説明

ベンゾ[a]カルバゾール化合物、該化合物を含有する発光材料、およびそれを用いた有機電界発光素子

【課題】有機電界発光素子において、高い発光効率、優れた耐熱性、長い寿命等に寄与する発光材料、特に緑色の燐光発光に優れた発光材料を提供し、さらに、この発光材料を用いた有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】式(1)で表されるベンゾ[a]カルバゾール化合物、該化合物を含有する発光材料、およびこれを用いた有機電界発光素子。


式(1)中、Arは置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、R〜R16はそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾ[a]カルバゾール化合物、該化合物を含有する発光材料、およびこの発光材料を用いた有機電界発光素子(以下、有機EL素子と略記することがある。)等に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は自己発光型の発光素子であり、表示用または照明用の発光素子として期待されている。従来、電界発光する発光素子を用いた表示装置は、小電力化や薄型化が可能なことから種々研究され、さらに、有機材料から成る有機EL素子は、軽量化や大型化が容易なことから活発に検討されてきた。
【0003】
有機EL素子は、陽極および陰極からなる一対の電極と、当該一対の電極間に配置され、有機化合物を含む一層または複数の層とからなる構造を有する。有機化合物を含む層には、発光層や、正孔、電子等の電荷を輸送または注入する電荷輸送/注入層があるが、当該有機化合物としては種々の有機材料が開発されている。特に、発光層用の有機材料の研究開発が活発になされている。
【0004】
有機EL素子の発光材料は、その発光メカニズムによって一重項状態のエキシトンを利用する蛍光材料と三重項状態を利用する燐光材料とに分けられる。有機EL素子の発光材料として、燐光材料を用いることにより、理論発光効率が約4倍に向上することが知られている(非特許文献1を参照)。
【0005】
燐光有機EL素子では、燐光を発するドーパント(以下、燐光ドーパントと略記する。)として白金やイリジウム等の重金属を含む金属錯体系発光材料を、ホスト材料にドーピングすることで燐光発光を取り出す(非特許文献1を参照)。この燐光ドーパントの発光における発光効率や発光寿命等はホスト材料に依存する。燐光有機EL素子のホスト材料に必要とされる基本的な性能は、正孔輸送性および電子輸送性を有すること、ホスト材料の三重項状態エネルギーレベル(T1)が燐光ドーパントの三重項状態エネルギーレベル(T1)よりも高いこと等である。燐光有機EL素子を実用化するために、これまで緑色燐光ホスト材料の開発が盛んに行われてきた(例えば特許文献1、特許文献2、非特許文献2を参照)。これらの緑色燐光ホスト材料の多くは、カルバゾリル基を含む材料を用いることを特徴としている。例えば、4,4−N,N’−ジカルバゾール−ビフェニル(以下、CBPと略記する。)を用いることはよく知られている(例えば特許文献3、非特許文献1を参照)。しかし、CBPは対称的な分子構造を有しており、結晶化しやすい性質を持っているため、該化合物を含む発光層の安定性が悪いことが懸念される。このような理由から、燐光有機EL素子は、実用化に向けて素子の駆動安定性に大きな問題を抱えているのが実状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−174917号公報
【特許文献2】特開2008−311528号公報
【特許文献3】特開2001−313178号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Apllied Physics Letters, 75, 4(1999)
【非特許文献2】Thin Solid Films, 436, 264(2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したような実状から、耐熱性、駆動電圧、発光効率、電流効率、素子寿命および外部量子効率等に関して十分な性能を有する有機EL素子は、未だ得られていない。このような状況下、耐熱性、駆動電圧、発光効率、電流効率、素子寿命および外部量子効率等において、更に性能のよい有機EL素子、殊に燐光有機EL素子の開発が望まれている。それはすなわち、該素子を得ることができる化合物、殊に、結晶化し難く安定な発光層を形成できて、高効率かつ高い駆動安定性を実現する緑色燐光ホスト材料の開発が望まれていることに他ならない。
【0009】
また、フルカラーフラットパネルディスプレイの量産化に対応するためには、性能が高く、しかも蛍光と燐光と同時に使用できるホスト材料の開発が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、下記式(1)で表されるベンゾ[a]カルバゾール化合物の製造に成功した。また、このベンゾ[a]カルバゾール化合物を含有する層を一対の電極間に配置して有機電界発光素子を構成することにより、駆動電圧、発光効率、電流効率、素子寿命および外部量子効率等において改善された有機EL素子、殊に緑色の発光特性に優れた燐光有機EL素子が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明で用いる用語は次のように定義される。アルキルは直鎖の基であってもよく、分岐された基であってもよい。本発明で用いる「任意の」は、位置についても個数についても任意である事を示し、「区別なく選択された少なくとも1つの」を意味する。そして、複数の原子(水素)が基で置き換えられるときには、それぞれが異なる基で置き換えられてもよい。また、本明細書中では「式(1−1)で表される化合物」のことを、「化合物(1−1)」のように表記することがある。
【0012】
上記の課題は以下に示す各項によって解決される。
[1]下記式(1)で表される化合物。


式(1)中、Arは置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、R〜R16はそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。
【0013】
[2]Arが置換されていてもよい炭素数6〜30のアリール、置換されていてもよい炭素数2〜30のヘテロアリールであり、R〜R16がそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよい炭素数1〜24のアルキル、置換されていてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル、置換されていてもよい炭素数6〜30のアリール、または置換されていてもよい炭素数2〜30のヘテロアリールである、前記[1]項に記載の化合物。
【0014】
[3]Arが置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール、置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリールであり、R〜R16がすべて水素である、前記[1]項に記載の化合物。
【0015】
[4]下記式(1−1)で表される、前記[1]項に記載の化合物。


【0016】
[5]前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物を含む発光材料。
【0017】
[6]陽極および陰極からなる一対の電極間に挟持された少なくとも1つの有機化合物層を有する有機電界発光素子において、前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物を該有機化合物層に含有する有機電界発光素子。
【0018】
[7]前記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物を発光層に含有する、前記[6]項に記載の有機電界発光素子。
【0019】
[8]さらに、イリジウム錯体、白金錯体またはレニウム錯体を発光層に含有する、前記[7]項に記載の有機電界発光素子。
【0020】
[9]さらに、前記陰極と発光層との間に配置される電子輸送層および/または電子注入層を有し、該電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つが、キノリノール系金属錯体、ピリジン誘導体およびフェナントロリン誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、前記[7]項または[8]項に記載の有機電界発光素子。
【発明の効果】
【0021】
本発明の好ましい態様によれば、例えば、発光層用材料として優れた特性を有するベンゾ[a]カルバゾール化合物を提供することができる。また、耐熱性、駆動電圧、発光効率、電流効率、素子寿命および外部量子効率等について改善された有機EL素子を提供することができる。本発明の好ましい態様に係るベンゾ[a]カルバゾール化合物は、燐光素子、特に緑色燐光有機EL素子のホスト材料として使用でき、高効率で高い駆動安定性を有する緑色燐光有機EL素子を得ることができる。また、本発明の好ましい態様に係るベンゾ[a]カルバゾール化合物は、燐光素子だけでなく、蛍光素子にも適用できるといったメリットがある。例えば、本発明の好ましい態様に係るベンゾ[a]カルバゾール化合物は、緑色燐光素子のみならず赤色燐光素子のホスト材料として使用でき、さらには、蛍光青色素子のホスト材料としても使用できる。この結果、フルカラーフラットパネルディスプレイの量産化に適した材料を提供することができる。本発明の有機EL素子を用いることにより、フルカラー表示等の高性能のディスプレイ装置を作成できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
1.式(1)で表されるベンゾ[a]カルバゾール化合物
まず、式(1)で表されるベンゾ[a]カルバゾール化合物について説明する。


