説明

プロジェクター及びその制御方法

【課題】新品のランプユニットに交換することで、寿命に達していないランプユニットについてのランプの累積点灯時間がリセットされてしまうことを、予めユーザーに知らせることができるプロジェクター及びその制御方法を提供する。
【解決手段】ランプユニット5を有するプロジェクター1であって、ランプの累積点灯時間及び点灯エラーの発生の有無を記憶するランプ情報記憶部31と、ランプユニット5が交換されると、交換後のランプユニットが備えるヒューズが導通状態か否かを検出する第1のランプユニット制御部8と、交換後のランプユニットが備えるヒューズが導通状態であることが検出され、累積点灯時間がランプの寿命時間に達しておらず、かつ、点灯エラーが発生していない場合に、交換後のランプユニットの使用について確認メッセージを出力させる制御部20と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクター及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ランプの累積点灯時間をカウントし、予め定めた累積点灯時間を経過すると、警告などを表示してランプユニットの交換を促すプロジェクターが知られている。累積点灯時間をカウントするカウンターを設ける場合、ランプユニットを交換した際に、カウンターの初期値をリセットすることが必要である。ところが、中古品のランプユニットに交換した場合に初期値をリセットしてしまうと、正しい累積点灯時間をカウントすることができない。
【0003】
特許文献1には、ランプユニットが装着されたときに、そのランプユニットが新品であるか中古品であるかを判断し、新品である場合に初期値をリセットする技術が開示されている。すなわち、特許文献1には、メタルハライドランプが使用されると溶断するヒューズを設置し、ランプユニット制御装置において、メタルハライドランプの最初の点灯開始時にヒューズの状態を確認し、ヒューズが溶断していない場合にはランプ点灯時間カウンターの初期値を0に設定し、ヒューズが溶断している場合にはランプ点灯時間カウンターをリセットせず、ランプ点灯累積時間カウンターのカウント値が1000時間に達した後は、メタルハライドランプに供給する電流を減少してメタルハライドランプの明るさを減少させる発明が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、複数のランプを用いて画像を投写するプロジェクターが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−177898号公報
【特許文献2】特開2009−69598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、特許文献1に記載の発明によれば、交換前のランプユニットが未だ寿命に達していない状態で新たなランプユニットに交換されると、交換後のランプユニットのヒューズが溶断されていなければ(導通状態であれば)、新品であると判定し、ランプ点灯累積時間カウンターをリセットしてしまう。
【0007】
しかしながら、寿命に達していないランプユニットを元に戻そうと改めて装着させると、すでにランプ点灯累積時間カウンターはリセットされてしまっているため、累積点灯時間は失われてしまう。
【0008】
特に、特許文献2に記載のプロジェクターのように、複数のランプユニットを備えた構成の場合、ユーザーが交換すべきランプユニットを誤って、寿命に達していないランプユニットの方を新品のランプユニットへ交換してしまうケースが発生することがある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、新品のランプユニットに交換することで、寿命に達していないランプユニットについてのランプの累積点灯時間がリセットされてしまうことを、予めユーザーに知らせることができるプロジェクター及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決することのできる本発明は、ランプと、ヒューズと、を備えたランプユニットを有するプロジェクターであって、前記ランプの累積点灯時間を記憶する記憶部と、前記ヒューズが導通状態か否かを検出し、前記ヒューズが非導通状態であるランプユニットを交換されたランプユニットと判別する検出部と、前記交換後のランプユニットが備えるヒューズが導通状態であることが検出され、前記交換されたランプユニットのランプの累積点灯時間が前記ランプの寿命時間に達していない場合に、前記交換後のランプユニットの使用について確認メッセージを出力させる使用確認部と、を有することを特徴とする。
