説明

ヘテロ二官能性のポリエチレングリコール試薬

本発明は、ヘテロ二官能性のポリエチレングリコール試薬、それらの製造方法およびそれらの使用方法に関する。本発明のヘテロ二官能性PEG試薬は、異なる相対反応性を有し得る2つの官能基を提供する。いくつかの実施形態において、一方の官能基は、他方よりも、反応性がより高くてもよい。他の実施形態において、一方の官能基は、特定の標的分子を優先してもよいし、または特定の標的分子に対して選択的であってさえもよい。他の実施形態において、一方の官能基は、特定の反応条件下で、標的と共有結合を選択的に形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2007年11月12日に出願された米国仮特許出願第61/002,853号の利益を主張し、この米国仮特許出願は、本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、ヘテロ二官能性のポリエチレングリコール試薬、それらの製造方法およびそれらの使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ポリエチレングリコール(PEG)は、不活性の、無毒性の水溶性ポリマーである。これらおよび他の所望される特性の結果として、PEGの誘導体は、薬学的、生物医学的および生物工学的な種々の適用において試薬としての用途を見出している。
【0004】
しかしながら、改変されていないPEGそのものは、その末端の水酸基の限定的な反応性に起因して、試薬として有用ではない。そのため、有用なPEG試薬を製造するためには、その末端の水酸基の1つは、より反応性のある基へと改変されなければならない。従来技術の方法によると、新規の官能基が、1つの末端の水酸基に、以下のように適用された:まず、他方の末端の水酸基をアルキルエーテルまたはその別の非反応性官能基としてブロッキングし、そして、次に、ブロッキングされていない末端の水酸基を活性化カルボキシレートなどの求電子中心に変換する。あるいは、官能基が、1つの末端の水酸基に適用されて、そして、改変されていないPEGと、一官能化PEGと、二官能化PEGとの混合物から、一官能化PEGが単離された(非特許文献1;非特許文献2;Snowら,特許文献1;Shadleら,特許文献2)。
【0005】
二官能性PEG試薬は、反応基をPEG分子の両方の端に含む。これらの二官能性試薬は、PEGの両末端に、同じ反応基を含んでいてもよいし(すなわち、ホモ二官能性PEG試薬)、または異なる基を含んでいてもよい(すなわち、ヘテロ二官能性PEG試薬)。ヘテロ二官能性PEG試薬は、ホモ二官能性PEG試薬よりも利点を提供し、それは、ヘテロ二官能性PEG試薬の各官能基が、各末端において異なる分子と共有結合を形成し得るという点である。そのような反応において、その別個の2つの分子がPEGポリマーによって結合された状態となる。しかしながら、二官能性試薬の合成は複雑であり得、特に、PEG分子の各端に異なる官能基が所望される場合(すなわち、ヘテロ二官能性試薬)は複雑であり得る。
【0006】
そのため、新規のヘテロ二官能性PEG試薬およびそのような試薬の製造方法を開発する重要な必要性が残っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,414,135号明細書
【特許文献2】米国特許第4,847,325号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Morpurgoら,Bioconjugate Chem.,7,363−368,(1996)
【非特許文献2】Zalipskyら,J.Bioactive and Compatible Polymers,5,227−231,(1990)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、新規のクラスのヘテロ二官能性PEG試薬を提供する。本発明のヘテロ二官能性PEG試薬は、従来技術よりも上述の利点およびその他の利点を有する。本発明のこれらの試薬は、新規かつ有用な官能基の組合せを含み、そして、1つ以上の好適な標的分子と反応し得る。そのような反応の際、上記PEGは1つ以上の標的分子に共有結合される。
【0010】
本発明のヘテロ二官能性PEG試薬は、異なる相対反応性を有し得る2つの官能基を提供する。いくつかの実施形態において、一方の官能基は、他方よりも、反応性がより高くてもよい。他の実施形態において、一方の官能基は、特定の標的分子を優先してもよいし、または特定の標的分子に対して選択的であってさえもよい。他の実施形態において、一方の官能基は、特定の反応条件下で、標的と共有結合を選択的に形成してもよい。
【0011】
上記の官能基間の反応性の違いが2つの異なる分子の結合を促進する。その理由は、第二の官能基の存在している中においででさえも、第一の官能基が第一の標的分子と反応し得て、そして結合を形成し得るためである。その後に、異なる相対反応性を有する第二の官能基が第二の標的分子とその次に反応し得て、そして結合を形成し得る。
【0012】
1つの局面において、本発明は式(I)
【0013】
【化1】

の化合物を含む試薬を提供し、
式中、
Yは、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、およびC〜Cアルキニレンからなる群より選択され、ここで、Yは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、C〜C14アリール、またはN、N(R)、O、S、およびS(O)からなる群より選択される1つ以上のヘテロ原子を含むC〜C14ヘテロアリールであり、ここで、mは1または2であり、そして、ここで、Rは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニルからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、NH、NH(C〜Cアルキル)、N(C〜Cアルキル)、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、そして、
nは1〜1,500の整数である。
【0014】
化合物(I)の特定の実施形態において、nは好ましくは50〜250の整数である。化合物(I)の特定の実施形態において、Rは、好ましくはフェニル、ピリジル、ピリミジニルまたはナフチルであり、その環は1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換される。化合物(I)の特定の実施形態において、Rは好ましくはフェニルであり、そして、Rはニトロである。
【0015】
別の局面において、本発明は式(II)
【0016】
【化2】

の化合物を含む試薬を提供し、
式中、Rは、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニルであり、そして
nは1〜1,500の整数である。
【0017】
化合物(II)の特定の実施形態において、nは好ましくは50〜250の整数である。特定の実施形態において、Rは、好ましくはHまたはメチルである。
【0018】
別の局面において、本発明は式(XIV)
【0019】
【化3】

のヘテロ二官能性PEG化合物の製造方法を提供し、
当該製造方法は、
(a)式(III)
【0020】
【化4】

の化合物をジビニルスルホンと反応させて、
式(XV)
【0021】
【化5】

の化合物を形成する工程、および
(b)エステルカップリング剤が存在する中で、式(XV)の化合物をHO−Rと反応させて、式(XIV)の化合物を形成する工程を含み、
式中、
Yは、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、およびC〜Cアルキニレンからなる群より選択され、ここで、Yは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
はHであり、
は、C〜C14アリール、またはN、N(R)、O、S、S(O)から選択される1つ以上のヘテロ原子を含むC〜C14ヘテロアリールであり、ここで、mは1または2であり、ここで、Rは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニルからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、NH、NH(C〜Cアルキル)、N(C〜Cアルキル)、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、そして
nは1〜1,500の整数である。
【0022】
特定の実施形態において、HO−Rはp−ニトロフェノールであり、そして、nは50〜250の整数である。
【0023】
上記の方法は、遊離酸が存在する中においてさえもジビニルスルホンを化合物(III)と反応させる効率的な方法を、有利に提供する。
【0024】
別の局面において、本発明は式(XIV)
【0025】
【化6】

のヘテロ二官能性PEG化合物の製造方法を提供し、
当該製造方法は、
(a)式(XV)
【0026】
【化7】

の化合物をエステルカップリング剤が存在する中で、R14−Rと反応させて、式(XIV)の化合物を形成する工程を含み、
式中、Y、R、R、Rおよびnは上記と同様に定義され、そして、
14は、HO−、CFC(O)−O−、CHS(O)−O−、CFS(O)−O−、CH(C)S(O)−O−、Cl、BrおよびIからなる群より選択される。
【0027】
特定の実施形態において、R14はCFC(O)−O−であり、Rはフェニルであり、そして、Rはニトロである。
【0028】
別の局面において、本発明は式(VIII)
【0029】
【化8】

