「工程(A1)、工程(A2)及び工程(B)を有する」方法において、工程順は、工程(A1)の後に、工程(A2)が行われること以外は、特に限定されない。
例えば、ブロックA−ブロックBのジブロック構成を有するブロック共重合体を製造する場合であれば、工程順は、工程(A1)→工程(B)→工程(A2)、又は、工程(B)→工程(A1)→工程(A2)であるのが好ましい。
【0060】
「工程(A3)及び工程(B)を有する」方法においては、例えば、ブロックA−ブロックBのジブロック構成を有するブロック共重合体を製造する場合であれば、工程順は、工程(A3)→工程(B)、又は、工程(B)→工程(A3)である。
【0061】
「工程(A3)及び工程(B)を有する」方法においては、
(i)リビングラジカル重合法によりブロックAを製造し、得られたブロックAをマクロ重合開始剤として、(メタ)アクリル酸エステル化合物をリビングラジカル重合法により重合して、ブロックAに繋げてブロックBを製造する方法、
(ii)リビングラジカル重合法によりブロックBを製造し、得られたブロックBをマクロ重合開始剤として、前記式(1a)で表されるモノマーをリビングラジカル重合法により重合して、ブロックBに繋げてブロックAを製造する方法、
(iii)ブロックAをリビングラジカル重合法により製造し、別にブロックBをリビングラジカル重合法により製造し、得られたブロックAとブロックBを結合させる方法、のいずれであってもよい。
【0062】
本発明としては、収率よく目的物が得られる観点から、「工程(A1)、工程(A2)及び工程(B)を有する」方法が好ましい。
以下、「工程(A1)、工程(A2)及び工程(B)を有する」方法のうち、工程(A1)→工程(B)→工程(A2)の工程順で、ブロックA−ブロックBの構成を有するジブロック共重合体を製造する方法を例にとって、詳細に説明する。
本明細書において、「ブロックA’」は、繰り返し単位のみからなるブロック体の他、両末端、又は片末端に開始剤等由来の基が存在する状態のものも便宜上含めるものとする。
なお、本発明において、工程数が異なる場合であっても、ブロックA’をブロックAに変換する方法、及び、ブロックBを製造する方法は、以下に示す方法と同様である。
【0063】
(工程A1)ブロックA’の製造
ブロックA’は、下記式(2)で表される繰り返し単位を有する。
【0064】
【化10】

【0065】
式中、Rは前記と同じ意味を表す。R13は、式:−D−Xで表される基に変換可能な基を表す。すなわち、R13は、後に、式:−Xで表される基を導入しやすい官能基を有し(又はその官能基は保護されていてもよい。)、かつ、リビングラジカル重合反応を妨げない基である。R13としては、例えば、水酸基等が挙げられる。また、官能基が保護されている場合、R13は、例えば、tert−ブチル基等が挙げられる。
ブロックA’は、下記式(2a)
【0066】
【化11】

【0067】
(式中、R、R13は前記と同じ意味を表す。)で表されるブロックA’製造用モノマー(モノマー(2a))を、重合開始剤の存在下にリビングラジカル重合することによって製造することができる。
【0068】
リビングラジカル重合する方法としては、特に制限されないが、本発明においては、大きな分子量と狭い分子量分布を有し、凝集性と帯電防止性に優れる共重合体を簡便に製造することができることから、原子移動ラジカル重合(ATRP)法又は可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法を用いるのが好ましい。
【0069】
〈ATRP法〉
ATRP法は、一般的には、遷移金属錯体からなるレドックス触媒の存在下、有機ハロゲン化合物を重合開始剤として用い、ラジカル重合性化合物を重合させる方法である。
用いるレドックス触媒(レドックス共役錯体)は、中心金属の原子価が低原子価と高原子価との間を可逆的に変化する錯体である。
【0070】
用いる遷移金属錯体としては、好ましくは周期律表第7族、第8族、第9族、第10族、第11族元素を中心金属とする遷移金属の錯体が挙げられる。
【0071】
遷移金属錯体の中心金属としては、Cu、Ni、Ni、Ni2+、Pd、Pd、Pt、Pt、Pt2+、Rh、Rh2+、Rh3+、Co、Co2+、Ir、Ir、Ir2+、Ir3+、Fe2+、Ru2+、Ru3+、Ru4+、Ru5+、Os2+、Os3+、Re2+、Re3+、Re4+、Re6+、Mn2+、Mn3+からなる群から選ばれる一種以上の金属が挙げられる。これらの中でも、Cu、Ru2+、Fe2+、Ni2+が好ましく、Cuが特に好ましい。Cuの化合物の具体例としては、塩化第1銅、臭化第1銅、ヨウ化第1銅、シアン化第1銅などが挙げられる。
【0072】
上記遷移金属錯体は、遷移金属の塩に有機配位子を作用させることにより調製することができる。有機配位子は、重合溶媒への可溶化及びレドックス共役錯体の可逆的な変化を可能にするため使用される。有機配位子としては、窒素原子、酸素原子、リン原子及び/又はイオウ原子を含有する有機配位子が挙げられるが、窒素原子又はリン原子を含有する有機配位子が好ましく、窒素原子を含有する有機配位子がより好ましい。
【0073】
窒素原子を含有する有機配位子の具体例としては、2,2’−ビピリジル及びその誘導体;1,10−フェナントロリン及びその誘導体;テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス(2−ジメチルアミノエチル)アミン等のポリアミン化合物;下記式(5)、(6)で表される含窒素複素環化合物;等が挙げられる。これらの中でも、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、式(5)で表される化合物((−)−Spartaine)の使用が特に好ましい。
【0074】
【化12】

【0075】
前記遷移金属の塩と有機配位子とは、別々に添加して重合系中で金属錯体を生成させてもよいし、予め前記遷移金属の塩と有機配位子とから調製した遷移金属錯体を重合系中へ添加してもよい。遷移金属が銅である場合には前者の方法が好ましく、ルテニウム、鉄、ニッケルの場合は後者の方法が好ましい。
【0076】
予め調製される遷移金属錯体の具体例としては、トリストリフェニルホスフィノ二塩化ルテニウム、ビストリフェニルホスフィノ二塩化鉄、ビストリフェニルホスフィノ二塩化ニッケル、ビストリブチルホスフィノ二臭化ニッケル等が挙げられる。
【0077】
遷移金属錯体の使用量は、反応系中の濃度として、通常1×10−4〜1モル/リットル、好ましくは1×10−3〜1×10−1モル/リットルとなる量である。また、遷移金属錯体(遷移金属の塩)として1価の銅化合物を使用した場合、有機配位子の添加量は、当該銅化合物に対し、通常1〜3モル当量、好ましくは1〜2モル当量である。
【0078】
重合開始剤として用いる有機ハロゲン化合物としては、例えば、下記式(7)、(8)に示す化合物が挙げられる。また、市販品をそのまま用いることもできる。
【0079】
【化13】

【0080】
式中、Xはハロゲン原子を表し、臭素原子、塩素原子であるのが好ましく、臭素原子であるのがより好ましい。Eは、下記に示すいずれかの基を表す。
【0081】
【化14】

