プリント配線板およびその製造方法
【課題】端子部および配線回路を含む導体パターンを構成する導体層のうちの端子部導体層に、Ni/Auめっきなどの保護用金属層を形成する場合において、端子部導体間のスペースを狭小化しても、保護用金属の異常析出、ブリッジ現象により、隣り合う端子部導体間が導通してしまう事態が発生することを防止し、これにより導体パターンを従来よりも高精細化することを可能とする。
【解決手段】絶縁基材の一面に、配線回路および端子部を構成するパターンで導体層が埋め込まれており、その導体層のうちの端子部導体層の表面に、保護用金属からなる被覆層が形成されてなるプリント配線板において、前記端子部導体層は、その表面が絶縁基材の前記一面から窪んだ状態で形成され、その窪んだ端子部導体層の表面が前記被覆層によって覆われ、しかもその被覆層の表面が、絶縁基材の表面と実質的に同一面以下に位置するように形成されている。
【解決手段】絶縁基材の一面に、配線回路および端子部を構成するパターンで導体層が埋め込まれており、その導体層のうちの端子部導体層の表面に、保護用金属からなる被覆層が形成されてなるプリント配線板において、前記端子部導体層は、その表面が絶縁基材の前記一面から窪んだ状態で形成され、その窪んだ端子部導体層の表面が前記被覆層によって覆われ、しかもその被覆層の表面が、絶縁基材の表面と実質的に同一面以下に位置するように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子・電気機器に使用されるプリント配線基板、特に端子部の導体パターンの高精細化を図ったプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプリント配線板の製造方法、特に回路配線および端子部を構成するパターンの導体層を絶縁基材上に形成するための方法は、サブトラクティブ法、アディティブ法(フルアディティブ法、セミアディティブ法)に大別される。これらのうちでも、セミアディティブ法が、他の方法と比較して微細な導体パターンを精度良く形成することができるため、最近ではセミアディティブ法が多用されるようになっている。
【0003】
セミアディティブ法は、基本的には、例えば特許文献1に示されているように、絶縁材料からなる基材上に、無電解めっきによって銅などの薄質な金属層(シード層)を形成し、その上に導体パターンを反転したパターンでめっきレジスト層を形成した後、電解めっきによってレジスト層非形成部分に銅などの導体層を形成し、その後にめっきレジスト層を剥離除去し、さらに電解めっきによる導体層が形成されていない部分のシード層をフラッシュエッチングによって除去するものである。
【0004】
このようなセミアディティブ法によって作製されたプリント配線板における導体パターン形成部分の断面構造を、図10(A)に模式的に示す。導体層12は、絶縁基材10の上面のシード層11に載った状態、すなわち絶縁基材10の上面から突出した状態で形成されている。
【0005】
ここで、セミアディティブ法を適用した場合、電解めっきにより導体層が形成されていない部分(隣り合う導体層12の間のスペース)のシード層を、前述のようにフラッシュエッチングによって除去する必要がある。ここでフラッシュエッチングでは、実際には、導体層の間のシード層が除去されるだけではなく、図10(B)に示しているように、導体層12も若干エッチングされてしまう。そのため、導体層12の幅、特に端子部における他の電子部品との接合のために有効な平坦部分の幅WAが狭くなってしまう。したがってセミアディティブ法を適用した場合でも、ある程度以上は高密度、高精度の導体パターンを形成することが困難である。またセミアディティブ法では、導体層のパターンが絶縁基材表面から突出しているため、多層配線板とするために困難を伴うなどの問題もある。
【0006】
そこで最近では、回路配線や端子部の導体パターンを構成する導体層をプリプレグなどからなる絶縁基材の表面に埋め込んで、導体パターンの側の表面を平滑にしたプリント配線板が実用化されるようになっている。このようなプリント配線板は、例えば特許文献2あるいは特許文献3などに示されており、その断面構造の一例を図11(A)に示す。図11(A)において、導体パターンを構成する導体層12は、絶縁基材10の表面層に埋め込まれて、導体層12の表面12Aは、絶縁基材10の上面10Aとほぼ同一面とされている。
【0007】
図11(A)に示すような基板の製造方法は種々考えられているが、基本的にはサブトラクティブ法やセミアディティブ法など、任意の手法によって支持体表面上に、所定のパターンでその表面から突出する導体層を形成しておき、それを反転させて、導体層の側をプリプレグなどの比較的軟質な絶縁基材の表面に押し付け(積層圧着する)ことによって、絶縁基材の表面層に導体層を押し込み、その後、支持体を任意の手法で除去するのが一般的である。このような工法について、以下この明細書では、平埋め法と称することとし、またこのようにして得られる基板を埋め込み基板と称することとする。
【0008】
ところで、一般にプリント配線板におけるその表面上の導体層(導体パターン)のうち、ある部分の導体層は、他の電子部品を、ワイヤボンディングやフリップチップボンディングなどにより接合するための端子部として使用されるのが通常である。このような端子部において、導体層の銅がそのまま露出していれば、その導体層は容易に酸化し得る。このように導体層の銅表面が酸化した端子部と電子部品とを接続すれば、両者の間の金属結合が不十分になることがあり、接続信頼性が劣るおそれがある。
そこで端子部については、銅からなる導体層の表面に、無電解めっきもしくは電解めっきにより金(Au)めっきを施すことが行なわれている。またその場合、金(Au)めっきだけでは、導体層中の銅(Cu)が金(Au)の中に拡散してしまって接合強度が低下する。その拡散防止のためには、Auめっきの下地としてニッケル(Ni)が最適であるところから、実際上は、銅からなる導体層上に、先ず無電解めっきもしくは電解めっきによりNiめっきを施してから、その上にAuめっきを施すのが通常である。また場合によっては、先ずNiめっきを施し、次いでその上にパラジウム(Pd)めっきを施し、そのPdめっき層上にAuめっきを施すこともある。このような、Ni/AuめっきやNi/Pd/Auめっきで代表される導体層保護のためのめっき層を、ここでは保護用金属の被覆層と称することとする。なお上記のNi/Auめっきや、Ni/Pd/Auめっきとしては、最近では無電解めっきを用いることが多くなっている。
【0009】
上述のような保護用金属の被覆層を導体層上に形成する場合、従来の方法では、次のような問題があった。
すなわち、図10(B)に示すようなセミアディティブ法によって導体層12を形成したプリント配線板について、その導体層12を覆うための保護用金属被覆層14として、例えばNi/Auめっきを施した場合、導体層12の側面にもめっき金属が析出するから、隣り合う導体層12の間のスペースが小さい場合には、図10(C)に示すように、保護用金属被覆層14が、隣り合う導体層間でブリッジ状に繋がってしまう現象(ブリッジ現象)が生じてしまうことがある。このブリッジ現象が生じれば、隣り合う導体層間で保護用金属被覆層14が連続してしまい、電気的にも導通してしまうため、プリント配線板としては不良品となってしまう。またこのブリッジ現象は、電解めっき、無電解めっきのいずれでも生じるが、無電解めっきの場合は、隣り合う導体層間のスペースにおける絶縁基材10表面へのめっき金属の異常析出も問題となる。すなわち、無電解めっきでは、原理的には銅などの金属のみならず絶縁材料にもめっき金属を析出させることができるから、銅からなる導体層上にだけめっき金属を析出させるためには、導体層の表面のみに触媒を担持させたり、めっき処理液に選択性を付与させたりする方策が採られている。しかしながらこのような方策を講じても、隣り合う導体層間のスペースにおける絶縁基材10表面に、わずかながらもめっき金属が析出してしまう現象、すなわち異常析出が生じてしまうことがある。そしてこのような異常析出が生じれば、前述のブリッジ現象が助長されて、隣り合う導体層間で保護用金属被覆層14が連続し、電気的導通が生じてしまうことがある。
そしてセミアディティブ法によって導体層12を形成したプリント配線板では、隣り合う導体層間のスペースが40μm程度以下となれば、ブリッジ現象が頻発するようになり、そのため従来のセミアディティブ法によるプリント配線板では、端子部の導体層上に保護用金属被覆層を形成する場合の端子部導体層間のスペースの狭小化は、40μm程度が限界とされていた。
【0010】
一方、図11(A)に示した、平埋め法によるプリント配線板(埋め込み基板)の場合は、導体層12が絶縁基材10上に突出していないため、保護用金属めっき時、例えばNi/Auめっき時において、導体層12の側面へのめっき金属の析出はなく、そのためセミアディティブ法によるプリント配線板の場合よりはブリッジ現象が生じにくい。しかしながら、めっき金属は、図11(B)に示すように、絶縁基材10表面に露出する導体層12の表面を覆うように丘陵状に隆起しながら析出するから、その隆起した保護用金属被覆層14が、絶縁基材10の表面に沿ってその水平方向にある程度延出することを避け得ない。また特に無電解めっきの場合には、隣り合う導体層間において絶縁基材10の表面に異常析出が生じやすく、そのためブリッジ現象を助長しやすい。
したがって、ブリッジ現象が発生し始めるスペース幅は、セミアディティブ法で発生し始めるスペース幅より小さいといえども、導体間のスペースを、より小さくしたい場合には、このような現象が問題となる。
【0011】
特に、導体層12のうちでも、端子部となる部分は、配線回路部となる部分と比較して、その幅(プリント配線板の板面側から見たときのパターン幅)が広くなるように形成されるのが通常であり、その場合、隣り合う端子部導体層間のスペースは、隣り合う配線回路導体層間のスペースよりも小さくなるのが一般的である。したがって、前述のような導体間のスペースを、より狭小化したい場合の問題は、導体層12のうちでも、端子部となる部分において顕著となる。また一般に酸化防止などのために保護用金属被覆層を導体層上に形成しておくことが望まれるのは、端子部であり、したがってこの点からも、前述の問題は、端子部の導体において発生しやすいのである。
【0012】
上述のような問題について詳細に検討した結果、埋め込み基板を適用した場合、隣り合う導体層間のスペースが30μm程度以下であってしかも保護用金属のめっきによって形成される保護金属被覆層14の表面14Aと絶縁基材表面10Aとの段差dsが2μmを越えれば、異常析出が発生しやすくなり、導体層間で保護用金属が部分的に連続してしまって、隣り合う導体層間で電気的導通が生じやすくなることが判明した。そのため、埋め込み基板を用いた場合の最小スペース幅は、30μm程度が限界であった。
【0013】
以上のように、平埋め法によって導体パターンを形成した埋め込み基板を用いた場合は、従来の一般的なセミアディティブ法による場合と比較すれば、導体パターンの隣り合う導体間のスペースを狭くすることが可能ではあったが、より高精細な回路パターンを形成することが望まれる場合には、未だ不充分と言わざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−335751号公報
【特許文献2】特開平5−299816号公報
【特許文献3】特開2010−80568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、配線回路および端子部となる導体パターンを構成する導体層のうち、端子部となる端子部導体層の表面に、Ni/Auめっきなどの保護用金属被覆層を形成する場合において、隣り合う端子部導体層の間のスペースを30μm以下、さらには25μm以下まで狭小化しても、導体層の間での導体保護用金属のブリッジ現象、異常析出現象によって、隣り合う導体層間が導通してしまうような事態が発生することを未然に防止し、これによって従来よりも一層高精細化することを可能としたプリント配線板を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、基本的には、平埋め法によって、絶縁基材表面に所定のパターンで導体層を埋め込んだ構成とすることを前提とし、その場合に端子部となる導体層上に被覆される保護用金属の被覆層が絶縁基材表面から突出しないようにし、これによって、隣り合う端子部の導体層間のスペースでの保護用金属被覆層のブリッジ現象、異常析出により導体間が電気的に導通してしまうことがないようにした。
【0017】
したがって本発明の基本的な態様(第1の態様)によるプリント配線板は、絶縁基材の一面に、配線回路および端子部を構成するパターンで導体層が埋め込まれており、かつその導体層のうちの端子部の導体層の表面に、導体層の金属とは異なる保護用金属からなる1層以上の被覆層が形成されてなるプリント配線板において、前記端子部の導体層は、その表面が絶縁基材の前記一面から窪んだ状態で形成されており、かつその窪んだ導体層の表面が前記1層以上の被覆層によって覆われており、しかもその1層以上の被覆層は、その表面が、前記絶縁基材の前記一面と実質的に同一面以下に位置するように形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
このような本発明の基本的な態様によれば、絶縁基材に埋め込まれた導体層のうち、端子部を構成する導体層は、絶縁基材の表面から窪んだ状態で形成されており、その端子部の導体層の表面に被覆された保護用金属の被覆層は、その表面位置が絶縁基材の表面と実質的に同一面(実質的に同一レベル)以下とされているため、隣り合う導体層の間での被覆金属(保護用金属)のブリッジ現象の発生が回避される。そのため、隣り合う端子部の導体層間のスペース(最小間隔)を従来よりも狭小化しても、隣り合う導体層の間が保護用金属によって連続して、その間が電気的に導通してしまうことが防止できる。その結果、端子部の導体パターンの最小間隔を従来より小さくして、より高精細なパターンを有するプリント配線板とすることができる。なおここで、保護用金属の被覆層の表面位置が絶縁基材の表面と実質的に同一面(実質的に同一レベル)以下とは、保護用金属被覆層が絶縁基材の表面位置からわずかに突出している場合も許容することを意味しており、その突出高さがわずかであれば、実質的に同一のレベルとみなすことができ、その場合でも、上述のような保護用金属のブリッジ現象の発生を回避することができる。
【0019】
また本発明の第2の態様によるプリント配線板は、前記第1の態様によるプリント配線板において、前記保護用金属の被覆層の表面が、前記絶縁基材の前記一面より2μm高い位置以下に位置するように形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
前述の第1の態様で記載したように、端子部を構成する導体層の表面に被覆された保護用金属の被覆層は、その表面が絶縁基材の表面と実質的に同一面(実質的に同一レベル)以下とされていれば良く、保護用金属の被覆層が絶縁基材の表面位置からわずかに突出している場合も許容されるが、その許容範囲は、第2の態様で、前記絶縁基材の前記一面より2μm高い位置までとしている。本発明者等の詳細な実験、検討によれば、保護用金属の被覆層が絶縁基材の表面位置からわずかに突出していても、その範囲が2μm以下であれば、保護用金属被覆層形成時において、隣り合う導体層の間で絶縁基材表面に保護用金属の異常析出がほとんど生じないことが確認されている。すなわち、保護用金属被覆層表面と絶縁基材表面との段差が2μm以下であれば、保護用金属被覆層表面と絶縁基材表面とが実質的に平坦となっているとみなすことができるのである。
【0021】
また本発明の第3の態様によるプリント配線板は、前記第1もしくは第2の態様によるプリント配線板において、前記導体層のうちの配線回路の導体層は、その表面が絶縁基材の前記一面と実質的に面一に形成されていて、その配線回路の導体層の表面に前記保護用金属被覆層が形成されていないことを特徴とするものである。
