説明

プラスチック層内部に液晶ディスプレイが埋め込まれた装置筐体

プロセストランスミッタ(102)はトランスミッタ回路(206)を含む筐体を含んでいる。トランスミッタ回路(206)は、ディスプレイ出力を与え、プロセス制御ループ(106)に接続するように構成されている。LCDディスプレイ(130)は、筐体(110)内の透明又は半透明の高分子層に埋め込まれる。LCDディスプレイ(130)は、ディスプレイ出力に接続され、高分子層(132)を介して情報を表示するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には工業用プロセストランスミッタに関する。特に、本発明は、プロセストランスミッタ上の映像表示に関する。
【0002】
工業用プロセストランスミッタは、工業用プロセス装置、及び/又は導管に接続し、圧力、質量流速、体積流速、温度などのプロセスパラメータを測定するようになっている。しばしば、それらのトランスミッタは、4−20mAの範囲内で変化するエネルギー限界ループ電流を流す二線ループから電力を取り出している。
【0003】
ある構成では、トランスミッタは複数のセンサまたはフィールドデバイスを用いて、主及び二次プロセス測定量を利用することが可能である。例えば、配管を流れる気体又は蒸気の質量流測定を計算するために、フローメータを体積流速を測定するために用いることができ、第二センサをライン圧力を測定するために用いることができる。
【0004】
トランスミッタは、典型的にはプロセス変量の値に関連した信号を、制御室のような離れた場所に送信する。トランスミッタによっては、プロセス変量の値の読み出し又はその他の情報をトランスミッタ筐体のパネル上に表示もする。トランスミッタでの進歩は、トランスミッタ筐体中の液晶ディスプレイ(LCD)上の、プロセス変量の実際の値のデジタル読み出しを含んでいた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はトランスミッタ回路を含む筐体を含むプロセストランスミッタを含んでいる。トランスミッタ回路は、ディスプレイ出力を供給するように構成されている。LCDディスプレイは、筐体内の透明又は半透明の高分子層に埋め込まれている。LCDディスプレイは、ディスプレイ出力に接続され、高分子層を介して情報を表示するように構成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
工業的プロセストランスミッタは、プロセス変量を測定し、たとえば、4−20mA二線プロセス制御ループのような通信ネットワークと通信するための回路を含んでいる。トランスミッタ回路は、通常の動作のためには静止電流(典型的には4mAより小さい)を必要とする。本発明の実施形態では、プロセス制御ループに接続するように構成されたトランスミッタ回路を使用する。トランスミッタ回路はまた、トランスミッタの筐体内に埋め込まれている液晶ディスプレイ(LCD)に接続されるディスプレイ出力を与えるように構成されている。
【0007】
図1は、プロセス制御ループ106によってプロセス監視及び制御センタ104に接続されているトランスミッタ102を含む工業的プロセス監視及び制御システム100を示している。一例では、プロセス制御ループは、4−20mA電流を流し、トランスミッタ102を作動しそれ通信するために用いられる二線プロセス制御ループ106である。そのようなプロセス制御ループはハート(HART)又はファウンデーション(Foundation)フィールドバスプロトコルに従って動作し得る。
【0008】
プロセス監視及び制御センタ104は、たとえば、ネットワークに接続され、工業的プロセスに接続されている一つ以上のフィールドデバイス又は/及びトランスミッタと通信するような、一つ以上の計算機システムを含む制御室であって良い。
【0009】
図1に示したトランスミッタ102は、電力供給と共に信号の伝送のための二線プロセス制御ループ106を用いる二線、モジュラー差圧トランスミッタである。たとえば、二線プロセス制御ループは、4−20mA信号法技術及び、ハート(HART)、フィールドバス、プロファイバス、及び他の通信プロトコルなどのデジタル通信技術を用いることが可能である。代わりに、プロセス制御ループは様々な無線技術を実装することも可能である。モジュラー差圧トランスミッタ102は、適切なプロセス監視及び制御デバイスの一例に過ぎず、本発明の使用及び機能の範囲のいかなる限界を示唆しようと意図したものではない。
【0010】
トランスミッタ102は、エンドキャップ131のエンドパネル132内部に埋め込まれたLCD130を含むフューチャーモジュール108を含んでいる。エンドキャップ131は、フューチャーモジュール108の筐体133に、ネジ止め可能に(threadbaly)固定されている。