の化合物の製造方法を提供し、
当該製造方法は、
(a)式(IV)
【0030】
【化9】

の化合物を活性化基と反応させて、式(IVa)
【0031】
【化10】

の化合物を形成する工程、
(b)式(IVa)の化合物を式(V)
【0032】
【化11】

の化合物と反応させて、
式(VI)
【0033】
【化12】

の化合物を形成する工程、
(c)式(VI)の化合物を酸化させて、式(VII)
【0034】
【化13】

の化合物を形成する工程、および
(d)式(VII)の化合物を脱水化させて、式(VIII)
【0035】
【化14】

の化合物を形成する工程を含み、
式中、
WはC〜Cアルキレンであり、ここで、Wは1つ以上の置換基R11で必要に応じて置換され、
AはC〜C1−アルカニル(alkanyl)−イリデンであり、ここで、Aは1つ以上の置換基R11で必要に応じて置換され、
11は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
Yは、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、およびC〜Cアルキニレンからなる群より選択され、ここで、Yは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、C〜C14アリール、またはN、N(R)、O、S、S(O)から選択される1つ以上のヘテロ原子を含むC〜C14ヘテロアリールであり、ここで、mは1または2であり、もしRが水素ではない場合はRは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、および分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニルからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、NH、NH(C〜Cアルキル)、N(C〜Cアルキル)、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、CHS(O)−O−、CFS(O)−O−、CH(C)S(O)−O−、Cl、BrおよびIからなる群より選択され、
12は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル,ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
13は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル,ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、そして、
nは1〜1,500の整数である。
【0036】
上記の方法は、ビニルスルホンのインサイチュ形成によって、式(IV)の化合物のビニルスルホン付加物を形成させる効率的な方法を有利に提供する。
【0037】
さらなる局面においては、本発明は式(X)
【0038】
【化15】

の化合物の製造方法を提供し、
当該製造方法は、
(a)式(IX)
【0039】
【化16】

の化合物を活性化試薬と反応させて、式(X)の化合物を形成する工程を含み、
式中、
当該活性化試薬はR10−R14を含み、
10は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、C〜C14アリール、またはN、N(R)、O、S、およびS(O)からなる群より選択される1つ以上のヘテロ原子を含むC〜C14ヘテロアリールであり、ここで、mは1または2であり、ここで、R10は1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニルからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、NH、NH(C〜Cアルキル)、N(C〜Cアルキル)、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
14は、HO−、CFC(O)−O−、CHS(O)−O−、CFS(O)−O−、CH(C)S(O)−O−、Cl、BrおよびIからなる群より選択され、
Zは、−CHCHCl、−CHCHBr、−CHCHI、−CHCHOS(O)CH、−CHCHOS(O)CF、−CHCHOS(O)(C)CHおよび−CH=CHからなる群より選択され、
Yは、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、およびC〜Cアルキニレンからなる群より選択され、ここで、Yは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、Rは、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、そして、
nは1〜1,500の整数である。
【0040】
別の局面において、本発明はヘテロ二官能性PEGを使用して式(XVI)
【0041】
【化17】

のベクターを形成する方法を提供し、
当該方法は、本発明のヘテロ二官能性PEGを(1)および(2)と混合する工程を含み、ここで、(1)および(2)は、低分子、たんぱく質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、その他の高分子種、ポリペプチド側鎖もしくは生物学的に関連のある標的部分、またはそれらの断片、二量体、三量体もしくはオリゴマーであり得る。
【0042】
いくつかの実施形態において、(1)および(2)は同時にヘテロ二官能性PEGと混合される。他の実施形態において、(1)および(2)は順次的にヘテロ二官能性PEGと混合される。
【0043】
いくつかの実施形態において、(1)はカチオン性ポリマーである。いくつかの実施形態において、(2)は標的部分である。好ましい実施形態において、(1)はカチオン性ポリマーであり、そして、(2)は標的部分である。
【0044】
別の局面において、本発明はヘテロ二官能性PEGを使用して式(XVII)
【0045】
【化18】

の標的核酸送達のためのビヒクルを形成する方法を提供し、
当該製造方法は、(a)本発明のヘテロ二官能性PEGを(1)および(2)と混合する工程、および(b)核酸と混合する工程を含み、ここで、(1)はカチオン性ポリマーであり、そして、(2)は標的部分である。
【0046】
いくつかの実施形態において、(1)および(2)は同時にヘテロ二官能性PEGと混合される。他の実施形態において、(1)および(2)は順次的にヘテロ二官能性PEGと混合される。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(発明の詳細な説明)
本明細書に記載される本発明が完全に理解されることを可能にするために、以下に詳細な説明が記載されている。本発明は、末端にビニルスルホンおよびエステル官能基を含むヘテロ二官能性PEG試薬を提供する。これらのヘテロ二官能性PEGは、上に記載されたさまざまな理由のため有用である。都合よく、上記ビニルスルホンおよびエステル官能基は、例えばカチオン性ポリマーとの反応がビニルスルホン末端で選択的に起り得るように、異なる反応性を提供する。
【0048】
1つの局面において、本発明は式(I)
【0049】
【化19】

の化合物を含む試薬を提供し、
式中、
Yは、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、およびC〜Cアルキニレンからなる群より選択され、ここで、Yは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、C〜C14アリール、またはN、N(R)、O、S、およびS(O)からなる群より選択される1つ以上のヘテロ原子を含むC〜C14ヘテロアリールであり、ここで、mは1または2であり、そして、ここで、Rは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、および分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニルからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、NH、NH(C〜Cアルキル)、N(C〜Cアルキル)、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、そして
nは1〜1,500の整数である。
【0050】
化合物(I)の特定の実施形態において、nは好ましくは5〜1,000の整数である。特定の実施形態において、nは好ましくは20〜500である。特定の他の実施形態において、nは好ましくは50〜250である。
【0051】
化合物(I)の他の実施形態において、Yは好ましくはメチレンである。特定の実施形態において、Rは、好ましくは、フェニル、ピリミジニル、ピリジルおよびナフチルからなる群より選択され、そして、Rは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換される。特定の実施形態において、Rは、好ましくは、1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換されるフェニルである。特定の実施形態において、Rはフェニルであり、そして、Rはニトロである。
【0052】
化合物(I)の上記PEG試薬およびそれらの前駆体は、下記のスキームIに示されるように、適切な大きさの、官能化されていない(unfunctionalized)、または部分的に官能化されたポリエチレングリコール(PEG)から合成され得る。その個々の反応は、文献中で周知の方法に従って行われてもよい。
【0053】
スキームI
【0054】
【化20】

