説明

ベルト連結具収納構造

【課題】 シート左右方向への拡大を伴わない二つのベルト連結具の格納形態を、構成の複雑化等を伴うことなく実現可能とする。
【解決手段】 左右座部用および中央座部用の二つのベルト連結具、たとえば左シート用のバックル12L−1、およびセンタシート用のバックル14−1が、この左シート20Lのシートクッション10に設けられた収納凹部16L内で、その開口からの双方の目視を可能とした状態で上下にずれて収納されている。なお、この二つのベルト連結具12L−1,14−1を、シート左右方向での隣接位置で、上段側のベルト連結具下端部に対する下段側のベルト連結具上端部の部分的な重複を伴って収納することが好ましい。また、この構成においては、この二つのベルト連結具12L−1,14−1のうち、左右座部用のベルト連結具12L−1を上段に、また中央座部用のベルト連結具14−1をその下段に、それぞれ配することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックル、タングと称される、ウェービング先端に設けられたベルト連結具をシートクッションの収納凹部内に収納するための収納構造、特に、別体のセンタシートを中央座部として左右個別のシート間に併せてなる形態の三人掛けシートにおける、そのベルト連結具収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、乗用車等のリヤシートとして搭載される三人掛けシートにおいては、通常、その左右座部用シートベルトのバックルが、各左右座部のインナ側位置にそれぞれ配設されるとともに、この各バックルとほぼ同位置に、中央座部用シートベルトをなすバックル側ウェービング、およびタング側ウェービングがそれぞれ連結、配設されている。そして、これら左右座部用のバックル、および中央座部用のバックル、タングの、いわゆるベルト連結具は、通常、シートクッションの左右座部インナ側にそれぞれ設けられた単一の収納凹部に対し、それぞれ一括して収納されるものとして構成されている。
【0003】
ところで、自動車のリヤシートの一つの形態として、たとえば、特開2000−272385号公報に開示のような、別体の可動型センタシート等を中央座部として左右個別のリヤシート間に併せてなる形態の、いわゆる併設型三人掛けシートが知られている。そして、車幅の狭い小型車等においてはセンタシートも幅狭となり、このセンタシートへの収納凹部の形成も容易でないことから、このような併設型三人掛けシートにおいては、左右シートの各インナ側端部に、この左右シート(左右座部)用、およびセンタシート(中央座部)用の二つのベルト連結具を一括して収納可能とする収納凹部をそれぞれ形成することが考えられている。
【0004】
ここで、従来においては、この二つのベルト連結具をシートの左右方向に並べる、いわゆる並列収納形態を採用することが一般的となっている。しかしながら、このような二つのベルト連結具の並列収納形態であると、その開口を含む収納凹部自体の大型化、特にシート左右方向での大型化が伴われるため、左右シートクッション部の有効範囲を狭めることに起因するそのクッション性能の低下、および開口の幅広化による外観品質の低下等が伴われる。
【0005】
そこで、たとえば特開2002−301975号公報には、収納凹部内に袋部を設け、単一の収納凹部に収納される二つのベルト連結具のうちの一つをこの袋部内に収納する構成が開示されている。この構成であれば、その開口の大型化が防止できるため、開口の幅広化に起因する外観品質の低下は十分に防止可能となる。しかしながら、この公知の構成においては、収納凹部内でのベルト連結具の収納形態がシート左右方向に延びるもの、つまりシート左右方向に拡大されたものであるため、シート左右方向でのスペースの少ない左右シートの側端部に、この構成を適用することは容易でない。
【0006】
つまり、この特開2002−301975号公報に開示された構成は、併設型三人掛けシートへの適応性に劣るということができる。
【特許文献1】特開2000−272385号公報
【特許文献2】特開2002−301975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、従来の構成であると、シート左右方向での収納形態の拡大が伴われるという点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係るベルト連結具収納構造は、左右座部用および中央座部用の二つのベルト連結具を、シートクッションに設けられた収納凹部内で、その開口からの双方の目視を可能とした状態で上下にずらして収納したことを、その最も主要な特徴としている。
【0009】
また、この発明の請求項2は、二つのベルト連結具を、シート左右方向での隣接位置で、上段側のベルト連結具下端部に対する下段側のベルト連結具上端部の部分的な重複を伴って収納するものとしたことを、その最も主要な特徴としている。