交換後のランプユニットが備えるヒューズが導通状態であるとは、非導通化されていない新品のランプユニットへ交換されたことがわかる。上記構成によれば、新品のランプユニットに交換されても、交換されたランプユニットの累積点灯時間が寿命時間に達していなければ、新品のランプユニットの使用について確認メッセージが出力される。このため、ユーザーは、誤って新品のランプユニットに交換してしまったのかを確認することができる。例えば、確認メッセージに、交換されたランプユニットについてのランプの累積点灯時間をリセットする旨のメッセージを含めれば、新品のランプユニットに交換したことで、寿命に達していないランプの累積点灯時間がリセットされてしまうことを、ユーザーに知らせることができる。
【0011】
また、本発明のプロジェクターにおいて、前記使用確認部は、前記確認メッセージの出力後、前記交換後のランプユニットの使用についての確認完了の入力を受け付けたことに応じて前記交換後のランプユニットが備えるヒューズを非導通化させることが好ましい。
確認メッセージによって、誤って新品のランプユニットに交換してしまったことを認識したユーザーは、新品のランプユニットを取り外して元のランプユニットに戻すことが可能である。上記構成によれば、確認メッセージの出力後、確認完了の入力を受け付けると、交換後のヒューズを非導通化するので、新品のランプユニットのヒューズを非導通化せずに導通状態のまま取り外すことができる。
【0012】
また、本発明のプロジェクターにおいて、前記使用確認部は、前記交換されたランプユニットのランプの累積点灯時間が前記ランプの寿命時間に達している場合に、前記交換後のランプユニットが備えるヒューズを非導通化させることが好ましい。
累積点灯時間が寿命時間に達している場合は、新品のランプユニットに交換する必要がある。上記構成によれば、このような場合には交換後のランプユニットのヒューズを非導通化するので、正しく交換されたランプユニットを正確に検出して、使用開始状態にすることができる。
【0013】
また、本発明のプロジェクターにおいて、前記プロジェクターは複数のランプユニットを備え、前記記憶部はランプユニット毎に前記ランプの累積点灯時間を記憶しており、
前記使用確認部は、交換対象となっていない他のランプユニットについて前記ランプの累積点灯時間が寿命時間に達している場合は、前記他のランプユニットについて寿命到達メッセージを出力させることが好ましい。
上記構成によれば、寿命到達メッセージを出力することによって、他のランプユニットについてランプの累積点灯時間が寿命時間に達していることをユーザーに知らせることができる。したがって、本来、交換されるべきランプユニットは、既に寿命時間に達している他のランプユニットであったのではないかをユーザーに気付かせることができる。
【0014】
また、上記課題を解決することのできる本発明は、ランプと、ヒューズと、を備えたランプユニットを有するプロジェクターであって、前記ランプについての累積点灯時間及び点灯エラーの発生の有無を記憶する記憶部と、前記ヒューズが導通状態か否かを検出し、前記ヒューズが非導通状態であるランプユニットを交換されたランプユニットと判別する検出部と、前記交換後のランプユニットが備えるヒューズが導通状態であることが検出され、前記交換されたランプユニットのランプの累積点灯時間が前記ランプの寿命時間に達しておらず、かつ、前記点灯エラーが発生していない場合に、前記交換後のランプユニットの使用について確認メッセージを出力させる使用確認部と、を有することを特徴とする。
上記構成によれば、新品のランプユニットに交換されても、交換されたランプユニットについてのランプの累積点灯時間が寿命時間に達しておらず、かつ、点灯エラーが発生していなければ、新品のランプユニットの使用について確認メッセージが出力される。このため、ユーザーは、誤って新品のランプユニットに交換してしまったのかを確認することができる。例えば、確認メッセージに、交換されたランプユニットについてのランプの累積点灯時間をリセットする旨のメッセージを含めれば、新品のランプユニットに交換したことで、寿命時間に達しておらず、かつ、点灯エラーが発生していないランプユニットの累積点灯時間がリセットされてしまうことを、ユーザーに知らせることができる。
【0015】
また、本発明のプロジェクターにおいて、前記使用確認部は、前記確認メッセージの出力後、前記交換後のランプユニットについての確認完了の入力を受け付けたことに応じて前記交換後のランプユニットが備えるヒューズを非導通化させることが好ましい。
【0016】
また、本発明のプロジェクターにおいて、前記使用確認部は、前記交換されたランプユニットのランプの累積点灯時間が前記ランプの寿命時間に達しているか、または、前記交換されたランプユニットについて前記点灯エラーが発生している場合に、前記交換後のランプユニットが備えるヒューズを非導通化させることが好ましい。
