説明

プリフォームおよび容器

【課題】プリフォームの成形時に口栓部にひけが発生することを防止し、閉栓後の容器に外気の流入が生じることを防止することが可能なプリフォームおよび容器を提供する。
【解決手段】プリフォーム10は、内筒45および外筒46を有するキャップ40が嵌合される容器30用のものであり、キャップ40が嵌合される口栓部11と、口栓部11に連結されたプリフォーム本体12とを備えている。口栓部11は、キャップ40の内筒45に当接する内壁15と、キャップ40の外筒46が嵌め込まれる外壁16とを有している。口栓部11の外壁16に、円周方向に延びる単一の円周溝23が設けられ、この単一の円周溝23により、口栓部11の厚肉部の割合を少なくするとともに、成形時の口栓部11からの放熱を向上させて、口栓部11内部の溶融樹脂が冷却・固化する際の体積収縮による口栓部11の表面樹脂の引き込みを緩和し、ひけの発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリフォームおよびプリフォームから作製される容器に係り、とりわけプリフォーム成形時に口栓部にひけが発生することを防止するとともに、ホット充填による口栓部の熱変形の低減、ならびに常温乃至低温保管時におけるボトル内部への外気の流入を防止することが可能なプリフォームおよび容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば醤油やみりん等の調味料を入れる容器には、打栓キャップ式のボトルが用いられている。このような打栓キャップ式のボトルおよび打栓キャップ式のボトルを作製する際に用いられるプリフォームは、一般に例えば特許文献1および2に記載されているような形状からなる口栓部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−72412号公報
【特許文献2】実用新案登録第2578523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなプリフォームにおいては、射出成形によりプリフォームを作製する際、口栓部の内壁または外壁に「ひけ」と呼ばれる微小な凹みが発生することが問題となっている。また、口栓部の内壁にひけが発生したプリフォームを用いてボトルを成形し、例えば75℃以上の液温で内容物をホット充填した場合、ボトルの口栓部の内径が拡がることが判っている。これは、(1)口栓部の内壁に生じたひけ、(2)ひけ発生部位の残留ひずみならびに残留応力、(3)内容物をホット充填したことによる熱変形、および(4)打栓したキャップと口栓部との間に生じる嵌め合い圧力等に起因するものと考えられる。
【0005】
このため、キャップを打栓した後、ボトルを常温乃至低温(例えば5℃程度)まで冷却した場合、ボトル内部の液体の温度が下がって液体の体積が減少する。これにより、ボトル内部が減圧状態となり、口栓部にひけが生じている場合、打栓したキャップと口栓部との密着性が低下し、口栓部からボトル内部に少しずつ外気が流入するという不具合が発生するおそれがある。
【0006】
これに対して、プリフォームを成形する時に射出圧力を上げる、射出速度を下げる、射出量を多くする等、成形条件を調整し、口栓部にひけが発生することを抑える方法も存在する。しかしながら、プリフォームの重量が軽くなるにつれ、ひけは発生しやすくなる傾向にある。近年、省資源化等の理由によりプリフォームの重量が軽くなる傾向にあり、上述したように成形条件を調整することによってひけの発生を防止することは難しくなってきている。
【0007】
一方、口栓部の機械的強度を向上させて変形しにくくするための方法として、プリフォームの口栓部を結晶白化させる方法も存在する(例えば特許文献2)。しかしながら、この場合、熱処理工程が必要となるため、ボトルの製造コストが上昇してしまう。
【0008】
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、プリフォームの成形時に口栓部にひけが発生することを防止し、閉栓後の容器に外気の流入が生じることを防止することが可能なプリフォームおよび容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、内筒および外筒を有するキャップが嵌合される容器用のプリフォームにおいて、キャップが嵌合される口栓部と、口栓部に連結されたプリフォーム本体とを備え、口栓部は、キャップの内筒に当接する内壁と、キャップの外筒が嵌め込まれる外壁とを有し、口栓部の外壁に、円周方向に延びる単一の円周溝が設けられ、この単一の円周溝により、口栓部の厚肉部の割合を少なくするとともに、成形時の口栓部からの放熱を向上させて、口栓部内部の溶融樹脂が冷却および固化する際に、溶融樹脂の体積が収縮することにより口栓部表面の樹脂が引き込まれることを緩和し、ひけの発生を防止することを特徴とするプリフォームである。