【0022】
導体パターンのうちでも、他の電子部品との接合のために使用される端子部は、Ni/AuめっきあるいはNi/Pd/Auめっきで代表される保護用金属の被覆層を形成しておく必要性が高い部分である。一方、保護用金属の被覆層は、導体層(通常は銅)よりも電気抵抗が格段に大きいため、端子部以外の配線回路を構成する導体層についても絶縁基材の表面から窪ませて保護用金属被覆層を形成すれば、配線抵抗が高くなってしまう。この場合、近年の駆動電圧が低い半導体用のプリント配線板では、配線抵抗の増大により正常に機能しなくなってしまうおそれがある。しかるに第3の態様のプリント配線板では、配線回路の導体層は、その表面が絶縁基材の前記一面と実質的に面一に形成されていて、保護用金属の被覆層が形成されていないため、配線回路の電気抵抗の低下は回避され、低電圧駆動でも正常に機能させることができる。
また第3の態様のプリント配線板では、配線回路および端子部を構成するパターンで形成された導体層のうち、端子部を構成する導体層の表面のみに保護用金属の被覆層が形成されるため、導体層を構成する銅などに比較して高価なAuやNiなどの使用量を抑えて、コスト上昇を防止することができる。
なお、配線回路を構成する導体層の表面に保護用金属の被覆層を形成した場合には、その配線回路を構成する導体層に関しても、隣り合う導体層の間での被覆金属(保護用金属)のブリッジ現象の発生が懸念されるが、第3の態様のプリント配線板では、配線回路を構成する導体層の表面には保護用金属の被覆層を形成していないから、このような懸念は生じない。
【0023】
さらに本発明の第4の態様によるプリント配線板は、前記第1〜第3のいずれかの態様によるプリント配線板において、前記被覆層で覆われた端子部の導体層における、隣り合う導体層間の最小間隔が25μm以下であることを特徴とするものである。
【0024】
従来は、平埋め法でも、前述のような保護用金属の被覆時におけるブリッジ現象、異常析出の発生により、隣り合う端子部導体層間の最小間隔(スペース)を30μm程度以下まで小さくすることは困難であったが、本発明によれば、第4の態様として記載したように、25μm以下の狭小なスペースでも、隣り合う端子部導体層の間での保護用金属による電気的導通の発生を防止し、より高精細なプリント配線板を得ることができる。
【0025】
そしてまた本発明の第5の態様によるプリント配線基板は、前記第1〜第4の態様のうちのいずれかの態様によるプリント配線板において、前記被覆層で覆われた端子部の導体層は、被覆層で覆われた面と前記絶縁基材の前記一面との間の距離が、1〜7μmの範囲内となるように形成されていることを特徴とするものである。
【0026】
ここで、端子部の導体層における被覆層で覆われた面と前記絶縁基材の前記一面との間の距離は、導体層の窪み深さと言い換えることができるが、その距離(導体層窪み深さ)が1μm未満では、導体層上の保護用金属被覆層を絶縁基材表面から突出しないように形成するためには、被覆層の厚みが薄くなりすぎ、そのため保護用金属としての保護機能を充分に発揮できなくなる。一方、前記距離(導体層窪み深さ)が7μmを越える厚さに形成するためには、無電解めっきなどによる保護用金属被覆処理時間が長くなって、生産性が悪くなる。そこで、第5の態様として記載したように、前記距離は1〜7μmの範囲内とすることが望ましい。なお、より好ましくは、前記距離を2〜5μmの範囲内とする。
【0027】
さらに本発明の第6の態様によるプリント配線板は、前記第1〜第5の態様のうちのいずれかの態様によるプリント配線板において、前記被覆層で覆われた端子部の導体層は、被覆層で覆われた面と前記絶縁基材の前記一面との間の距離が、導体層の幅方向の中央部で小さく、幅方向両端部で大きくなるように形成されていることを特徴とするものである。
【0028】
このように端子部の導体層における被覆層で覆われた面と前記絶縁基材の前記一面との間の距離が、幅方向中央部で小さく、幅方向両端部で大きくなるように形成されていることは、端子部導体層の幅方向両端近くの表面に傾斜面が形成されていることを意味する。そしてこのような傾斜面によって、端子部導体層と被覆金属層との間の接触面積を大きく確保することができる。その結果、被覆金属層の端子部導体層に対する被覆金属層の密着強度を高めることができ、被覆金属層を端子部導体層から剥離しにくくすることができる。
【0029】
また本発明の第7の態様によるプリント配線板は、前記第1〜第6の態様のうちのいずれかの態様によるプリント配線板において、前記導体層が、銅もしくは銅合金によって形成されていることを特徴とするものである。
【0030】
また本発明の第8の態様によるプリント配線板は、前記第1〜第7の態様のうちのいずれかの態様によるプリント配線板において、前記被覆層の保護用金属の材料として、Ni、Au、Pd、Sn、Ag、はんだ合金のうちから選ばれた1種以上のものが用いられていることを特徴とするものである。
【0031】
さらに第9〜第14の態様では、プリント配線板の製造方法を規定している。
すなわち本発明の第8の態様によるプリント配線板の製造方法は、第1〜第8の態様のうちのいずれかの態様のプリント配線板を製造する方法であって:
絶縁基材の一面に、配線回路および端子部を構成するパターンで導体層を埋め込む埋め込み基板形成工程と、
前記導体層のうちの端子部の導体層の表面をエッチングして、その表面を絶縁基材の前記一面から凹状に窪ませるエッチング工程と、
前記エッチングされた端子部の導体層の表面を、導体層の金属とは異なる保護用金属によって、1層以上に被覆して保護用被覆層を形成する被覆工程と、
を有し、かつ前記被覆工程では、保護用被覆層を、その表面が絶縁基材の前記一面と実質的に同一面以下に位置するように形成することを特徴とするものである。
【0032】
このような第9の態様の製造方法においては、埋め込み基板形成工程によって絶縁基材表面に埋め込まれた導体層のうち、端子部を構成する導体層は、エッチング工程によってその表面が絶縁基材の一面(表面)から窪んだ状態となる。そしてその窪んだ端子部導体層の表面を、被覆工程においてNi/AuあるいはNi/Pd/Auなどの保護用金属により被覆するにあたっては、被覆層の表面が絶縁基材の表面と実質的に同一面(同一レベル)となるようにする。ここで、保護用金属の被覆時には、端子部導体層は絶縁基材表面から窪んだ状態となっているから、保護用金属被覆のための無電解めっきや電解めっきなどにおいて、保護用金属の析出が導体層の側方(水平方向)に進行することがなく、そのためブリッジ現象も生じない。そのため、隣り合う端子部導体間の最小間隔(スペース)を従来よりも狭小化しても、隣り合う端子部導体層が連続して、その間が電気的に導通してしまうことが防止できる。その結果、端子部の導体パターンの間隔を従来より小さくして、より高精細なパターンを有するプリント配線板とすることができる。
【0033】
また本発明の第10の態様のプリント配線板の製造方法は、第9の態様のプリント配線板の製造方法において、前記エッチング工程で、端子部の導体層の表面をエッチングし、その後の被覆工程で、そのエッチングされた端子部の導体層の表面に保護用金属の被覆層を形成することを特徴とするものである。
【0034】
また本発明の第11の態様のプリント配線板の製造方法は、第10の態様のプリント配線板の製造方法において、前記被覆工程で、保護用金属の被覆層を、その表面が絶縁基材の前記一面から2μm高い位置以下となるように形成することを特徴とするものである。
【0035】
既に第2の態様に関して説明したように、保護用金属の被覆層が絶縁基材の表面位置からわずかに突出している場合も許容され、その突出高さが2μm以下であれば、保護用金属被覆層形成時において、隣り合う端子部の導体層の間で絶縁基材表面に保護用金属の異常析出がほとんど生じないが確認されている。したがって、プリント配線板の製造時においても、保護用金属被覆層表面と絶縁基材表面との段差が2μm以下となるように保護用金属被覆層を形成すれば、隣り合う端子部導体層の間での保護用金属異常析出の発生を回避することができる。
【0036】
また本発明の第12の態様のプリント配線板の製造方法は、第9〜第11のいずれかの態様のプリント配線板の製造方法において、前記エッチング工程で、端子部の導体層を、その表面の最上部が、絶縁基材の前記一面から1〜7μmだけ窪むまでエッチングすることを特徴とするものである。
【0037】
さらに本発明の第13の態様のプリント配線板の製造方法は、第9〜第12のいずれかの態様のプリント配線板の製造方法において、前記被覆工程が、無電解めっきにより保護用金属を被覆する工程であることを特徴とするものである。
【0038】
さらに本発明の第14の態様のプリント配線板の製造方法は、第9〜第12のいずれかの態様のプリント配線板の製造方法において、前記被覆工程が、電解めっきにより保護用金属を被覆する工程であることを特徴とするものである。
【0039】
また本発明の第15の態様のプリント配線板の製造方法は、第9〜第14のいずれかの態様のプリント配線板の製造方法において、前記埋め込み基板形成工程が、支持体の表面上に導体層をパターンめっきにより形成した後、絶縁基材の一面に前記導体層を押し込み、その後、支持体を除去する工程であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0040】
本発明のプリント配線基板においては、パターン形成された導体層のうちの端子部となる導体層が、絶縁基材の表面から窪んだ状態で形成されており、その端子部導体層の表面に被覆された保護用金属の被覆層が絶縁基材の表面と実質的に同一面(同一レベル)以下とされているため、隣り合う端子部導体層の間において被覆金属(保護用金属)が異常析出やブリッジ現象により連続してしまうことが容易に回避される。そのため、隣り合う端子部導体間の最小間隔(スペース)を従来よりも狭小化しても、隣り合う端子部導体が電気的に導通してしまうことが防止でき、その結果、導体パターン、特に端子部の導体パターンの間隔を従来より小さくして、より高精細なパターンを有するプリント配線板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態のプリント配線基板の原理的な平面構造を、略解的に示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のプリント配線基板の原理的な断面構造を、図1におけるII−II線で切断して示す縦断面である。
【図3】本発明の第1の実施形態のプリント配線基板の原理的な断面構造を、図1におけるIII−III線で切断して示す縦断面である。
【図4】本発明の第2の実施形態のプリント配線基板の原理的な断面構造を、図3と同様な位置で略解的に示す縦断面図である。
【図5】本発明のプリント配線基板の製造方法の一実施形態を段階的にかつ原理的に示す略解図である。
【図6】本発明のプリント配線基板の製造方法の準備工程として、埋め込み基板を製造する方法の一例を段階的かつ原理的に示す略解的図である。
【図7】本発明のプリント配線基板の製造方法の一実施形態のうちの初期の工程を、より具体的かつ段階的に示す略解図である。
【図8】図7に続く工程を、具体的かつ段階的に示す略解図である。
【図9】図8に続く工程を、具体的かつ段階的に示す略解図である。
【図10】従来のプリント配線板の一例の導体層付近の状況を示す略解的な断面図である。
【図11】従来のプリント配線板の他の例の導体層付近の状況を示す略解的な断面図である。
【図12】実施例1〜実施例3および比較例1、比較例2によるプリント配線板の導体層付近の断面の光学顕微鏡で観察した写真である。
【図13】実施例1によるプリント配線板についての平面および断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。
【図14】実施例2によるプリント配線板についての平面および断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真である
【図15】実施例3によるプリント配線板についての平面および断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真である
【図16】比較例1によるプリント配線板についての平面および断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真である
【図17】比較例2によるプリント配線板についての平面および断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真である
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図3には、本発明の第1の実施形態のプリント配線板の要部を原理的に示し、図4には、本発明の第2の実施形態のプリント配線板の要部を原理的に示す。
図1〜図3、および図4において、絶縁基材10はプリプレグ、あるいは液晶ポリマー(LCP)で代表される高耐熱性熱可塑性樹脂などの絶縁性材料からなる薄板状もしくはシート状のものであり、その絶縁基材10の一方の面(以下単に表面と記す)10Aの側には、プリント配線板としての配線回路および端子部を構成する金属銅(Cu)もしくはCu合金などの良導電材料からなる複数の導体層12が、絶縁基材10の板面と平行な方向に伸びる所定のパターンで埋め込まれている。
ここで、導体層12のうち、符号12aの領域は、導体パターンのうちの端子部に相当する部分であり、以下これを端子部導体層12aと称する。また導体層12のうち、符号12bの領域は、導体パターンのうちの配線回路に相当する部分であり、以下これを配線回路導体層12bと称する。
【0043】
端子部導体層12aは、図1〜図3に示す例では、幅Wの幅広な領域12a0と、その領域12a0から配線回路導体層12bに向かって連続する幅W´の相対的に幅狭の領域12a1とによって構成されている。そして配線回路導体層12bは、前記端子部導体層12aにおける幅狭の領域12a1に、同じ幅W´をもって連続している。そして隣り合う導体層12は、所定の間隔(スペース)を置いて互いに平行となっている。ここで隣り合う端子部導体層12aにおける幅広な領域12a0の相互間の間隔(スペース)を、符号Sで示す。この間隔Sは、隣り合う導体層12の間における最も小さい間隔と言うことができる。
なお場合によっては、端子部導体層12aを、その全長にわたって同じ幅(W)とし、かつその端子部導体層12aに連続する配線回路導体層12bも同じ幅(W)とすることもある。
【0044】
端子部導体層12aおよび配線回路導体層12bを含め、導体層12の厚みは特に限定しないが、通常は10〜20μm程度とされる。導体層12の厚みが10μm未満では、導体層による配線や端子部の電気抵抗が過大となるおそれがあり、一方20μを越える厚さとすることは、性能的に無駄で、コストアップを招くばかりでなく、埋め込み基板製造に困難を伴うおそれがある。
【0045】
前記端子部導体層12aは、絶縁基材10の表面10Aから凹状に窪んだ状態で形成されている。すなわち端子部導体層12aは、その表面12Aが、絶縁基材10の表面10Aの位置から所定の深さDの位置に位置している。その深さDは、1〜7μmの範囲内とすることが望ましく、より好ましくは2〜5μmの範囲内とする。
【0046】
端子部導体層12aの表面12A上には、保護用金属の被覆層14として、例えばNiめっき層(第1層)14−1とAuめっき層(第2層)14−2との2層構造とされている。この被覆層14の厚みTは、実質的に導体層表面の窪み深さDと同等とされている。したがって被覆層14は、その表面14Aの位置が、絶縁基材10の表面10Aと実質的に同一の面もしくはそれ以下の位置となっていて、絶縁基材表面10Aから実質的に突出しない状態となっている。
【0047】