累積点灯時間が寿命時間に達している場合、または、ランプユニットについて点灯エラーが発生している場合は、新品のランプユニットに交換する必要がある。上記構成によれば、このような場合には交換後のランプユニットのヒューズを非導通化するので、正しく交換されたランプユニットを正確に検出して、使用開始状態にすることができる。
【0017】
また、本発明のプロジェクターにおいて、前記プロジェクターは複数のランプユニットを備え、前記記憶部はランプユニット毎に前記ランプの累積点灯時間及び前記点灯エラーの発生の有無を記憶しており、前記使用確認部は、交換対象となっていない他のランプユニットについて前記ランプの累積点灯時間が寿命時間に達している場合は前記他のランプユニットについて寿命到達メッセージを出力させ、前記他のランプユニットについて前記点灯エラーが発生している場合は前記他のランプユニットについてエラー発生メッセージを出力させることが好ましい。
上記構成によれば、寿命到達メッセージを出力することによって、他のランプユニットについてのランプの累積点灯時間が寿命時間に達していることをユーザーに知らせることができる。これにより、本来、交換されるべきランプユニットは、既に寿命時間に達している他のランプユニットであったのではないかをユーザーに気付かせることができる。また、エラー発生メッセージを出力することによって、他のランプユニットについて点灯エラーが発生していたことをユーザーに知らせることができる。これにより、本来、交換されるべきランプユニットは、点灯エラーが発生していた他のランプユニットであったのではないかをユーザーに気付かせることができる。
【0018】
また、上記課題を解決することのできる本発明のプロジェクターの制御方法は、ランプとヒューズとを備えたランプユニットと、前記ランプについての累積点灯時間を記憶する記憶部と、を有するプロジェクターの制御方法であって、前記ヒューズが導通状態か否かを検出し、前記ヒューズが非導通状態であるランプユニットを交換されたランプユニットと判別するステップと、前記交換後のランプユニットが備えるヒューズが導通状態であることが検出され、前記交換されたランプユニットのランプの累積点灯時間が前記ランプの寿命時間に達していない場合に、前記交換後のランプユニットの使用について確認メッセージを出力するステップと、を含むことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態のプロジェクターの内部構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態のプロジェクターのランプ情報記憶部が記憶するランプ情報の一例を示した図である。
【図3】本実施形態のプロジェクターによる確認メッセージを出力する処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】警告メッセージの一例である。
【図5】寿命到達メッセージの一例である。
【図6】確認メッセージの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るプロジェクター及びその制御方法の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(プロジェクターの内部構成について)
本実施形態のプロジェクターの内部構成について図1を参照して説明する。
図1に示すように、プロジェクター1は、第1のランプユニット5と、第2のランプユニット6と、集光部7と、第1のランプユニット制御部8と、第2のランプユニット制御部9と、液晶ライトバルブ12R,G,Bと、投写光学系13と、液晶ライトバルブ駆動部14と、制御部20と、入力端子30と、ランプ情報記憶部31と、映像音声処理部32と、フレームメモリー33と、映像処理部34と、音声処理部35と、スピーカー36と、OSD(On Screen Display)処理部38と、操作信号処理部43と、操作パネル44と、を備えている。
【0022】
第1のランプユニット5は、第1のランプと第1のランプの初回点灯時に溶断(非導通化)される第1のヒューズ5aとを備え、第1のランプと第1のヒューズ5aはランプハウジングに固定されて収納されている。また、第2のランプユニット6は、第2のランプと第2のランプの初回点灯時に溶断される第2のヒューズ6aとを備え、第2のランプと第2のヒューズ6aは、ランプハウジングに固定されて収納されている。第1のランプユニット5及び第2のランプユニット6は、それぞれ単体でプロジェクター1から分離可能である。各ランプには寿命があるため、消耗した場合はランプユニットごと新しいものと交換することができる。