【0010】
さらに、この発明の請求項3は、二つのベルト連結具のうち、左右座部用のベルト連結具を上段に、また中央座部用のベルト連結具をその下段に、それぞれ配したことをその最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1に係るベルト連結具収納構造は、左右座部用および中央座部用の二つのベルト連結具を、シートクッションに設けられた収納凹部内で上下にずらして収納するものであるため、シート左右方向への拡大を伴わない、二つのベルト連結具の格納形態が容易に得られる。従って、シート左右方向でのスペースの少ない併設型三人掛けシートの左右シートの側端部に対する適応性が改善されるという利点が、この請求項1にはある。
【0012】
そして、収納凹部をシート下方に伸ばせば足りるため、併設型三人掛けシートに適用可能なベルト連結具収納構造を、その構成の複雑化を伴うことなく確保できるという利点が、この請求項1によれば得られる。
【0013】
さらに、上下方向にずらした収納であっても、二つのベルト連結具を、その開口からの双方の目視を可能とした状態で収納凹部内にそれぞれ収納しているため、いずれのベルト連結具に対してもその取り出しの容易化が十分にはかられるという利点が、この請求項1にはある。
【0014】
また、この発明の請求項2は、二つのベルト連結具を、シート左右方向で部分的に重複させるものであるため、二つのベルト連結具の双方を開口から目視可能とする状態が容易に確保できるという利点がある。
【0015】
さらに、この発明の請求項3は、二つのベルト連結具のうち、使用頻度の比較的高い左右座部用のベルト連結具を上段に配置するため、その使い勝手が確実に向上されるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
シート左右方向への拡大を伴わない二つのベルト連結具の格納形態を、構成の複雑化等を伴うことなく実現可能とした。
【実施例】
【0017】
図1、図2は、本発明のベルト連結具収納構造を示す、シートクッション10の概略部分縦断面図、および三人掛けシートの概略斜視図であり、これらを見るとわかるように、このベルト連結具収納構造においては、左右座部用および中央座部用の二つのベルト連結具12L−1,14−1、およびベルト連結具12R−1,14−2が、単一の収納凹部16L,16Rにそれぞれ一括して収納されるものとなっている。
【0018】
図2に、ここでいう三人掛けシート18の一例を示す。これを見るとわかるように、この三人掛けシート18は、左右座部となる左右個別のシート20L,20R間に、別体のセンタシート22を中央座部として併せてなる形態の、いわゆる併合型三人掛けシートとして構成されている。そして、この図2に加えて図1を見るとわかるように、左シート(左座部)用として車体側から延出された、シートベルト24Lのタング12L−2の挿着されるバックル12L−1、およびセンタシート(中央座部)用シートベルトをなすバックル14−1側ウェービングが、この左シート20Lのインナ側端部の収納凹部16Lへの収納を可能に配設されるとともに、右シート(右座部)用として車体側から延出された、シートベルト24Rのタング12R−2の挿着されるバックル12R−1、およびセンタシート(中央座部)用シートベルトをなすタング14−2側ウェービングが、この右シート20Rのインナ側端部の収納凹部16Rへの収納を可能に配設されている。
【0019】
なお、この併設型三人掛けシート自体は、たとえば特開2000−272385号公報等にも開示のあるように公知であり、また、三人掛けシートにおけるシートベルトの形態も、たとえば特開2002−301975号公報等に開示の通り公知であるものにすぎない。そして、これらの構成自体はこの発明の主旨でないため、この併設型三人掛けシート自体、およびそのシートベルト自体に関する詳細な説明は、ここでは省略する。
【0020】
ここで、左シートの収納凹部16Lでの収納構造を例として、この発明を説明する。図1を見るとわかるように、この発明のベルト連結具収納構造においては、左シート用のバックル(ベルト連結具)12L−1、およびセンタシート用のバックル(ベルト連結具)14−1が、この左シート20Lのシートクッション10に設けられた収納凹部16L内で、その開口からの双方の目視を可能とした状態で上下にずれて収納されている。
【0021】
この収納形態としては、二つのベルト連結具12L−1,14−1を、シート左右方向での隣接位置で、上段側のベルト連結具、つまり左シート用のバックル12L−1の下端部12aに対する、下段側のベルト連結具、つまりセンタシート用のバックル14−1の上端部14aの部分的な重複を伴って収納した形態が例示できる。
【0022】
