説明

ヘリカルアンテナ

【課題】損失性の高い絶縁体材料にて形成されてはいるが、アンテナの特性劣化を極力抑えた支持部材を適用したヘリカルアンテナを得る。
【解決手段】絶縁体フィルム3よりなる筒状体と、前記筒状体の周囲にらせん状に巻かれた線状導体よりなるヘリカル素子4a〜4dと、前記筒状体の一端側に筒状体の伸長方向に垂直となるように配置された地導体板1と、前記地導体板側に設けられた前記各ヘリカル素子への給電端子2と、前記筒状体の内部に配置された絶縁体でなる支持部材11とを備え、前記支持部材11は、前記筒状体の内側直径と等しい直径を持ち、かつ前記地導体板表面に接するように配置されて、前記地導体板に固定される円盤状部位11bを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヘリカルアンテナに関し、特に、ヘリカルアンテナの形状保持と特性劣化を防ぐものである。
【背景技術】
【0002】
ヘリカルアンテナは、容易な構成で円偏波を放射する線状アンテナとして良く知られており、例えば、衛星通信での衛星搭載用、あるいは地上局用、移動体無線端末用など各種用途で利用されている。このヘリカルアンテナの放射部分の概略構造は、らせん状に巻かれた線状導体であり、巻き軸に対して直交する面内(方位方向)で略無指向性の放射が得られる。巻き線を複数のN個とし、巻き軸に対して回転対称に等間隔に配置し、2π/Nの位相差を与えることにより、前記面内でより対称性の良い放射特性を実現できる。このため、ヘリカルアンテナ自体の方位方向での向きに関係なく、良好な通信を維持できる。
【0003】
ところで、特に上記のように多線巻きのヘリカルアンテナを製作する場合、製造誤差、軽量化の観点から、例えば特許文献1に記載のように、エッチングなどで既に線状導体の巻き線(これをヘリカル素子と呼ぶことにする)が構成された絶縁体フィルムを筒状に巻いた構造が適用される。軽量化のためには、絶縁体フィルムは非常に薄い厚さのものを適用するのが一般的である。
【0004】
このため、厳しい環境下で適用する場合、絶縁体フィルムだけでは筒状の形状を維持することが困難となる可能性がある。特に、移動体端末や宇宙で適用の場合は、移動時や打ち上げ時に発生する振動に耐える強度な構造が必要となる。一般的に、特許文献1に記載のように絶縁体フィルム構成のヘリカルアンテナには、円筒状の絶縁体支持部材をフィルム円筒内に挿入して形状保持する方法が取られる。
【0005】
この支持部材を構成する材料は強固なものが求められるが、強固である場合、概して損失性の高いものとなる。例えば、ガラスエポキシ材の適用が考えられるが、これを筒状支持部材に用いると、ヘリカルアンテナ内部に損失性絶縁体が挿入されることとなり、アンテナの特性が設計値からずれ、特性劣化を引き起こすことが懸念される。
【0006】
なお、上記のように多線巻きヘリカルアンテナでなく、単線巻きヘリカルアンテナも薄厚絶縁体フィルムにて構成する場合には、その形状保持のために支持部材は必要である。このため、上記のように筒状支持部材であれば、アンテナ特性は影響を受けることとなる。
【0007】
【特許文献1】特開平9−326627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、非常に薄い絶縁体フィルム上に線状導体を形成し、それを筒状に巻いて構成されたヘリカルアンテナでは、厳しい環境下において形状保持のためには絶縁体支持部材が必要である。この支持部材は強固であるが故に損失性の高いものとなる。これを従来のように筒状とした場合、ヘリカルアンテナ内部全域に充填されていることと同様となるため、アンテナ特性に与える影響は大きく、特性劣化に繋がりかねない。そこで、筒状のフィルム形状を保持するために強固でありながら、アンテナ特性に及ぼす影響の小さい支持部材の形状が求められている。
