説明

ペリクルおよび新規な含フッ素重合体

短波長光(発振波長193nmのArFエキシマレーザー、発振波長157nmのF2エキシマレーザー)に対して高い透明性と耐久性を有する有用な含フッ素重合体をペリクル材料等として提供する。
ペリクル膜および/または該接着剤に用いられる重合体(I)が、下記単位(1)を必須とする重合体からなるペリクル。単位(1)とは、フッ素原子を含有し重合体主鎖を形成する連鎖が炭素原子とエーテル性酸素原子からなり、該主鎖を形成する炭素原子の1個以上は環基を形成する炭素原子であり、かつ該主鎖を形成するエーテル性酸素原子の1個以上は環基を形成しない酸素原子である単位。たとえば下式(A1)で表される単位(ただし、nは1または2、RF1は−Fまたは−CF、RF2は−Fまたは炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基、を示す。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、短波長光に対して優れた透明性と耐久性を有する新規なペリクル、および新規な含フッ素重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示板の製造工程であるフォトリソグラフィ(露光処理)において、フォトマスクやレチクル(以下、これらをマスクパターン面という。)への異物付着を防止するために、ペリクルが用いられる。ペリクルとは、透明薄膜(以下、ペリクル膜という。)が接着剤を介して枠体に設置され、マスクパターンの面上に一定の距離をおいて装着される光学物品である。ペリクルには、露光処理に用いる光に対する透明性、耐久性、および機械的強度が求められる。
【0003】
半導体装置や液晶表示板の製造では、配線や配線間隔の微細化が進行している。最小パターン寸法0.3μm以下の配線加工においては、露光処理の光源として発振波長が248nmのKrFエキシマレーザーが用いられる。露光処理におけるペリクルの材料として、主鎖に飽和環構造を含む含フッ素重合体が知られている(特許文献1および特許文献2参照。)。
【0004】
近年では、最小パターン寸法が0.2μm以下の配線加工が求められており、露光処理の光源として、発振波長が200nm以下のエキシマレーザー(たとえば、発振波長が193nmのArFエキシマレーザー光や発振波長が157nmのFエキシマレーザー光等。)の使用が検討されている。特に、最小パターン寸法0.07μm以下の配線加工には、Fエキシマレーザー光が有力候補とされているが、前記含フッ素重合体は充分な透明性および耐久性を有していない。また、ペリクル膜と枠体を接着する接着剤においても、レーザー光の迷光や反射光による同様の問題があった。
【0005】
また他のペリクル材料としては、(1)繰返し構造中の主鎖を形成する部分にエーテル結合を含み、かつ環状構造を含まない含フッ素樹脂(特許文献3参照。)、(2)炭素原子の連鎖を主鎖とする実質的に線状の含フッ素ポリマー(特許文献4参照。)が提案されている。
【特許文献1】特開平3−39963号公報
【特許文献2】特開平3−67262号公報
【特許文献3】特開2001−255643号公報
【特許文献4】特開2001−330943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、(1)に記載される含フッ素樹脂は、実際には油状またはグリース状であり、ペリクル膜として使用できる自立膜を形成させるのは困難である。また高分子量の化合物を製造して自立膜を製造したとしても、ガラス転移点が低温であるため、露光処理において発生する熱により膜がたるむ、破れる等の問題がある。
【0007】
また、(2)に記載される含フッ素ポリマーは、Fエキシマレーザー光に対して透明性を有するが、耐久性が充分でない問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、主鎖にエーテル性酸素原子を有し、かつ、主鎖の炭素原子を含む環構造を有する新規な含フッ素の重合体(I)がエキシマレーザー光に対する充分な耐久性と透明性を有し、かつ耐熱性、機械的強度、および製膜性を有することも見いだした。また該重合体がペリクル膜、およびペリクル用接着剤として有用であることを見いだした。
すなわち、本発明は以下の発明を提供する。
【0009】
<1>ペリクル膜が接着剤を介して枠体に接着されてなる露光処理用のペリクルにおいて、ペリクル膜および/または該接着剤に用いられる重合体(I)が、下記単位(1)を必須とする重合体からなるペリクル。
単位(1):炭素原子に結合したフッ素原子を含有する単位であり、該単位中の重合体主鎖を形成する連鎖が炭素原子とエーテル性酸素原子とからなり、該主鎖を形成する炭素原子の1個以上は環基を形成する炭素原子でありかつ該主鎖を形成するエーテル性酸素原子の1個以上は環基を形成しない酸素原子である単位。
【0010】
<2>単位(1)が、下式(A)で表される単位、下式(B)で表される単位、下式(C)で表される単位、または下式(D)で表される単位である<1>に記載のペリクル。
ただし、下式で表される各単位において、環を形成する炭素原子の1〜2個はエーテル性酸素原子に置換されていてもよい。また環を形成する炭素原子に結合する水素原子の1個以上は、フッ素原子または1価含フッ素有機基に置換されていてもよく、また環を形成する炭素原子に結合する2つの水素原子が共同で2価含フッ素有機基を形成していてもよい。
【0011】
【化1】

【0012】
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
、E、E、E:それぞれ独立に、単結合または−CF
、K、K、K:それぞれ独立に、−O−または−CFO−。
【0013】
<3>重合体(I)が、単位(1)の1種以上からなる重合体である、または、単位(1)の1種以上と単位(1)以外の単位の1種以上とからなる重合体である<1>または<2>に記載のペリクル。
【0014】
<4>単位(1)中に存在する主鎖を形成するエーテル性酸素原子が、水素原子が結合しない炭素原子に結合する酸素原子である<1>〜<3>のいずれかに記載のペリクル。
【0015】
<5>単位(1)以外の単位が、フッ素原子を含有する単位である<1>〜<4>のいずれかに記載のペリクル。
【0016】
<6>単位(1)が下式(A1)で表される単位である<1>に記載のペリクル。
【0017】
【化2】

【0018】
ただし、nは1または2、RF1はフッ素原子またはトリフルオロメチル基、RF2はフッ素原子または炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基、を示す。
【0019】
<7>単位(1)が下式(A2)で表される単位または下式(A3)で表される単位である<1>に記載のペリクル。
【0020】
【化3】

【0021】
<8>重合体(I)が、式(A1)で表される単位〜式(A3)で表される単位から選ばれる1種以上からなる、または式(A1)で表される単位〜式(A3)で表される単位から選ばれる1種以上と、式(A1)で表される単位〜式(A3)で表される単位以外の単位から選ばれる1種以上とからなる<6>または<7>に記載のペリクル。
【0022】
<9>式(A1)で表される単位〜式(A3)で表される単位以外の単位が、それぞれ下式(M1)〜(M5)で表される単位から選ばれる1種以上の単位である<8>に記載のペリクル。
−CHR−CR− (M1)
−CFR−CR− (M2)
【0023】
【化4】

【0024】
ただし、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または飽和の1価含フッ素有機基を示す。ただし、R、R、およびRから選ばれる少なくとも1つはフッ素原子または飽和の1価含フッ素有機基を示す。または、R、R、およびRから選ばれる2つの基が共同で2価含フッ素有機基を形成し、かつ残余の1つの基は水素原子、フッ素原子、または飽和の1価含フッ素有機基を示す。
【0025】
、R、およびRは、それぞれ独立に、フッ素原子または飽和の1価含フッ素有機基を示す。または、R、R、およびRから選ばれる2つの基が共同で2価含フッ素有機基を形成し、かつ残余の1つの基はフッ素原子もしくは飽和の1価含フッ素有機基を示す。
、R、R、およびR10は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または1価含フッ素有機基を示す。
は2価含フッ素有機基を示す。
【0026】
<10>ペリクル膜に用いる重合体(I)が官能基を持たない重合体であり、接着剤に用いる重合体(I)が官能基を持つ重合体である<1>〜<9>のいずれかに記載のペリクル。
【0027】
<11><1>〜<10>のいずれかに記載のペリクルを用いて露光処理を行うことを特徴とする露光処理方法。
【0028】
<12>フォトリソグラフィーにおける波長200nm以下の光を用いて行う露光処理方法において、<1>〜<10>のいずれかに記載のペリクルを用いることを特徴とする露光処理方法。
【0029】
<13>波長200nm以下の光が、フッ素ガスエキシマレーザー光である<12>に記載の露光処理方法。
【0030】
<14>下式(A1)で表されるモノマー単位を含む重合体(ただし、n、RF1およびRF2は前記と同じ意味を示す。)。
【0031】
【化5】

【0032】
<15>質量平均分子量が、500〜1000000である<14>の重合体。
【0033】
<16>下式(a1)で表される化合物を重合させることを特徴とする下式(A1)で表されるモノマー単位を含む重合体の製造方法(ただし、n、RF1およびRF2は前記と同じ意味を示す。)。
【0034】
【化6】

【0035】
<17>下式(a2)で表される化合物、または下式(a3)で表される化合物。
【0036】
【化7】

【0037】
<18>下式(A2)で表されるモノマー単位を含む重合体、または下式(A3)で表されるモノマー単位を含む重合体。
【0038】
【化8】

【0039】
<19>質量平均分子量が500〜1000000である<18>の重合体。
【0040】
<20>下式(a2)で表される化合物を重合させる下式(A2)で表されるモノマー単位を含む重合体の製造方法。
【0041】
【化9】

【0042】
<21>下式(a3)で表される化合物を重合させることを特徴とする下式(A3)で表されるモノマー単位を含む重合体の製造方法。
【0043】
【化10】

【発明の効果】
【0044】
本発明のペリクルは、新規な含フッ素の重合体(I)を用いてなるペリクルであり、発振波長が200nm以下の光(以下、短波長光という。)に対して高い透明性と耐久性を有する。該重合体(I)は優れた耐熱性と製膜性を有する膜を形成するため、得られたペリクルはこれらの性質にも優れた有用なペリクルとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本明細書において、式(a1)で表される化合物を化合物(a1)とも記す。他の式で表される化合物においても同様に記す。また式(A1)で表される単位を単位(A1)と記す。重合体における単位とは、モノマーが重合することによって形成する該モノマーに由来する最大の構成単位(モノマー単位ともいう)を意味するが、本発明における該単位は、重合反応により直接形成するモノマー単位であっても、重合反応以外の化学変換により形成する単位(構成繰返し単位ともいう)であってもよい。
【0046】
本明細書において、炭素原子に結合した水素原子の1以上がフッ素原子に置換された基は、基の名称の前に「ポリフルオロ」を付けて表記する。ポリフルオロの基中には、水素原子が存在しても存在しなくてもよい。炭素原子に結合した水素原子の実質的に全てがフッ素原子で置換された基は、基の名称の前に「ペルフルオロ」をつけて表記する。ペルフルオロの基中には、実質的に水素原子が存在しない。
【0047】
本発明は、ペリクル膜が接着剤を介して枠体に接着されてなる露光処理用のペリクルにおいて、ペリクル膜および/または該接着剤に特定の単位(1)を必須とする重合体(I)を用いる。
【0048】
単位(1)とは、炭素原子に結合したフッ素原子(すなわち、C−F構造のF原子)を含有する単位である。フッ素原子が結合する炭素原子は、重合体主鎖を形成する炭素原子であっても、該炭素原子以外の炭素原子であってもよい。重合体(I)はC−F構造を必須とする含フッ素の重合体である。
【0049】
ここで重合体主鎖とは、重合体分子における一番長い連鎖をいう。また単位(1)における重合体主鎖を形成する連鎖とは、モノマー単位から伸びる結合手を隔てる連鎖のうち、原子間数が最少の連鎖をいう。仮に原子間数が同一の2以上の連鎖が存在する場合には、いずれもが重合体主鎖となる。
【0050】
本発明においては、単位(1)中の重合体主鎖を形成する連鎖は、エーテル性酸素原子(すなわち−O−)と炭素原子からなる。該主鎖を形成するエーテル性酸素原子の1個以上は環基を形成しない酸素原子である。環基を形成しないエーテル性酸素原子の存在により、本発明における重合体(I)は、露光処理に用いる光(特に200nm以下の紫外光)に対して透明性、耐久性等の性質が高くなりうる。
【0051】
また重合体(I)の主鎖を形成する炭素原子の1個以上は、環基を形成する炭素原子である。主鎖を形成する炭素原子は、全てが環基を形成する炭素原子になっていてもよく、または一部が環基を形成する炭素原子になり、残りが環基を形成しない炭素原子になっていてもよい。本発明においては主鎖を形成する炭素原子の1または2個が、環基を形成する炭素原子でもあるのが好ましい。主鎖を含む環基は、後述する5員環または6員環の環基が好ましい。重合体主鎖を形成する炭素原子が環基を形成する炭素原子にもなることによって、重合体主鎖の一部は環基に含まれる。そして重合体主鎖を含む環基の存在は、重合体(I)の結晶化を抑制し、重合体(I)の透明性を高くさせる。また該環基は重合体主鎖の分子運動を抑制するためガラス転移温度を高くさせうる。
【0052】
重合体(I)中には水素原子が存在していてもよい。重合体(I)中に水素原子が存在する場合には、3級の炭素原子に結合した水素原子であることが好ましい。さらに該3級の炭素原子に炭素原子が結合(以下、該炭素原子を他の炭素原子という)する場合には、該他の炭素原子には水素原子が結合しないのが好ましく、該他の炭素原子にはフッ素原子またはペルフルオロ化された有機基が結合するのが好ましい。重合体(I)中に存在しうる水素原子が3級の炭素原子に結合する水素原子である場合には、水素原子−炭素原子の結合が強くなり、露光時の水素原子の引き抜きを防止できる。また該水素原子の存在により、フッ素原子の非共有電子対の超共役が分断され、高い透明性と高い耐光性を発揮する重合体(I)が生成しうる。
【0053】
また重合体(I)中のエーテル性酸素原子は、水素原子が結合しない炭素原子に結合する酸素原子であるのが好ましく、特に主鎖に存在するエーテル性酸素原子は水素原子が結合しない炭素原子に結合する酸素原子であるのが好ましい。たとえば、単位(1)中のエーテル性酸素原子は、水素原子が結合しない炭素原子に結合する酸素原子であるのが好ましく、特に主鎖を形成するエーテル性酸素原子は水素原子が結合しない炭素原子に結合する酸素原子であるのが好ましい。さらにエーテル性酸素原子に結合する炭素原子は、フッ素原子または1〜2価の含フッ素有機基で置換されている炭素原子であるのが好ましい。これはエーテル性酸素原子の結合する炭素原子にフッ素原子または含フッ素有機基が置換すると、エーテル性酸素原子の非共有電子対が安定化されるため、重合体(I)が短波長の紫外線に対して優れた耐光性を発揮しうる。
【0054】
本発明における重合体(I)が必須とする単位(1)の例としては、下記単位(A)、下記単位(B)、下記単位(C)、または下記単位(D)が挙げられる。単位(1)は、下式(A)で表される単位、下式(C)で表される単位または下式(D)で表される単位が好ましい。ただし、下式で表される各単位において、環を形成する炭素原子の1〜2個はエーテル性酸素原子に置換されていてもよい。また環を形成する炭素原子に結合する水素原子の1個以上は、フッ素原子または1価含フッ素有機基に置換されていてもよく、また環を形成する炭素原子に結合する2つの水素原子が共同で2価含フッ素有機基を形成していてもよい。
【0055】
ここで1価含フッ素有機基としては、ペルフルオロアルキル基、エーテル性酸素原子を含むペルフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のこれらの基が特に好ましい。2価含フッ素有機基としては、ペルフルオロアルキレン基、エーテル性酸素原子を含むペルフルオロアルキレン基が好ましく、炭素数2〜6のこれらの基が特に好ましい。1価または2価のこれらの基は直鎖構造であっても分岐構造を有する構造であってもよく、分岐構造を有する場合には、分岐部分がペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、ペルフルオロ(アルコキシアルキル)基であるのが好ましく、炭素数1〜4の基が特に好ましい。
【0056】
【化11】

ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
【0057】
、E、E、E:それぞれ独立に、単結合または−CF
、K、K、K:それぞれ独立に、−O−または−CFO−。
〜Eが、それぞれ単結合であるとは、環基から伸びた結合手が、他の単位または末端構造に直接結合することを意味する。上記単位をモノマーの重合反応により直接得ようとする場合には、E〜Eは単結合であり、かつ、K〜Kが−O−である単位がそれぞれ好ましい。
単位(A)〜単位(D)の具体例としては、後述する単位(A1)のほか、下記単位が挙げられる。
【0058】
【化12】

【0059】
前記以外の単位(1)の例としては、下記単位(E1)、下記化合物(e2)が重合してなるモノマー単位等が挙げられる。化合物(e2)の重合では、ケト基部分での重合が起こるほか、さらに−CF=CF基の重合反応も起こりうる。
【0060】
【化13】

【0061】
本発明の単位(1)が必須とする環基は、5員環または6員環の環基が好ましく、エーテル性酸素原子(−O−)を含むこれらの環基が特に好ましく、飽和である該環基がとりわけ好ましい。環基中の−O−は重合体主鎖を形成しない酸素原子として存在するのが好ましい。また、単位(1)が必須とする環基は1個であるのが好ましく、主鎖を形成するエーテル性酸素原子は1個であるのが好ましい。
【0062】
さらに本発明における単位(1)としては、下記単位(A1)〜下記単位(A3)から選ばれる1種以上の単位が好ましく、下記単位(A1)が特に好ましい。該単位(A1)〜下記単位(A3)から選ばれる1種以上の単位を必須とする重合体は、重合体主鎖にエーテル結合および飽和環構造を含む新規な重合体である。
【0063】
【化14】

【0064】
ただし、nは1または2であり、環構造の安定性の観点から、1が好ましい。RF1はフッ素原子またはトリフルオロメチル基であり、原料の入手容易さの観点から、フッ素原子が好ましい。RF2はフッ素原子または炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基である。RF2がペルフルオロアルキル基である場合には、直鎖状であっても分岐状であってもよい。RF2はフッ素原子、トリフルオロメチル基、またはペンタフルオロエチル基が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
単位(A1)の具体例としては、下式で表される単位が挙げられる。
【0065】
【化15】

【0066】
本発明における重合体(I)は単位(1)を必須とする重合体であり、単位(1)の1種以上のみからなる重合体であっても、単位(1)の1種以上とともに、単位(1)以外の単位(以下、他の単位という。)を含む重合体であっても好ましい。このように重合体(I)が2種以上の単位を含む場合、各単位の並び方としては、ブロック状、グラフト状、およびランダム状が挙げられる。このうち重合体(I)の有用性の観点から、各単位の並び方はランダム状であるのが好ましい。
【0067】
重合体(I)が単位(A1)〜(A3)から選ばれる1種以上の単位を必須とする重合体である場合には、実質的に該単位からなる重合体、または、該単位の1種以上と他の単位から選ばれる1種以上からなる重合体が好ましい。前者の重合体(I)としては、単位(A1)の1種からなる重合体、単位(A2)からなる重合体、または単位(A3)からなる重合体が好ましい。後者の重合体(I)としては、単位(A1)の1種と他の単位から選ばれる1種以上とからなる重合体、単位(A2)と他の単位から選ばれる1種以上からなる重合体、または単位(A3)と他の単位から選ばれる1種以上からなる重合体が好ましい。
【0068】
重合体(I)の全単位に対する単位(1)の割合は、重合体(I)の用途に応じて適宜変更されうる。重合体中の単位(1)の割合は、通常の場合、それぞれ0.0001〜100モル%が好ましく、0.01〜100モル%が特に好ましい。他の単位の割合は、0〜99.9999モル%が好ましく、0〜99.99モル%が特に好ましい。重合体(I)が単位(A1)〜単位(A3)と他の単位とからなる場合、単位(A1)〜単位(A3)の割合は、1〜97モル%が好ましく、5〜95モル%が特に好ましく、他の単位の割合は3〜99モル%が好ましく、5〜95モル%が特に好ましい。
【0069】
また重合体(I)の質量平均分子量は、500〜1000000が好ましく、500〜500000が特に好ましく、500〜300000がとりわけ好ましい。たとえば、重合体(A1)、重合体(A2)および重合体(A3)の質量平均分子量は、それぞれ、500〜1000000が好ましい。
【0070】
重合体(I)が他の単位を含む場合、他の単位としては、フッ素原子を必須とする単位が好ましく、下記単位(M1)〜(M5)が特に好ましい。ただしR〜R10およびQは、前記と同じ意味を示す。これらの基の好ましい態様は、後述する。
−CHR−CR− (M1)
−CFR−CR− (M2)
【0071】
【化16】

【0072】
本発明における重合体(I)の製造方法としては、モノマーの重合反応による方法(方法1)、モノマーの重合反応と重合反応以外の反応の組み合わせによる方法(方法2)、または重合反応以外の反応による方法(方法3)が好ましく、方法1または方法2によるのが好ましい。方法2による場合には、重合反応以外の化学変換により変換される構造を有するモノマーを入手し、該モノマーを重合した後に重合反応以外の化学変換を行う方法が挙げられる。また方法3による場合には、単位(A1)に対応する炭素骨格と該炭素骨格の炭素原子に結合した水素原子を有する重合体をフッ素化して単位(A1)を含む重合体を製造する方法が挙げられる。
【0073】
重合体(I)が単位(A1)の1種以上を含む重合体(以下、重合体(A1)ともいう)である場合の製造方法は、方法1が好ましく、下記化合物(a1)(ただしn、RF1、およびRF2は、前記と同じ意味を示す。)の1種以上を重合させる方法が特に好ましい。重合体(I)が単位(A2)を含む重合体(以下、重合体(A2)ともいう。)である場合の製造方法は、方法1が好ましく、下記化合物(a2)を重合させる方法が特に好ましい。重合体(I)が単位(A3)を含む重合体(以下、重合体(A3)ともいう。)である場合の製造方法は、方法1が好ましく、下記化合物(a3)を重合させる方法が特に好ましい。化合物(a1)の入手方法は後述する。
【0074】
【化17】

【0075】
また、重合体(A1)〜重合体(A3)がそれぞれ他の単位を含む場合の製造方法としては、方法1または方法2が好ましい。これらの方法は、他の単位の構造に応じて適宜変更しうる。
【0076】
重合体(A1)の製造方法としては、化合物(a1)を重合させる方法、化合物(a1)と、化合物(a1)と共重合しうるモノマー(以下、該モノマーをコモノマーという。)とを重合させる方法、または、化合物(a1)とコモノマーを重合させて得た重合体をつぎに化学変換する方法、が好ましい。ここで、コモノマーとは化合物(a1)と共重合する化合物(a1)以外のモノマーである。
【0077】
コモノマーとしては、フッ素原子を含む化合物であっても、フッ素原子を含まない化合物であってもよく、重合体(A1)の有用性の観点と化合物(a1)との重合性の観点から、フッ素原子を含む化合物であるのが好ましい。重合体(A2)および重合体(A3)においても同様である。このうち、重合体(A1)〜重合体(A3)の製造に用いうるコモノマーとしては、前記単位(M1)〜(M5)を重合反応によって直接形成しうるコモノマーである下記化合物(m1)〜(m3)が好ましい。
CHR=CR (m1)
CFR=CR (m2)
CR=CR−Q−CR10=CF (m3)
ただし、R〜R10およびQは、前記と同じ意味を示す。
【0078】
〜R10がそれぞれ1価含フッ素有機基である場合の該基とは、1個以上のフッ素原子と1個以上の炭素原子とを有する1価の基をいい、飽和の基であっても不飽和の基であってもよく、飽和の1価含フッ素有機基が好ましい。R〜R10はそれぞれ直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。飽和の1価含フッ素有機基としては、ポリフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基が特に好ましく、炭素数1〜6のペルフルオロアルキル基が特に好ましく、トリフルオロメチル基およびペンタフルオロエチル基がさらに好ましい。
【0079】
またR〜R10およびQが、それぞれ2価含フッ素有機基である場合の該基とは、1個以上のフッ素原子と、1個以上の炭素原子とを有する2価の基をいい、飽和の基であっても不飽和の基であってもよく、飽和の2価含フッ素有機基が好ましい。飽和の2価含フッ素有機基としては、エーテル性酸素原子を含むペルフルオロアルキレン基が好ましく、炭素数2〜6のこれらの基が特に好ましい。該2価含フッ素有機基は直鎖構造であっても分岐構造であってもよく、分岐構造である場合には分岐部分がトリフルオロメチル基、またはペンタフルオロエチル基であるのが好ましい。
【0080】
前記化合物(m1)は、重合反応によって単位(M1)を形成するコモノマーである。化合物(m1)としては、炭素数が2または3である化合物(たとえば、フッ化ビニル、1,2−ジフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン等。)、下記化合物(m1−1)、および化合物(m1−2)が挙げられ、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、化合物(m1−1)、および化合物(m1−2)が好ましい。化合物(m1−1)が重合した単位としては下記単位(M1−1)が挙げられ、化合物(m1−2)が重合した単位としては下記単位(M1−2)が挙げられる。
【0081】
【化18】

【0082】
前記化合物(m2)は、重合反応によって単位(M2)を形成するコモノマーである。
化合物(m2)の具体例としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等のペルフルオロオレフィン類;ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)等のペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)類;下記化合物(m2−1)、下記化合物(m2−2)、および下記化合物(m2−3)等の環状モノマー類;等が挙げられる。
【0083】
【化19】

【0084】
ただしR11〜R17は、それぞれ独立に、フッ素原子または飽和の1価含フッ素有機基を示す。またR11およびR12は、共同で2価含フッ素有機基(Q)を形成していてもよい。Qはエーテル性酸素原子またはジフルオロメチレン基を示す。
【0085】
飽和の1価含フッ素有機基である場合のR11〜R17としては、それぞれ独立に、フッ素原子またはエーテル性酸素原子を有してもよいポリフルオロアルキル基が好ましく、フッ素原子、炭素数1〜2のペルフルオロアルキル基、または炭素数1〜2のペルフルオロアルコキシ基が特に好ましい。
【0086】
式(m2−1)中のR11とR12が2価含フッ素有機基(Q)を形成する場合のQは、炭素−炭素結合間にヘテロ原子(エーテル性酸素原子が好ましい。)が挿入された構造を2個以上含む含フッ素アルキレン基が好ましい。該基は直鎖構造であってもペルフロオロアルキル基を分岐部分とする分岐構造の基であってもよい。
【0087】
化合物(m2−1)としては、下記化合物が挙げられ、化合物(m2−10)、化合物(m2−11)、化合物(m2−12)、または化合物(m2−13)が好ましい。ただし、R17、n、RF1、RF2は、前記と同じ意味を示す。
【0088】
【化20】