【0082】
式中、rは1〜20の整数、好ましくは1、11、又は17を表し、***は酸素原子との結合位置を表す。
これらの中でも、反応が円滑に開始することから、式(7)で表される化合物が好ましく、下記式(7−1)で表される化合物がより好ましく、式(7−1)で表される化合物であって、式中、rが1である化合物が特に好ましい。
【0083】
【化15】

【0084】
ブロックA’は、モノマー(2a)及び遷移金属錯体(又は遷移金属の塩及び有機配位子)の溶媒溶液に、重合開始剤を添加して、全容を撹拌することにより製造することができる。この反応は、副反応を抑制するため、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。さらに、系内の酸素を除去するために、凍結脱気(反応液を液体窒素で凍結し、ポンプ吸引して脱気し、脱気後常温に戻す)を行うのがより好ましい。
【0085】
用いる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に制限されない。例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等の脂環式炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、フェニルエチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル類;クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類;等が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、収率よく目的物が得られることから、エーテル類が好ましく、アニソールが特に好ましい。
【0086】
溶媒の使用量は、特に制約はないが、モノマー(2a)1gあたり、通常、0.1〜1000ml、好ましくは1〜50mlである。
【0087】
反応温度は特に制約されないが、通常0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは20〜100℃である。
反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から数十時間、好ましくは1時間〜50時間である。
【0088】
重合終了後、常法に従って、遷移金属錯体、残存モノマー及び/又は溶媒を反応混合物から除去、又は留去し、適当な溶媒中で沈殿させることによって重合体を単離することができる。
【0089】
遷移金属錯体を、重合反応液から除去する方法としては、重合反応液をアルミナ、シリカ又はクレーのカラム若しくはパッドに通す方法、重合反応液に金属吸着剤を分散させて処理する方法等が挙げられる。必要ならば金属成分は重合体中に残っていてもよい。
【0090】
沈殿に使用する溶媒としては、水;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘキサン等の炭素数5〜8の脂肪族炭化水素類又は脂環式炭化水素類;メタノール、エタノール、イソプロパノール等の炭素数1〜6のアルコール類等、ジエチルエーテルなどのエーテル類が挙げられる。これらの中でもメタノールが好適である。
【0091】
<RAFT重合法>
RAFT重合法は、RAFT剤の存在下、ラジカル重合性化合物を重合させる方法である。RAFT剤は、電離照射線が照射されることにより、加熱されることにより、又は酸化還元的に、リビングラジカル重合反応の重合開始剤となる化合物である。一般的には、下記式(9)で表される化合物である。
【0092】
【化16】

【0093】
式(9)中、ZはC=S結合の反応性を制御し、ラジカル反応速度に影響を与える基であり、Rtは、解離してフリーラジカルを発生させることができる基である。RAFT剤の溶解性や反応性はRtやZの種類に依存する。
RAFT剤としては、より具体的には、下記式(10)で表されるジチオベンゾエート、(11)で表されるトリチオカルボネート、(12)で表されるジチオカルバメート等が挙げられる。但し、これらに限定されるものではない。
【0094】
【化17】

【0095】
式中、Zは、ドデシル基等のアルキル基を表し、Z、Zは、それぞれ独立して、メチル基、エチル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;を表す。
Rt’は、下記式(13)〜(16)で表されるいずれかの基を示す。
【0096】
【化18】

【0097】
(式中、’*は、Sとの結合位置を示す。)
これらの中でも、本発明においては、加水分解に対してより安定であり、重合反応がより円滑に進行することから、式(11)で表されるRAFT剤を用いるのが好ましく、式(7)中、Rt’が(14)、(15)で表される基であるRAFT剤を用いるのがより好ましい。
RAFT剤は、市販品をそのまま使用することもできる。
【0098】
ブロックA’は、モノマー(2a)及びRAFT剤の溶媒溶液に、ラジカル重合開始剤を添加して、全容を撹拌することにより製造することができる。この反応は、副反応を抑制するため、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。さらに、系内の酸素を除去するために、凍結脱気(反応液を液体窒素で凍結し、ポンプ吸引して脱気し、脱気後常温に戻す)を行うのが好ましい。
【0099】
用いるラジカル重合開始剤は特に制限されず、例えば、過酸化水素、イソブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などのアゾ化合物;過酸化水素−アスコルビン酸、過酸化水素−塩化第一鉄、過硫酸塩−亜硫酸水素ナトリウムなどのレドックス開始剤;などが挙げられる。なかでも、操作が円滑に進行することから、AIBNが好ましい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、RAFT剤1モルに対して、通常、0.01〜1モル、好ましくは、0.1〜0.5モルである。
【0100】
用いる溶媒としては、前記ATRP法で用いる溶媒として例示したのと同様のものが挙げられる。なかでも、本反応においては、収率よく目的物が得られることから、エーテル類が好ましく、テトラヒドロフラン(THF)が特に好ましい。
溶媒の使用量は、特に制約はないが、モノマー(2a)1gあたり、通常、0.1〜1000ml、好ましくは1〜50mlである。
【0101】
反応温度は、通常10℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲、好ましくは20〜100℃である。
反応時間は、反応規模にもよるが、通常数分から数十時間、好ましくは1時間〜50時間である。
【0102】
重合終了後は、常法に従って、反応を終了させ、残存モノマー及び/又は溶媒を除去、又は留去し、適当な溶媒中でブロックA’を沈殿させることにより、重合体を単離することができる。
以上のようにして、ブロックA’を得ることができる。
【0103】
(工程B)ブロックBの製造
次に、得られたブロックA’をマクロ重合開始剤として、下記式(3a)で表される(メタ)アクリル酸エステル化合物(モノマー(3a))をリビングラジカル重合法により重合して、ブロックA’に繋げて、前記式(3)で表される繰り返し単位からなるブロックBを製造する。
【0104】
【化19】