【0009】
この発明は前記のような課題を解決するためになされたもので、損失性の高い絶縁体材料にて形成されてはいるが、アンテナの特性劣化を極力抑えた支持部材を適用したヘリカルアンテナを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係るヘリカルアンテナは、絶縁体フィルムよりなる筒状体と、前記筒状体の周囲にらせん状に巻かれた線状導体よりなるヘリカル素子と、前記筒状体の一端側に筒状体の伸長方向に垂直となるように配置された地導体板と、前記地導体板側に設けられた前記各ヘリカル素子への給電端子と、前記筒状体の内部に配置された絶縁体でなる支持部材とを備え、前記支持部材は、前記筒状体の内側直径と等しい直径を持ち、かつ前記地導体板表面に接するように配置されて、前記地導体板に固定される円盤状部位を有することを特徴とする。
【0011】
また、前記支持部材は、前記筒状体の内側直径より小さい直径を持ち、前記筒状体の軸線方向に伸長した軸棒と、前記筒状体の内側直径と等しい直径を持ち、前記軸棒を中心に配した複数の円盤状部位とを有し、前記地導体板に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、損失性の高い絶縁体材料にて形成されてはいるが、アンテナの特性劣化を極力抑えた支持部材を適用したヘリカルアンテナを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に説明する実施の形態では、送信にも受信にも対応できるヘリカルアンテナ構造とし、動作説明などは送信系を想定して述べていく。
【0014】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るヘリカルアンテナの概略構成を示す図である。ここでは、方位方向で略無指向性の放射が得られる、対称性のある最も一般的なヘリカル構造として、4線巻きヘリカルアンテナを例に図1を参照して説明する。
【0015】
図1において、地導体板1は、ヘリカルアンテナの固定及びヘリカル給電回路(図示せず)の装荷のために用いる。ヘリカル給電回路は、通例、分配回路部および整合回路部からなり、例えば誘電体基板上にエッチングにて形成されたものとなる。ヘリカル給電回路とヘリカルアンテナとは給電端子2により繋がれる。給電回路が地導体板1の裏面側に装荷されることを想定した場合、給電端子2の形状は、例えば同軸構造などが考えられる。もちろん、地導体板1の表面に給電回路を装荷する構造も考えられるが、放射波の一部が給電回路に到達し、不要共振や動作不良を起こすことも懸念される。
【0016】
そこで、ここでは、給電回路は地導体板1の裏面側に装荷されるとして説明を続ける。4線巻きヘリカルということで、給電端子2として、ここでは端子2a〜2dが設けられている。容易に折り曲げることが可能な薄い厚さの絶縁体フィルム3よりなる筒状体の周囲に、らせん状に巻かれたエッチング加工等により製造された線状導体のヘリカル素子4a〜4dが互いに等間隔で、かつ関軸方向に対して回転対称に配列されており、これら4つのヘリカル素子4a〜4dは、地導体板1とは逆となる筒状体端部が開放端となりヘリカルアンテナのヘリカル放射部4となる。前述した地導体板1は、絶縁体フィルム3よりなる筒状体の一端側に筒状体の伸長方向に垂直となるように配置され、各ヘリカル素子4a〜4dへの給電端子2(端子2a〜2d)は、地導体板1側に設けられる。
【0017】