スキームIにおいて、化合物(IA)は塩基および化合物(ID)と反応され、対応するアルキルエステルPEGが提供される。上記アルキルエステルは、その後に加水分解され、化合物(IB)が提供される。加水分解は、非官能化、二官能化および一官能化のPEGの混合物を生成するかもしれないが、当該一官能化PEGは精製によって単離され得る(例えば、Zalipskyら J. Bioactive and Compatible Polymers,Vol.5,227−231,(1990)を参照のこと)。
【0055】
化合物(IB)は、その次に、塩基が存在する中でジビニルスルホンと反応され、化合物(IC)が提供される。次に、化合物(IC)はR−OHおよびカップリング試薬と反応され、化合物(I)が提供される。
【0056】
あるいは、化合物(I)は2段階で調製される。まず、R−OHが活性化剤と反応され、そして、その次に化合物(IC)と反応されて化合物(I)が形成される。好適な活性化剤としては、メタンスルホニルクロリド、塩化トシル、無水トリフルオロ酢酸およびトリフルオロ酢酸クロリドが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、上記活性化剤はメタンスルホニルクロリドである。特定の実施形態において、上記活性化剤は塩化トシルである。特定の実施形態において、上記活性化剤は無水トリフルオロ酢酸である。特定の実施形態において、上記活性化剤はトリフルオロ酢酸クロリドである。
【0057】
あるいは、化合物(IB)は活性化基と反応され、そして、その次にメルカプトアルキルアルコールと反応される。好適な活性化基としては、メタンスルホニルクロリドおよび塩化トシルが挙げられるが、これらに限定されない。得られるチオエーテルは酸化され、そして脱水化されて、化合物(IC)が提供される。
【0058】
別の局面において、本発明は式(II)
【0059】
【化21】

の化合物を含む試薬を提供し、
式中、Rは、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状の、C〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニルであり、そして、
nは1〜1,500の整数である。
【0060】
特定の実施形態において、RはHである。他の実施形態において、Rはアルキルである。いくつかの実施形態において、Rはメチルである。
【0061】
特定の実施形態において、nは好ましくは5〜1,000の整数である。特定の実施形態において、nは好ましくは20〜500である。特定の他の実施形態において、nは好ましくは50〜250である。
【0062】
化合物(II)のPEG試薬およびそれらの前駆体は、上記のスキームIに示されるように、化合物(I)と同様の方法で合成され得る。
【0063】
特定の実施形態において、下記のスキームIIに示されるように、化合物(II)は化合物(IE)の前駆体である。
【0064】
スキームII
【0065】
【化22】

スキームIIにおいて、化合物(II)は加水分解され、化合物(IIA)が生成される。化合物(IIA)は、その後に、R−OHおよびカップリング試薬と反応され、化合物(IE)が提供される。
【0066】
あるいは、化合物(IE)は2段階で調製される。まず、R−OHが活性化剤と反応され、そして、その次に化合物(IIA)と反応されて化合物(IE)が形成される。好適な活性化剤としては、メタンスルホニルクロリド、塩化トシル、無水トリフルオロ酢酸(trifluoroacetyl anhydride)およびトリフルオロ酢酸クロリドが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、上記活性化剤はメタンスルホニルクロリドである。特定の実施形態において、上記活性化剤は塩化トシルである。特定の実施形態において、上記活性化剤は無水トリフルオロ酢酸(trifluoroacetyl anhydride)である。特定の実施形態において、上記活性化剤はトリフルオロ酢酸クロリドである。
【0067】
別の局面において、本発明はヘテロ二官能性PEG試薬の製造方法を提供する。この方法は、末端にビニルスルホンおよびエステル官能基を含むヘテロ二官能性PEG試薬を効率的に提供するがゆえに、特に有用である。
【0068】
この局面によると、本発明は式(XIV)
【0069】
【化23】

のヘテロ二官能性PEG化合物の製造方法を提供し、
当該製造方法は、
(a)式(III)
【0070】
【化24】

の化合物をジビニルスルホンと反応させて、
式(XV)
【0071】
【化25】

の化合物を形成する工程、および
(b)エステルカップリング剤が存在する中で、式(XV)の化合物をHO−Rと反応させて、式(XIV)の化合物を形成する工程を含み、
式中、
Yは、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、およびC〜Cアルキニレンからなる群より選択され、ここで、Yは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
nは1〜1,500の整数であり、
はHであり、
は、C〜C14アリール、またはN、N(R)、O、S、およびS(O)からなる群より選択される1つ以上のヘテロ原子を含むC〜C14ヘテロアリールであり、ここで、mは1または2であり、ここで、Rは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニルからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、そして、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、NH、NH(C〜Cアルキル)、N(C〜Cアルキル)、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよい。
【0072】
特定の実施形態において、nは好ましくは5〜1,000の整数である。特定の実施形態において、nは好ましくは20〜500の整数である。特定の実施形態において、nは好ましくは50〜250の整数である。
【0073】
特定の実施形態において、Rは、好ましくはフェニル、ピリジル、ピリミジニルまたはナフチルであり、そして、Rは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換される。特定の実施形態において、Rは、好ましくは、1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換されるフェニルである。上記の方法の特定の実施形態において、Rはフェニルであり、そして、Rはニトロである。
【0074】
別の局面において、本発明は式(VIII)
【0075】
【化26】