式(1)中、Arは置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、R〜R16はそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。
【0023】
式(1)のArおよびR〜R16における「置換されていてもよいアリール」の「アリール」としては、例えば、「炭素数6〜30のアリール」があげられる。Arの「アリール」としては、好ましくは「炭素数6〜20のアリール」である。
【0024】
「炭素数6〜30のアリール」の例は、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アセナフチレン−1−イル、アセナフチレン−3−イル、アセナフチレン−4−イル、アセナフチレン−5−イル、フルオレン−1−イル、フルオレン−2−イル、フルオレン−3−イル、フルオレン−4−イル、フルオレン−9−イル、フェナレン−1−イル、フェナレン−2−イル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル,9−フェナントリル、フルオランテン−1−イル、フルオランテン−2−イル、フルオランテン−3−イル、フルオランテン−7−イル、フルオランテン−8−イル、トリフェニレン−1−イル、トリフェニレン−2−イル、2−ビフェニリル、3−ビフェニリル、4−ビフェニリル、m−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−4’−イル、m−テルフェニル−5’−イル、o−テルフェニル−3’−イル、o−テルフェニル−4’−イル、p−テルフェニル−2’−イル、m−テルフェニル−2−イル、m−テルフェニル−3−イル、m−テルフェニル−4−イル、o−テルフェニル−2−イル、o−テルフェニル−3−イル、o−テルフェニル−4−イル、p−テルフェニル−2−イル、p−テルフェニル−3−イル、p−テルフェニル−4−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−2−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−3−イル、5’−フェニル−m−テルフェニル−4−イル、m−クアテルフェニル−2−イル、m−クアテルフェニル−3−イル、m−クアテルフェニル−4−イル、o−クアテルフェニル−2−イル、o−クアテルフェニル−3−イル、およびo−クアテルフェニル−4−イルである。これらの中では、フェニル、2−ビフェニリル、3−ビフェニリル、4−ビフェニリル、1−ナフチル、9−フェナントリル、トリフェニレン−1−イル、およびトリフェニレン−2−イルが好ましい。
【0025】
「炭素数6〜30のアリール」における任意の水素は炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、またはシリルで置き換えられてもよい。置換基の数は、例えば、最大置換可能な数であり、好ましくは0〜3個、より好ましくは0〜2個、更に好ましくは0個(無置換)である。
【0026】
「炭素数1〜24のアルキル」の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、および5−メチルへキシルである。
【0027】
任意の水素が炭素数1〜24のアルキルで置き換えられた「炭素数6〜30のアリール」の例は、o−トリル、m−トリル、p−トリル、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、4−tert−ブチルフェニル、2,4−ジtert−ブチルフェニル、2,4,6−トリtert−ブチルフェニル、4−メチル−1−ナフチル、4−tert−ブチル−1−ナフチル、6−メチル−2−ナフチル、6−tert−ブチル−2−ナフチル、および9,9−ジメチル−2−フルオレニルである。
【0028】
「炭素数3〜12のシクロアルキル」の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、シクロヘプチル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチル、およびジメチルシクロヘキシルである。
【0029】
任意の水素が炭素数3〜12のシクロアルキルで置き換えられた「炭素数6〜30のアリール」の例は、2−シクロヘキシルフェニル、3−シクロヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、2、4−ジシクロヘキシルフェニル、3、5−ジシクロヘキシルフェニル4−シクロヘキシル−1−ナフチル、6−シクロヘキシル−2−ナフチル、および9,9−ジシクロヘキシル−2−フルオレニルである。
【0030】
任意の水素が炭素数6〜30のアリールで置き換えられた「炭素数6〜30のアリール」の例は、2−(1−ナフチル)フェニル、3−(1−ナフチル)フェニル、4−(1−ナフチル)フェニル、2−(2−ナフチル)フェニル、3−(2−ナフチル)フェニル、4−(2−ナフチル)フェニル、4−(9−フェナントリル)フェニル、2−フェニル−1−ナフチル、4−フェニル−1−ナフチル、5−フェニル−1−ナフチル、1−フェニル−2−ナフチル、3−フェニル−2−ナフチル、6−フェニル−2−ナフチル、7−フェニル−2−ナフチル、4−(4−ビフェニリル)−1−ナフチル、6−(4−ビフェニリル)−2−ナフチル、6−(m−テルフェニル−2’−イル)−2−ナフチル、6−(m−テルフェニル−5’−イル)−2−ナフチル、4−(m−テルフェニル−2’−イル)−1−ナフチル、4−(m−テルフェニル−5’−イル)−1−ナフチル、2−(1−ナフチル)−1−ナフチル、4−(1−ナフチル)−1−ナフチル、5−(1−ナフチル)−1−ナフチル、2−(2−ナフチル)−1−ナフチル、4−(2−ナフチル)−1−ナフチル、5−(2−ナフチル)−1−ナフチル、1−(1−ナフチル)−2−ナフチル、3−(1−ナフチル)−2−ナフチル、6−(1−ナフチル)−2−ナフチル、7−(1−ナフチル)−2−ナフチル、1−(2−ナフチル)−2−ナフチル、3−(2−ナフチル)−2−ナフチル、6−(2−ナフチル)−2−ナフチル、7−(2−ナフチル)−2−ナフチル、4−(9−フェナントリル)−1−ナフチル、6−(9−フェナントリル)−2−ナフチル、9,9−ジフェニル−2−フルオレニル、3−フェニル−9−フェナントリル、10−フェニル−9−フェナントリル、3−(1−ナフチル)−9−フェナントリル、10−(1−ナフチル)−9−フェナントリル、3−(2−ナフチル)−9−フェナントリル、および10−(2−ナフチル)−9−フェナントリルである。
【0031】
「炭素数2〜30のヘテロアリール」としては、例えば環構成原子として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1ないし5個含有する複素環基等があげられ、例えば、芳香族複素環基等があげられる。
【0032】
「複素環基」の例は、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、およびインドリジニルである。
【0033】
「芳香族複素環基」の例は、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、フラザニル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、トリアジニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾ[b]チエニル、インドリル、イソインドリル、1H−インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1H−ベンゾトリアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、キナゾリル、キノキサリニル、フタラジニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノキサジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、フェノキサチイニル、チアントレニル、およびインドリジニルである。
【0034】
任意の水素が炭素数2〜30のヘテロアリールで置き換えられた「炭素数6〜30のアリール」の例は、2−(ピリジン−2−イル)フェニル、3−(ピリジン−2−イル)フェニル、4−(ピリジン−2−イル)フェニル、2−(ピリジン−3−イル)フェニル、3−(ピリジン−3−イル)フェニル、4−(ピリジン−3−イル)フェニル、2−(ピリジン−4−イル)フェニル、3−(ピリジン−4−イル)フェニル、4−(ピリジン−4−イル)フェニル、2−(カルバゾール−9−イル)フェニル、3−(カルバゾール−9−イル)フェニル、4−(カルバゾール−9−イル)フェニル、2−(イミダゾール−1−イル)フェニル、3−(イミダゾール−1−イル)フェニル、4−(イミダゾール−1−イル)フェニル、2−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)フェニル、3−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)フェニル、4−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)フェニル、2−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル、3−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル、4−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)フェニル、4−(ピリジン−2−イル)ナフタレン−1−イル、6−(ピリジン−2−イル)ナフタレン−2−イル、7−(ピリジン−2−イル)ナフタレン−2−イル、4−(ピリジン−3−イル)ナフタレン−1−イル、6−(ピリジン−3−イル)ナフタレン−2−イル、7−(ピリジン−3−イル)ナフタレン−2−イル、4−(ピリジン−4−イル)ナフタレン−1−イル、6−(ピリジン−4−イル)ナフタレン−2−イル、7−(ピリジン−4−イル)ナフタレン−2−イル、4−(カルバゾール−9−イル)ナフタレン−1−イル、6−(カルバゾール−9−イル)ナフタレン−2−イル、7−(カルバゾール−9−イル)ナフタレン−2−イル、4−(イミダゾール−1−イル)ナフタレン−1−イル、6−(イミダゾール−1−イル)ナフタレン−2−イル、7−(イミダゾール−1−イル)ナフタレン−2−イル、4−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ナフタレン−1−イル、6−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ナフタレン−2−イル、7−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ナフタレン−2−イル、4−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ナフタレン−1−イル、6−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ナフタレン−2−イル、および7−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ナフタレン−2−イルである。
【0035】
シリルの例は、水素、炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキルまたは炭素数6〜30のアリールで置き換えられたシリルであり、例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、tert−ブチルジフェニルシリル、およびトリフェニルシリルである。
【0036】
任意の水素がシリルで置き換えられた「アリール」の例は、2−トリメチルシリルフェニル、3−トリメチルシリルフェニル、4−トリメチルシリルフェニル、2−トリエチルシリルフェニル、3−トリエチルシリルフェニル、4−トリエチルシリルフェニル、2−トリフェニルシリルフェニル、3−トリフェニルシリルフェニル、4−トリフェニルシリルフェニル、2、4−ビス(トリメチルシリル)フェニル、3、5−ビス(トリメチルシリル)フェニル、4−トリメチルシリル−1−ナフチル、6−トリメチルシリル−2−ナフチル4−トリメチルシリル−1−アントリル、10−トリメチルシリル−9−アントリル、および9,9−ビス(トリメチルシリル)−2−フルオレニルである。
