説明

プリント配線板及びプリント配線板の製造方法

【課題】 高い信頼性を備える小径のスルーホールを有するプリント配線板及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 スルーホール用通孔の樹脂が剥き出している部分は、めっき液を弾くため、めっき膜を形成し難いが、銅箔は、めっき液を弾かないので、めっき層を形成し易い。本発明のプリント配線板においては、スルーホール用通孔26の開口部26aを、上面の銅箔22を残した状態でロート状に形成し、該スルーホール用通孔26内に銅箔22を入り込ませることで、めっき液をスルーホール用通孔26内へ導入し易くしてある。このため、小径のスルーホール用通孔内に高い信頼性を有するめっき層を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、スルーホールにより上層の導体回路と下層の導体回路とが接続されるプリント配線板及び該プリント配線板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】基板の上面に形成される導体回路と、下面に形成される導体回路との接続は、スルーホールを介して行われている。従来技術に係るスルーホールの形成方法について、図5を参照して説明する。先ず、樹脂製の基板120の両面に銅箔122、124がラミネートされている銅張積層板120aを出発材料とする(図5の工程(A))。まず、この銅張積層板120aをドリルで削孔し、スルーホール用の通孔126を形成する(図5の工程(B))。次に、スルーホール用通孔126以外にめっきレジストを形成した後、無電解めっき処理してスルーホール用通孔126に無電解めっき層130を析出してから、更に、該無電解めっき層130の上に電解めっき層132を形成することで、スルーホール140を完成する(図5の工程(C))。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】現在、プリント配線板上の電子部品の実装密度を高めることが求められている。ここで、実装密度を高めるためには、スルーホールの径を小さくすることが必要となる。しかしながら、スルーホールの径を0.3mm以下にすると、信頼性が低下していた。この原因を調査したところ、樹脂製の基板はめっき液を弾き易く、小径のスルーホール用通孔内にめっき液が入り込み難いため、めっき層が上面側の導体回路(銅箔)と下面側の導体回路(銅箔)とを接続できなかったり、或いは、めっき層が薄いために、プリント配線板の使用中に発生するヒートサイクルにおいて、該めっき層がスルーホール用通孔から剥離して、上面側の導体回路と下面側の導体回路との接続が断たれるためであることが判明した。
【0004】本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、高い信頼性を備える小径のスルーホールを有するプリント配線板及びその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、上記目的を達成するため、樹脂基板の上面に配設された導体層と下面に配設された導体層とを電気的に接続するスルーホールを有するプリント配線板であって、前記スルーホール用通孔の開口部を、前記上面の導体層を残した状態でロート状に形成すると共に、該スルーホール用通孔の側壁にめっき層を設けることにより、該上面に配設された導体層と下面に配設された導体層とを電気的に接続したことを技術的特徴とする。
【0006】請求項2の発明は、請求項1において、前記スルーホール用通孔の最小径部分が0.3mm以下であることを技術的特徴とする。
【0007】請求項3の発明は、請求項1又は2において、前記ロート状に形成された部分の厚み(高さ)が、前記樹脂基板の厚み(高さ)の5%から50%の範囲であることを技術的特徴とする。
【0008】請求項4の発明は、上記目的を達成するため、樹脂基板の上面及び下面に銅箔が接着されてなる銅張り積層板にスルーホール用通孔を形成する工程と、該スルーホール用通孔にめっき層を設け、上層の銅箔と下層の銅箔とを電気的に接続する工程とを、有するプリント配線板の製造方法であって、前記スルーホール用通孔を形成する工程において、前記スルーホール用通孔の開口部を、前記上面の導体層を残した状態でロート状に形成することを技術的特徴とする。
【0009】スルーホール用通孔の樹脂が剥き出している部分は、めっき液を弾くため、めっき膜を形成し難いが、例えば銅から成る導体層は、めっき液を弾かないので、めっき層を形成し易い。請求項1のプリント配線板においては、スルーホール用通孔の開口部を、上面の導体層を残した状態でロート状に形成し、該スルーホール用通孔内に導体層を入り込ませることで、めっき液をスルーホール用通孔内へ導入し易くしてある。このため、小径のスルーホール用通孔内に高い信頼性を有するめっき層を形成することができる。