【0089】
化合物(m2−1)の一態様である化合物(m2−10)の入手方法は後述する。一般式(m2−10)で表される化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0090】
【化21】

【0091】
前記化合物(m2)の一態様である化合物(m2−2)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
【0092】
【化22】

【0093】
化合物(m2−3)の具体例としては、下記化合物が挙げられ、下記化合物(m2−30)が好ましい。ただし、RF3は炭素数1〜7のペルフルオロアルキル基を示し、トリフルオロメチル基が好ましい。
【0094】
【化23】

【0095】
化合物(m2)としては、テトラフルオロエチレン、化合物(m2−1)、または化合物(m2−3)が好ましく、テトラフルオロエチレン、化合物(m2−10)、化合物(m2−11)、化合物(m2−12)、化合物(m2−13)、または化合物(m2−30)が特に好ましい。該好ましい化合物(m2)に由来するモノマー単位の具体例としては、−CFCF−、下記単位(M2−10)、下記単位(M2−11)、下記単位(M2−12)、下記単位(M2−13)、および下記単位(M2−30)が挙げられる。
【0096】
【化24】

【0097】
前記化合物(m3)は、前述した単位(M3)〜(M5)を、それぞれ重合反応によって形成しうるコモノマーである。単位(M3)〜(M5)中のR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子またはフッ素原子が好ましい。さらにRおよびRの一方または両方がフッ素原子である場合のRは水素原子またはフッ素原子が好ましく、RおよびRが水素原子である場合のRは水素原子またはフッ素原子が好ましい。R10は、フッ素原子、トリフルオロメチル基、またはペンタフルオロエチル基が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0098】
は、総炭素数1〜10のエーテル性酸素原子を含んでいてもよいペルフルオロアルキレン基が好ましい。特に、Rが結合した炭素原子と、R10が結合した炭素原子とを連結するQの原子間距離のうち最短の原子間距離が2〜4原子である場合のQが好ましい。またQは、直鎖構造または分岐を有する構造が好ましい。
【0099】
さらにQとしては、R10が結合する炭素原子と結合する末端にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜3のペルフルオロアルキレン基、両末端にエーテル性酸素原子を有する炭素数1〜2のペルフルオロアルキレン基、または炭素数1〜4のペルフルオロアルキレン基が好ましい。これらの基が分岐を有する場合には、分岐部分が炭素数1〜3のペルフルオロアルキル基(トリフルオロメチル基が好ましい。)である該基が好ましい。
【0100】
化合物(m3)の具体例としては、下記化合物(m3−1)、下記化合物(m3−2)および下記化合物(m3−3)が挙げられる。ただし、Q、Q、およびQは、それぞれ独立に、炭素数1〜3のペルフルオロアルキレン基を示す。R18、R19およびR20は、それぞれ独立に、フッ素原子または水素原子を示す。
CH=CR18−Q−O−CF=CF (m3−1)、
CF=CR19−Q−O−CF=CF (m3−2)、
CHF=CR20−Q−O−CF=CF (m3−3)。
【0101】
化合物(m3−1)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
CH=CHCFCFOCF=CF
CH=CHCFCFCFOCF=CF
CH=CHCFOCF=CF
CH=CHCF(CF)CFOCF=CF
CH=CFCFCFOCF=CF
CH=CFCF(CF)CFOCF=CF
【0102】
化合物(m3−2)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
CF=CFCFOCF=CF (m3−20)、
CF=CFCFCFOCF=CF (m3−21)、
CF=CHCF(CF)CFOCF=CF (m3−22)、
CF=CHCFCFOCF=CF (m3−23)。
【0103】
化合物(m3−3)の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
CHF=CHCFCFOCF=CF
CHF=CHCF(CF)CFOCF=CF
【0104】
また化合物(m3−1)〜(m3−3)以外の化合物(m3)としてはCH=CHOC(CFOCF=CF等が挙げられる。
これらのうち化合物(m3)としては、化合物(m3−1)、または化合物(m3−2)が好ましく、化合物(m3−20)、化合物(m3−21)、または化合物(m3−22)が特に好ましい。これらのモノマーは環化重合反応により環状構造を必須とする単位を形成する。たとえば化合物(m3)に由来するモノマー単位(M3)の具体例としては、化合物(m3)が環化重合して形成する単位が挙げられる。たとえば化合物(m3−22)が環化重合した単位としては下記の3つの単位が挙げられる。
【0105】
【化25】

【0106】
重合体(A2)および重合体(A3)についても、対応する化合物(a2)および化合物(a3)を重合させる方法により重合体(A1)と同様に製造できる。また化合物(a2)と他の化合物とを共重合させる場合も、化合物(a1)と共重合しうるモノマーと同じモノマーを用いることができる。
【0107】
前記化合物(a1)は、下式で示す方法により入手するのが好ましい。ただし、nは1または2を示す。R30は水素原子、フッ素原子、またはメチル基を示す。R31は水素原子、フッ素原子、または炭素数1〜5のアルキル基を示す。
【0108】
【化26】

【0109】
すなわち、R30CH(OH)CH(OH)(CHOHとR31CHOとの付加物(通常は前記化合物(y1)および前記化合物(z1)からなる。)に、R−COF(Rは、エーテル性酸素原子を有してもよいペルフルオロアルキル基を示し、エーテル性酸素原子を有するペルフルオロアルキル基が好ましい。)で表される化合物をエステル化反応させ、つぎに液相中でフッ素化反応を行い前記化合物(y3)と前記化合物(z3)との混合物を得る。つぎに該混合物においてエステル結合の分解反応を行うことにより、前記化合物(a1)と前記化合物(z4)の混合物を得て、該混合物から化合物(a1)を分離する方法である。
【0110】
化合物(a1)と化合物(z4)の混合物から化合物(a1)を分離する方法としては、混合物に水を添加して、化合物(a1)のケト基を−C(OH)−基に化合物(z4)の−COF基を−COOH基に変換した後に、−C(OH)−基を脱水反応によってケト基に再変換し、つぎに蒸留等の方法で化合物(a1)を分離する方法が好ましい。
【0111】
また化合物(m2−10)のうちR17がフッ素原子である下記化合物(m2−10F)の入手方法としては、上記方法で得た化合物(a1)を用いた、以下の製造ルートが挙げられる(ただし、n、RF1、およびRF2は前記と同じ意味を示す。)。
【0112】
【化27】

【0113】
すなわち化合物(a1)に、エチレンオキシドを付加する方法、または、2−クロロエタノールを付加し、つぎに塩基の存在下で脱塩化水素することによって閉環する方法、により前記化合物(y4)を得る。つぎに、該化合物(y4)を光塩素化反応して前記化合物(y5)を得る。さらに、該化合物(y5)を選択的にフッ素化反応して前記化合物(y6)を得た後、該化合物(y6)を脱塩素化して化合物(m2−10F)を得る方法である。また化合物(m2−10)におけるR17が飽和の1価含フッ素有機基である化合物は、前記化合物(a1)に付加させるエチレンオキシドを他の化合物に変更して同様の反応を行うことにより得られる。
【0114】
化合物(a2)の入手方法としては、3−フドロキシテテトラヒドロフランと式RCOF(Rはエーテル性酸素原子を含んでいてもよいペルフルオロアルキル基を示す。)とをエステル化反応させ、つぎに液相フッ素化等の方法でフッ素化した後にエステル結合の分解反応を行う方法によるのが好ましい。化合物(a3)の入手方法は、下記化合物(m2−13)を酸化する方法により得るのが好ましい。
【0115】
【化28】

【0116】
本発明における重合体(I)としては、重合体(A1)〜(A3)が好ましく、特に重合体(A1)好ましい。これらの重合体(A1)〜(A3)は、化合物(a1)〜(a3)から選ばれる1種の化合物のみからなる単独重合体、および該選ばれる1種の化合物とコモノマーとの共重合体が好ましい。化合物(a1)の1種のみからなる単独重合体または化合物(a1)とコモノマーとの共重合体がとりわけ好ましい。
【0117】
共重合体である場合の好ましい例としては、化合物(a1)とフッ化ビニリデン、化合物(a1)とフッ化ビニル、化合物(a1)とトリフルオロエチレン、化合物(a1)と化合物(m1−1)、化合物(a1)とテトラフルオロエチレン、化合物(a1)と化合物(m2−10)、化合物(a1)と化合物(m2−11)、化合物(a1)と化合物(m2−12)、化合物(a1)と化合物(m2−13)、化合物(a1)と化合物(m2−30)、とを共重合された共重合体が挙げられる。また化合物(a1)の単位と化合物(m3−20)が環化重合した単位からなる共重合体、化合物(a1)の単位と化合物(m3−21)が環化重合した単位からなる共重合体、化合物(a1)の単位と化合物(m3−22)が環化重合した単位からなる共重合体、または化合物(a1)の単位と化合物(m3−23)が環化重合した単位からなる共重合体も挙げられる。
【0118】
本発明における重合体(A1)を化合物(a1)の重合反応により得る方法、および重合体(A2)を化合物(a2)の重合反応により得る方法は、新規な知見に基づく。すなわち、含フッ素非環状ケトン化合物であるCFCOCFとフッ化ビニリデンとがラジカル共重合する例は報告されていたが、化合物(a1)等の含フッ素環状ケトン化合物中にあるケト基が重合することを、本発明者らは初めて見いだした。
【0119】
前記方法1により重合体(A1)以外の重合体(I)を製造する方法としては、式CF=CFO(CFCOCFで表される化合物の環化重合反応により下記単位(C1)を含む重合体を得る方法、化合物(a3)を重合させることにより単位(A3)を含む重合体を製造する方法、が挙げられる。化合物(a3)を重合させて重合体を得る方法は新規な知見である。
【0120】
【化29】

【0121】
前記方法2により重合体(I)を製造する方法としては、下記単位(y7)を含む重合体を得て、つぎにエステル化して下記単位(y8)を含む重合体を得て、つぎに該重合体を液相フッ素化等の手法でフッ素化して下記単位(y9)を含む重合体を得て、該重合体を後述するフッ素処理等の方法で単位(A4)を含む重合体とする方法が挙げられる。ただし、Rは前記と同じ意味を示す。
【0122】
【化30】