さらに、図1に示すヘリカルアンテナ5の絶縁体フィルム3よりなる筒状体の内部には、所望の強度を持つ絶縁体の支持部材11が挿入された形で配置されている。この支持部材11は、筒状体の内側直径より小さい直径を持ち、筒状体の軸線方向に伸長した軸棒11aと、筒状体の内側直径と等しい直径を持ち、軸棒11aをその中心に配した円盤状部位11bとで構成され、これが絶縁体フィルム3に接することで、筒状形状を保持する。支持部材11の地導体板1への固定は、例えば、図2に示すように、軸棒11aの地導体板1側にネジ穴を切り、地導体板1の裏面側からネジ12を用いて行う。または接着材等を用いて支持部材11を地導体板1へ固定することもできる。図1に示すヘリカルアンテナ5は、地導体板1、給電端子2、の絶縁体フィルム3、ヘリカル放射部4及びヘリカルアンテナ5は、地導体板1、給電端子2、の絶縁体フィルム3及びヘリカル放射部4を備える。
【0018】
次に動作について説明する。図示していないが、地導体板1の裏面に誘電体基板などで給電回路を構成する場合、給電回路の地導体と地導体板1の裏面との導通を取って貼りあわせた構造を取ることが一般的である。このような給電回路から給電端子2を介してヘリカル放射部4を構成する各ヘリカル素子4a〜4dに給電がなされる。すなわち、ヘリカル放射部4の極近傍に給電回路を構成できるので、給電損失を低く抑えることが可能である。また、この給電構造においては、給電回路を構成するストリップ線路とヘリカル各素子とを例えば同軸型の給電端子2で繋ぐ構造となり、ヘリカル放射部4と地導体板1とは強固に固定されていない。
【0019】
そこで、図1に示すように、軸棒11aと円盤状部位11bとで構成される絶縁体の支持部材11を、ヘリカル放射部4の形状保持、さらには地導体板1への固定用に用いる。円盤状部位11bのみ各ヘリカル素子4a〜4dが形成されている絶縁体フィルム3に接触している構造を取ることで、損失性の高い絶縁体材料の影響は軽減され、ヘリカルアンテナ5の特性劣化を防げる特徴を持つ。
【0020】
各ヘリカル素子4a〜4dの長さが長い、すなわち、ヘリカル放射部4の高さが高い場合には、円盤状部位11bを複数個設けた支持部材11とすることで、特性劣化を防ぎつつヘリカルアンテナ形状を保持できる。
【0021】
ところで、各ヘリカル素子4a〜4dは、給電回路の働きにより等振幅で、位相差がπ/2となるように励振されるが、その位相差の与える方向によって、ヘリカル放射部4からの放射機構が異なる。
【0022】
まず、地導体板1側からみてヘリカル素子4a〜4dの巻いている方向に沿って位相をπ/2進める場合、最初、各ヘリカル素子を上方に向かって信号が伝わるときには、ヘリカル放射部4からの放射はない。すなわち、ヘリカル素子4aとヘリカル素子4c、およびヘリカル素子4bとヘリカル素子4dとがそれぞれ平行2線を形成しているのと等価である。これを以後伝送モードと呼ぶこととし、その詳細を後述する。その後、各ヘリカル素子先端部(開放端)にて全反射(位相は同相)した信号は、下方(地導体板1側)に向かうにつれてバックファイア放射しながら徐々に減衰していく。すなわち、ヘリカルアンテナ5としては地導体板1側から給電され、エンドファイア放射の形態となる。
【0023】
一方、地導体板1側からみてヘリカル素子4a〜4dの巻いている方向に沿って位相をπ/2遅らす場合は、各信号がヘリカル素子に沿って上方に伝わる際にバックファイア放射しながら、徐々に減衰していく。すなわち、前者とは放射方向が逆となることに注意する。
【0024】
前者の放射機構の場合、伝送モードにより各ヘリカル素子4a〜4dの先端部(開放端)まで伝わった信号は、そこで全反射した後、放射しながら下方(地導体板1側)に進むので、ヘリカル放射部4内で定在波的な振る舞いをみせる。
【0025】