【0105】
式中、R11、R12は前記と同じ意味を表す。
モノマー(3a)をリビングラジカル重合する方法としては、前記ブロックA’の製造方法で示したATRP法及びRAFT重合法が好ましい。
【0106】
〈ATRP法〉
モノマー(3a)をATRP法により重合する方法としては、ブロックA’、モノマー(3a)、及び遷移金属錯体(又は遷移金属の塩及び有機配位子)の溶媒溶液に、重合開始剤を添加して、全容を撹拌する方法が挙げられる。この反応は、副反応を抑制するため、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。さらに、系内の酸素を除去するために、凍結脱気(反応液を液体窒素で凍結し、ポンプ吸引して脱気し、脱気後常温に戻す)を行うのが好ましい。
【0107】
モノマー(3a)の使用量は、ブロックA’とブロックBの存在割合が、重量比で、(ブロックA’の存在量:ブロックBの存在量)が(1:9)〜(9:1)、好ましくは(3:7)〜(7:3)、より好ましくは(3:7)〜(5:5)となるように選択する。
モノマー(3a)の使用量は、ブロックA’1モルに対して、通常、10〜1000モル、好ましくは、20〜600モルである。
【0108】
用いる遷移金属錯体(又は遷移金属の塩及び有機配位子)、重合開始剤、溶媒は、前記ATRP法によるブロックA’の製造方法で例示したのと同様のものが挙げられる。反応条件等も同様である。
【0109】
〈RAFT法〉
モノマー(3a)をRAFT重合法により重合する方法としては、ブロックA’、モノマー(3a)、及びRAFT剤の溶媒溶液に、ラジカル重合開始剤を添加して、全容を撹拌する方法が挙げられる。この反応は、副反応を抑制するため、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。さらに、系内の酸素を除去するために、凍結脱気(反応液を液体窒素で凍結し、ポンプ吸引して脱気し、脱気後常温に戻す)を行うのが好ましい。
【0110】
モノマー(3a)の使用量は、ブロックA’とブロックBの存在割合が、重量比で、(ブロックA’の存在量:ブロックBの存在量)が(1:9)〜(9:1)、好ましくは(3:7)〜(7:3)、より好ましくは(3:7)〜(5:5)となるように選択する。
モノマー(3a)の使用量は、ブロックA’1モルに対して、通常、10〜1000モル、好ましくは、20〜600モルである。
【0111】
用いるRAFT剤、ラジカル重合開始剤、溶媒は、前記RAFT重合法によるブロックA’の製造方法で例示したのと同様のものが挙げられる。反応条件等も同様である。
【0112】
以上のようにして、ブロックA’−ブロックBなるブロック共重合体を製造することができる。
【0113】
(工程A2)ブロックA’をブロックAに変換する
次に、ブロックA’−ブロックBなるブロック共重合体の、ブロックA’の繰り返し単位中のR13を、式:−D−X(D、X、及びYは前記と同じ意味を表す。)で表される基に置き換え、ブロックA’をブロックAに変換する。
13は、式:−Xで表されるイオン対を有する基を導入しやすい官能基を有するため、簡便にブロックAに変換することができる。
例えば、R13が、保護基Qで保護されたヒドロキシル基:−O−Qである場合を、下記式に従い説明する。なお、下記式において、末端基の記載は省略する。
【0114】
【化20】

【0115】
(式中、R、R11、R12、X、Yは前記と同じ意味を表す。Qはヒドロキシル基の保護基を表し、Lはヒドロキシル基、ハロゲン原子等の脱離基を表し、mはブロックAの繰り返し数を、pはブロックBの繰り返し数を表す。また、D’は、式:O−D’がDである基である。)
すなわち、式(18)で表される化合物の保護基Qを脱保護した後、得られる式(19)で表される化合物(化合物(19))のヒドロキシル基と式(20)で表される化合物(化合物(20))との縮合反応を行う。このようにして、ブロックA’をブロックAに変換し、式(21)で表されるブロックA−ブロックBの構成を有するブロック共重合体を製造することができる。
【0116】
ヒドロキシル基の保護基Qを脱保護する方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、以下の方法が挙げられる。
1.Qとしてベンジル基を用いる場合:パラジウムを触媒とした水素添加反応、バーチ還元などで脱離する。
2.Qとしてp−メトキシベンジル基を用いる場合:ベンジル基と同様な条件の他、2,3−ジシアノ−5,6−ジクロロ−p−ベンゾキノンや硝酸セリウムアンモニウムなどによる酸化条件で脱保護する。
3.Qとしてt−ブチル基を用いる場合:トリフルオロ酢酸や、4mol/L塩酸−酢酸エチル溶液などの強酸性条件下で脱保護する。
【0117】
反応終了後は、いずれの場合も、再沈殿させることにより、純度の高い目的物を高収率で得ることができる。
【0118】
化合物(19)と化合物(20)との縮合反応も、従来公知の方法に従い行うことができる。
例えば、Lがヒドロキシル基である場合、化合物(19)と化合物(20)とを、適当な溶媒中で、所望により4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)存在下、脱水縮合剤を用いて脱水縮合する。脱水縮合剤としては、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)、ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP試薬)及び1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)等が挙げられる。
【0119】
用いる化合物(20)の使用量は、化合物(19)1モルに対して、そのm倍のモル量の、1〜2倍量であるのが好ましい。
DAMPの使用量は、化合物(20)1モルに対して、通常、1〜2モル、DCCの使用量は、化合物(20)1モルに対して、通常、1〜5モルである。
【0120】
用いる溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に制限はなく、例えば、アセトンなどのケトン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;テトラヒドロフラン;ジオキサン等が挙げられる。また、脱水処理されていることが好ましい。
【0121】
反応終了後は、ジシクロヘキシル尿素を除去し、再沈殿させることにより、純度の高い目的物を得ることができる。
なお、化合物(20)は、例えば、下記式に従い得ることができる。
【0122】
【化21】