【0123】
方法1または2における重合反応は、アニオン重合やカチオン重合等のイオン重合やラジカル重合で行うことができ、ラジカル重合で行うのが好ましい。重合の方法は、塊状重合、懸濁重合、溶液重合等方法が挙げられる。化合物(a3)の重合反応は、アニオン重合で行うのが好ましい。
【0124】
ラジカル重合は、重合開始剤を用いて行うのが好ましい。重合開始剤は、重合体の末端基等に重合開始剤に由来する−CH−連鎖が形成されるのを避ける観点から、ペルフルオロ化合物を用いるのが好ましく、ペルフルオロアルキル基部分の炭素数が短い(炭素数1〜3が好ましい。)ペルフルオロ化合物を用いる、または、ポリエーテル構造を有するペルフルオロ化合物を用いるのが特に好ましい。
【0125】
重合開始剤としては、下記化合物が挙げられる。ただし、下式において炭素数が3以上のペルフルオロアルキル基部分の構造は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。
(CCOO−)、(CCOO−)、(COCF(CF)CFCOO−)、(COCF(CF)CFOCF(CF)CFCOO−)、((CFCO−)、(CO−)、((CHCHOCOO−)
【0126】
重合反応は、異常な重合や急激な発熱による化合物(a1)等のモノマーの分解を抑える観点から、溶媒の存在下で行うのが好ましい。化合物(a1)等の含フッ素モノマーにおいては、モノマーとプロトン性溶媒との反応性が高い観点から、非プロトン性有機溶媒の存在下で行うのが特に好ましい。非プロトン性有機溶媒としては、重合体(I)中に残存した溶媒中の塩素原子が重合体(I)の短波長光に対する耐久性を阻害する観点から、塩素原子を含まない非プロトン性有機溶媒が好ましい。
【0127】
非プロトン性有機溶媒の例としては、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロデカン、2H,3H−ペルフルオロペンタン、1H−ペルフルオロヘキサン等のポリフルオロアルカン類;メチルペルフルオロイソプロピルエーテル、メチルペルフルオロブチルエーテル、メチル(ペルフルオロヘキシルメチル)エーテル、メチルペルフルオロオクチルエーテル、エチルペルフルオロブチルエーテル等のポリフルオロエーテル類が挙げられる。
【0128】
重合における反応温度は、−10℃〜+150℃が好ましく、0℃〜+120℃が特に好ましい。特に2種以上のモノマーを反応させる場合には、反応温度が高すぎるとモノマー単位の配列がブロック状になる傾向がある。一方、反応温度が低すぎると、重合体の収率が極端に低下する傾向がある。
【0129】
重合における反応圧力は、減圧、加圧、および大気圧のいずれであってもよく、通常は、大気圧〜2MPa(ゲージ圧)が好ましく、大気圧〜1MPa(ゲージ圧)が特に好ましい。
【0130】
本発明における重合体(I)には、官能基を導入してもよい。官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基、アルケニル基、加水分解性シリル基、水酸基、マレイミド基、アミノ基、シアノ基、およびイソシアネート基が挙げられる。重合体(I)をペリクル用の接着剤等として使用する場合には、重合体(I)中に官能基を導入するのが好ましい。該重合体(I)中の官能基の割合は、0.0001〜0.0010モル/gが好ましい。
【0131】
重合体(I)に官能基を導入する方法としては、官能基を有するコモノマーを重合させる方法(前記方法1による。)、または、官能基を導入しうる基を有するコモノマーを用いて重合を行い、重合反応後に官能基を導入する方法(前記方法2による。)、が挙げられる。これらの方法は、公知の方法にならって実施できる(たとえば、特開平4−189880号公報、特開平4−226177号公報、特開平6−220232号公報等。)。
【0132】
重合体(I)に官能基を導入する方法としては、つぎの方法4〜方法7によるのが好ましい。
(方法4)化合物(a1)と官能基を有するコモノマーを共重合させる方法。
(方法5)重合開始剤および/または連鎖移動剤に由来する官能基、または該官能基から導きうる官能基を、目的とする官能基に変換する方法。
(方法6)化合物(a1)と官能基に変換される基を含むコモノマーとを共重合させて、官能基に変換される基を化学変換する方法。
(方法7)重合体を、酸素ガス雰囲気下で高温処理して側鎖および/または末端基を部分的に酸化分解してカルボキシル基とする方法。
【0133】
これらのうち、反応操作が容易であることから方法5または方法7によるのが特に好ましい。前記方法において、官能基に変換しうる基としては、アルコキシカルボニル基が挙げられる。該基は加水分解反応等によりカルボキシル基に変換できる。
【0134】
重合体(I)を重合反応により製造した場合には、つぎにフッ素ガスを接触させる処理を行って重合鎖の末端基を変換するのが好ましい。該処理を行う温度は、250℃以下が好ましく、240℃以下が特に好ましく、50℃以下がとりわけ好ましい。該処理は、固体状態の重合体(I)に対して行ってもよく、溶液状態の重合体(I)に対して行ってもよい。該処理により重合体(I)は、重合で生成しうる不適な重合鎖の末端部や不飽和結合部がフッ素原子により置換および/または付加された、より耐久性に優れた重合体となる。たとえば、重合体(I)の末端基が−CH=CH基を含む場合には、該処理により末端基を−CFCF基および/または−CFCFH基に変換できる。ただし、重合体(I)に官能基を導入する場合には、フッ素ガスによる処理は行わないのが好ましい。
【0135】
本発明の重合体(I)は新規化合物である。重合体(I)は、分子量、構造、または使用条件によりオイル状または液状になりうる。このような該重合体は浸漬露光法(イマージョン法)用による露光処理を行う際のオイルとしても用いうる。たとえば重合体(I)を浸漬露光法に用いる場合、重合体(I)を投影レンズとレジストを塗布したウエハとの間に供給して使用しうる。また波長200nm以下の紫外光を用いた露光処理にも使用しうる。浸漬露光法に用いうる重合体(I)の分子量は、他の単位の構造により適宜変更されうるが、7000以下である重合体が好ましく、特に分子量は500〜7000である重合体が好ましい。
【0136】
本発明における重合体(I)は、通常は固体状で、または、固体状である重合体を溶液として用いうる。本発明の重合体(I)が固体状である場合には、単位(A1)に基づく飽和環構造がかさ高いため、重合体主鎖の運動が制限され、ガラス転移温度が高い重合体となりうる。また、本発明における重合体(I)は、全光線、特に短波長光、に対して高い透明性および耐久性を有する。また本発明における重合体(I)は、低屈折率性、低誘電率性、低吸水率性、低表面エネルギー性、耐熱性、および耐薬性に優れる。よって、重合体(I)はこれらの性質を要求される分野における機能性材料として有用に用いうる。
【0137】
重合体(I)から形成される被膜の用途の例としては、後述するペリクル膜のほか、眼鏡レンズ、光学レンズ、光学セル、DVD用ディスク、フォトダイオード、ショーウインドウ、ショーケース、太陽電池、各種ディスプレイ(たとえば、PDP、LCD、FED、有機EL、プロジェクションTV。)等の表面保護膜、半導体素子の保護膜(たとえば、層間絶縁膜、バッファーコート膜、パッシベーション膜、α線遮蔽膜、素子封止材、高密度実装基板用層間絶縁膜、高周波素子用防湿膜(たとえば、RF回路素子、GaAs素子、InP素子等の防湿膜。)等が挙げられる。
重合体(I)から成形された成形品の用途の例として、光ファイバーのコア材またはクラッド材、光導波路のコア材またはクラッド材等が挙げられる。
【0138】
また、重合体(I)はフィルムとして、または重合体(I)と他の材料と組み合わせたフィルム(たとえば、ポリイミド等の熱可塑性樹脂と積層したフィルム)としても有用である。また、重合体(I)は、撥水撥油剤、半導体接着剤(たとえば、LOC用、ダイボンド用等。)、光学接着剤としても有用である。
【0139】
上記用途に用いる場合には、重合体(I)を有機溶剤に溶解させた溶液組成物として用いてもよい。有機溶媒としては含フッ素溶媒の1種以上を使用するのが好ましい。溶液組成物とする場合において、該組成物中の重合体(I)の量は、有機溶媒に対して0.1〜25質量%であるのが有機溶媒との相溶性の観点から好ましく、上記用途の被膜・フィルムにおける膜厚や溶液組成物の安定性の観点から、5〜15質量%であるのが特に好ましい。
【0140】
溶液組成物を形成させる際に用いうる有機溶媒としては、特に限定されず、重合体(I)の溶解性の高い含フッ素有機溶媒が好ましい。該含フッ素有機溶媒としては、以下の例が挙げられる。
【0141】
ペルフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン等のポリフルオロ芳香族化合物。ペルフルオロ(トリブチルアミン)、ペルフルオロ(トリプロピルアミン)等のポリフルオロ(トリアルキルアミン)化合物。ペルフルオロデカリン、ペルフルオロシクロヘキサン等のポリフルオロシクロアルカン化合物。ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)等のポリフルオロ環状エーテル化合物。
ペルフルオロオクタン、ペルフルオロデカン、2H,3H−ペルフルオロペンタン、1H−ペルフルオロヘキサン等のポリフルオロアルカン類。メチルペルフルオロイソプロピルエーテル、メチルペルフルオロブチルエーテル、メチル(ペルフルオロヘキシルメチル)エーテル、メチルペルフルオロオクチルエーテル、エチルペルフルオロブチルエーテル等のポリフルオロエーテル類。
【0142】
本発明の溶液組成物は、基材表面に重合体(I)の性質を付与する表面処理剤としても有用である。溶液組成物を表面処理剤として用いる場合の処理方法としては、該溶液組成物を基材に塗布してつぎに乾燥する方法によるのが好ましい。
【0143】
溶液組成物を基材に塗布する方法としては、公知の方法が採用でき、ロールコート法、キャスト法、ディップ法、スピンコート法、水上キャスト法、ダイコート法、およびラングミュア・ブロジェット法等の方法が挙げられる。これらの方法のうち、ペリクル膜には厳密な膜厚形成が求められる観点から、スピンコート法を採用するのが好ましい。基材は、表面が平坦な基材(シリコンウエハ、石英等。)が好ましい。
【0144】
本発明における重合体(I)、特には重合体(A1)は、ペリクル用の材料として特に有用に用いうる。ペリクル用材料としては、ペリクル膜が接着剤を介して枠体に接着されてなる露光処理用のペリクルにおいて、ペリクル膜および/または該接着剤、が挙げられる。すなわち、本発明は、ペリクル膜が接着剤を介して枠体に接着されてなる露光処理用のペリクルにおいて、該ペリクル膜および/または該接着剤が重合体(I)を必須とするペリクルを提供する。
【0145】
重合体(I)をペリクル膜に採用したペリクルとしては、重合体(I)を必須とするペリクル膜と、枠体からなるペリクルである。重合体(I)を接着剤に適用したペリクルとは、ペリクル膜が重合体(I)を必須とする接着剤を介してペリクル膜が枠体に接着されたペリクルである。重合体(I)をペリクル膜に採用する場合には、短波長光に対する透明性および耐久性の観点から、官能基を持たない重合体(I)を用いるのが好ましい。
【0146】
重合体(I)を接着剤に採用する場合には、接着性の点から官能基を有する重合体(I)を採用するのが好ましい。官能基としては、低温で良好な接着性を有し、かつ保存安定性を有するカルボキシル基が好ましい。
【0147】
接着剤とする場合には、官能基を有する重合体(I)と前記含フッ素有機溶剤とからなる組成物とするのが好ましい。さらに、該組成物には接着性を向上させるために、さらにシラン系、エポキシ系、チタン系、アルミニウム系等のカップリング剤を配合してもよい。接着剤として官能基を持たない重合体(I)を用いた場合、該カップリング剤を配合して、ペリクル膜と枠体を強固に接着させうる。
【0148】
枠体を形成する材料としては、強度の面から金属材料が好ましく、露光処理に用いる短波長光に対して耐久性を有する材料が特に好ましい。該材料としては、アルミニウム、18−8ステンレス、ニッケル、合成石英、フッ化カルシウム、またはフッ化バリウム等が挙げられる。該材料としては、耐環境性、強度、および比重の観点から、アルミニウムまたは合成石英が好ましい。
【0149】
重合体(I)がペリクル膜であるペリクルの製造方法は、公知の方法が適用できる。たとえば、重合体(I)を有機溶媒に溶解した溶液組成物とした後、基材に塗布する。基材を乾燥することによって溶剤を揮発させて、基材上に重合体(I)の薄膜を形成させた処理基材を得る。一方、接着剤を枠体に塗布し、該枠体を加熱(100〜200℃が好ましい。)する。つぎに接着剤を塗布した枠体の面に該処理基材を接着し、つぎに該処理基材から基材を剥離することによって、ペリクルを得る方法が挙げられる。ペリクル膜としての膜厚は、通常、0.01〜50μmが好ましい。
【0150】
本発明のペリクルにおいて、ペリクル膜および接着剤の両方に重合体(I)を用いるのが好ましいが、一方に重合体(I)以外の材料を用いてもよい。重合体(I)以外のペリクル膜、重合体(I)以外の接着剤としては、特開2001−330943号公報、WO2001/37044号公報に記載される材料が挙げられる。たとえば接着剤としては、プロピレン/フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、およびフッ化ビニリデンを主成分とする共重合体から選ばれる重合体、または該選ばれる重合体に前記方法によって官能基を導入した重合体が挙げられる。
【0151】
本発明のペリクルは、種々の発振波長を光源に用いた露光処理用のペリクルとして用いることができる。特に短波長光を用いた露光処理用のペリクルとして好ましく、F2エキシマレーザー光を用いた露光処理用のペリクルとして特に好ましい。本発明は、該ペリクルを用いて露光処理を行う露光処理方法も提供する。
【0152】
本発明における重合体(I)は、短波長光に対して高い透明性を有する。その理由は必ずしも明確ではないが、重合体(I)は主鎖にエーテル結合に基づく酸素原子と該酸素原子を含む環基構造を含み、主鎖に長い電子的な共役ができないためと考えられる。また本発明における重合体(I)は、短波長光に対して高い耐久性を有する。その理由は必ずしも明確ではないが、重合体(I)は主鎖にエーテル結合に基づく酸素原子を含み、主鎖の電子的な共役が分断される重合体であること、および重合体(I)は主鎖にゆがみの小さい該環基構造を含み主鎖が開裂しにくい重合体であること、によると考えられる。
【実施例】
【0153】
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下においては、Mを質量平均分子量、Mを数平均分子量、ガラス転移点をT、ゲルパーミエーションクロマトグラフ法をGPC法、ガスクロマトグラフィーをGC、CClFCClFをR−113、ジクロロペンタフルオロプロパンをR−225という。また圧力は、特に表記しない限り、絶対圧で示す。
【0154】
[分子量の測定方法]
およびMは、GPC法により測定した。測定方法は、特開2000−74892号に記載する方法に従った。具体的には、移動相としてCFClCFCFHClと(CFCHOHとの混合液(体積比99:1)を用い、分析カラムとしてポリマーラボラトリーズ社製のPLgel 5μm MIXED−C(内径7.5mm、長さ30cm)を2本直列に連結したカラムを用いた。分子量測定用標準試料として、分子量分布(M/M)が1.17未満である分子量が1000〜2000000の10種のポリメチルメタクリレート(ポリマーラボラトリー社製)を用いた。移動相流速は1.0ml/min、カラム温度は37℃とした。検出器には蒸発光散乱検出器を用いた。MおよびMはポリメチルメタクリレート換算分子量として示す。固有粘度は、流下式の粘度管を用いて測定した。また、Tは示査走査熱量分析法により測定した。
【0155】
<モノマーの製造例(例1〜例5)>
[例1]化合物(a1−1)の製造例(ただし、下式中のRF2は−CF(CF)OCFCF(CF)O(CFCFを示す。)
【0156】
【化31】