【0023】
第1のランプユニット制御部8(検出部)は、制御部20からの指示に従って、第1のランプを点灯又は消灯させる点灯手段である。例えば第1のランプが高圧放電灯の場合には、始動電圧を印加する点灯回路や、適正なランプ電流を供給する安定器などにより構成される。また、第1のランプユニット制御部8は、第1のランプの点灯時間をカウントする点灯時間カウンターを有している。また、第1のランプユニット制御部8は、第1のランプの初回点灯時に第1のヒューズ5aが導通状態(通電可能)か否かを確認する、通電確認回路を備えている。通電可能である場合は、第1のヒューズ5aが溶断されていない、すなわち新品のランプが装着されたことを確認することができる。さらに、第1のランプユニット制御部8は、第1のヒューズ5aを溶断するためのヒューズ溶断回路を備えている。本実施形態の第1のヒューズ5aは電流制限ヒューズであり、制御部20からの指示に応じてヒューズ溶断回路が通電すると第1のヒューズ5aを溶断する。さらに、第1のランプユニット制御部8は、第1のランプについて不点灯などの点灯エラーを検出し、制御部20へ通知する。
【0024】
同様に、第2のランプユニット制御部9(検出部)は、制御部20からの指示に従って、第2のランプを点灯又は消灯させる点灯手段である。第2のランプが高圧放電灯の場合には、始動電圧を印加する点灯回路や、適正なランプ電流を供給する安定器などにより構成される。また、第2のランプユニット制御部9は、第2のランプの点灯時間をカウントする点灯時間カウンターを有している。また、第2のランプユニット制御部9は、第2のランプの初回点灯時に第2のヒューズ6aが通電可能か否かを確認する、通電確認回路を備えている。通電可能である場合は、第2のヒューズ6aが溶断されていない、すなわち新品のランプが装着されたことを確認することができる。さらに、第2のランプユニット制御部9は、第2のヒューズ6aを溶断するためのヒューズ溶断回路を備えている。本実施形態の第2のヒューズ6aは電流制限ヒューズであり、制御部20からの指示に応じてヒューズ溶断回路が通電すると第2のヒューズ6aを溶断する。さらに、第2のランプユニット制御部9は、第2のランプについて不点灯などの点灯エラーを検出し、制御部20へ通知する。
【0025】
制御部20は、第1のランプユニット制御部8、第2のランプユニット制御部9、ランプ情報記憶部31、映像信号処理部32、OSD処理部38、操作信号処理部43と接続されている。この制御部20は、マイクロプロセッサーと、書き換え可能な不揮発性の記憶部と、マイクロプロセッサーが直接アクセスすることができる主記憶部と、を備えている。不揮発性の記憶部には、プロジェクター1の各種動作を制御するための制御プログラム、設定メニューや各種メッセージのOSD映像、台形歪補正量の表示などのOSD映像を生成するためのOSD情報を記憶するとともに、プロジェクター1の各種設定値等が記憶されている。
【0026】
マイクロプロセッサーは、不揮発性の記憶部に記憶された制御プログラム等を実行して、プロジェクター1の動作を統括制御し、制御部20に接続された各部から入力される各種データを演算するとともに、演算結果を各部に出力する。
【0027】
ランプ情報記憶部31は、各ランプユニット5,6が備える第1のランプ及び第2のランプについて、累積点灯時間及び点灯エラーの発生の有無を記憶する。本発明における使用確認部である制御部20は、第1のランプユニット制御部8の点灯時間カウンターがカウントした第1のランプの点灯時間を累積し、第1のランプユニットの累積点灯時間としてランプ情報記憶部31に記憶する。また、制御部20は、第2のランプユニット制御部9の点灯時間カウンターがカウントした第2のランプの点灯時間を累積し、第2のランプユニットの累積点灯時間としてランプ情報記憶部31に記憶する。さらに制御部20は、各ランプユニット制御部8,9から受信する点灯エラー通知にしたがって、各ランプユニット5,6について点灯エラーの発生の有無をランプ情報記憶部31に記憶する。
【0028】
例えば図2に示すように、本実施形態のランプ情報記憶部31には、第1のランプユニット5についての累積点灯時間が2100時間、点灯エラーはなしと記憶され、また、第2のランプユニット6についての累積点灯時間が1200時間、点灯エラーはなしと記憶されている。
【0029】
映像音声処理部32は、入力端子30から受信した映像信号をデコードして圧縮符号化前の映像データに変換し、これらをたとえばRGB信号に変換して順次映像処理部34に出力する。また、音声入力端子から入力される音声信号についても同様にデコードを行い、D/A変換により音声データに変換し、順次音声処理部35に出力する。映像音声処理部32にはフレームメモリー33が接続されており、映像データを1フレーム毎にフレームメモリー33に記憶させるとともに、フレームメモリー33に記憶された映像データを読み出す。