【0010】
本発明は、単一の円周溝は、断面三角形状をなすことを特徴とするプリフォームである。
【0011】
本発明は、単一の円周溝の断面を構成する三角形は、その高さが口栓部の肉厚の8%〜50%であり、その底辺の長さが口栓部の肉厚の20%〜70%であることを特徴とするプリフォームである。
【0012】
本発明は、単一の円周溝は、断面湾曲線状をなすことを特徴とするプリフォームである。
【0013】
本発明は、単一の円周溝の断面を構成する湾曲線は、その高さが口栓部の肉厚の8%〜50%であり、その湾曲線の弦の長さが口栓部の肉厚の20%〜70%であることを特徴とするプリフォームである。
【0014】
本発明は、前記プリフォームを用いて成形され、内筒および外筒を有するキャップが嵌合される容器において、キャップが嵌合される口栓部と、口栓部に連結された容器本体とを備え、口栓部は、キャップの内筒に当接する内壁と、キャップの外筒が嵌め込まれる外壁とを有し、口栓部の外壁に、円周方向に延びる単一の円周溝が設けられていることを特徴とする容器である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、口栓部の外壁に円周方向に延びる単一の円周溝が設けられているので、この単一の円周溝により、口栓部の厚肉部の割合を少なくするとともに、成形時の口栓部からの放熱を向上させて、口栓部内部の溶融樹脂が冷却・固化する際の体積収縮による口栓部の表面樹脂の引き込みを緩和し、口栓部にひけが生じることを防止することができる。これにより、閉栓後の容器において、口栓部の内径の拡がりを低減し、打栓したキャップと口栓部との密着性が低下することを抑制することにより、口栓部からボトル内部に少しずつ外気が流入するという不具合が生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態によるプリフォームを示す断面図。
【図2】図2は、本発明の一実施の形態によるプリフォームの口栓部を示す拡大断面図(図1のII部拡大図)。
【図3】図3は、プリフォームの変形例を示す断面図。
【図4】図4は、プリフォームの口栓部の変形例を示す拡大断面図(図3のIV部拡大図)。
【図5】図5は、本発明の一実施の形態による容器を示す正面図。
【図6】図6は、本発明の一実施の形態による容器およびキャップを示す部分拡大断面図。
【図7】図7は、射出成形機によりプリフォームを作製している状態を示す概略断面図。
【図8】図8は、ブロー成形機により容器を作製している状態を示す概略断面図。
【図9】図9は、プリフォームの口栓部の比較例を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本明細書中、「上方」、「下方」とは、それぞれプリフォームおよび容器を正立させて口部を上方に向けた状態(図1および図5)における上方、下方のことをいう。
【0018】
(プリフォーム)
まず図1および図2により本実施の形態によるプリフォームについて説明する。
【0019】
図1に示すプリフォーム10は、内筒45および外筒46を有するキャップ本体41と、キャップ本体41に対して揺動自在に設けられた上蓋42とを有するキャップ40(図6参照)が嵌合されるホット充填用の容器30(図5参照)を作製する際に用いられるものである。
【0020】
このようなプリフォーム10は、図1に示すように、キャップ40が嵌合される口栓部11と、口栓部11の下方に連結されたプリフォーム本体12とを備えている。
【0021】
このうちプリフォーム本体12は、円筒状の胴部13と、胴部13の下方に連結された略半球状の底部14とを有している。
【0022】
また、口栓部11は、上述したキャップ40の内筒45(図6)に当接する円筒状の内壁15と、キャップ40の外筒46(図6)が嵌め込まれる外壁16とを有している。また、外壁16の下端には、環状のフランジ17が突出形成されている。