図3は、筒状に巻く前の絶縁体フィルム3を示しており、いわば、図1に示すヘリカル放射部4の展開図である。図3において、21aはヘリカル素子4aとヘリカル素子4cとから構成される平行2線、21bはヘリカル素子4bとヘリカル素子4dとから構成される平行2線である。このように平行2線とみなせるのは、ヘリカル素子4aとヘリカル素子4cなどのように対向するヘリカル素子間の励振位相差がπのためである。各ヘリカル素子4a〜4dが先端部で開放状態となっており、定在波が生じている際には、開放端にて平行2線21aと21bそれぞれの内部に発生している電界は最大となり、そこから、平行2線に沿い電気長でλ/4地導体板1側の箇所で電界0、以降はλ/2間隔で電界0となる。平行2線内の電界値の大きい箇所に絶縁体を挿入すると、平行2線の特性が変化する。すなわち、ヘリカルアンテナとしても、その特性に影響を及ぼす。このことから、電界が0となる箇所に円盤状部位11bを配置した支持部材11を適用することで、さらにアンテナ特性の劣化を軽減できる。
【0026】
後者の放射機構の場合、各ヘリカル素子4a〜4dに給電された信号は、上方に伝搬しながら放射するので、減衰していく。開放端に到達した際には、減衰しきっていることが理想であるが、所望とする放射特性、あるいはアンテナ設置環境制限から十分にヘリカル素子長さ(ヘリカル放射部4の高さ)を取れないことも想定される。このような場合には、前者より小さいが開放端で全反射を生じ、定在波的な振る舞いがみられる。前者と同様に、開放端にて電界最大、平行2線に沿い電気長でλ/4地導体板1側の箇所で電界0、以降はλ/2間隔で電界0となる。このため、前者と同じく電界0の箇所に円盤状部位11bを設けた支持部材11を形状保持、固定用に適用すればよい。
【0027】
以上をまとめると、放射機構に関わらず、ヘリカル素子端部が開放状態の多線巻きヘリカルアンテナ5では、開放端から平行2線に沿い電気長でλ/4地導体板側(筒状の伸長軸で距離dに相当、図1、図3参照)からλ/2の間隔(同d)で円盤状部位11bを配置した支持部材11を用いることで、特性劣化を防ぐ効果がある。なお、電界が0となる全ての箇所に円盤状部位11bを配置する必要はなく、ヘリカル放射部4の形状保持や地導体板1での固定が可能な範囲で配置個数を任意に選定できる。
【0028】
図4に支持部材11の詳細な形状を示す。図4において、支持部材11の最下部に位置する円盤状部位11bとして、支持部材固定用のネジ穴が設けられた円盤状部位13が備えられ、地導体板1と接続される。ここで、円盤状部位11bは、円盤端部と前記軸棒との接続部とを除いた部分に任意形状の貫通穴を持つ円盤状部位14が備えられる。支持部材11と地導体板1を固定する場合に、ヘリカル放射部4の高さによっては図2に示す構造では強度不足となることも考えられる。その場合には、円盤状部位13を支持部材11の最下部に構成し、地導体板1にネジ止めすることで固定強度をさらに増すことができる(図5参照)。
【0029】
前述したとおり、図1に示すように、地導体板1の裏面に構成された給電回路とヘリカル素子とは給電端子2を介して接続されているので、例えば同軸構造としたときなどは、その接続部分は強度が弱い。このため、筒状とした絶縁体フィルム3の内径と同サイズの円盤状部位13を前記接続部に設けることで、そこを補強できる特徴もある。このため、ヘリカル放射部4の高さが低い場合には、支持部材11として円盤状部位13のみを設けたヘリカル構造としても十分に形状保持の効果はある。
【0030】
また、図4に示すごとく円盤状部位14を用いることで、形状保持機能を維持しつつ、軽量化が図れる特徴がある。また、実際、筒状体内に挿入される支持部材11が体積的に減少することから、損失低減にも寄与する。
【0031】
次に、あるヘリカル素子からみた反射特性測定値の一例を示す。図6は、本実施の形態1の支持部材11を用いた場合と従来の円筒支持部材を用いた場合との比較、図7は、支持部材11あり/なしでの比較を示している。ここで、規格化周波数fは、図7に示す支持部材なしの状態での共振周波数である。両図から明らかなように、従来の円筒支持部材は支持部材なしと比べて大きく特性が変化しているのに対し、支持部材11は、支持部材なしとの差異は非常に小さい。結果として、支持部材11の反射特性に与える影響は小さいことが確認できる。なお、ここで示した反射特性は、アクティブインピーダンスではなく、自己インピーダンスである。多線巻きヘリカルアンテナ5では、給電回路に含まれる整合回路部の設計においてアクティブインピーダンス値が重要と前述したが、自己インピーダンスにおいて支持部材11による影響がないとすれば、アクティブインピーダンスにおいても影響はないと言える。