【0157】
(例1−1)化合物(y2−1)と化合物(z2−1)との混合物の合成例
オートクレーブ(内容積2L、ハステロイC製)にF(CFOCF(CF)CFOCF(CF)COF(2515g)とNaF粉末(240g)を入れた。充分に撹拌しながらオートクレーブを冷却して、大気圧でオートクレーブの内温が30℃以下に保たれるように、ゆっくりとグリセロール・ホルマール(401g)を導入した。反応により生じたHFはNaFにより、吸着除去した。グリセロール・ホルマール全量を投入後、さらに24時間撹拌した後に加圧ろ過によってNaF粉末を除去し、生成物を得た。生成物をNMRとGCを用いて分析した結果、化合物(y2−1)および化合物(z2−1)が、混合物として99.4%の純度で生成していることを確認した。未反応のグリセロール・ホルマールは検出されなかった。得られた混合物はそのままつぎの反応に使用した。
【0158】
化合物(y2−1)のH−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS)δ(ppm):3.93〜4.10(4H)、4.82(1H)、4.95(2H)。
化合物(y2−1)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−79.0〜−80.7(4F)、−81.9〜−83.1(8F)、−84.6〜−85.6(1F)、−130.1(2F)、−132.0(1F)、−145.7(1F)。
化合物(z2−1)のH−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS)δ(ppm):3.74(1H)、3.93〜4.10(1H)、4.27〜4.54(3H)、4.90(1H)、5.04(1H)。
化合物(z2−1)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−79.0〜−80.7(4F)、−81.9〜−83.1(8F)、−84.6〜−85.6(1F)、−130.1(2F)、−132.0(1F)、−145.7(1F)。
【0159】
(例1−2)化合物(y3−1)と化合物(z3−1)との混合物の合成例
コンデンサーおよびポンプとそれにつながる循環ラインを装填したオートクレーブ(内容積3L、ステンレス製)にF(CFOCF(CF)CFOCF(CF)COF(4kg)を加え、ポンプにより内液を循環(流速300L/h)して循環液とした。ポンプの吐出側からオートクレーブの天板に渡る循環ラインの一部に熱交換器を設置して、循環液の温度を25℃に保った。循環ラインの途中にはイジェクタ(ステンレス製)を設置し循環液中にガスを吸引できるようにした。また、イジェクタとポンプの間に、原料供給管と抜き出し管を設置し、オートクレーブ中に原料である例1−1で得た混合物、および反応により生成する反応粗液を、随時出し入れできるようにした。
【0160】
イジェクタを通してオートクレーブに窒素ガスを2.0時間吹き込んだ後、窒素ガスで50%に希釈したフッ素ガス(以下、50%希釈ガスと記す。)を、流速113.2L/hで1.5時間吹き込んだ。つぎに、50%希釈フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、原料供給管から例1−1で得た混合物を希釈することなく、循環液中に連続供給(平均供給量約50g/h)し、合計で4800gの原料を仕込んだ。
【0161】
一方、原料供給開始から約8時間毎に、抜き出し管より約270gの反応粗液を、合計で12回抜き出した。また、例1−1で得た混合物の供給を終了後、1時間、50%希釈フッ素ガスを供給してから、さらに窒素ガスを3.5時間吹き込んだ。つぎに、オートクレーブ中の内液を全量抜き出し、途中に抜き出した反応粗液とあわせて合計7261gの反応粗液を回収した。
【0162】
反応粗液を19F−NMRで分析した結果、化合物(y2−1)からの化合物(y3−1)の収率は57.5%、化合物(z2−1)からの化合物(z3−1)の収率は81%であり、残りは循環液としてのF(CFOCF(CF)CFOCF(CF)COFが主成分であることを確認した。得られた反応粗液は、そのままつぎの反応に使用した。
【0163】
化合物(y3−1)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−52.8(2F)、−78.5〜−80.5(4F)、−81.9(8F)、−83.0〜−89.1(5F)、−130.1(2F)、−132.0(1F)、−139.8(1F)、−145.5(1F)。
化合物(z3−1)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−54.5〜−58.3(2F)、−78.5〜−80.5(4F)、−81.9(8F)、−83.0〜−89.1(5F)、−127.9(1F)、−130.1(2F)、−132.0(1F)、−145.5(1F)。
【0164】
(例1−3)化合物(a1−1)の合成例
例1−2で得た反応粗液(3575.6g)をKF粉末(15.7g)とともに丸底フラスコ(内容積2L)に仕込んだ。丸底フラスコの上部には、順に20℃に温度調節した冷却器、および−78℃に冷却した丸底フラスコを直列に接続した。つぎに反応粗液を仕込んだ丸底フラスコを激しく撹拌しながら、オイルバス中で5時間、90℃に加熱して、留分を−78℃に冷却した丸底フラスコに回収した。反応粗液を仕込んだ丸底フラスコ内にガスの生成が見られなくなってから、オイルバスの温度を100℃にして、さらに1時間程度、加熱撹拌して熱分解終了とした。得られた留分はそのまま、つぎの反応に使用した。
【0165】
留分(463.2g)を、19F−NMRで分析した結果、化合物(a1−1)と化合物(z4−1)との混合物であることを確認した。
化合物(a1−1)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−51.9(2F)、−80.6(4F)。
化合物(z4−1)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):25.5(1F)、−53.6(1F)、−58.4(1F)、−77.5(1F)、−88.5(1F)、−119.2(1F)。
【0166】
つぎに、留分の入った丸底フラスコの内温を10℃以下に保持しながら、イオン交換水(95.5g)をゆっくり滴下した。イオン交換水を全量滴下してから、内温を25℃にして16時間撹拌を続けて反応液を得た。反応液を19F−NMRで分析した結果、化合物(a1−1)が水和した化合物(a1−OH)、および化合物(z4−1)がカルボン酸に変換した化合物(z4−COOH)の混合物であることを確認した。また19F−NMRから求めた収率(内部標準:C)は、化合物(a1−OH)が化合物(a1−1)基準で91%、化合物(z4−COOH)が化合物(z4−1)基準で75%であった。得られた反応液はそのまま、つぎの反応に使用した。
【0167】
化合物(a1−OH)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−52.2(2F)、−87.9(4F)。
化合物(z4−COOH)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−54.0(1F)、−59.2(1F)、−79.1(1F)、−90.2(1F)、−119.5(1F)。
【0168】
つぎに丸底フラスコ(内容積500mL)に濃硫酸(203.2g)を仕込み、激しく撹拌しながらオイルバス中で130℃に加熱した。丸底フラスコの上部には、順に20℃に温度調節した冷却器および−78℃に冷却した丸底フラスコを直列に接続した。つぎに反応液(304.4g)をゆっくり滴下して、得られる生成物を−78℃に冷却した丸底フラスコに回収した。反応液を全量滴下してから、145℃で約1時間、加熱撹拌して反応を終了させて生成物を得た。生成物を19F−NMRで分析した結果、化合物(a1−1)がほぼ定量的に生成していることを確認した。
【0169】
[例2]化合物(m2−10F)の製造例
【0170】
【化32】

【0171】
(例2−1)化合物(y10−F)の合成例
例1−3で得た生成物が入った丸底フラスコを、−78℃に冷却し撹拌しながら、HOCHCHCl(40.5g)をゆっくり滴下した。HOCHCHClを全量滴下してから、撹拌したままフラスコを25℃まで昇温し、さらに16時間撹拌を続けて反応液を得た。つぎに反応液を単蒸留して、無色透明の液体(106.8g)を得た。該液体をNMRにより分析して化合物(y10−F)が生成していることを確認した。
【0172】
つぎに、還流冷却機、撹拌機、滴下ロートを備えた4つ口フラスコ(内容積500mL、ガラス製)を窒素ガスにて充分置換し、水浴中でフラスコを冷却しながら、メタノール(160.0g)と水酸化ナトリウム(17.6g)を仕込み、撹拌して完全に溶解させた。
【0173】
つぎに、フラスコ内温を10℃以下に保ち撹拌を続けながら、化合物(y10−F)(99.8g)を滴下ロートから滴下した。そのまま、12時間、撹拌を続けて反応を完結させたフラスコ内容液を、イオン交換水(400mL)中に加えて水溶液を得た。水溶液をR−225(40g)で抽出して抽出液を得た。抽出液をロータリーエバポレーターで濃縮し、減圧下にR−225を留去した結果、無色透明の液体(82.0g)を得た。NMRにより該液体中に化合物(y4−F)が生成していることを確認した。
【0174】
(例2−2)化合物(y5−F)の合成例
中心部に高圧水銀灯を、側管にドライアイスコンデンサーおよび塩素ガス導入口、熱電対温度計を具備したフラスコ(内容積2L)内を窒素ガス置換した後、該フラスコに例2−1で得た無色透明の液体(76g)とR−113(540g)を仕込んだ。フラスコ内温を10℃に保持して水銀灯を点灯した。つぎにフラスコ内温を30℃にして、フラスコ内にゆっくりと塩素ガスの導入を開始した。続いてフラスコを加熱して、45〜50℃内で一定に保った。未反応の塩素ガスはドライアイスコンデンサーによりフラスコ内に還流させて反応を行った。塩素の消費がなくなった時点で反応を終了とし、フラスコに仕込んだ塩素は合計90.5gであった。
【0175】
つぎに、窒素ガスにてフラスコ内の残存塩素を除去してから、フラスコの内容物を回収した。該内容物をエバポレーターで濃縮すると無色透明な液体(120g)を得た。NMRにより該液体中に化合物(y5−F)が生成していることを確認した。さらに、減圧蒸留して、2kPa/(40〜41℃)の留分(116g)として化合物(y5−F)を得た。
【0176】
(例2−3)化合物(y6−F)の合成例
還流冷却機、撹拌機、滴下ロート、および熱電対温度計を備えた、乾燥した4つ口フラスコ装填し、3フッ化アンチモン(61.6g)を仕込み、25℃で真空ポンプを用いて約12時間減圧乾燥した。その後、例2−2で得た留分(100.0g)および5塩化アンチモン(18.0g)を滴下ロートより滴下し、フラスコを撹拌しながら加熱還流した。つぎに、還流冷却機を単蒸留装置に付け変えて減圧蒸留を行って留分として無色透明の液体(87.6g)を得た。該液体の19F−NMRを分析した結果、化合物(y6−F)であることを確認した。
【0177】
(例2−4)脱塩素反応による化合物(m2−10F)の合成例
メカニカルスターラー、滴下ロート、熱電対温度計、蒸留塔を備えた4つ口フラスコ(内容積500mL、ガラス製)に、亜鉛粉末(42.1g)、およびジメチルホルムアミド(120g)を入れ、水浴中で40℃に加熱した。その後、1,2−ジブロモエタン(16.1g)を系内に滴下した。激しい発熱が終了してから、フラスコ内温を55℃に保持し、フラスコに例2−3で得た無色透明の液体(77.0g)をゆっくり滴下した。
【0178】
反応の進行に伴い蒸留塔の塔頂より留出する留分の量と化合物(y6−F)の滴下量のバランスをとりながら、化合物(y6−F)を全量滴下した。留出する無色透明の液体である留分(32.1g)を19F−NMRにより分析した結果、化合物(m2−10F)であることを確認した。ガスクロマトグラフィで定量した収率は52%であった。また、留分のマススペクトル(CI法)を測定した結果、m/z=288に分子イオンピークが認められ、化合物(m2−10F)の生成を確認した。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−53.1(2F)、−87.7(4F)、−156.1(2F)。
【0179】
[例3]CF=CH(CFOCF=CF(m3−23)の製造例
(例3−1)化合物(y11)の製造例
滴下ロートと撹拌機を備えた3つ口フラスコ(内容積5L)に、14質量%の次亜塩素酸ナトリウムを含む水溶液(4200g)と塩化トリオクチルメチルアンモニウム(19g)を投入して撹拌した。つぎにフラスコの内温を10℃未満に保持しながら、フラスコにCF=CFCFOCFClCFCl(340g)を30分かけて滴下しながら撹拌して、滴下終了後、さらに2時間、撹拌した。
【0180】
つぎにフラスコ内溶液の上澄み液をデカンテーションして除去してから、水で洗浄して反応液(244g)を得た。反応液をNMRとGCで分析した結果、標記化合物(収率59%)の生成を確認した。また未反応のCF=CFCFOCFClCFCl(収率10%)が回収された。
【0181】
【化33】