【0037】
式(1)のArおよびR〜R16における「置換されていてもよいヘテロアリール」の「ヘテロアリール」としては、例えば、「炭素数2〜30のヘテロアリール」があげられる。Arの「ヘテロアリール」としては、好ましくは「炭素数2〜20のヘテロアリール」である。「炭素数2〜30のヘテロアリール」の例は、前記の「アリール」の置換基として列記した「炭素数2〜30のヘテロアリール」と同じ基が例示できる。これらの基の中では、ピリジル、インドリルおよびカルバゾリルが好ましい。
【0038】
「ヘテロアリール」における任意の水素は炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、またはシリルで置き換えられてもよい。置換基の数は、例えば、最大置換可能な数であり、好ましくは0〜3個、より好ましくは0〜2個、更に好ましくは0個(無置換)である。炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、またはシリルの例は、前記「アリール」の説明であげた基が同様に例示される。
【0039】
任意の水素が炭素数1〜24のアルキルで置き換えられた「炭素数2〜30のヘテロアリール」の例は、5−メチル−2−チエニル、5−メチル−3−チエニル、2,5−ジメチル−3−チエニル、3,4,5−トリメチル−2−チエニル、3−メチル−2−ベンゾチエニル、2−メチル−3−ベンゾチエニル、6−メチル−2−ピリジル、5−メチル−2−ピリジル、4−メチル−2−ピリジル、3−メチル−2−ピリジル、6−メチル−3−ピリジル、5−メチル−3−ピリジル、4−メチル−3−ピリジル、2−メチル−3−ピリジル、2−メチル−4−ピリジル、3−メチル−4−ピリジル、2−メチル−1−インドリル、2−tert−ブチル−1−インドリル、3−メチル−9−カルバゾリル、3,6−ジメチル−9−カルバゾリル、3,6−ジtert−ブチル−9−カルバゾリル、および9−メチル−3−カルバゾリルである。
【0040】
任意の水素が炭素数3〜12のシクロアルキルで置き換えられた「炭素数2〜30のヘテロアリール」の例は、5−シクロヘキシル−2−チエニル、5−シクロヘキシル−3−チエニル、2,5−ジシクロヘキシル−3−チエニル、3,4,5−トリシクロヘキシル−2−チエニル、3−シクロヘキシル−2−ベンゾチエニル、2−シクロヘキシル−3−ベンゾチエニル、6−シクロヘキシル−2−ピリジル、5−シクロヘキシル−2−ピリジル、4−シクロヘキシル−2−ピリジル、3−シクロヘキシル−2−ピリジル、6−シクロヘキシル−3−ピリジル、5−シクロヘキシル−3−ピリジル、4−シクロヘキシル−3−ピリジル、2−シクロヘキシル−3−ピリジル、2−シクロヘキシル−4−ピリジル、3−シクロヘキシル−4−ピリジル、2−シクロヘキシル−1−インドリル、3−シクロヘキシル−9−カルバゾリル、3,6−ジシクロヘキシル−9−カルバゾリル、および9−シクロヘキシル−3−カルバゾリルである。
【0041】
任意の水素が炭素数6〜30のアリールで置き換えられた「炭素数2〜30のヘテロアリール」の例は、5−フェニル−2−チエニル、5−(1−ナフチル)−2−チエニル、5−(2−ナフチル)−2−チエニル、5−フェニル−3−チエニル、2,5−ジフェニル−3−チエニル、2−フェニル−5−(1−ナフチル)−3−チエニル、2−フェニル−5−(2−ナフチル)−3−チエニル、3,4,5−トリフェニル−2−チエニル、3,4−ジフェニル−5−(1−ナフチル)−2−チエニル、3,4−ジフェニル−5−(2−ナフチル)−2−チエニル、3−フェニル−2−ベンゾチエニル、3−(1−ナフチル)−2−ベンゾチエニル、3−(2−ナフチル)−2−ベンゾチエニル、2−フェニル−3−ベンゾチエニル、6−フェニル−2−ピリジル、5−フェニル−2−ピリジル、4−フェニル−2−ピリジル、3−フェニル−2−ピリジル、6−フェニル−3−ピリジル、5−フェニル−3−ピリジル、4−フェニル−3−ピリジル、2−フェニル−3−ピリジル、2−フェニル−4−ピリジル、3−フェニル−4−ピリジル、3−フェニル−9−カルバゾリル、3−(1−ナフチル)−9−カルバゾリル、3−(2−ナフチル)−9−カルバゾリル、3,6−ジフェニル−9−カルバゾリル、3,6−ジ(1−ナフチル)−9−カルバゾリル、3,6−ジ(2−ナフチル)−9−カルバゾリル、3,6−ジ(4−ter
t−ブチルフェニル)−9−カルバゾリル、9−フェニル−3−カルバゾリル、9−(1−ナフチル)−3−カルバゾリル、および9−(2−ナフチル)−3−カルバゾリルである。
【0042】
任意の水素が炭素数2〜30のヘテロアリールで置き換えられた「炭素数2〜30のヘテロアリール」の例は、2、2’−ビピリジル−6−イル、2、3’−ビピリジル−6−イル、2、4’−ビピリジル−6−イル、3、2’−ビピリジル−6−イル、3、3’−ビピリジル−6−イル、3、4’−ビピリジル−6−イル、3−(インドール−1−イル)ピリジン−2−イル、4−(インドール−1−イル)ピリジン−2−イル、5−(インドール−1−イル)ピリジン−2−イル、6−(インドール−1−イル)ピリジン−2−イル、2−(インドール−1−イル)ピリジン−3−イル、4−(インドール−1−イル)ピリジン−3−イル、5−(インドール−1−イル)ピリジン−3−イル、6−(インドール−1−イル)ピリジン−3−イル、2−(インドール−1−イル)ピリジン−4−イル、3−(インドール−1−イル)ピリジン−4−イル、3−(カルバゾール−9−イル)ピリジン−2−イル、4−(カルバゾール−9−イル)ピリジン−2−イル、5−(カルバゾール−9−イル)ピリジン−2−イル、6−(カルバゾール−9−イル)ピリジン−2−イル、2−(カルバゾール−9−イル)ピリジン−3−イル、4−(カルバゾール−9−イル)ピリジン−3−イル、5−(カルバゾール−9−イル)ピリジン−3−イル、6−(カルバゾール−9−イル)ピリジン−3−イル、2−(カルバゾール−9−イル)ピリジン−4−イル、3−(カルバゾール−9−イル)ピリジン−4−イル、3−(イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル、4−(イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル、5−(イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル、6−(イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル、2−(イミダゾール−1−イル)ピリジン−3−イル、4−(イミダゾール−1−イル)ピリジン−3−イル、5−(イミダゾール−1−イル)ピリジン−3−イル、6−(イミダゾール−1−イル)ピリジン−3−イル、2−(イミダゾール−1−イル)ピリジン−4−イル、3−(イミダゾール−1−イル)ピリジン−4−イル、3−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル、4−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル、5−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル、6−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ピリジン−2−イル、2−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ピリジン−3−イル、4−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ピリジン−3−イル、5−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ピリジン−3−イル、6−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ピリジン−3−イル、2−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ピリジン−4−イル、3−(ベンゾ[d]イミダゾール−1−イル)ピリジン−4−イル、3−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ピリジン−2−イル、4−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ピリジン−2−イル、5−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ピリジン−2−イル、6−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ピリジン−2−イル、2−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ピリジン−3−イル、4−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ピリジン−3−イル、5−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ピリジン−3−イル、6−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ピリジン−3−イル、2−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ピリジン−4−イル、および3−(1−フェニルベンゾ[d]イミダゾール−2−イル)ピリジン−4−イルである。
【0043】
任意の水素がシリルで置き換えられた「炭素数2〜30のヘテロアリール」の例は、5−トリメチルシリル−2−チエニル、5−トリメチルシリル−3−チエニル、2,5−ジトリメチルシリル−3−チエニル、3−トリメチルシリル−2−ベンゾチエニル、2−トリメチルシリル−3−ベンゾチエニル、6−トリメチルシリル−2−ピリジル、5−トリメチルシリル−2−ピリジル、4−トリメチルシリル−2−ピリジル、3−トリメチルシリル−2−ピリジル、6−トリメチルシリル−3−ピリジル、5−トリメチルシリル−3−ピリジル、4−トリメチルシリル−3−ピリジル、2−トリメチルシリル−3−ピリジル、2−トリメチルシリル−4−ピリジル、3−トリメチルシリル−4−ピリジル、2−トリメチルシリル−1−インドリル、3−トリメチルシリル−9−カルバゾリル、3,6−ジトリメチルシリル−9−カルバゾリル、および9−トリメチルシリル−3−カルバゾリルである。
【0044】
〜R16における「置換されていてもよいアルキル」の「アルキル」としては、例えば、「炭素数1〜24のアルキル」があげられる。「炭素数1〜24のアルキル」の例は前記「アリール」の置換基の説明であげた基が同様に例示される。「炭素数1〜24のアルキル」における任意の水素は炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、またはシリルで置き換えられてもよい。炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、またはシリルの例は、前記「アリール」の説明であげた基が同様に例示される。
【0045】
〜R16における「置換されていてもよいシクロアルキル」の「シクロアルキル」としては、例えば、「炭素数3〜12のシクロアルキル」があげられる。「炭素数3〜12のシクロアルキル」の例は前記「アリール」の置換基の説明であげた基が同様に例示される。「炭素数3〜12のシクロアルキル」の任意の水素は炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数6〜30のアリール、炭素数2〜30のヘテロアリール、またはシリルで置き換えられてもよい。炭素数1〜24のアルキル、炭素数3〜12のシクロアルキル、炭素数6〜30のアリール炭素数2〜30のヘテロアリール、またはシリルの例は、前記「アリール」の説明であげた基が同様に例示される。
【0046】
2.式(1)で表されるベンゾ[a]カルバゾール化合物の具体例
本発明の化合物の具体例は以下に列記する式によって示されるが、本発明はこれらの具体的な構造の開示によって限定されることはない。式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(1−1)〜(1−50)で表される化合物があげられる。中でも、式(1−1)〜(1−5)、(1−11)、(1−12)、(1−15)〜(1−17)、(1−27)〜(1−37)、(1−52)、および(1−53)で表される化合物が好ましく、式(1−1)〜(1−5)、式(1−15)〜(1−17)、および式(1−35)〜(1−37)で表される化合物がさらに好ましい。
【0047】