【0023】
外壁16には、第1の円周凸部21と、第1の円周凸部21の下方に位置する第2の円周凸部22とが形成されている。また、外壁16には、円周方向に延びる単一の円周溝23(肉抜き部)が設けられている。この単一の円周溝23は、第1の円周凸部21と第2の円周凸部22との間に設けられている。この円周溝23は、射出成形によりプリフォーム10を作製する際に、口栓部11全体に占める口栓部11の厚肉部(例えば、図9に示す比較例としてのプリフォームにおいては厚肉部20)の割合を少なくするとともに、口栓部11からの放熱を向上させて、口栓部11内部の溶融樹脂が冷却・固化する際の体積収縮による口栓部11の表面樹脂(とりわけ内壁15側の表面樹脂)の引き込みを緩和し、内壁15にひけ(変形)が発生することを防止するためのものである。
【0024】
さらに、第2の円周凸部22の下方であってフランジ17の上方には、係止凹部24が円周方向全周にわたり形成されている。この係止凹部24は、キャップ40の外筒46の係止凸部51(図6)が係止されるものである。
【0025】
本実施の形態において、図2に示すように、口栓部11の外壁16に設けられた単一の円周溝23は、断面三角形状(断面V字形状)をなしている。すなわち円周溝23は、上側溝壁23aと、この上側溝壁23aに接続された下側溝壁23bとを有している。
【0026】
円周溝23の断面を構成する三角形(V字)は、その高さh1(図2)が口栓部11の肉厚t1(図1)の8%〜50%であることが好ましい。高さh1が口栓部11の肉厚t1の8%未満であると、プリフォーム10の成形時に、口栓部11にひけが生じることを防止するという本実施の形態の効果が得られにくい。他方、高さh1が口栓部11の肉厚t1の50%超であると、円周溝23と内壁15との間の流路が狭くなるため、樹脂の流動性が低下し、成形不良を生じるおそれがある。また、円周溝23の部分において口栓部11の強度が弱くなってしまうおそれがある。さらには、強度低下とともに、口栓部11と打栓キャップ(後述するキャップ40)との間に大きな空隙が生じるため、打栓キャップの密閉性の面から好ましくない。
【0027】
また、円周溝23の断面を構成する三角形(V字)は、その底辺の長さl1(図2)が口栓部11の肉厚t1(図1)の20%〜70%であることが好ましい。なお、長さl1が口栓部11の肉厚t1の20%未満であると、プリフォーム10の成形時に、口栓部11にひけが生じることを防止するという本実施の形態の効果が得られにくい。他方、長さl1が口栓部11の肉厚t1の70%超であると、円周溝23の部分において口栓部11の強度が弱くなってしまうおそれがある。さらには、強度低下とともに、口栓部11と打栓キャップとの間に大きな空隙が生じるため、打栓キャップの密閉性の面から好ましくない。
【0028】
例えば、プリフォーム10の口栓部11の内径D1(図1)が27.5mmであり、口栓部11の肉厚t1が2.2mmである場合、円周溝23の断面を構成する三角形の高さh1は、約0.18mm≦h1≦約1.1mmの範囲で任意に設定することができ、円周溝23の断面を構成する三角形の底辺の長さl1は、約0.44mm≦l1≦約1.54mmの範囲で任意に設定することができる。
【0029】
なお、プリフォーム10の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリ乳酸(PLA)等の合成樹脂材料を用いることができる。また、プリフォーム10の重量は特に限定されるものではないが、例えば10g〜60gとすることができる。
【0030】
(プリフォームの変形例)
図3および図4は、本実施の形態の一変形例によるプリフォーム10Aを示している。図3は、プリフォーム10Aの断面図(図1に対応する図)であり、図4は、プリフォーム10Aの口栓部11の拡大断面図(図2に対応する図)である。
【0031】
図3および図4に示すプリフォーム10Aにおいて、外壁16の第1の円周凸部21と第2の円周凸部22との間には、円周方向に延びる単一の円周溝26が設けられている。この場合、単一の円周溝26は、断面湾曲線状(円弧状、楕円弧状、又は扇形状)をなしている。
【0032】