【0123】
(式中、L、D’、X、Yは前記と同じ意味を表す。halは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を表し、Xは結合してカチオンになるとXになる化合物を表し、Yは対イオンを表す。)
【0124】
すなわち、式(22)で表される化合物とXとを反応させて、式(23)で表されるハロゲン化物を得る。次いで、式(23)で表されるハロゲン化物に、式:MY(Mは、アンモニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、銀などを表し、Yは前記と同じ意味を表す。)で表される塩、又は式:HY(Yは前記と同じ意味を表す。)で表される酸を反応させて、目的とする化合物(20)を得ることができる。
以上のようにして、本発明のブロック共重合体を効率よく製造することができる。
【0125】
3)粘着組成物
本発明の粘着組成物は、本発明のブロック共重合体を含有することを特徴とする。
本発明の粘着組成物は、上述したブロック共重合体を含有することで、高い導電性と粘着力を両立する粘着剤層を形成することができる。詳細は不明であるが、導電性材料であるブロックAと粘着性を有するブロックBとを有する本発明のブロック共重合体を含有する粘着組成物は、粘着剤層を形成する際にブロックAとブロックBで相分離が誘起され、これにより高い導電性と粘着力を両立することが可能であると考えられる。
本発明の粘着組成物は、本発明のブロック共重合体のほかに、従来公知の、粘着付与剤や表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、無機又は有機の充填剤、金属粉、顔料などの粉体、粒子状物、鱗片状物、架橋剤、多官能モノマーなどの従来公知の各種の添加剤を、使用する用途に応じてさらに含有していてもよい。
【0126】
本発明の粘着組成物は、本発明のブロック共重合体のみからなるものであってもよいし、本発明のブロック共重合体及び他の添加剤を、所望により適当な溶媒に溶解して調製したものであってもよい。
【0127】
他の添加剤としては、分子内に架橋性官能基を有する単量体の1種または2種以上を重合して得られる(メタ)アクリル系ポリマー及び架橋剤等が挙げられる。架橋剤としては、特に制限されないが、従来アクリル系粘着剤において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。
【0128】
用いる溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒;クロロホルム、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素系溶媒;及びこれらの溶媒の2種以上からなる混合溶媒;などが挙げられる。
【0129】
本発明の粘着組成物の固形分濃度は、特に制限されず、塗工液としての取り扱い性などを考慮して適宜設定すればよいが、通常、10〜60重量%程度である。
【0130】
4)粘着シート
本発明の粘着シートは、支持体上の片面又は両面に、本発明の粘着組成物からなる粘着剤層を有する。
粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、通常1〜100μm、好ましくは2〜50μm程度である。
用いる支持体としては、プラスチック基材や、紙、不織布などの多孔質材料などが挙げられるが、本発明の粘着シートが表面保護フィルムの場合には、帯電防止の効果が顕著であるため、支持体としてプラスチック基材を用いるのが好ましい。
【0131】
プラスチック基材としては、シート状やフィルム状に形成できるものであれば特に限定されるものでない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ポリアクリレート;ポリスチレン;ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミドなどのポリアミド;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリカーボネート;トリアセチルセルロースなどのセルロース系高分子;などが挙げられる。
【0132】
プラスチック基材の厚みは、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度である。
【0133】
用いるプラスチック基材は、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系若しくは脂肪酸アミド系の離型剤による処理;シリカ粉などによる離型及び防汚処理;酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理;塗布型、練り込み型、蒸着型などの反射防止処理;等が施されていてもよい。
【0134】
また、用いるプラスチック基材は、帯電防止処理が施されていてもよい。
プラスチック基材に施される帯電防止処理としては特に限定されないが、例えば、用いるプラスチックフィルムの少なくとも片面に帯電防止層を設ける方法や、プラスチックフィルムに練り込み型帯電防止剤を練り込む方法が挙げられる。
【0135】
フィルムの少なくとも片面に帯電防止層を設ける方法としては、例えば、帯電防止剤と樹脂成分から成る帯電防止性樹脂や導電性ポリマー、導電性物質を含有する導電性樹脂を塗布する方法や導電性物質を蒸着あるいはメッキする方法が挙げられる。
【0136】
前記帯電防止性樹脂、導電性ポリマー、導電性樹脂の厚みは、通常0.01〜5μm、好ましくは0.03〜1μm程度である。
【0137】
導電性物質の蒸着あるいはメッキの方法としては、例えば、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、化学蒸着、スプレー熱分解、化学メッキ、電気メッキ法などが挙げられる。
【0138】
本発明の粘着シートは、必要に応じて粘着面を保護する目的で、粘着剤層表面に剥離フィルムを貼り合わせることが可能である。剥離フィルムを構成する基材としては紙やプラスチックフィルムがあるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【実施例】
【0139】
以下、実施例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は、実施例に何ら制限されることはない。
なお、得られたポリマー等の化学構造の同定、数平均分子量(Mn)、分子量分布(PDI)の測定、及び表面抵抗値の測定は、下記に示す方法により行った。
【0140】
(1)NMRの測定
NMR測定装置(ブルカーバイオスピン社製、AVANCE500)を用いて測定した。
【0141】
(2)数平均分子量(Mn)及び分子量分布(PDI)の測定
GPC測定装置(東ソー社製、HCL−8020)を用いて、以下の条件で測定した。
・流速:1mL/min
・測定温度:40℃
・溶媒:THF
・ポリスチレンゲルカラム(TSKgelGMH−XL+GMH−XL+G2000H−XL)
また、数平均分子量(Mn)は、標準ポリスチレン換算値より算出した。
【0142】
(3)表面抵抗値の測定
表面抵抗測定装置(三菱化学社製、製品名「ロレスタGP MCP−T600」)により、JISK7194に基づく四端子法により、サンプル厚み20μmで、粘着剤層の表面抵抗値を測定した。
【0143】
(4)粘着力の測定
標準環境下(温度23℃、相対湿度50%)で、一日放置した粘着シートを、SUS307を被着体として、JIS Z0237に準じた方法により粘着力を測定した。
【0144】
(製造例1)ホモポリマー(c−1)〜(c−3)の合成
下記式中、n0は繰り返し単位の数を表す。
【0145】
【化22】