ここで、図3では、端子部導体層12aの表面12Aが平坦な場合について示しているが、端子部導体層12aに対するエッチングをある程度以上進行させた場合には、図4に示すように、幅方向中央部121よりも幅方向両端部122で窪み深さが大きくなることが分かった。すなわち、幅方向中央部121の窪み深さD1よりも幅方向両端部122の窪み深さD2が大きくなるような断面凸形状に形成されることが分かった。このように端子部導体層12aの幅方向断面形状が凸形状となった場合でも、後に製造方法に関して説明するように、導体層表面に被覆される保護用金属の被覆層14は、その上面14Aを平坦面(絶縁基材10の表面10Aと実質的に面一の平坦面、もしくはそれよりも下方の位置での平坦面)とすることができる。特に無電解めっきを適用した場合は、より平坦とすることができる。
【0048】
なお以上の説明においては、保護用金属の被覆層14の上面14Aが絶縁基材表面10Aから実質的に突出しない、あるいは保護用金属の被覆層14の上面14Aが絶縁基材10の表面10Aと実質的に同一の面以下となると記載したが、ここで“実質的に”とは、保護用金属の被覆層14の上面14Aが絶縁基材表面10Aと完全に同一な面もしくはその下方に位置している場合のみならず、保護用金属の被覆層14の上面14Aが絶縁基材表面10Aからわずかに突出する場合を許容していることを意味する。そのわずかな突出許容寸法は、通常は+2μmまでは許容される。すなわち、絶縁基材表面10Aからの保護用金属被覆層14の上面14Aの最大突出寸法が2μmを越えれば、図11(B)に示したと同様に、保護用金属が隣り合う導体層間で部分的に連続してしまうおそれがあるが、その突出寸法が2μm以下であれば、隣り合う端子部導体層12a間で、部分的にも連続してしまうおそれが少ない。そこで、保護用金属被覆層14の上面14Aの位置は、絶縁基材表面10Aの位置から上方へ2μmまでは許容され、その許容範囲を含めて、本明細書では、保護用金属被覆層14の上面14Aの位置について、絶縁基材表面10Aの位置と実質的に同一の面以下と表現しているのである。
【0049】
なおまた、保護用金属被覆層14自体の厚みは特に限定しないが、通常は端子部導体層12aの表面12Aの絶縁基材表面10Aからの窪み深さ(好ましくは1〜7μm)および保護用金属被覆層14の絶縁基材表面10Aからの突出許容高さ(好ましくは2μm以下)との関係からは、1〜9μmの範囲内とすることが望ましい。
さらに、保護用金属被覆層14の上面14Aが絶縁基材表面10Aから窪んでいる場合には、隣り合う端子部導体層12a間での保護用金属の連続は原理的に生じ得ず、従ってその窪み寸法については特に限定しない。但し、保護用金属被覆層14の上面14Aの絶縁基材表面10Aからの窪み深さが10μmを越えれば、端子部導体層12aの厚みを10μm程度以上に確保することが困難となって、端子部の抵抗が過大となってしまうおそれがあるから、通常は10μm以下とすることが望ましく、より好ましくは7μm以下とする。
【0050】
また上記の例では、保護用金属の被覆層14を、Niめっき層(第1層)14−1とAuめっき層(第2層)14−2との2層構造として説明したが、Niめっき層(第1層)、Pdめっき層(第2層)、およびAuめっき層(第3層)の3層構造とすることもでき、さらに場合によっては単層構造としても良い。また保護用金属の種類も特に限定されず、端子部導体層12aを構成する金属、および端子部として接合される相手側の金属の種類に応じて適切な1種又は2種以上の金属を保護用金属として選択すればよい。具体的には、例えばNi、Au、Pd、Sn、Ag、はんだ合金のうちから選ばれた1種以上のものを、保護用金属として用いることができる。
【0051】
なお、上述のように導体層12のうちの端子部導体層12aは、絶縁基材表面10Aから窪ませて、その上面に保護用金属被覆層14を形成しているが、導体層12のうちの配線回路導体層12bは、絶縁基材表面10Aから窪ませず、その上面を絶縁基材表面10Aと実質的に面一のままとしている。そしてその配線回路導体層12bの表面には、保護用金属被覆層14を形成していない。
【0052】
次に図1〜図3、または図4に示される第1、第2実施形態のプリント配線板を製造する方法について、図5の(A)〜(E)を参照して原理的に説明する。なお図5の(A)〜(E)においては、導体層12のうち、端子部導体層12aの幅広な領域12a0が現れている断面について示し、配線回路導体層については省略している。
【0053】
図5(A)は、埋め込み基板形成工程によって、プリプレグ、あるいは液晶ポリマー(LCP)で代表される高耐熱性熱可塑性樹脂などの絶縁性材料からなる絶縁基材10に、既に複数の導体層12が埋め込まれている状態の基板(埋め込み基板)18を示す。なおこの状態では、導体層12の表面12Aは、絶縁基材10の表面10Aのレベルと同一のレベルとなっている。すなわち導体層12によるパターン形成面は平坦な面となっている。
このような状態のもの(埋め込み基板18)を得るまでの埋め込み基板形成工程の具体的なプロセスは従来の平埋め法と同様であれば良く、その具体例については後に改めて説明する。
【0054】
本発明の実施形態では、図5(A)に示す段階の埋め込み基板18に対し、エッチング工程を施す。すなわち、導体層12を構成しているCuもしくはCu合金を溶解させるエッチング液、例えば過硫酸ナトリウムと硫酸とからなるエッチング液を用いて、導体層12のうちの端子部導体層12aを、その表面側からエッチングする。そのエッチングの初期段階の状況を図5(B)に示す。この段階では、端子部導体層12aはほぼ均一な深さで窪んでいる。さらにエッチングを進行させれば、端子部導体層12aはその幅方向両端部付近で大きくエッチングされ、図5(C)に示すような、中央部121よりも両端部122付近の窪み深さが大きい状態となる。すなわち、幅方向の断面が凸状をなす状態となる。
なお上記のエッチング工程では、導体層12のうち、配線回路導体層は、適宜エッチングマスクなどでカバーして、エッチングされることを防止する。したがってエッチング工程終了後の段階では、導体層12は、端子部導体層12aのみが窪んだ状態となっており、図示しない配線回路導体層は、その表面が絶縁基材表面10Aと実質的に面一のままとなっている。
【0055】
次いで、保護用金属被覆工程として、図5の(D)〜(E)に示すように、端子部導体層12aの表面12A上を、保護用金属で被覆し、被覆層14を形成する。本実施形態では、先ず無電解めっきもしくは電解めっきにより端子部導体層12aの表面12Aに第1層14−1としてNiめっきを施し、続いて無電解めっきもしくは電解めっきにより第2層14−2としてAuめっきを施して、2層構造の被覆層14としている。ここで、被覆層14はその表面14Aが、絶縁基材10の表面10Aとほぼ面一となるように、めっき条件(特にめっき速度)に応じてめっき処理時間を適切に調整する。なお本実施形態においては、保護用金属めっき前の段階(図5(C))では、端子部導体層12aが、幅方向の断面が凸状をなす状態となっているが、被覆層第1層14−1のNiめっきを施すに当たっては、無電解めっき、電解めっきのいずれによる場合も、Niをある程度以上の厚みでめっきすることにより、そのNiめっき層(第1層)14−1の表面14−1Aをほぼ平坦な面とすることができる(図5(D)参照)。したがって、その後に第2層14−2としてAuめっきを施すにあたっては、均一な厚みでめっきすることにより、容易にその表面14−2A(被覆層表面14Aに相当)を平坦な面とすることができる。その結果、図4に示した第2の実施形態のプリント配線板と同様なプリント配線板を得ることができる。
【0056】
ここで、上述の保護用金属被覆工程においては、無電解めっき、電解めっきのいずれの場合も、めっき金属(Ni、Au)は、絶縁基材表面10Aから窪んだ凹部(端子部導体層12aの表面12A上でかつ絶縁基材表面10Aの面より低い空間)の内側に析出されるから、隣り合う端子部導体層間で保護用金属のブリッジ現象が生じてしまうことはない。また無電解めっきを適用した場合において、保護金属被覆層14の表面14Aが絶縁基材表面10Aからわずかに突出したとしても、その保護金属被覆層14の表面14Aと絶縁基材表面10Aとの段差が2μm以下であれば、異常析出の発生がほとんどなく、そのため電気的に導通してしまうことを防止できる。そして、隣り合う端子部導体層12aの間のスペース(例えば図1、図3、図4に示す端子部導体層12aの幅広な領域12a0についての隣り合う導体層間の間隔S;すなわち導体層間の最小間隔)が25μm以下と、極めて小さい場合でも、そのスペースで保護用金属が連続して電気的導通が生じてしまうことを回避できるため、端子部導体層12a層間の最小間隔を25μm以下として、高精細な導体パターンを有するプリント配線板を作成することができる。なお本発明者らが鋭意検討した結果、上記の最小間隔は十数μmまで狭小化しても特に問題はないことを確認している。
【0057】
なお、図5の(B)に示す段階、すなわちエッチング工程の比較的初期の、端子部導体層12aが未だ断面凸状となっていない段階で、次の被覆工程としてNi/Auめっきを施すこともあり、その場合には図3に示したような断面形状を有する第1の実施形態のプリント配線板と同様なプリント配線板を得ることができる。
【0058】
次に、図5(A)に示されるような埋め込み基板を製造する工程、すなわち埋め込み基板形成工程の原理的な一例について、図6の(A)〜(H)を参照して説明する。
先ず図6の(A)に示すような支持体20を用意する。この支持体20は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、銅箔20Aの片面上にニッケル膜20Bをめっきなどにより形成したものが用いられている。
【0059】
次いで、図6の(B)に示すように、支持体20におけるニッケル膜20Bの側の面に、めっきレジスト層22を形成する。このめっきレジスト層22は、レジストパターン形成のためにフォトリソグラフィ技術を適用する場合は、感光性レジストフィルムを用いればよい。続いて公知のフォトリソグラフィ技術などにより、図6の(C)に示すように、めっきレジスト層22にパターンを形成する。その後、図6の(D)に示すように、例えば電解めっきにより、支持体20上のめっきレジスト非形成部分に、Cuなどにより導体層12を形成する。その後、めっきレジスト層22を、剥離あるいは溶解などによって除去し、図6の(E)の状態とする。この状態では、支持体20の表面に導体層12が所定のパターンで突出形成されている。
【0060】
その後、図6の(F)に示すように、プリプレグなどの比較的軟質な絶縁基材10を用意して、その絶縁基材10の表面10Aを、支持体20上の導体層12に対向させ、必要に応じて加熱しながら加圧して、積層圧着させる。これによって、図6の(G)に示すように、導体層12が絶縁基材10に押し込まれる。その後、支持体20をエッチングなどの適宜の手段によって除去すれば、図6の(H)に示すような埋め込み基板18が得られる。
【0061】
さらに本発明のプリント配線板の製造方法を、より具体化した実施形態を、図7〜図9に示す。なお図7の(A)〜(F)から図8の(A)〜(D)、さらに図9の(A)〜(C)までは、埋め込み基板18を作成するための埋め込み基板形成工程に相当し、図9の(D)〜(G)は、その後の工程を示している。また図7〜図9の各図においても、図5、図6と同様に、導体層12のうち、端子部導体層12aの幅広な領域12a0が現れている断面について示し、配線回路導体層については省略している。
【0062】
本実施形態においては、先ず図7の(A)に示すように、第1の支持体としての片面銅張積層板30と、第2の支持体としての比較的軟質な絶縁材、例えばプリプレグ32と、小サイズの銅箔34と、大サイズの銅箔36とを用意する。そしてこれらを上記の順序で積層して加圧し、図7の(B)に示すような積層体38を得る。この積層加圧によって、小サイズの銅箔34は、第2支持体32の表面層に埋め込まれた状態となる。なお小サイズ銅箔34と大サイズ銅箔36との間は接着されていないが、小サイズ銅箔34の端部よりも外側の領域では大サイズ銅箔36がプリプレグ32に直接接して、その間で接合力が作用している。
【0063】
次いで図7の(C)に示すように、大サイズの銅箔36の表面に、無電解めっきもしくは電解めっきなどによって、Ni層40を形成する。その後、図7の(D)に示すように、Ni層40の表面に、めっきレジスト42として、例えば感光性レジストフィルムを積層する。そしてフォトリソグラフィなどの公知の手法によって、図7の(E)に示すように、めっきレジスト42にパターンを形成する。
【0064】
その後、導体金属としてのCuの電解めっきを行なって、めっきレジスト42の非形成部分に導体層12を形成し、続いてめっきレジスト42を剥離もしくは溶解によって除去し、図7の(F)に示すように、積層体38におけるNi層40上に導体層12のパターンを形成する。
【0065】
次いで、図8の(A)に示すように、プリプレグや液晶ポリマーなどの絶縁基材10と、銅箔44とを、積層体38のNi層40上における導体層12の側に配置し、図8の(B)に示すように、積層、加圧する。これによって導体層12は、絶縁基材10に埋め込まれた状態となる。
【0066】
その後、図8の(C)に示すように、小サイズ銅箔34の端部よりも内側の部分で、パターン幅方向に平行な垂直方向に切断し、両端側の部分を中央部側の部分から切り離す。その切断位置を2点鎖線46で示す。ここで、小サイズ銅箔34と大サイズ銅箔36との間は特に接合されていないため、上述のように切り離した後の中央部側の部分は、小サイズ銅箔34と大サイズ銅箔36との間で容易に剥離することが可能な状態となる。そこで、図8の(D)に示すように、小サイズ銅箔34と大サイズ銅箔36との間を剥離させる。このようにして剥離した上側の部分を図9の(A)に示す。
【0067】
この後、図9の(A)〜(B)に示すように、エッチング液として、Cuは溶解するがNiは溶解しにくいエッチング選択性を有する第1の選択エッチング液、例えばメルテックス製エープロセスを用いて、大サイズ銅箔36をエッチング除去する。これによって、図9の(B)に示すように、Ni層40が露呈した状態となる。なお、この第1の選択エッチングによって、大サイズ銅箔36とは反対側の銅箔44も、その全体がエッチング除去されるが、実際のプリント配線板の製造では、この銅箔44についても公知のフォトリソグラフィ技術を適用してパターン形成することが可能である。
【0068】
上述のようにして大サイズ銅箔36が除去されてNi層40が露呈した後には、図9の(B)〜(C)に示すように、Niは溶解するがCuは溶解しにくいエッチング選択性を有する第2の選択エッチング液、例えばメルテックス製メルストリップN−950を用いて、Ni層40をエッチング除去する。これによって、図9の(C)に示すように、絶縁基材10に所定のパターンで埋め込まれた導体層12の表面が露呈した状態となる。すなわち、図6の(H)で示したものと同様な埋め込み基板(但し図面上では上下が反転している)18が得られる。
【0069】
その後、必要に応じて、図9の(D)に示すように導体層12に対して反対側の面から、機械加工やレーザ加工によって、絶縁基材10に開口部46を、導体層12に届くように形成し、さらに図9の(E)に示すように、必要に応じてソルダレジスト層48を所定のパターンで形成する。
【0070】
その後の工程は、図5の(A)〜(E)を参照して説明したプロセスと実質的に同様である。すなわち、導体層12のうちの端子部導体層12aを、絶縁基材10の表面から所定の深さDまでエッチングして、図9の(F)に示す状態とする。その後、図9の(G)に示すように、端子部導体層12aの表面に、保護用金属被覆層14として、Niめっき層(第1層)14−1およびAuめっき層(第2層)14−2を、無電解めっきもしくは電解めっきにより形成する。このとき、保護用金属被覆層14の表面が絶縁基材10の表面と実質的に同一の面以下となるようにめっき厚を調整することは、既に述べたとおりである。
