説明

ヘッドランプ用LED光源モジュール

【課題】 取り替え可能な安価な構成のヘッドランプ用LED光源モジュールを提供する。
【解決手段】ヘッドランプ用LED光源モジュール1は、単数あるいは複数個のLEDチップを有するLED部2と、LED部を駆動するドライバ部6と、LED部2と熱的に接続されたヒートシンク部3と、ヒートシンク部3を強制的に冷却するアクティブクーリング部4と、LED部2をヘッドライト本体10内の所定の位置に配置するべくヘッドライト本体10に着脱可能に固定されるモジュール筐体5と、ドライバ部6とアクティブクーリング部4とに電力を供給するための電源プラグ7とを有し、これらが一体として構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両用灯具に関し、より詳細には、車両のヘッドランプに取り替え可能に装着されるLED光源モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)を光源として使用したヘッドランプ(LEDヘッドランプ)が一部のハイブリッド車や電気自動車に採用されている。LEDヘッドランプは消費電力が少なくデザイン上の自由度も高いことから、今後大量生産によりコストが下がれば多くの車種に採用される可能性がある。
【0003】
しかし、現状では、車両用のLEDヘッドランプはその光源部を含めてランプ全体が車種ごとに個別に設計される。このことが、LEDヘッドランプのコスト高の要因の一つであり、普及を阻んでいる理由となっている。
【0004】
車種ごとにLEDヘッドランプの個別設計が必要となっている現状での主な理由として、(1)ハロゲンランプやメタルハライドランプの光源部と比較して、LEDに要求される位置精度(特にリフレクタに対する位置の精度)が高精度であり、(2)LEDはその自己発熱による内部温度が自己の最大ジャンクション温度に近くなると光束減少、発光色の変化、輝度の低下、寿命の低下等の不具合を生じるため最大ジャンクション温度以下に冷却される必要があること、を挙げることができる。すなわち、LEDに要求される位置精度の高さと厳しい熱管理の必要性とを両立することが現状では困難であるが故に、車種ごとの個別設計を余儀なくされてきた。
【0005】
従来のLEDヘッドランプの一例として、LEDの支持体にヒートシンクを設けるとともに、そのヒートシンクに臨ませて電動ファンを配置し、その電動ファンによって空気を強制的に循環させることにより、ヒートシンクからの熱の放散を促進して、LEDを強制冷却するようにしたものがある(特許文献1、特許文献2参照)。また、フォグランプなど比較的低光量の車両用灯具においては、LEDを光源に用いた光源バルブを交換可能としたものもある(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-103365号公報
【特許文献2】特開2010-262903号公報
【特許文献3】特開2006-324217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、2に開示された従来のLEDヘッドランプは、LEDを用いた光源部が灯具本体と一体になっているため、光源部を交換する必要が生じた場合、LEDヘッドランプそのものを交換せざるを得ない。また、特許文献3に開示された光源バルブは、光源として低輝度のLEDを使用したものであるため、ヘッドランプ用の光源部としては利用できない。当該光源バルブの光源として、ヘッドランプに要求される光量が得られる高輝度のLEDを用いるには、上述した熱管理の面が問題となる。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、車両のヘッドランプに取り替え可能に装着されるLED光源モジュールを安価な構成で実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のヘッドランプ用LED光源モジュールは、
単数あるいは複数個のLEDチップを有するLED部と、
前記LED部を駆動するドライバ部と、
前記LED部と熱的に接続されたヒートシンク部と、
前記ヒートシンク部を強制的に冷却するアクティブクーリング部と、
前記LED部をヘッドライト本体内の所定の位置に配置するべく当該ヘッドライト本体に着脱可能に固定される基部と、
前記ドライバ部と前記アクティブクーリング部とに電力を供給するための電源プラグとを有し、これらが一体となって構成されているヘッドランプ用LED光源モジュール。
【0010】
このヘッドランプ用LED光源モジュールは、その構成が単純であるため安価に提供することができる。そして、このヘッドランプ用LED光源モジュールは、取り替えが必要となった場合、従来のようにヘッドライト本体ごと取り替える必要はなく、このヘッドランプ用LED光源モジュールだけを取り替えることができる。
【0011】