【0146】
(1)化合物(a−1)〜(a−3)の合成
(1−1)化合物(a−1)の合成
2−ブロモエタノール13.0g(0.1mol、東京化成工業社製)と1−ブチルイミダゾール13.0g(0.1mol、東京化成工業社製)とを70℃で48時間撹拌し、化合物(a−1)を得た(収率:96%)。
化合物(a−1)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0147】
H−NMR(500MHz、CDCl)δppm:9.71(s,1H)、7.71(d,1H)、7.45(d,1H)、4.52(t,2H)、4.29(t,2H)、3.97(t,2H)、1.91(m,2H)、1.39(m,2H)、0.96(t,3H)
【0148】
(1−2)化合物(a−2)(R=BFである化合物)の合成
前記(1−1)で得た化合物(a−1)の25g(0.1mol)にアセトニトリル40mLを加え、さらに、テトラフルオロホウ酸ナトリウム13.1g(0.12mol、和光純薬工業社製)をアセトニトリル200mLに懸濁させた溶液を追加し、室温で48時間撹拌した。反応溶液を吸引濾過し、塩を除去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)により精製し、目的の化合物(a−2)を得た(収率:85%)。化合物(a−2)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0149】
H−NMR(500MHz、CDCl)δppm:9.71(s,1H)、7.71(d,1H)、7.45(d,1H)、4.52(t,2H)、4.29(t,2H)、3.97(t,2H)、1.91(m,2H)、1.39(m,2H)、0.96(t,3H)
【0150】
(1−3)化合物(a−3)(R=(CFSOである化合物)の合成
化合物(a−1)の25g(0.1mol)にアセトニトリル40mLを加え、さらに、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム34.5g(0.12mol)をアセトニトリル200mLに懸濁させた溶液を追加し、室温で48時間撹拌した。反応溶液を吸引濾過し、塩を除去して得られたろ液から溶媒を除去した残留物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)により精製し目的の化合物(a−3)を得た(収率:83%)。
化合物(a−3)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0151】
H−NMR(500MHz、CDCl)δppm:9.20(s,1H)、7.76(d,2H)、4.23(m,4H)、3.75(t,2H)、1.78(m,2H)、1.26(m,2H)、0.91(t,3H)
【0152】
(2)モノマー(b−1)〜(b−3)の合成
(2−1)モノマー(b−1)(R=Brである化合物)の合成
(1−1)で得られた化合物(a−1)25g(0.1mol)をテトラヒドロフラン(THF)20mLに溶解させ、メタクリル酸クロリド12.5g(0.12mol、東京化成工業社製)を加え、少量(10mg)の重合禁止剤(BHT)、トリエチルアミン12.1g(0.12mol、和光純薬工業社製)を加え20時間室温で撹拌した。反応混合物をろ過して塩を除去し、溶媒を減圧除去して、目的とするモノマー(b−1)を得た(収率:85%)。
モノマー(b−1)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0153】
H−NMR(500MHz、CDCl)δppm:9.71(s,1H)、7.71(d,1H)、7.45(d,1H)、6.12(s,1H)、5.54(s,1H)、4.52(t,2H)、4.29(t,2H)、3.97(t,2H)、1.91(m,2H)、1.82(s,3H)、1.39(m,2H)、0.96(t,3H)
【0154】
(2−2)モノマー(b−2)(R=BFである化合物)の合成
前記(2−1)モノマー(b−1)の合成において、化合物(a−1)の代わりに化合物(a−2)を用いた他は、(2−1)と同様にしてモノマー(b−2)を合成した(収率:80%)。
モノマー(b−2)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0155】
H−NMR(500MHz、CDCl)δppm:9.71(s,1H)、7.71(d,1H)、7.45(d,1H)、6.12(s,1H)、5.54(s,1H)、4.52(t,2H)、4.29(t,2H)、3.97(t,2H)、1.91(m,2H)、1.82(s,3H)、1.39(m,2H)、0.96(t,3H)
【0156】
(2−3)モノマー(b−3)(R=(CFSOである化合物)の合成
前記(2−1)モノマー(b−1)の合成において、化合物(a−1)の代わりに化合物(a−3)を用いた他は、(2−1)と同様にしてモノマー(b−3)を合成した(収率:84%)。
モノマー(b−3)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0157】
H−NMR(500MHz、CDCl)δppm:9.20(s,1H)、7.76(d,2H)、6.12(s,1H)、5.54(s,1H)、4.23(m,4H)、3.75(t,2H)、1.82(s,3H)、1.78(m,2H)、1.26(m,2H)、0.91(t,3H))。
【0158】
(3)ホモポリマー(c−1)〜(c−3)の合成
(3−1)ホモポリマー(c−1)(R=Brである化合物)の合成
(2−1)で得られたモノマー(b−1)13.5g(0.1mol)をTHF20mLに溶解させ、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)197mg(1.2mmol、和光純薬工業社製)を加え、系内の酸素を除去するために、反応液を液体窒素で凍結し、ポンプにより脱気を行い、脱気後常温に戻す操作(凍結脱気)を4回行い60℃24時間撹拌した。反応混合物をメタノール中で再沈殿させ、目的とするホモポリマー(c−1)を得た(収率:60%)。
ホモポリマー(c−1)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0159】
H−NMR(500MHz、CDCl)δppm:9.71、7.71、7.45、4.52、4.29、3.97、1.91、1.39、0.96〔全てbr(br:シグナルがブロードであることを意味する。以下にて同じ。)〕。
【0160】
(3−2)ホモポリマー(c−2)(R=BFである化合物)の合成
前記(3−1)ホモポリマー(c−1)の合成において、モノマー(b−1)の代わりにモノマー(b−2)を用いた他は、(3−1)と同様にしてホモポリマー(c−2)を合成した(収率:70%)。
ホモポリマー(c−2)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0161】
H−NMR(500MHz、CDCl)δppm:9.71、7.71、7.45、4.52、4.29、3.97、1.91、1.39、0.96(全てbr)
【0162】
(3−3)ホモポリマー(c−3)(R=(CFSOである化合物)の合成
前記(3−1)ホモポリマー(c−1)の合成において、モノマー(b−1)の代わりにモノマー(b−3)を用いた他は、(3−1)と同様にしてホモポリマー(c−3)を合成した(収率:65%)。
ホモポリマー(c−3)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0163】
H−NMR(500MHz、CDCl)δppm:9.20、7.76、4.23、3.75、1.82、1.78、1.26、0.91(全てbr)
【0164】
(製造例1’)ホモポリマー(c−4)〜(c−6)の合成
下記式中、n0は繰り返し単位の数を表す。
【0165】
【化23】

【0166】
(1’)化合物(a−4)〜(a−6)の合成
(1’−1)化合物(a−4)の合成
1−メチルピロリジン6.30g(0.069mol、シグマアルドリッチ製)をアセトニトリル15gに溶解し、得られた溶液に、1−ブロモエタノール11.05g(0.085mol)を加え、窒素バブリング処理を1時間行った後、全容を室温で20時間撹拌した。反応液から溶媒を減圧除去して得られた残留物を室温で48時間真空乾燥して、目的の化合物(a−4)を得た(収率:95%)。
化合物(a−4)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0167】
H−NMR(500MHz、DO)δppm:3.57−3.52(m,4H)、3.17(s,6H)、2.26−2.24(m,6H)
【0168】
(1’−2)化合物(a−5)(R=BFである化合物)の合成
前記(1’−1)で得た化合物(a−4)の21g(0.1mol)にアセトニトリル40mLを加えた。この溶液に、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF)13.1g(0.12mol、和光純薬工業社製)をアセトニトリル200mLに懸濁させた溶液を加え、全容を室温で48時間撹拌した。反応溶液を吸引濾過し、塩を除去して得られたろ液から溶媒を除去した残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)により精製し、目的の化合物(a−5)を得た(収率:85%)。
化合物(a−5)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0169】
H−NMR(500MHz、DO)δppm:3.57−3.52(m,4H)、3.17(s,6H)、2.26−2.24(m,6H)
【0170】
(1’−3)化合物(a−6)(R=(CFSOである化合物)の合成
前記(1’−1)で得た化合物(a−4)の21g(0.1mol)に、アセトニトリル40mLを加え、さらにビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム34.5g(0.12mol)をアセトニトリル200mLに懸濁させた溶液を加え、全容を室温で48時間撹拌した。反応溶液を吸引濾過し、塩を除去して得られたろ液から溶媒を除去した残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ジクロロメタン)により精製し目的の化合物(a−6)を得た(収率:80%)。
化合物(a−6)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0171】
H−NMR(500MHz、DO)δppm:3.57−3.52(m,4H)、3.17(s,6H)、2.26−2.24(m,6H)
【0172】
(2’)モノマー(b−4)〜(b−6)の合成
(2’−1)モノマー(b−4)(R=Brである化合物)の合成
前記(1’−1)で得た化合物(a−4)21g(0.1mol)をTHF20mLに溶解させ、メタクリル酸クロリド12.5g(0.12mol、東京化成工業社製)を加え、少量(10mg)の重合禁止剤(BHT)及びトリエチルアミン12.1g(0.12mol、和光純薬工業社製)を加えて20時間室温で反応を行った。反応終了後、反応液をろ過することにより塩を除去した後、溶媒を減圧除去することにより、目的の化合物(b−4)を得た(収率:78%)。
化合物(b−4)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0173】
H−NMR(500MHz、DO)δppm:6.12(1H,s)、5.54(1H,s)、3.57−3.52(m,4H)、3.17(s,6H)、2.26−2.24(m,6H)、1.82(3H,s)
【0174】
(2’−2)モノマー(b−5)(R=BFである化合物)の合成
前記(2’−1)モノマー(b−4)の合成において、化合物(a−4)の代わりに、(1’−2)で得た化合物(a−5)を原料に用いた他は、(2’−1)と同様にしてモノマー(b−5)を得た(収率:75%)。
モノマー(b−5)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0175】
H−NMR(500MHz、DO)δppm:6.12(1H,s)、5.54(1H,s)、3.57−3.52(m,4H)、3.17(s,6H)、2.26−2.24(m,6H)、1.82(3H,s)
【0176】
(2’−3)モノマー(b−6)(R=(CFSOである化合物)の合成
前記(2’−1)モノマー(b−4)の合成において、化合物(a−4)の代わりに、(1’−3)で得た化合物(a−6)を原料に用いた他は、(2’−1)と同様にしてモノマー(b−6)を得た(収率:84%)。
モノマー(b−6)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0177】
H−NMR(500MHz、DO)δppm:6.12(1H,s)、5.54(1H,s)、3.57−3.52(m,4H)、3.17(s,6H)、2.26−2.24(m,6H)、1.82(3H,s)
【0178】
(3’)ホモポリマー(c−4)〜(c−6)の合成
(3’−1)ホモポリマー(c−4)(R=Brである化合物)の合成
(2’−1)で得られたモノマー(b−4)73.5g(0.1mol)をTHF20mLに溶解させ、AIBN197mg(1.2mmol、和光純薬工業社製)を加え、系内の酸素を除去するために、凍結脱気を4回行い、60℃24時間撹拌した。反応混合物をメタノールで再沈殿により精製し、ホモポリマー(c−4)を得た(収率:60%)。ホモポリマー(c−4)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0179】
H−NMR(500MHz、DO)δppm:3.57−3.52(m,4H)、3.17(s,6H)、2.26−2.24(m,6H)、1.82(3H,s)(全てbr)
【0180】
(3’−2)ホモポリマー(c−5)(R=BFである化合物)の合成
前記(3’−1)ホモポリマー(c−4)の合成において、モノマー(b−4)の代わりに、(2’−2)で得たモノマー(b−5)を原料に用いた他は、(3’−1)と同様にしてホモポリマー(c−5)を得た(収率:70%)。
ホモポリマー(c−5)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0181】
H−NMR(500MHz、DO)δppm:3.57−3.52(m,4H)、3.17(s,6H)、2.26−2.24(m,6H)、1.82(3H,s)(全てbr)
【0182】
(3’−3)ホモポリマー(c−6)(R=(CFSOである化合物)の合成
前記(3’−1)ホモポリマー(c−4)の合成において、モノマー(b−4)の代わりに、(2’−3)で得たモノマー(b−6)を原料に用いた他は、(3’−1)と同様にしてホモポリマー(c−6)を得た(収率:65%)。
ホモポリマー(c−6)のH−NMRスペクトルデータを下記に示す。
【0183】
H−NMR(500MHz、DO)δppm:3.57−3.52(m,4H)、3.17(s,6H)、2.26−2.24(m,6H)、1.82(3H,s)(全てbr)
【0184】
(製造例2)ポリマー1〜6の合成
(A)ATRP法によるポリマー1、2の合成
下記式中、n1、n2は、繰り返し単位の数を表す(以下にて同じ)。
【0185】
【化24】