【0071】
以下に本発明の実施例を、比較例とともに説明する。なお以下の実施例は、本発明の作用効果を明確化するためのものであって、実施例に記載された条件が本発明の技術的範囲を限定しないことはもちろんである。
【実施例】
【0072】
実施例1:
図5の(A)に示すように、プリプレグからなる絶縁基材10に所定のパターンでCuからなる導体層12が埋め込み形成された埋め込み基板18を準備した。ここで、導体層12の幅(パターンの幅)は20μm、隣り合う端子部導体層間の間隔、とりわけ端子部導体層12aにおける幅広な領域12a0の間隔(パターン間の最小間隔)Sは、14μmとした。このような埋め込み基板18の導体層12のうち、端子部導体層12aの表面を、過硫酸ナトリウムと硫酸からなるエッチング液によって、1μmの深さまでエッチングし、絶縁基材10の表面から端子部導体層12aの表面が窪んでいる状態とした(図5(B))。次いで、上記の端子部導体層12aについて、脱脂処理を行ってから、エッチング量0.3μmのソフトエッチング処理、脱スマット処理、プリディップ処理、さらに無電解めっきのためのPd触媒の付与処理、ポストディップ処理をその順に行った後、約2μmの無電解Niめっき、0.3μmの無電解Pdめっき、0.1μmの置換無電解Auめっきを行ない、端子部導体層12a上においてAuめっき層表面が絶縁基材表面から1.0μm突出しているプリント配線板を得た。
実施例1により得られたプリント配線板の端子部導体層付近の断面の状況を光学顕微鏡によって観察した結果を図12の(A)に示し、またそのプリント配線板の平面および断面について走査型電子顕微鏡により観察した結果を図13に示す。なお、図12の(A)〜(E)、及び図13〜図17の(B)において、符号AはCuからなる導体層を示し、符号Bは、Ni/Auめっき層を示す。
【0073】
実施例2:
図5の(A)に示すように、プリプレグからなる絶縁基材10に所定のパターンでCuからなる導体層12が埋め込み形成された埋め込み基板18を準備した。ここで、端子部導体層12aの幅(パターンの幅)は20μm、隣り合う端子部導体層12a間の間隔、とりわけ端子部導体層12aにおける幅広な領域12a0の間隔(パターン間の最小間隔)Sは、15μmとした。このような埋め込み基板18の導体層12のうち、端子部導体層12aの表面を、過硫酸ナトリウムと硫酸からなるエッチング液によって、1μmの深さまでエッチングし、絶縁基材10の表面から端子部導体層12aの表面が窪んでいる状態(図5(B))とし、さらにエッチングを継続させて、幅方向の断面が凸状をなす端子部導体層12aとした(図5(C))。ここで、上記のエッチングは、断面凸状の端子部導体層の幅方向中央部の表面(凸状の頂面)が、絶縁基材表面位置から4.5μmの深さに位置するまで行なった。なおこの状態では、断面凸状の端子部導体層の両端部は、絶縁基材表面位置から7.5μmの深さに位置していた。次いで、上記の端子部導体層12aについて、脱脂処理を行ってから、エッチング量0.3μmのソフトエッチング処理、脱スマット処理、プリディップ処理、さらに無電解めっきのためのPd触媒の付与処理、ポストディップ処理をその順に行った後、無電解Niめっきを行なった(図5(D))。この無電解Niめっきは、凸状導体層の頂部が絶縁基材表面位置から0.3μmの深さの位置に達するまで行なったが、この状態では、Niめっき層は、全体として平坦となっていることが確認された。さらにNiめっき層上に、0.2μmの無電解Pdめっき、および0.1μmの置換無電解Auめっきを行ない、端子部導体層上のAuめっき層表面が絶縁基材表面とほぼ同じ位置となっている平坦なプリント配線板を得た(図5(E)、図4)。
実施例2により得られたプリント配線板の導体層付近の断面の状況を光学顕微鏡によって観察した結果を図12の(B)に示し、またそのプリント配線板の平面および断面について走査型電子顕微鏡により観察した結果を図14に示す。
【0074】
実施例3:
図5の(A)に示すように、プリプレグからなる絶縁基材10に所定のパターンでCuからなる導体層12が埋め込み形成された埋め込み基板18を準備した。ここで、端子部導体層12aの幅(パターンの幅)は13μm、隣り合う端子部導体層12a間の間隔、とりわけ端子部導体層12aにおける幅広な領域12a0の間隔(パターン間の最小間隔)Sは、22μmとした。このような埋め込み基板18の導体層12における端子部導体層12aの表面を、硫酸と過酸化水素水からなるエッチング液によって、1μmの深さまでエッチングし、絶縁基材10の表面から端子部導体層12aの表面が窪んでいる状態(図5(B))とし、さらにエッチングを継続させて、幅方向の断面が凸状をなす端子部導体層とした(図5(C))。ここで、上記のエッチングは、断面凸状の端子部導体層の幅方向中央部の表面(凸状の頂面)が、絶縁基材表面位置から2.5μmの深さに位置に達するまで行なった。なおこの状態では、断面凸状の端子部導体層の両端部は、絶縁基材表面位置から5.3μmの深さに位置していた。次いで、上記の端子部導体層12aについて、脱脂処理を行ってから、エッチング量0.3μmのソフトエッチング処理、電解Niめっきを行なった(図5(D))。この電解Niめっきは、凸状導体層の頂部が絶縁基材表面位置から1.4μmの高さの位置に達するまで行なったが、この状態では、Niめっき層は、全体として平坦となっていることが確認された。さらにNiめっき層上に、0.1μmの電解Auめっきを行ない、端子部導体層12a上のAuめっき層表面が絶縁基材表面から1.5μm突出しているプリント配線板を得た(図5(E)、図4)。
実施例3により得られたプリント配線板の導体層付近の断面の状況を光学顕微鏡によって観察した結果を図12の(C)に示し、またそのプリント配線板の平面および断面について走査型電子顕微鏡により観察した結果を図15に示す。
【0075】
比較例1:
図11(A)に示すように、プリプレグからなる絶縁基材10に所定のパターンでCuからなる導体層12が埋め込み形成された埋め込み基板18を準備した。ここで、導体層12の幅(パターンの幅)は20μm、隣り合う導体層間の間隔、とりわけ端子部導体層12aにおける幅広な領域12a0の間隔(パターン間の最小間隔)Sは、15μmとした。このような埋め込み基板18の導体層12の表面について、脱脂処理を行ってから、エッチング量0.3μmのソフトエッチング処理、脱スマット処理、プリディップ処理、さらに無電解めっきのためのPd触媒の付与処理、ポストディップ処理をその順に行った後、約3.5μmの無電解Niめっき、0.2μmの無電解Pdめっき、0.1μmの置換無電解Auめっきを行ない、Ni/Pd/Auの保護用金属被覆層(無電解めっき層)14の表面が絶縁基材10の表面から3.5μm突出しているプリント配線板を得た(図11(B))。
比較例1により得られたプリント配線板の導体層付近の断面の状況を光学顕微鏡によって観察した結果を図12の(D)に示し、またそのプリント配線板の平面および断面について走査型電子顕微鏡により観察した結果を図16に示す。
【0076】
比較例2:
図10(A)に示すように、プリプレグからなる絶縁基材10上に所定のパターンでCuからなる導体層12が突出形成された基板をセミアディティブ工法により準備した。ここで、導体層12の幅(パターンの幅)は21μm、隣り合う導体層間の間隔、とりわけ端子部導体層12aにおける幅広な領域12a0の間隔(パターン間の最小間隔)Sは、30μmとした。このような絶縁基材10上の導体層12の表面について、脱脂処理を行ってから、エッチング量0.3μmのソフトエッチング処理、脱スマット処理、プリディップ処理、さらに無電解めっきのためのPd触媒の付与処理、ポストディップ処理をその順に行った後、約2μmの無電解Niめっき、0.2μmの無電解Pdめっき、0.1μmの置換無電解Auめっきを行ない、絶縁基材10上に突出する導体層12がNi/Pd/Auの保護用金属被覆層(無電解めっき層)14で覆われたプリント配線板を得た(図10(B))。
比較例2により得られたプリント配線板の導体層付近の断面の状況を光学顕微鏡によって観察した結果を図12の(E)に示し、またそのプリント配線板の平面および断面について走査型電子顕微鏡により観察した結果を図17に示す。
【0077】
以上の実施例および比較例によるプリント配線板についての観察結果(図12の(A)〜(E)、図13〜図17)から、次のような事実が確認された。
すなわち、本発明の実施例1〜3の場合は、いずれも、隣り合う端子部導体層の間の絶縁基材表面に、保護用金属の異常析出が生じておらず、またとそれに伴うブリッジ現象も生じておらず、隣り合う端子部導体層の間が完全に分離していることが確認された。
これに対して、埋め込み基板を適用したが、導体層をエッチングにより窪ませずに保護用金属のめっきを行なった比較例1では、走査型電子顕微鏡での観察の結果、隣り合う導体の間の絶縁基材表面に保護用金属の異常析出が生じて、ブリッジ現象が発生したことが確認された。
さらに、導体層を絶縁基材上に突出した状態で形成した比較例2の場合は、導体層の上面のみならず側面を覆う保護用金属が隣り合う導体層の間で連続してしまって、明確なブリッジ現象が発生していることが確認された。
【0078】
ここで、比較例2は、従来の一般的なセミアディティブ法を適用した例であり、この場合には、隣り合う導体層間の最小間隔Sが30μmで、保護用金属のブリッジ現象により隣り合う導体層の間が連続してしまっていた。
これに対して、本発明の実施例1〜3では、隣り合う端子部導体層間の最小間隔Sを25μm以下に狭小化し、特に実施例1、実施例2では15μm以下に著しく狭小化しているが、これらの場合でも、隣り合う端子部導体層の間で保護用金属の異常析出やブリッジが認められなかった。したがって本発明によれば、端子部導体層12a間のスペース(最小間隔S)を25μm以下、さらには15μm以下まで狭小化しうることが明らかである。
なお比較例1では、導体層間の最小間隔Sが15μmであるが、異常析出していることから、25μm以下まで狭小化することは実際上困難と解され、特に15μm以下まで狭小化することは不可能であることが明らかである。
【符号の説明】
【0079】
10 絶縁基材
12 導体層
12a 端子部導体層
12b 配線回路導体層
14 保護用金属の被覆層14
18 平埋め基板
20 支持体
121 幅方向中央部
122 幅方向両端部
S 最小間隔(スペース)
W 幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子・電気機器に使用されるプリント配線基板、特に端子部の導体パターンの高精細化を図ったプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプリント配線板の製造方法、特に回路配線および端子部を構成するパターンの導体層を絶縁基材上に形成するための方法は、サブトラクティブ法、アディティブ法(フルアディティブ法、セミアディティブ法)に大別される。これらのうちでも、セミアディティブ法が、他の方法と比較して微細な導体パターンを精度良く形成することができるため、最近ではセミアディティブ法が多用されるようになっている。
【0003】
セミアディティブ法は、基本的には、例えば特許文献1に示されているように、絶縁材料からなる基材上に、無電解めっきによって銅などの薄質な金属層(シード層)を形成し、その上に導体パターンを反転したパターンでめっきレジスト層を形成した後、電解めっきによってレジスト層非形成部分に銅などの導体層を形成し、その後にめっきレジスト層を剥離除去し、さらに電解めっきによる導体層が形成されていない部分のシード層をフラッシュエッチングによって除去するものである。
【0004】
このようなセミアディティブ法によって作製されたプリント配線板における導体パターン形成部分の断面構造を、図10(A)に模式的に示す。導体層12は、絶縁基材10の上面のシード層11に載った状態、すなわち絶縁基材10の上面から突出した状態で形成されている。
【0005】
ここで、セミアディティブ法を適用した場合、電解めっきにより導体層が形成されていない部分(隣り合う導体層12の間のスペース)のシード層を、前述のようにフラッシュエッチングによって除去する必要がある。ここでフラッシュエッチングでは、実際には、導体層の間のシード層が除去されるだけではなく、図10(B)に示しているように、導体層12も若干エッチングされてしまう。そのため、導体層12の幅、特に端子部における他の電子部品との接合のために有効な平坦部分の幅WAが狭くなってしまう。したがってセミアディティブ法を適用した場合でも、ある程度以上は高密度、高精度の導体パターンを形成することが困難である。またセミアディティブ法では、導体層のパターンが絶縁基材表面から突出しているため、多層配線板とするために困難を伴うなどの問題もある。
【0006】
そこで最近では、回路配線や端子部の導体パターンを構成する導体層をプリプレグなどからなる絶縁基材の表面に埋め込んで、導体パターンの側の表面を平滑にしたプリント配線板が実用化されるようになっている。このようなプリント配線板は、例えば特許文献2あるいは特許文献3などに示されており、その断面構造の一例を図11(A)に示す。図11(A)において、導体パターンを構成する導体層12は、絶縁基材10の表面層に埋め込まれて、導体層12の表面12Aは、絶縁基材10の上面10Aとほぼ同一面とされている。
【0007】
図11(A)に示すような基板の製造方法は種々考えられているが、基本的にはサブトラクティブ法やセミアディティブ法など、任意の手法によって支持体表面上に、所定のパターンでその表面から突出する導体層を形成しておき、それを反転させて、導体層の側をプリプレグなどの比較的軟質な絶縁基材の表面に押し付け(積層圧着する)ことによって、絶縁基材の表面層に導体層を押し込み、その後、支持体を任意の手法で除去するのが一般的である。このような工法について、以下この明細書では、平埋め法と称することとし、またこのようにして得られる基板を埋め込み基板と称することとする。
【0008】
ところで、一般にプリント配線板におけるその表面上の導体層(導体パターン)のうち、ある部分の導体層は、他の電子部品を、ワイヤボンディングやフリップチップボンディングなどにより接合するための端子部として使用されるのが通常である。このような端子部において、導体層の銅がそのまま露出していれば、その導体層は容易に酸化し得る。このように導体層の銅表面が酸化した端子部と電子部品とを接続すれば、両者の間の金属結合が不十分になることがあり、接続信頼性が劣るおそれがある。
そこで端子部については、銅からなる導体層の表面に、無電解めっきもしくは電解めっきにより金(Au)めっきを施すことが行なわれている。またその場合、金(Au)めっきだけでは、導体層中の銅(Cu)が金(Au)の中に拡散してしまって接合強度が低下する。その拡散防止のためには、Auめっきの下地としてニッケル(Ni)が最適であるところから、実際上は、銅からなる導体層上に、先ず無電解めっきもしくは電解めっきによりNiめっきを施してから、その上にAuめっきを施すのが通常である。また場合によっては、先ずNiめっきを施し、次いでその上にパラジウム(Pd)めっきを施し、そのPdめっき層上にAuめっきを施すこともある。このような、Ni/AuめっきやNi/Pd/Auめっきで代表される導体層保護のためのめっき層を、ここでは保護用金属の被覆層と称することとする。なお上記のNi/Auめっきや、Ni/Pd/Auめっきとしては、最近では無電解めっきを用いることが多くなっている。
【0009】
上述のような保護用金属の被覆層を導体層上に形成する場合、従来の方法では、次のような問題があった。
