説明

ベルト型濃縮装置

【課題】 濃縮されて圧密層が形成される汚泥下層部をすき返し、汚泥濃縮を促進させるベルト型濃縮機を提供する。
【解決手段】 回転軸14に左右一対の側板18・18を嵌着し、側板18・18の周縁部にワイヤー19・・・、又は、フラットバー20・・・のすき返し部材11を支架して回転籠10を構成し、複数の回転籠10・・・を無端ベルト4の濃縮ろ過ゾーンBに配設し、回転籠10の周速を調節自在としたもので、原液性状の変化に対応して柔軟な運転が可能となり、無端ベルト4との差速を持たせることにより、濃縮ろ過ゾーンBの濃縮汚泥を前後左右にすき返し、水抜きを促進させ濃縮効果が増加する。無端ベルト4との接触時間が短く、無端ベルト4に掛かる負荷も少ないためベルト寿命が長くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、し尿、下水汚泥あるいは産業廃水等に凝集剤を添加して固形分を凝集させた後、濃縮脱水するベルト型濃縮装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ベルト型濃縮機は、含水率が高く流動性を有する汚泥を、走行するろ布や金属ろ材等のベルトのろ過面に供給し、搬送しながら徐々に水分を分離して濃縮脱水を行なうものである。濃縮汚泥を連設するベルトプレスや圧搾脱水機等の次工程に供給するためには、水分を充分に分離して流動性のない濃縮汚泥としておく必要がある。ベルト上に供給された濃縮対象汚泥はろ過面に堆積し、下層部の汚泥から先にろ液が分離される。搬送中に上層部の汚泥により濃縮されて固形分粒子の圧密層が形成される。下層部の圧密層は、上層部の汚泥の濃縮を阻害する現象を発生させる。
【0003】
濃縮を阻害するろ過面近傍の圧密層を破壊して余剰汚泥等の濃縮濃度を高める手段として、濃縮対象汚泥をスクレーパーで掻き取って、下流側の無端ベルトに戻すベルト型濃縮機が、特許文献1に開示してある。また、濃縮部の水切りゾーンに垂直軸の下端部に円錘台状のつば部を形成したプラウを回転及び上下動自在に支持せて千鳥状に配列したベルトプレス型脱水機も特許文献2に開示してある。
【特許文献1】特許第4067471号公報(請求項2、図1及び図4)
【特許文献2】特公平1−46239号公報(特許請求の範囲1、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の無端ベルトの重力ろ過ゾーンに調節自在なスクレーパーや円錘台状のつば部を形成したすき返し装置を設けた濃縮装置は、汚泥の性状や供給量、搬送速度に応じて間隔を調整して汚泥を切り返し、水抜けが良好に行えるものであるが、すき返し装置を使用した濃縮汚泥濃度の制御が難しく、走行しているベルトとすき返し装置が常時接触しているため、ベルトの磨耗を促進してベルトの寿命が短くなる。この発明は、無端ベルトのろ過面に回転籠を摺接させて汚泥のすき返しを行い汚泥の濃縮を促進させる濃縮機に関し、特に、ベルトと同調、或は差速回転可能としたすき返し装置を有するベルト型濃縮機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係るベルト型濃縮機は、緊張ロールと駆動ロールに無端ベルトを掛け回し、無端ベルトのろ過面に汚泥を供給して、搬送しながら濃縮脱水するベルト濃縮機において、無端ベルトの濃縮ろ過ゾーンに周速を調節自在とした複数の回転籠を配設したもので、すき返し装置の回転数を調節することにより、無端ベルトと同調、或は、差速回転が可能となり、差速を調節することで原液性状の変化に対応して柔軟な運転が可能となる。無端ベルトとの差速を持たせることにより濃縮効果が増加して、ベルト走行と同方向に回転させれば、より負荷が軽減される。
【0006】
ベルト型濃縮機の回転籠は、回転軸に嵌着した左右一対の側板と、側板の周縁部に支架するすき返し部材で構成したもので、回転籠をベルト上に摺接させながら回転させることにより、すき返し部材が汚泥層をすき返し、濃縮された圧密層を破壊してろ液分離を促進し、濃縮汚泥濃度を高めることができる。そして、回転籠のすき返し部材が、側板の周縁部に等間隔に張設したワイヤーで構成したもので、等間隔のワイヤーが、無端ベルトの濃縮ろ過ゾーンのろ過面に摺接しながら汚泥層を切断してすき返し、水抜きを促進させることができる。無端ベルトとの接触時間が短く、無端ベルトに掛かる負荷も少ないためベルト寿命が長くなる。また、回転籠のすき返し部材の他の発明は、側板の周縁部に等間隔に止着したフラットバーで構成したもので、無端ベルトとの短い接触時間で濃縮ろ過ゾーンの濃縮汚泥を前後左右にすき返し、水抜きを促進させることができる。