【0032】
さらに、放射特性の利得の観点から比較した測定値の一例を図8と図9に示す。図8は、本実施の形態1の支持部材11を用いた場合と従来の円筒支持部材を用いた場合との比較、図9は支持部材11あり/なしの比較である。両図において、支持部材なしの方向0における利得にて規格化している。反射特性と同様に、従来の円筒支持部材では、利得低下が生じているが、支持部材11を用いても支持部材なしとほぼ同様の利得が得られている。
【0033】
以上の測定結果では、支持部材11を構成する絶縁体としてガラスエポキシ材を用いており、損失性の高い絶縁体材料を用いても支持部材11を適用することでヘリカルアンテナ5の特性を劣化させないという効果を確認できた。
【0034】
ところで、2線巻きヘリカルアンテナでは、伝送モードを含む放射機構を取りえず、各信号がヘリカル素子に沿って上方に伝わる際にバックファイア放射しながら、徐々に減衰していく。この場合は、放射しきれなかった信号が開放端で全反射を生じ、定在波的な振る舞いをする。開放端にて電界最大、平行2線に沿い電気長でλ/4地導体板1側の箇所で電界0、以降はλ/2間隔で電界0となる。このため、電界0の箇所に円盤状部位11bを設けた支持部材11を形状保持、固定用に適用すればよい。特に、ヘリカル素子長が短い場合には、放射しきれない信号が開放端に多く到達するため、定在波的な振る舞いの度合いが大きくなり、前述してきた支持部材形状、位置の効果が大きくなる。
【0035】
実施の形態2.
以上の実施の形態1では、地導体板1とは逆側の各ヘリカル素子4a〜4dが相互に開放状態となっているヘリカルアンテナ5に関するものであるが、次に、それらヘリカル素子4a〜4dの端部が互いに短絡されたヘリカルアンテナに関して説明する。
【0036】
図10は、この発明の実施の形態2に係るヘリカルアンテナの概略構成を示す図である。ここでは、4線巻きヘリカルアンテナを例に図10を基に説明していく。図10において、図1と重複する部分については、同一符号を付してその説明を省く。筒状に巻かれた絶縁体フィルム3の地導体板1側とは逆の端部を任意の絶縁体フィルムにて塞ぐ。そして、ヘリカル放射部4を構成する各ヘリカル素子4a〜4dを塞いだ絶縁体フィルムを伸長し、相互に交差する点で短絡する。さらに、このヘリカル放射部4の先端部に、円盤状部位31を配置する。つまり、地導体板1とは逆となる筒状体の端部となる位置に、支持部材11の最上部に位置する円盤状部位31を配置するのと等価である。円盤状部位の配置間隔(筒状絶縁体フィルムの軸方向間隔)は図に示すようにdとする。
【0037】
次に動作について説明する。給電回路の配置や給電方法、放射機構等は、実施の形態1の場合と同様であるのでここでは省略する。ヘリカル放射部4の先端部が短絡されているので、例えば、伝送モードを有する放射機構の給電をした場合には、先端部にて各ヘリカル素子上を伝搬してきた信号が全反射する際に位相が反転する。また、ヘリカル素子全長も変ってくるので、各ヘリカル素子給電端からみたアクティブインピーダンスが実施の形態1の場合とは異なる。このことから、給電回路内の整合回路部の設計値も異なる。さらに、伸長した短絡部分からの放射も加味されるので、放射特性も変化すると考える。
【0038】