すなわち、図10(B)に示すようなセミアディティブ法によって導体層12を形成したプリント配線板について、その導体層12を覆うための保護用金属被覆層14として、例えばNi/Auめっきを施した場合、導体層12の側面にもめっき金属が析出するから、隣り合う導体層12の間のスペースが小さい場合には、図10(C)に示すように、保護用金属被覆層14が、隣り合う導体層間でブリッジ状に繋がってしまう現象(ブリッジ現象)が生じてしまうことがある。このブリッジ現象が生じれば、隣り合う導体層間で保護用金属被覆層14が連続してしまい、電気的にも導通してしまうため、プリント配線板としては不良品となってしまう。またこのブリッジ現象は、電解めっき、無電解めっきのいずれでも生じるが、無電解めっきの場合は、隣り合う導体層間のスペースにおける絶縁基材10表面へのめっき金属の異常析出も問題となる。すなわち、無電解めっきでは、原理的には銅などの金属のみならず絶縁材料にもめっき金属を析出させることができるから、銅からなる導体層上にだけめっき金属を析出させるためには、導体層の表面のみに触媒を担持させたり、めっき処理液に選択性を付与させたりする方策が採られている。しかしながらこのような方策を講じても、隣り合う導体層間のスペースにおける絶縁基材10表面に、わずかながらもめっき金属が析出してしまう現象、すなわち異常析出が生じてしまうことがある。そしてこのような異常析出が生じれば、前述のブリッジ現象が助長されて、隣り合う導体層間で保護用金属被覆層14が連続し、電気的導通が生じてしまうことがある。
そしてセミアディティブ法によって導体層12を形成したプリント配線板では、隣り合う導体層間のスペースが40μm程度以下となれば、ブリッジ現象が頻発するようになり、そのため従来のセミアディティブ法によるプリント配線板では、端子部の導体層上に保護用金属被覆層を形成する場合の端子部導体層間のスペースの狭小化は、40μm程度が限界とされていた。
【0010】
一方、図11(A)に示した、平埋め法によるプリント配線板(埋め込み基板)の場合は、導体層12が絶縁基材10上に突出していないため、保護用金属めっき時、例えばNi/Auめっき時において、導体層12の側面へのめっき金属の析出はなく、そのためセミアディティブ法によるプリント配線板の場合よりはブリッジ現象が生じにくい。しかしながら、めっき金属は、図11(B)に示すように、絶縁基材10表面に露出する導体層12の表面を覆うように丘陵状に隆起しながら析出するから、その隆起した保護用金属被覆層14が、絶縁基材10の表面に沿ってその水平方向にある程度延出することを避け得ない。また特に無電解めっきの場合には、隣り合う導体層間において絶縁基材10の表面に異常析出が生じやすく、そのためブリッジ現象を助長しやすい。
したがって、ブリッジ現象が発生し始めるスペース幅は、セミアディティブ法で発生し始めるスペース幅より小さいといえども、導体間のスペースを、より小さくしたい場合には、このような現象が問題となる。
【0011】
特に、導体層12のうちでも、端子部となる部分は、配線回路部となる部分と比較して、その幅(プリント配線板の板面側から見たときのパターン幅)が広くなるように形成されるのが通常であり、その場合、隣り合う端子部導体層間のスペースは、隣り合う配線回路導体層間のスペースよりも小さくなるのが一般的である。したがって、前述のような導体間のスペースを、より狭小化したい場合の問題は、導体層12のうちでも、端子部となる部分において顕著となる。また一般に酸化防止などのために保護用金属被覆層を導体層上に形成しておくことが望まれるのは、端子部であり、したがってこの点からも、前述の問題は、端子部の導体において発生しやすいのである。
【0012】
上述のような問題について詳細に検討した結果、埋め込み基板を適用した場合、隣り合う導体層間のスペースが30μm程度以下であってしかも保護用金属のめっきによって形成される保護金属被覆層14の表面14Aと絶縁基材表面10Aとの段差dsが2μmを越えれば、異常析出が発生しやすくなり、導体層間で保護用金属が部分的に連続してしまって、隣り合う導体層間で電気的導通が生じやすくなることが判明した。そのため、埋め込み基板を用いた場合の最小スペース幅は、30μm程度が限界であった。
【0013】
以上のように、平埋め法によって導体パターンを形成した埋め込み基板を用いた場合は、従来の一般的なセミアディティブ法による場合と比較すれば、導体パターンの隣り合う導体間のスペースを狭くすることが可能ではあったが、より高精細な回路パターンを形成することが望まれる場合には、未だ不充分と言わざるを得なかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−335751号公報
【特許文献2】特開平5−299816号公報
【特許文献3】特開2010−80568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は以上の事情を背景としてなされたもので、配線回路および端子部となる導体パターンを構成する導体層のうち、端子部となる端子部導体層の表面に、Ni/Auめっきなどの保護用金属被覆層を形成する場合において、隣り合う端子部導体層の間のスペースを30μm以下、さらには25μm以下まで狭小化しても、導体層の間での導体保護用金属のブリッジ現象、異常析出現象によって、隣り合う導体層間が導通してしまうような事態が発生することを未然に防止し、これによって従来よりも一層高精細化することを可能としたプリント配線板を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、基本的には、平埋め法によって、絶縁基材表面に所定のパターンで導体層を埋め込んだ構成とすることを前提とし、その場合に端子部となる導体層上に被覆される保護用金属の被覆層が絶縁基材表面から突出しないようにし、これによって、隣り合う端子部の導体層間のスペースでの保護用金属被覆層のブリッジ現象、異常析出により導体間が電気的に導通してしまうことがないようにした。
【0017】
したがって本発明の基本的な態様(第1の態様)によるプリント配線板は、絶縁基材の一面に、配線回路および端子部を構成するパターンで導体層が埋め込まれており、かつその導体層のうちの端子部の導体層の表面に、導体層の金属とは異なる保護用金属からなる1層以上の被覆層が形成されてなるプリント配線板において、前記端子部の導体層は、その表面が絶縁基材の前記一面から窪んだ状態で形成されており、かつその窪んだ導体層の表面が前記1層以上の被覆層によって覆われており、しかもその1層以上の被覆層は、その表面が、前記絶縁基材の前記一面と実質的に同一面以下に位置するように形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
このような本発明の基本的な態様によれば、絶縁基材に埋め込まれた導体層のうち、端子部を構成する導体層は、絶縁基材の表面から窪んだ状態で形成されており、その端子部の導体層の表面に被覆された保護用金属の被覆層は、その表面位置が絶縁基材の表面と実質的に同一面(実質的に同一レベル)以下とされているため、隣り合う導体層の間での被覆金属(保護用金属)のブリッジ現象の発生が回避される。そのため、隣り合う端子部の導体層間のスペース(最小間隔)を従来よりも狭小化しても、隣り合う導体層の間が保護用金属によって連続して、その間が電気的に導通してしまうことが防止できる。その結果、端子部の導体パターンの最小間隔を従来より小さくして、より高精細なパターンを有するプリント配線板とすることができる。なおここで、保護用金属の被覆層の表面位置が絶縁基材の表面と実質的に同一面(実質的に同一レベル)以下とは、保護用金属被覆層が絶縁基材の表面位置からわずかに突出している場合も許容することを意味しており、その突出高さがわずかであれば、実質的に同一のレベルとみなすことができ、その場合でも、上述のような保護用金属のブリッジ現象の発生を回避することができる。
【0019】
また本発明の第2の態様によるプリント配線板は、前記第1の態様によるプリント配線板において、前記保護用金属の被覆層の表面が、前記絶縁基材の前記一面より2μm高い位置以下に位置するように形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
前述の第1の態様で記載したように、端子部を構成する導体層の表面に被覆された保護用金属の被覆層は、その表面が絶縁基材の表面と実質的に同一面(実質的に同一レベル)以下とされていれば良く、保護用金属の被覆層が絶縁基材の表面位置からわずかに突出している場合も許容されるが、その許容範囲は、第2の態様で、前記絶縁基材の前記一面より2μm高い位置までとしている。本発明者等の詳細な実験、検討によれば、保護用金属の被覆層が絶縁基材の表面位置からわずかに突出していても、その範囲が2μm以下であれば、保護用金属被覆層形成時において、隣り合う導体層の間で絶縁基材表面に保護用金属の異常析出がほとんど生じないことが確認されている。すなわち、保護用金属被覆層表面と絶縁基材表面との段差が2μm以下であれば、保護用金属被覆層表面と絶縁基材表面とが実質的に平坦となっているとみなすことができるのである。
【0021】
また本発明の第3の態様によるプリント配線板は、前記第1もしくは第2の態様によるプリント配線板において、前記導体層のうちの配線回路の導体層は、その表面が絶縁基材の前記一面と実質的に面一に形成されていて、その配線回路の導体層の表面に前記保護用金属被覆層が形成されていないことを特徴とするものである。
【0022】
導体パターンのうちでも、他の電子部品との接合のために使用される端子部は、Ni/AuめっきあるいはNi/Pd/Auめっきで代表される保護用金属の被覆層を形成しておく必要性が高い部分である。一方、保護用金属の被覆層は、導体層(通常は銅)よりも電気抵抗が格段に大きいため、端子部以外の配線回路を構成する導体層についても絶縁基材の表面から窪ませて保護用金属被覆層を形成すれば、配線抵抗が高くなってしまう。この場合、近年の駆動電圧が低い半導体用のプリント配線板では、配線抵抗の増大により正常に機能しなくなってしまうおそれがある。しかるに第3の態様のプリント配線板では、配線回路の導体層は、その表面が絶縁基材の前記一面と実質的に面一に形成されていて、保護用金属の被覆層が形成されていないため、配線回路の電気抵抗の低下は回避され、低電圧駆動でも正常に機能させることができる。
また第3の態様のプリント配線板では、配線回路および端子部を構成するパターンで形成された導体層のうち、端子部を構成する導体層の表面のみに保護用金属の被覆層が形成されるため、導体層を構成する銅などに比較して高価なAuやNiなどの使用量を抑えて、コスト上昇を防止することができる。
なお、配線回路を構成する導体層の表面に保護用金属の被覆層を形成した場合には、その配線回路を構成する導体層に関しても、隣り合う導体層の間での被覆金属(保護用金属)のブリッジ現象の発生が懸念されるが、第3の態様のプリント配線板では、配線回路を構成する導体層の表面には保護用金属の被覆層を形成していないから、このような懸念は生じない。
【0023】
さらに本発明の第4の態様によるプリント配線板は、前記第1〜第3のいずれかの態様によるプリント配線板において、前記被覆層で覆われた端子部の導体層における、隣り合う導体層間の最小間隔が25μm以下であることを特徴とするものである。
【0024】
従来は、平埋め法でも、前述のような保護用金属の被覆時におけるブリッジ現象、異常析出の発生により、隣り合う端子部導体層間の最小間隔(スペース)を30μm程度以下まで小さくすることは困難であったが、本発明によれば、第4の態様として記載したように、25μm以下の狭小なスペースでも、隣り合う端子部導体層の間での保護用金属による電気的導通の発生を防止し、より高精細なプリント配線板を得ることができる。
【0025】
そしてまた本発明の第5の態様によるプリント配線基板は、前記第1〜第4の態様のうちのいずれかの態様によるプリント配線板において、前記被覆層で覆われた端子部の導体層は、被覆層で覆われた面と前記絶縁基材の前記一面との間の距離が、1〜7μmの範囲内となるように形成されていることを特徴とするものである。
【0026】
ここで、端子部の導体層における被覆層で覆われた面と前記絶縁基材の前記一面との間の距離は、導体層の窪み深さと言い換えることができるが、その距離(導体層窪み深さ)が1μm未満では、導体層上の保護用金属被覆層を絶縁基材表面から突出しないように形成するためには、被覆層の厚みが薄くなりすぎ、そのため保護用金属としての保護機能を充分に発揮できなくなる。一方、前記距離(導体層窪み深さ)が7μmを越える厚さに形成するためには、無電解めっきなどによる保護用金属被覆処理時間が長くなって、生産性が悪くなる。そこで、第5の態様として記載したように、前記距離は1〜7μmの範囲内とすることが望ましい。なお、より好ましくは、前記距離を2〜5μmの範囲内とする。
【0027】
さらに本発明の第6の態様によるプリント配線板は、前記第1〜第5の態様のうちのいずれかの態様によるプリント配線板において、前記被覆層で覆われた端子部の導体層は、被覆層で覆われた面と前記絶縁基材の前記一面との間の距離が、導体層の幅方向の中央部で小さく、幅方向両端部で大きくなるように形成されていることを特徴とするものである。
【0028】
このように端子部の導体層における被覆層で覆われた面と前記絶縁基材の前記一面との間の距離が、幅方向中央部で小さく、幅方向両端部で大きくなるように形成されていることは、端子部導体層の幅方向両端近くの表面に傾斜面が形成されていることを意味する。そしてこのような傾斜面によって、端子部導体層と被覆金属層との間の接触面積を大きく確保することができる。その結果、被覆金属層の端子部導体層に対する被覆金属層の密着強度を高めることができ、被覆金属層を端子部導体層から剥離しにくくすることができる。
【0029】
また本発明の第7の態様によるプリント配線板は、前記第1〜第6の態様のうちのいずれかの態様によるプリント配線板において、前記導体層が、銅もしくは銅合金によって形成されていることを特徴とするものである。
【0030】
また本発明の第8の態様によるプリント配線板は、前記第1〜第7の態様のうちのいずれかの態様によるプリント配線板において、前記被覆層の保護用金属の材料として、Ni、Au、Pd、Sn、Ag、はんだ合金のうちから選ばれた1種以上のものが用いられていることを特徴とするものである。
【0031】
さらに第9〜第14の態様では、プリント配線板の製造方法を規定している。
すなわち本発明の第8の態様によるプリント配線板の製造方法は、第1〜第8の態様のうちのいずれかの態様のプリント配線板を製造する方法であって:
絶縁基材の一面に、配線回路および端子部を構成するパターンで導体層を埋め込む埋め込み基板形成工程と、
前記導体層のうちの端子部の導体層の表面をエッチングして、その表面を絶縁基材の前記一面から凹状に窪ませるエッチング工程と、
前記エッチングされた端子部の導体層の表面を、導体層の金属とは異なる保護用金属によって、1層以上に被覆して保護用被覆層を形成する被覆工程と、
を有し、かつ前記被覆工程では、保護用被覆層を、その表面が絶縁基材の前記一面と実質的に同一面以下に位置するように形成することを特徴とするものである。
【0032】
このような第9の態様の製造方法においては、埋め込み基板形成工程によって絶縁基材表面に埋め込まれた導体層のうち、端子部を構成する導体層は、エッチング工程によってその表面が絶縁基材の一面(表面)から窪んだ状態となる。そしてその窪んだ端子部導体層の表面を、被覆工程においてNi/AuあるいはNi/Pd/Auなどの保護用金属により被覆するにあたっては、被覆層の表面が絶縁基材の表面と実質的に同一面(同一レベル)となるようにする。ここで、保護用金属の被覆時には、端子部導体層は絶縁基材表面から窪んだ状態となっているから、保護用金属被覆のための無電解めっきや電解めっきなどにおいて、保護用金属の析出が導体層の側方(水平方向)に進行することがなく、そのためブリッジ現象も生じない。そのため、隣り合う端子部導体間の最小間隔(スペース)を従来よりも狭小化しても、隣り合う端子部導体層が連続して、その間が電気的に導通してしまうことが防止できる。その結果、端子部の導体パターンの間隔を従来より小さくして、より高精細なパターンを有するプリント配線板とすることができる。