【0010】請求項2のように、スルーホール用通孔の径が0.3mm以下の場合には、従来の技術では、めっき液が該スルーホール用通孔内に入り込み難く、高い信頼性のスルーホールを形成することが困難であった。これに対して、本発明では、スルーホール用通孔の開口部を、上面の導体層を残した状態でロート状に形成し、該スルーホール用通孔内に導体層を入り込ませることで、めっき液をスルーホール用通孔内へ導入し易くしてある。このため、0.3mm以下の径のスルーホール用通孔内に高い信頼性を有するめっき層を形成することができる。
【0011】ロート状に形成された部分の厚みが、樹脂基板の厚みの5%以下の場合には、スルーホール内に、めっき液が十分に入らず、めっき膜が形成し難い。他方、50%以上の場合には、スルーホール用通孔の導体層の上にめっき膜を形成することになり、めっき膜がスルーホールから剥離し易くなる。請求項3では、ロート状に形成された部分の厚みが、樹脂基板の厚みの5%から50%の範囲に設定してあるため、小径のスルーホール用通孔内に高い信頼性を有するめっき層を形成することができる。
【0012】請求項4のプリント配線板においては、スルーホール用通孔の開口部を、上面の銅箔を残した状態でロート状に形成し、該スルーホール用通孔内に銅箔を入り込ませることで、めっき液をスルーホール用通孔内へ導入し易くしてある。このため、小径のスルーホール用通孔内に高い信頼性を有するめっき層を形成することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の第1実施形態に係るプリント配線板について図を参照して説明する。ここでは、図1〜図3を参照してプリント配線板の製造工程について述べる。厚さ1mmのガラスエポキシ樹脂またはBT(ビスマレイミドトリアジン)樹脂からなる基板20の両面に18μmの銅箔22、24がラミネートされている銅張積層板20aを出発材料とする(図1の工程(A))。この銅張積層板20aをダイ50の上に載置する。ダイ50には、プリント配線板のスルーホール形成位置に通孔50Aが形成されている。一方、ダイ50の上側には、通孔50Aに対向する位置に円筒状のピン62を配設したピン台60が配設されている。
【0014】ピン台60を押し下げることにより、ピン62をダイ50の通孔50Aへ挿通させることによって、基板20にスルーホール形成用の通孔26を形成する(図1の工程(A))。このスルーホール形成用の通孔を形成する際に、スルーホール形成用通孔26の開口部の周囲が上面の銅箔22と共に円筒状のピン62に押圧され、該開口部26aが銅箔22を残した状態でロート状(くさび状)に形成される。該ロート状の開口部26aの下側には、ほぼ垂直な立壁26bが形成される。この状態を図1の工程(C)に示す。このスルーホール形成用通孔は、立壁26bで径が0.3mmに形成されている。ここで、銅は、延性が低いため、該ロート状の開口部26aの下端部で断ち切られ、立壁26bの表面には残らない。
【0015】次に、基板20の両面に、液状レジストをロールコーターを用いて塗布し、乾燥させてレジスト層を形成した後、スルーホールに対応する黒円の形成されたフォトマスクフィルムを載置して紫外線を照射し、露光する。その後、フォトマスクフィルムを取り除き、レジスト層をDMTGで溶解現像し、基板20上にスルーホール用の開口28aの抜けためっき用レジスト28を形成する(図2の工程(D))。
【0016】引き続き、基板20に、予めめっき前処理(具体的には触媒核の活性化)を施す。その後、該基板20を下記組成の無電解銅めっき液中に浸漬させて、スルーホール形成用通孔26のロート状開口部26aの銅箔22、及び、樹脂が剥き出しになっている立壁26bに厚さ10μm程度の無電解銅めっき膜30を析出させる(図2の工程(E))。
金属塩…CuSO4 ・5H2 O:8.6mM錯化剤…TEA(トリエタノールアミン):0.15M還元剤…HCHO : 0.02Mその他…安定剤(ビピリジル、フェロシアン化カリウム等):少量析出速度は、6μm/時間
【0017】無電解めっきを析出させる際に、開口部26aがロート状になっているので、めっき液が小径(0.3mm)のスルーホール用通孔26に入り込み易いほか、該スルーホール用通孔26の表面に付着している気泡を抜き易くなり、同様に、めっき層析出時に発生するガスを抜き易くする。