この円周溝26の断面を構成する湾曲線は、その高さh2(図4)が口栓部11の肉厚t2(図3)の8%〜50%であることが好ましい。高さh2が口栓部11の肉厚t2の8%未満であると、プリフォーム10Aの成形時に、口栓部11にひけが生じることを防止するという本実施の形態の効果が得られにくい。他方、高さh2が口栓部11の肉厚t2の50%超であると、円周溝23と内壁15との間の流路が狭くなるため、樹脂の流動性が低下し、成形不良を生じるおそれがある。また、円周溝26の部分において口栓部11の強度が弱くなってしまうおそれがある。さらには、強度低下とともに、口栓部11と打栓キャップとの間に大きな空隙が生じるため、打栓キャップの密閉性の面から好ましくない。
【0033】
また、円周溝26の断面を構成する湾曲線は、その湾曲線の弦の長さl2(図4)が口栓部の肉厚の20%〜70%であることが好ましい。なお、湾曲線の弦の長さl2が口栓部11の肉厚t2の20%未満であると、プリフォーム10Aの成形時に、口栓部11にひけが生じることを防止するという本実施の形態の効果が得られにくい。他方、曲率半径Rが口栓部11の肉厚t2の70%超であると、円周溝26の部分において口栓部11の強度が弱くなってしまうおそれがある。さらには、強度低下とともに、口栓部11と打栓キャップとの間に大きな空隙が生じるため、打栓キャップの密閉性の面から好ましくない。
【0034】
なお、円周溝26の断面を構成する湾曲線は、その全体が同一の曲率半径Rを有していても良く、場所によって異なる曲率半径Rを有していても良い。
【0035】
例えば、プリフォーム10Aの口栓部11の内径D2(図3)が27.5mmであり、口栓部11の肉厚t2が2.2mmである場合、円周溝26の断面を構成する湾曲線の高さh2は、約0.18mm≦h2≦約1.1mmの範囲で任意に設定することができ、円周溝26の断面を構成する湾曲線の弦の長さl2は、約0.44mm≦l2≦約1.54mmの範囲で任意に設定することができる。
【0036】
このほかの構成は、図1および図2に示す構成と略同一である。図3および図4において、図1および図2に示す実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0037】
(容器)
次に、図5および図6により、本実施の形態による容器および容器に打栓されるキャップについて説明する。本実施の形態による容器は、上述したプリフォーム10(図1および図2)を2軸延伸ブロー成形することにより作製されたものである。なお、上述したプリフォーム10を用いて作製される容器は、これに限定されないことは勿論である。
【0038】
図5において、容器30は、口栓部31と、口栓部31の下方に連結された容器本体32とを備えている。このうち容器本体32は、口栓部31の下方に位置する首部35と、首部35の下方に位置する肩部36と、肩部36の下方に位置する筒状の胴部33と、胴部33に連続して設けられた底部34とを有している。
【0039】
胴部33の上下方向略中央部には、ボトル内方に窪む環状溝38が形成されている。また、胴部33のうち環状溝38の上方には、ボトル内方に窪む複数(4本)の環状溝37が形成されている。
【0040】
容器30の口栓部31は、キャップ40の内筒45(図6)に当接する内壁15と、キャップ40の外筒46(図6)が嵌め込まれる外壁16とを有しており、口栓部31の外壁16に、円周方向に延びる単一の円周溝23が設けられている。
【0041】
なお、口栓部31の構成は、上述したプリフォーム10の口栓部11の構成と同様であるので、図1および図2に示す実施の形態と同一部分に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
このような容器30のサイズ(容量)は限定されるものではなく、どのようなサイズのボトルからなっていても良い。また、容器30に充填(ホット充填)される内容物は特に限定されないが、例えば醤油等の液体調味料を好適に用いることができる。
【0043】
図6は、図5に示す容器30の口栓部31に、キャップ40が嵌合(打栓)された状態を示す部分拡大断面図である。
【0044】
図6に示すように、キャップ40は、容器30の口栓部31に嵌合されて装着されるキャップ本体41と、ヒンジ部43を介してキャップ本体41に対して揺動自在に連結された上蓋42とを有している。
【0045】
このうちキャップ本体41は、頂板部44と、頂板部44の下面から延びる内筒45と、内筒45の径方向外側に位置し、頂板部44の下面から延びる外筒46とを有している。内筒45および外筒46は、それぞれ円筒形状を有しており、頂板部44の下面において全周にわたって設けられている。