本発明のヘッドランプ用LED光源モジュールにおいて、前記ヒートシンク部は、前記基部に一体的に連結されたヒートシンク本体と、当該シンク部本体から柱状に突出した熱輸送部とを有し、当該熱輸送部の突端部に前記LED部が設けられていることが望ましい。
この構成によれば、基部をヘッドライト本体に固定することにより、ヒートシンク本体が基部を介してヘッドライト本体に固定されるとともに、ヒートシンクの熱輸送部の突端部に設けられているLED部がヘッドライト本体内の所定の位置に配置される。
【0012】
また、前記LEDチップの順方向電圧と目標電圧とを比較し、両者が一致するように前記アクティブクーリング部を駆動制御することにより、前記LED部のジャンクション温度を基準温度(最大ジャンクション温度よりも低い所定の温度)以下に保つ制御回路を有することが望ましい。
この構成によれば、LEDチップの順方向電圧を制御回路に帰還させ、参照電圧との差を最小化するようにアクティブクーリング部を駆動制御することにより、過冷却による無駄な電力消費を防止し、必要最小限の電力で効率良くLED部を強制冷却することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、取り替え可能なヘッドランプ用LED光源モジュールを安価な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のヘッドランプ用LED光源モジュールをヘッドランプ本体に装着した状態を例示する概念図
【図2】本発明のヘッドランプ用LED光源モジュールの実施形態の一例を示す正面図
【図3】本発明のヘッドランプ用LED光源モジュールをヘッドランプ本体に装着した状態を例示する概念図
【図4】本発明のヘッドランプ用LED光源モジュールをヘッドランプ本体に装着した状態を例示する概念図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1形態例]
図1及び図2により本発明のヘッドランプ用LED光源モジュール(以下、単に「LED光源モジュール」と記す。)の第1形態例について説明する。
図1に例示するヘッドライト本体10は、その大部分がリフレクタ11で構成されている。リフレクタ11は、その前端に大きく開口した光出射口11aを有する。光出射口11aにはレンズ12が装着されている。リフレクタ11は、その内面全体が反射面を成している。リフレクタ11の後端部はドーム状に湾曲しており、LED光源モジュール1から後方に向けて出射された光を、この湾曲した部分の反射面11bで反射して、前方に導くように構成されている。
【0016】
リフレクタ11の底部11cには、LED光源モジュール1を装着するための取付孔11dが設けられている。底部11cは平坦である。取付孔11dは底部11cの後端寄りの位置に設けられている。取付孔11dの周囲には、LED光源モジュール1を着脱自在に装着するための図示しない嵌合部が形成されている。
【0017】
LED光源モジュール1は、図1及び図2に示すように、LED部2と、LED部2と熱的に接続されたヒートシンク部3と、ヒートシンク部3を強制的に冷却するアクティブクーリング部4と、LED部2をヘッドライト本体10内の所定の位置に配置するべくヘッドライト本体10に着脱可能に固定される筒状の基部(以下、「モジュール筐体」と記す。)5と、LED部2を駆動するドライバ部6と、アクティブクーリング部4とドライバ部6とに電力を供給するための電源プラグ7と、を有する。
【0018】
LED部2は、単数あるいは複数個のLEDチップ2aと、LEDチップ2aを支持しているLED支持部2bとからなる。LED部2は少なくとも1000ルーメンの放射性能を有している。また、望ましくは2000ルーメン以下である。
【0019】
ヒートシンク部3は、モジュール筐体5の下端部に一体的に連結された円板状のヒートシンク本体3aと、シンク部本体3aの中央部から上方に突出した円柱状のヒートスラグ(熱輸送部)3bとを有する。ヒートスラグ3bの断面積は100乃至400mm2である。ヒートスラグ3bの突端部(上端部)には、LEDマウント面3cが形成され、LEDマウント面3cの中央部にLED部2が固定して設けられている。この例では、ヒートスラグ3bの端面がLEDマウント面3cになっている。LED部2のLED支持部2bはヒートスラグ3bのLEDマウント面3cと一体化しており、両者間の良好な伝熱性が確保されている。LED支持部2bによるLEDチップ2aの支持角度(LEDチップ2aの光出射面がヒートスラグ3bの軸線と直交する面Sと成す角度)θは、ヘッドライト本体10のリフレクタ11の構造に合わせて選定されている。
【0020】
ヒートシンク本体3aは、モジュール筐体5の下端開口部5aに嵌合させて固定されている。ヒートシンク本体3aの下端部には、ヒートスラグ3bと同軸状に形成された円柱状の突起部3dと、多数の放熱フィン3eとが形成されている。そして、放熱フィン3eに臨ませるようにして、アクティブクーリング部4の筐体4bが突起部3dに固定されている。