【0033】
また本発明の第10の態様のプリント配線板の製造方法は、第9の態様のプリント配線板の製造方法において、前記エッチング工程で、端子部の導体層の表面をエッチングし、その後の被覆工程で、そのエッチングされた端子部の導体層の表面に保護用金属の被覆層を形成することを特徴とするものである。
【0034】
また本発明の第11の態様のプリント配線板の製造方法は、第10の態様のプリント配線板の製造方法において、前記被覆工程で、保護用金属の被覆層を、その表面が絶縁基材の前記一面から2μm高い位置以下となるように形成することを特徴とするものである。
【0035】
既に第2の態様に関して説明したように、保護用金属の被覆層が絶縁基材の表面位置からわずかに突出している場合も許容され、その突出高さが2μm以下であれば、保護用金属被覆層形成時において、隣り合う端子部の導体層の間で絶縁基材表面に保護用金属の異常析出がほとんど生じないが確認されている。したがって、プリント配線板の製造時においても、保護用金属被覆層表面と絶縁基材表面との段差が2μm以下となるように保護用金属被覆層を形成すれば、隣り合う端子部導体層の間での保護用金属異常析出の発生を回避することができる。
【0036】
また本発明の第12の態様のプリント配線板の製造方法は、第9〜第11のいずれかの態様のプリント配線板の製造方法において、前記エッチング工程で、端子部の導体層を、その表面の最上部が、絶縁基材の前記一面から1〜7μmだけ窪むまでエッチングすることを特徴とするものである。
【0037】
さらに本発明の第13の態様のプリント配線板の製造方法は、第9〜第12のいずれかの態様のプリント配線板の製造方法において、前記被覆工程が、無電解めっきにより保護用金属を被覆する工程であることを特徴とするものである。
【0038】
さらに本発明の第14の態様のプリント配線板の製造方法は、第9〜第12のいずれかの態様のプリント配線板の製造方法において、前記被覆工程が、電解めっきにより保護用金属を被覆する工程であることを特徴とするものである。
【0039】
また本発明の第15の態様のプリント配線板の製造方法は、第9〜第14のいずれかの態様のプリント配線板の製造方法において、前記埋め込み基板形成工程が、支持体の表面上に導体層をパターンめっきにより形成した後、絶縁基材の一面に前記導体層を押し込み、その後、支持体を除去する工程であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0040】
本発明のプリント配線基板においては、パターン形成された導体層のうちの端子部となる導体層が、絶縁基材の表面から窪んだ状態で形成されており、その端子部導体層の表面に被覆された保護用金属の被覆層が絶縁基材の表面と実質的に同一面(同一レベル)以下とされているため、隣り合う端子部導体層の間において被覆金属(保護用金属)が異常析出やブリッジ現象により連続してしまうことが容易に回避される。そのため、隣り合う端子部導体間の最小間隔(スペース)を従来よりも狭小化しても、隣り合う端子部導体が電気的に導通してしまうことが防止でき、その結果、導体パターン、特に端子部の導体パターンの間隔を従来より小さくして、より高精細なパターンを有するプリント配線板とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態のプリント配線基板の原理的な平面構造を、略解的に示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態のプリント配線基板の原理的な断面構造を、図1におけるII−II線で切断して示す縦断面である。
【図3】本発明の第1の実施形態のプリント配線基板の原理的な断面構造を、図1におけるIII−III線で切断して示す縦断面である。
【図4】本発明の第2の実施形態のプリント配線基板の原理的な断面構造を、図3と同様な位置で略解的に示す縦断面図である。
【図5】本発明のプリント配線基板の製造方法の一実施形態を段階的にかつ原理的に示す略解図である。
【図6】本発明のプリント配線基板の製造方法の準備工程として、埋め込み基板を製造する方法の一例を段階的かつ原理的に示す略解的図である。
【図7】本発明のプリント配線基板の製造方法の一実施形態のうちの初期の工程を、より具体的かつ段階的に示す略解図である。
【図8】図7に続く工程を、具体的かつ段階的に示す略解図である。
【図9】図8に続く工程を、具体的かつ段階的に示す略解図である。
【図10】従来のプリント配線板の一例の導体層付近の状況を示す略解的な断面図である。
【図11】従来のプリント配線板の他の例の導体層付近の状況を示す略解的な断面図である。
【図12】実施例1〜実施例3および比較例1、比較例2によるプリント配線板の導体層付近の断面の光学顕微鏡で観察した写真である。
【図13】実施例1によるプリント配線板についての平面および断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真である。
【図14】実施例2によるプリント配線板についての平面および断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真である
【図15】実施例3によるプリント配線板についての平面および断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真である
【図16】比較例1によるプリント配線板についての平面および断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真である
【図17】比較例2によるプリント配線板についての平面および断面を走査型電子顕微鏡で観察した写真である
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図3には、本発明の第1の実施形態のプリント配線板の要部を原理的に示し、図4には、本発明の第2の実施形態のプリント配線板の要部を原理的に示す。
図1〜図3、および図4において、絶縁基材10はプリプレグ、あるいは液晶ポリマー(LCP)で代表される高耐熱性熱可塑性樹脂などの絶縁性材料からなる薄板状もしくはシート状のものであり、その絶縁基材10の一方の面(以下単に表面と記す)10Aの側には、プリント配線板としての配線回路および端子部を構成する金属銅(Cu)もしくはCu合金などの良導電材料からなる複数の導体層12が、絶縁基材10の板面と平行な方向に伸びる所定のパターンで埋め込まれている。
ここで、導体層12のうち、符号12aの領域は、導体パターンのうちの端子部に相当する部分であり、以下これを端子部導体層12aと称する。また導体層12のうち、符号12bの領域は、導体パターンのうちの配線回路に相当する部分であり、以下これを配線回路導体層12bと称する。
【0043】
端子部導体層12aは、図1〜図3に示す例では、幅Wの幅広な領域12a0と、その領域12a0から配線回路導体層12bに向かって連続する幅W´の相対的に幅狭の領域12a1とによって構成されている。そして配線回路導体層12bは、前記端子部導体層12aにおける幅狭の領域12a1に、同じ幅W´をもって連続している。そして隣り合う導体層12は、所定の間隔(スペース)を置いて互いに平行となっている。ここで隣り合う端子部導体層12aにおける幅広な領域12a0の相互間の間隔(スペース)を、符号Sで示す。この間隔Sは、隣り合う導体層12の間における最も小さい間隔と言うことができる。
なお場合によっては、端子部導体層12aを、その全長にわたって同じ幅(W)とし、かつその端子部導体層12aに連続する配線回路導体層12bも同じ幅(W)とすることもある。
【0044】
端子部導体層12aおよび配線回路導体層12bを含め、導体層12の厚みは特に限定しないが、通常は10〜20μm程度とされる。導体層12の厚みが10μm未満では、導体層による配線や端子部の電気抵抗が過大となるおそれがあり、一方20μを越える厚さとすることは、性能的に無駄で、コストアップを招くばかりでなく、埋め込み基板製造に困難を伴うおそれがある。
【0045】
前記端子部導体層12aは、絶縁基材10の表面10Aから凹状に窪んだ状態で形成されている。すなわち端子部導体層12aは、その表面12Aが、絶縁基材10の表面10Aの位置から所定の深さDの位置に位置している。その深さDは、1〜7μmの範囲内とすることが望ましく、より好ましくは2〜5μmの範囲内とする。
【0046】
端子部導体層12aの表面12A上には、保護用金属の被覆層14として、例えばNiめっき層(第1層)14−1とAuめっき層(第2層)14−2との2層構造とされている。この被覆層14の厚みTは、実質的に導体層表面の窪み深さDと同等とされている。したがって被覆層14は、その表面14Aの位置が、絶縁基材10の表面10Aと実質的に同一の面もしくはそれ以下の位置となっていて、絶縁基材表面10Aから実質的に突出しない状態となっている。
【0047】
ここで、図3では、端子部導体層12aの表面12Aが平坦な場合について示しているが、端子部導体層12aに対するエッチングをある程度以上進行させた場合には、図4に示すように、幅方向中央部121よりも幅方向両端部122で窪み深さが大きくなることが分かった。すなわち、幅方向中央部121の窪み深さD1よりも幅方向両端部122の窪み深さD2が大きくなるような断面凸形状に形成されることが分かった。このように端子部導体層12aの幅方向断面形状が凸形状となった場合でも、後に製造方法に関して説明するように、導体層表面に被覆される保護用金属の被覆層14は、その上面14Aを平坦面(絶縁基材10の表面10Aと実質的に面一の平坦面、もしくはそれよりも下方の位置での平坦面)とすることができる。特に無電解めっきを適用した場合は、より平坦とすることができる。
【0048】
なお以上の説明においては、保護用金属の被覆層14の上面14Aが絶縁基材表面10Aから実質的に突出しない、あるいは保護用金属の被覆層14の上面14Aが絶縁基材10の表面10Aと実質的に同一の面以下となると記載したが、ここで“実質的に”とは、保護用金属の被覆層14の上面14Aが絶縁基材表面10Aと完全に同一な面もしくはその下方に位置している場合のみならず、保護用金属の被覆層14の上面14Aが絶縁基材表面10Aからわずかに突出する場合を許容していることを意味する。そのわずかな突出許容寸法は、通常は+2μmまでは許容される。すなわち、絶縁基材表面10Aからの保護用金属被覆層14の上面14Aの最大突出寸法が2μmを越えれば、図11(B)に示したと同様に、保護用金属が隣り合う導体層間で部分的に連続してしまうおそれがあるが、その突出寸法が2μm以下であれば、隣り合う端子部導体層12a間で、部分的にも連続してしまうおそれが少ない。そこで、保護用金属被覆層14の上面14Aの位置は、絶縁基材表面10Aの位置から上方へ2μmまでは許容され、その許容範囲を含めて、本明細書では、保護用金属被覆層14の上面14Aの位置について、絶縁基材表面10Aの位置と実質的に同一の面以下と表現しているのである。
【0049】
なおまた、保護用金属被覆層14自体の厚みは特に限定しないが、通常は端子部導体層12aの表面12Aの絶縁基材表面10Aからの窪み深さ(好ましくは1〜7μm)および保護用金属被覆層14の絶縁基材表面10Aからの突出許容高さ(好ましくは2μm以下)との関係からは、1〜9μmの範囲内とすることが望ましい。
さらに、保護用金属被覆層14の上面14Aが絶縁基材表面10Aから窪んでいる場合には、隣り合う端子部導体層12a間での保護用金属の連続は原理的に生じ得ず、従ってその窪み寸法については特に限定しない。但し、保護用金属被覆層14の上面14Aの絶縁基材表面10Aからの窪み深さが10μmを越えれば、端子部導体層12aの厚みを10μm程度以上に確保することが困難となって、端子部の抵抗が過大となってしまうおそれがあるから、通常は10μm以下とすることが望ましく、より好ましくは7μm以下とする。
【0050】
また上記の例では、保護用金属の被覆層14を、Niめっき層(第1層)14−1とAuめっき層(第2層)14−2との2層構造として説明したが、Niめっき層(第1層)、Pdめっき層(第2層)、およびAuめっき層(第3層)の3層構造とすることもでき、さらに場合によっては単層構造としても良い。また保護用金属の種類も特に限定されず、端子部導体層12aを構成する金属、および端子部として接合される相手側の金属の種類に応じて適切な1種又は2種以上の金属を保護用金属として選択すればよい。具体的には、例えばNi、Au、Pd、Sn、Ag、はんだ合金のうちから選ばれた1種以上のものを、保護用金属として用いることができる。
【0051】
なお、上述のように導体層12のうちの端子部導体層12aは、絶縁基材表面10Aから窪ませて、その上面に保護用金属被覆層14を形成しているが、導体層12のうちの配線回路導体層12bは、絶縁基材表面10Aから窪ませず、その上面を絶縁基材表面10Aと実質的に面一のままとしている。そしてその配線回路導体層12bの表面には、保護用金属被覆層14を形成していない。
【0052】
次に図1〜図3、または図4に示される第1、第2実施形態のプリント配線板を製造する方法について、図5の(A)〜(E)を参照して原理的に説明する。なお図5の(A)〜(E)においては、導体層12のうち、端子部導体層12aの幅広な領域12a0が現れている断面について示し、配線回路導体層については省略している。
【0053】
図5(A)は、埋め込み基板形成工程によって、プリプレグ、あるいは液晶ポリマー(LCP)で代表される高耐熱性熱可塑性樹脂などの絶縁性材料からなる絶縁基材10に、既に複数の導体層12が埋め込まれている状態の基板(埋め込み基板)18を示す。なおこの状態では、導体層12の表面12Aは、絶縁基材10の表面10Aのレベルと同一のレベルとなっている。すなわち導体層12によるパターン形成面は平坦な面となっている。
このような状態のもの(埋め込み基板18)を得るまでの埋め込み基板形成工程の具体的なプロセスは従来の平埋め法と同様であれば良く、その具体例については後に改めて説明する。
【0054】
本発明の実施形態では、図5(A)に示す段階の埋め込み基板18に対し、エッチング工程を施す。すなわち、導体層12を構成しているCuもしくはCu合金を溶解させるエッチング液、例えば過硫酸ナトリウムと硫酸とからなるエッチング液を用いて、導体層12のうちの端子部導体層12aを、その表面側からエッチングする。そのエッチングの初期段階の状況を図5(B)に示す。この段階では、端子部導体層12aはほぼ均一な深さで窪んでいる。さらにエッチングを進行させれば、端子部導体層12aはその幅方向両端部付近で大きくエッチングされ、図5(C)に示すような、中央部121よりも両端部122付近の窪み深さが大きい状態となる。すなわち、幅方向の断面が凸状をなす状態となる。
なお上記のエッチング工程では、導体層12のうち、配線回路導体層は、適宜エッチングマスクなどでカバーして、エッチングされることを防止する。したがってエッチング工程終了後の段階では、導体層12は、端子部導体層12aのみが窪んだ状態となっており、図示しない配線回路導体層は、その表面が絶縁基材表面10Aと実質的に面一のままとなっている。
【0055】