【0182】
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−71.0(2F)、−76.8(1F)、−80.0(2F)、−109.9(1F)、−111.8(1F)、−155.8(1F)。
【0183】
(例3−2)FCOCFCFOCFClCFClの製造例
窒素ガス雰囲気下の滴下ロート、還流冷却管、撹拌機、恒温槽を備えた4つ口フラスコ(内容積2L)に、CsF(53g)、ジグライム(1400g)、水(3.1g)を投入して撹拌した。つづいて、フラスコに例3−1の方法で得た反応液(500gの化合物(y11)を含む。)を滴下しながら、25℃で撹拌した。
【0184】
2時間後、還流冷却管をドライアイス冷却トラップが連結した直管に付け換えた。フラスコ内を25℃に保持しながら、減圧するとドライアイス冷却トラップに液体(670g)が得られた。液体を減圧蒸留して60℃/250Paの留分を得た。留分をNMRとGCで分析した結果、標記化合物(収率70%)の生成を確認した。
【0185】
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):25.2(1F)、−70.3(2F)、−76.3(1F)、−84.3(1F)、−86.2(1F)、−122.0(2F)。
【0186】
(例3−3)ICOCFCFOCFClCFClの製造例
オイルバスに浸した窒素ガス雰囲気下の滴下ロート、還流冷却管、撹拌機を備えた3つ口フラスコ(内容積500mL)にLiI(127g)を投入してから、フラスコ内を撹拌しながら例3−2で得た留分(390g)を投入した。つぎにオイルバスを100℃に加熱して、フラスコ内溶液を1.5時間、加熱還流してから25℃まで冷却した。
【0187】
還流冷却管を氷水冷却トラップおよびドライアイス冷却トラップが順に連結した直管に付け換えた。フラスコ内を667Paまで減圧しながら80℃まで加熱すると、氷水冷却トラップに液体A(300g)とドライアイス冷却トラップに液体B(130g)を得た。液体AをNMRとGCで分析した結果、標記化合物(収率94%)の生成を確認した。また液体BをNMRとGCで分析した結果、CF=CFCFOCFClCFClの生成を確認した。
【0188】
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−70.5(2F)、−76.7(1F)、−82.5(1F)、−84.5(1F)、−113.7(2F)。
【0189】
(例3−4)ICFCFOCFClCFClの製造例
オイルバスに浸したオートクレーブ(内容積1L、ハステロイ製)に例3−3で得た液体A(290g)を投入した。オイルバスを200℃に加熱するとオートクレーブの内圧が3時間、昇圧しつづけた。つぎにオートクレーブの内温を25℃に保持して、オートクレーブ内溶液を抜き出して反応粗液(270g)を得た。つぎに反応粗液を、亜硫酸ナトリウム水溶液(50mL)、水(50mL)、飽和食塩水(50mL)で順に洗浄して粗生成物を得た。粗生成物をGCで分析した結果、標記化合物(収率98%)の生成を確認した。さらに粗生成物を精留した結果、37℃/0.93kPaの留分としてGCにより求めた純度が99%の生成物を得た。
【0190】
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−65.4(2F)、−70.9(2F)、−77.3(1F)、−86.0(1F)、−88.3(1F)。
【0191】
(例3−5)ICFCHCFCFOCFClCFClの製造例
オイルバスに浸したオートクレーブ(内容積500mL、ニッケル製)に例3−4の方法で得た留分(400g)、CF(CFH(210g)、および((CHCO−)(8g)を投入した。オートクレーブを密閉し、内圧が0.05MPa(ゲージ圧)になるまで気体状のCH=CF(0.4g)を加えた。つぎにオイルバスを加熱し、オートクレーブの内温が110℃を超えた時点で、オートクレーブに10.4g/hの流量で気体状のCH=CFを投入しながら、内温を120℃まで加熱して撹拌した。5時間後のオートクレーブの内圧は0.3MPa(ゲージ圧)を示した。
【0192】
さらに、1時間、撹拌してからオイルバスを外してオートクレーブの内温を25℃まで降温してから、オートクレーブ内容物を抜き出して反応粗液を得た。反応粗液を、亜硫酸ナトリウム水溶液(100mL)、水(100mL)、飽和食塩水(100mL)で順に洗浄して粗生成物を得た。粗生成物をGCで分析した結果、標記化合物(収率40%)の生成を確認した。また未反応のICFCFOCFClCFCl(収率26%)で回収された。さらに粗生成物を精留して、GCにより求めた純度が99%の生成物を得た。
【0193】
(例3−6)CF=CHCFCFOCFClCFClの製造例
滴下ロート、恒温槽、蒸留装置を備えた4つ口フラスコ(内容積1L)に、例3−5で得た99%純度のICFCHCFCFOCFClCFCl(170g)、および1,4−ジオキサン(450g)を投入した。つぎに25℃でN(CHCHCHCH(90g)を滴下しながら撹拌し、滴下終了後、さらに12時間、撹拌して反応粗液を得た。反応粗液をGCで分析した結果、標記化合物の生成を確認した。反応粗液を減圧留去してから、飽和食塩水(500mL)で洗浄して反応液を得た。反応液をGCで分析した結果、収率98%であった。
【0194】
(例3−7)CF=CHCFCFOCF=CFの製造例
還流液を捕集する容器を備えた還流コンデンサー、および滴下ロートを備えた4つ口フラスコ(内容積1L)に、Zn(120g)およびジメチルホルムアミド(360g)を投入して撹拌した。つぎにフラスコの内温を60℃に加熱して、1,2−ジブロモエタン(37g)を投入して30分間、撹拌した。つぎにフラスコ内を26.7kPaに減圧して、例3−6で得たCF=CHCFCFOCFClCFCl(120g)を滴下ロートよりゆっくりと滴下すると該容器に液体(80g)が留出した。液体(80g)をNMRとGCで分析した結果、標記化合物(収率85%)の生成を確認した。さらに液体を精留して20℃/1.33kPaの留分として、GC純度が99%の生成物を得た。
【0195】
H−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS)δ(ppm):4.74(1H)。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−70.4(1F)、−71.8(1F)、−91.0(2F)、−111.9(2F)−114.5(1F)、122.8(1F)、135.1(1F)。
【0196】
[例4]化合物(a3)の製造例
【0197】
【化34】

【0198】
還流コンデンサーを備えたフラスコに、12質量%の次亜塩素酸ナトリウム水溶液(150mL)を入れた。続いて、アセトニトリル(25mL)を加えた。続いて、内温を0℃に調節し、化合物(m2−13)(16.3g)を加えた。反応中の内温が0℃を保つように調節し5時間撹拌した。その後、塩化トリオクチルメチルアンモニウム10滴を加え、さらに0℃で17時間撹拌した。つぎに0℃のまま静置した。静置後、上層を抜き出し、下層を飽和重曹水で洗浄した。洗浄後、上層の飽和重曹水を抜き出した。続いて、減圧留去することにより化合物(a3)(1.03g)を得た。生成物をNMRで分析した結果、標記化合物(収率3.3%)の生成を確認した。
【0199】
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−81.3(2F)、−95.0(2F)、−182.4(2F)。
【0200】
[例5]化合物(a2)の製造例
【0201】
【化35】

【0202】
(例5−1)化合物(y12)の製造例
フラスコにNaF(35.7g)、R−225(176g)、3−ヒドロキシテトラヒドロフラン(50.0g)を入れ撹拌した。フラスコの内温を0〜10℃に保持しながら、フラスコにCFCFCFOCF(CF)COF(245g)を4時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに25℃で4時間、撹拌してからフラスコの内温を15℃以下に保持しながら飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)を加えて溶液を得た。
【0203】
溶液をR−225(200mL)で3回抽出して得た抽出液を硫酸マグネシウムで脱水してから濃縮し、減圧蒸留した結果、63.5℃/933Paの留分(201g)を得た。該留分をNMRで分析した結果、化合物(y12)が生成していることを確認した(収率92.4%)。
【0204】
化合物(y12)のH−NMR(300.4MHz、溶媒:CDCl、基準:TMS)δ(ppm):2.08(m、1H)、2.28(m、1H)、3.95(m、4H)、5.55(m、1H)。
化合物(y12)の19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−80.0(1F)、−81.8(3F)、−82.8(3F)、−86.8(1F)、−130.2(2F)、−132.0(1F)。
【0205】
(例5−2)化合物(y13)の製造例
オートクレーブ(500mL、ニッケル製)に、R−113(312g)を加えて撹拌し、25℃に保った。オートクレーブガス出口には、20℃に保持した冷却器、NaFペレット充填層、および−10℃に保持した冷却器を直列に設置した。なお、−10℃に保持した冷却器からは凝集した液をオートクレーブに戻すための液体返送ラインを設置した。窒素ガスを1時間吹き込んだ後、窒素ガスで20%に希釈したフッ素ガス(以下、20%フッ素ガスという)を、10.8L/hで1時間吹き込んだ。
【0206】
つぎに、オートクレーブに20%フッ素ガスを同じ流速を保って吹き込みながら、例5−1で得た留分(10g)をR−113(100g)に溶解した溶液を、3.5時間かけて注入した。続いて、オートクレーブの出口バルブを閉め、20%フッ素ガスを同じ流速で吹き込みながら、ベンゼン濃度が0.01g/mLのR−113溶液を25℃から40℃にまで加温しながら9ml注入した。オートクレーブのベンゼン注入口とオートクレーブの出口バルブを閉め、オートクレーブ内の圧力が0.20MPaに昇圧してからオートクレーブのフッ素ガス入り口バルブを閉めて、0.4時間撹拌した。つぎに圧力を常圧にし、反応器内温度を40℃に保ちながら、上記のベンゼン溶液を6mL注入し、オートクレーブのベンゼン注入口を閉め、さらにオートクレーブの出口バルブを閉め、圧力が0.20MPaになったところでオートクレーブのフッ素ガス入り口バルブを閉めて、0.4時間、撹拌を続けた。さらに同様の操作を3回くり返した。ベンゼンの総注入量は0.33g、R−113の総注入量は33mLであった。
オートクレーブに窒素ガスを1時間吹き込んでから、オートクレーブ内容物を分析した結果、化合物(y13)の生成を確認した(収率60%)。
【0207】
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−78.0〜90.0(4F)、−79.9(1F)、−81.9(6F)、−84.0(1F)、−124.0〜130.0(2F)、−130.2(2F)、−132.2(1F)、−135.0(1F)。
【0208】
(例5−3)化合物(a2)の製造例
蒸留塔を備えたフラスコに例5−2の方法で化合物(y13)(139.4g)とKF粉末(3.2g)を入れた。フラスコ内溶液を撹拌しながら、大気圧下で8時間、加熱(100℃)して粗生成物を得た。粗生成物を19F−NMRで分析した結果、化合物(a2)の生成を確認した(収率82%)。さらに粗生成物を減圧蒸留した結果、6.0℃/93.33kPaの留分として化合物(a2)を得た。
19F−NMR(282.7MHz、溶媒:CDCl、基準:CFCl)δ(ppm):−80.0(2F)、−85.5(2F)、−125.7(2F)。
【0209】
<重合体の製造例(例6〜19)>
以下の重合体の製造例におけるモノマー単位に対応する構造は、以下のとおりである。
【0210】
【化36】

