説明

ベーンにおけるシール構造

【課題】 所定のシール機能を保障するには充分でありながら、シール部材のいわゆる削減を可能にする。
【解決手段】 ハウジング内で軸芯部にシャフト4を貫通させる筒状に形成の基部31とこの基部31の外周に一体に連設されてハウジング内に二つの油室R1,R2を画成する板状に形成の本体部32とを有してなるベーン3の端部に配在されてハウジングの内周との間におけるシール性を保障するシール部材7がベーン3の本体部32におけるハウジングの内周に対向する端部32aにおける中心部に配在されながらベーン3の基部31における開口端部31aに周回するように配在されてなる一方で、基部31における軸芯線と本体部32における軸芯線とを含んでなる切断面でシール部材7が分割されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベーンにおけるシール構造に関し、特に、ロータリダンパを構成するベーンにおけるシール構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、近年の自動二輪車におけるステアリング機構にあっては、走行中における前輪の振れをロータリダンパで減衰して、自動二輪車における走行性をより安定させるとする提案がある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、特許文献1に開示されている提案にあって、ロータリダンパは、ハウジング内に二つの油室を画成するベーンの揺動時に、たとえば、このベーンに開穿されているオリフィスを作動油が通過することで減衰力を発生させるとしている。
【0004】
そして、ベーンにおける筒状に形成された基部の軸芯部を貫通するシャフトが、たとえば、自動二輪車における車体側に連結されると共に、ハウジングがステアリング機構を構成するステアリングシャフト側に連結されるとしている。
【0005】
そして、このとき、いわゆる油漏れによって、設定の減衰力が発生されなくなるのを阻止するために、特に、ハウジング内で揺動するベーンの端部とこの端部が対向するハウジングの内周との間における油漏れがベーンの端部に介装されたシール部材で阻止されるとしている。
【0006】
それゆえ、この特許文献1に開示の提案によれば、シール部材によるシール性が保障されることで、いわゆる油漏れが阻止されて、所定の減衰力が発生されることを期待し得ることになる。
【特許文献1】特開2001−99208号公報(明細書中の段落0006,同0009,同0026,同00028,図1,図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した提案のロータリダンパにあっては、その作動や機能するところにおいて不具合がある訳ではないが、その汎用性の向上を期待できないと指摘される可能性がある。
【0008】
すなわち、上記したロータリダンパにあっては、ハウジングの内周との間における油漏れを阻止するシール部材をベーンの端部に配在するにあって、シール部材における部材点数の削減を図れず、したがって、シール部材をいわゆる組み付けるにあって、手間を要すことになり、結果として、ロータリダンパにおける製品コストの低減化に寄与し得ないことになる。
【0009】
のみならず、一般的に言って、シール部材が増えるほど、すなわち、シールする面積が増えるほど摺動性、すなわち、作動性が劣ることになるとの経験側からすれば、シール部材ができるだけ削減される方が好ましいと言い得る。
【0010】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたもので、その目的とするところは、所定のシール機能を保障するには充分でありながら、シール部材のいわゆる削減を可能にして、その汎用性の向上を期待するのに最適となるベーンにおけるシール構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、この発明によるベーンにおけるシール構造の構成を、ハウジング内で軸芯部にシャフトを貫通させる筒状に形成の基部とこの基部の外周に一体に連設されてハウジング内に二つの油室を画成する板状に形成の本体部とを有してなるベーンと、このベーンの端部に配在されてハウジングの内周との間におけるシール性を保障するシール部材とを有してなるベーンにおけるシール構造において、シール部材がベーンの本体部であってハウジングの内周に対向する端部における中心部に配在されながらベーンの基部における開口端部において周回するように配在されてなる一方で、基部における軸芯線と本体部における軸芯線とを含んでなる切断面でシール部材が分割されてなるとする。
【発明の効果】
【0012】
それゆえ、請求項1の発明にあっては、ベーンにおける本体部の端部に配在されるシール部材とベーンにおける基部の開口端部に配在されるシール部材とが一体とされるので、それぞれが別体とされる場合に比較して、部材点数の削減を可能にし得る。
【0013】