【0018】ここで、樹脂はめっき液を弾くため、めっき膜を形成し難いが、銅はめっき液を弾かないため(めっき液に対して濡れ性が高い)、めっき層を形成し易い。ここで、図5(B)を参照して上述した従来技術のように、スルーホールの側壁にて、全て樹脂が剥き出していると、めっき液を弾くため、小径のスルーホール内にはめっき膜を形成し難い。これに対して、本実施形態では、スルーホール用形成用通孔26の開口部26aを、上面の銅箔22を残した状態でロート状に形成し、該スルーホール内に銅箔22を入り込ませ、めっき液に対して濡れ易くしてある。このため、該開口部26aには容易にめっき膜を析出させることができる。他方、立壁26bは、樹脂が剥き出しになっいるので、めっきを析出させ難いが、図5(B)を参照して上述した従来技術のスルーホール用開口126と比べて、高さが低く成っている、即ち、従来技術では、基板120の厚み(1mm)に等しい高さだけ樹脂部分にめっきを形成する必要があるのに対して、本実施形態では、開口部26aの高さ分だけ低くなった樹脂部分(立壁26b)に対してめっきを析出させれば良いため、立壁26bに析出させるめっき層に高い信頼性を与えることができる。
【0019】上述した工程で、基板20のスルーホール形成用通孔26内に無電解めっき膜30を析出させた後、該基板20を電解めっき液に浸漬し、銅箔22、24を介して電流を流し、スルーホール形成用通孔26内の無電解めっき膜30の上に銅電解めっき膜32を30μm形成してスルーホール40を完成する(図2の工程(F))。これにより、上面の銅箔22と下面の銅箔24との電気接続が取られる。上述したように、スルーホール内に無電解めっき層30を完全に析出させてあるため、該無電解めっき層30の上に電解めっき層32を形成することで、信頼性の高いスルーホールを構成することができる。
【0020】次に、めっき用レジスト28を剥膜した後、液状レジストをロールコーターを用いて塗布、乾燥を行い厚さ30μmのレジスト層42を形成する(図3の工程(G))。ついで、基板20上に形成する導体回路に対応するパターンの形成されたフォトマスクフィルムを載置して紫外線を照射し、露光する。引き続き、フォトマスクフィルムを取り除き、レジスト層34をDMTGで溶解現像し、基板20上に導体回路パターン部の抜けたエッチング用レジスト44を形成する(図3の工程(H))。エッチング用レジスト44の形成された基板20を薬液処理して銅箔22、24の導体回路非形成部を除去することにより、導体回路46を形成する。その後、エッチング用レジスト44を剥膜してプリント配線板を完成する(図3の工程(I))。なお、上述した工程で形成した複数枚のプリント配線板をプリプレグを介在させて積層することで、多層プリント配線板を形成することも可能である。
【0021】図4(A)に図1の工程(C)を参照して上述したスルーホール形成用通孔26を拡大して示す。この実施形態のプリント配線板においては、ロート状開口部26aの高さh2は、基板の高さ(厚み)h1の5%〜50%が良い。これは、図4(B)に示すようにロート状開口部26aの高さが5%以下になると、無電解めっきを行う際に、めっき液が円滑に入り込み難く、また、樹脂が剥き出しになっている高さh3が高いと、該高さ部分h3(立壁26b)に対して無電解めっきを析出し難くなる。
【0022】一方、図4(C)に示すようにロート状開口部26aの高さが50%以上になると、ロート状開口部26aの上の銅箔22上に、図2の工程(E)、図2の工程(F)に示したように無電解めっき層30及び電解めっき層32を形成することになり、該ロート状開口部26aと銅箔22との接続が強固に保たれている訳ではないので、該ロート状開口部26aから銅箔22が剥がれることで、スルーホール26の断線する可能性が高める。
【0023】このため、ロート状開口部26aの高さに関わらず、該ロート状開口部26aと銅箔22とが密着状態に保たれていることが望ましい。ここで、図4(D)に示すように、ロート状開口部26aから銅箔が剥がれていると、上述したように該銅箔22と共に無電解めっき層30及び電解めっき層32が剥がれ易くなり、スルーホールが容易に断線する他、該無電解めっき析出の工程においても、無電解めっき溶液が円滑にスルーホール形成用通孔26に侵入し難くなる。
【0024】ここで、図1の工程(A)及び工程(B)を参照して上述したダイ50の通孔50Aとピン62とのクリアランスCについて説明する。クリアランスCは、最大で50μmであり、10〜30μmが最も望ましい。クリアランスCが10μmよりも小さいと、ロート状開口部26aが小さくなり、ロート状開口部26aの高さh2を、基板の高さ(厚み)の5%以上に形成することが困難となる(図4(A)参照)。また、銅箔22が延び易くなり、図4(E)に示すように銅箔22が立壁26b側まで延びて、スルーホールを形成した際に、無電解めっき層30及び電解めっき層32が基板20から剥がれ易くなる。