【0021】
アクティブクーリング部4は、その筐体4b内に電動ファン4aを内蔵している。電動ファン4aの風量は、ヒートシンクの熱抵抗等の測定結果に基づいて選定される。アクティブクーリング部4には、電動ファン4aによる空気の吸い込み及び送風を良好にするべく十分な容量の空間が設けられている。
【0022】
モジュール筐体5の下端開口部5aはヒートシンク本体3aにより気密に閉塞されている。ドライバ部6は、ヒートシンク本体3aの上面に固定された状態でモジュール筐体5内に収容されている。
モジュール筐体5の上端近傍には環状のフランジ部5bが形成されている。LED光源モジュール1は、LED部2側をヘッドライト本体11内に挿入し、このフランジ部5bをヘッドライト本体11の嵌合部に嵌合させることによりヘッドライト本体11に着脱可能に装着される。モジュール筐体5は、LED光源モジュール1の構成要素のうちで最も直径が大きい構成要素であり、その直径は50mm以下である。
【0023】
ヒートスラグ3bは、LED光源モジュール1をヘッドライト本体11に装着したときに、LED部2がリフレクタ11の反射面11bに対して高精度に位置決めして配置されるように、その長さ寸法(ヒートシンク部3からの突出長)が選定されている。
【0024】
以上説明したように、このLED光源モジュール1は、その構成要素であるLED部2、ヒートシンク部3、アクティブクーリング部4、モジュール筐体5、ドライバ部6、及び電源プラグ7がすべて一体となって構成され、且つ、ヘッドライト本体11に着脱自在に構成されているので、これを取り替える必要が生じた場合、従来のようにヘッドライト本体10ごと取り替える必要はなく、LED光源モジュール1だけを取り替えることができる。また、このLED光源モジュール1は、その構成が単純であるため安価に提供することができる。
【0025】
したがって、このLED光源モジュール1をLEDヘッドランプの光源部に使用することにより、LEDを用いた光源部だけを取り替えることができなかった従来のLEDヘッドランプと比較して、LEDヘッドランプ自体のコストを大幅に引き下げることができる。また、光源部を取り外すことができることにより、LEDヘッドランプのメンテナンス性が大幅に向上する。このLED光源モジュール1は、LEDヘッドランプを搭載した車両の一部として販売される市場のみならず、車両の販売後、その交換用部品として販売される市場においても流通可能である。そして、4輪車両向けヘッドランプ用としてだけでなく、2輪車両向けヘッドランプ用としても使用可能である。
【0026】
また、このLED光源モジュール1は、LED部2を強制冷却する手段として、LED部2からの熱を奪い取るヒートシンク部3と、ヒートシンク部3を冷却するアクティブクーリング部4を有しているので、排熱システムを別途要しない。アクティブクーリング部4は、ヒートシンク部3を送風により冷却する電動ファン4aを備え、1000ルーメンの放射性能を有するLED部2のジャンクション温度をLED部2が安定動作可能な基準温度(約150℃)以下に保つことができる。したがって、このLED光源モジュール1は、交換可能でありながら、1つのモジュールでヘッドランプを設計する場合に要求される1000ルーメンの放射性能を発揮する。
【0027】
このLED光源モジュール1によれば、車両のヘッドランプに要求される1灯当たり最低1000ルーメンという光量を1つの光源モジュールで満足できる。したがって、要求される光量を満足するために複数の光源モジュールを組み合わせてヘッドランプを設計する必要がない。このLED光源モジュール1をヘッドランプ用の汎用光源として使用することにより、車種ごとのヘッドランプの個別設計が不要となる。
【0028】
[第2形態例]
つぎに、図3を参照して第2形態例について説明する。図1と共通する構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図3に例示するヘッドライト本体20のリフレクタ21は、その前端に大きく開口した光出射口21aを有し、その後端に、LED光源モジュール1を装着するための取付孔21dを有している。光出射口21aにはレンズ22が装着されている。取付孔21dには、LED光源モジュール1を後方から着脱自在に装着するための図示しない嵌合部が形成されている。LED光源モジュール1は、LED部2を支持しているヒートスラグ3bの軸線をレンズ22の光軸と一致させてヘッドライト本体20に取り付けられている。ヒートスラグ3bのLEDマウント面3cには、図1の例とはLEDチップ2aの支持角度θが異なるLED部2が取り付けられている。このLED光源モジュール1におけるLEDチップ2aの支持角度θは略0度である。すなわち、LEDチップ2aの光出射面はリフレクタ21の光軸と直交している。この構成によれば、LED部2からの出射光の大部分をリフレクタ21で反射させることなく、直接レンズ12を通して前方に出射することができる。なお、この構成の場合、路面上での配光パターンを制御するために、LED部2とレンズ22との間に図示しない遮蔽板(配光制御板)が設けられることもある。