そして、本体部におけるシール部材と基部におけるシール部材とが一体とされるので、それぞれが別体とされる場合に比較して、いわゆる分離部分での油漏れを危惧しなくて済む。
【0014】
また、本体部におけるシール部材と基部におけるシール部材とが一体とされるので、それぞれが別体とされる場合に比較して、シール部材を組み付ける際の手間が省ける。
【0015】
一方、シール部材がベーンの基部における軸芯線と本体部における軸芯線とを含んでなる切断面で分割されてなるから、いわゆる左右を同一に形成し得ることになり、その限りにおいて、部材点数の削減を可能にし得ることになる。
【0016】
のみならず、シール部材は、いわゆる中央で半截されるから、ベーンの端部に介在されるとき、上記の切断面を境にする一方側にのみ配在されることでも、所定のシール機能を発揮し得ることになる。
【0017】
その結果、この発明によれば、ロータリダンパにおいて、所定のシール機能を保障するには充分でありながら、シール部材のいわゆる削減を可能にして、その汎用性の向上を期待するのに最適となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明を具現化したロータリダンパは、前記した特許文献1に開示のロータリダンパと同様に、たとえば、自動二輪車の前輪側におけるステアリング機構にいわば補助的に配在されるもので、ハウジングがステアリング機構を構成するステアリングシャフト側に連結される共に、このハウジングから突出するシャフトが車体側に連結されて、ステアリングシャフトの回動をいわゆるエネルギー吸収で制御するとしている。
【0019】
すなわち、この発明によるロータリダンパは、図1および図2に示すように、ケース1(図1参照)およびキャップ2からなるハウジング内に二つの油室R1,R2(図1参照)を画成するベーン3を有してなり、図示するところでは、このベーン3の揺動時にこのベーン3に開穿されているオリフィス3aを作動油が通過することで、所定の減衰力が発生されるとしている。
【0020】
ちなみに、減衰力を発生させる構成については、上記したオリフィス3aの利用に代えて、図示しないが、このオリフィス3aの形成を省略する一方で、たとえば、図1中に仮想線図で示すように、左右の油室R1,R1を連通するバイパス路Lをキャップ2(あるいは、ケース1)に形成し、図示しないが、このバイパス路L中に適宜の構成の減衰バルブを設け、この減衰バルブによって、減衰力を発生させるように設定するとしても良く、このとき、減衰バルブが発生減衰力を高低調整し得るように設定されてなるとしても良い。
【0021】
一方、このロータリダンパにあっては、ベーン3に一体的に連結されるシャフト4を有してなり、このシャフト4の図2中での下端側がブッシュ5およびシール6の配在下にハウジングを構成するキャップ2を貫通して外部に突出するとしている。
【0022】
そして、図示しないが、このシャフト4の突出端が、前記したように、自動二輪車における車体側に連結されるとしている。
【0023】
ところで、上記のベーン3は、この種のベーンが多くの場合にそうであるように、筒状に形成された基部31と、この基部31の外周に連設された板状に形成の本体部32とを有してなり、上記の基部31の軸芯部に上記したシャフト4の図2中での上端側となる基端側が貫通し、スプライン構造下などに一体的に連結されるとしている。
【0024】
そして、このベーン3は、その外周がハウジングの内周に摺接するシール部材7を有していて、このシール部材7によってベーン3とハウジングとの間におけるシール性を保障する、すなわち、油漏れを阻止するとしている。
【0025】
そして、このとき、シール部材7は、ベーン3の本体部32であってハウジングの内周に対向する端部32aにおける中心部に配在されながらベーン3の基部31における開口端部31aにおいて周回するように配在されてなると共に、基部31における軸芯線と本体部32における軸芯線とを含んでなる切断面(図示せず)で分割されてなる、すなわち、図3に示すように、縦割りされてなるとしている。
【0026】
このとき、シール部材7は、多くの場合にそうであるように、ゴム材,プラスチック材あるいは金属材などからなるが、上記した縦割りされてなることを勘案すると、ゴム材あるいはプラスチック材からなる場合には、硬度が選択されるなどいわゆる設計変更が適宜になされるであろう。
【0027】
また、このシール部材7をベーン3の端部、すなわち、基部31の開口端部31aおよび本体部32の端部32aに配在するについては、各端部31a,32aに、図示しないが、凹溝を形成し、この凹溝内にシール部材7を収装するとしている。
【0028】
このとき、シール部材7は、いわゆる締め代を有するであろうから、ハウジング内に収装された状態で、いわゆる作動中にもこの凹溝から脱落する危惧はなく、所定のシール機能を発揮するであろう。
【0029】
そして、このシール部材7を製作するについては、多くの場合に型を利用した型成形とされるであろうが、この場合に、このシール部材7が中央で縦割りされてなることからすれば、いわゆる一つの型を用意すれば足り、いわゆる部品製作におけるコストのいたずらな高騰化を回避できることになる。