【0186】
(1)ポリマー1の合成
シュレンク管を封管し、窒素フローと脱気を3回繰り返すことで系内の酸素を除去した。この状態で、まず有機配位子であるN,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン73mg(0.42mmol,東京化成工業社製)、tert−ブチルメタクリレート3g(21mmol、和光純薬工業社製)、アニソール7.5mL(和光純薬工業社製)を加えた。その後、系内の酸素を除去するために、凍結脱気を4回行った。凍結脱気後、窒素の流量を強くして臭化第一銅30mg(0.21mmol、和光純薬工業社製)を加えた。最後に開始剤であるブロモイソ酪酸エチル21mg(0.105mmol、東京化成工業社製)を加え、容器を封管してオイルバスの油温70℃で20時間重合反応を行った。反応混合物にTHF2mLを加えて反応を終了させ、アルミナカラムを用いて有機配位子と金属塩を除去して処理液を得た。次いで、処理液を濃縮し、このものをメタノール溶液中に滴下し、沈澱物を得た。得られた沈殿物を採取し、乾燥することによって、目的とするポリマー1を得た(収率:70%)。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0187】
H−NMR(500MHz、CDCl)δppm:4.23、2.2−1.6、1.53−1.32、1.06(全てbr)
【0188】
(2)ポリマー2の合成
シュレンク管を封管し、窒素フローと脱気を3回繰り返すことで系内の酸素を除去した。この状態で、まず有機配位子であるα−D−スパルテイン65.5mg(0.28mmol,東京化成工業社製)、n−ブチルアクリレート(BA)0.72g(5.6mmol、和光純薬工業社製、ガラス転移温度−55℃)、アニソール4mL(和光純薬工業社製)を加えた。その後、系内の酸素を除去するために、凍結脱気を4回行った。凍結脱気後、窒素の流量を強くして臭化第一銅 20mg(0.14mmol、和光純薬工業社製)を加えた。最後に開始剤である前記(1)で得られたポリマー1を0.5g(0.07mmol)を加え容器を封管してオイルバスの油温70℃で20時間重合を行った。反応混合物にTHF2mLを加え、反応を終了させ、アルミナカラムを用いて有機配位子と金属塩を除去して処理液を得た。次いで、処理液を濃縮し、このものをメタノール溶液中に滴下し、沈澱物を得た。得られた沈殿物を採取し、乾燥することにより、目的とするポリマー2を得た(収率:50%)。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0189】
H−NMR(500MHz、CDCl)δppm:4.23、4.04、2.28、2.2−1.6、1.53−1.32、1.06(全てbr)
【0190】
(B)RAFT重合法によるポリマー3、4の合成
下記式中、m1、m2は繰り返し単位の数を表す(以下にて同じ)。
【0191】
【化25】

【0192】
(3)ポリマー3の合成
シュレンク管を封管し、窒素フローと脱気を3回繰り返すことで系内の酸素を除去した。この状態で、tert−ブチルメタクリレート10.2g(72mmol、和光純薬工業社製)、THF25mL(和光純薬工業社製)、2−シアノ−2−プロピルドデシルトリチオカルボナート82.8mg(0.24mmol、シグマアルドリッチ製)、AIBN5.0mg(0.03mmol、和光純薬工業社製)を加えた。その後、系内の酸素を除去するために、凍結脱気を4回行った。凍結脱気後、容器を封管してオイルバスの油温60℃で20時間重合反応を行った。反応混合物にTHF2mLを加えて反応を終了させ、得られた混合物をメタノール中に滴下した。生じた沈澱物を採取し、乾燥することにより、目的とするポリマー3を得た(収率:90%)。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0193】
H−NMR(500MHz、CDCl)δppm:2.2−1.6、1.53−1.32、1.06(全てbr)
【0194】
(4)ポリマー4の合成
シュレンク管を封管し、窒素フローと脱気を3回繰り返すことで系内の酸素を除去した。この状態で、ポリマー3 0.7g(0.032mmol)、THF3mL(和光純薬工業社製)、BA 1.64g(12.8mmol、和光純薬工業社製)、AIBN1.8mg(0.011mmol、和光純薬工業社製)を加えた。その後、系内の酸素を除去するために、凍結脱気を4回行った。凍結脱気後、容器を封管してオイルバスの油温60℃で20時間重合を行った。反応混合物にTHF2mLを加えて反応を終了させ、得られた混合物をメタノール中に滴下した。生じた沈澱物を採取し、乾燥することにより目的とするポリマー4を得た(収率:50%)。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0195】
H−NMR(500MHz、CDCl)δppm:4.04、2.2−1.6、1.53−1.32、1.06(全てbr)
【0196】
次に、下記式のとおり、ポリマー2及び4を、脱保護して、ポリマー5、6に変換する反応を行い、さらに製造例1で得た化合物(a−1)〜(a−6)を反応させて、ポリマー7〜18(本発明のブロック共重合体)を製造した。
【0197】
【化26】