【0048】

【0049】

【0050】

【0051】

【0052】
3.式(1)で表されるベンゾ[a]カルバゾール化合物の製造方法
式(1)で表されるベンゾカルバゾール化合物は、既知の合成法を利用して製造することができる。例えば、下記の反応1〜3に示す経路をたどって合成することができる。
【0053】

まず反応1では、パラジウム触媒または銅触媒を用いて、塩基および反応促進剤の存在下、11H−ベンゾ[a]カルバゾールにArの臭化物またはヨウ化物を反応させて、11位にArを付ける。ここでArは前記と同じである。11H−ベンゾ[a]カルバゾールはSynlett,No.7,2006,pp1021−1022の記載を参照して製造することができる。
【0054】

続いて反応2では、常法に従って置換ベンゾ[a]カルバゾールの5、8位を臭素化またはヨウ素化する。
【0055】

2つのカルバゾリルが同一である式(1)の化合物を得るためには、反応3で、再びパラジウム触媒または銅触媒を用いて、塩基および反応促進剤の存在下、置換ベンゾ[a]カルバゾールの臭化物またはヨウ化物に2倍モルのカルバゾールを反応させて、本発明の式(1)で表される化合物を製造する。式中のArおよびR〜R16は前記と同じである。
【0056】
また、異なるカルバゾリルが連結した式(1)の化合物を得るためには、反応3を2段階に分けて行い、それぞれの段階で異なるカルバゾール化合物を各々基質の同モル反応させればよい。このとき、第1段の反応においてベンゾ[a]カルバゾールの8位は5位に比べて縮合したベンゼン環の立体障害の影響を受けにくく、緩和反応条件(例えば、低い温度、弱アルカリ性雰囲気等)で8位に優先的にカルバゾリルを連結させることができる。
【0057】
反応1および反応3において銅触媒を用いる場合には、銅粉、酸化銅またはハロゲン化銅等が触媒に用いられる。使用される塩基は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化ナトリウム等であり、反応促進剤はクラウンエーテル(例えば、18−クラウン−6−エーテル)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル(PEGDM)等があげられる。そして、反応溶媒にはN,N−ジメチルホルムアミド、ニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド、ジクロロベンゼン、キノリン等が用いられる。反応温度は160〜250℃であるが、基質の反応性が低い場合にはオートクレーブ等を用いてより高温の反応を行ってもよい。
【0058】
反応1および反応3においてパラジウム触媒を用いる場合には、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、臭化パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等が触媒に用いられる。使用される塩基は炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、水素化ナトリウム、アルコキシカリウム(例えば、メトキシカリウム、エトキシカリウム、ノルマルプロポキシカリウム、イソプロポキシカリウム、n−ブトキシカリウムおよびtert−ブトキシカリウム等)アルコキシナトリウム(例えば、メトキシナトリウム、エトキシナトリウム、ノルマルプロポキシナトリウム、イソプロポキシナトリウム、n−ブトキシナトリウムおよびtert−ブトキシナトリウム等))があげられる。反応促進剤は2,2’−(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、1,1’−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、ジシクロヘキシルホスフィノビフェニル、ジ−tert−ブチルホスフィノビフェニル、トリ(tert−ブチル)ホスフィン、1−(N,N−ジメチルアミノメチル)−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセン、1−(N,N−ジブチルアミノメチル)−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセン、1−(メトキシメチル)−2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセン、1,1’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)フェロセン、2,2’−ビス(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル、2−メトキシ−2’−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル等が使用される。そして、反応溶媒にはベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素溶媒が用いられる。溶媒は単独で用いてもよく、混合溶媒として用いてもよい。反応温度は通常50〜200℃の範囲で実施されるが、より好ましくは80〜140℃である。
【0059】
反応2における臭素化反応では、臭素化剤は特に限定されないが、例えば、臭素、N−ブロモスクシンイミド、臭化銅、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド等があげられ、N−ブロモスクシンイミドが好適に用いられる。反応溶媒にはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、アセトニトリウム、酢酸、硫酸等が用いられる。溶媒は単独で用いてもよく、混合溶媒として用いてもよい。反応温度は通常0℃〜150℃の範囲で実施されるが、より好ましくは20〜100℃である。
【0060】
反応2におけるヨウ素化反応では、ヨウ素化剤は特に限定されないが、例えば、ヨウ素化カリウムとヨウ素酸カリウム、N−ヨードスクシンイミド、ジクロロヨウ素酸ベンジルトリメチルアンモニウム等があげられ、N−ヨードスクシンイミドが好適に用いられる。反応溶媒にはN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、アセトニトリウム、酢酸、硫酸等が用いられる。溶媒は単独で用いてもよく、混合溶媒として用いてもよい。反応温度は通常0℃〜150℃の範囲で実施されるが、より好ましくは20〜100℃である。
【0061】
式(1)で表されるベンゾ[a]カルバゾール化合物は、非対称の分子構造を持っているため、有機EL素子作製時にアモルファス状態を形成しやすい。また、耐熱性に優れ、電界印加時においても安定である。
【0062】
式(1)で表されるベンゾ[a]カルバゾール化合物は、ホスト発光材料として有効である。式(1)で表されるベンゾ[a]カルバゾール化合物は、発光波長が短く、蛍光青色ホスト発光材料としても使用することが可能であるが、特に、式(1)で表されるベンゾカルバゾール化合物は、三重項状態エネルギーレベル(T1)が高いことにより、緑色燐光ホスト材料として有効である。緑色燐光素子のホスト材料として用いた場合は、緑色ドーパントへのエネルギー移動が効率よく行われ、高効率、長寿命の燐光発光素子が得られる。
【0063】
ベンゾ[a]カルバゾール基本骨格の5、8位の水素がアリールで置換されると、燐光発光が長波長シフトしやすく、緑色燐光ホスト材料に不適当となるが、9−カルバゾリルで置換されると長波長シフトが起こらずに、ベンゾ[a]カルバゾールに由来する緑色燐光の発光波長を維持することができる。
【0064】
式(1)で表されるベンゾ[a]カルバゾール化合物は置換基の数によっても燐光波長をコントロールできる。特に置換基の数が少ない方が、燐光波長が短く、色純度のよい緑色燐光を高効率に発光させることができる。すなわち、式(1)の置換基R〜R16がすべて水素であるベンゾ[a]カルバゾール化合物の方が置換されたベンゾ[a]カルバゾール化合物より、緑色燐光ホスト発光材料として優れている。例えば、式(1−1)で表されるベンゾ[a]カルバゾール化合物が緑色燐光ホスト発光材料として特に優れている。
【0065】