の化合物の製造方法を提供し、
当該製造方法は、
(a)式(IV)
【0076】
【化27】

の化合物を活性化基と反応させて、式(IVa)
【0077】
【化28】

の化合物を形成する工程、
(b)式(IVa)の化合物を式(V)
【0078】
【化29】

の化合物と反応させて、
式(VI)
【0079】
【化30】

の化合物を形成する工程、
(c)式(VI)の化合物を酸化させて、式(VII)
【0080】
【化31】

の化合物を形成する工程、および
(d)式(VII)の化合物を脱水化させて、式(VIII)
【0081】
【化32】

の化合物を形成する工程を含み、
式中、
WはC〜Cアルキレンであり、ここで、Wは1つ以上の置換基R11で必要に応じて置換され、
AはC〜C1−アルカニル−イリデンであり、ここで、Aは1つ以上の置換基R11で必要に応じて置換され、
11は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
Yは、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、およびC〜Cアルキニレンからなる群より選択され、ここで、Yは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、H、R17、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、C〜C14アリール、またはN、N(R)、O、S、およびS(O)からなる群より選択される1つ以上のヘテロ原子含むC〜C14ヘテロアリールであり、ここで、mは1または2であり、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、もしRがHまたはR17ではない場合はRは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、および分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニルからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、NH、NH(C〜Cアルキル)、N(C〜Cアルキル)、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
17は保護基であり、
は、CHS(O)−O−、CFS(O)−O−、CH(C)S(O)−O−、Cl、BrおよびIからなる群より選択され、
12は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル,ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
13は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル,ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、そして、
nは1〜1,500の整数である。
【0082】
特定の実施形態において、式(IV)の化合物中において、RはHである。他の実施形態において、式(IV)の化合物中において、Rはアルキルである。特定の実施形態において、Rはメチルである。
【0083】
特定の実施形態において、式(IV)の化合物中において、nは好ましくは5〜1,000の整数である。特定の実施形態において、nは好ましくは20〜500の整数である。特定の実施形態において、nはより好ましくは50〜250の整数である。
【0084】
特定の実施形態において、式(IV)の化合物中において、Rは、フェニル、ピリジル、ピリミジニルおよびナフチルからなる群より選択され、そして、Rは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換される。特定のより好ましい実施形態において、Rは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換されるフェニルである。特定のより好ましい実施形態において、Rはフェニルであり、そして、Rはニトロである。
【0085】
特定の実施形態において、式(V)の化合物中において、Wは好ましくはメチレンであり、そして、Aはメチリデンである。
【0086】
式(IVa)の化合物を形成するために、あらゆる好適な活性化基が工程(a)の中で使用されてもよい。好適な活性化剤としては、無水トリフルオロ酢酸、4−メチルベンゾイルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリドおよびメタンスルホニルクロリドが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、上記活性化剤は無水トリフルオロ酢酸である。特定の実施形態において、上記活性化剤はメタンスルホニルクロリドである。
【0087】
式(VII)の化合物を形成するために、あらゆる好適な酸化剤が工程(c)の中で使用されてもよい。好適な酸化剤としては、過酸化水素、m−クロロ過安息香酸、ペルオキソ一硫酸カリウム、二酸化マンガンおよび過マンガン酸カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。上記酸化剤は、他の成分および/またはタングステン酸などの触媒を含んでいてもよい。特定の実施形態において、上記酸化剤は、タングステン酸触媒が存在する中における、過酸化水素である。
【0088】
式(VIII)の化合物を形成するために、あらゆる好適な脱水反応が工程(d)の中で使用されてもよい。好適な脱水反応としては、塩化チオニルおよび塩基を用いた反応、メタンスルホニルクロリドおよび塩基を用いた反応、ならびにバージェス試薬を用いた反応が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、上記反応は塩化チオニルおよび塩基を用いた処理である。特定の実施形態において、上記反応はメタンスルホニルクロリドおよび塩基を用いた処理である。
【0089】
式(VIII)の化合物の製造方法は、式IV、IVa、VI、VIIまたはVIIIの、1つ以上の化合物のカルボン酸基に対して、保護基を付加する工程をさらに含んでいてもよい。当該技術分野に知られている、あらゆる好適な保護基が使用されてもよい。例えば、Greeneら、Protecting Groups in Organic Synthesis(3rd ed.),John Wiley and Sons,New York(1999)を参照のこと。
【0090】
式(VIII)の化合物の製造方法は、式IV,IVa、VI、VIIまたはVIIIの、1つ以上の化合物から、上記保護基を脱保護する工程をさらに含んでいてもよい。上記脱保護する工程の結果、式IV、IVa、VI、VIIまたはVIIの対応する化合物がもたらされる。上記方法は、そのような脱保護する工程を1つよりも多く含んでいてもよい。例えば加水分解といった、当該技術分野に知られているあらゆる好適な脱保護する方法が使用されてもよい。
【0091】
特定の実施形態において、上記の1つ以上の保護の工程は、(a)〜(d)のどれかの工程と並行して行われ得る。例えば、RがHである式IVの化合物は、その遊離酸において保護基の付加によって保護されるとともに、並行してRの付加によって活性化されてもよく、これによってRがR17である式IVaの化合物が製造される。類似して、1つ以上のいずれの脱保護の工程も、(a)〜(d)のどれかの工程と並行して行われ得る。例えば、R3がHではない式IVの化合物は、好適な脱保護剤を用いて脱保護されるとともに、並行してRの付加によって活性化されてもよく、これによってRがHである式IVaの化合物の遊離酸が製造される。
【0092】
別の局面において、本発明は式(X)
【0093】
【化33】

の試薬の製造方法を提供し、
当該製造方法は、
(a)式(IX)
【0094】
【化34】

の化合物を活性化剤R10−R14と反応させて、式(X)の化合物を形成する工程を含み、
式中、
10は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、C〜C14アリール、またはN、N(R)、O、S、およびS(O)からなる群より選択される1つ以上のヘテロ原子を含むC〜C14ヘテロアリールであり、ここで、mは1または2であり、ここで、R10は1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、および分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニルからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、NH、NH(C〜Cアルキル)、N(C〜Cアルキル)、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
14は、HO−、CFC(O)−O−、CHS(O)−O−、CFS(O)−O−、CH(C)S(O)−O−、Cl、BrおよびIからなる群より選択され、
Zは、−CHCHCl、−CHCHBr、−CHCHI、−CHCHOS(O)CH、−CHCHOS(O)CF、−CHCHOS(O)(C)CHおよび−CH=CHからなる群より選択され、
Yは、C〜Cアルキレン、C〜CアルケニレンおよびC〜Cアルキニレンからなる群より選択され、ここで、Yは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、そして、
nは1〜1,500の整数である。
【0095】
特定の実施形態において、Zは−CH=CHである。
【0096】
特定の実施形態において、R10は好ましくはフェニルであり、Rはニトロであり、そして、R14はCFCO−O−である。
【0097】
特定の好ましい実施形態において、R10はフェニルであり、Rはニトロであり、そして、R14はHO−であり、そして、上記活性化試薬はエステルカップリング試薬をさらに含む。
【0098】
特定の実施形態において、nは好ましくは5〜1,000の整数である。特定の実施形態において、nは好ましくは20〜500の整数である。特定の実施形態において、nはより好ましくは50〜250の整数である。
【0099】
特定の他の実施形態において、R10は、フェニル、ピリジル、ピリミジニルおよびナフチルからなる群より選択され、そして、R10は1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換される。特定の好ましい実施形態において、R10は1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換されるフェニルである。特定のより好ましい実施形態において、R10はフェニルであり、そして、Rはニトロである。
【0100】
14がHO−の場合、工程(a)においてあらゆる好適なカップリング剤が使用されてもよい。好適なカップリング試薬としては、DCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)、EDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩)、HATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)、および、HBTU(O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、上記エステルカップリング試薬はDCCである。
【0101】
別の局面において、本発明は式(XIII)
【0102】
【化35】

の化合物の製造方法をさらに提供し、
当該製造方法は、
(a)式(XI)
【0103】
【化36】

の化合物を活性化試薬と反応させて、式(XII)
【0104】
【化37】

の化合物を形成する工程(当該活性化試薬はR10−R14を含む)および、
(b)式(XII)の化合物を脱水化させて式(XIII)の化合物を形成する工程を含み、
式中、
WはC〜Cアルキレンであり、ここで、Wは1つ以上の置換基R11で必要に応じて置換され、
AはC〜C1−アルカニル−イリデンであり、ここで、Aは1つ以上の置換基R11で必要に応じて置換され、
11は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
Yは、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、およびC〜Cアルキニレンからなる群より選択され、ここで、Yは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
10は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、C〜C14アリール、またはN、N(R)、O、S、およびS(O)からなる群より選択される1つ以上のヘテロ原子を含むC〜C14ヘテロアリールであり、ここで、mは1または2であり、ここで、R10は1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、および分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニルからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、NH、NH(C〜Cアルキル)、N(C〜Cアルキル)、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
14は、HO−、CFC(O)−O−、CHS(O)−O−、CFS(O)−O−、CH(C)S(O)−O−、Cl、BrおよびIからなる群より選択され、
12は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル,ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
13は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル,ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より選択され、ここで、当該アルキル、当該アルケニルまたは当該アルキニルの鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、そして
nは1〜1,500の整数である。
【0105】
特定の実施形態において、R10はフェニルであり、Rはニトロであり、そして、R14はCF−CO−O−である。
【0106】
特定の実施形態において、R10はフェニルであり、Rはニトロであり、R14はHO−であり、そして、上記活性化試薬はエステルカップリング試薬をさらに含む。
【0107】
特定の他の実施形態において、R10は、フェニル、ピリジル、ピリミジニルおよびナフチルからなる群より選択され、そして、R10は1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換される。特定の好ましい実施形態において、R10は1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換されるフェニルである。特定のより好ましい実施形態において、R10はフェニルであり、そして、Rはニトロである。
【0108】
特定の実施形態において、Wはメチレンである。特定の実施形態において、Aはメチリデンである。
【0109】
14がHO−の場合、工程(a)においてあらゆる好適なエステル−カップリング剤が使用されてもよい。好適なエステルカップリング試薬としては、DCC(1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド)、EDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩)、HATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)、および、HBTU(O−ベンゾトリアゾール−1−イル−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)が挙げられるが、これらに限定されない。特定のより好ましい実施形態において、上記エステルカップリング試薬はDCCである。
【0110】
あらゆる好適な脱水反応が工程(b)の中で使用されてもよい。好適な脱水反応としては、塩化チオニルおよび塩基を用いた反応、メタンスルホニルクロリドおよび塩基を用いた反応、ならびにバージェス試薬を用いた反応が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、上記反応は塩化チオニルおよび塩基を用いた処理である。特定の実施形態において、上記反応はメタンスルホニルクロリドおよび塩基を用いた処理である。
【0111】
別の局面において、本発明はヘテロ二官能性PEGを使用して式(XVI)
【0112】
【化38】