【0030】
映像処理部34は、映像音声処理部32より受信したRGB信号に対してγ補正処理、台形補正処理、解像度変換処理などを行い、液晶ライトバルブ駆動部14に出力する。
【0031】
音声処理部35は、映像音声処理部32より受信した音声データをスピーカー36に出力する。なお、音声処理部35は、音量増幅部を有しており、音量の増幅を行ってスピーカー36に出力する。これにより、スピーカー36は、増幅されて入力するアナログ音声信号を出力する。
【0032】
OSD処理部38は、メニュー映像やメッセージ映像等のOSD情報を制御部20から受信して、OSD映像を生成する。また、生成したOSD映像と映像処理部34から受信した映像データを合成し、液晶ライトバルブ駆動部14へ送信する。
【0033】
操作信号処理部43は、操作パネル44又はリモートコントローラー(リモコン)RCから入力された操作信号を受信し、これを制御部20に出力する。
【0034】
投写光学系13は投写レンズ13aを有している。プロジェクター1は、入力端子30から供給される映像信号に応じた光学像を投写し、投写レンズ13aを介して、スクリーン、白壁又はホワイトボード等の被投写体(以下、本実施形態では「スクリーンSC」という。)に拡大して投写する。
【0035】
液晶ライトバルブ駆動部14は、入力されたRGB信号に応じて、液晶ライトバルブ12R,G,Bを駆動する。各液晶ライトバルブ12R,G,Bは、マトリクス状の複数の画素を備えている。液晶ライトバルブ駆動部14により各画素の透過率が調整されることにより、集光部7から射出され、色光分離光学系によって各色光に分離された、R(赤)、G(緑),B(青)の各色光を対応する液晶ライトバルブ12R,G,Bによって変調して光学像を射出する。液晶ライトバルブ12R,G,Bから射出される光学像は、クロスダイクロイックプリズムなどの合成光学系により合成され、投写光学系13の投写レンズ5によってスクリーンSC上に拡大投写される。
【0036】
<確認メッセージを出力する処理について>
次に、本実施形態のプロジェクターによる確認メッセージを出力する処理について図3〜図6を参照して説明する。
以下では、ユーザーが使用済みの第1のランプユニット5を新品のランプユニットに交換した際に、プロジェクター1が実行する処理について説明する。
【0037】
まず、ユーザーが使用済みの第1のランプユニット5を取り外して、新品のランプユニットに交換する。このとき、取り外した第1のランプユニット5のヒューズ5aは、すでに溶断されており、交換後の新品のランプユニットのヒューズは溶断されていない状態である。
【0038】
ユーザーはランプユニットの交換後、プロジェクター1を起動する。プロジェクター1は、搭載されている全てのランプユニットのヒューズについて溶断状態をチェックする(ステップS11)。第1のランプユニット制御部8は新品のランプユニットのヒューズが通電可能か否かを確認し、第2のランプユニット制御部9はヒューズ6aが通電可能か否かを確認する。ヒューズが溶断されていない未溶断の新品ランプユニットを検出すると(ステップS13:Yes)、使用確認部である制御部20へ通知する。一方、全てのランプユニットのヒューズが非導通状態(通電不可能)である場合は、全てのヒューズが溶断されていると判定し(ステップS13:No)、投写処理を開始する。ヒューズが溶断されている場合は、新品のランプユニットとして装着したはずのランプユニットが新品ではなく、過去に使用したことがあるランプユニットである。このため、ランプ情報記憶部31に記憶されている累積点灯時間及び点灯時間カウンターの値をリセットすることなく、点灯時間カウンターによる点灯時間のカウントを継続する。
【0039】
制御部20は、ステップS13において検出された全ての未溶断のランプユニットについて、順に以下の処理を実行する。
例えば、制御部20は、第1のランプユニット制御部8からの通知を受けた場合は、ランプ情報記憶部31に記憶されている使用済みの第1のランプユニット5についての累積点灯時間及び点灯エラーの有無を取得し(ステップS15)、累積点灯時間が寿命時間に到達しているか、または、点灯エラーが発生しているか否かを判定する(ステップS17)。累積点灯時間が寿命時間に到達しているか、または、点灯エラーが発生している場合は(ステップS17:Yes)、制御部20は取り外した使用済みの第1のランプユニット5についての累積点灯時間と点灯エラーの有無をリセットし(ランプ情報記憶部31から削除する)、新たに装着された新品のランプユニットのヒューズを溶断するよう第1のランプユニット制御部8へ指示する。第1のランプユニット制御部8は、新品のランプユニットのヒューズを溶断し、第1のランプについての点灯時間カウンターをリセットする(ステップS29)。