【0030】
また、このシール部材7を有するベーン3にあっては、ベーン3における本体部32の端部32aに配在されるシール部材とベーン3における基部31の開口端部31aに配在されるシール部材とが一体とされるので、それぞれが別体とされる場合に比較して、部材点数の削減を可能にし得ることになる。
【0031】
さらに、本体部32におけるシール部材と基部31におけるシール部材とが一体とされるので、それぞれが別体とされる場合に比較して、いわゆる分離部分を発現させなくて済むと共に、この分離部分での油漏れを危惧しなくて済むことになる。
【0032】
またさらに、本体部32におけるシール部材と基部31におけるシール部材とが一体とされるので、それぞれが別体とされる場合に比較して、シール部材7を組み付ける際の手間が省けることになる。
【0033】
一方、シール部材7がベーン3の基部31における軸芯線と本体部32における軸芯線とを含んでなる切断面で分割されてなるから、いわゆる左右を同一に形成し得ることになり、その限りにおいて、部材点数の削減を可能にし得ることになる。
【0034】
のみならず、シール部材7は、いわゆる中央で半截されるから、ベーン3の端部に介在されるとき、図4に示すように、上記の切断面を境にする一方側にのみ配在されることでも、所定のシール機能を発揮し得ることになる。
【0035】
また、このとき、シール部材7にあって、基部31における開口端部31aに位置決められるいわゆる端部が、図4中に実線図で示すように、いわゆる中央まで延長されるのに代えて、同じく図4中に仮想線図で示すように、中央まで延長されずしていわゆる途中で止まるように設定されてなるとしても良く、この場合には、シール部材7を形成する際のいわゆる材料の歩留まりを良くし得ることになる。
【0036】
その結果、この発明によれば、ロータリダンパにおいて、所定のシール機能を保障するには充分でありながら、シール部材7のいわゆる削減を可能にして、このシール部材7を有するベーン3を備えた状態で、その汎用性の向上を期待することが可能になる。
【0037】
前記したところでは、ロータリダンパを構成するハウジングがステアリング機構を構成するアンダーブラケットあるいはアッパーブラケットに連結されるとするが、このハウジングは、各ブラケットに附設されるのではなく、直接各ブラケットにいわゆる組込状態に一体に形成されてなるとしても良い。
【0038】
そして、前記したところでは、ロータリダンパにおけるシャフト4が自動二輪車における車体側に連繋されるとしたが、このときの車体側としては、たとえば、車体フレームあるいはヘッドパイプが候補とされるのが良い。
【0039】
また、前記したところは、この発明によるロータリダンパが自動二輪車におけるステアリング機構に附設されてなる場合を実施形態としたが、この発明に意図するところからすれば、この発明によるロータリダンパが自転車におけるステアリング機構に具現化されるとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明によるロータリダンパの内部状態を横断面で示す図である。
【図2】図1のロータリダンパの内部状態を縦断面で示す図である。
【図3】図1のロータリダンパにおけるベーンに介装されるシール部材のみを示す斜視図である。
【図4】他の実施形態のベーンを有するロータリダンパを図1と同様に示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ハウジングを構成するケース
2 ハウジングたるキャップ
3 ベーン
4 シャフト
7 シール部材
31 基部
31a 開口端部
32 本体部
32a 端部
R1,R2 油室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内で軸芯部にシャフトを貫通させる筒状に形成の基部とこの基部の外周に一体に連設されてハウジング内に二つの油室を画成する板状に形成の本体部とを有してなるベーンと、このベーンの端部に配在されてハウジングの内周との間におけるシール性を保障するシール部材とを有してなるベーンにおけるシール構造において、シール部材がベーンの本体部であってハウジングの内周に対向する端部における中心部に配在されながらベーンの基部における開口端部において周回するように配在されてなる一方で、基部における軸芯線と本体部における軸芯線とを含んでなる切断面でシール部材が分割されてなることを特徴とするベーンにおけるシール構造

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−17211(P2006−17211A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195262(P2004−195262)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】