のベクターを形成する方法を提供し、
当該方法は、本発明のヘテロ二官能性PEGを(1)および(2)と混合する工程を含み、ここで、(1)および(2)は、低分子、たんぱく質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、その他の高分子種、ポリペプチド側鎖もしくは生物学的に関連のある標的部分、またはそれらの断片、二量体、三量体もしくはオリゴマーであり得る。
【0113】
いくつかの実施形態において、(1)および(2)は同時にヘテロ二官能性PEGと混合される。他の実施形態において、(1)および(2)は順次的にヘテロ二官能性PEGと混合される。
【0114】
いくつかの実施形態において、(1)はカチオン性ポリマーである。いくつかの実施形態において、(2)は標的部分である。好ましい実施形態において、(1)はカチオン性ポリマーであり、そして、(2)は標的部分である。
【0115】
別の局面において、本発明はヘテロ二官能性PEGを使用して式(XVII)
【0116】
【化39】

の標的核酸送達のためのビヒクルを形成する方法を提供し、
当該製造方法は、(a)本発明のヘテロ二官能性PEGを(1)および(2)と混合する工程、および(b)核酸と混合する工程を含み、ここで、(1)はカチオン性ポリマーであり、そして、(2)は標的部分である。
【0117】
いくつかの実施形態において、(1)および(2)は同時にヘテロ二官能性PEGと混合される。他の実施形態において、(1)および(2)は順次的にヘテロ二官能性PEGと混合される。
【0118】
いくつかの実施形態において、上記ヘテロ二官能性PEG試薬は式(I)の化合物である。他の実施形態において、上記ヘテロ二官能性PEG試薬は式(XIV)の化合物である。他の実施形態において、上記ヘテロ二官能性PEG試薬は式(VIII)の化合物である。
【0119】
好適な核酸としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:組換えプラスミド;複製欠損性プラスミド;細菌性配列欠損性のミニプラスミド;組換えウイルスゲノム;治療力のあるペプチドもしくはたんぱく質をコードする直鎖状の核酸断片;DNA/RNAのハイブリッド二重鎖;二重鎖DNA;アンチセンスDNAもしくはそれの化学的類似体;5〜200の塩基対を備える二重鎖のDNAもしくはRNAの断片であって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有する(double blunt)ものおよびオーバーハングを有するもの;アンチセンスRNAもしくはその化学的類似体;アンチセンスRNAもしくはリボザイムとして転写される直鎖状ポリヌクレオチド;リボザイム;ならびにウイルスゲノム。
【0120】
特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、15〜30の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、15の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、16の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、17の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、18の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、19の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、20の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、21の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、22の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、23の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、24の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、25の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、26の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、27の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、28の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、29の塩基対を備える。特定の実施形態において、上記の、二重鎖のDNAもしくはRNAであって、平滑末端を有するもの、平滑末端を両端に有するものおよびオーバーハングを有するものは、30の塩基対を備える。
【0121】
ベクターを形成するために有用な好適なカチオン性ポリマーとして、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:直鎖状または分枝状のHK共重合体(ヒスチジンとリジンとの共重合体)、直鎖状または分枝状のポリエチレンイミン(PEI)、ポリリジン、直鎖状または非直鎖状のポリアミドアミン、硫酸プロタミン、ポリブレン(polybrine)、キトサン、ポリメタクリレート、ポリアミン、スペルミン類似体およびあらゆるその他の好適な重合体。
【0122】
好ましいカチオン性ポリマーはHK共重合体である。特定の実施形態において、上記HK共重合体は、ポリヒスチジン、ポリリジン、ヒスチジンおよび/またはリジンのどんな適切な組合せからでも合成される。特定の実施形態において、上記HK共重合体は直鎖状である。特定の好ましい実施形態において、上記HK共重合体は分枝状である。
【0123】
特定の好ましい実施形態において、上記分枝状HK共重合体は、ポリペプチド骨格を備える。好ましくは、上記ポリペプチド骨格は1〜10のアミノ酸残基を備え、そして、より好ましくは2〜5のアミノ酸残基を備える。
【0124】
特定の好ましい実施形態において、上記ポリペプチド骨格はリジンのアミノ酸残基からなる。
【0125】
特定の好ましい実施形態において、上記分枝状HK共重合体の分枝の数は、骨格のアミノ酸残基の数よりも1つ大きい。特定の好ましい実施形態において、上記分枝状HK共重合体は1〜11の分枝を含む。特定のより好ましい実施形態において、上記分枝状HK共重合体は2〜5の分枝を含む。特定のさらにより好ましい実施形態において、上記分枝状HK共重合体は4つの分枝を含む。
【0126】
いくつかの実施形態において、上記分枝状HK共重合体の上記分枝は、10〜100のアミノ酸残基を備える。特定の好ましい実施形態において、上記分枝は、10〜50のアミノ酸残基を備える。特定のより好ましい実施形態において、上記分枝は、15〜25のアミノ酸残基を備える。特定の実施形態において、上記分枝状HK共重合体の上記分枝は、5つのアミノ酸残基の小区画(subsegment)毎に少なくとも3つのヒスチジンのアミノ酸残基を含む。特定の他の実施形態において、上記分枝は、4つのアミノ酸残基の小区画毎に少なくとも3つのヒスチジンのアミノ酸残基を含む。特定の他の実施形態において、上記分枝は、3つのアミノ酸残基の小区画毎に少なくとも2つのヒスチジンのアミノ酸残基を含む。特定の他の実施形態において、上記分枝は、2つのアミノ酸残基の小区画毎に少なくとも1つのヒスチジンのアミノ酸残基を含む。
【0127】
特定の実施形態において、上記HK共重合体の上記分枝の少なくとも50%は、KHHHの配列のユニットを含む。特定の好ましい実施形態において、上記分枝の少なくとも75%は、KHHHの配列のユニットを含む。
【0128】
特定の実施形態において、上記HK共重合体の分枝は、ヒスチジンまたはリジン以外のアミノ酸残基を含む。特定の好ましい実施形態において、上記分枝は、システインのアミノ酸残基を含み、ここで、当該システインはN末端のアミノ酸残基である。
【0129】
特定の実施形態において、好適なHK共重合体としては、米国特許第6,692,911号、米国特許第7,070,807号および米国特許第7,163,695号の中で見出されるものが挙げられるがこれらに限定されず、これら全ては本明細書中で参考として援用される。
【0130】
生物学的に関連のあるあらゆる標的部分が、本発明のベクターの中で使用されてもよい。特定の実施形態において、上記標的部分は、低分子、ポリペプチド、ペプチド、たんぱく質、抗体、またはそれらの断片、二量体、三量体もしくはオリゴマーである。好適な生物学的に関連のある低分子性標的部分としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:内皮細胞を標的にするための血管内皮細胞増殖因子、血管病変および腫瘍を標的にするためのFGF2、腫瘍を標的にするためのトランスフェリン、腫瘍標的用のメラニン細胞刺激ホルモン(melanotropin)(アルファMSH)ペプチド、LDL受容体標的用のApoEおよびペプチド、コクサッキーウイルス・アデノウイルス受容体(CAR)発現細胞を標的にするためのフォンヴィレブランド因子およびペプチド、ニューロピリン1を標的にするためのPDlおよびペプチド、EGF受容体発現細胞を標的にするためのEGFおよびペプチド、葉酸受容体を標的にするための葉酸およびリガンド、インテグリン発現細胞を標的にするためのRGDペプチドならびにあらゆる他の好適な標的部分。さらに、同じまたは同様の標的特性を有する、上記の部分のあらゆる断片またはペプチドが、それぞれの標的に対して使用されてもよい。
【0131】
別段定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する分野の普通人または人によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書中に記載されるのと同様または同等の方法および材料を、本発明の実施または試験において使用され得るが、好適な方法および材料が本明細書中において記載されている。それらの材料、方法および実施例は例示に過ぎず、かつ、限定することを意図されていない。本明細書中で言及される、全ての出版物、特許およびその他の文書は、参考としてその全体が援用される。
【0132】
本明細書中を通して、「含む、備える(comprise)」の語または「含む、備える(comprises)」もしくは「含む、備える(comprising)」などの変形は、述べられた完全体(integer)または完全体の群を包含することを意図し、しかし、いずれかの他の完全体または完全体の群を排除することを意図しないのは理解されるであろう。
【0133】
本発明をさらに定義するために、以下の用語および定義が提供される。上記および本明細書を通して使用されるとき、以下の用語は別段示されない限り、以下の意味を有すると理解されるべきである。
【0134】
「アルキル」は、直線状または分枝状の鎖であってもよく、そして、約1つ〜6つの炭素原子を鎖の中に含む、脂肪族炭化水素基を意味する。分枝状とは、メチル、エチルまたはプロピルなどの1つ以上のアルキル基が、直鎖状アルキル鎖に結合されていることを意味する。
【0135】
「アルケニル」は、直線状または分枝状の鎖であってもよく、そして、少なくとも1つの炭素−炭素の二重結合を含む、脂肪族炭化水素基を意味する。分枝状とは、1つ以上の、メチル、エチルまたはプロピルなどの低級アルキル基が直鎖状アルケニル鎖に結合されていることを意味する。
【0136】
「アルキニル」は脂肪族炭化水素基の意味であり、かつ、これは直線状または分枝状の鎖であってもよく、かつ、少なくとも1つの炭素−炭素の三重結合を含む。分枝状とは、1つ以上の、メチル、エチルまたはプロピルなどの低級アルキル基が直鎖状アルキニル鎖に結合されていることを意味する。
【0137】
「アルキレン」は、上記に定義されたアルキル基から水素原子を除くことによって得られる二価のアルキル基を意味する。
【0138】
「アリール」は、共役二重結合を含む多環式または単環式の芳香族環系を意味し、ここで、当該二重結合と関連されているπ電子が、あらゆる関与する孤立電子対、正電荷または負電荷と共役して、2n+2の式を満足し、ここで、nは整数である。アリール基の例としては、フェニルおよびナフタレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0139】
「ヘテロアリール」は、1つ以上の環原子が、炭素以外の、例えば、窒素、酸素もしくは硫黄の単体または組み合わせの元素である、単環式または多環式の芳香族環系を意味する。ヘテロアリールの語幹名の前の、アザ、オキサまたはチアの接頭辞は、それぞれに、少なくとも窒素、酸素または硫黄の原子が環原子として存在することを意味する。好適なヘテロアリール基としては、ピリジン、ピロール(pyrole)、フランおよびチオフェンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
「アルケニレン」は、炭化水素鎖の中に少なくとも1つの不飽和二重結合を含む、2〜10の炭素の、直鎖状または分枝状の二価炭化水素基を意味する。分枝状とは、1つ以上の、メチル、エチルまたはプロピルなどの低級アルキル基が直鎖状アルケニレン鎖に結合されていることを意味する。
【0141】
「アルキニレン」は、炭化水素鎖の中に少なくとも1つの不飽和三重結合を含む、2〜10の炭素の、直鎖状または分枝状の二価炭化水素基を意味する。分枝状とは、1つ以上の、メチル、エチルまたはプロピルなどの低級アルキル基が直鎖状アルキニレン鎖に結合されていることを意味する。
【0142】
「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素の置換基を意味する。
【0143】