【0011】
エンドパネル132は、好適には、埋め込まれたLCD130がパネル132越しに見ることができるように、透明若しくは半透明の高分子又はプラスチック物質で形成される。本明細書で用いられているように、透明とは、かなりの程度の散乱無しに光を透過し、その向こうに置かれている物体がはっきりと見えるような性質を含むことを意味する。本明細書で用いられているように、半透明とは、物体がはっきりと見ることができないように、光を透過及び拡散する性質を含むことを意味する。本明細書で用いられているように、プラスチックとは、高分子量の熱可塑性又は熱硬化性高分子であり、物体、フィルム又はフィラメントを作ることができる、有機、合成、又は処理された物質を意味する。本明細書で用いられているように、ポリマーは、重合によって形成される化学化合物又は化合物の混合物を意味する。
【0012】
本例では、トランスミッタ102はまた、電子筐体110及びプロセスカップリング112を含んでいる。プロセスカップリング112は、すべて仮想線で示されている、フランジ116及びフランジアダプタユニオン118を有する配管114のような、工業的プロセスの配管又は導管に取り付けることが可能である。
【0013】
電子筐体110は、(図6に示されている)トランスミッタ回路206を囲っている。筐体110はまた、バス接点122、共通接点124、及びロープ配線接点126、128を含む複数の接点を収納するコネクタ120を含んでいる。バス接点122及び共通接点124は、埋め込まれたLCD130に電力と信号を供給するディスプレイ出力回路などのフューチャーモジュール108内部の様々な負荷に、電子筐体110内部のトランスミッタ回路206を接続する。
【0014】
埋め込まれたLCD130は、プロセス変量の値などの情報をフィールドのオペレータに表示するようになっている。測定され、埋め込まれたLCD130上に表示され得るプロセス変量の網羅的ではないリストには、温度、圧力、流速、及びレベルが含まれる。LCD130はまた、トランスミッタ回路206内の計算回路で決定された二次プロセス変量の値を表示するが、その際、計算回路ではセンサからの信号を二次プロセス変量に相関させている。
【0015】
プロセス変量の数値を表示することとは別に、埋め込まれたLCD130は、セットポイント、電流レベル、診断情報及び警告を表示することもできる。埋め込まれたLCD130はまた、例えば、プロセス変量の値がセットポイントより上か下か、若しくは警告がオフに設定されているか、を示す色を表示することによってプロセス情報を通知することも可能である。
【0016】
図2を参照すれば、LCD130は他の形態ではフューチャーモジュール108のサイドパネル133内部に埋め込まれており、この場合、少なくともサイドパネル133の外側層が透明若しくは半透明の高分子又はプラスチック物質から形成されている。しかしながら、LCD130はトランスミッタ100のどの可視表面内部に埋め込まれていてもよい。
【0017】
図3を参照すれば、LCD130は、透明又は半透明又は半透明の高分子物質から形成されているパネル132に埋め込まれている。電力はワイヤ216を介して(図6に示すように)トランスミッタ回路206から供給される。信号は、ワイヤ214を介して(図6に示すように)トランスミッタ回路206からLCD130に伝送され、LCD130は所望のプロセス情報を通信する。ワイヤ214、216は、所望のプロセス情報を表示するために液晶物質の反対側に配置されたLCD130の電極に接続されている。ワイヤ214、216はまた、エンドキャップ131がネジ止め可能に筐体133に固定される際に、ワイヤ214、216の撚れが許容される長さである。
【0018】
図4を参照すれば、LCD130は内部金属層134を含むサイドパネル133の透明若しくは半透明の高分子又はプラスチック層132内部に埋め込むこともできる。金属層134は、透明又は半透明層132を支持するのが標準的であるが、層134は、層134が典型的には不透明であるときに、層136を支持する構造的一体性を備えるどんな物質でも形成され得る。電力及び信号は、所望のプロセス情報を通信するためにワイヤ214、216を介して埋め込まれたLCDに送られる。
【0019】
LCD130は層132に埋め込まれているので、LCD130は外部環境からシールされており、潜在的に可燃性環境で用いていても、火花が散ることはない。従って、埋め込まれたLCD130は、本質的に安全な方法で情報を表示し、埋め込まれたLCD130を含むプロセストランスミッタ10は、潜在的に可燃性環境において使用することができる。
【0020】
