説明

プリント配線板

【課題】配線板の周縁部に広い面積のグランド配線を設けることなく、アーク放電の影響が小さなプリント配線板を提供する。
【解決手段】上述した課題は、絶縁性の筐体内に格納されるプリント配線板であって、プリント配線板の周縁部に沿って、最も大きな電流が流れる信号線の配線が配置されることを特徴とするプリント配線板等により解決することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント配線板に関し、特に、絶縁性の筐体内に格納されるプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載される電子制御ユニット(ECU)のプリント配線板は、外部からの物理的な衝撃による破損を避けるため、筐体内に格納されている。この筐体の素材は、従来は金属が用いられることが多かったが、近年は、軽量化や低価格化等の目的のため、樹脂等の絶縁性の材料が用いられることが多くなってきている。
【0003】
ところで、ECUには外部からの物理的な衝撃の他に、静電気による影響を受ける。従来の金属製の筐体では、筐体がシールドとしての役割も果たすため、その影響は限定的であった。しかし、樹脂等の絶縁体材料からなる筐体は、外部から静電気が印加されると分極が発生して筐体内部の表面が帯電する。この帯電による電圧がECU内部の気体(多くの場合は大気)の耐電圧を超えたときにアーク放電が発生する。アーク放電は、内部に格納されたプリント配線板に搭載された部品やプリント配線板自体を破壊したり、回路の誤動作を引き起こすなど、深刻な影響を及ぼす。
【0004】
アーク放電が発生する場所は、最も近接したプリント配線板上の導体、すなわちプリント配線板の周縁部に配置された配線であるが、落雷と同様で放電が発生する場所は一様ではなく、周縁部のどの場所に発生するかを予め予想することが難しい。このため、従来は、特許文献1に記載の発明のように、周縁部に面積を広くとることによりインピーダンスを小さくしたグランド配線を設け、放電が起きた際に、放電による静電荷をすみやかにプリント配線板の周縁部に分散するとともに、接地端子等から電荷を外部に放出することによって、放電による部品破損等を防止していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−16004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、近年の機器小型化の要求の高まりにより、プリント配線板も小型化が求められるようになってきた。このため、配線板の周縁部に十分な広さのグランド配線を配置するためのスペースを確保することが難しくなってきた。他方、配線板の小型化により高密度な配線が一般的になり、プリント配線板は従来と比較して静電気に脆弱になっている。このため、配線板の周縁部に広い面積のグランド配線を設けることなく、放電がプリント配線板に与える影響を低減するプリント配線板が求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題は、絶縁性の筐体内に格納されるプリント配線板であって、プリント配線板の周縁部に沿って、最も大きな電流が流れる信号線の配線が配置されることを特徴とするプリント配線板により解決することができる。
【0008】
すなわち、プリント配線板の周縁部に沿って、低インピーダンスの大電流信号に適した配線を配置することにより、放電による静電荷をすみやかにプリント配線板に分散することができる。また大電流信号の配線は、そもそも大きな電荷量が流れることを前提として設計されているため、放電による外部からの電荷注入に対する影響が小さい。このため、放電がプリント配線板に与える影響を抑えることができる。
【0009】
このような、アーク放電が生ずる環境下におかれたプリント配線板が必要とされるもののひとつに、自動車用のモータに取り付けられたモータ制御用のECU内部のプリント配線板がある。モータ制御用ECU内部のプリント配線板には、モータのトルクや回転数等を制御する制御信号が流れる信号線やモータの駆動電流が流れる信号線を含む制御回路が配置されている。このようなプリント配線板では、最も大きな電流が流れるモータ駆動電流用の信号線を周縁部に沿って配置することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配線板の周縁部に広い面積のグランド配線を設けることなく、放電がプリント配線板に与える影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態であるモータユニットの分解斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態であるプリント配線板である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に本発明の一実施形態であるプリント配線板10が格納されたECU3を搭載した自動車用モータユニット1の分解斜視図を示す。モータユニット1は、モータ本体2とモータ本体2のマウント部材4とECU3とで構成されている。ECU3は、樹脂製の筐体下部5と筐体上部7とで構成される絶縁性の筐体内部に、モータ制御回路が形成されたプリント配線板10が格納されている。
【0013】