図1に示すように、この発明の構成によれば、収納凹部16の開口付近には、その上段に配された左シート用のバックル12L−1のみが位置することになるため、シートクッション10の表面上でのクッション性能は十分に維持可能となる。つまり、そのクッション性能に悪影響を与えない収納が容易に確保可能となる。
【0023】
そして、この発明においては、二つのベルト連結具12L−1,14−1を上下方向にずらして収納しているため、シート左右方向への拡大の抑制された収納が容易に確保可能となる。従って、シート左右方向でのスペースの少ない併設型三人掛けシートの左右シートの側端部に対する適応性が、この発明によれば十分に改善される。
【0024】
また、この構成であれば、収納凹部16をシート下方に伸ばせば足りるため、併設型三人掛けシートに適用可能なベルト連結具収納構造が、その構成の複雑化を伴うことなく容易に確保可能となる。
【0025】
さらに、この発明においては、上下方向にずらした収納であっても、二つのベルト連結具12L−1,14−1を、その開口からの双方の目視を可能とした状態で収納凹部16L内にそれぞれ収納している。つまり、収納凹部16L内に収納された状態であっても、この二つのベルト連結具12L−1,14−1はいずれも可視状態にあるため、いずれのベルト連結具に対しても、その取り出しの容易化が十分にはかられる。
【0026】
また、図1に示すように、この実施例においては、二つのベルト連結具12L−1,14−1を、シート左右方向で部分的に重複させるものとして具体化している。このような構成であれば、収納凹部16内における、シート左右方向での二つのベルト連結具12L−1,14−1のずれが適切に確保できるため、この二つのベルト連結具の双方を開口から目視可能とする状態が、その構成の複雑化等を伴うことなく容易に確保可能となる。
【0027】
ここで、図1を見るとわかるように、この実施例においては、二つのベルト連結具12L−1,14−1のうち、左シート用のバックル12L−1を上段に、またセンタシート用のバックル14−1をその下段に、それぞれ配するものとして具体化している。この構成であれば、使用頻度の比較的高い左シート用のバックル12L−1が、脱着容易な上段に位置するため、その使い勝手が確実に向上される。
【0028】
なお、ここでは、左シートの収納凹部16Lにおける二つのベルト連結具12L−1,14−1の収納構造を例として説明したが、右シートの収納凹部16Rにおける二つのベルト連結具12R−1,14−2においても、その構造自体はほぼ同一であるため、この右シートの収納凹部16Rにおけるベルト連結具収納構造に対する説明は、ここでは省略する。
【0029】
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この実施例においては、別体の可動型センタシート等を中央座部として左右個別のシート間に併せてなる形態の併設型のものを、三人掛けシートとして具体化しているが、ベンチシート等の左右一体型の三人掛けシートのベルト連結具収納構造に、この発明を応用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明に係るベルト連結具収納構造を示す、シートクッションフレームの概略部分縦断面図である。
【図2】三人掛けシートの概略斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
10 シートクッション
12L−1,12R−1 ベルト連結具
14−1,14−2 ベルト連結具
16L,16R 収納凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションに設けられた単一の収納凹部に、左右座部用および中央座部用の二つのベルト連結具を一括して収納する、三人掛けシートにおけるベルト連結具収納構造であり、
上記二つのベルト連結具を、上記収納凹部内で、その開口からの双方の目視を可能とした状態で上下にずらして収納したことを特徴とするベルト連結具収納構造。
【請求項2】
前記二つのベルト連結具が、シート左右方向での隣接位置で、上段側のベルト連結具下端部に対する下段側のベルト連結具上端部の部分的な重複を伴って収納された請求項1記載のベルト連結具収納構造。
【請求項3】
前記二つのベルト連結具のうち、左右座部用のベルト連結具を上段に、また中央座部用のベルト連結具をその下段に、それぞれ配してなる請求項1または2記載のベルト連結具収納構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−91095(P2007−91095A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−284450(P2005−284450)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】