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係るベルト型濃縮装置は上記のように構成してあり、回転籠を走行するベルト上で回転させることにより、凝集汚泥をすき返し、反転させて凝集汚泥の表面や内部に包含される水分を分離して、濃縮濃度を高めることができ、ろ布にかかる負荷も少ないため、ろ布寿命が長くなる。回転籠の回転数を調節すれば、濃縮汚泥濃度の調整が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明に係るベルト型濃縮装置を図面に基づき詳述すると、先ず、図1はベルト型濃縮装置の概略側面図であって、ベルト型濃縮機1は緊張ロール2と電動機(図示せず)に連動連結した駆動ロール3に無端ベルト4が走行自在に掛け回してあり、上面をろ過面4aとしてある。無端ベルト4の給泥部4bに配設した原液供給口5からろ過面4aに汚泥を供給して、搬送しながら濃縮脱水し、駆動ロール3に対設したスクレーパー6で無端ベルト4から濃縮汚泥を剥離する。無端ベルト4のろ過面4aは、大量のろ液を分離する原液供給側の初期濃縮ゾーンAと、無端ベルト4のろ過面近傍の下層部の汚泥が固形分粒子の圧密層を形成する排出側の濃縮ろ過ゾーンBとしてあり、無端ベルト4の初期濃縮ゾーンAの下方に第一ろ液トラフ7と、濃縮ろ過ゾーンBの下方に第二ろ液トラフ8を配設してある。緊張ロール2と駆動ロール3に掛け回した無端ベルト4の反転部には蛇行修正ロール23を配設してあり、無端ベルト4の蛇行を修正しながら運転している。また、無端ベルト4の反転部には洗浄装置9が対設してあり、ベルト型濃縮機1の運転を開始した時に、第一ろ液トラフ7のろ液を利用して、無端ベルト4の反転させたろ過面4aを連続的に洗浄する。
【0009】
図1に示すように、濃縮ろ過ゾーンBに濃縮された圧密層を破壊する複数の回転籠10・・・を並設してある。図2は並設した複数の回転籠の要部平面図であって、無端ベルト4の濃縮ろ過ゾーンBに並設した回転籠10・・・は、回転籠10の中間部に配設したすき返し部材11をろ過面4aに摺接させてある。ベルト型濃縮機1のフレーム12に設けた軸受13、13に回転籠10を支架した回転軸14が軸支してあり、前後の回転軸14、14にスプロケット15、15を嵌着してチエーン16を掛け回してある。排出側の回転籠10の回転軸14aに可変速自在な駆動機17が連動連結してあり、並設した回転籠10を無端ベルト4のろ過面4aで可変速自在に回転可能としてある。
【0010】
図3は回転籠の一部縦断側面図であって、回転籠10は、回転軸14に一対の側板18、18が嵌着してあり、側板18の周縁部に等間隔にワイヤー19・・・を張設してすき返し部材11を構成してある。図4に示すように、この発明の実施例では側板18は、円板状に構成してあり、ワイヤー19・・・が、無端ベルト4の濃縮ろ過ゾーンBのろ過面4aに摺接しながら汚泥層を切断して周回させるようにしてある。なお、側板18を角形状、又は楕円状とすれば、ワイヤー19・・・の周回軌跡を圧密層を形成する汚泥層の上下層部をランダムに通過させることができる。図5及び図6は回転籠の他の実施例の一部縦断側面図であって、回転籠10は一対の円板状の側板18の周縁部に等間隔にフラットバー20・・・を止着して、すき返し部材11を構成してある。なお、フラットバー20は、放射状に外周先端部を回転方向に延設すれば、汚泥を掻き上げて、上下左右にすき返すことができる。すき返し部材11を、ワイヤー19又はフラットバー20とすれば、無端ベルト4との接触時間が短く、無端ベルト4に掛かる負荷も少ないためベルト寿命が長くなる。なお、図3及び図5に示す濃縮ろ過ゾーンBと初期濃縮ゾーンAの無端ベルト4の裏面にろ材サポート22を配設してある。
【0011】
上記のように構成した回転籠10は、圧密層を形成する濃縮ろ過ゾーンBの無端ベルト4のろ過面4aにすき返し部材11・・・を摺接しながら回転させて、固形分粒子の圧密層を形成する下層部の汚泥層を上下左右にすき返し、圧密層を破壊してろ液分離を促進し、濃縮汚泥濃度を高める。駆動機17を操作して回転籠10の周回速度を無端ベルト4と同調、或は、差速回転が可能となり、回転籠10・・・の回転数を調節すれば、濃縮汚泥濃度の調整が行なえる。差速回転を調節することで原液性状の変化に対応して柔軟な運転が実施でき、濃縮汚泥濃度の調整が可能となり濃縮効果が増加する。回転籠10の回転方向は、無端ベルト4の走行方向と同一方向と逆方向が可能であり、同方向に回転させればより負荷が軽減される。