【0040】
他に未溶断の新品ランプユニットがある場合は(ステップS33:Yes)、ステップS15へ戻る。他に未溶断の新品ランプユニットがない場合は(ステップS33:No)、投写処理を開始する。
【0041】
ステップS17において、累積点灯時間が寿命時間に到達しておらず、かつ、点灯エラーが発生していない場合は(ステップS17:No)、制御部20は、OSD処理部38へ警告メッセージを生成するよう指示し、投写光学系13が警告メッセージをスクリーンSCに投写する(ステップS19)。ここでは、第1のランプユニット5についての累積点灯時間は1200時間、点灯エラーはなしとなっているため、図4に示す警告メッセージ「交換前のランプは寿命に達しておらず、点灯エラーも発生していません。」を投写する。このように警告メッセージを投写することによって、第1のランプユニット5及び第2のランプユニット6のうち交換する必要のない第1のランプユニット5の方を交換してしまった可能性があることをユーザーに知らせることができる。
【0042】
次に、制御部20は、第1のランプユニット5の他に、寿命時間に到達しているか、または、点灯エラーが発生したランプユニットがあるか否かを判定する(ステップS21)。ここで、本実施形態の各ランプユニットに搭載されているランプの寿命時間を2000時間とする。図2に示すように、第1のランプユニット5の他に、第2のランプユニット6についての累積点灯時間は2100時間、点灯エラーはなしとなっている。すなわち、第2のランプユニット6についての累積点灯時間が寿命時間に到達しているため(ステップS21:Yes)、制御部20は、OSD処理部38へ寿命到達メッセージを生成するよう指示し、投写光学系13が図5に示す寿命到達メッセージ「第2のランプは寿命時間を越えています」をスクリーンSCに投写する(ステップS23)。
【0043】
なお、第2のランプユニット6についての累積点灯時間が寿命時間に到達していないが、点灯エラーが発生していた場合は、例えばエラー発生メッセージ「第2のランプは点灯エラーが発生しています。」をスクリーンSCに投写する。エラー発生メッセージを出力することによって、第2のランプユニット6について点灯エラーが発生していたことをユーザーに知らせることができる。したがって、本来、交換されるべきランプユニットは、点灯エラーが発生していた第2のランプユニット6であったのではないかをユーザーに気付かせることができる。
【0044】
一方、制御部20は、第2のランプユニット6についての累積点灯時間が、寿命時間に到達しておらず、かつ、点灯エラーが発生していないと判定した場合は(ステップS21:No)、寿命確認メッセージを投写させることなくステップS25を実行する。
【0045】
次に、制御部20は、OSD処理部38へ確認メッセージを生成するよう指示し、投写光学系13が図6に示す確認メッセージ「交換したランプは正しいですか?」をスクリーンSCに投写する(ステップS25)。なお、確認メッセージとともに、ユーザーによる確認入力を受け付けるための選択肢「はい」あるいは「いいえ」を投写する。
【0046】
操作信号処理部43を介して、ユーザーから交換確認入力を受け付けると、「はい」を選択する入力であれば(ステップS27:Yes)、制御部20は第1のランプユニット制御部8に対してヒューズを溶断するよう指示し、ランプ情報記憶部31に記憶されている第1のランプユニット5についての累積点灯時間及び点灯エラーの有無をリセットする。第1のランプユニット制御部8は、制御部20からの指示に応じて、新たに装着された新品のランプユニットのヒューズを溶断するとともに、点灯時間カウンターの値をリセットする(ステップS29)。
【0047】
他に未溶断の新品ランプユニットがある場合は(ステップS33:Yes)、ステップS15へ戻る。他に未溶断の新品ランプユニットがない場合は(ステップS33:No)、投写処理を開始する。
【0048】
一方、操作信号処理部43を介して、「いいえ」を選択する入力を受け付けると(ステップS27:No)、制御部20は第1のランプユニット制御部8及び第2のランプユニット制御部9に対して各ランプを消灯するよう指示し、第1のランプユニット制御部8及び第2のランプユニット制御部9が各ランプを消灯する。
【0049】