【0198】
(C)脱保護
(5)ポリマー5の合成
シュレンク管に、ポリマー2 3.3g(0.094mmol)、ジクロロメタン3.2g(37.6mmol、和光純薬工業社製)、及び、トリフルオロ酢酸6.4g(75.2mmol、和光純薬工業社製)を加え、全容を室温で24時間撹拌した。反応混合物をジエチルエーテル中で再沈殿させることで、目的とするポリマー5を得た(収率:90%)。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0199】
H−NMR(500MHz、DMSO−d)δppm:12.32、3.97、2.30、1.91、1.61、1.48、1.38、0.93(全てbr)
【0200】
(6)ポリマー6の合成
前記(5)ポリマー5の合成において、原料としてポリマー2の代わりにポリマー4を用いた以外は、(5)と同様にして目的とするポリマー6を得た(収率:92%)。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0201】
H−NMR(500MHz、DMSO−d)δppm:12.32、3.97、2.30、1.91、1.61、1.48、1.38、0.93(全てbr)
【0202】
(実施例1)ポリマー7の合成
乾燥窒素気流下で、ポリマー5 0.5g(0.014mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド5mL(和光純薬工業社製)に溶解させ、この溶液に、化合物(a−1)0.60g(2.38mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)0.29g(2.38mmol、東京化成工業社製)、及び、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)1.47g(7.14mmol、東京化成工業社製)を加え、全容を油温80℃で96時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を吸引濾過することで、ジシクロヘキシル尿素を除去した。得られたろ液を濃縮し、メタノール中で再沈殿させることによって、精製し、目的とするポリマー7(ブロック共重合体)を得た(収率:45%)。ブロックAユニットの導入量:40%。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0203】
H−NMR(500MHz、DMSO−d)δppm:7.94、4.18、3.89、1.91、1.61、1.26、0.93(全てbr)
【0204】
(実施例2)ポリマー8の合成
実施例1のポリマー7の合成において、化合物(a−1)の代わりに化合物(a−2)を用いた他は、実施例1と同様にしてポリマー8(ブロック共重合体)を得た(収率:40%)。ブロックAユニットの導入量:38%。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0205】
H−NMR(500MHz、DMSO−d)δppm:7.94、4.18、3.89、1.91、1.61、1.26、0.93(全てbr)
【0206】
(実施例3)ポリマー9の合成
実施例1のポリマー7の合成において、化合物(a−1)の代わりに化合物(a−3)を用いた他は、実施例1と同様にしてポリマー9(ブロック共重合体)を得た(収率:44%)。ブロックAユニットの導入量:42%。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0207】
H−NMR(500MHz、DMSO−d)δppm:7.94、4.18、3.89、1.91、1.61、1.26、0.93(全てbr)
【0208】
(実施例4)ポリマー10の合成
乾燥窒素気流下で、ポリマー6 0.5g(0.022mmol)をジメチルホルムアミド5mL(和光純薬工業社製)に溶解させた。この溶液に、化合物(a−1)0.94g(3.74mmol)、DMAP 0.46g(3.74mmol、東京化成工業社製)、及び、ジシクロヘキシルカルボジイミド2.31g(11.22mmol、東京化成工業社製)を加え、全容を油温80℃で96時間撹拌した。反応混合物を吸引濾過し、ジシクロヘキシル尿素を除去した。得られたろ液を濃縮し、メタノール中で再沈殿させることにより、目的とするポリマー10(ブロック共重合体)を得た(収率:40%)。ブロックAユニットの導入量:35%。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0209】
H−NMR(500MHz、DMSO−d)δppm:7.94、4.18、3.89、1.91、1.61、1.26、0.93(全てbr)
【0210】
(実施例5)ポリマー11の合成
実施例4のポリマー10の合成において、化合物(a−1)の代わりに化合物(a−2)を用いた他は、実施例4と同様にしてポリマー11(ブロック共重合体)を得た(収率:45%)。ブロックAユニットの導入量:45%
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0211】
H−NMR(500MHz、DMSO−d)δppm:7.94、4.18、3.89、1.91、1.61、1.26、0.93(全てbr)
【0212】
(実施例6)ポリマー12の合成
実施例4のポリマー10の合成において、化合物(a−1)の代わりに化合物(a−3)を用いた他は、実施例4と同様にしてポリマー12(ブロック共重合体)を得た(収率:40%)。ブロックAユニットの導入量:43%
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0213】
H−NMR(500MHz、DMSO−d)δppm:7.94、4.18、3.89、1.91、1.61、1.26、0.93(全てbr)
【0214】
(実施例7)ポリマー13の合成
実施例1のポリマー7の合成において、化合物(a−1)の代わりに化合物(a−4)を用いた他は、実施例1と同様にしてポリマー13(ブロック共重合体)を得た(収率:43%)。ブロックAユニットの導入量:42%。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0215】
H−NMR(500MHz、DMSO−d)δppm:3.57−3.52(m,4H)、3.17(s,6H)、2.26−2.24(m,6H)、1.82(3H,s)(全てbr)
【0216】
(実施例8)ポリマー14の合成
実施例1のポリマー7の合成において、化合物(a−1)の代わりに化合物(a−5)を用いた他は、実施例1と同様にしてポリマー14(ブロック共重合体)を得た(収率:41%)。ブロックAユニットの導入量:39%。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0217】
H−NMR(500MHz、DMSO−d)δppm:3.57−3.52(m,4H)、3.17(s,6H)、2.26−2.24(m,6H)、1.82(3H,s)(全てbr)
【0218】
(実施例9)ポリマー15の合成
実施例1のポリマー7の合成において、化合物(a−1)の代わりに化合物(a−6)を用いた他は、実施例1と同様にしてポリマー15(ブロック共重合体)を得た(収率:35%)。ブロックAユニットの導入量:35%。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0219】
H−NMR(500MHz、DMSO−d)δppm:3.57−3.52(m,4H)、3.17(s,6H)、2.26−2.24(m,6H)、1.82(3H,s)(全てbr)
【0220】
(実施例10)ポリマー16の合成
実施例4のポリマー10の合成において、化合物(a−1)の代わりに化合物(a−4)を用いた他は、実施例4と同様にしてポリマー16(ブロック共重合体)を得た(収率:44%)。ブロックAユニットの導入量:42%。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0221】
H−NMR(500MHz、DMSO−d)δppm:3.57−3.52(m,4H)、3.17(s,6H)、2.26−2.24(m,6H)、1.82(3H,s)(全てbr)
【0222】
(実施例11)ポリマー17の合成
実施例4のポリマー10の合成において、化合物(a−1)の代わりに化合物(a−5)を用いた他は、実施例4と同様にしてポリマー17(ブロック共重合体)を得た(収率:40%)。ブロックAユニットの導入量:40%。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0223】
H−NMR(500MHz、DMSO−d)δppm:3.57−3.52(m,4H)、3.17(s,6H)、2.26−2.24(m,6H)、1.82(3H,s)(全てbr)
【0224】
(実施例12)ポリマー18の合成
実施例4のポリマー10の合成において、化合物(a−1)の代わりに化合物(a−6)を用いた他は、実施例4と同様にしてポリマー18(ブロック共重合体)を得た(収率:48%)。ブロックAユニットの導入量:45%。
このもののH−NMRスペクトルデータを次に示す。
【0225】
H−NMR(500MHz、DMSO−d)δppm:3.57−3.52(m,4H)、3.17(s,6H)、2.26−2.24(m,6H)、1.82(3H,s)(全てbr)
【0226】
(比較例1)
ポリマー5(ブロックA’−ブロックBからなるブロック共重合体)を比較例1のポリマーとした。
【0227】
(比較例2)ポリマー19の合成
乾燥窒素気流下で、製造例1で得たモノマー(b−1)3.3g(0.01mol)をTHF20mL(和光純薬工業社製)に溶解させた。この溶液に、BA 2.43g(0.19mol)、AIBN20mg(0.12mmol、和光純薬工業社製)を加え、全容を油温60℃で20時間撹拌した。反応液にTHF2mLを加えて反応を終了させて得られた反応混合物をメタノール溶液中に滴下し、沈澱物を得た。このものを乾燥することにより、BAとモノマー(b−1)のモノマー比が、65:35であるポリマー19(モノマー比がポリマー10と同じである、ランダム共重合体)を得た。
【0228】
(比較例3)ホモポリマーとポリマー5の混合物
製造例1で得たホモポリマー(c−1)と、ポリマー5を35:65の割合(重量比)でジメチルスルホキシドに溶解させ、比較例3の溶液を調製した。
【0229】
得られたポリマー1〜13につき、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(PDI)を測定した。測定結果を下記第2表に示す。
【0230】
【表1】