また、式(1)で表されるベンゾ[a]カルバゾール化合物は置換基の数や種類によって分子間相互作用をコントロールできる。具体的には非放射失活を抑制し、高効率に発光させることができる。さらに、本発明の化合物は置換基の数によって蛍光または燐光波長をコントロールすることにより、蛍光青色ホスト材料や赤色燐光ホスト材料にも好適となる。
【0066】
式(1)で表されるベンゾ[a]カルバゾール化合物は、安定なガラス状態を呈し、蒸着等により安定なアモルファス膜を形成することができる。また、有機溶剤に対する溶解度が大きく、再結晶やカラムクロマトによる精製が容易だけでなく、発光素子の層形成の際にも自由な層形成手段を採用することができる。例えば、一般的に、蒸着法による層形成では、化合物の分解や製膜された層の結晶構造的な不均一性のおそれがあるが、種々の溶媒を用いて、容易にスピンコート法を採用することができるため、これらのおそれをなくした層形成が可能となる。
【0067】
4.有機電界発光素子
本発明に係るベンゾ[a]カルバゾール化合物は、例えば、有機EL素子の材料として用いることができる。
【0068】
<有機EL素子の構造>
本発明の有機EL素子の構造は各種の態様があるが、基本的には陽極と陰極との間に少なくとも正孔輸送層、発光層、電子輸送層を挟持した多層構造である。素子の具体的な構成の例は、(1)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、(2)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、(3)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極、(4)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/陰極、等である。
【0069】
<発光層>
本発明の発光材料は、高い発光量子効率、正孔注入性、正孔輸送性、電子注入性および電子輸送性を持っているので、発光材料として発光層に有効に使用できる。本発明の有機EL素子は、本発明の化合物のみで発光層を形成することができる。本発明の有機EL素子は、本発明の発光材料と他の発光材料を組合わせることにより、発光輝度や発光効率の向上させたり、青色、緑色、赤色や白色の発光を得ることもできる。このとき本発明の有機EL素子は、本発明の化合物をホストとして用いることが好ましい。
【0070】
本発明の化合物と共に発光層に使用できる他の発光材料は、東レリサーチセンター調査研究部門編、“有機ELディスプレスの本格実用化最前線”、あさひ高速印刷株式会社出版(2002)P125〜132に記載されているような発光材料、城戸淳二監修、“有機EL材料とディスプレイ”シーエムシー社出版(2001)P153〜156、に記載されているような発光材料、P170〜172に記載されているような三重項材料等である。
【0071】
他の発光材料として使用できる化合物は、多環芳香族化合物、ヘテロ芳香族化合物、有機金属錯体、色素、高分子系発光材料、スチリル誘導体、クマリン誘導体、ボラン誘導体、オキサジン誘導体、スピロ環を有する化合物、オキサジアゾール誘導体、フルオレン誘導体等である。多環芳香族化合物の例は、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、ナフタセン誘導体、ピレン誘導体、クリセン誘導体、ペリレン誘導体、コロネン誘導体、ルブレン誘導体等である。ヘテロ芳香族化合物の例は、ジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ピリジン誘導体、ピラン誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体、トリフェニルアミノ基を有するチオフェン誘導体、キナクリドン誘導体等である。有機金属錯体の例は、亜鉛、アルミニウム、ベリリウム、ユーロピウム、テルビウム、ジスプロシウム、イリジウム、白金、レニウム、オスミウム、銀、金等と、キノリノール誘導体、ベンゾキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、フェニルピリジン誘導体、フェニルベンゾイミダゾール誘導体、ピロール誘導体、ピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体等との錯体である。色素の例は、キサンテン誘導体、ポリメチン誘導体、ポルフィリン誘導体、クマリン誘導体、ジシアノメチレンピラン誘導体、ジシアノメチレンチオピラン誘導体、オキソベンズアントラセン誘導体、カルボスチリル誘導体、ペリレン誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体等の色素が挙げられる。高分子系発光材料の例は、ポリパラフェニルビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリシラン誘導体、ポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体等である。スチリル誘導体の例は、アミン含有スチリル誘導体、スチリルアリーレン誘導体等である。
【0072】
本発明の化合物をホストとして使用する際の発光性ドーパントは、既知の化合物を用いることができ、所望の発光色に応じて様々な材料の中から選択することができる。具体的には、例えば、スチルベン構造を有するアミン、芳香族アミン、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ボラン誘導体、ピラン誘導体、イリジウム錯体、白金錯体またはレニウム錯体があげられる。中でもイリジウム錯体、白金錯体またはレニウム錯体の緑色燐光ドーパント材料が好ましい。
【0073】
イリジウム錯体としては、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III):(Ir(ppy))、トリス(2−(4−トリル)ピリジン)イリジウム(III):(Ir(mppy))、ビス(2−フェニルピリジン)アセチルアセトナートイリジウム(III):(Ir(ppy)2(acac))、ビス(2−フェニルピリジン)(1−フェニルピラゾール)イリジウム(III):(Ir(ppy)2(ppz))等があげられる。


【0074】
白金錯体としては、3,3’−(6,6’−(プロパン−2,2−ジイル)ビス(ピリジン−6,2−ジイル))ジベンゾニトリル白金:(Pt−1)、ビス(2−(3−tert−ブチルピラゾール−5−イル)ピリジン)白金:(Pt−2)、ビス(2−(3−tert−ブチル−1,2,4−トリアゾル−5−イル)ピリジン)白金:(Pt−3)等があげられる。


【0075】
レニウム錯体としては、下記のRe−1等があげられる。


【0076】
その他ドーパントとしては、化学工業2004年6月号13頁およびそれにあげられた参考文献等に記載された化合物の中から、適宜選択して用いることができる。
【0077】
<電子輸送層/電子注入層>
本発明の有機EL素子に使用される電子輸送材料および電子注入材料は、光導電材料において電子伝達化合物として使用できる化合物、有機EL素子の電子注入層および電子輸送層に使用できる化合物の中から任意に選択して用いることができる。
【0078】
このような電子伝達化合物の例は、ベンゾイミダゾール誘導体、キノリノール系金属錯体、ピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チオフェン誘導体、トリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、オキシン誘導体の金属錯体、キノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体のポリマー、ベンザゾール類化合物、ガリウム錯体、ピラゾール誘導体、パーフルオロ化フェニレン誘導体、トリアジン誘導体、ピラジン誘導体、ベンゾキノリン誘導体、イミダゾピリジン誘導体、ボラン誘導体である。
【0079】
電子伝達化合物の好ましい例は、ベンゾイミダゾール誘導体、キノリノール系金属錯体、ピリジン誘導体またはフェナントロリン誘導体である。中でもベンゾイミダゾール誘導体がより好ましい。
【0080】
ベンゾイミダゾール誘導体は下記式(E−1)で表される化合物である。