このように、上記実施形態によれば、新品のランプユニットに交換されても、交換前の第1のランプユニット5についての累積点灯時間が寿命時間に達しておらず、かつ、点灯エラーが発生していなければ、新品のランプユニットの使用について確認メッセージが出力される(ステップS25:図6参照)。図6に示すように、確認メッセージに、交換前の第1のランプユニット5(第1のランプ)の累積点灯時間をリセットする旨のメッセージを含めれば、誤って新品のランプユニットに交換されたことで、寿命時間に達しておらず、かつ、点灯エラーが発生していない第1のランプユニット5についての累積点灯時間がリセットされてしまうことを、ユーザーに知らせることができる。
【0050】
また、図6の確認メッセージによって、誤って新品のランプユニットに交換してしまったことを認識したユーザーは、新品のランプユニットを取り外して元の第1のランプユニット5に戻すことが可能である。上記構成によれば、図6の確認メッセージの出力後に交換後のヒューズを溶断するので(ステップS25、ステップS27:Yes)、新品のランプユニットのヒューズを溶断せずに有効な状態(導通状態)のまま取り外すことができる。
【0051】
また、第1のランプユニット5についての累積点灯時間が寿命時間に達している場合、または、第1のランプユニット5について点灯エラーが発生している場合(ステップS17:Yes)は、新品のランプユニットに交換する必要がある。このような場合には交換後の新品のランプユニットのヒューズを溶断するので(ステップS29)、後に、交換後のランプユニットが新品か否かを判定することができる。このため、累積点灯時間のリセットを正しい時期に行なうことができ、正確な累積点灯時間をカウントすることが可能となる。
【0052】
また、図5の寿命到達メッセージを出力することによって、第2のランプユニット6についての累積点灯時間が寿命時間に達していることをユーザーに知らせることができる。これにより、本来、交換されるべきランプユニットは、既に寿命時間に達している第2のランプユニットであったのではないかをユーザーに気付かせることができる。
【0053】
なお、本実施形態では、2つのランプユニットを搭載したプロジェクターについて説明したが、3つ以上のランプユニットを備えたプロジェクターに本発明を適用することもできる。また、ランプユニットを1つだけ搭載したプロジェクターにも本発明を適用することができる。この場合は、図3のステップS19,ステップS21及びステップS23を除き、ステップS11,ステップS13,ステップS15,ステップS17,ステップS25,ステップS27及びステップS29のみを実行すればよい。
【0054】
また、本実施形態では、ヒューズを溶断し累積点灯時間をリセットするかの判定を、累積点灯時間と点灯エラーの2つの要因に基づいて行なったが、累積点灯時間のみに基づいて判定してもよい。
【0055】
また、本実施形態では、各メッセージをスクリーンSCに投写する構成としたが、プロジェクター1本体に設けた操作パネル44の操作画面等に表示するよう構成してもよい。操作画面に表示させる場合は、ランプを点灯させることなく図3の処理を実行することができる。そして、ランプを点灯しない構成とすれば、本実施形態の第1のヒューズ5a及び第2のヒューズ6aに、所定の温度、例えば50度を超えると溶断する温度ヒューズを採用してもよい。通常、ランプを点灯すると、各ランプユニット5,6内の温度は高温になるため、各ランプが1度でも点灯されると各ヒューズは溶断される。このため、各ランプは、ステップS29において初めて点灯すればよい。
【0056】
また、本実施形態では、警告メッセージ、寿命到達メッセージ及び確認メッセージを、全てスクリーンSCに投写したが、必ずしも投写しなくてもよい。例えば、同様の音声メッセージをスピーカー36から出力してもよい。音声メッセージを出力すれば、ランプが切れていて投写できない場合も、ユーザーにメッセージを伝えることができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、光源からの光を光変調部である液晶ライトバルブ12R,G,Bによって変調し投写する液晶ライトバルブ方式のプロジェクターを例示したが、本発明はその他の方式を採用するプロジェクターにも適用することもできる。具体的には、DMD(Digital Micro mirror Device)を用いた投写方式、所謂、DLP(Digital Light Processing)(登録商標)方式である。すなわち、DLP方式は白色に光るランプの光をレンズで集光してDMDに当て、DMDの個々のミラーがオン状態に傾いているときの光を他のレンズで拡大し、スクリーンに投影する方式であり、本発明はこのような方式のプロジェクターにも適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:プロジェクター、5:第1のランプユニット、6:第2のランプユニット、7:集光部、8:第1のランプユニット制御部、9:第2のランプユニット制御部、12R,G,B:液晶ライトバルブ、13:投写光学系、14:液晶ライトバルブ駆動部、20:制御部、30:入力端子、31:ランプ情報記憶部、32:映像音声処理部、33:フレームメモリー、34:映像処理部、43:操作信号処理部、44:操作パネル、RC:リモコン、SC:スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランプと、ヒューズと、を備えたランプユニットを有するプロジェクターであって、