このようなヘリカル放射部4の先端部が短絡された構造を持つ絶縁体フィルム構成のヘリカルアンテナに用いる支持部材としては、実施の形態1とは異なり、図10に示すように、ヘリカル放射部4の先端部に円盤状部位を配置しても良い。それは、図11のヘリカル放射部4の展開図からもわかるように、ヘリカル放射部4内にて定在波的な振る舞いが生じた場合、平行2線21aと平行2線21b内の電界は先端部で0となり、そこから平行2線に沿い電気長でλ/2下方に進んだ箇所毎で電界が0となる。実施の形態1と同様に、平行2線内の電界値の大きい箇所に絶縁体を挿入すると、平行2線の特性が変化する。すなわち、ヘリカルアンテナとしても、その特性に影響を及ぼす。このため、円盤状部位を電界が0となる箇所に配置することで、ヘリカルアンテナの特性に影響を与えない絶縁体支持部材を構成できる。
【0039】
図10では、円盤状部位がヘリカル放射部4の先端から配置されているが、必ず先端部に配置しなくてはならないということではない。形状保持ができるならば、図11に示す電界が0となる箇所のいずれかに配置すればよい。
【0040】
実施の形態3.
以上の実施の形態1および2では、多線巻きヘリカルアンテナに関するものであるが、ここでは、絶縁体フィルムを筒状に巻いて構成する単線巻きのヘリカルアンテナに関して述べる。
【0041】
図12は、この発明の実施の形態3に係るヘリカルアンテナの概略構成を示す図である。図12において、図1と重複する部分については、同一符号を付してその説明を省略する。新たン符号41は、絶縁体フィルム3上に形成された線状導体によるヘリカル素子である。ヘリカル素子長が短く、共振タイプのヘリカルアンテナにおいては、図13の展開図に示すような電流分布および電圧分布を示す。図13中の42が電流分布であり、ヘリカル素子端部で0(節)、入力部で最大(腹)となり、その間はλ/4毎に節と腹を繰り返す。また、43が電圧分布であり、ヘリカル素子端部で最大、入力部で0となり、その間はλ/4毎に節と腹を繰り返す。この場合、電圧最大点においては、その周囲の電界も大きいため、その位置に絶縁体を設けることは、ヘリカルアンテナの特性劣化に繋がる恐れがある。そこで、支持部材11を構成する円盤状部位11bは電圧0の位置に配置すると、アンテナ特性への影響を低減できる。結局、実施の形態1に示すヘリカル素子端部が互いに開放された多線巻きヘリカルアンテナに設ける支持部材と同じ位置に円盤状部位が配置することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】この発明の実施の形態1に係るヘリカルアンテナの概略構成図である。
【図2】図1に示す支持部材11の地導体板1への固定方法の説明図である。
【図3】図1に示すヘリカル放射部4の展開図である。
【図4】最下部に円盤状部位13を構成した支持部材11の形状を示す図である。
【図5】図4に示す支持部材11を地導体板1にネジ止めすることで固定強度を増すようにした固定方法の説明図である。
【図6】この発明の実施の形態1の支持部材11を用いた場合と従来の円筒支持部材を用いた場合の反射特性の比較を示した図である。
【図7】この発明の実施の形態1の支持部材11あり/なしでの反射特性の比較を示した図である。
【図8】この発明の実施の形態1の支持部材11を用いた場合と従来の円筒支持部材を用いた場合の放射特性の比較を示した図である。
【図9】この発明の実施の形態1の支持部材11あり/なしでの放射特性の比較を示した図である。
【図10】この発明の実施の形態2に係るヘリカルアンテナの概略構成図である。
【図11】図10に示すヘリカル放射部4の展開図である。
【図12】この発明の実施の形態3に係るヘリカルアンテナの概略構成図である。
【図13】図12に示すヘリカル放射部4の展開図である。
【符号の説明】
【0043】