式中、Ar〜Arはそれぞれ独立に水素または置換されていてもよい炭素数6〜30のアリールである。特に、Arが置換されていてもよいアントリルであるベンゾイミダゾール誘導体が好ましい。
【0081】
炭素数6〜30のアリールの具体例は、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アセナフチレン−1−イル、アセナフチレン−3−イル、アセナフチレン−4−イル、アセナフチレン−5−イル、フルオレン−1−イル、フルオレン−2−イル、フルオレン−3−イル、フルオレン−4−イル、フルオレン−9−イル、フェナレン−1−イル、フェナレン−2−イル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル,9−フェナントリル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、フルオランテン−1−イル、フルオランテン−2−イル、フルオランテン−3−イル、フルオランテン−7−イル、フルオランテン−8−イル、トリフェニレン−1−イル、トリフェニレン−2−イル、ピレン−1−イル、ピレン−2−イル、ピレン−4−イル、クリセン−1−イル、クリセン−2−イル、クリセン−3−イル、クリセン−4−イル、クリセン−5−イル、クリセン−6−イル、ナフタセン−1−イル、ナフタセン−2−イル、ナフタセン−5−イル、ペリレン−1−イル、ペリレン−2−イル、ペリレン−3−イル、ペンタセン−1−イル、ペンタセン−2−イル、ペンタセン−5−イル、ペンタセン−6−イルである。
【0082】
ベンゾイミダゾール誘導体の具体例は、1−フェニル−2−(4−(10−フェニルアントラセン−9−イル)フェニル)−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(4−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(3−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、5−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)−1,2−ジフェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1−(4−(10−(ナフタレン−2−イル)アントラセン−9−イル)フェニル)−2−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、2−(4−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)フェニル)−1−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、1−(4−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)フェニル)−2−フェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾール、および5−(9,10−ジ(ナフタレン−2−イル)アントラセン−2−イル)−1,2−ジフェニル−1H−ベンゾ[d]イミダゾールである。
【0083】
キノリノール系金属錯体の具体例は、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム(以下、ALQと略記する。)、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(3,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,5−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、トリス(4,6−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,3−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,4−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,5,6−テトラメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリン)ベリリウム、および8−キノリノラートリチウムである。
【0084】
ピリジン誘導体の具体例は、2,5−ビス(2,2’−ビピリジル−6−イル)−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール、2,5−ビス(2,2’−ビピリジル−6−イル)−1,1−ジメチル−3,4−ジメシチルシロール、9,10−ジ(2,2’−ビピリジル−6−イル)アントラセン、9,10−ジ(2,2’−ビピリジル−5−イル)アントラセン、9,10−ジ(2,3’−ビピリジル−6−イル)アントラセン、9,10−ジ(2,3’−ビピリジル−5−イル)−2−フェニルアントラセン、9,10−ジ(2,2’−ビピリジル−5−イル)−2−フェニルアントラセン、3,4−ジフェニル−2,5−ジ(2,2’−ビピリジル−6−イル)チオフェン、3,4−ジフェニル−2,5−ジ(2,3’−ビピリジル−5−イル)チオフェン、および6’6”−ジ(2−ピリジル)2,2’:4’,4”:2”,2”’−クアテルピリジンである。
【0085】
フェナントロリン誘導体の具体例は、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、9,10−ジ(1,10−フェナントロリン−2−イル)アントラセン、2,6−ジ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ピリジン、1,3,5−トリ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ベンゼン、9,9’−ジフルオル−ビス(1,10−フェナントロリン−5−イル)、バソクプロイン、および1,3−ビス(2−フェニル−1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンである。
【0086】
<正孔阻止層>
正孔阻止層は、正孔と電子とを発光層内に閉じ込めて、発光効率を向上させる役割を果たすものである。正孔阻止層は、陽極から移動してくる正孔が陰極に到達するのを阻止し、陰極から注入された電子を効率よく発光層の方向に輸送することができる物質であるのが望ましい。すなわち、正孔阻止層を形成する材料には、発光効率を向上させるために、電子移動度が高く、正孔移動度が低いという性質が求められる。加えて、有機電界発光素子の長寿命化の要請から、駆動安定性が高いことも求められている。
【0087】
具体的には、有機金属錯体(混合配位子錯体、二核金属錯体等)、スチリル化合物(ジスチリルビフェニル誘導体等)、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ボラン誘導体およびアントラセン誘導体(例えば、特開2006-049570号公報に記載されたもの)等があげられる。これらの材料は単独でも用いられるが、異なる材料と混合して使用しても構わない。
【0088】
これらの中でも、有機金属錯体(混合配位子錯体、二核金属錯体等)、フェナントロリン誘導体又はボラン誘導体が好ましい。
【0089】
有機金属錯体(混合配位子錯体、二核金属錯体等)の具体例は、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(フェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−メチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム(以下、Balqと略記する。)、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,3−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,4−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4−ジフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,5−ジフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,6−ジフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリフェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,6−トリメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2,4,5,6−テトラメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(2−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(2−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(4−フェニルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジメチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)(3,5−ジ−tert−ブチルフェノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2,4−ジメチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−エチル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−4−メトキシ−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム、およびビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム−μ−オキソ−ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウムである。
【0090】
フェナントロリン誘導体の具体例は、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(以下、BCPと略記する)、2,4,9,7−テトラフェニル−1,10−フェナントロリン、9,10−ジ(1,10−フェナントロリン−2−イル)アントラセン、2,6−ジ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ピリジン、1,3,5−トリ(1,10−フェナントロリン−5−イル)ベンゼン、および1,3−ビス(2−フェニル−1,10−フェナントロリン−9−イル)ベンゼンである。
【0091】
ボラン誘導体の具体例は、9−(4’−ジメシチルボリルビフェニル−4−イル)−9H−カルバゾール、9−(4−(4−ジメシチルボリルナフタレン−1−イル)フェニル)−9H−カルバゾール、9−(4−(4−ジメシチルボリルフェニル)ナフタレン−1−イル)−9H−カルバゾール、9−(4−(6−ジメシチルボリルナフタレン−2−イル)フェニル)−9H−カルバゾール、9−(6−(4−ジメシチルボリルフェニル)ナフタレン−2−イル)−9H−カルバゾール、9−(7−ジメシチルボリル−9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−9H−カルバゾール、9−(7−ジメシチルボリル−9,9−ジフェニル−9H−フルオレン−2−イル)−9H−カルバゾール、4,4’−ビス(ジメシチルボリル)ビフェニル、1−ジメシチルボリル−4−(4−ジメシチルボリルフェニル)ナフタレン、2−ジメシチルボリル−6−(4−ジメシチルボリルフェニル)ナフタレン、2,7−ビス(ジメシチルボリル)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン、および2,7−ビス(ジメシチルボリル)−9,9−ジフェニル−9H−フルオレンである。また、特願2005-210638号公報に記載されたボラン誘導体を用いてもよい。
【0092】
<正孔輸送層/正孔注入層>
本発明の有機EL素子に使用される正孔注入材料および正孔輸送材料については、光導電材料において、正孔の電荷輸送材料として従来から慣用されている化合物や、有機EL素子の正孔注入層および正孔輸送層に使用されている公知のものの中から任意のものを選択して用いることができる。それらの例は、カルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、フタロシアニン誘導体である。カルバゾール誘導体の例は、N−フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールである。トリアリールアミン誘導体の例は、芳香族第3級アミンを主鎖あるいは側鎖に持つポリマー、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(3−メチルフェニル)−4,4'−ジアミノビフェニル、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジナフチル−4,4'−ジアミノビフェニル(以下、NPDと略記する。)、4,4’,4”−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン、スターバーストアミン誘導体である。フタロシアニン誘導体の例は、無金属フタロシアニン、銅フタロシアニンである。
【0093】
<有機EL素子の作製方法>
本発明の有機EL素子を構成する各層は、各層を構成すべき材料を蒸着法、スピンコート法またはキャスト法等の方法で薄膜とすることにより、形成することができる。このようにして形成された各層の膜厚については特に限定はなく、材料の性質に応じて適宜設定することができるが、通常2nm〜5000nmの範囲である。なお、発光材料を薄膜化する方法は、均質な膜が得やすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から蒸着法を採用するのが好ましい。蒸着法を用いて薄膜化する場合、その蒸着条件は、本発明の発光材料の種類、分子累積膜の目的とする結晶構造および会合構造等により異なる。蒸着条件は一般的に、ボート加熱温度+50〜+400℃、真空度10−6〜10−3Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−150〜+300℃、膜厚5nm〜5μmの範囲で適宜設定することが好ましい。
【0094】
本発明の有機EL素子は、前記のいずれの構造であっても、基板に支持されていることが好ましい。基板は機械的強度、熱安定性および透明性を有するものであればよく、ガラス、透明プラスチックフィルム等を用いることができる。陽極物質は4eVより大きな仕事関数を有する金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を用いることができる。その例は、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(以下、ITOと略記する)、SnO、ZnO等である。
【0095】
陰極物質は4eVより小さな仕事関数の金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物を使用できる。その例は、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、マグネシウム合金、アルミニウム合金等である。合金の例は、アルミニウム/フッ化リチウム、アルミニウム/リチウム、マグネシウム/銀、マグネシウム/インジウム等である。有機EL素子の発光を効率よく取り出すために、電極の少なくとも一方は光透過率を10%以上にすることが望ましい。電極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下にすることが好ましい。なお、膜厚は電極材料の性質にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜400nmの範囲に設定される。このような電極は、上述の電極物質を使用して、蒸着やスパッタリング等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。
【0096】
次に、本発明の発光材料を用いて有機EL素子を作成する方法の一例として、前述の陽極/正孔注入層/正孔輸送層/本発明の発光材料+ドーパント(発光層)/電子輸送層/陰極からなる有機EL素子の作成法について説明する。適当な基板上に、陽極材料の薄膜を蒸着法により形成させて陽極を作製した後、この陽極上に正孔注入層および正孔輸送層の薄膜を形成させる。この上に本発明の発光材料とドーパントを共蒸着し薄膜を形成させて発光層とし、この発光層の上に電子輸送層を形成させ、さらに陰極用物質からなる薄膜を蒸着法により形成させて陰極とすることにより、目的の有機EL素子が得られる。なお、上述の有機EL素子の作製においては、作製順序を逆にして、陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
【0097】
このようにして得られた有機EL素子に直流電圧を印加する場合には、陽極を+、陰極を−の極性として印加すればよく、電圧2〜40V程度を印加すると、透明または半透明の電極側(陽極または陰極、および両方)より発光が観測できる。また、この有機EL素子は、交流電圧を印加した場合にも発光する。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
【0098】
本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明する。
[合成例1]化合物(1−1)の合成
下記の反応により化合物(1−1):5,8−ジ(カルバゾール−9−イル)−11−フェニルベンゾ[a]カルバゾールを合成した。
【0099】
<11−フェニルベンゾ[a]カルバゾールの合成>