【0025】反対に、クリアランスCが50μmよりも大きいと、ダイ50の通孔50Aとピン62と間で銅箔22が切断し難くなり、開口部26aが潰れてしまい、図4(A)に示すようなロート状に形成できなくなる。更に、該銅箔22でスルーホール用開口26にストレスを与え、スルーホールの信頼性を低下させることになる。
【0026】この実施形態では、スルーホール形成用通孔26として直径0.3mmの穴を穿設したが、本実施形態の構成では、0.3mm以下で0.05mm程度までの穴を設けてスルーホールを形成することができる。なお、上述した実施形態では、基板として樹脂基板に銅箔が接着された銅張り積層板を用いたが、樹脂基板の上に形成される導体層としては、銅箔以外にも、銅箔と銅めっき層、銅めっき層を用いることができる。ここで、銅箔、銅めっきにおける銅とは、銅を主成分とする合金を含む。なお、該導体層の厚みは、導体層と密着させたままロート状開口部26aを形成するため、1〜25μmであることが好ましい。更に、上述した実施形態においては、ピン60として円柱形状のものを用いたが、四角柱、三角柱等種々の形状のピンを用いることができる。
【0027】
【発明の効果】以上のように、請求項1のプリント配線板及び請求項4のプリント配線板の製造方法では、スルーホール用通孔の開口部を、上面の導体層(銅箔)を残した状態でロート状に形成し、該スルーホール用通孔内に導体層(銅箔)を入り込ませることで、めっき液をスルーホール用通孔内へ導入し易くしてある。このため、スルーホール用通孔内に高い信頼性を有するめっき層を形成することができる。このように小径のスルーホールを形成できるため、プリント配線板の実装密度を高めることが可能となる。
【0028】請求項2では、スルーホール用通孔の開口部を、上面の導体層を残した状態でロート状に形成し、該スルーホール用通孔内に導体層を入り込ませることで、めっき液をスルーホール内へ導入し易くしてある。このため、径が0.3mm以下のスルーホール用通孔内に、高い信頼性を有するめっき層を形成することができる。
【0029】請求項3では、ロート状に形成された部分の厚みが、樹脂基板の厚みの5%から50%の範囲に設定してあるため、スルーホール用通孔内に高い信頼性を有するめっき層を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造を示す行程図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造を示す行程図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造を示す行程図である。
【図4】図4(A)、図4(B)、図4(C)、図4(D)、図4(E)は、図1の工程(C)に示すプリント配線板の拡大断面図である。
【図5】図5は、従来技術に係るプリント配線板の製造を示す行程図である。
【符号の説明】
20 基板
22、24 銅箔(導体層)
26 スルーホール形成用通孔
26a ロート状開口部
26b 立壁
30 無電解めっき層
32 電解めっき層
40 スルーホール
50 ダイ
50A 通孔
60 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】 樹脂基板の上面に配設された導体層と下面に配設された導体層とを電気的に接続するスルーホールを有するプリント配線板であって、前記スルーホール用通孔の開口部を、前記上面の導体層を残した状態でロート状に形成すると共に、該スルーホール用通孔の側壁にめっき層を設けることにより、該上面に配設された導体層と下面に配設された導体層とを電気的に接続したことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】 前記スルーホール用通孔の最小径部分が0.3mm以下であることを特徴とする請求項1のプリント配線板。
【請求項3】 前記ロート状に形成された部分の厚みが、前記樹脂基板の厚みの5%から50%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2のプリント配線板。
【請求項4】 樹脂基板の上面及び下面に銅箔が接着されてなる銅張り積層板にスルーホール用通孔を形成する工程と、該スルーホール用通孔にめっき層を設け、上層の銅箔と下層の銅箔とを電気的に接続する工程とを、有するプリント配線板の製造方法であって、前記スルーホール用通孔を形成する工程において、前記スルーホール用通孔の開口部を、前記上面の導体層を残した状態でロート状に形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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