次いで、保護用金属被覆工程として、図5の(D)〜(E)に示すように、端子部導体層12aの表面12A上を、保護用金属で被覆し、被覆層14を形成する。本実施形態では、先ず無電解めっきもしくは電解めっきにより端子部導体層12aの表面12Aに第1層14−1としてNiめっきを施し、続いて無電解めっきもしくは電解めっきにより第2層14−2としてAuめっきを施して、2層構造の被覆層14としている。ここで、被覆層14はその表面14Aが、絶縁基材10の表面10Aとほぼ面一となるように、めっき条件(特にめっき速度)に応じてめっき処理時間を適切に調整する。なお本実施形態においては、保護用金属めっき前の段階(図5(C))では、端子部導体層12aが、幅方向の断面が凸状をなす状態となっているが、被覆層第1層14−1のNiめっきを施すに当たっては、無電解めっき、電解めっきのいずれによる場合も、Niをある程度以上の厚みでめっきすることにより、そのNiめっき層(第1層)14−1の表面14−1Aをほぼ平坦な面とすることができる(図5(D)参照)。したがって、その後に第2層14−2としてAuめっきを施すにあたっては、均一な厚みでめっきすることにより、容易にその表面14−2A(被覆層表面14Aに相当)を平坦な面とすることができる。その結果、図4に示した第2の実施形態のプリント配線板と同様なプリント配線板を得ることができる。
【0056】
ここで、上述の保護用金属被覆工程においては、無電解めっき、電解めっきのいずれの場合も、めっき金属(Ni、Au)は、絶縁基材表面10Aから窪んだ凹部(端子部導体層12aの表面12A上でかつ絶縁基材表面10Aの面より低い空間)の内側に析出されるから、隣り合う端子部導体層間で保護用金属のブリッジ現象が生じてしまうことはない。また無電解めっきを適用した場合において、保護金属被覆層14の表面14Aが絶縁基材表面10Aからわずかに突出したとしても、その保護金属被覆層14の表面14Aと絶縁基材表面10Aとの段差が2μm以下であれば、異常析出の発生がほとんどなく、そのため電気的に導通してしまうことを防止できる。そして、隣り合う端子部導体層12aの間のスペース(例えば図1、図3、図4に示す端子部導体層12aの幅広な領域12a0についての隣り合う導体層間の間隔S;すなわち導体層間の最小間隔)が25μm以下と、極めて小さい場合でも、そのスペースで保護用金属が連続して電気的導通が生じてしまうことを回避できるため、端子部導体層12a層間の最小間隔を25μm以下として、高精細な導体パターンを有するプリント配線板を作成することができる。なお本発明者らが鋭意検討した結果、上記の最小間隔は十数μmまで狭小化しても特に問題はないことを確認している。
【0057】
なお、図5の(B)に示す段階、すなわちエッチング工程の比較的初期の、端子部導体層12aが未だ断面凸状となっていない段階で、次の被覆工程としてNi/Auめっきを施すこともあり、その場合には図3に示したような断面形状を有する第1の実施形態のプリント配線板と同様なプリント配線板を得ることができる。
【0058】
次に、図5(A)に示されるような埋め込み基板を製造する工程、すなわち埋め込み基板形成工程の原理的な一例について、図6の(A)〜(H)を参照して説明する。
先ず図6の(A)に示すような支持体20を用意する。この支持体20は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、銅箔20Aの片面上にニッケル膜20Bをめっきなどにより形成したものが用いられている。
【0059】
次いで、図6の(B)に示すように、支持体20におけるニッケル膜20Bの側の面に、めっきレジスト層22を形成する。このめっきレジスト層22は、レジストパターン形成のためにフォトリソグラフィ技術を適用する場合は、感光性レジストフィルムを用いればよい。続いて公知のフォトリソグラフィ技術などにより、図6の(C)に示すように、めっきレジスト層22にパターンを形成する。その後、図6の(D)に示すように、例えば電解めっきにより、支持体20上のめっきレジスト非形成部分に、Cuなどにより導体層12を形成する。その後、めっきレジスト層22を、剥離あるいは溶解などによって除去し、図6の(E)の状態とする。この状態では、支持体20の表面に導体層12が所定のパターンで突出形成されている。
【0060】
その後、図6の(F)に示すように、プリプレグなどの比較的軟質な絶縁基材10を用意して、その絶縁基材10の表面10Aを、支持体20上の導体層12に対向させ、必要に応じて加熱しながら加圧して、積層圧着させる。これによって、図6の(G)に示すように、導体層12が絶縁基材10に押し込まれる。その後、支持体20をエッチングなどの適宜の手段によって除去すれば、図6の(H)に示すような埋め込み基板18が得られる。
【0061】
さらに本発明のプリント配線板の製造方法を、より具体化した実施形態を、図7〜図9に示す。なお図7の(A)〜(F)から図8の(A)〜(D)、さらに図9の(A)〜(C)までは、埋め込み基板18を作成するための埋め込み基板形成工程に相当し、図9の(D)〜(G)は、その後の工程を示している。また図7〜図9の各図においても、図5、図6と同様に、導体層12のうち、端子部導体層12aの幅広な領域12a0が現れている断面について示し、配線回路導体層については省略している。
【0062】
本実施形態においては、先ず図7の(A)に示すように、第1の支持体としての片面銅張積層板30と、第2の支持体としての比較的軟質な絶縁材、例えばプリプレグ32と、小サイズの銅箔34と、大サイズの銅箔36とを用意する。そしてこれらを上記の順序で積層して加圧し、図7の(B)に示すような積層体38を得る。この積層加圧によって、小サイズの銅箔34は、第2支持体32の表面層に埋め込まれた状態となる。なお小サイズ銅箔34と大サイズ銅箔36との間は接着されていないが、小サイズ銅箔34の端部よりも外側の領域では大サイズ銅箔36がプリプレグ32に直接接して、その間で接合力が作用している。
【0063】
次いで図7の(C)に示すように、大サイズの銅箔36の表面に、無電解めっきもしくは電解めっきなどによって、Ni層40を形成する。その後、図7の(D)に示すように、Ni層40の表面に、めっきレジスト42として、例えば感光性レジストフィルムを積層する。そしてフォトリソグラフィなどの公知の手法によって、図7の(E)に示すように、めっきレジスト42にパターンを形成する。
【0064】
その後、導体金属としてのCuの電解めっきを行なって、めっきレジスト42の非形成部分に導体層12を形成し、続いてめっきレジスト42を剥離もしくは溶解によって除去し、図7の(F)に示すように、積層体38におけるNi層40上に導体層12のパターンを形成する。
【0065】
次いで、図8の(A)に示すように、プリプレグや液晶ポリマーなどの絶縁基材10と、銅箔44とを、積層体38のNi層40上における導体層12の側に配置し、図8の(B)に示すように、積層、加圧する。これによって導体層12は、絶縁基材10に埋め込まれた状態となる。
【0066】
その後、図8の(C)に示すように、小サイズ銅箔34の端部よりも内側の部分で、パターン幅方向に平行な垂直方向に切断し、両端側の部分を中央部側の部分から切り離す。その切断位置を2点鎖線46で示す。ここで、小サイズ銅箔34と大サイズ銅箔36との間は特に接合されていないため、上述のように切り離した後の中央部側の部分は、小サイズ銅箔34と大サイズ銅箔36との間で容易に剥離することが可能な状態となる。そこで、図8の(D)に示すように、小サイズ銅箔34と大サイズ銅箔36との間を剥離させる。このようにして剥離した上側の部分を図9の(A)に示す。
【0067】
この後、図9の(A)〜(B)に示すように、エッチング液として、Cuは溶解するがNiは溶解しにくいエッチング選択性を有する第1の選択エッチング液、例えばメルテックス製エープロセスを用いて、大サイズ銅箔36をエッチング除去する。これによって、図9の(B)に示すように、Ni層40が露呈した状態となる。なお、この第1の選択エッチングによって、大サイズ銅箔36とは反対側の銅箔44も、その全体がエッチング除去されるが、実際のプリント配線板の製造では、この銅箔44についても公知のフォトリソグラフィ技術を適用してパターン形成することが可能である。
【0068】
上述のようにして大サイズ銅箔36が除去されてNi層40が露呈した後には、図9の(B)〜(C)に示すように、Niは溶解するがCuは溶解しにくいエッチング選択性を有する第2の選択エッチング液、例えばメルテックス製メルストリップN−950を用いて、Ni層40をエッチング除去する。これによって、図9の(C)に示すように、絶縁基材10に所定のパターンで埋め込まれた導体層12の表面が露呈した状態となる。すなわち、図6の(H)で示したものと同様な埋め込み基板(但し図面上では上下が反転している)18が得られる。
【0069】
その後、必要に応じて、図9の(D)に示すように導体層12に対して反対側の面から、機械加工やレーザ加工によって、絶縁基材10に開口部46を、導体層12に届くように形成し、さらに図9の(E)に示すように、必要に応じてソルダレジスト層48を所定のパターンで形成する。
【0070】
その後の工程は、図5の(A)〜(E)を参照して説明したプロセスと実質的に同様である。すなわち、導体層12のうちの端子部導体層12aを、絶縁基材10の表面から所定の深さDまでエッチングして、図9の(F)に示す状態とする。その後、図9の(G)に示すように、端子部導体層12aの表面に、保護用金属被覆層14として、Niめっき層(第1層)14−1およびAuめっき層(第2層)14−2を、無電解めっきもしくは電解めっきにより形成する。このとき、保護用金属被覆層14の表面が絶縁基材10の表面と実質的に同一の面以下となるようにめっき厚を調整することは、既に述べたとおりである。
【0071】
以下に本発明の実施例を、比較例とともに説明する。なお以下の実施例は、本発明の作用効果を明確化するためのものであって、実施例に記載された条件が本発明の技術的範囲を限定しないことはもちろんである。
【実施例】
【0072】
実施例1:
図5の(A)に示すように、プリプレグからなる絶縁基材10に所定のパターンでCuからなる導体層12が埋め込み形成された埋め込み基板18を準備した。ここで、導体層12の幅(パターンの幅)は20μm、隣り合う端子部導体層間の間隔、とりわけ端子部導体層12aにおける幅広な領域12a0の間隔(パターン間の最小間隔)Sは、14μmとした。このような埋め込み基板18の導体層12のうち、端子部導体層12aの表面を、過硫酸ナトリウムと硫酸からなるエッチング液によって、1μmの深さまでエッチングし、絶縁基材10の表面から端子部導体層12aの表面が窪んでいる状態とした(図5(B))。次いで、上記の端子部導体層12aについて、脱脂処理を行ってから、エッチング量0.3μmのソフトエッチング処理、脱スマット処理、プリディップ処理、さらに無電解めっきのためのPd触媒の付与処理、ポストディップ処理をその順に行った後、約2μmの無電解Niめっき、0.3μmの無電解Pdめっき、0.1μmの置換無電解Auめっきを行ない、端子部導体層12a上においてAuめっき層表面が絶縁基材表面から1.0μm突出しているプリント配線板を得た。
実施例1により得られたプリント配線板の端子部導体層付近の断面の状況を光学顕微鏡によって観察した結果を図12の(A)に示し、またそのプリント配線板の平面および断面について走査型電子顕微鏡により観察した結果を図13に示す。なお、図12の(A)〜(E)、及び図13〜図17の(B)において、符号AはCuからなる導体層を示し、符号Bは、Ni/Auめっき層を示す。
【0073】
実施例2:
図5の(A)に示すように、プリプレグからなる絶縁基材10に所定のパターンでCuからなる導体層12が埋め込み形成された埋め込み基板18を準備した。ここで、端子部導体層12aの幅(パターンの幅)は20μm、隣り合う端子部導体層12a間の間隔、とりわけ端子部導体層12aにおける幅広な領域12a0の間隔(パターン間の最小間隔)Sは、15μmとした。このような埋め込み基板18の導体層12のうち、端子部導体層12aの表面を、過硫酸ナトリウムと硫酸からなるエッチング液によって、1μmの深さまでエッチングし、絶縁基材10の表面から端子部導体層12aの表面が窪んでいる状態(図5(B))とし、さらにエッチングを継続させて、幅方向の断面が凸状をなす端子部導体層12aとした(図5(C))。ここで、上記のエッチングは、断面凸状の端子部導体層の幅方向中央部の表面(凸状の頂面)が、絶縁基材表面位置から4.5μmの深さに位置するまで行なった。なおこの状態では、断面凸状の端子部導体層の両端部は、絶縁基材表面位置から7.5μmの深さに位置していた。次いで、上記の端子部導体層12aについて、脱脂処理を行ってから、エッチング量0.3μmのソフトエッチング処理、脱スマット処理、プリディップ処理、さらに無電解めっきのためのPd触媒の付与処理、ポストディップ処理をその順に行った後、無電解Niめっきを行なった(図5(D))。この無電解Niめっきは、凸状導体層の頂部が絶縁基材表面位置から0.3μmの深さの位置に達するまで行なったが、この状態では、Niめっき層は、全体として平坦となっていることが確認された。さらにNiめっき層上に、0.2μmの無電解Pdめっき、および0.1μmの置換無電解Auめっきを行ない、端子部導体層上のAuめっき層表面が絶縁基材表面とほぼ同じ位置となっている平坦なプリント配線板を得た(図5(E)、図4)。
実施例2により得られたプリント配線板の導体層付近の断面の状況を光学顕微鏡によって観察した結果を図12の(B)に示し、またそのプリント配線板の平面および断面について走査型電子顕微鏡により観察した結果を図14に示す。
【0074】
実施例3:
図5の(A)に示すように、プリプレグからなる絶縁基材10に所定のパターンでCuからなる導体層12が埋め込み形成された埋め込み基板18を準備した。ここで、端子部導体層12aの幅(パターンの幅)は13μm、隣り合う端子部導体層12a間の間隔、とりわけ端子部導体層12aにおける幅広な領域12a0の間隔(パターン間の最小間隔)Sは、22μmとした。このような埋め込み基板18の導体層12における端子部導体層12aの表面を、硫酸と過酸化水素水からなるエッチング液によって、1μmの深さまでエッチングし、絶縁基材10の表面から端子部導体層12aの表面が窪んでいる状態(図5(B))とし、さらにエッチングを継続させて、幅方向の断面が凸状をなす端子部導体層とした(図5(C))。ここで、上記のエッチングは、断面凸状の端子部導体層の幅方向中央部の表面(凸状の頂面)が、絶縁基材表面位置から2.5μmの深さに位置に達するまで行なった。なおこの状態では、断面凸状の端子部導体層の両端部は、絶縁基材表面位置から5.3μmの深さに位置していた。次いで、上記の端子部導体層12aについて、脱脂処理を行ってから、エッチング量0.3μmのソフトエッチング処理、電解Niめっきを行なった(図5(D))。この電解Niめっきは、凸状導体層の頂部が絶縁基材表面位置から1.4μmの高さの位置に達するまで行なったが、この状態では、Niめっき層は、全体として平坦となっていることが確認された。さらにNiめっき層上に、0.1μmの電解Auめっきを行ない、端子部導体層12a上のAuめっき層表面が絶縁基材表面から1.5μm突出しているプリント配線板を得た(図5(E)、図4)。
実施例3により得られたプリント配線板の導体層付近の断面の状況を光学顕微鏡によって観察した結果を図12の(C)に示し、またそのプリント配線板の平面および断面について走査型電子顕微鏡により観察した結果を図15に示す。
【0075】
比較例1:
図11(A)に示すように、プリプレグからなる絶縁基材10に所定のパターンでCuからなる導体層12が埋め込み形成された埋め込み基板18を準備した。ここで、導体層12の幅(パターンの幅)は20μm、隣り合う導体層間の間隔、とりわけ端子部導体層12aにおける幅広な領域12a0の間隔(パターン間の最小間隔)Sは、15μmとした。このような埋め込み基板18の導体層12の表面について、脱脂処理を行ってから、エッチング量0.3μmのソフトエッチング処理、脱スマット処理、プリディップ処理、さらに無電解めっきのためのPd触媒の付与処理、ポストディップ処理をその順に行った後、約3.5μmの無電解Niめっき、0.2μmの無電解Pdめっき、0.1μmの置換無電解Auめっきを行ない、Ni/Pd/Auの保護用金属被覆層(無電解めっき層)14の表面が絶縁基材10の表面から3.5μm突出しているプリント配線板を得た(図11(B))。