【0046】
内筒45は、口栓部31の内壁15に当接して密着している。また、外筒46は口栓部31の外壁16の外側に嵌め込まれており、この外筒46には、口栓部31の第1の円周凸部21および第2の円周凸部22が当接している。さらに外筒46は、内筒45側に突出する係止凸部51を有しており、この係止凸部51が、口栓部31の係止凹部24内に係止している。
【0047】
また、頂板部44の上面には、上蓋42を閉位置に保持する保持突起47と、保持突起47の径方向内側に設けられた注出筒48と、注出筒48の径方向内側に設けられたプルリング49とが設けられている。さらに、頂板部44の下面であって注出筒48の内側には、破断線50が形成されている。そして上述したプルリング49を引き上げることにより、破断線50が破断され、頂板部44のうち破断線50の内側の領域に、内容物を注ぎ出すための開口が形成される。
【0048】
一方、上蓋42は、天板部52と、天板部52の外周に延びる側壁部53とを有している。天板部52の下面には、第1の環状突起54と、第1の環状突起54の径方向内側に位置する第2の環状突起55とが突設されている。上蓋42が閉位置(図6の実線)にある場合、注出筒48が第1の環状突起54と第2の環状突起55との間に挿入されて、第1の環状突起54および第2の環状突起55に密着するようになっている。
【0049】
また、側壁部53には鍔部56が形成されており、この鍔部56を指で持ち上げることにより、上蓋42を閉位置(図6の実線)から開位置(図6の仮想線)に揺動させられるようになっている。
【0050】
なお、図5および図6に示す容器30は、図1および図2に示すプリフォーム10を用いて作製されたものであるが、これに限られるものではなく、図3および図4に示すプリフォーム10Aを用いて作製されても良い。
【0051】
(本実施の形態の作用)
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0052】
まずPET(ポリエチレンテレフタレート)等の熱可塑性樹脂製ペレットを、射出成形機60に投入し、このペレットが射出成形機60によって加熱溶融および加圧される。その後ペレットは、加圧された溶融プラスチックとなって、プリフォーム10に対応する内部形状を有する射出成形金型61内に射出される(図7)。図7において、矢印は溶融プラスチックの流れを示している。
【0053】
所定時間の経過後、射出成形金型61内で溶融プラスチックが硬化し、プリフォーム10が形成される。その後、射出成形金型61を分離し、射出成形金型61内からプリフォーム10を取り出す。
【0054】
この間プリフォーム10の温度は、約280℃乃至310℃から常温まで低下し、このときプリフォーム10は収縮する。本実施の形態においては、口栓部11の外壁16に、円周方向に延びる単一の円周溝23を設け、この円周溝23により、口栓部11全体に占める口栓部11の厚肉部(図9における厚肉部20)の割合を少なくするとともに、プリフォーム10を成形するときの口栓部11からの放熱性を向上させて、口栓部11内部の溶融樹脂が冷却・固化する際の体積収縮による口栓部11の表面樹脂の引き込みを緩和している。
【0055】
すなわち円周溝23が設けられていることにより、この部分における外壁16の厚みが薄くなっており、かつ外壁16の表面積が広くなっていることにより、外壁16から熱が発散しやすくなっている。また、円周溝23が設けられることにより、口栓部11の厚肉部の体積が少なくなっている。この結果、口栓部11内部の溶融樹脂が冷却され、固体化する際の体積収縮による口栓部11の表面樹脂を引き込もうとする状態が緩和され、口栓部11の内壁15にひけが生じることが防止され、内壁15に凹凸が生じないようになっている。
【0056】
他方、比較例として、仮に口栓部11にこのような円周溝23が設けられていないプリフォームを作製した場合(図9参照)、口栓部11に熱が溜まりやすい上、口栓部11の厚肉部20の体積が大きいことから、口栓部11内部の溶融樹脂が冷却され、固体化する際の体積収縮による口栓部11の表面樹脂を引き込もうとする状態が緩和されないため、口栓部11の内壁15にひけSが生じるおそれがある。
【0057】