Synlett,No.7,2006,pp1021−1022の記載に従って合成した11H−ベンゾ[a]カルバゾール6.52gとブロモベンゼン5.65gを、窒素雰囲気下脱水キシレン150mlに溶解させ、酢酸パラジウム0.34g、炭酸カリウム12.44g、そしてトリ(tert−ブチル)ホスフィン0.91を加えて8時間還流した。反応後水を100ml加えて撹拌し、分液後有機層を水洗した。有機層をロータリーエバポレーターにて濃縮し、得られた粗製品をシリカゲルでカラム精製(溶媒:へプタン/トルエン=3/1(容積比))を行って、中間体の化合物(1−1a):11−フェニルベンゾ[a]カルバゾール7.2g(収率:82%)を得た。
【0100】
<5,8−ジヨード−11−フェニルベンゾ[a]カルバゾールの合成>


中間体化合物(1−1a)5.45gとN−ヨードスクシンイミド(NIS)8.36gを、窒素雰囲気下ジクロロメタン56mlに溶解させ、酢酸37mlを加えて、室温で15時間攪拌した。その後、N−ヨードスクシンイミド(NIS)2.1gを追加して、さらに室温で9時間攪拌した。反応後水を100ml添加し、溶媒を減圧留去した後、析出した固体をろ別して粗製品を得た。その粗製品をシリカゲルでカラム精製(溶媒:トルエン)を行った後、中間体の化合物(1−1b):5,8−ジヨード−11−フェニルベンゾ[a]カルバゾール9.5g(収率:94%)を得た。
【0101】
<5,8−ジ(カルバゾール−9−イル)−11−フェニルベンゾ[a]カルバゾールの合成>


窒素雰囲気下、中間体化合物(1−1b)5.45g、カルバゾール4.18g、銅粉2.54g、炭酸カリウム11.06g、18−クラウン−6エーテル(18−C−6)0.21g、およびo−ジクロロベンゼン50mlをフラスコに入れて、180℃で14時間還流した。反応液を冷却し、ろ過して固体を除去した後、ろ液を減圧濃縮した。得られた固形物をメタノールで洗浄し、化合物(1−1):5,8−ジ(カルバゾール−9−イル)−11−フェニルベンゾ[a]カルバゾールの粗製品を得た。その粗製品をシリカゲルでカラム精製(溶媒:へプタン/トルエン=3/1(容積比))を行い、さらにトルエン/イソプロピルアルコール(1/2(容積比))から再結晶した後、昇華精製して、目的の化合物(1−1)2.5g(収率:40.1%)を得た。MSスペクトルおよびNMR測定により化合物(1−1)の構造を確認した。
H−NMR(CDCl): σ=8.37(s,1H)、8.27(d,1H)、8.23〜8.14(m,4H)、7.81〜7.73(m,5H)、7.63〜7.61(m,1H)、7.58〜7.56(m,1H)、7.43〜7.26(m,14H)、7.08(s,1H)、7.06(d,1H).
その他の物性は以下の通りであった。
ガラス転移温度(Tg):182℃ [測定機器:Diamond DSC (PERKIN−ELMER社製); 測定条件: 冷却速度200℃/Min.、昇温速度10℃/Min.]
【0102】
原料の化合物を適宜選択することにより、上記の合成例に準じた方法で、本発明の他のベンゾ[a]カルバゾール化合物を合成することができる。
【0103】
[合成例2]比較例化合物(2−1)の合成
下記の反応4により比較例化合物(2−1):5,8,11−トリフェニルベンゾ[a]カルバゾールを合成した。


【0104】
窒素雰囲気下、前記の中間体の化合物(1−1b)3.6g、フェニルボロン酸1.77g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh))0.3g、炭酸ナトリウム2.8gおよびトルエンとエタノールの混合溶媒30ml(トルエン/エタノール=4/1(容積比))をフラスコに入れて5分間攪拌した。その後水10mlを加え4時間還流した。加熱終了後反応液を冷却し、有機層を分取して、これを飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を除去し、溶媒を減圧留去して得られた固体を、シリカゲルでカラム精製(溶媒:へプタン/トルエン=4/1(容積比))を行い、さらにヘプタンから再結晶した後、昇華精製して、目的の化合物(2−1):5,8,11−トリフェニルベンゾ[a]カルバゾール0.8g(収率:27.6%)を得た。MSスペクトルおよびNMR測定により化合物(2−1)の構造を確認した。
H−NMR(CDCl): σ=8.37(d,1H)、8.22(s,1H)、8.03(d,1H)、7.72〜7.58(m,10H)、7.55〜7.44(m,6H)、7.38〜7.32(m,2H)、7.25〜7.21(m,2H).
他の物性は以下の通りであった。
ガラス転移温度(Tg):93.5℃ [測定機器:Diamond DSC (PERKIN−ELMER社製); 測定条件: 冷却速度200℃/Min.、昇温速度10℃/Min.]
【0105】
[合成例3]比較例化合物(2−2)の合成
下記の反応5により比較化合物(2−2):5,8−ジ(m−テルフェニル−5’−イル、)−11−フェニルベンゾ[a]カルバゾールを合成した。