「保護基」は、選ばれた官能基の特徴的な化学的性質を一時的にマスクするために、有機合成において使用される基を意味する。本明細書に記載される化合物および方法のための好適な保護基としては、Greene,T.W.ら, Protective Groups in Organic Synthesis,Wiley,N.Y.(1999)などの、標準的なテキストブック中に記載されるものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0144】
「活性化基」は、隣接する炭素原子に対してより表面的な求核置換反応(facial nucleophilic substitution)を可能にする水酸基と結合される部分を意味する。好適な例としては、メタンスルホニル基およびトリフルオロアセテート基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
我々は、本明細書中の上記において、本発明の実施形態をいくつか示したが、我々の基本的構造は、本発明の方法を活用する他の実施形態を提供するために改変され得ることは明らかである。そのため、本発明の範囲は、本明細書で例示されている特定の実施形態ではなく、これに添付される特許請求の範囲によって定義されると理解されるであろう。
【実施例】
【0146】
(実施例1:PEG−3400−メチルエステルの調製)
塩化アセチル(2.50mL、35.16mmol)を250mLのメタノールに添加した。この混合物を5分間攪拌し、そして、その次にPEG−3400−モノカルボン酸(20.01g、5.81mmol)に添加した(Zalipskyら(J.Bioactive and Compatible Polymers,Vol.5,227−231,(1990))の中で調製されるように)。室温で24時間攪拌後、得られた溶液を乾燥するまで濃縮した。残留物を塩化メチレン(15mL)中で溶解し、そして、勢いよく攪拌しながら得られた溶液をエーテル(300mL)に添加した。得られた固体を濾過し、エーテルで洗浄し、そして、減圧下で乾燥して、所望のPEG−3400メチルエステル(18.93g、収率94%)を白色の粉末として産した。
【0147】
(実施例2:PEG−3400メチルエステルメシレートの調製)
実施例1のPEG−3400メチルエステルの生成物(18.93g、5.45mmol)を塩化メチレン(100mL)中で溶解した。ジイソプロピルエチルアミン(3.80mL、21.81mmol)、そして続けてメタンスルホニルクロリド(1.27mL、16.36mmol)を添加した。その反応系(reaction)を室温で18時間攪拌し、その後、それを塩水(90mL)、水(90mL)および6M HCl(20mL)の混合物を用いて分割した。層を分別し、そして水性の層を塩化メチレン(3×60mL)で洗浄した。有機層を一体として、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして約20mLまで濃縮した。迅速に攪拌しながら、得られた物質をエーテル(300mL)中に注いだ。得られた固体を濾過し、エーテルで洗浄し、そして、減圧下で乾燥して、所望の生成物(18.99g、98%)を黄色がかった白色(off white)〜薄茶色の粉末としてもたらした。
【0148】
(実施例3:PEG−3400モノカルボン酸ヒドロキシエチルスルフィドの調製)
実施例2からのPEG−3400メチルエステルメシレート(18.99g、5.19mmol)生成物を、水(150mL)およびメルカプトエタノール(2.92mL、41.55mmol)の混合物に添加した。2M水酸化ナトリウム(20.80mL、41.60mmol)をその後にその混合物に添加した。その混合物を、加熱還流し、そして3時間攪拌し、その後それを室温まで冷却した。塩化ナトリウム(50g)を添加し、そして、6M HClを使用してその混合物を酸性化した。塩化メチレン(3×60mL)を用いてその混合物をその次に洗浄した。有機抽出物を一体として、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして約20mLまで濃縮した。迅速に攪拌しながら、残留物をエーテル(300mL)中に注いだ。得られた固体を濾過し、エーテルで洗浄し、そして、減圧下で乾燥して、所望の生成物(17.76g、収率97%)を白色の粉末としてもたらした。
【0149】
(実施例4:PEG−3400モノカルボン酸ヒドロキシエチルスルホンの調製)
実施例3からのPEG−3400モノカルボン酸メルカプトエタノールの生成物(17.76g、5.04mmol)を水(40mL)の中で溶解した。タングステン酸(1.19g、4.76mmol)、そして続けて水(30mL)を添加した。過酸化水素の30%水溶液(2.06mL)を添加し、そしてその反応系を室温で20時間攪拌した。固体を上記反応系から濾過し、そして塩化ナトリウム(20g)をその濾液中に溶解した。得られた溶液を塩化メチレン(3×60mL)を用いて洗浄した。有機物を一体として、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして約20mLまで濃縮した。迅速に攪拌しながら、残留物をエーテル(300mL)に添加した。得られた固体を濾過し、エーテルで洗浄し、そして、減圧下で乾燥して、所望の生成物(17.65g、収率98%)を生じた。
【0150】
(実施例5:PEG−3400メチルエステルヒドロキシエチルスルホンの調製)
塩化アセチル(2.50mL、35.16mmol)をメタノール(250mL)に添加して、そして、室温で5分間攪拌した。実施例4からのPEG−3400モノカルボン酸ヒドロキシエチルスルホンの生成物(17.65g、4.97mmol)をその次にその混合物に添加した。室温で3日間攪拌後、得られた溶液を乾燥するまで濃縮した。塩化メチレン(20mL)中に残留物を溶解し、そして、迅速に攪拌しながら得られた溶液をエーテル(300mL)に添加した。得られた固体を濾過し、エーテルで洗浄し、そして、減圧下で乾燥して、所望のメチルエステル(17.08g、収率96%)を白色の粉末として産した。
【0151】
(実施例6:PEG−3400メチルエステルビニルスルホンの調製)
実施例5からのPEG−3400メチルエステルヒドロキシエチルスルホンの生成物(17.08g、4.79mmol)を塩化メチレン(115mL)中に溶解した。2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(10.6mg、0.048mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(5.00mL、28.75mmol)を添加し、続けてメタンスルホニルクロリド(1.12mL、14.38mmol)を添加した。その反応系を室温で17時間攪拌し、その後、それを塩水(135mL)、水(135mL)および6M HCl(30mL)の混合物を用いて分割した。層を分別し、そして水性の層を塩化メチレン(3×60mL)で洗浄した。有機抽出物を一体として、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして約20mLまで濃縮した。迅速に攪拌しながら、残留物をエーテル(300mL)中に注いだ。固体を濾過し、エーテルで洗浄し、そして、減圧下で乾燥して、所望の生成物(16.64g、収率98%)を黄色がかった白色〜薄茶色の粉末として生じた。
【0152】
(実施例7:PEG−3400モノカルボン酸ビニルスルホンの調製)
NaOH(HO中に1M、7.04mL)をHO(340mL)に添加して、そして、その希釈したNaOH溶液を実施例6からのメチルエステルビニルスルホンの生成物(16.64g、4.69mmol)に添加した。その反応系を室温で15分間攪拌し、その後、それを6M HClを用いて酸性化した。塩化ナトリウム(96g)をその混合物中に溶解して、そして、その生成物を塩化メチレン(5×60mL)を用いて抽出した。有機抽出物を一体として、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、そして約20mLまで濃縮した。迅速に攪拌しながら、残留物をエーテル(300mL)中に注いだ。固体を濾過し、エーテルで洗浄し、そして、減圧下で乾燥して、所望の生成物(16.00g、収率97%)を黄色がかった白色〜薄茶色の粉末として生じた。
【0153】
(実施例8:PEG−3400 p−ニトロフェニルエステルビニルスルホンの調製(DCC法))
ジシクロヘキシルカルボジイミド(1.40mg、6.80mmol)を塩化メチレン(55mL)中に溶解し、そして、4−ニトロフェノール(2.85g、20.39mmol)を添加した。その混合物を室温で30分間攪拌し、その後、実施例7からのPEG−3400モノカルボン酸ビニルスルホンの生成物(16.00g、4.53mmol)および2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(10.0mg、0.045mmol)を添加した。その反応系を室温で22時間攪拌し、その後、それを酢酸エチル(97mL)で希釈した。得られた沈殿物を濾過し、そしてその濾液を酢酸エチル(50mL)で洗浄した。得られた溶液を約50mLまで濃縮した。得られた沈殿物を濾過し、そして酢酸エチル(20mL)で洗浄した。迅速に攪拌しながら、得られた溶液をエーテル(300mL)中に注いだ。得られた固体を濾過によって収集し、そして、エーテルで洗浄し、そして、減圧下で乾燥した。固体は、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(12.4mg)を含むイソプロピルアルコール(100mL)から再結晶し、所望の生成物(15.87g、収率96%)を黄色がかった白色〜薄茶色の固体として生じた。
【0154】
(実施例9:PEG−3400 p−ニトロフェニルエステルビニルスルホンの調製(トリフルオロアセチルニトロフェノール法))
実施例7に従って調製したPEG−3400モノカルボン酸ビニルスルホンの生成物(528.2mg、0.15mmol)を、五酸化リンを乾燥剤(dessicant)として含む真空デシケーター中で、減圧下で24時間乾燥した。乾燥したPEG−3400モノカルボン酸ビニルスルホン(5.35g、1.51mmol)および2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(3.34mg、0.015mmol)を、無水ピリジン(5.35mL)中に溶解した。トリフルオロアセチルニトロフェノール(1.60g、6.81mmol)を添加し、そして、その反応系を室温で30分間攪拌した。迅速に攪拌しながら、その次にその混合物をエーテル(300mL)中に注いだ。得られた固体を濾過し、エーテルで洗浄し、そして、減圧下で乾燥して、所望の生成物(5.42g、収率98%)を黄色がかった白色〜薄茶色の固体として生じた。
【0155】
(実施例10:PEG−8000 p−ニトロフェニルエステルビニルスルホンの調製)
PEG−8000モノカルボン酸を、基本的にはZalipskyら(J.Bioactive and Compatible Polymers,5:227−231(1990))の中に記載されているように調製した。先に記載の実施例1〜7および実施例9に従って、PEG−8000 p−ニトロフェニルエステルビニルスルホンを調製した。
【0156】
(実施例11:モノカルボン酸ビニルスルホンの調製)
Zalipskyら(J.Bioactive and Compatible Polymers,Vol.5,227−231,(1990))中で調製されるような、PEG−3400−モノカルボン酸(20.0g、5.80mmol)をトルエン(300mL)中で共沸的に乾燥した。その乾燥の工程の間、トルエン(240mL)を蒸留によって除去し、そして、得られた溶液を室温まで冷却した。無水塩化メチレン(600mL)、そして続けて水素化ナトリウム(60%、1.88g、47mmol)を添加した。その反応系を、ヘリウム下で室温で3時間攪拌し、その後、ジビニルスルホン(29.5mL、294mmol)を添加した。その反応系を、ヘリウム下で室温で24〜72時間攪拌し、その後、氷酢酸(5mL)を添加した。不溶性の物質をその次に濾過によって除去し、そして、少量になるまでその濾液を濃縮した。残留物を冷エーテルの中に注いだ。得られた固体を濾過し、減圧下で乾燥し、そして、塩化ナトリウム(5g)を含む水(1000mL)の中に溶解した。得られた溶液を塩化メチレン(3×300mL)で洗浄した。有機抽出物を一体として、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして、濃縮した。残留物を冷エーテルの中に注ぎ、そして、得られた固体を濾過し、そして、冷エーテルで洗浄した。得られた固体を温かいイソプロパノール(50℃〜60℃)の中に溶解し、そして、得られた溶液がオーバーナイトで室温まで冷却させた。得られた固体を濾過によって収集し、冷イソプロパノールで洗浄し、そして、減圧下で乾燥して、粗生成物(10〜14g、収率50%〜70%)をもたらした。
【0157】
DEAE−Sephadex(5g)のカラム(直径1インチ)を四ホウ酸カリウム(10%水溶液)で処理し、続けて、溶離液(eluent)が中性のpHに達するまで水で処理した。粗生成物(4g)を水(35mL)の中に溶解し、そして、低窒素圧の援助とともにカラムに加えた。上記カラムを、溶離液(eluent)がPEG関連物質を含まないことをポリアクリル酸(PAA)検査を用いて決定されるまで、水を用いて溶出した。上記カラムはその次に塩化ナトリウム溶液(8mM水溶液)で溶出し、そして、PAA検査を用いてPEG関連物質が検出されなくなるまで、分画を収集した。所望の生成物を含む分画を、氷酢酸を用いてpH4〜pH5に酸性化し、そして、その生成物を塩化メチレン中に抽出した。その塩化メチレンを無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして、濃縮した。残留物を冷エーテル中に注ぎ、そして、得られた固体を濾過し、そして、減圧下で乾燥して、所望の生成物(2.2g、カラムから55%の収率)を生じた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化40】