【0231】
第1表から、実施例1〜12の本発明のブロック共重合体ポリマー7〜18は、比較例2の、ランダム共重合法により得られるポリマー19より、数平均分子量が大きく、分子量分布が小さいことがわかる。
【0232】
(実施例13〜24、比較例4〜6)
実施例1〜12で得られたポリマー7〜18、比較例1、2のポリマー及び比較例3のポリマー混合物のそれぞれにつき、メチルエチルケトン又はジメチルスルホキシドを加えて固形分濃度を35質量%に調整し、均一溶液となるように撹拌して粘着組成物(塗工液)を調製した。
得られた塗工液を、それぞれ、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡績社製、製品名「コスモシャインA4100」)上に、ナイフコーターにより塗布し、得られた塗膜を100℃で5分間加熱、乾燥し、厚さ20μmの粘着剤層を形成し、粘着シートを作製した。
得られた粘着シートにつき、粘着剤層の表面抵抗値及び粘着力を測定した。測定結果を下記第2表に示す。
【0233】
(参考例1〜12)
実施例13〜24において、ポリマー7〜18の代わりに、製造例1で得られた化合物(a−1)〜(a−6)、ホモポリマー(c−1)〜(c−6)を用いて、実施例13〜24と同様にして厚さ20μmの膜を形成し、得られた薄膜につき、表面抵抗値及び粘着力を測定した。測定結果を下記第2表に示す。
【0234】
【表2】

【0235】
第2表より、ポリマー5(ブロックA’−ブロックBからなるブロック共重合体)を用いた比較例4、ランダム共重合法により製造したポリマー19を用いた比較例5、ホモポリマー(c−1)とポリマー5の混合物を用いた比較例6に比して、実施例13〜24の粘着シートの表面抵抗値は小さく、導電性に優れ、かつ粘着力も優れたものであることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に、式(1)
【化1】

(式中、XとYは、イオン対を形成し得る対カチオンと対アニオンの組み合わせを表し、Rは、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、Dは連結基を表す。)で示される繰り返し単位からなるブロックAと、
(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の繰り返し単位からなるブロックBとを有することを特徴とするブロック共重合体。
【請求項2】
前記式(1)で示される繰り返し単位が、式(1)中、Xが、含窒素オニウムカチオン、含硫黄オニウムカチオン、又は含リンオニウムカチオンである繰り返し単位である請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項3】
前記式(1)で示される繰り返し単位が、式(1)中、Dが、式:*−(CHO−(式中、nは1〜6の整数を表し、*はXとの結合位置を示す。)で示される基である繰り返し単位である、請求項1又は2に記載のブロック共重合体。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル酸エステル化合物のホモポリマーのガラス転移温度が、−70〜0℃である請求項1〜3のいずれかに記載のブロック共重合体。
【請求項5】
ブロック共重合体中の前記ブロックAとブロックBの存在割合が、重量比で、(ブロックAの存在量):(ブロックBの存在量)=1:9〜9:1である請求項1〜4のいずれかに記載のブロック共重合体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のブロック共重合体の製造方法であって、下記の、「工程(A1)、工程(A2)及び工程(B)を有する」か、又は、「工程(A3)及び工程(B)を有する」ことを特徴とするブロック共重合体の製造方法。
工程(A1):式(2a)
【化2】

〔式中、Rは前記と同じ意味を表し、R13は、下記式
【化3】

(式中、D、X及びYは、前記と同じ意味を示す。)で表される基に変換可能な基を表す。〕で示される単量体を、リビングラジカル重合法により重合して、式(2)
【化4】

(式中、R及びR13は、前記と同じ意味を表す。)で示される繰り返し単位からなるブロックA’を得る工程
工程(A2):前記ブロックA’を前記ブロックAに変換する工程
工程(A3):式(1a)
【化5】

(式中、R、D、X及びYは、前記と同じ意味を示す。)で示される単量体を、リビングラジカル重合法により重合して、式(1)
【化6】

(式中、R、X及びYは、前記と同じ意味を示す。)で示される繰り返し単位からなるブロックAを得る工程
工程(B):(メタ)アクリル酸エステル化合物を、リビングラジカル重合法により重合して、前記(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の繰り返し単位からなるブロックBを得る工程
【請求項7】
前記リビングラジカル重合法が、原子移動ラジカル重合(ATRP)法または可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法である、請求項6に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載のブロック共重合体を含有する粘着組成物。
【請求項9】
支持体上の片面又は両面に、請求項8に記載の粘着組成物からなる粘着剤層を有する粘着シート。

【公開番号】特開2013−18934(P2013−18934A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155546(P2011−155546)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】