1 地導体板、2 給電端子、2a〜2d 端子、3 絶縁体フィルム、4 ヘリカル放射部、4a〜4d,41 ヘリカル素子、5 ヘリカルアンテナ、11 支持部材、11a 軸棒、11b,13,14,31 円盤状部位、12 ネジ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体フィルムよりなる筒状体と、
前記筒状体の周囲にらせん状に巻かれた線状導体よりなるヘリカル素子と、
前記筒状体の一端側に筒状体の伸長方向に垂直となるように配置された地導体板と、
前記地導体板側に設けられた前記各ヘリカル素子への給電端子と、
前記筒状体の内部に配置された絶縁体でなる支持部材と
を備え、
前記支持部材は、前記筒状体の内側直径と等しい直径を持ち、かつ前記地導体板表面に接するように配置されて、前記地導体板に固定される円盤状部位を有する
ことを特徴とするヘリカルアンテナ。
【請求項2】
絶縁体フィルムよりなる筒状体と、
前記筒状体の周囲にらせん状に巻かれた線状導体よりなるヘリカル素子と、
前記筒状体の一端側に筒状体の伸長方向に垂直となるように配置された地導体板と、
前記地導体板側に設けられた前記各ヘリカル素子への給電端子と、
前記筒状体の内部に配置された絶縁体でなる支持部材と
を備え、
前記支持部材は、前記筒状体の内側直径より小さい直径を持ち、前記筒状体の軸線方向に伸長した軸棒と、前記筒状体の内側直径と等しい直径を持ち、前記軸棒を中心に配した複数の円盤状部位とを有し、前記地導体板に固定される
ことを特徴とするヘリカルアンテナ。
【請求項3】
請求項2に記載のヘリカルアンテナにおいて、
前記複数の円盤状部位は、相互の間隔を、円盤状部位間内のヘリカル素子長が電気的に略半波長と等しくなるように配置した
ことを特徴とするヘリカルアンテナ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のヘリカルアンテナにおいて、
前記複数の円盤状部位のうち最下部の円盤状部位は、前記ヘリカルアンテナの最下部の位置に配置され、前記地導体板に固定される
ことを特徴とするヘリカルアンテナ。
【請求項5】
請求項2から4までのいずれか1項に記載のヘリカルアンテナにおいて、
前記複数の円盤状部位のうち最上部の円盤状部位は、前記筒状体の前記地導体板とは逆の端部からヘリカル素子長が電気的に略1/4波長となる位置に配置される
ことを特徴とするヘリカルアンテナ。
【請求項6】
請求項5に記載のヘリカルアンテナにおいて、
前記ヘリカル素子は、互いに等間隔で、かつ筒軸方向に対して回転対称に配列された複数のヘリカル素子でなり、
前記複数のヘリカル素子は、前記地導体板とは逆となる前記筒状体の端部にて開放となっている
ことを特徴とするヘリカルアンテナ。
【請求項7】
請求項2から4までのいずれか1項に記載のヘリカルアンテナにおいて、
前記地導体板とは逆となる前記筒状体の端部となる位置に、前記支持部材の最上部に位置する円盤状部位を設けた
ことを特徴とするヘリカルアンテナ。
【請求項8】
請求項7に記載のヘリカルアンテナにおいて、
前記ヘリカル素子は、互いに等間隔で、かつ筒軸方向に対して回転対称に配列された複数のヘリカル素子でなり、
前記地導体板とは逆となる前記筒状体の端部にて前記複数のヘリカル素子が互いに短絡となっている
ことを特徴とするヘリカルアンテナ。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載のヘリカルアンテナにおいて、
前記円盤状部位は、任意形状の貫通穴が設けられている
ことを特徴とするヘリカルアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−284228(P2009−284228A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134314(P2008−134314)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】