(式中、
Yは、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、およびC〜Cアルキニレンからなる群より選択され、ここで、Yは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、該アルキル、該アルケニルまたは該アルキニル鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、C〜C14アリール、またはN、N(R)、O、S、およびS(O)からなる群より選択される1つ以上のヘテロ原子を含むC〜C14ヘテロアリールであり、ここで、mは1または2であり、そして、ここで、Rは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、および分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニルからなる群より選択され、ここで、該アルキル、該アルケニルまたは該アルキニル鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、NH、NH(C〜Cアルキル)、N(C〜Cアルキル)、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、該アルキル、該アルケニルまたは該アルキニル鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、そして
nは1〜1,500の整数である)
の化合物を含む、試薬。
【請求項2】
nは5〜1,000の整数である、請求項1に記載の試薬。
【請求項3】
nは20〜500の整数である、請求項2に記載の試薬。
【請求項4】
nは50〜250の整数である、請求項3に記載の試薬。
【請求項5】
Yはメチレンである、請求項1に記載の試薬。
【請求項6】
は、フェニル、ピリジル、ピリミジニルおよびナフチルからなる群より選択される、請求項1に記載の試薬。
【請求項7】
はフェニルである、請求項1に記載の試薬。
【請求項8】
はフェニルであり、そして、Rはニトロである、請求項1に記載の試薬。
【請求項9】
式(VIII)
【化41】