【0030】
[第3形態例]
つぎに、図4を参照して第3形態例について説明する。ここでも図1と共通する構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
この例のLED光源モジュール1は、LEDチップ2aの順方向電圧と目標電圧Vrefとを比較し、両者が一致するようにアクティブクーリング部4を駆動制御することにより、LED部2のジャンクション温度を基準温度(最大ジャンクション温度よりも低い所定の温度)以下に保つ制御回路8を備えている。制御回路8には、LED部2の電圧−温度特性に応じた制御プログラムが組み込まれている。LEDを含むダイオードは、その温度Tが高くなるとその順方向電圧Vdが小さくなる特性を持っているので、LEDチップ2aの順方向電圧Vdを制御回路8に帰還させ、参照電圧Vrefとの差を最小化するようにアクティブクーリング部4を駆動制御することにより、過冷却による無駄な電力消費を防止し、必要最小限の電力で効率良くLED部2を強制冷却することができる。
【0031】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、各部の形状・寸法や各要素の具体的構成は適宜変更可能である。
たとえば、上述の例では、アクティブクーリング部4が冷却手段として電動ファン4aを備えているが、電動ファン4aの代わりに熱電素子を冷却手段に用いることも可能である。また、電動ファン4aと熱電素子を併用することも可能である。
【0032】
また、上記の例では、LED支持部2bを変更することによりLEDチップ2aの支持角度θを変更しているが、ヒートスラグ3bのLEDマウント面3cの角度(ヒートスラグ3bの軸線に対する角度)を変更することにより、LEDチップ2aの支持角度θを変更するようにしてもよい。
【0033】
また、ヒートシンク部3やモジュール筐体5の外形は必ずしも円筒形である必要は無く、直方体であっても、あるいはそれ以外の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ヘッドランプ用LED光源モジュール
2 LED部
2a LEDチップ
2b LED支持部
3 ヒートシンク部
3a ヒートシンク本体
3b ヒートスラグ(熱輸送部)
4 アクティブクーリング部
4a 電動ファン
5 モジュール筐体(基部)
5b フランジ部
6 ドライバ部
7 電源プラグ
8 制御回路
10 ヘッドライト本体
11 リフレクタ
11b 反射面
11d 取付孔
12 レンズ
20 ヘッドライト本体
21 リフレクタ
21d 取付孔
22 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単数あるいは複数個のLEDチップを有するLED部と、
前記LED部を駆動するドライバ部と、
前記LED部と熱的に接続されたヒートシンク部と、
前記ヒートシンク部を強制的に冷却するアクティブクーリング部と、
前記LED部をヘッドライト本体内の所定の位置に配置するべく当該ヘッドライト本体に着脱可能に固定される基部と、
前記ドライバ部と前記アクティブクーリング部とに電力を供給するための電源プラグとを有し、これらが一体として構成されているヘッドランプ用LED光源モジュール。
【請求項2】
前記ヒートシンク部は、前記基部に一体的に連結されたヒートシンク本体と、当該シンク部本体から柱状に突出した熱輸送部とを有し、当該熱輸送部の突端部に前記LED部が設けられている、請求項1記載のヘッドランプ用LED光源モジュール。
【請求項3】
前記LEDチップの順方向電圧と目標電圧とを比較し、両者の差がなくなるように前記アクティブクーリング部を駆動制御することにより、前記LED部のジャンクション温度を基準温度以下に保つ制御回路を有する、請求項1又は2記載のヘッドランプ用LED光源モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−89425(P2013−89425A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228248(P2011−228248)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(512288684)オスラム ゲーエムベーハー (28)
【氏名又は名称原語表記】OSRAM GmbH
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Str. 1, D−81543 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】