比較例1により得られたプリント配線板の導体層付近の断面の状況を光学顕微鏡によって観察した結果を図12の(D)に示し、またそのプリント配線板の平面および断面について走査型電子顕微鏡により観察した結果を図16に示す。
【0076】
比較例2:
図10(A)に示すように、プリプレグからなる絶縁基材10上に所定のパターンでCuからなる導体層12が突出形成された基板をセミアディティブ工法により準備した。ここで、導体層12の幅(パターンの幅)は21μm、隣り合う導体層間の間隔、とりわけ端子部導体層12aにおける幅広な領域12a0の間隔(パターン間の最小間隔)Sは、30μmとした。このような絶縁基材10上の導体層12の表面について、脱脂処理を行ってから、エッチング量0.3μmのソフトエッチング処理、脱スマット処理、プリディップ処理、さらに無電解めっきのためのPd触媒の付与処理、ポストディップ処理をその順に行った後、約2μmの無電解Niめっき、0.2μmの無電解Pdめっき、0.1μmの置換無電解Auめっきを行ない、絶縁基材10上に突出する導体層12がNi/Pd/Auの保護用金属被覆層(無電解めっき層)14で覆われたプリント配線板を得た(図10(B))。
比較例2により得られたプリント配線板の導体層付近の断面の状況を光学顕微鏡によって観察した結果を図12の(E)に示し、またそのプリント配線板の平面および断面について走査型電子顕微鏡により観察した結果を図17に示す。
【0077】
以上の実施例および比較例によるプリント配線板についての観察結果(図12の(A)〜(E)、図13〜図17)から、次のような事実が確認された。
すなわち、本発明の実施例1〜3の場合は、いずれも、隣り合う端子部導体層の間の絶縁基材表面に、保護用金属の異常析出が生じておらず、またとそれに伴うブリッジ現象も生じておらず、隣り合う端子部導体層の間が完全に分離していることが確認された。
これに対して、埋め込み基板を適用したが、導体層をエッチングにより窪ませずに保護用金属のめっきを行なった比較例1では、走査型電子顕微鏡での観察の結果、隣り合う導体の間の絶縁基材表面に保護用金属の異常析出が生じて、ブリッジ現象が発生したことが確認された。
さらに、導体層を絶縁基材上に突出した状態で形成した比較例2の場合は、導体層の上面のみならず側面を覆う保護用金属が隣り合う導体層の間で連続してしまって、明確なブリッジ現象が発生していることが確認された。
【0078】
ここで、比較例2は、従来の一般的なセミアディティブ法を適用した例であり、この場合には、隣り合う導体層間の最小間隔Sが30μmで、保護用金属のブリッジ現象により隣り合う導体層の間が連続してしまっていた。
これに対して、本発明の実施例1〜3では、隣り合う端子部導体層間の最小間隔Sを25μm以下に狭小化し、特に実施例1、実施例2では15μm以下に著しく狭小化しているが、これらの場合でも、隣り合う端子部導体層の間で保護用金属の異常析出やブリッジが認められなかった。したがって本発明によれば、端子部導体層12a間のスペース(最小間隔S)を25μm以下、さらには15μm以下まで狭小化しうることが明らかである。
なお比較例1では、導体層間の最小間隔Sが15μmであるが、異常析出していることから、25μm以下まで狭小化することは実際上困難と解され、特に15μm以下まで狭小化することは不可能であることが明らかである。
【符号の説明】
【0079】
10 絶縁基材
12 導体層
12a 端子部導体層
12b 配線回路導体層
14 保護用金属の被覆層14
18 平埋め基板
20 支持体
121 幅方向中央部
122 幅方向両端部
S 最小間隔(スペース)
W 幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基材の一面に、配線回路および端子部を構成するパターンで導体層が埋め込まれており、かつその導体層のうちの端子部の導体層の表面に、導体層の金属とは異なる保護用金属からなる1層以上の被覆層が形成されてなるプリント配線板において、
前記端子部の導体層は、その表面が絶縁基材の前記一面から窪んだ状態で形成されており、かつその窪んだ導体層の表面が前記1層以上の被覆層によって覆われており、しかもその1層以上の被覆層は、その表面が、前記絶縁基材の前記一面と実質的に同一面以下に位置するように形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
請求項1に記載されたプリント配線板において、
前記保護用金属の被覆層の表面が、前記絶縁基材の前記一面より2μm高い位置以下に位置するように形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
請求項1、請求項2のいずれかの請求項に記載されたプリント配線板において、
前記導体層のうちの配線回路の導体層は、その表面が絶縁基材の前記一面と実質的に面一に形成されていて、その配線回路の導体層の表面に前記保護用金属被覆層が形成されていないことを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかの請求項に記載されたプリント配線板において、
前記被覆層で覆われた端子部の導体層における、隣り合う導体層間の最小間隔が25μ以下であることを特徴とするプリント配線板。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか1の請求項に記載されたプリント配線板において、
前記被覆層で覆われた端子部の導体層は、被覆層で覆われた面と前記絶縁基材の前記一面との間の距離が、1〜7μmの範囲内となるように形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちのいずれか1の請求項に記載されたプリント配線板において、
前記被覆層で覆われた端子部の導体層は、被覆層で覆われた面と前記絶縁基材の前記一面との間の距離が、導体層の幅方向の中央部で小さく、幅方向両端部で大きくなるように形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のうちのいずれか1の請求項に記載されたプリント配線板において、
前記導体層が、銅もしくは銅合金によって形成されていることを特徴とする、プリント配線板。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のうちのいずれか1の請求項に記載されたプリント配線板において、
前記被覆層の保護用金属の材料として、Ni、Au、Pd、Sn、Ag、はんだ合金のうちから選ばれた1種以上のものが用いられていることを特徴とする、プリント配線板。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のうちのいずれか1の請求項に記載されたプリント配線板を製造する方法であって:
絶縁基材の一面に、配線回路および端子部を構成するパターンで導体層を埋め込む埋め込み基板形成工程と、
前記導体層のうちの端子部の導体層の表面をエッチングして、その表面を絶縁基材の前記一面から凹状に窪ませるエッチング工程と、
前記エッチングされた端子部の導体層の表面を、導体層の金属とは異なる保護用金属によって、1層以上に被覆して保護用被覆層を形成する被覆工程と、
を有し、かつ前記被覆工程では、保護用被覆層を、その表面が絶縁基材の前記一面と実質的に同一面以下に位置するように形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載されたプリント配線板の製造方法において、
前記エッチング工程で、端子部の導体層の表面をエッチングし、その後の被覆工程で、そのエッチングされた端子部の導体層の表面に保護用金属の被覆層を形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
請求項9、請求項10のいずれかの請求項に記載されたプリント配線板の製造方法において、
前記被覆工程で、保護用金属の被覆層を、その表面が絶縁基材の前記一面から2μm高い位置以下となるように形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
請求項9〜請求項11のいずれかの請求項に記載されたプリント配線板の製造方法において、
前記エッチング工程で、端子部の導体層を、その表面の最上部が、絶縁基材の前記一面から.1〜7μmだけ窪むまでエッチングすることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項13】
請求項9〜請求項12のいずれかの請求項に記載されたプリント配線板の製造方法において、
前記被覆工程が、無電解めっきにより保護用金属を被覆する工程であることを特徴とする、プリント配線板の製造方法。
【請求項14】
請求項9〜請求項12のいずれかの請求項に記載されたプリント配線板の製造方法において、
前記被覆工程が、電解めっきにより保護用金属を被覆する工程であることを特徴とする、プリント配線板の製造方法。
【請求項15】
請求項9〜請求項14のうちのいずれかの請求項に記載されたプリント配線板の製造方法において、
前記埋め込み基板形成工程が、支持体の表面上に導体層をパターンめっきにより形成したのち、絶縁基材の一面に前記導体層を押し込み、その後、支持体を除去する工程であることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項1】
絶縁基材の一面に、配線回路および端子部を構成するパターンで導体層が埋め込まれており、かつその導体層のうちの端子部の導体層の表面に、導体層の金属とは異なる保護用金属からなる1層以上の被覆層が形成されてなるプリント配線板において、
前記端子部の導体層は、その表面が絶縁基材の前記一面から窪んだ状態で形成されており、かつその窪んだ導体層の表面が前記1層以上の被覆層によって覆われており、しかもその1層以上の被覆層は、その表面が、前記絶縁基材の前記一面と実質的に同一面以下に位置するように形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
請求項1に記載されたプリント配線板において、
前記保護用金属の被覆層の表面が、前記絶縁基材の前記一面より2μm高い位置以下に位置するように形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
請求項1、請求項2のいずれかの請求項に記載されたプリント配線板において、
前記導体層のうちの配線回路の導体層は、その表面が絶縁基材の前記一面と実質的に面一に形成されていて、その配線回路の導体層の表面に前記保護用金属被覆層が形成されていないことを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかの請求項に記載されたプリント配線板において、
前記被覆層で覆われた端子部の導体層における、隣り合う導体層間の最小間隔が25μ以下であることを特徴とするプリント配線板。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか1の請求項に記載されたプリント配線板において、
前記被覆層で覆われた端子部の導体層は、被覆層で覆われた面と前記絶縁基材の前記一面との間の距離が、1〜7μmの範囲内となるように形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のうちのいずれか1の請求項に記載されたプリント配線板において、
前記被覆層で覆われた端子部の導体層は、被覆層で覆われた面と前記絶縁基材の前記一面との間の距離が、導体層の幅方向の中央部で小さく、幅方向両端部で大きくなるように形成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のうちのいずれか1の請求項に記載されたプリント配線板において、
前記導体層が、銅もしくは銅合金によって形成されていることを特徴とする、プリント配線板。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のうちのいずれか1の請求項に記載されたプリント配線板において、
前記被覆層の保護用金属の材料として、Ni、Au、Pd、Sn、Ag、はんだ合金のうちから選ばれた1種以上のものが用いられていることを特徴とする、プリント配線板。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のうちのいずれか1の請求項に記載されたプリント配線板を製造する方法であって:
絶縁基材の一面に、配線回路および端子部を構成するパターンで導体層を埋め込む埋め込み基板形成工程と、
前記導体層のうちの端子部の導体層の表面をエッチングして、その表面を絶縁基材の前記一面から凹状に窪ませるエッチング工程と、
前記エッチングされた端子部の導体層の表面を、導体層の金属とは異なる保護用金属によって、1層以上に被覆して保護用被覆層を形成する被覆工程と、
を有し、かつ前記被覆工程では、保護用被覆層を、その表面が絶縁基材の前記一面と実質的に同一面以下に位置するように形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載されたプリント配線板の製造方法において、
前記エッチング工程で、端子部の導体層の表面をエッチングし、その後の被覆工程で、そのエッチングされた端子部の導体層の表面に保護用金属の被覆層を形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項11】
請求項9、請求項10のいずれかの請求項に記載されたプリント配線板の製造方法において、
前記被覆工程で、保護用金属の被覆層を、その表面が絶縁基材の前記一面から2μm高い位置以下となるように形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項12】
請求項9〜請求項11のいずれかの請求項に記載されたプリント配線板の製造方法において、
前記エッチング工程で、端子部の導体層を、その表面の最上部が、絶縁基材の前記一面から.1〜7μmだけ窪むまでエッチングすることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項13】
請求項9〜請求項12のいずれかの請求項に記載されたプリント配線板の製造方法において、
前記被覆工程が、無電解めっきにより保護用金属を被覆する工程であることを特徴とする、プリント配線板の製造方法。
【請求項14】
請求項9〜請求項12のいずれかの請求項に記載されたプリント配線板の製造方法において、
前記被覆工程が、電解めっきにより保護用金属を被覆する工程であることを特徴とする、プリント配線板の製造方法。
【請求項15】
請求項9〜請求項14のうちのいずれかの請求項に記載されたプリント配線板の製造方法において、
前記埋め込み基板形成工程が、支持体の表面上に導体層をパターンめっきにより形成したのち、絶縁基材の一面に前記導体層を押し込み、その後、支持体を除去する工程であることを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−58728(P2013−58728A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−73820(P2012−73820)
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(597079681)株式会社 大昌電子 (42)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年3月28日(2012.3.28)
【出願人】(597079681)株式会社 大昌電子 (42)
【Fターム(参考)】
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