の化合物の製造方法であって、
該方法は、
(a)式(IV)
【化42】

の化合物を活性化基と反応させて、式(IVa)
【化43】

の化合物を形成する工程、
(b)式(IVa)の化合物を式(V)
【化44】

の化合物と反応させて、式(VI)
【化45】

の化合物を形成する工程、
(c)式(VI)の化合物を酸化させて、式(VII)
【化46】

の化合物を形成する工程、および
(d)式(VII)の化合物を脱水化させて、式(VIII)の化合物を形成する工程を含み、
式中、
Wは、C〜Cアルキレンであり、これは1つ以上の置換基R11で必要に応じて置換され、
AはC〜C1−アルカニル−イリデンであり、これは1つ以上の置換基R11で必要に応じて置換され、
11は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、該アルキル、該アルケニルまたは該アルキニル鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
Yは、C〜Cアルキレン、C〜Cアルケニレン、およびC〜Cアルキニレンからなる群より選択され、ここで、Yは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、該アルキル、該アルケニルまたは該アルキニル鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、C〜C14アリール、またはN、N(R)、O、S、およびS(O)からなる群より選択される1つ以上のヘテロ原子を含むC〜C14ヘテロアリールであり、ここで、mは1または2であり、そして、ここで、Rは1つ以上の置換基Rで必要に応じて置換され、
は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、および分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニルからなる群より選択され、ここで、該アルキル、該アルケニルまたは該アルキニル鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル、ヒドロキシ、NH、NH(C〜Cアルキル)、N(C〜Cアルキル)、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より独立に選択され、ここで、該アルキル、該アルケニルまたは該アルキニル鎖の中の1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられてもよく、
は、CHS(O)−O−、CFS(O)−O−、CH(C)S(O)−O−、Cl、BrおよびIからなる群より選択され、
12は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル,ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より選択され、ここで、1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられ得て、
13は、H、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルケニル、分枝状または直鎖状のC〜Cアルキニル,ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、COH、CO(C〜Cアルキル)、CONH、CONH(C〜Cアルキル)、CON(C〜Cアルキル)、ニトロ、シアノおよびハロからなる群より選択され、ここで、1つ以上の水素は1つ以上のフッ素で置き換えられ得て、そして、
nは1〜1,500の整数である、方法。
【請求項10】
Wはメチレンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Aはメチリデンである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記活性化の工程(a)は、式(IV)の化合物をメタンスルホニルクロリドおよび塩基と反応させる工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記酸化剤は過酸化水素を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記脱水化の工程(d)は、式(VII)の化合物を塩化チオニルおよび塩基と反応させる工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記脱水化の工程(d)は、式(VII)の化合物をメタンスルホニルクロリドおよび塩基と反応させる工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
nは5〜1,000の整数である、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
nは20〜500の整数である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
nは50〜250の整数である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
はHである、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
はメチルである、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
は、フェニル、ピリジル、ピリミジニルおよびナフチルからなる群より選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
はフェニルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
はフェニルであり、そして、Rはニトロである、請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2011−504463(P2011−504463A)
【公表日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533130(P2010−533130)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/012782
【国際公開番号】WO2009/064459
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(509173993)イントラダイム コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】