モータ制御回路は、制御に必要な信号とモータを駆動するために必要な駆動電流とを外部から受信し、所定の制御条件に基づいてモータ本体2に駆動電流信号を出力することにより、モータ本体2の動作を制御する制御回路である。モータ駆動電流は、外部から供給され、筐体下部5に設置されたコネクタ9を介してプリント配線板10に供給される。そして、プリント配線板10から、筐体下部5に設置されたコネクタ8を介してモータ本体2のコネクタ18に供給される。
【0014】
図2にプリント配線板10を示す。プリント配線板10は、部品搭載領域11、グランド配線12、モータ駆動信号線の配線13−1〜13−4およびコネクタ22、28、29から構成されている。部品搭載領域11は、プリント配線板10の中央部に配置され、プロセッサやメモリなどの制御に必要な電子部品が搭載されており、プリント配線により各部品の端子間が接続されている。部品搭載領域11の配線に流れる制御信号は、一般にマイクロアンペアないしはミリアンペアオーダーの信号である。
【0015】
部品搭載領域11の外側と部品搭載領域11内の空き領域には、グランド配線12が配置されている。グランド配線は、コネクタ22中のグランド端子を通じて接地されている。
【0016】
プリント配線板10の周縁部の一辺には外部と信号入出力を行うためのコネクタ22、28、29が配置されており、他の三辺には周縁部に沿ってモータ駆動信号線の配線13−1〜13−4が配置されている。
【0017】
モータ駆動信号線の配線の一端にはコネクタ28が、他端にはコネクタ29が配置されている。コネクタ28は、モータ制御回路で制御されたモータ駆動電流を筐体下部5のコネクタ8を介してモータ本体2のコネクタ18に提供するためのコネクタである。また、コネクタ29は、外部からプリント配線板10にモータ駆動電流を供給するためのコネクタである。コネクタ22は、モータ駆動電流以外のモータ制御に必要な信号線を外部装置との間で入出力するためのコネクタである。
【0018】
モータ駆動信号線の配線は、4つのランド13−1〜13−4に分割されており、各ランドはスイッチ(図示しない)を介して結合されている。所定のモータ制御条件に基づいて部品搭載領域11で生成されたモータ制御信号に応じて、スイッチを流れる電流を制御することにより、コネクタ29からコネクタ28へ流す電流を制御して、モータ本体2へ供給する電流を制御する。モータ駆動電流の信号線13−1〜13−4には数アンペアないしは数十アンペアオーダーの電流が流れる。このため、モータ駆動電流の信号線の配線13−1〜13−4は、配線の面積を広くとることにより、インピーダンスを小さくしている。
【0019】
プリント配線板10は、配線板の各配線を流れる電流のうち、最大の電流が流れるモータ駆動信号線13−1〜13−4の配線を周縁部に沿って配置することによって、アーク放電による電荷注入をモータ駆動信号線13−1〜13−4に誘導し、部品搭載領域11への影響を抑えることが可能となる。これにより、特別な部品の追加やコスト上昇なく、ECUの信頼性を向上させることができる。
【0020】
また、モータ駆動電流の信号線の配線13−1〜13−4は低インピーダンスとはいえ、大電流が流れるため相当の発熱があるが、プリント配線板10上の他の主要な発熱源であるプロセッサ等の電子部品が配置されている部品搭載領域11とは離れて配置されるため、発生した熱がプリント配線板10全体に分散し、効率のよい放熱ができるという効果も奏する。
【0021】
以上、本発明に係る技術的思想を特定の実施態様を参照しつつ詳細にわたり説明したが、本発明の属する分野における当業者には、請求項の趣旨及び範囲から離れることなく様々な変更及び改変を加えることが出来ることは明らかである。例えば、上記実施例においては、周縁部の三辺に大電流信号線の配線が配置されているが、周縁部のどの部分に大電流信号線を配置するかは、基板に形成する回路や筐体とプリント配線板との位置関係などに応じて適宜設計変更可能である。また、本願発明はモータユニットに限定されるものではなく、広く大電流信号線の配線を含むプリント配線板に適用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 モータユニット
2 モータ本体
3 ECU
5 筐体下部
7 筐体上部
10 プリント配線板
11 部品搭載領域
12 グランド配線
13−1〜13−4 モータ駆動信号線の配線
8、9、18、22、28、29 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の筐体内に格納されるプリント配線板であって、
プリント配線板の周縁部に沿って、最も大きな電流が流れる信号線の配線が配置されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記プリント配線板は、モータを制御するための制御回路が形成され、かつ、
前記信号線の配線は、前記モータの駆動電流を流す配線であることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
請求項2に記載のプリント配線板と、
前記プリント配線板を格納した絶縁性の筐体と、
前記制御回路により制御されるモータと、
を備えたことを特徴とするモータユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−62303(P2013−62303A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198399(P2011−198399)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】