【実施例】
【0012】
濃縮ろ過ゾーンに摺接させる回転籠のすき返し部材をフラットバーで構成し、有効幅0.3mのベルト型濃縮試験機を使用した。0.2%の高分子凝集剤を添加した某下水処理場の余剰汚泥を、容積が70Lの凝集混和槽で攪拌混合し、凝集汚泥をベルト速度7.5m/minで走行するろ過面に、汚泥流量50L/minの凝集汚泥を供給し、回転籠の周速を、
1.ベルト速度より遅い5m/min
2.ベルト速度に同調
3.ベルト速度より早い10m/min
に調節し、濃縮性能試験を行った。この結果を表1に示す。
【0013】
【表1】

表1は、すき返し装置の差速比較試験結果であって、ベルト速度より遅い5m/minでは5.1%、ベルト速度に同調の7.5m/minでは3.9%、ベルト速度より早い10m/minでは4.6%であった。
【0014】
【表2】

表2は、すき返し装置の差速比較試験を棒グラフで表示したもので、その結果より、回転籠の周速を、ベルト速度7.5m/minより遅く差速回転させれば、濃縮効果が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
この発明に係るベルト型濃縮機は、回転軸に嵌着した一対の側板と、側板の周縁部に支架するワイヤー又はフラットバーのすき返し部材で回転籠を構成し、無端ベルトの濃縮ろ過ゾーンに複数の回転籠を配設して周速を調節自在としたもので、回転籠を回転させてベルト上の凝集汚泥をすき返し、反転させて凝集汚泥の表面や内部に包含される水分を分離できる。回転籠の回転数を調節すれば、濃縮汚泥濃度の調整が可能となり、ろ布にかかる負荷も少ないため、ろ布寿命が長くなる。ベルト型濃縮機の性能を維持しながら、濃縮汚泥濃度を安定させた運転が行えるので、水分を充分に分離した濃縮汚泥を次工程に供給できるベルト型濃縮機となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明に係るベルト型濃縮装置の概略側面図である。
【図2】同じく、並設した複数の回転籠の要部平面図である。
【図3】同じく、回転籠の一部縦断側面図である。
【図4】同じく、回転籠の一部横断側面図である。
【図5】同じく、他の実施例の回転籠の一部縦断側面図である。
【図6】同じく、他の実施例の回転籠の一部横断側面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 ベルト型濃縮機
2 緊張ロール
3 駆動ロール
4 無端ベルト
4a ろ過面
10 回転籠
11 すき返し部材
14 回転軸
18 側板
19 ワイヤー
20 フラットバー
A 初期濃縮ゾーン
B 濃縮ろ過ゾーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊張ロール(2)と駆動ロール(3)に無端ベルト(4)を掛け回し、無端ベルト(4)のろ過面(4a)に汚泥を供給して、搬送しながら濃縮脱水するベルト濃縮機において、無端ベルト(4)の濃縮ろ過ゾーン(B)に周速を調節自在とした複数の回転籠(10・・・)を配設したことを特徴とするベルト型濃縮装置。
【請求項2】
上記回転籠(10)は、回転軸(14)に嵌着した一対の側板(18、18)と、側板(18、18)の周縁部に支架するすき返し部材(11)で構成し、すき返し部材(11)を無端ベルト(4)のろ過面(4a)に摺接させることを特徴とする請求項1に記載のベルト型濃縮装置。
【請求項3】
上記すき返し部材(11)が、側板(18)の周縁部に等間隔に張設したワイヤー(19・・・)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト型濃縮装置。
【請求項4】
上記すき返し部材(11)が、側板(18)の周縁部に等間隔に止着したフラットバー(20・・・)であることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルト型濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−99543(P2010−99543A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−270419(P2008−270419)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【出願人】(000197746)株式会社石垣 (116)
【Fターム(参考)】