その後、プリフォーム10は加熱され、加熱されたプリフォーム10は、図8に示すブロー成形機65に送られる。ブロー成形機65に送られたプリフォーム10は、ブロー成形機65のブロー成形金型66内に挿着される。その後、プリフォーム10内に挿入された延伸ロッド67が伸長することによってプリフォーム10を延伸させるとともに、プリフォーム10内へ高圧エアGを供給し、2軸延伸ブロー成形が行なわれる。
【0058】
このようなブロー成形によって、図5に示す容器30が得られる。
【0059】
ブロー成形工程で成形された容器30は、図示しない充填機に送られ、その後、充填機内において、容器30内に例えば調味料からなる内容物がホット充填される。このときの充填温度(内容物の温度)は、例えば55℃〜95℃である。
【0060】
このようにして内容物が充填された後、キャップ40を容器30の口栓部11に打栓することにより、容器30は閉栓される。すなわち、キャップ40の内筒45および外筒46が、それぞれ口栓部11の内壁15および外壁16に当接して密着する。このようにして容器30と内容物とキャップ40とからなる商品ボトルが製造される。
【0061】
ところで、容器30内に内容物がホット充填された後、内容物の温度は常温まで低下する。このとき内容物の体積が減少し、これによりヘッドスペースの圧力が低下する。そのため、容器30には口栓部11から外気を取り込もうとする力が作用する。通常、圧力の低下を吸収、緩和する手法として、容器本体32に減圧パネルを設けるが、減圧状態が100%緩和されるものではない。
【0062】
本実施の形態によれば、口栓部11の外壁16に、円周方向に延びる単一の円周溝23を設け、この円周溝23により、口栓部11の内壁15にひけが生じることが防止される。このことにより、口栓部11の内壁15とキャップ40の内筒45との密着性が保持される。したがって、内容物を充填してから一定時間が経過した後であっても、口栓部11の内壁15とキャップ40の内筒45との間を通って、容器30内に外気が侵入することがない。
【0063】
他方、比較例として、プリフォーム10の口栓部11にこのような円周溝23を設けなかった場合、プリフォーム作製の際、口栓部31の内壁15にひけが生じ、口栓部11の内壁15とキャップ40の内筒45との密着性が低下することにより、口栓部31の内壁15とキャップ40の内筒45との間を通って、容器30内に外気が侵入するおそれがある。
【0064】
また、本実施の形態によれば、省資源化を図るためにプリフォーム10を軽量化した場合であっても、口栓部11の内壁15にひけが生じることが防止できる。また、プリフォーム10を射出成形する際に、ひけを防止することを目的として成形条件を調整する必要もない。
【0065】
さらに、本実施の形態によれば、口栓部11の機械的強度を向上させることを目的として熱処理工程により口栓部11を結晶白化させる必要がないので、プリフォーム10および容器30の製造コストが上昇することもない。
【実施例】
【0066】
次に、本発明の具体的実施例を説明する。
【0067】
以下に挙げる3種類の容器(実施例1、実施例2、比較例1)を作製した。なお、容器(実施例1、2、比較例1)は、各種類毎にそれぞれ100本ずつ(すなわち3種類の合計300本)作製した。
【0068】
(実施例1)
図1および図2に示すポリエチレンテレフタレート(PET)製のプリフォーム10を用いて、図5および図6に示す容器30(実施例1)を作製した。
【0069】
この場合、プリフォーム10の口栓部11の内径D1(図1)は27.5mmであり、口栓部11の肉厚t1(図1)は2.2mmであった。また、円周溝23を構成する三角形の高さh1(図2)は、0.8mmであり、この高さh1は、口栓部11の肉厚t1の35%であった。さらに、円周溝23の断面を構成する三角形の底辺の長さl1(図2)は、1.3mmであり、この長さl1は、口栓部11の肉厚t1(図1)の59%であった。
【0070】
なお、容器30は、容量1000mlであり、かつその重量は38gであった。
【0071】
(実施例2)
図3および図4に示すポリエチレンテレフタレート(PET)製のプリフォーム10Aを用いて、図5および図6に示す容器30(実施例2)を作製した。なお、円周溝23が断面湾曲線状をなすこと、以外は、上記実施例1の場合と同様にして容器30(実施例2)を作製した。
【0072】