前記ランプの累積点灯時間を記憶する記憶部と、
前記ヒューズが導通状態か否かを検出し、前記ヒューズが非導通状態であるランプユニットを交換されたランプユニットと判別する検出部と、
前記交換後のランプユニットが備えるヒューズが導通状態であることが検出され、前記交換されたランプユニットのランプの累積点灯時間が前記ランプの寿命時間に達していない場合に、前記交換後のランプユニットの使用について確認メッセージを出力させる使用確認部と、を有することを特徴とするプロジェクター。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクターであって、
前記使用確認部は、前記確認メッセージの出力後、前記交換後のランプユニットの使用についての確認完了の入力を受け付けたことに応じて前記交換後のランプユニットが備えるヒューズを非導通化させることを特徴とするプロジェクター。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロジェクターであって、
前記使用確認部は、前記交換されたランプユニットのランプの累積点灯時間が前記ランプの寿命時間に達している場合に、前記交換後のランプユニットが備えるヒューズを非導通化させることを特徴とするプロジェクター。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のプロジェクターであって、
前記プロジェクターは複数のランプユニットを備え、前記記憶部はランプユニット毎に前記ランプの累積点灯時間を記憶しており、
前記使用確認部は、交換対象となっていない他のランプユニットについて前記ランプの累積点灯時間が寿命時間に達している場合は、前記他のランプユニットについて寿命到達メッセージを出力させることを特徴とするプロジェクター。
【請求項5】
ランプと、ヒューズと、を備えたランプユニットを有するプロジェクターであって、
前記ランプについての累積点灯時間及び点灯エラーの発生の有無を記憶する記憶部と、
前記ヒューズが導通状態か否かを検出し、前記ヒューズが非導通状態であるランプユニットを交換されたランプユニットと判別する検出部と、
前記交換後のランプユニットが備えるヒューズが導通状態であることが検出され、前記交換されたランプユニットのランプの累積点灯時間が前記ランプの寿命時間に達しておらず、かつ、前記点灯エラーが発生していない場合に、前記交換後のランプユニットの使用について確認メッセージを出力させる使用確認部と、を有することを特徴とするプロジェクター。
【請求項6】
請求項5に記載のプロジェクターであって、
前記プロジェクターは複数のランプユニットを備え、前記記憶部はランプユニット毎に前記ランプの累積点灯時間及び前記点灯エラーの発生の有無を記憶しており、
前記使用確認部は、交換対象となっていない他のランプユニットについて前記ランプの累積点灯時間が寿命時間に達している場合は前記他のランプユニットについて寿命到達メッセージを出力させ、前記他のランプユニットについて前記点灯エラーが発生している場合は前記他のランプユニットについてエラー発生メッセージを出力させることを特徴とするプロジェクター。
【請求項7】
ランプとヒューズとを備えたランプユニットと、前記ランプについての累積点灯時間を記憶する記憶部と、を有するプロジェクターの制御方法であって、
前記ヒューズが導通状態か否かを検出し、前記ヒューズが非導通状態であるランプユニットを交換されたランプユニットと判別するステップと、
前記交換後のランプユニットが備えるヒューズが導通状態であることが検出され、前記交換されたランプユニットのランプの累積点灯時間が前記ランプの寿命時間に達していない場合に、前記交換後のランプユニットの使用について確認メッセージを出力するステップと、を含むことを特徴とするプロジェクターの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−158692(P2011−158692A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20011(P2010−20011)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】