図5を参照すれば、LCD130は、好適にはシート310から延びる複数のポスト312を有する高分子シート310を用いて形成される。ポスト312は、典型的には約1ミクロンの幅及び高さであり、幾つかのポスト312は典型的なピクセルの空間内に含めることができる。電極314は、高分子シート314に取り付けられ、あるピクセルを活性化させる選択されたポスト312に電荷を供給するためにワイヤ214に接続されている。典型的にはポリカーボネートである透明なプラスチック又は高分子シート314は、電極312に取り付けられている。偏光板318は、透明なプラスチック又は高分子シート314に取り付けられている。
【0021】
第二電極322がそれに取り付けられている第二の透明なプラスチックシート320は、第一シート310に隣接して配置されている。カラー表示をするために、第二電極322と透明な第二プラスチック又は高分子シート328の間に、赤、青及び緑の色フィルタ326がオプションとして配置されてもよい。しかしながら、グレースケール表示も本発明の範囲内にある。
【0022】
液晶ディスプレイ324は、二つの高分子シート310、320の間に配置され、LCD130を完成させている。プラスチックLCD130は、可撓性であり、典型的なLCDより薄い。LCDの可撓性及び薄さゆえ、LCD130は、平面若しくは形状に合った高分子又はプラスチック層132に容易に埋め込まれる。
【0023】
信号及び電力がワイヤ214、216を介してポスト312に送られると、液晶物質324は分極し、濃淡又は色を帯びる。セルはディスプレイを画定するために配置されている。プラスチックLCD130は、www.theregister.co.uk/2004/10/19/plastic_lcdにおいて「プラスチックLCDを実演するHP研究室」、及びwww.newsciencists.com/article.ns?id=dn6557に「光沢雑誌のような色合いの新しいディスプレイ」とタイトルが付けられた論文に開示されており、これらは共にここに参照として組み込まれる。
【0024】
図6は、工業用プロセス監視及び制御システム100の一つの実施形態の簡略化されたブロックダイアグラムである。システム100は、トランスミッタ102、及び二線プロセス制御ループ106に接続されているプロセス監視及び制御センタ104を含んでいる。
【0025】
トランスミッタ102は、センサ及び付随するセンサ回路208にワイヤ209で接続されているトランスミッタ回路206を含んでいる。プロセスの値は、値を信号に変換し、トランスミッタ回路206に向けてワイヤ209を介して信号を送信するセンサ及び付随するセンサ回路208によって検知される変数である。
【0026】
トランスミッタ回路206は、埋め込まれたLCD130に接続されるディスプレイ出力210を含んでいる。ディスプレイ出力210は、ワイヤ214を介して埋め込まれたLCDに信号を、ワイヤ216を介して電力を供給し、埋め込まれたLCD130は、プロセス変量の値を与える。
【0027】
好ましい実施形態を参照しつつ本発明について述べてきたが、当業者は本発明の意図及び目的を逸脱しない形態及び詳細の範囲で、変形が可能であることは理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】トランスミッタ筐体のエンドキャップのパネルに埋め込まれた液晶ディスプレイを含む本発明のプロセストランスミッタの概略図である。
【図2】トランスミッタ筐体の側方パネルに埋め込まれたLCDを含む本発明のプロセストランスミッタの概略図である。
【図3】筐体中の高分子層内部の埋め込まれたLCDの断面図である。
【図4】金属層によって支持される筐体中の高分子層内部の埋め込まれたLCDの断面図である。
【図5】埋め込まれたLCDの断面図である。
【図6】工業的プロセス監視及び制御システムの簡略化されたブロックダイアグラムである。
【符号の説明】
【0029】
100 工業的プロセス監視及び制御システム
102 トランスミッタ
104 プロセス監視及び制御センタ
106 プロセス制御ループ
108 フューチャーモジュール
110 電子筐体
112 プロセスカップリング
114 配管
116 フランジ
118 フランジアダプタユニオン
120 コネクタ
122 バス接点
124 共通接点
126、128 ロープ配線接点
130 LCD
131 エンドキャップ
132 エンドパネル、(サイドパネルの)透明若しくは半透明の高分子又はプラスチック層
133 筐体、サイドパネル
134 内部金属層
206 トランスミッタ回路
208 センサ及び付随するセンサ回路
209、214、216 ワイヤ
210 ディスプレイ出力
310 高分子シート(第一シート)
312 ポスト