【0106】
窒素雰囲気下、中間体の化合物(1−1b)2.72g、m−テルフェニル−5’−ボロン酸2.88g、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(Pd(PPh))0.23g、炭酸ナトリウム2.12gおよびトルエンとエタノールの混合溶媒50ml(トルエン/エタノール=4/1(容積比))をフラスコに入れて5分間攪拌した。その後水8mlを加え5時間還流した。加熱終了後反応液を冷却し、有機層を分取して、これを飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を除去し、溶媒を減圧留去して得られた固体を、シリカゲルでカラム精製(溶媒:へプタン/トルエン=3/1(容積比))を行い、さらに活性炭でカラム精製(溶媒:トルエン)を行った後、昇華精製して、目的の化合物(2−2)1.5g(収率:40%)を得た。MSスペクトルおよびNMR測定により化合物(2−2):5,8−ジ(m−テルフェニル−5’−イル、)−11−フェニルベンゾ[a]カルバゾールの構造を確認した。
H−NMR(CDCl): σ=8.51(d,1H)、8.37(s,1H)、8.19(d,1H)、7.92〜7.57(m,21H)、7.50〜7.25(m,15H).
他の物性は以下の通りであった。
ガラス転移温度(Tg):158.1℃ [測定機器:Diamond DSC (PERKIN−ELMER社製); 測定条件: 冷却速度200℃/Min.、昇温速度10℃/Min.]
【0107】
化合物(1−1)、比較例のベンゾ[a]カルバゾール化合物(2−1)、(2−2)、およびCBP((株)同仁化学研究所製)の物性値をまとめて下記の表1に示した。融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)および結晶化温度(Tc)は、Perkin−Elmer社製のDiamond DSCを用いて測定した(測定条件:冷却速度200℃/分、昇温速度10℃/分)。薄膜蛍光最大波長(λmax)は、日本分光製V−560型分光光度計を用いて励起波長を360nmとして測定した。
【0108】
表1中の化合物CBPは下記の構造を有する。


【0109】
【表1】

【0110】
この測定結果から、式(1)で表されるベンゾ[a]カルバゾール化合物が安定なガラス状態を持ち、蒸着等により安定なアモルファス膜を形成することが期待できる。また、薄膜蛍光最大波長から見ると、本発明の化合物が蛍光青色ホスト発光材料として使用することが可能である。
【0111】
[実施例]
上記3種のベンゾ[a]カルバゾール化合物およびCBPを燐光ホスト材料とし、Ir(ppy)を燐光緑色ドーパントとして用い、燐光量子収率を測定した。測定はJapanese Journal of Applied Physics Vol. 43, No.11A, 2004, pp.7729-7730.の記載に従って行った。
【0112】
<サンプルの作製>
以下のように、発光量子収率測定用サンプルを作製した。
基板は合成石英基板(10mm×10mm×0.7t)を用いた。この基板を市販の蒸着装置の基板ホルダ−に固定した。蒸着面積の直径が5mmφとなるよう、金属製のマスクも基板ホルダーへ同時に装着した。ホスト材料を入れたモリブデン製蒸着用ボート、ドーパント材料を入れたモリブデン製蒸着用ボートを同蒸着装置へ装着した。真空槽を5×10−4Paまで減圧し、ホスト材料が入ったモリブデン製蒸着用ボートおよびドーパント材料を入れたモリブデン製蒸着用ボートを同時に加熱し、膜厚50nmになるように両化合物を共蒸着して測定用サンプルを形成した。このとき、ドーパント材料のドープ濃度は約5重量%であった。蒸着速度は0.01〜1nm/秒であった。
【0113】
<測定方法の説明>
Japanese Journal of Applied Physics Vol. 43, No.11A, 2004, pp.7729-7730.によれば、発光量子収率ηPLは以下の式で与えられる。


Nemissionは材料から放出されたフォトン数、NAbsorptionは材料が吸収したフォトン数であり、発光量子収率はその比として求められる。ここで、αは測定系の補正係数、λは波長、hはプランク定数、cは光速、Iem(λ)はサンプルの発光強度、Iex(λ)はサンプルを設置する前の励起光強度、I'ex(λ)はサンプルへ励起光を照射した時に観測される励起光強度である。IemとI'ex+Iemの2つのスペクトル観測を行うことで、発光量子収率の測定が可能である。
【0114】
測定装置は、励起光源、励起光ガイド部、積分球、マルチチャンネル分光器より構成される。励起光源より出力された励起光は、集光レンズ、NDフィルター、光ファイバーから構成される励起光ガイド部を介して積分球内に導入される。励起光および、サンプルの発光は、積分球内で均一に散乱され、光ファイバプローブを介してマルチチャンネル分光器によって検出される。測定は窒素ガスフロー下で行った。
【0115】
励起光光源はHeCdレーザー Kinmon IK5352R-D (波長:325nm、出力10mW)、発光スペクトルの観測には浜松ホトエレクトロニクス製のマルチチャンネル分光器 PMA-11(C7473-36)、積分球はLabsphere社IS-080-SFを使用した。
【実施例1】
【0116】
発光量子収率測定用サンプルと同様の石英基板をブランク基板とした。ブランク基板を発光量子収率測定用の基板ホルダーにセットし、励起光スペクトルIex(λ)の測定を行った。ブランク基板を取り外し、発光量子収率測定用サンプルをセットし、励起光スペクトルと発光スペクトルI'ex(λ)+Iem(λ)の観測を行った。マルチチャンネル分光器は、露光時間200ms、アベレージング回数20回の設定とした。
【0117】
化合物(1−1)を用いたサンプルの量子収率を上記と同様に測定した。測定結果を下記の表2に示した。
【0118】
[比較例1〜3]
化合物(2−1)、(2−2)およびCBPを用いたサンプルを同様に測定した。CBPを用いたサンプルの発光量子収率値を標準値として、量子収率(相対値)を算出した。測定結果を下記の表2に示した。
【0119】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の好ましい態様によれば、高いTgを有するため、発光素子に用いた際に安定な層を形成することができる。また、耐熱性、発光効率、電流効率、素子寿命および外部量子効率等の少なくとも一つにおいて、更に性能のよい有機電界発光素子、それを備えた表示装置およびそれを備えた照明装置等を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。


式(1)中、Arは置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールであり、R〜R16はそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロアリールである。
【請求項2】
Arが置換されていてもよい炭素数6〜30のアリール、置換されていてもよい炭素数2〜30のヘテロアリールであり、R〜R16がそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよい炭素数1〜24のアルキル、置換されていてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル、置換されていてもよい炭素数6〜30のアリール、または置換されていてもよい炭素数2〜30のヘテロアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Arが置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール、置換されていてもよい炭素数2〜20のヘテロアリールであり、R〜R16がすべて水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
下記式(1−1)で表される、請求項1に記載の化合物。


【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を含む発光材料。
【請求項6】
陽極および陰極からなる一対の電極間に挟持された少なくとも1つの有機化合物層を有する有機電界発光素子において、請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を該有機化合物層に含有する有機電界発光素子。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を発光層に含有する、請求項6に記載の有機電界発光素子。
【請求項8】
さらに、イリジウム錯体、白金錯体またはレニウム錯体を発光層に含有する、請求項7に記載の有機電界発光素子。
【請求項9】
さらに、前記陰極と発光層との間に配置される電子輸送層および/または電子注入層を有し、該電子輸送層および電子注入層の少なくとも1つが、キノリノール系金属錯体、ピリジン誘導体およびフェナントロリン誘導体からなる群から選択される少なくとも1つを含有する、請求項7または8に記載の有機電界発光素子。

【公開番号】特開2011−6340(P2011−6340A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149642(P2009−149642)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】