この場合、プリフォーム10Aの口栓部11の内径D2(図3)は27.5mmであり、口栓部11の肉厚t2(図3)は2.2mmであった。また、円周溝26を構成する湾曲線の高さh2(図4)は、0.2mmであり、この高さh2は、口栓部11の肉厚t2の9%であった。さらに、円周溝26の断面を構成する湾曲線の弦の長さl2(図4)は、1.2mmであり、この弦の長さl2は、口栓部11の肉厚t2(図3)の55%であった。
【0073】
(比較例1)
比較例として、口栓部11にこのような円周溝23(26)を設けないポリエチレンテレフタレート(PET)製のプリフォームを作製し、このプリフォームを用いて、図5および図6に示す容器(比較例1)を作製した。なお、円周溝23(26)を設けなかったこと、以外は、上記実施例1の場合と同様にして容器(比較例1)を作製した。
【0074】
このようにして得られた各容器(実施例1、実施例2、比較例1のそれぞれ100本ずつ)について、各容器内に1000mlの内容物を高温(75℃)で充填し、その後、各容器を60℃の環境に一定時間保管した。その後、各容器を低温環境(5℃)に一定時間保管し、このとき外気の流入が発生したか否かを調査した(表1)。
【0075】
【表1】

【0076】
この結果、円周溝23(26)を設けなかった容器(比較例1)については、100本中39本の容器に外気の流入が発生した。これに対して、円周溝23(26)を設けた容器(実施例1、実施例2)については、口栓部31(11)にひけがほとんど発生しなかったため、外気の流入も全く発生しないという結果が得られた。
【符号の説明】
【0077】
10、10A プリフォーム
11 口部
12 プリフォーム本体
13 胴部
14 底部
15 内壁
16 外壁
21 第1の円周凸部
22 第2の円周凸部
23、26 円周溝
24 係止凹部
30 容器
31 口栓部
32 容器本体
33 胴部
34 底部
35 首部
36 肩部
40 キャップ
41 キャップ本体
42 上蓋
43 ヒンジ部
44 頂板部
45 内筒
46 外筒
47 保持突起
48 注出筒
49 プルリング
50 破断線
51 係止凸部
52 天板部
53 側壁部
54 第1の環状突起
55 第2の環状突起
56 鍔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒および外筒を有するキャップが嵌合される容器用のプリフォームにおいて、
キャップが嵌合される口栓部と、
口栓部に連結されたプリフォーム本体とを備え、
口栓部は、キャップの内筒に当接する内壁と、キャップの外筒が嵌め込まれる外壁とを有し、
口栓部の外壁に、円周方向に延びる単一の円周溝が設けられ、
この単一の円周溝により、口栓部の厚肉部の割合を少なくするとともに、成形時の口栓部からの放熱を向上させて、口栓部内部の溶融樹脂が冷却および固化する際に、溶融樹脂の体積が収縮することにより口栓部表面の樹脂が引き込まれることを緩和し、ひけの発生を防止することを特徴とするプリフォーム。
【請求項2】
単一の円周溝は、断面三角形状をなすことを特徴とする請求項1記載のプリフォーム。
【請求項3】
単一の円周溝の断面を構成する三角形は、その高さが口栓部の肉厚の8%〜50%であり、その底辺の長さが口栓部の肉厚の20%〜70%であることを特徴とする請求項2記載のプリフォーム。
【請求項4】
単一の円周溝は、断面湾曲線状をなすことを特徴とする請求項1記載のプリフォーム。
【請求項5】
単一の円周溝の断面を構成する湾曲線は、その高さが口栓部の肉厚の8%〜50%であり、その湾曲線の弦の長さが口栓部の肉厚の20%〜70%であることを特徴とする請求項4記載のプリフォーム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項記載のプリフォームを用いて成形され、内筒および外筒を有するキャップが嵌合される容器において、
キャップが嵌合される口栓部と、
口栓部に連結された容器本体とを備え、
口栓部は、キャップの内筒に当接する内壁と、キャップの外筒が嵌め込まれる外壁とを有し、
口栓部の外壁に、円周方向に延びる単一の円周溝が設けられていることを特徴とする容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−206486(P2012−206486A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75928(P2011−75928)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】