314 電極
316 透明なプラスチック又は高分子シート
318 偏光板
320 透明な第二プラスチックシート
322 第二電極
324 液晶ディスプレイ
326 色フィルタ
328 透明な第二プラスチック又は高分子シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
ディスプレイ出力を与えるように構成され、プロセス制御ループに接続されるように構成される筐体中のトランスミッタ回路と、
筐体中の透明又は半透明の高分子層と、
高分子層に埋め込まれ、ディスプレイ出力に接続し、高分子層を介して情報を表示するように構成されたLCDディスプレイと、
を含むプロセストランスミッタ。
【請求項2】
LCDディスプレイは、トランスミッタ回路に接続され、プロセス変量の値を表示する、請求項1に記載のトランスミッタ。
【請求項3】
高分子層は筐体の外側層の一部を含む、請求項1に記載のトランスミッタ。
【請求項4】
高分子層は筐体の外壁を含む、請求項1に記載のトランスミッタ。
【請求項5】
さらに金属ベゼルを含み、金属ベゼルは高分子層を支持する、請求項1に記載のトランスミッタ。
【請求項6】
LCDディスプレイはプロセス変量の数値を示す、請求項2に記載のトランスミッタ。
【請求項7】
LCDディスプレイはプロセス変量の値を色で示す、請求項1に記載のトランスミッタ。
【請求項8】
プロセス変量は温度、圧力、流速又はレベルを含む、請求項1に記載のトランスミッタ。
【請求項9】
外部表面の少なくとも一部に透明又は半透明の高分子層を含む筐体と、
センサからの信号を受理し、ディスプレイ出力を供給するように構成され、プロセス制御ループに接続するように構成された、筐体中のトランスミッタ回路と、
筐体に埋め込まれ、ディスプレイ出力に接続可能であり、高分子層を介して情報を表示するように構成されたLCDディスプレイと、
を含む、センサからの信号を伝送するプロセストランスミッタ。
【請求項10】
LCDディスプレイはセンサによって測定されたプロセス変量の値を示す、請求項9に記載のトランスミッタ。
【請求項11】
筐体は、LCDディスプレイを埋め込むための透明な高分子物質又は半透明な高分子物質を含む、請求項9に記載のトランスミッタ。
【請求項12】
透明又は半透明の高分子物質は筐体の一部を含む、請求項11に記載のトランスミッタ。
【請求項13】
筐体は、
外部表面を含む不透明な内部層と、
内部層の外部表面上のコーティングと、
を含み、LCDディスプレイはコーティングの内部に埋め込まれている、請求項9に記載のプロセストランスミッタ。
【請求項14】
LCDディスプレイは、センサによって測定されたプロセス変量の数値を示す、請求項10に記載のプロセストランスミッタ。
【請求項15】
LCDディスプレイは、センサによって測定されたプロセス変量の値を色で示す、請求項10に記載のプロセストランスミッタ。
【請求項16】
トランスミッタ回路は、センサからの信号に相関する二次プロセス変量の値を測定するためにセンサからの信号を変換する計算機を含み、LCDは二次プロセス変量を表示する、請求項10に記載のプロセストランスミッタ。
【請求項17】
プロセス変量は温度、圧力、流速又はレベルを含む、請求項10に記載のトランスミッタ。
【請求項18】
センサでプロセス変量の値を検知するステップと、
センサからプロセストランスミッタの筐体の内部に含まれるトランスミッタ回路に信号を与えるステップと、
トランスミッタ回路のディスプレイ出力から、筐体の高分子層に埋め込まれた液晶ディスプレイに信号を送信するステップと、
高分子層を介して埋め込まれた液晶ディスプレイ上に情報を表示するステップと、
を含むプロセストランスミッタ筐体上にプロセス情報を表示する方法。
【請求項19】
表示される情報は、プロセス変量の数値である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
表示される情報は、プロセス変量の値に対応する色である、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−535641(P2009−535641A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509673(P2009−509673)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/010580
【国際公開番号】WO2007/130426
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(597115727)ローズマウント インコーポレイテッド (240)
【Fターム(参考)】