【0211】
[例6]化合物(a1−1)と化合物(m3−22)との共重合反応による重合体(A1−1)の製造例
オートクレーブ(内容積100mL、ステンレス製)に、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)(6g)、CF=CHCF(CF)CFOCF=CF(化合物(m3−22)、10g)、および重合開始剤として((CFCO−)(70mg)を投入してからオートクレーブ内を窒素ガス置換した。つぎに、オートクレーブをドライアイス・エタノール浴で−78℃に冷却してから、例1−3で得た化合物(a1−1)を含む生成物(8.0g)を仕込んだ。つぎにオートクレーブを窒素ガスで0.2MPa(ゲージ圧)まで加圧してから、100℃に加熱して66時間重合を行い、さらに120℃に加熱して24時間重合を行い、重合体(A1−1)(7.1g)を得た。
【0212】
重合体(A1−1)を1H−NMRおよび19F−NMRにより解析した結果、重合体(A1−1)における不飽和結合を構成する炭素原子に結合するフッ素原子のピークは完全に消失しており、かつ6員環構造は保持されていることから、単位(A1−1)および単位(M3−22)等を含む重合体の生成を確認した。また、重合体(A1−1)の全単位に対する単位(A1−1)の割合は12モル%であり、化合物(m3−22)が環化重合した単位(M3−22)等の割合は88モル%であった。また、重合体(A1−1)のMwは20000、Tは76℃であった。重合体(A1−1)は、25℃においてタフで透明なガラス状の重合体であった。
【0213】
[例7]化合物(a1−1)と化合物(m2−10F)との共重合反応による重合体(A1−2)の製造例
オートクレーブ(内容積100mL、ステンレス製)に、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)(40g)、例2−4で得た化合物(m2−10F)(6.5g)、および重合開始剤として(CCOO)を3質量%含むR−225溶液(1.2g)を仕込んでからオートクレーブを窒素ガス置換した。つぎに、オートクレーブをドライアイス・エタノール浴で−78℃に冷却してから、例1−3で得た化合物(a1−1)を含む生成物(4.0g)を仕込んだ。つぎにオートクレーブを窒素ガスで0.3MPa(ゲージ圧)まで加圧してから、25℃に加熱して56時間重合を行った結果、重合体(A1−2)(6.4g)を得た。
【0214】
重合体(A1−2)を19F−NMRにより解析した結果、重合体(A1−2)における不飽和結合を構成する炭素原子に結合するフッ素原子のピークは完全に消失しており、かつ6員環構造は保持されていることから、単位(A1−1)および単位(M2−10F)を含む重合体の生成を確認した。また重合体(A1−2)の全単位に対する単位(A1−1)の割合は13モル%であり、単位(M2−10F)の割合は87モル%であった。また、重合体(A1−2)の固有粘度は30℃のペルフルオロ(メチルデカリン)中で3.4dl/gであり、Tは230℃であった。重合体(A1−2)は25℃においてタフで透明なガラス状の重合体であった。
【0215】
[例8]化合物(a1−1)と化合物(m3−22)との共重合反応による重合体(A1−3)の製造例
オートクレーブ(ステンレス製、内容積100mL)に、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)(10g)、化合物(m3−22)(10g)、および重合開始剤として((CFCO−)(100mg)を投入してから、オートクレーブを窒素ガス置換した。つぎに、オートクレーブをドライアイス・エタノール浴で−78℃に冷却してから、例1−3で得た化合物(a1−1)を含む生成物(12.0g)を仕込んだ。つぎにオートクレーブ内を窒素ガスにて0.2MPa(ゲージ圧)まで加圧してから、110℃に加熱して15時間重合し、さらに130℃に加熱して10時間重合を行い重合体(A1−3)(4.3g)を得た。
【0216】
重合体(A1−3)を19F−NMRにより解析した結果、重合体(A1−3)における不飽和結合を構成する炭素原子に結合するフッ素原子のピークは完全に消失しており、かつ6員環構造は保持されていることから、単位(A1−1)および単位(M3−22)等を含む重合体の生成を確認した。また、重合体(A1−3)の全単位に対する単位(A1−1)の割合は56モル%であり、化合物(m3−22)が環化重合した化合物(m3−22)に由来する単位(M3−22)等の割合は44モル%であった。また、重合体(A1−3)のMは7500、Tは57℃であった。重合体(A1−3)は、25℃においてタフで透明なガラス状の重合体であった。
【0217】
[例9]重合体(A1−2)にカルボキシル基を導入してなる重合体(A1−20)の製造例
例7の方法で得た重合体(A1−2)を熱風オーブン中に仕込み、酸素ガス雰囲気下、300℃で2時間処理をした後に、純水中に100℃で24時間浸漬した。さらに100℃で24時間真空乾燥して重合体を得た。該重合体のIRスペクトルでカルボキシル基に相当する吸収が確認されたことから、重合体(A1−2)にカルボキシル基が導入された重合体(A1−20)が生成していることを確認した。
【0218】
[例10]重合体(A1−3)にカルボキシル基を導入してなる重合体(A1−5)の製造例
例8の方法で得た重合体(A1−3)を用い真空乾燥の温度を80℃とする以外は、例9の方法と同様の方法で重合体を得た。該重合体のIRスペクトルから重合体(A1−3)にカルボキシル基が導入された重合体(A1−5)の生成を確認した。重合体(A1−5)中に存在するカルボキシル基の割合は0.0005mol/gであった。
【0219】
[例11]化合物(a1−1)、化合物(m2−11)の共重合反応による重合体(A1−4)の製造例
オートクレーブ(内容積100mL、ステンレス製)に、ペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)(50g)、前出の化合物(m2−11)(5g)、および重合開始剤として(CCOO)を3質量%含むR−225溶液(2g)を仕込んでからオートクレーブを窒素ガス置換した。つぎに、オートクレーブをドライアイス・エタノール浴で−78℃に冷却してから、例1−3で得た化合物(a1−1)を含む生成物(10.0g)を仕込んだ。つぎにオートクレーブを窒素ガスで0.3MPa(ゲージ圧)まで加圧してから、25℃に加熱して56時間重合を行った結果、重合体(A1−4)(4.7g)を得た。
【0220】
重合体(A1−4)の19F−NMRを測定した結果、不飽和結合を構成する炭素原子に結合するフッ素原子のピークは完全に消失し、かつ6員環構造は保持されていることから、単位(A1−1)および単位(M2−11)を含む重合体の生成を確認した。また重合体(A1−4)中の全単位に対する単位(A1−1)の割合は2モル%であり、単位(M2−11)の割合は98モル%であった。重合体(A1−4)の固有粘度は30℃のペルフルオロ(メチルデカリン)中で0.6dl/gであり、Tは316℃であった。重合体(A1−4)は25℃においてタフで透明なガラス状の重合体であった。また、重合体(A1−4)の被膜(膜厚1μm)が形成されたフッ化カルシウム製基板の波長157nmの光に対する透過率は、90%以上であった。
【0221】
[例12]化合物(a1−1)とCF=CHCFCFOCF=CFとの共重合反応による重合体(A1−6)の製造例
ガラス製耐圧反応器(内容積50mL)に、CF=CHCFCFOCF=CF(化合物(m3−23)、13.6g)、および重合開始剤として((CFCO−)(307mg)を投入してから、ガラス製耐圧反応器を窒素ガス置換した。つぎに、ガラス製耐圧反応器をドライアイス・エタノール浴で−78℃に冷却してから、例1−3で得た化合物(a1−1)を含む生成物(16.5g)を仕込んだ。つぎに系内を液体窒素にて凍結脱気後、110℃に加熱して18時間重合を行った結果、重合体(A1−6)(8.4g)を得た。
【0222】
重合体(A1−6)の19F−NMRを測定した結果、不飽和結合を構成する炭素原子に結合するフッ素原子のピークは完全に消失し、かつ6員環構造は保持されていることから、単位(A1−1)および単位(M3−23)等を含む重合体であることを確認した。また、重合体(A1−6)の全単位に対する単位(A1−1)の割合は34モル%であり、化合物(m3−23)が環化重合した化合物(m3−23)に由来する単位(M3−23)等の割合は66モル%であった。また、重合体(A1−6)のMは9900、Tは55℃であった。重合体(A1−3)は、25℃において白色粉末状の重合体であった。
【0223】
[例13]化合物(a1−1)と化合物(m3−23)との共重合反応による重合体(A1−7)の製造例
アンプル(内容積10mL、ガラス製)内を窒素ガス置換してから、−78℃に冷却した。つぎに、(CCOO−)を3質量%含むR−225溶液(3.3g)、化合物(m3−23)(5.5g)、化合物(a1−1)(4.5g)を入れて封管した。アンプルを20℃の温水槽中に浸して、48時間、重合を行い重合体(A1−7)(0.5g)を得た。
【0224】
重合体(A1−7)をNMRにより解析した結果、不飽和結合を構成する炭素原子に結合するフッ素原子のピークは完全に消失しており、かつ6員環構造は保持されていることから、単位(A1−1)および単位(M3−23)等からなる重合体の生成を確認した。重合体(A1−7)のMは17000であり、Tは61℃であった。重合体(A1−7)は、25℃においてタフで透明なガラス状の重合体であった。また、重合体(A1−7)の被膜(膜厚1μm)が形成されたフッ化カルシウム製基板の波長157nmの光に対する透過率は、95%以上であった。
【0225】
[例14]化合物(a1−1)と化合物(m3−21)との共重合反応による重合体(A1−8)の製造例
オートクレーブ(内容積100mL、ステンレス製)内を窒素ガスで置換してから減圧した。つぎに、R−113(50g)、CF=CFCFCFOCF=CF(m3−21)(13g)、および((CFCFO−)(0.1g)を入れた。オートクレーブの内温を−78℃に保持しながら、化合物(a1−1)(13.2g)を入れた。
【0226】
つぎにオートクレーブに窒素ガスを投入して、オートクレーブの内圧を0.2MPa(ゲージ圧)まで加圧した。つぎにオートクレーブの内温を90℃〜110℃に保持しながら34時間、重合を行い重合体(A1−8)(10.6g)を得た。
【0227】
重合体(A1−8)のNMRより、単位(A1−1)および単位(M3−21)を含む重合体の生成を確認した。重合体(A1−8)の全単位に対する単位(A1−1)の割合は3モル%であり、単位(M3−21)等の割合は97モル%であった。重合体(A1−8)のペルフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)中の30℃における固有粘度は0.13(dL/g)であり、Tは97℃であった。重合体(A1−8)は、25℃においてタフで透明なガラス状の重合体であった。また、重合体(A1−8)の被膜(膜厚1μm)が形成されたフッ化カルシウム製基板の波長157nmの光に対する透過率は、5%以下であった。
【0228】
[例15]化合物(a1−1)とCH=CFとの共重合反応による重合体(A1−9)の製造例
オートクレーブ(内容積200mL、ステンレス製)内を窒素ガスで置換してから、−40℃以下で減圧した。つぎに、R−113(30g)、(CCOO−)を3質量%含むR−225溶液(0.7g)、液状の化合物(a1−1)(4.9g)、およびガス状のCH=CF(1.7g)を入れた。
つぎにオートクレーブに窒素ガスを投入して、オートクレーブの内圧を0.5MPa(ゲージ圧)まで加圧した。つぎにオートクレーブの内温を20℃に保持しながら42時間、重合を行い重合体(A1−9)(3.3g)を得た。
【0229】
重合体(A1−9)のNMRにより、化合物(a1−1)由来の6員環のシグナルおよび−(OCF)−構造に基づくシグナル(−60ppm)の存在が確認されたことから単位(A1−1)とフッ化ビニリデンのモノマー単位を含む重合体の生成を確認した。重合体(A1−9)の全単位に対する単位(A1−1)の割合は33モル%であり、フッ化ビニリデンのモノマー単位の割合は67モル%であった。重合体(A1−9)のMは46000であり、Tは6℃であった。重合体(A1−9)は、10℃において伸びの大きい透明なガラス状の重合体であった。フィルム状(厚さ1μm)にした重合体(A1−9)の波長157nmの光に対する透過率は98%以上であった。
【0230】
[例16]化合物(a1−1)、CH=CF、および化合物(m3−21)の共重合反応による重合体(A1−10)の製造例
オートクレーブ(内容積200mL、ステンレス製)内を窒素ガスで置換してから、−40℃以下で減圧した。つぎに、R−113(34g)、(CCOO−)を3質量%含むR−225溶液(0.6g)、化合物(a1−1)(5.4g)、液状の化合物(m3−21)(1.7g)、およびガス状のCH=CF(1.1g)をオートクレーブに投入した。
つぎにオートクレーブに窒素ガスを投入して、オートクレーブの内圧を0.5MPa(ゲージ圧)まで加圧した。つぎにオートクレーブの内温を20℃に保持しながら32時間、重合を行い重合体(A1−10)(4.9g)を得た。
【0231】
重合体(A1−10)のNMRにより、単位(A1−1)、CF=CHのモノマー単位、および単位(M3−21)からなる重合体の生成を確認した。重合体(A1−10)の全単位に対する単位(A1−1)の割合は30モル%であり、CF=CHのモノマー単位の割合は60モル%、単位(M3−21)等の割合は10モル%であった。重合体(A1−10)のMは70000であり、Tは21℃であった。重合体(A1−10)は、25℃において透明でタフなガラス状の重合体であった。また、重合体(A1−10)の被膜(膜厚1μm)が形成されたフッ化カルシウム製基板の波長157nmの光に対する透過率は、70%以上であった。
【0232】
[例17]化合物(a1−1)、CH=CF、および化合物(m2−11)の共重合反応による重合体(A1−11)の製造例
オートクレーブ(内容積200mL、ステンレス製)内を窒素ガスで置換してから、−40℃以下で減圧した。つぎに、R−113(40g)、(CCOO−)を3質量%含むR−225溶液(0.75g)、化合物(a1−1)(3.8g)、化合物(m2−11)(3.7g)、ガス状のCH2=CF2(0.9g)をオートクレーブに入れた。
つぎにオートクレーブに窒素ガスを投入して、オートクレーブの内圧を0.6MPa(ゲージ圧)まで加圧した。つぎにオートクレーブの内温を20℃に保持しながら24時間、重合を行い重合体(A1−11)(4.3g)を得た。
【0233】
重合体(A1−11)のNMRにより、単位(A1−1)、CF=CHのモノマー単位、および単位(M2−11)からなる重合体の生成を確認した。重合体(A1−11)の全単位に対する単位(A1−1)の割合は10モル%であり、CF=CHのモノマー単位の割合は30モル%、単位(M2−11)等の割合は60モル%であった。重合体(A1−11)のMは151000であり、Tは88℃であった。重合体(A1−11)は、25℃において透明でタフなガラス状の重合体であった。また、重合体(A1−11)の被膜(膜厚1μm)が形成されたフッ化カルシウム製基板の波長157nmの光に対する透過率は、97%以上であった。
【0234】
[例18]化合物(a2)とCH=CFとの共重合反応による重合体(A2−1)の製造例
オートクレーブ(内容積100mL、ステンレス製)内を窒素ガスで置換してから、−40℃以下で減圧した。つぎに、R−113(34g)、(CCOO)を3質量%含むR−225溶液(0.75g)、液状の化合物(a2)(5.1g)、およびガス状のCH=CF(2g)をオートクレーブに入れた。
つぎにオートクレーブに窒素ガスを投入して、オートクレーブの内圧を0.5MPa(ゲージ圧)まで加圧した。つぎにオートクレーブの内温を20℃に保持しながら32時間、重合を行い重合体(A2−1)(3.6g)を得た。
【0235】
重合体(A2−1)のNMRにより、化合物(a2)由来の5員環のシグナルおよび−(OCF)−構造に基づくシグナル(−59ppm)の存在が確認されたことから、単位(A2)を含む重合体の生成を確認した。
【0236】
重合体(A2−1)の全単位に対する単位(A2)の割合は33モル%であり、CF=CHのモノマー単位の割合は67モル%であった。重合体(A2−1)のMは42000であり、Tは18℃であった。重合体(A2−1)は、20℃において透明なガラス状の重合体であった。フィルム状(厚さ1μm)にした重合体(A2−1)の波長157nmの光に対する透過率は98%以上であった。
【0237】
[例19]化合物(a3)の重合反応による重合体(A3−1)の製造例
温度計、磁力式撹拌子、冷却コンデンサーを備えた4つ口フラスコ(内容積50mL、ガラス製)内を窒素ガスで置換した。つぎに、乾燥したフッ化セシウム(0.02g)、テトラグライム(0.5g)、および無水テトラヒドロフラン(1g)を投入した。つぎに、4つ口フラスコの内温を−20℃以下に保持しながら、4つ口フラスコに化合物(a3)(2g)を入れながら撹拌した。フラスコの内温を−30℃に保持ながら12時間撹拌してから、つぎに内温を−20℃に保持ながら8時間撹拌し、さらに内温を−10℃に保持しながら72時間撹拌して重合を行った。
【0238】
4つ口フラスコ内溶液のテトラグライムとテトラヒドロフランをデカンテーションによって除去しフラスコ内の固形物を回収した。固形物をR−225(10mL)に溶解させてから、再沈殿法(溶媒:ヘキサン(150mL))により精製した。精製した固形物を40℃で真空乾燥して重合体(A3−1)(0.8g)を得た。
【0239】
重合体(A3−1)のNMRによれば、化合物(a3)由来のエポキシ構造に由来するシグナルが完全に消失し、かつ5員環構造は保持されていることから、単位(A3)からなる重合体の生成を確認した。重合体(A3−1)のTは40℃であり、25℃において透明な重合体であった。また、重合体(A3−1)の被膜(膜厚1μm)が形成されたフッ化カルシウム製基板の波長157nmの光に対する透過率は、65%以上であった。
【0240】
[例20]化合物(a3)の重合反応による重合体(A3−2)の製造例
窒素ガス雰囲気下の、温度計、磁力式撹拌子、冷却コンデンサーを備えた4つ口フラスコ(内容積50mL、ガラス製)に、CsOCFCFCFCFOCs(0.05g)およびテトラグライム(0.04g)を加えた。つぎにフラスコ内温を−20℃以下に保持しながら、化合物(a3)(2.5g)を加えフラスコ内を撹拌した。
【0241】
フラスコ内温を−30℃にて19時間撹拌し、つぎに−20℃にて12時間撹拌し、さらに−10℃にて26時間撹拌し、加えて0℃にて60時間撹拌して、重合を行った。
フラスコ内容物をR−225(10mL)に溶解させてから再沈殿法(溶媒:ヘキサン(150mL))を行って得た固形物を60℃にて真空乾燥して重合体(A3−2)(2.45g)を得た。
【0242】
重合体(A3−2)のNMRを測定した結果、化合物(a3)由来のエポキシ構造に由来するシグナルが完全に消失し、かつ5員環構造は保持されていることから、単位(A3)からなる重合体の生成を確認した。重合体(A3−2)は、Mが11000でありTが56℃であった。重合体(A3−2)は25℃にて透明な重合体であった。また、重合体(A3−1)の被膜(膜厚1μm)が形成されたフッ化カルシウム製基板の波長157nmの光に対する透過率は、65%以上であった。また総照射量100J/cm以上のFエキシマレーザー光(波長157nm)を該被膜に照射しても、波長157nmの光に対する被膜の光線透過率は40%以上であった。
【0243】
[ペリクルの製造例(例21〜24)]
[例21]基材(A1−1)〜(A1−3)の製造例
例6で得た重合体(A1−1)(2g)とペルフルオロ(トリブチルアミン)(18g)をガラス製フラスコに仕込んで、40℃で24時間加熱撹拌して無色透明な溶液を得た。研磨した石英基材上に、該溶液をスピン速度500rpmで10秒間スピンコートし、さらに700rpmで20秒間スピンコートして、石英基材の表面に重合体(A1−1)が塗布された処理基材を得た。該処理基材を80℃で1時間加熱し、さらに180℃にて1時間加熱して乾燥し、均一で透明な重合体(A1−1)の被膜が表面に形成した基材(A1−1)を得た。
【0244】
同様の方法で、例7で得た重合体(A1−2)を用いて、均一で透明な重合体(A1−2)の被膜が表面に形成した基材(A1−2)を得た。同様に例8で得た重合体(A1−3)を用いて、均一で透明な重合体(A1−3)の被膜が表面に形成した基材(A1−3)を得た。
【0245】
[例22]接着剤に重合体(A1−21)を用い、ペリクル膜に重合体(A1−1)〜(A1−3)をそれぞれ用いたペリクルの製造例
例10で得た重合体(A1−21)(2g)とパーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)(38g)をフラスコ(ガラス製)に投入して、40℃で24時間加熱撹拌して得た無色透明な溶液を接着剤として用いた。枠体(アルミニウム製)のペリクル膜が接着する面に、該溶液を塗布してから、25℃で2時間乾燥した。さらに120℃のホットプレートに、接着剤を塗布した面が上側を向くように枠体をホットプレートに載せた。つぎに120℃で10分間加熱した。
【0246】
つぎに、例20で得た基材(A1−1)の被膜面と枠体の接着面を接触させて圧着し、120℃で10分間加熱して、枠体と該被膜面の接着を完結させた。続いて、基材(A1−1)から石英基材を剥離した。その結果、重合体(A1−21)を介して、重合体(A1−1)の均一な自立膜(膜厚1μm)が枠体に接着したペリクル(A1−1)を得た。
【0247】
同様の方法で、重合体(A1−2)の均一な自立膜(膜厚1μm)が重合体(A1−21)を介して枠体に接着したペリクル(A1−2)を得た。同様に重合体(A1−3)の均一な自立膜(膜厚1μm)が重合体(A1−21)を介して枠体に接着したペリクル(A1−3)を得た。
波長157nmであるFエキシマレーザーの透過率は、ペリクル(A1−1)が80%以上、ペリクル(A1−2)が85%以上、およびペリクル(A1−3)が85%以上であった。
【0248】
[例23]ペリクル(A1−1)〜(A1−3)の評価例
0.05mJ/パルスの強度を有するFエキシマレーザーを用いて、例21で得たペリクル(A1−1)〜(A1−3)をそれぞれ用いて200Hzサイクルにおける照射試験を行う。ペリクル(A1−1)〜(A1−3)は、いずれも60万パルス以上で膜の透過率はほとんど低下せず、良好な耐久性を示す。また、それぞれのペリクル膜と枠体は重合体(A1−21)を介して、強固に接着されている。
【0249】
[例24]重合体(A1−6)を用いたペリクル(A1−6)の製造例および評価例
例18で得た重合体(A1−6)(8g)とペルフルオロ(トリブチルアミン)(92g)をガラス製フラスコ中に入れて40℃で24時間加熱撹拌した。その結果、無色透明で濁りのない均一な溶液を得た。この溶液をSi基板上にスピン速度500rpmにて10秒、その後1000rpmにて20秒スピンコートを実施した後、80℃にて1時間、さらに180℃にて1時間加熱処理することにより、Si基板上に均一で透明な膜が得られた。
【0250】
例10で得た重合体(A1−21)(4g)、ペルフルオロ(トリブチルアミン)(48g)、およびペルフルオロオクタン(48g)を上記と同様に処理して得た溶液をアルミニウムフレーム上に塗布し、25℃で4時間乾燥した。その後、130℃のホットプレート上に接着面を上にしてアルミニウムフレームを載せて10分間加熱し、前記のSi基板を重合体(A1−6)の膜が形成した膜面をフレームと圧着した。つぎに130℃で10分間、200℃オーブン中1時間保持して接着を完結させた。その後、膜にフレームを接着させたまま超純水に浸漬し、50℃のオーブンに入れ1日後、Si基板から膜を剥離し、70℃で真空乾燥を7日間行いアルミフレームに重合体(A1−6)からなる膜厚約1μmの均一な自立膜がついた薄膜をペリクル(A1−6)として得た。被膜の光線透過率を測定した結果、波長157nmの光に対する薄膜の光線透過率は95%である。
【0251】
また該ペリクル(A1−6)を用いて、157nmを発振するFエキシマレーザーの照射試験を行ったところペリクル膜は極めて良好な耐久性を示す。
【産業上の利用可能性】
【0252】
本発明の含フッ素の重合体(I)は、短波長光(特に、Fエキシマレーザー。)に対する透明性と耐久性に優れる新規な重合体である。該新規な重合体(I)は、ペリクル膜および接着剤等として有用である。本発明の含フッ素重合体を用いたペリクルにより、半導体装置や液晶表示板を製造する際の露光処理を、高い歩留で実施でき、有用な半導体装置や液晶表示板を提供される。また本発明によれば、モノマーとして有用な新規な化合物、新規な重合体、およびその製造方法が提供されうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペリクル膜が接着剤を介して枠体に接着されてなる露光処理用のペリクルにおいて、ペリクル膜および/または該接着剤に用いられる重合体(I)が、下記単位(1)を必須とする重合体からなるペリクル。
単位(1):炭素原子に結合したフッ素原子を含有する単位であり、該単位中の重合体主鎖を形成する連鎖が炭素原子とエーテル性酸素原子とからなり、該主鎖を形成する炭素原子の1個以上は環基を形成する炭素原子でありかつ該主鎖を形成するエーテル性酸素原子の1個以上は環基を形成しない酸素原子である単位。
【請求項2】
単位(1)が、下式(A)で表される単位、下式(B)で表される単位、下式(C)で表される単位、または下式(D)で表される単位である請求項1に記載のペリクル。
ただし、下式で表される各単位において、環を形成する炭素原子の1〜2個はエーテル性酸素原子に置換されていてもよい。また環を形成する炭素原子に結合する水素原子の1個以上は、フッ素原子または1価含フッ素有機基に置換されていてもよく、また環を形成する炭素原子に結合する2つの水素原子が共同で2価含フッ素有機基を形成していてもよい。
【化1】

ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
、E、E、E:それぞれ独立に、単結合または−CF
、K、K、K:それぞれ独立に、−O−または−CFO−。
【請求項3】
重合体(I)が、単位(1)の1種以上からなる重合体である、または、単位(1)の1種以上と単位(1)以外の単位の1種以上とからなる重合体である請求項1または2に記載のペリクル。
【請求項4】
単位(1)中に存在する主鎖を形成するエーテル性酸素原子が、水素原子が結合しない炭素原子に結合する酸素原子である請求項1〜3のいずれかに記載のペリクル。
【請求項5】
単位(1)以外の単位が、フッ素原子を含有する単位である請求項1〜4のいずれかに記載のペリクル。
【請求項6】
単位(1)が下式(A1)で表される単位である請求項1に記載のペリクル。
【化2】

ただし、nは1または2、RF1はフッ素原子またはトリフルオロメチル基、RF2はフッ素原子または炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基、を示す。
【請求項7】
単位(1)が下式(A2)で表される単位または下式(A3)で表される単位である請求項1に記載のペリクル。
【化3】

【請求項8】
重合体(I)が、式(A1)で表される単位〜式(A3)で表される単位から選ばれる1種以上からなる、または式(A1)で表される単位〜式(A3)で表される単位から選ばれる1種以上と、式(A1)で表される単位〜式(A3)で表される単位以外の単位から選ばれる1種以上とからなる請求項6または7に記載のペリクル。
【請求項9】
式(A1)で表される単位〜式(A3)で表される単位以外の単位が、それぞれ下式(M1)〜(M5)で表される単位から選ばれる1種以上の単位である請求項8に記載のペリクル。
−CHR−CR− (M1)
−CFR−CR− (M2)
【化4】

ただし、R、R、およびRは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または飽和の1価含フッ素有機基を示す。ただし、R、R、およびRから選ばれる少なくとも1つはフッ素原子または飽和の1価含フッ素有機基を示す。または、R、R、およびRから選ばれる2つの基が共同で2価含フッ素有機基を形成し、かつ残余の1つの基は水素原子、フッ素原子、または飽和の1価含フッ素有機基を示す。
、R、およびRは、それぞれ独立に、フッ素原子または飽和の1価含フッ素有機基を示す。または、R、R、およびRから選ばれる2つの基が共同で2価含フッ素有機基を形成し、かつ残余の1つの基はフッ素原子もしくは飽和の1価含フッ素有機基を示す。
、R、R、およびR10は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、または1価含フッ素有機基を示す。
は2価含フッ素有機基を示す。
【請求項10】
ペリクル膜に用いる重合体(I)が官能基を持たない重合体であり、接着剤に用いる重合体(I)が官能基を持つ重合体である請求項1〜9のいずれかに記載のペリクル。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のペリクルを用いて露光処理を行うことを特徴とする露光処理方法。
【請求項12】
フォトリソグラフィーにおける波長200nm以下の光を用いて行う露光処理方法において、請求項1〜10のいずれかに記載のペリクルを用いることを特徴とする露光処理方法。
【請求項13】
波長200nm以下の光が、フッ素ガスエキシマレーザー光である請求項12に記載の露光処理方法。
【請求項14】
下式(A1)で表されるモノマー単位を含む重合体。
【化5】

ただし、nは1または2、RF1はフッ素原子またはトリフルオロメチル基、RF2はフッ素原子または炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基、を示す。
【請求項15】
質量平均分子量が、500〜1000000である請求項14に記載の重合体。
【請求項16】
下式(a1)で表される化合物を重合させることを特徴とする下式(A1)で表されるモノマー単位を含む重合体の製造方法。
【化6】

ただし、nは1または2、RF1はフッ素原子またはトリフルオロメチル基、RF2はフッ素原子または炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基、を示す。
【請求項17】
下式(a2)で表される化合物または下式(a3)で表される化合物。
【化7】

【請求項18】
下式(A2)で表されるモノマー単位を含む重合体、または下式(A3)で表されるモノマー単位を含む重合体。
【化8】

【請求項19】
質量平均分子量が500〜1000000である請求項18に記載の重合体。
【請求項20】
下式(a2)で表される化合物を重合させることを特徴とする下式(A2)で表されるモノマー単位を含む重合体の製造方法。
【化9】

【請求項21】
下式(a3)で表される化合物を重合させることを特徴とする下式(A3)で表されるモノマー単位を含む重合体の製造方法。
【化10】


【国際公開番号】WO2005/054336
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【発行日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515973(P2005−515973)
【国際出願番号】PCT/JP2004/017965
【国際出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】